(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151479
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】回転斜板式液圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 1/145 20200101AFI20231005BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F04B1/145
F04B53/16 A
F04B53/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061101
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】西田 信治
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勇
(72)【発明者】
【氏名】高雄 悟
【テーマコード(参考)】
3H070
3H071
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB04
3H070BB07
3H070CC12
3H070CC34
3H070DD66
3H070DD68
3H070DD91
3H071AA03
3H071BB01
3H071CC33
3H071DD06
3H071DD14
3H071DD82
(57)【要約】
【課題】コンパクトに形成することができる回転斜板式液圧ポンプを提供する。
【解決手段】回転斜板式液圧ポンプは、ケーシングと、ケーシング内に相対回転不能に配置され、複数のシリンダボアが形成されるシリンダブロックと、前記複数のシリンダボアの各々に挿入される複数のピストンと、軸線まわりに回転可能にケーシング内に収容され、前記ピストンを往復運動させる回転斜板と、を備え、ケーシングは、複数のシリンダボアの各々が繋がる環状の吸入通路を含み、吸入通路は、ケーシングのシリンダブロックより軸線方向他方に形成され且つ複数のシリンダボアに重なるように配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に相対回転不能に配置され、複数のシリンダボアが形成されるシリンダブロックと、
前記複数のシリンダボアの各々に挿入される複数のピストンと、
軸線まわりに回転可能に前記ケーシング内に収容され、前記ピストンの各々を往復運動させる回転斜板と、を備え、
前記ケーシングは、前記複数のシリンダボアの各々が繋がる環状の吸入通路を含み、
前記吸入通路は、前記ケーシングの前記シリンダブロックより軸線方向他方に形成され、軸線方向に見て前記複数のシリンダボアに重なっている、回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項2】
前記複数のピストンのうち少なくとも1つの前記ピストンの有効ストローク長を変える可変容量機構を更に備え、
前記可変容量機構は、前記シリンダボアとタンクとの間を開閉する複数のスプールを含み、
前記シリンダブロックは、前記複数のスプールの各々が挿入される複数のスプール孔を含み、
前記複数のスプール孔の各々は、前記複数のシリンダボアの内側に配置され、前記吸入通路に繋がっている、請求項1に記載の回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項3】
前記吸入通路は、吸入側環状部と、複数の連通部と、連通室と、を有し、
前記吸入側環状部は、環状に形成され、軸線方向に見て前記複数のシリンダボアに重なるように配置され、
前記複数の連通部の各々は、前記吸入側環状部に繋がり、
前記連通室は、軸線方向に見て前記複数のスプール孔に重なるように前記吸入側環状部の内側に配置され、前記複数の連通部を介して前記吸入側環状部に繋がっている、請求項2に記載の回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項4】
前記吸入通路は、作動液を吸入する複数の吸入ポートを有している、請求項1乃至3の何れか1つに記載の回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項5】
前記ケーシングは、前記複数のシリンダボアの各々が繋がる吐出通路を含み、
前記吐出通路は、環状に形成されている、請求項1乃至4の何れか1つに記載の回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項6】
前記吐出通路は、前記吸入通路に対して軸線方向にずれている、請求項5に記載の回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項7】
前記吐出通路は、前記複数のシリンダボアを外側から囲んでいる、請求項5又は6に記載の回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項8】
前記吐出通路は、前記吸入通路より大径に形成されている、請求項7に記載の回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項9】
前記吐出通路は、吐出側環状部と、複数の吐出側分岐部とを有し、
前記吐出側環状部は、環状に形成され且つ前記複数のシリンダボアを外側から囲み、
前記複数の吐出側分岐部の各々は、前記複数のシリンダボアの各々から前記吐出側環状部に向かって延びている、請求項7又は8に記載の回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項10】
前記複数の吐出側分岐部の各々は、前記シリンダボアから径方向外方に延在し、更に屈曲して前記吐出側環状部に向かって軸線方向に延びている、請求項9に記載の回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項11】
前記複数の吐出側分岐部の各々に設けられ、前記シリンダボアから前記吐出側環状部への一方向の作動液の流れを許容し、逆方向の流れを阻止する複数の吐出チェック弁を更に備え、
前記複数の吐出チェック弁の各々は、軸線方向において、前記吐出側環状部と前記吸入通路との間に配置されている、請求項9又は10に記載の回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項12】
前記吐出通路は、作動液を吐出する吐出ポートと、前記吐出側環状部と前記吐出ポートとを繋ぐ合流部と、を含み、
前記合流部は、複数のシリンダボアの各々から吐出される作動液の脈動が互いに打ち消し合う位置に配置されている、請求項9又は10の何れか1つに記載の回転斜板式液圧ポンプ。
【請求項13】
ケーシングと、
前記ケーシング内に相対回転不能に配置され、複数のシリンダボアが形成されるシリンダブロックと、
前記複数のシリンダボアの各々に挿入される複数のピストンと、
軸線まわりに回転可能に前記ケーシング内に収容され、前記ピストンの各々を往復運動させる回転斜板と、を備え、
前記ケーシングは、前記複数のシリンダボアの各々に繋がる吐出通路を含み、
前記吐出通路は、前記複数のシリンダボアを囲むように環状に形成されている、回転斜板式液圧ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転斜板を回転させることによって複数のピストンを往復運動させる回転斜板式液圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンポンプとして、例えば特許文献1のような回転斜板式のピストンポンプが知られている。特許文献1のピストンポンプでは、回転斜板が回転するとピストンが往復運動する。これにより、圧油がピストンポンプから吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のピストンポンプでは、吸入口が複数の吸入室を介してシリンダ室に繋がっている。複数の吸入室は、シリンダブロックに形成されている。それ故、シリンダブロックが大型化し、回転斜板式のピストンポンプが大型化に繋がる。
【0005】
そこで本発明は、コンパクトに形成することができる回転斜板式液圧ポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転斜板式液圧ポンプは、ケーシングと、前記ケーシング内に相対回転不能に配置され、複数のシリンダボアが形成されるシリンダブロックと、前記複数のシリンダボアの各々に挿入される複数のピストンと、軸線まわりに回転可能に前記ケーシング内に収容され、前記ピストンの各々を往復運動させる回転斜板と、を備え、前記ケーシングは、前記複数のシリンダボアの各々が繋がる環状の吸入通路を含み、前記吸入通路は、前記ケーシングの前記シリンダブロックより軸線方向他方に形成され、軸線方向に見て前記複数のシリンダボアに重なっているものである。
【0007】
本発明に従えば、吸入通路がケーシングにおいてシリンダブロックより軸線方向他方に形成され、軸線方向に見て前記複数のシリンダボアに重なっている。それ故、径方向において吸入通路をコンパクトに形成することができる。これにより、回転斜板式液圧ポンプをコンパクトに形成することができる。また、吸入通路が軸線方向に見て環状に形成され且つ複数のシリンダボアに重なるように配置されているので、ケーシングのシリンダブロックより軸線方向他方側の部分を吸入通路のために広く使用することができる。それ故、吸入通路の流路面積を確保することができる。これにより、吸入通路を流れる作動液に生じる動力損失を低減することができる。
【0008】
本発明の回転斜板式液圧ポンプは、ケーシングと、前記ケーシング内に相対回転不能に配置され、複数のシリンダボアが形成されるシリンダブロックと、前記複数のシリンダボアの各々に挿入される複数のピストンと、軸線まわりに回転可能に前記ケーシング内に収容され、前記ピストンの各々を往復運動させる回転斜板と、を備え、前記ケーシングは、前記複数のシリンダボアの各々に繋がる吐出通路を含み、前記吐出通路は、前記複数のシリンダボアを囲むように環状に形成されているものである。
【0009】
本発明に従えば、吐出通路は、環状に形成されている。それ故、複数のシリンダボアに繋がる吐出通路を容易に形成することができる。また、吐出通路は、複数のシリンダボアを外側から囲んでいる。それ故、吐出通路を流れる作動液によってシリンダボアを外側から冷却することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転斜板式液圧ポンプをコンパクトに形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の回転斜板式液圧ポンプを示す断面図である。
【
図2】
図1に示す切断線II-IIで回転斜板式液圧ポンプを切断して示す断面図である。
【
図3】
図1に示す切断線III-IIIで回転斜板式液圧ポンプを切断して示す断面図である。
【
図4】
図1に示す切断線IV-IVで回転斜板式液圧ポンプを切断して示す断面図である。
【
図5】
図1に示す切断線V-Vで回転斜板式液圧ポンプを切断して示す断面図である。
【
図6】
図3に示す領域Xを拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態の回転斜板式液圧ポンプ1について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する回転斜板式液圧ポンプ1は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0013】
<回転斜板式液圧ポンプ>
図1に示す回転斜板式液圧ポンプ(以下、「ポンプ」という)1は、ショベルやクレーン等の建設機械、フォークリフト等の産業機械、トラクター等の農業機械、及びプレス機等の油圧機械等、様々な機械に備わっている。本実施形態において、ポンプ1は、回転斜板式であって可変容量形の液圧ポンプである。ポンプ1は、ケーシング11と、シリンダブロック12と、回転斜板13と、複数のピストン14と、可変容量機構15と、を備えている。また、ポンプ1は、複数の吸入チェック弁16と、複数の吐出チェック弁17と、直動アクチュエータ18とを備えている。ポンプ1は、駆動源(例えばエンジン、電動機、又はその両方)によって駆動されることによって作動液を吐出する。
【0014】
<ケーシング>
ケーシング11は、シリンダブロック12と、回転斜板13と、複数のピストン14と、可変容量機構15とを収容している。ケーシング11は、後で詳述する吸入通路21及び吐出通路22を含んでいる。ケーシング11は、筒状の部材であって、所定の軸線L1に沿って延在している。
【0015】
<シリンダブロック>
シリンダブロック12は、ケーシング11内に相対回転不能に配置されている。より詳細に説明すると、シリンダブロック12は、ケーシング11に固定されている。本実施形態において、シリンダブロック12は、ケーシング11の軸線方向中間部分に一体的に形成されている。但し、シリンダブロック12は、ケーシング11と別体であってもよい。なお、別体の場合、シリンダブロック12は、例えば、圧入、スプライン結合、キー結合、締結、又は接合によってケーシング11に固定される。シリンダブロック12には、一端面12aにて開口する複数のシリンダボア12bが形成されている。なお、一端面12aは、シリンダブロック12の軸線方向一方側の端面である。シリンダブロック12には、複数のスプール孔12c、複数の連通路12d、及び軸挿通孔12eが形成されている。シリンダブロック12には、同数のシリンダボア12bとスプール孔12cとが形成されている。本実施形態において、シリンダブロック12には、9本のシリンダボア12b及びスプール孔12cが形成されている。但し、シリンダボア12b及びスプール孔12cの数は、9本に限定されない。
【0016】
シリンダボア12bの各々は、軸線L1の周りに周方向に間隔をあけて配置されている。シリンダボア12bは、一端面12aから他端面12fに向かって軸線方向に延在している。なお、他端面12fは、シリンダブロック12の軸線方向他方側の端面である。シリンダボア12bは、シリンダブロック12の他端面12fに吸入側口12gを有している。
【0017】
スプール孔12cの各々は、軸線L1の周りに周方向に間隔をあけて配置されている。スプール孔12cの各々は、シリンダボア12bの径方向内側に配置されている。より詳細に説明すると、シリンダブロック12は、後述するように一端面12aにおいて軸線L1の周りに軸挿通孔12eを有している。スプール孔12cは、軸挿通孔12eの周りに互いに間隔をあけて配置されている。また、スプール孔12cは、シリンダボア12bの各々と対応付けられている。スプール孔12cは、対応するシリンダボア12bに対して径方向内方に配置されている。スプール孔12cは、シリンダブロック12の他端面12fにおいて排出口12iを有している。スプール孔12cは、シリンダボア12bの容量の一部を逃すためのものである。例えば、スプール孔12cの径は、シリンダボア12bの径よりも小さい。
【0018】
連通路12dの各々は、互いに対応するシリンダボア12bとスプール孔12cとを繋いでいる。連通路12dは、径方向に延びている。連通路12dは、シリンダブロック12において他端面12f側に位置している。
【0019】
軸挿通孔12eは、シリンダブロック12において軸線L1に沿って形成されている。軸挿通孔12eは、一端面12aから他端面12fまでシリンダブロック12を軸線方向に貫通している。
【0020】
<回転斜板>
回転斜板13は、回転斜板側傾斜面13aを含んでいる。回転斜板13は、軸線L1まわりに回転可能にケーシング11内に収容されている。より詳細に説明すると、回転斜板13は、ケーシング11内において軸線方向一方側に収容されている。回転斜板13は、軸線L1に沿って延在している。回転斜板13は、軸線L1を中心に回転可能にケーシング11に支持されている。回転斜板13は、シリンダブロック12の一端面12aに面するように配置されている。回転斜板13の一端側部分は、ケーシング11の軸線方向一方側の端面、即ちケーシング11の一端から突出している。回転斜板13の一端側部分は、軸線方向一方側の部分において前述する駆動源に連結されている。そして、回転斜板13は、駆動源によって回転駆動される。回転斜板13は、回転することによって後で詳述するピストン14を往復運動させる。本実施形態において、回転斜板13について、回転斜板側傾斜面13aを有する円板部分と、回動可能に支持される軸部分とが一体的に形成されているが、円板部分と軸部分とは別体で形成されてもよい。
【0021】
回転斜板側傾斜面13aは、回転斜板13の他端側に形成される面である。回転斜板側傾斜面13aは、シリンダブロック12の一端面12aに面している。回転斜板側傾斜面13aは、第1直交軸L2を中心にシリンダブロック12の一端面12aの方に傾倒している。第1直交軸L2は、軸線L1に直交する軸である。本実施形態において、回転斜板側傾斜面13aの傾倒角度は固定されている。
【0022】
<ピストン>
複数のピストン14は、シリンダブロック12のシリンダボア12bの各々に挿入されている。即ち、シリンダブロック12には、シリンダボア12bと同数のピストン(本実施形態において9つのピストン)14が挿入されている。ピストン14の各々は、回転斜板13が回転することによってシリンダボア12bを往復運動する。より詳細に説明すると、ピストン14は、回転斜板側傾斜面13aに当接しており、ピストン14に対して回転斜板側傾斜面13aが摺動する。回転斜板13が回転すると、ピストン14が回転斜板側傾斜面13aの傾倒角度に応じたストローク量でシリンダボア12bを往復運動する。なお、ピストン14は、本実施形態においてシュー23を介して回転斜板側傾斜面13aに当接している。シュー23の各々は、押え板24によって回転斜板側傾斜面13aに押え付けられている。これにより、回転斜板13が回転すると、シュー23を介してピストン14が軸線方向一方及び他方に往復運動させられる。
【0023】
<可変容量機構>
可変容量機構15は、
図1に示すように、複数のスプール25と、複数のばね26と、斜板回転軸27とを含んでいる。本実施形態において、可変容量機構15は、スプール孔12cと同数、即ち9つのスプール25及びばね26を含んでいる。可変容量機構15は、ピストン14の各々の有効ストローク長Sを調整する。本実施形態では、可変容量機構15は、シリンダボア12bの開閉を調整して、ピストン14の有効ストローク長Sを変える。有効ストローク長Sを変えることにより、可変容量機構15は、ポンプ1の吐出容量を変える。
【0024】
より詳細に説明すると、可変容量機構15は、ピストン14が下死点から上死点に向かってストロークする際に(即ち、ポンプ1の吐出工程において)、スプール孔12cと吸入通路21とを経由して、シリンダボア12bをタンク19との間の開閉を調整する。これにより、可変容量機構15は、ピストン14の各々の有効ストローク長Sを調整する。但し、可変容量機構15は、全てのピストン14の有効ストローク長Sを調整するものに限定されない。なお、上述の上死点はピストン14が最も軸線方向他方側に位置する点であり、下死点はピストン14が最も軸線方向一方側に位置する点である。
【0025】
<スプール>
スプール25の各々は、シリンダボア12bの各々に対応させて配置されている。スプール25は、対応するシリンダボア12bを開閉する。より詳細に説明すると、スプール25は、往復運動することによって対応するシリンダボア12bとタンク19との間を開閉する。スプール25は、吐出工程においてシリンダボア12bとタンク19との間の開閉を調整する。スプール25の各々は、ばね26によって、後述する斜板回転軸27へ付勢されている。
【0026】
<斜板回転軸>
斜板回転軸27は、回転斜板13に連動するように回転する。また、斜板回転軸27は、回転することによってスプール25の各々を往復運動させる。これにより、シリンダボア12bとタンク19との間が開閉される。本実施形態において、連通路12dが開閉される。また、斜板回転軸27は、スプール25の各々の開閉位置を変えることができる。スプール25の各々の開閉位置は、スプール25の各々が連通路12dを開き始める位置及び閉じる位置である。
【0027】
より詳細に説明すると、斜板回転軸27は、斜板回転軸側傾斜面27aを有している。斜板回転軸27は、シリンダブロック12の軸挿通孔12eに挿通され且つ軸線L1に沿って延在している。斜板回転軸27の軸線方向一端側部分は、軸挿通孔12eから回転斜板13に向かって突き出ている。斜板回転軸27の軸線方向一端部分は、回転斜板13に相対回転不能に連結されている。それ故、斜板回転軸27は、回転斜板13に連動するように軸線L1まわりに回転する。斜板回転軸27の軸線方向他端部分もまた軸挿通孔12eから後述する吸入通路21へ突き出ている。
【0028】
斜板回転軸側傾斜面27aは、斜板回転軸27において軸線方向中間部分に位置している。斜板回転軸側傾斜面27aは、シリンダブロック12の他端に面するように配置されている。より詳細に説明すると、斜板回転軸側傾斜面27aは、スプール孔12cの各々の排出口12iに面している。斜板回転軸側傾斜面27aは、第1直交軸L2に平行する第2直交軸L3を中心に傾倒している。第2直交軸L3もまた軸線L1に直交する軸である。本実施形態において、斜板回転軸側傾斜面27aは、回転斜板側傾斜面13aと同じ方向、即ち第2直交軸L3を中心に時計回り方向に傾倒している。斜板回転軸側傾斜面27aの傾倒角度は固定されている。斜板回転軸側傾斜面27aには、ばね26によって付勢されるスプール25の軸線方向他端が当接している。斜板回転軸側傾斜面27aがスプール25に対して摺動回転する。それ故、斜板回転軸27が回転すると、斜板回転軸側傾斜面27aの傾倒角に応じたストロークでスプール25がスプール孔12cにおいて往復運動する。
【0029】
斜板回転軸側傾斜面27aは、軸線方向に進退することができる。斜板回転軸側傾斜面27aは、進退することによってシリンダボア12bとタンク19との間の開閉を調整する。より詳細に説明すると、斜板回転軸側傾斜面27aは、進退することによってスプール25による開閉位置を調整する。斜板回転軸27には、軸線方向他端部に直動アクチュエータ18が接続されている。なお、直動アクチュエータ18は、電気式及び油圧式の何れの直動アクチュエータであってもよい。斜板回転軸側傾斜面27aは、直動アクチュエータ18によってシリンダブロック12の他端面12fに近接及び離反するように進退することができる。これにより、シリンダボア12bにおけるスプール25の死点位置(より詳しくは、死点の軸線方向位置)を変えることができる。例えば、斜板回転軸側傾斜面27aが軸線方向一方に前進することによって、シリンダボア12bにおけるスプール25の死点位置が軸線方向一方側にずれる。他方、斜板回転軸側傾斜面27aが軸線方向他方に後退することによって、シリンダボア12bにおけるスプール25の死点位置が軸線方向他方にずれる。それ故、シリンダボア12bにおけるスプール25による開閉位置を軸線方向にずらすことができる。
【0030】
ピストン14の有効ストローク長Sは、シリンダボア12bから作動液を吐出可能なストロークの範囲である。それ故、スプール25による開閉位置を軸線方向にずらすことによって、ピストン14の有効ストローク長Sを変えることができる。従って、斜板回転軸側傾斜面27aを軸線方向に進退させることによってシリンダボア12bにおける吐出容量を変えることができる。
【0031】
<吸入通路>
図1~
図3に示すように吸入通路21は、複数の吸入ポート21aと、複数の吸入側環状部21bと、複数の連通部21cと、連通室21dとを有している。吸入通路21は、ケーシング11においてシリンダブロック12より軸線方向他方に形成されている。吸入通路21は、タンク19に繋がると共に、シリンダボア12bに繋がっている(
図1参照)。吸入通路21を介して、タンク19からシリンダボア12bへ作動液が吸入される。
【0032】
吸入通路21は、軸線方向に見て環状に形成されている。ここでは、吸入通路21は、軸線L1を中心とする円環状に形成されている。吸入通路21は、斜板回転軸27を囲んでいる。吸入通路21は、軸線方向に見てシリンダボア12bの各々に重なる。そして、吸入通路21は、軸方向からシリンダボア12bへ接続される。より詳細に説明すると、吸入通路21は、軸線方向に見てシリンダボア12bの吸入側口12gの各々に重なる。この吸入側口12gを介して、吸入通路21は、シリンダボア12bに接続される。
【0033】
吸入通路21は、軸線方向に見てスプール孔12cの各々にも重なる。より詳細に説明すると、吸入通路21は、軸線方向に見てスプール孔12cの排出口12iの各々に重なる。排出口12iの各々は、吸入通路21を介してタンク19に繋がっている。
【0034】
複数の吸入ポート21aは、タンク19に繋がっている(
図1参照)。
図2に示すように、ケーシング11の外周面に、2つの吸入ポート21aが形成されている。なお、ケーシング11に形成される吸入ポート21aの数は、2つに限定されず、1つ又は3つ以上であってもよい。吸入ポート21aの各々は、ケーシング11の外周面であって軸線方向他端側に形成されている。複数の吸入ポート21aは、軸線方向に見て周方向に等間隔をあけて配置されている。本実施形態では、2つの吸入ポート21aが180度の間隔をあけて配置されている。
【0035】
図2及び
図3に示すように吸入側環状部21bは、軸線方向に見て環状に形成されている。ここでは、吸入側環状部21bは、軸線L1を中心とする円環状に形成されている。吸入側環状部21bは、
図3に示すように、シリンダブロック12の他端面12fまで形成されている。本実施形態では、シリンダブロック12の他端面12fが、吸入側環状部21b(即ち、吸入通路21)に面している。吸入側環状部21bは、軸線方向に見てシリンダボア12bの各々に重なっている。より詳細に説明すると、軸線方向に見て、吸入側環状部21bが、シリンダボア12bの吸入側口12gの各々と重なっており、吸入側環状部21bにシリンダボア12bの吸入側口12gの各々が臨んでいる。本実施形態では、他端面12fに隣接する位置おいて、吸入側環状部21bの外径部分は、シリンダボア12bの径方向外側まで拡がっている。吸入側環状部21bの内径部分は、シリンダボア12bの形状に合わせて形成されている。吸入側環状部21bには、軸線方向に見て周方向に等間隔をあけて複数の通路部21eが形成されている。通路部21eの各々は、吸入ポート21aの各々に対応させて配置されている。本実施形態において、通路部21eは、吸入側環状部に2つ形成されている。吸入側環状部21bは、通路部21eの各々を介して吸入ポート21aの各々に接続されている。吸入側環状部21bの外径及び内径は、軸線方向他方側の部分において同径状に形成され、軸線方向中間部分から軸線方向一方側に進むにつれて径方向内側に縮径している。それ故、吸入された作動液をシリンダボア12bに円滑に導くことができる。
【0036】
連通部21cの各々は、吸入側環状部21bに繋がっている。ケーシング11には、スプール孔12cと同数の連通部21cが形成されている。但し、連通部21cの数は、スプール孔12cと同数に限定されない。連通部21cの各々は、軸線方向に見て吸入側環状部21bからスプール孔12cに向かって延在している。より詳細に説明すると、連通部21cは、スプール孔12cの排出口12iから径方向外側に延びるように放射状に配置されている。
【0037】
連通室21dは、軸線方向に見て環状に形成されている。より詳細に説明すると、連通室21dは、軸線L1を中心とする円環状であって斜板回転軸27の周りに位置している。連通室21dは、スプール孔12cの各々に重なるように吸入側環状部21bの内側に配置されている。より詳細に説明すると、連通室21dは、スプール孔12cの排出口12iに重なるように吸入側環状部21bの内側に配置されている。連通室21dの外径部分は、軸線方向に見てスプール孔12cに外接するように形成されている。連通室21dは、連通部21cに繋がっており、連通部21cを介して吸入側環状部21bに繋がっている。
【0038】
<吐出通路>
図1、
図4、及び
図5に示すように吐出通路22は、吐出側環状部22aと、複数の吐出側分岐部22bと、吐出ポート22cと、合流部22dと、を有している。吐出通路22は、ケーシング11において軸線方向中間部分に形成されている。吐出通路22は、
図5に示すように環状に形成されている。より詳細に説明すると、吐出通路22は、ケーシング11において円環状に形成され、複数のシリンダボア12bを外側から囲んでいる。本実施形態において、吐出通路22は、吸入通路21より大径に形成されている(
図2の点線参照)。ここでは、少なくとも吐出通路22の最外周径が、吸入通路21の最外周径よりも大径に形成されている。吐出通路22は、シリンダボア12bの各々に繋がっている。ポンプ1は、吐出通路22及び吐出ポート22cを介して、作動液を吐出する。
【0039】
吐出側環状部22aは、
図5に示すように軸線方向に見て環状に形成されている。ここでは、吐出側環状部22aは、軸線L1を中心とする円環状に形成されている。吐出側環状部22aは、複数のシリンダボア12bを外側から囲んでいる。吐出側環状部22aは、吸入側環状部21bより大径に形成されている(
図2の点線参照)。吐出側環状部22aは、ケーシング11において連通路12dより軸線方向一方側に形成されている。より詳細に説明すると、軸線方向において吐出側環状部22aと吸入側環状部21bとの間に後で詳述する複数の吐出チェック弁17が配置されている。
【0040】
複数の吐出側分岐部22bは、シリンダボア12bの各々から吐出側環状部22aに向かって延びている。複数の吐出側分岐部22bは、ケーシング11においてシリンダボア12bと同数形成されている。吐出側分岐部22bの各々は、シリンダボア12bの各々に対応付けられている。吐出側分岐部22bは、対応するシリンダボア12bから径方向外側に延びている。また、吐出側分岐部22bは、径方向に延び、更に屈曲して吐出側環状部22aに向かって軸線方向一方に延びている。吐出側分岐部22bは、吐出側環状部22aにおいて周方向に互いに等間隔をあけた位置にて繋がっている。
【0041】
吐出ポート22cは、作動液を吐出させる。本実施形態において、吐出ポート22cは、ケーシング11において1つである。但し、吐出ポート22cは、複数であってもよい。吐出ポート22cは、例えば液圧アクチュエータに接続されている。吐出ポート22cは、ケーシング11の外周面であって軸線方向中間部分に形成されている。本実施形態において、吐出ポート22cは、軸線方向に見て2つの吸入ポート21aの各々に対して周方向に90度ずらして配置されている。即ち、軸線L1を中心とした周方向において、吐出ポート22cと吸入ポート21aとは、位置が異なっている。なお、
図1では、説明の便宜上、吐出ポート22cと一方の吸入ポート21aとが周方向において同じ位置に配置されている。
【0042】
合流部22dは、吐出側環状部22aと吐出ポート22cとを繋いでいる。合流部22dは、複数のシリンダボア12bの各々から吐出される作動液の脈動が互いに打ち消し合う位置に配置されている。より詳細に説明すると、合流部22dは、吐出側環状部22aにおいて吐出側分岐部22bの何れかと、軸線L1を中心とした周方向において同じ位置にて繋がっている。ここで、同じ位置は完全に同じ位置に限定されない。例えば、合流部22d及び吐出側分岐部22bの各々の少なくとも一部が互いに径方向に重なっていればよい。同じ位置に繋がる吐出側分岐部22bから流れてくる作動液は、直接合流部22dに流れる。他方、他の8つの吐出側分岐部22bの各々から吐出側環状部22aに導かれた作動液は、吐出側環状部22aにおいて時計回り及び反時計回りに分岐して流れた後、合流部22dにて合流する。これにより、合流する際に作動液の脈動が互いに打ち消し合う。なお、合流部22dの位置は、前述の記載に限定されない。例えば、吐出ポート22c及び合流部22dは、ケーシング11に複数あってもよい。例えば、合流部22dの各々は、吐出側分岐部22bの幾つかと軸線L1を中心とした周方向において同じ位置にて繋がる。残りの吐出側分岐部22bは、合流部22dに対して180度ずれた位置に位置しないように配置される。
【0043】
<吸入チェック弁>
吸入チェック弁16の各々は、
図1に示すようにシリンダボア12bの各々に設けられている。即ち、吸入チェック弁16は、本実施形態においてシリンダボア12bと同数、つまり9本ある。より詳細に説明すると、吸入チェック弁16の各々は、シリンダボア12bに対して軸線方向他方側から挿入されている。本実施形態において、吸入チェック弁16は、
図3に示すように一端側部分を吸入側口12gに挿入させている。吸入チェック弁16の各々の他端側部分は、シリンダボア12bの吸入側口12gから吸入通路21、より詳細に説明すると吸入側環状部21bに突き出ている。吸入チェック弁16には、
図6に示すように内通路16bが形成されている。吸入側環状部21bは、内通路16bを介してシリンダボア12bに繋がっている。吸入チェック弁16の各々の内通路16bは、連通部21cの各々に開口している。それ故、吸入側環状部21bは、スプール孔12cと常時繋がっている。
【0044】
吸入チェック弁16は、
図1に示すように吸入側環状部21bとシリンダボア12bとの間をチェック弁体16aによって開閉する。より詳細に説明すると、吸入チェック弁16は、内通路16bをチェック弁体16aによって開閉する。これにより、吸入チェック弁16は、吸入通路21とシリンダボア12bとの間を開閉する。チェック弁体16aは、軸線方向に移動する。チェック弁体16aは、軸線方向に延在し、軸線方向他方側の部分がシリンダボア12bから突き出ている。チェック弁体16aの突出た部分にばね16cが設けられており、ばね16cによってチェック弁体16aが閉じる方向に付勢されている。ここでは、ばね16cは、吸入チェック弁16の弁座16dの上流側に配置されている。吸入チェック弁16は、開閉することによって吸入通路21からシリンダボア12bへの作動液の一方向の流れを許容し、逆方向の流れを阻止する。それ故、ピストン14が上死点から下死点に移動する吸入工程において、吸入通路21からシリンダボア12bへの作動液が流される。他方、ピストン14が吐出工程において、吸入通路21からシリンダボア12bへの作動液の流れが止められる。
【0045】
<吐出チェック弁>
複数の吐出チェック弁17の各々は、
図4に示すようにシリンダボア12bの各々に対して設けられている。即ち、吐出チェック弁17は、本実施形態において吐出側分岐部22bと同数、つまり9本ある。より詳細に説明すると、9つの吐出チェック弁17の各々は、吐出通路22の吐出側分岐部22bの各々に設けられている。本実施形態において、吐出チェック弁17の各々は、ケーシング11の外周面から各吐出側分岐部22bの径方向に延在する部分に挿入されている。吐出チェック弁17は、吐出通路22を開閉する。より詳細に説明すると、吐出チェック弁17は、吐出側分岐部22b(より詳しくは、径方向に延在する部分)をチェック弁体17aによって開閉する。これにより、吐出チェック弁17を吐出側環状部22aから離れた位置で吐出通路22を開閉することができる。それ故、吐出チェック弁17の開閉動作に関して、他のシリンダボア12bから吐出側環状部22aに導入される作動液の影響を受けることが抑制される。
【0046】
チェック弁体17aは、チェック弁体16aと異なる径方向に移動する。チェック弁体16aは、径方向に延在し、径方向外側の部分にばね17bが設けられている。ここでは、ばね17bは、吐出チェック弁17の弁座17cの下流側に配置されている。チェック弁体17aは、吐出工程において吐出通路22を開く。それ故、吐出チェック弁17は、吐出工程においてシリンダボア12bから吐出側環状部22a(又は吐出ポート22c)への一方向の作動液の流れを許容する。他方、吐出チェック弁17は、逆方向の流れを阻止する。それ故、吸入工程において、シリンダボア12bから吐出ポート22cへの作動液の流れが止められる。
【0047】
<ポンプの動作>
ここから、ポンプ1の動作が説明される。回転斜板13が駆動源により回転駆動されると、それに応じて各ピストン14がシリンダボア12bにおいて往復運動する。これにより、各ピストン14は、吸入工程において吸入通路21から吸入チェック弁16を介してシリンダボア12bに作動液を吸入する。より詳細に説明すると、吸入工程において、作動液は吸入ポート21aから通路部21eを介して吸入側環状部21bに吸入される。その後、作動液は、吸入側環状部21bから吸入チェック弁16を介してシリンダボア12bに作動液に導かれる。本実施形態では、2つの吸入ポート21aから吸入側環状部21bに作動液が吸入される。それ故、シリンダボア12bの各々と直近の吸入ポート21aとの間の距離のばらつきが抑えられる。そうすると、シリンダボア12bの各々に分配される作動液に生じる動力損失がシリンダボア12b毎にばらつくことが抑えられる。これにより、吸引力不足に起因する吸入チェック弁16の開不良が抑制される。
【0048】
各ピストン14は、吐出工程においてシリンダボア12bから吐出チェック弁17及び吐出通路22を介して作動液を吐出する。より詳細に説明すると、吐出工程においてシリンダボア12bの作動液がピストン14によって加圧されると、やがて吐出チェック弁17によって吐出通路22が開かれる。これにより、作動液がシリンダボア12bから吐出側分岐部22bを介して吐出側環状部22aに導かれる。吐出側環状部22aでは、作動液が吐出側分岐部22bの各々から軸線方向に見て時計回り方向及び反時計回り方向に分流される。その後、分流した作動液は、吐出ポート22cにて合流し、吐出ポート22cから吐出される。
【0049】
また、ポンプ1では、回転斜板13の回転に連動して斜板回転軸27が回転することによって、スプール25の各々がスプール孔12cにおいて対応するピストン14に同期するように往復運動する。そうすると、各ピストン14の吸入工程の途中で連通路12dが開かれ、また各ピストン14が吐出工程の途中において連通路12dが閉じられる。これにより、吐出工程において連通路12dが閉じられるまでの間(即ち、ピストン14が開ストローク長S2移動するまでの間)、シリンダボア12bと連通路12dとの間が連通する。連通路12dが閉じられるまでの間、シリンダボア12bから吐出ポート22cへの作動液の吐出が制限される。それ故、ピストン14の各々の有効ストローク長Sは、開ストローク長S2の分だけ実ストローク長S1より短くなり、ポンプ1は有効ストローク長Sに応じた吐出容量の作動液を吐出する。ポンプ1では、直動アクチュエータ18によって斜板回転軸側傾斜面27aが軸線方向に動かすことによって、スプール25の開閉位置が変えられる。これにより、各ピストン14の有効ストローク長Sが変えられるので、ポンプ1において吐出容量が増減する。
【0050】
本実施形態のポンプ1では、吸入通路21がケーシング11においてシリンダブロック12より軸線方向他方に形成され、軸線方向に見て複数のシリンダボア12bに重なっている。それ故、径方向において吸入通路21をコンパクトに形成することができる。これにより、ポンプ1をコンパクトに形成することができる。また、吸入通路21が軸線方向に見て環状に形成され且つ複数のシリンダボア12bに重なるように配置されているので、ケーシング11のシリンダブロック12より軸線方向他方側の部分を吸入通路21のために広く使用することができる。それ故、吸入通路21の流路面積を確保することができる。これにより、吸入通路21を流れる作動液に生じる動力損失を低減することができる。
【0051】
また、本実施形態のポンプ1では、スプール孔12cが吸入通路21に繋がっている。それ故、スプール孔12cに繋がる新たな通路を設ける必要がない。これにより、ケーシング11をコンパクトに形成することができる。
【0052】
更に、本実施形態のポンプ1では、連通室21dが吸入側環状部21bの内側に形成されている。それ故、吸入側環状部21bの内側を有効に活用することができる。
【0053】
更に、本実施形態のポンプ1では、ケーシング11の外周面に2つの吸入ポート21aが形成されている。それ故、吸入ポート21aの何れかから各シリンダボア12bまでの最短経路の差のばらつきを抑えることができる。これにより、吸入通路21を流れる作動液に生じる動力損失を低減することができる。
【0054】
更に、本実施形態のポンプ1では、吐出通路22が環状に形成されている。それ故、9つのシリンダボア12bの各々から吐出される作動液の脈動を互いに打ち消し合わせることができる。これにより、吐出される作動液の脈動の発生を抑えることができる。
【0055】
更に、本実施形態のポンプ1では、吐出通路22は、吸入通路21に対して軸線方向にずれている。それ故、吐出通路22及び吸入通路21を軸線方向に見て部分的に重ねることができる。これにより、径方向においてポンプ1をコンパクトに形成することができる。
【0056】
更に、本実施形態のポンプ1では、吐出通路22が9つのシリンダボア12bを外側から囲んでいる。それ故、吐出通路22を流れる作動液によってシリンダボア12bを外側から冷却することができる。
【0057】
更に、本実施形態のポンプ1では、吐出通路22が吸入通路21より大径に形成されている。即ち、吸入通路21は、軸線方向に見て吐出通路22と重なる又は径方向内側に配置される。それ故、吸入通路21が径方向においてコンパクトに形成される。これにより、ケーシング11をコンパクトに形成することができる。
【0058】
更に、本実施形態のポンプ1では、複数の吐出側分岐部22bの各々が複数のシリンダボア12bの各々から吐出側環状部22aに向かって延びている。それ故、複数のシリンダボア12bから径方向外方に離して吐出側環状部22aを形成することができる。
【0059】
更に、本実施形態のポンプ1では、吐出側分岐部22bがシリンダボア12bから径方向に延在し、更に屈曲して吐出側環状部22aに向かって軸線方向一方に延びている。それ故、吐出側環状部22aを吐出側分岐部22bの径方向に延在する部分から軸線方向一方に離して形成することができる。これにより、ポンプ1の強度を確保することができる。
【0060】
更に、本実施形態のポンプ1では、吐出チェック弁17が軸線方向において吐出側環状部22aと吸入側環状部21bとの間に配置されている。それ故、吐出側環状部22aと吸入側環状部21bとが離れて形成される。それ故、ポンプ1の強度を確保することができる。
【0061】
更に、本実施形態のポンプ1では、吐出ポート22cが複数のシリンダボア12bの各々から吐出される作動液の脈動が互いに打ち消し合う位置に配置されている。それ故、ポンプ1から吐出される作動液の脈動を抑えることができる。
【0062】
更に、本実施形態のポンプ1では、吐出通路22が環状に形成されている。それ故、複数のシリンダボア12bの各々から吐出される作動液の脈動を互いに打ち消し合わせることができる。これにより、吐出される作動液の脈動の発生を抑えることができる。また、吐出通路22は、複数のシリンダボア12bを外側から囲んでいる。それ故、吐出通路22を流れる作動液によってシリンダボア12bを外側から冷却することができる。
【0063】
<その他の実施形態>
本実施形態のポンプ1は、必ずしも可変容量機構15を備えている必要はない。可変容量機構15は、少なくとも1つのピストン14の有効ストローク長Sを変えることができればよい。また、ポンプ1における吸入通路21及び吐出通路22の形状は、一例に過ぎず、他の形状であってもよい。例えば、吸入通路21及び吐出通路22は、必ずしも両方が環状である必要はなく、吸入通路21及び吐出通路22の少なくとも一方が環状であればよい。吸入通路21及び吐出通路22の他方は、シリンダボア12b毎に個別に形成されてもよい。また、吸入通路21は、必ずしも連通室21dを有している必要はなく、連通部21cの各々が排出口12iの各々に繋がっていてもよい。更に、吐出通路22において、吐出側分岐部22bが必ずしも屈曲している必要はない。例えば、吐出側環状部22aが吐出側分岐部22bの径方向外側に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 回転斜板式液圧ポンプ
11 ケーシング
12 シリンダブロック
12a 一端面
12b シリンダボア
12c スプール孔
12f 他端面
13 回転斜板
14 ピストン
15 可変容量機構
19 タンク
21 吸入通路
21a 吸入ポート
21b 吸入側環状部
21c 連通部
21d 連通室
22 吐出通路
22a 吐出側環状部
22b 吐出側分岐部
22c 吐出ポート
25 スプール
27 斜板回転軸