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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151471
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】車両走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20231005BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20231005BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231005BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20231005BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20231005BHJP
   B62D 111/00 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B62D6/00
B60W30/12
B60W60/00
B62D101:00
B62D119:00
B62D111:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061083
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大輝
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA25
3D232DA29
3D232DA76
3D232DA84
3D232DC09
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD06
3D232DE09
3D232EA01
3D232EB11
3D232EC22
3D232GG01
3D241BA12
3D241BB27
3D241BC02
3D241CC17
3D241CD12
3D241CE05
3D241DA58Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC01Z
3D241DC35Z
3D241DC37Z
3D241DC43Z
(57)【要約】
【課題】運転者の意図した走行ラインを走行させ易くすることができる車両走行制御装置を提供する。
【解決手段】車線内を走行中の車両10が当該車線の車線端に接近した場合に、車両10の走行位置を、車線の中央側に移動させる車線維持制御を行う車両走行制御装置12は、車両10の走行位置を修正する操舵制御トルクTを算出する制御トルク算出部54と、車両10の操舵制御装置に、制御トルク算出部54が算出した操舵制御トルクTを発生させるのと同じタイミングで、運転者の操舵トルクTdを算出する操舵トルク算出部55と、操舵制御トルクTと操舵トルクTdの偏差ΔTが閾値ΔTthよりも大きい場合に、制御トルク算出部54が算出した操舵制御トルクTよりも小さい操舵制御トルクで、車線維持制御を行う制御ゲイン調整部56(制御部)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車線内を走行中の車両が、当該車線の車線端に接近した場合に、前記車両の走行位置を、前記車線の中央側に移動させる車線維持制御を行う車両走行制御装置であって、
前記車両の走行位置を修正する操舵制御トルクを算出する制御トルク算出部と、
前記車両の操舵制御装置に、前記制御トルク算出部が算出した操舵制御トルクを発生させるのと同じタイミングで、運転者の操舵トルクを算出する操舵トルク算出部と、
前記操舵制御トルクと前記操舵トルクの偏差が閾値よりも大きい場合に、前記制御トルク算出部が算出した操舵制御トルクよりも小さい操舵制御トルクで、前記車線維持制御を行う制御部と、を備える、
車両走行制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、更に、前記操舵制御トルクと前記操舵トルクの偏差が閾値よりも大きい場合に、前記車両の操舵を運転者の操舵操作にハンドオーバし易い車線維持制御を行う、
請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項3】
前記車両が曲率の大きい走行路を走行しているかを検出する曲路検出部を更に備えて、
前記制御部は、前記車両が曲率の大きい車線を走行していて、前記操舵制御トルクと前記操舵トルクの偏差が閾値よりも大きい場合に、前記車線維持制御を行う、
請求項1又は請求項2に記載の車両走行制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記操舵トルク算出部が、運転者がステアリングを握っている場合に、前記車線維持制御を行う、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両走行制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記操舵トルク算出部が、所定時間に亘って運転者がステアリングを握っていない場合に、前記制御トルク算出部が算出した操舵制御トルクよりも大きい操舵制御トルクで、前記車線維持制御を行う、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両を車線に沿って走行させるために、運転者の操舵操作の支援を行う車両制御装置が実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両を、左右の白線の中央位置に設定した目標走行ラインに沿って走行させるように操舵操作の支援を行う車両制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-22365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された車両制御装置にあっては、車両を左右の白線の中央位置に沿って走行させるように操舵操作の支援を行うため、左右の白線の中央位置に沿って走行しない運転者に対して煩わしさを与えるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、運転者の意図した走行ラインを走行させ易くすることができる車両走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両走行制御装置は、車線内を走行中の車両が、当該車線の車線端に接近した場合に、前記車両の走行位置を、前記車線の中央側に移動させる車線維持制御を行う車両走行制御装置であって、前記車両の走行位置を修正する操舵制御トルクを算出する制御トルク算出部と、前記車両の操舵制御装置に、前記制御トルク算出部が算出した操舵制御トルクを発生させるのと同じタイミングで、運転者の操舵トルクを算出する操舵トルク算出部と、前記操舵制御トルクと前記操舵トルクの偏差が閾値よりも大きい場合に、前記制御トルク算出部が算出した操舵制御トルクよりも小さい操舵制御トルクで、前記車線維持制御を行う制御部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、運転者の意図した走行ラインを走行させ易くすることができる。
【0009】
また、本発明に係る車両走行制御装置において、前記制御部は、更に、前記操舵制御トルクと前記操舵トルクの偏差が閾値よりも大きい場合に、更に、前記車両の操舵を運転者の操舵操作にハンドオーバし易い車線維持制御を行う。
【0010】
この構成によれば、車両走行制御装置が行う車線維持制御によって、運転者の意図しない走行ラインが指示された場合に、車線維持制御の介入をキャンセルさせ易くすることができる。
【0011】
また、本発明に係る車両走行制御装置は、前記車両が曲率の大きい走行路を走行しているかを検出する曲路検出部を更に備えて、前記制御部は、前記車両が曲率の大きい車線を走行していて、前記操舵制御トルクと前記操舵トルクの偏差が閾値よりも大きい場合に、前記車線維持制御を行う。
【0012】
この構成によれば、曲路において、運転者の意図する走行ラインを走行させ易くすることができる。
【0013】
また、本発明に係る車両走行制御装置において、前記制御部は、前記操舵トルク算出部が、運転者がステアリングを握っている場合に、前記車線維持制御を行う。
【0014】
この構成によれば、運転者がステアリングを握って、緊急時の対応が可能な状態である場合のみ、車線維持制御による介入を行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る車両走行制御装置において、前記制御部は、前記操舵トルク算出部が、所定時間に亘って運転者がステアリングを握っていない場合に、前記制御トルク算出部が算出した操舵制御トルクよりも大きい操舵制御トルクで、前記車線維持制御を行う。
【0016】
この構成によれば、運転者の状態に応じて、車線維持制御の介入度合を調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運転者の意図した走行ラインを走行させ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施の形態の車両走行制御装置の全体構成の一例を示すブロック図である。
図2A図2Aは、右カーブを走行する場合の、車両走行制御装置が算出した目標走行位置と運転者が意図する走行位置とを比較した図である。
図2B図2Bは、左カーブを走行する場合の、車両走行制御装置が算出した目標走行位置と運転者が意図する走行位置とを比較した図である。
図3図3は、実施の形態の車両走行制御装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4図4は、実施の形態の車両走行制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態の変形例の車両走行制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
(実施の形態)
図1を用いて、本発明の実施の形態の車両走行制御装置を説明する。図1は、車両走行制御装置の全体構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
(車両走行制御装置の全体構成)
車両10が搭載する車両走行制御装置12は、運転者の操舵制御を補助するものであって、車線内を走行中の車両が、当該車線の車線端に接近した場合に、車両10の走行位置を、車線の中央側に移動させる車線維持制御を行う。
【0022】
図1に示すように、車両走行制御装置12は、ECU14と、メインスイッチ15と、カメラ16と、操舵トルクセンサ17と、車速センサ18と、加速度センサ19と、EPSモータ25とを備える。
【0023】
ECU14は、車両10が車線を逸脱しないように車線維持制御を行う。具体的な車線維持制御の内容は後述する。ECU14は、CPUと、RAMと、ROMと、を備えるコンピュータの構成を有する。ECU14は、図1に図示しない記憶部が記憶する制御プログラムをRAMに展開して実行することにより、車両10の車線維持制御を実行する。なお、ECU14の機能は、専用のハードウエアによって実現されてもよい。
【0024】
メインスイッチ15は、車両走行制御装置12に、車線維持制御を行わせるためのメインスイッチである。メインスイッチ15は、例えば車両10のメータクラスタの周辺等に設置された機械式スイッチ、電気式スイッチ等によって実現される。
【0025】
カメラ16は、車両10のルームミラーの裏面側に、車両10の進行方向前方を向いて設置される。カメラ16は、車両10の進行方向の車線と車線端に引かれたレーンマーカを含む画像を撮像する。車両走行制御装置12のECU14は、カメラ16が撮像した画像を取得して、当該画像の中からレーンマーカを検出する。なお、カメラ16は単眼カメラであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。画像の中からレーンマーカを検出するのみであれば、単眼カメラを用いれば充分であるが、併せて先行車両等の障害物検出を行う場合には、ステレオカメラが必要になる。
【0026】
操舵トルクセンサ17は、コラムシャフトに加えられる、EPSモータ25の駆動力によって生じる操舵制御トルクTと、ステアリングシャフトに加えられる車両10の運転者の操舵による操舵トルクTdとの総和を計測する。車両10の運転者が、車両走行制御装置12が印加した操舵制御トルクTとは逆方向の操舵トルクTdを印加した場合、操舵トルクセンサ17が計測する値は、操舵制御トルクTよりも小さくなる。即ち、操舵制御トルクTと操舵トルクセンサ17の計測値との偏差ΔTは、操舵トルクTdを表す。ステアリングシャフトとコラムシャフトとの間にはトーションバーが備えられる。操舵トルクセンサ17は、トーションバーに加わるトルク、即ち、EPSモータ25の駆動力による操舵制御トルクTと、運転者の操舵による操舵トルクTdとに応じて生じるねじれ角を、例えば抵抗値の変化として計測する。
【0027】
車速センサ18は、車両10の車速を検出する。
【0028】
加速度センサ19は、車両10の加速度を検出する。
【0029】
EPSモータ25は、車両10に搭載された電動パワーステアリングシステム(EPS:Electric Power Steering System)を駆動するための電動モータである。EPSモータ25は、ECU14からの指示に基づく電流をEPSモータ25に流すことによって、車両10に加える操舵トルクを発生させる。なお、EPSモータ25は、本開示における操舵制御装置の一例である。
【0030】
ECU14と、メインスイッチ15と、カメラ16と、操舵トルクセンサ17と、車速センサ18と、加速度センサ19とは、内部バス22で接続される。内部バス22は、例えば、CAN(Controller Area Network)等で実現される車内LANである。
【0031】
ECU14と、EPSモータ25とは、内部バス28で接続される。内部バス28は、例えば、CAN等で実現される車内LANである。
【0032】
なお、本実施の形態において、車両走行制御装置12は、EPSモータ25の駆動トルクによって車両10に操舵トルクを加える構成として説明するが、車両走行制御装置12は、同様の目的のために、車両10のリアブレーキを制御してもよい。即ち、車両10が左側のレーンマーカに接近した際に、車両走行制御装置12が、ブレーキアクチュエータを制御することによって、車両10の右側のリアブレーキのみに軽い制動力をかけてもよい。これによって、車両10には時計回りのヨーモーメントが発生するため、車両10は、右操舵したのと同様の挙動を呈する。同様に、車両10が右側のレーンマーカに接近した際に、車両走行制御装置12が、ブレーキアクチュエータを制御することによって、車両10の左側のリアブレーキのみに軽い制動力をかけてもよい。これによって、車両10には反時計回りのヨーモーメントが発生するため、車両10は、左操舵したのと同様の挙動を呈する。
【0033】
(曲路走行中の車両の進路)
図2A図2Bを用いて、曲路を走行中の車両10の進路について説明する。図2Aは、右カーブを走行する場合の、車両走行制御装置が算出した目標走行位置と運転者が意図する走行位置とを比較した図である。図2Bは、左カーブを走行する場合の、車両走行制御装置が算出した目標走行位置と運転者が意図する走行位置とを比較した図である。
【0034】
本実施の形態の車両走行制御装置12は、車両10が所定の状態にある場合に、車両10の操舵制御をアシストすることによって、車両10が走行中の車線を逸脱しないように補助する。例えば、車両走行制御装置12は、車両10が車線を逸脱する恐れがあると判断した場合に、車両10に対して、車線中央側に操舵させる操舵力を与える。このような車線逸脱防止制御を行うことによって、車両10は車線の逸脱を防止することができる。なお、車線逸脱防止制御は、本開示における車線維持制御の一例である。
【0035】
また、車両走行制御装置12は、車両10が車線を逸脱する恐れがあると判断した場合に、車両10に対して、車線中央に沿って走行するように操舵力を与える。このような車線トレース制御を行うことによって、車両10は車線に沿って走行することができる。なお、車線トレース制御は、本開示における車線維持制御の一例である。
【0036】
例えば、図2Aに示す右カーブの道路30において車線トレース制御を行う場合、車両走行制御装置12は、目標走行位置32を設定する。目標走行位置32は、道路30の左端を示すレーンマーカ30aと、道路30の右端を示すレーンマーカ30bとの中点の軌跡である。
【0037】
車両走行制御装置12は、車両10が目標走行位置32に沿って走行するように、車両10に対して操舵トルクを加える。例えば、車両10が目標走行位置32とレーンマーカ30aとの間にいる場合には、車両10が目標走行位置32に近づくように、車両10を右に操舵させる操舵トルクを加える。一方、車両10が目標走行位置32とレーンマーカ30bとの間にいる場合には、車両10が目標走行位置32に近づくように、車両10を左に操舵させる操舵トルクを加える。
【0038】
車両10が曲路を走行している場合、運転者によっては、例えば、図2Aに示す走行ライン34のように、曲路をできるだけ直線的に走行する(いわゆるアウト・イン・アウト)場合がある。この場合、曲路進入時にはレーンマーカ30aに近い位置を走行する。そして、曲路通過中にはレーンマーカ30bに近い位置を走行して、曲路脱出時にはレーンマーカ30aに近い位置を走行する。
【0039】
このような走行ライン34をとる場合、走行ライン34と車両走行制御装置12が設定した目標走行位置32との間にずれが生じるため、車両10の運転者は、部分的に、車両走行制御装置12が発生する操舵トルクに逆らう操舵力を発生させる必要がある。
【0040】
ここで、走行ライン34を4つの区間36a,36b,36c,36dに分けて、詳しく説明する。区間36aは、車両10が曲路進入時に、目標走行位置32を横切る点P1まで走行する区間である。区間36bは、車両10が、点P1から、レーンマーカ30bに最も接近する点P2まで走行する区間である。区間36cは、車両10が、点P2から、目標走行位置32を横切る点P3まで走行する区間である。区間36dは、車両10が、点P3からレーンマーカ30a側に区かって走行する区間である。
【0041】
区間36aにおいて、車両走行制御装置12は、車両10に対して、走行位置を目標走行位置32に近づけるように、右向きの操舵力を発生させる。従って、車両10の運転者は、自ら、車両10を右に操舵させる必要はなく、車両走行制御装置12が発生させた右向きの操舵力に従っていれば、自身が想定した走行ライン34をトレースすることができる。
【0042】
区間36bにおいて、車両走行制御装置12は、車両10に対して、走行位置を目標走行位置32に近づけるように、左向きの操舵力を発生させる。従って、車両10の運転者は、自身が想定した走行ライン34をトレースするために、車両走行制御装置12が発生させた左向きの操舵力に逆らって、車両を右に操舵させる必要がある。
【0043】
区間36cにおいて、車両走行制御装置12は、車両10に対して、走行位置を目標走行位置32に近づけるように、左向きの操舵力を発生させる。従って、車両10の運転者は、自ら、車両10を左に操舵させる必要はなく、車両走行制御装置12が発生させた左向きの操舵力に従っていれば、自身が想定した走行ライン34をトレースすることができる。
【0044】
区間36dにおいて、車両走行制御装置12は、車両10に対して、走行位置を目標走行位置32に近づけるように、右向きの操舵力を発生させる。従って、車両10の運転者は、自身が想定した走行ライン34をトレースするために、車両走行制御装置12が発生させた右向きの操舵力に逆らって、車両を左に操舵させる必要がある。
【0045】
このように、曲路においてアウト・イン・アウトの走行ライン34をとる傾向がある運転者にとって、車線の中央を維持させるように車両10の走行位置を制御する車両走行制御装置12の制御内容は、部分的に煩わしいものになる恐れがある。
【0046】
本実施の形態の車両走行制御装置12は、このような課題を解消するために、運転者が、車両走行制御装置12が発生させた操舵力に逆らう方向に操舵したことを検出した場合に、発生させる操舵力を減少させる。また、運転者が、車両走行制御装置12が発生させた操舵力に逆らう操舵力を加えた場合には、車線維持制御をキャンセルし易くする。
【0047】
より具体的には、本実施の形態の車両走行制御装置12は、図2Aの区間36b,36dにおいて、車両走行制御装置12が発生する操舵力を減少させるとともに、車線維持制御をキャンセルし易くする。これによって、車両10の運転者は、区間36b,36dにおいて、より小さな操舵力で、自身が想定した走行ライン34をトレースすることができるようになる。
【0048】
次に、図2Bを用いて、左カーブの場合について、同様に説明する。図2Bに示す左カーブの道路40において車線トレース制御を行う場合、車両走行制御装置12は、目標走行位置42を設定する。目標走行位置42は、道路40の左端を示すレーンマーカ40aと、道路40の右端を示すレーンマーカ40bとの中点の軌跡である。
【0049】
車両10が道路40を走行する場合、運転者によっては、例えば、図2Bに示す走行ライン44のように、アウト・イン・アウトの走行ラインをとる場合がある。この場合、曲路進入時にはレーンマーカ40bに近い位置を走行する。そして、曲路通過中にはレーンマーカ40aに近い位置を走行して、曲路脱出時にはレーンマーカ40bに近い位置を走行する。
【0050】
このような走行ライン44をとる場合、走行ライン44と車両走行制御装置12が設定した目標走行位置42との間にずれが生じるため、車両10の運転者は、部分的に、車両走行制御装置12が発生する操舵トルクに逆らう操舵力を発生させる必要がある。
【0051】
先ほどと同様に、走行ライン44を4つの区間46a,46b,46c,46dに分けて、詳しく説明する。区間46aは、車両10が曲路進入時に、目標走行位置42を横切る点P4まで走行する区間である。区間46bは、車両10が、点P4から、レーンマーカ40aに最も接近する点P5まで走行する区間である。区間46cは、車両10が、点P5から、目標走行位置32を横切る点P6まで走行する区間である。区間46dは、車両10が、点P6からレーンマーカ40b側に区かって走行する区間である。
【0052】
区間46aにおいて、車両走行制御装置12は、車両10に対して、走行位置を目標走行位置42に近づけるように、左向きの操舵力を発生させる。従って、車両10の運転者は、自ら、車両10を左に操舵させる必要はなく、車両走行制御装置12が発生させた左向きの操舵力に従っていれば、自身が想定した走行ライン44をトレースすることができる。
【0053】
区間46bにおいて、車両走行制御装置12は、車両10に対して、走行位置を目標走行位置42に近づけるように、右向きの操舵力を発生させる。従って、車両10の運転者は、自身が想定した走行ライン44をトレースするために、車両走行制御装置12が発生させた右向きの操舵力に逆らって、車両を左に操舵させる必要がある。
【0054】
区間46cにおいて、車両走行制御装置12は、車両10に対して、走行位置を目標走行位置42に近づけるように、右向きの操舵力を発生させる。従って、車両10の運転者は、自ら、車両10を右に操舵させる必要はなく、車両走行制御装置12が発生させた右向きの操舵力に従っていれば、自身が想定した走行ライン44をトレースすることができる。
【0055】
区間46dにおいて、車両走行制御装置12は、車両10に対して、走行位置を目標走行位置42に近づけるように、左向きの操舵力を発生させる。従って、車両10の運転者は、自身が想定した走行ライン44をトレースするために、車両走行制御装置12が発生させた左向きの操舵力に逆らって、車両を右に操舵させる必要がある。
【0056】
このように、曲路においてアウト・イン・アウトの走行ライン44をとる傾向がある運転者にとって、車線の中央を維持させるように車両10の走行位置を制御する車両走行制御装置12の制御内容は、部分的に煩わしいものになる恐れがある。
【0057】
本実施の形態の車両走行制御装置12は、このような課題を解消するために、運転者が、車両走行制御装置12が発生させた操舵力に逆らう方向に操舵したことを検出した場合に、発生させる操舵力を減少させる。また、運転者が、車両走行制御装置12が発生させた操舵力に逆らう操舵力を加えた場合には、車線維持制御をキャンセルし易くする。
【0058】
より具体的には、本実施の形態の車両走行制御装置12は、図2Bの区間46b,46dにおいて、車両走行制御装置12が発生する操舵力を減少させるとともに、車線維持制御をキャンセルし易くする。これによって、車両10の運転者は、区間46b,46dにおいて、より小さな操舵力で、自身が想定した走行ライン44をトレースすることができるようになる。
【0059】
以上、曲路をアウト・イン・アウトの走行ライン34,44で走行する場合について説明したが、曲路を走行する際に、イン側の寄った状態で走行する場合や、アウト側に寄った状態で走行する場合もある。このような場合であっても、本実施の形態の車両走行制御装置12は、運転者が、車両走行制御装置12が発生させた操舵力に逆らう方向に操舵したことを検出した場合に、発生させる操舵力を減少させる。また、運転者が、車両走行制御装置12が発生させた操舵力に逆らう操舵力を加えた場合には、車線維持制御をキャンセルし易くするため、より小さな操舵力で、自身が想定した走行ライン34をトレースすることができるようになる。
【0060】
(車両走行制御装置の機能構成)
図3を用いて、車両走行制御装置12の機能構成を説明する。図3は、実施の形態の車両走行制御装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0061】
ECU14は、制御プログラムを実行することによって、図3に示す車両状態検出部51と、車線端検出部52と、曲路検出部53と、制御トルク算出部54と、操舵トルク算出部55と、制御ゲイン調整部56と、オーバライド調整部57と、手放し対応制御部58と、車線維持支援実行部59とを機能部として実現する。
【0062】
車両状態検出部51は、車両10の状態を検出する。具体的には、車両状態検出部51は、走行中の車速や加速度等の車両走行状態を検出する。また、車両状態検出部51は、車両10のウインカが操作されていないことを検出する。また、車両状態検出部51は、車両10のキーOFFや施錠等に基づいて、運転終了状態にあることを検出する。
【0063】
車線端検出部52は、公知のレーンマーカ検出アルゴリズムを用いて、車両10が走行中の車線の左右のレーンマーカ(図2Aのレーンマーカ30a,30b、図2Bのレーンマーカ40a,40b)を検出する。具体的には、車線端検出部52は、カメラ16が撮像した画像を処理することによって、路面との間にコントラストを有して、車両10の進行方向に沿って延びるレーンマーカ40a,40bを検出する。なお、車線端検出部52は、レーンマーカ40a,40bを、実線、破線等の線種別、及びレーンマーカの色によらずに検出する。
【0064】
曲路検出部53は、車線端検出部52が検出した車両10が走行中の車線の左右のレーンマーカの形状に基づいて、車両10の進行方向前方の道路が曲路であるかを検出する。また、曲路検出部53は、車両10の進行方向前方の道路が曲路である場合に、その曲率を検出する。具体的には、曲路検出部53は、車線端検出部52が検出したレーンマーカの線形に基づいて、曲率を推定する。
【0065】
制御トルク算出部54は、車線端検出部52が検出したレーンマーカの位置に基づいて、車両10の走行位置を修正する操舵制御トルクTを算出する。
【0066】
操舵トルク算出部55は、車線維持支援実行部59がEPSモータ25に対して操舵制御トルクTを発生させたタイミングで、車両10の運転者の操舵トルクTdを算出する。より具体的には、操舵トルク算出部55は、車線維持支援実行部59がEPSモータ25に対して発生させた操舵制御トルクTと、操舵トルクセンサ17が計測した操舵制御トルクTと操舵トルクTdとの総和とに基づいて、操舵トルクTdを算出する。即ち、操舵トルクTdは、式(1)で算出される。
【0067】
Td=T―ΔT・・・(1)
【0068】
ここで、ΔTは、操舵制御トルクTと運転者の操舵トルクTdとの偏差を表す。
【0069】
また、操舵トルク算出部55は、車線維持支援実行部59が車線維持制御を行っている際に、操舵制御トルクTと運転者の操舵トルクTdの偏差ΔTに基づいて、車両10の運転者がステアリングを握っているかを判定する。より具体的には、偏差ΔTが所定値以上の場合、操舵トルク算出部55は、車両10の運転者がステアリングを握っていると判定する。
【0070】
制御ゲイン調整部56は、操舵制御トルクTと操舵トルクTdの偏差ΔTが閾値ΔTthよりも大きい場合、即ち、車線維持支援実行部59がEPSモータ25に発生させた操舵制御トルクTに対して、車両10の運転者が、操舵制御トルクTの逆方向に所定値以上の操舵トルクTdを加えている場合に、制御トルク算出部54が算出した操舵制御トルクTよりも小さい操舵制御トルク、即ち制御ゲインを減らして車線維持制御を行う。また、制御ゲイン調整部56は、運転者がステアリングを握っていないことが検出された場合に、手放し対応制御部58からの指示を受けて、車線維持制御を行う際の制御ゲインを増加させる。また、制御ゲイン調整部56は、車線維持制御を開始する際に、制御ゲインのデフォルト設定を行う。なお、制御ゲイン調整部56は、本開示における制御部の一例である。
【0071】
オーバライド調整部57は、操舵制御トルクTと操舵トルクTdの偏差ΔTが閾値ΔTthよりも大きい場合、即ち操舵に係る運転者の介入が大きい場合に、車両10の操舵を運転者にオーバライド(ハンドオーバ)し易い設定とする。なお、車両10の操舵を運転者の操舵操作にオーバライドするとは、車線維持制御を停止(オーバライドキャンセル)することである。また、オーバライド調整部57は、車線維持制御を開始する際に、オーバライド条件のデフォルト設定を行う。オーバライド調整部57は、本開示における制御部の一例である。
【0072】
手放し対応制御部58は、車線維持支援実行部59が車線維持制御を行っている際に、運転者が所定時間以上に亘ってステアリングを握っていないことが検出された場合に、車線維持制御を停止する。また、手放し対応制御部58は、運転者がステアリングを握っていないことが検出された場合に、制御ゲイン調整部56に対して、車線維持制御を行う際の制御ゲインを増加させる指示を出す。
【0073】
車線維持支援実行部59は、車両状態検出部51が、車両10が所定の運転状態であることを検出した場合であって、尚且つ、車両10の運転者がステアリングを補舵している場合に、車線内を走行中の車両10が車線端に接近したことを条件として、車両10の走行位置を、車線の中央側に移動させる車線維持制御を行う。より具体的には、車線維持支援実行部59は、EPSモータ25に対して、制御トルク算出部54が算出した操舵制御トルクTを発生させる。なお、車線維持制御が実行される、車両10の所定の運転状態とは、例えば、所定の車速以上であって、加速度(前後加速度及び左右加速度)が所定値以下の状態であること、また、ウインカが操作されていないこと等である。また、車線維持支援実行部59は、車線維持制御の動作中に、運転者が、操舵制御トルクTと反対方向に、閾値ΔTthを超える操舵トルクTdを入力した場合に、車線維持制御を停止させるオーバライドキャンセルを行う。また、車線維持支援実行部59は、車両状態検出部51が、車両10が車線維持制御を実行可能な状態にないことを検出した場合に、車線維持制御を停止させる。なお、車線維持支援実行部59が行う車線維持制御は、車両10がレーンマーカに接近した場合に、車線中央に押し返す方向の操舵力を加える制御であってもよいし、車両10がレーンマーカに接近した場合に、車線中央に沿って走行させる制御であってもよい。
【0074】
(車両走行制御装置が行う処理の流れ)
図4を用いて、車両走行制御装置12が行う処理の流れを説明する。図4は、実施の形態の車両走行制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0075】
車線維持支援実行部59は、車線維持支援を行う動作条件が成立しているかを判定する(ステップS11)。車線維持支援を行う動作条件が成立していると判定される(ステップS11:Yes)とステップS12に進む。一方、車線維持支援を行う動作条件が成立していないと判定される(ステップS11:No)とステップS11を繰り返す。
【0076】
なお、車線維持支援を行う動作条件が成立しているかは、例えば、メインスイッチ15が押下されて、車両10の車速が所定の車速以上であり、尚且つ、車両10の加速度が所定の加速度未満である等の、所定の条件を満たしていることによって判定される。
【0077】
ステップS11において、車線維持支援を行う動作条件が成立していると判定されると、制御ゲイン調整部56は、制御ゲインのデフォルト設定を行う。また、オーバライド調整部57は、オーバライド条件(オーバーライドキャンセル条件)のデフォルト設定を行う(ステップS12)。
【0078】
車線維持支援実行部59は、車線維持支援(車線維持制御)を実行する(ステップS13)。
【0079】
操舵トルク算出部55は、車両10の運転者がステアリングを握っているかを判定する(ステップS14)。車両10の運転者がステアリングを握っていると判定される(ステップS14:Yes)とステップS15に進む。一方、車両10の運転者がステアリングを握っていると判定されない(ステップS14:No)とステップS22に進む。
【0080】
ステップS15において、車両10の運転者がステアリングを握っていると判定されると、曲路検出部53は、車両10が走行中の道路(車線)の曲率が所定値よりも大きいかを判定する(ステップS15)。車両10が走行中の道路の曲率が所定値よりも大きいと判定される(ステップS15:Yes)とステップS16に進む。一方、車両10が走行中の道路の曲率が所定値よりも大きいと判定されない(ステップS15:No)とステップS12に戻る。
【0081】
ステップS15において、車両10が走行中の道路曲率が所定値よりも大きいと判定されると、操舵トルク算出部55は、運転者の操舵トルクTdを算出する(ステップS16)。具体的には、操舵トルク算出部55は、制御トルク算出部が算出した操舵制御トルクTと、操舵トルクセンサ17が計測した操舵制御トルクTと操舵トルクTdとの総和とから、前記した式(1)によって操舵トルクTdを算出する。
【0082】
制御ゲイン調整部56は、ステップS16で算出された操舵トルクTdが閾値ΔTthよりも大きいかを判定する(ステップS17)。操舵トルクTdが閾値ΔTthよりも大きいと判定される(ステップS17:Yes)とステップS18に進む。一方、操舵トルクTdが閾値ΔTthよりも大きいと判定されない(ステップS17:No)とステップS12に戻る。
【0083】
ステップS17において、操舵トルクTdが閾値ΔTthよりも大きいと判定されると、制御ゲイン調整部56は、車線維持支援実行部59が車線維持支援を行う際の制御ゲインを減らす(ステップS18)。
【0084】
また、オーバライド調整部57は、車両10の操舵を運転者にオーバライドし易い設定(オーバライドキャンセルし易い設定)とする(ステップS19)。
【0085】
車線維持支援実行部59は、車線維持支援を停止する条件が成立しているかを判定する(ステップS20)。車線維持支援を停止する条件が成立していると判定される(ステップS20:Yes)とステップS21に進む。一方、車線維持支援を停止する条件が成立していないと判定される(ステップS20:No)とステップS13に戻る。
【0086】
ステップS20において、車線維持支援を停止する条件が成立していると判定されると、車線維持支援実行部59は、車線維持支援(車線維持制御)を停止する(ステップS21)。その後、車両走行制御装置12は、図4の処理を終了する。
【0087】
ステップS14に戻り、ステップS14において、車両10の運転者がステアリングを握っていると判定されないと、手放し対応制御部58は、運転者がステアリングを握っていない時間が所定時間以上継続しているかを判定する(ステップS22)。運転者がステアリングを握っていない時間が所定時間以上継続していると判定される(ステップS22:Yes)と、ステップS21に進む。一方、運転者がステアリングを握っていない時間が所定時間以上継続していると判定されない(ステップS22:No)とステップS23に進む。
【0088】
ステップS22において、運転者がステアリングを握っていない時間が所定時間以上継続していると判定されると、車線維持支援実行部59は、車線維持支援(車線維持制御)を停止する(ステップS21)。その後、車両走行制御装置12は、図4の処理を終了する。
【0089】
一方、ステップS22において、運転者がステアリングを握っていない時間が所定時間以上継続していると判定されないと、制御ゲイン調整部56は、車線維持支援実行部59が車線維持支援を行う際の制御ゲインを増やす(ステップS23)。その後、ステップS13に戻って、前記した処理を繰り返す。
【0090】
(実施の形態の作用効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る車両走行制御装置12は、車線内を走行中の車両10が、当該車線の車線端に接近した場合に、車両10の走行位置を、車線の中央側に移動させる車線維持制御を行い、車両10の走行位置を修正する操舵制御トルクTを算出する制御トルク算出部54と、車両10の操舵制御装置に、制御トルク算出部54が算出した操舵制御トルクTを発生させるのと同じタイミングで、運転者の操舵トルクTdを算出する操舵トルク算出部55と、操舵制御トルクTと操舵トルクTdの偏差ΔTが閾値ΔTthよりも大きい場合に、制御トルク算出部54が算出した操舵制御トルクTよりも小さい操舵制御トルクで、車線維持制御を行う制御ゲイン調整部56(制御部)と、を備える。従って、運転者の意図した走行ラインを走行させ易くすることができる。
【0091】
また、本実施の形態に係る車両走行制御装置12において、オーバライド調整部57(制御部)は、操舵制御トルクTと操舵トルクTdの偏差ΔTが閾値ΔTthよりも大きい場合に、車両10の操舵を運転者の操舵操作にハンドオーバし易い車線維持制御を行う。従って、運転者の意図しない走行ラインが指示された場合に、車線維持制御の介入をキャンセルさせ易くすることができる。
【0092】
また、本実施の形態に係る車両走行制御装置12は、車両10が曲率の大きい走行路を走行しているかを検出する曲路検出部53を更に備えて、制御ゲイン調整部56(制御部)及びオーバライド調整部57(制御部)は、車両10が曲率の大きい車線を走行していて、操舵制御トルクTと操舵トルクTdの偏差ΔTが閾値ΔTthよりも大きい場合に、車線維持制御を行う。従って、曲路において、運転者の意図する走行ラインを走行させ易くすることができる。
【0093】
また、本実施の形態に係る車両走行制御装置12において、制御ゲイン調整部56(制御部)及びオーバライド調整部57(制御部)は、操舵トルク算出部55が、運転者の操舵トルクTdを検出した場合に、車線維持制御を行う。従って、運転者がステアリングを握って、緊急時の対応が可能な状態である場合のみ、車線維持制御による介入を行うことができる。
【0094】
また、本実施の形態に係る車両走行制御装置12において、制御ゲイン調整部56(制御部)及びオーバライド調整部57(制御部)は、操舵トルク算出部55が、所定時間に亘って運転者の操舵トルクTdを検出しない場合に、制御トルク算出部54が算出した操舵制御トルクTよりも大きい操舵制御トルクで車線維持制御を行う。従って、運転者の状態に応じて、車線維持制御の介入度合を調整することができる。
【0095】
(実施の形態の変形例)
先に説明した実施の形態において、車両走行制御装置12は、車両10が走行している車線の曲率が所定値よりも大きい場合に車線維持制御を行ったが、同様の車線維持制御は、曲率が大きい車線に限らずに実行してもよい。実施の形態の変形例の車両走行制御装置12は、道路線形に関わらずに、先に説明したのと同じ車線維持制御を行う。
【0096】
実施の形態の変形例の車両走行制御装置12は、先に説明した車両走行制御装置12と同様のハードウエア構成を備える。また、実施の形態の変形例の車両走行制御装置12は、図3の機能構成から、曲路検出部53のみを除いた機能構成を備える。そのため、以下の説明は、先に用いたのと同じ符号を用いて行う。
【0097】
実施の形態の変形例の車両走行制御装置12は、車両10が走行している道路(車線)の形状によらずに、制御トルク算出部54が算出した操舵制御トルクTと、操舵トルクセンサ17が計測した操舵制御トルクTと操舵トルクTdとの総和とから、操舵トルクTdを算出する。そして、操舵トルクTdが閾値ΔTthよりも大きい場合、即ち、車両10の運転者が、車両走行制御装置12が指示した操舵制御トルクTに抗う方向に、閾値ΔTthよりも大きい操舵トルクTdを加えた場合に、車両走行制御装置12は、道路線形によらずに、先の実施の形態で説明した車線維持制御を行う。
【0098】
図5は、実施の形態の変形例の車両走行制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示す処理の流れは、実施の形態で説明した処理の流れ(図4参照)におけるステップS15の処理を行わない点のみが異なる。即ち、実施の形態の変形例の車両走行制御装置12は、道路線形によらずに、車両走行制御装置12が指示した操舵制御トルクTと、車両10の運転者が加えた操舵トルクTdのみに基づいて、車線維持制御の制御ゲインの調整とオーバライドキャンセル条件の調整とを行う。
【0099】
これによって、実施の形態の変形例の車両走行制御装置12は、例えば、直線路をキープレフトで走行する癖がある運転者に対して、車線の中央位置に引き戻す操舵制御トルクを減らすことができる。したがって、道路線形によらずに、運転者の意図した走行ラインを走行させ易くすることができる。
【0100】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
10 車両
12 車両走行制御装置
14 ECU
15 メインスイッチ
16 カメラ
17 操舵トルクセンサ
25 EPSモータ(操舵制御装置)
32,42 目標走行位置
51 車両状態検出部
52 車線端検出部
53 曲路検出部
54 制御トルク算出部
55 操舵トルク算出部
56 制御ゲイン調整部(制御部)
57 オーバライド調整部(制御部)
58 手放し対応制御部
59 車線維持支援実行部
T 操舵制御トルク
Td 操舵トルク
ΔT 偏差
ΔTth 閾値
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5