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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151484
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20231005BHJP
   C10M 129/10 20060101ALI20231005BHJP
   C10M 129/76 20060101ALI20231005BHJP
   C10M 133/12 20060101ALI20231005BHJP
   C10M 137/02 20060101ALI20231005BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20231005BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M129/10
C10M129/76
C10M133/12
C10M137/02
C10N30:10
C10N40:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061108
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】398053147
【氏名又は名称】コスモ石油ルブリカンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和樹
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BA08A
4H104BB05C
4H104BB35C
4H104BE07C
4H104BH02C
4H104DA02A
4H104LA05
4H104PA20
(57)【要約】
【課題】酸化安定性に優れる潤滑油組成物の提供。
【解決手段】基油と、フェノール化合物、ナフチルアミン化合物、ジフェニルアミン化合物及びフォスファイト化合物を含有する酸化防止剤と、を含み、前記酸化防止剤全体の含有量に対する、前記フェノール化合物の含有量の比が、質量基準で0.05以上0.30以下である潤滑油組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と、
フェノール化合物、ナフチルアミン化合物、ジフェニルアミン化合物及びフォスファイト化合物を含有する酸化防止剤と、を含み、
前記酸化防止剤全体の含有量に対する、前記フェノール化合物の含有量の比が、質量基準で0.05以上0.30以下である潤滑油組成物。
【請求項2】
潤滑油組成物全体に対する、前記フェノール化合物の含有量が、0.05質量%以上0.5質量%以下である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記フェノール化合物が、下記式(A)で表されるヒンダードフェノール化合物である請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
【化1】

(上記式(A)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、Rは、炭素数1以上16以下のアルキル基である。)
【請求項4】
前記フォスファイト化合物が、下記式(D)で表される化合物である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【化2】

(式(D)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タービン、圧縮機、油圧機器等の機器に使用される潤滑油組成物は、例えば高温環境下で使用されるため、酸化劣化が生じやすい。そのため、潤滑油組成物の酸化安定性を向上するために様々な開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「粘度指数120以上の潤滑油基油と、フェニル-α-ナフチルアミンまたはその誘導体と、p,p’-ジアルキルジフェニルアミンまたはその誘導体と、粘度指数向上剤と、を含有することを特徴とする回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-162629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、潤滑油組成物の酸化安定性の更なる向上が望まれている。
本開示の課題は、酸化安定性に優れる潤滑油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1> 基油と、
フェノール化合物、ナフチルアミン化合物、ジフェニルアミン化合物及びフォスファイト化合物を含有する酸化防止剤と、を含み、
前記酸化防止剤全体の含有量に対する、前記フェノール化合物の含有量の比が、質量基準で0.05以上0.30以下である潤滑油組成物。
<2> 潤滑油組成物全体に対する、前記フェノール化合物の含有量が、0.05質量%以上0.5質量%以下である<1>に記載の潤滑油組成物。
<3> 前記フェノール化合物が、下記式(A)で表される化合物である<1>又は<2>に記載の潤滑油組成物。
【0007】
【化1】
【0008】
(上記式(A)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、Rは、炭素数1以上16以下のアルキル基である。)
【0009】
<4> 前記フォスファイト化合物が、下記式(D)で表される化合物である<1>~<3>のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【0010】
【化2】
【0011】
(式(D)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、酸化安定性に優れる潤滑油組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
なお、本明細書中、数値範囲を表す「~」は、その上限及び下限としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、「~」で表される数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も同じ単位であることを意味する。
【0014】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
<潤滑油組成物>
本開示に係る潤滑油組成物は、基油と、フェノール化合物、ナフチルアミン化合物、ジフェニルアミン化合物及びフォスファイト化合物を含有する酸化防止剤と、を含み、酸化防止剤全体の含有量に対する、フェノール化合物の含有量の比が、質量基準で0.05以上0.30以下である。
【0016】
本開示に係る潤滑油組成物は、上記構成により、酸化安定性に優れる。その理由は、定かではないが、酸化防止剤としてフェノール化合物、ナフチルアミン化合物、ジフェニルアミン化合物、及びフォスファイト化合物を組み合わせることで、各化合物が相互作用することで酸化防止剤の酸化防止能が向上したためと推測される。また、酸化防止剤全体の含有量に対する、フェノール化合物の含有量の比を、質量基準で0.05以上0.30以下とすることで、各化合物の相互作用がより強くなり酸化防止剤の酸化防止能がより向上すると推測される。
以下、本開示に係る潤滑油組成物について詳細に説明する。
【0017】
(基油)
本開示に係る潤滑油組成物は、基油を含有する。
基油としては、特に制限はなく、鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油、これらの混合物が挙げられる。
鉱油系潤滑油基油としては、例えば、原油の潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製、水素化分解精製、水素化脱蝋などの精製法を適宜組合せて精製したものが挙げられる。
合成系潤滑油基油としては、例えば、α-オレフィンオリゴマー;メタン等の天然ガス等を原料としてフィッシャー-トロプシュ合成によって得られたワックスを原料として製造される基油;等が挙げられる。
【0018】
基油の含有量としては、組成物の全質量に対して、97質量%~99.5質量%であることが好ましく、98質量%~99.5質量%であることがより好ましい。
【0019】
基油は、40℃における動粘度(40℃動粘度とも称する)が2mm/s~500mm/sであることが好ましく、2mm/s~60mm/sであることがより好ましい。
基油の40℃における動粘度が2mm/s以上であると、潤滑油としての潤滑性が得られ、500mm/s以下であると流動抵抗や攪拌抵抗が小さくなり、動力の損失などが抑制される。
【0020】
基油は、100℃における動粘度(100℃動粘度とも称する)が1mm/s~20mm/sであることが好ましく、2mm/s~10mm/sであることがより好ましい。
40℃動粘度及び100℃動粘度は、JIS K 2283:2000動粘度試験方法に基づいて測定した値である。
【0021】
(酸化防止剤)
本開示に係る潤滑油組成物は、酸化防止剤を含有する。
酸化防止剤は、フェノール化合物、ナフチルアミン化合物、ジフェニルアミン化合物及びフォスファイト化合物を含有する。
【0022】
潤滑油組成物全体の質量に対する、酸化防止剤の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上1.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0023】
-フェノール化合物-
フェノール化合物とは、ベンゼン環とフェノール性水酸基とを有する化合物である。
潤滑油組成物の酸化安定性を向上する観点から、フェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物であることが好ましい。
【0024】
ここでヒンダードフェノール化合物とは、ベンゼン環上の水素原子がtert(ターシャリー)-ブチル基等の嵩高い置換基により置換されたフェノール化合物である。
ヒンダードフェノール化合物に含まれる、嵩高い置換基としてはtert-ブチル基であることが好ましい。
潤滑油組成物の酸化安定性を向上する観点から、ヒンダードフェノール化合物のベンゼン環に結合するtert-ブチル基の個数は、ヒンダードフェノール化合物1分子当たり、1つ以上3つ以下であることが好ましく、1つ又は2つであることがより好ましく、2つであることが更に好ましい。
潤滑油組成物の酸化安定性を向上する観点から、ヒンダードフェノール化合物のベンゼン環に結合するtert-ブチル基は、フェノール性水酸基のオルト位に2つ存在することが好ましい。
【0025】
潤滑油組成物の酸化安定性を向上する観点から、ヒンダードフェノール化合物は、フェノール性水酸基のパラ位に置換基を有することが好ましい。
フェノール性水酸基のパラ位に存在する置換基としては、例えば、直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基;芳香族炭化水素基;-RA1-COO-RA2で表される基(RA1はアルキレン基であり、RA2はアルキル基である);などが挙げられる。
潤滑油組成物の酸化安定性を向上する観点から、ヒンダードフェノール化合物のフェノール性水酸基のパラ位に存在する置換基としては-RA1-COO-RA2で表される官能基であることが好ましい。
【0026】
フェノール化合物は、下記式(A)で表されるヒンダードフェノール化合物であることが好ましい。
【0027】
【化3】
【0028】
(上記式(A)中、Rは、炭素数1以上5以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、Rは、炭素数1以上25以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。)
【0029】
フェノール化合物として、上記式(A)で表されるヒンダードフェノール化合物を用いることで、潤滑油組成物の酸化安定性がより向上する。その理由は定かでないが、上記式(A)中のRで表されるアルキル基が、ナフチルアミン化合物、及びジフェニルアミン化合物との相互作用を強め、酸化防止能をより向上するためと推測される。
【0030】
で表されるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基などが挙げられる。
【0031】
潤滑油組成物の酸化安定性を向上する観点から、Rは、炭素数1以上4以下のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0032】
で表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、エチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチルヘプチル基、n-ノニル基、メチルオクチル基、エチルヘプチル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基などが挙げられる。
【0033】
潤滑油組成物の酸化安定性を向上する観点から、Rは、炭素数2以上20以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数4以上15以下のアルキル基であることがより好ましく、6以上10以下のアルキル基であることが更に好ましい。
【0034】
以下の表1に、一般式(A)で表されるヒンダードフェノール化合物の具体例を説明するが、これに限定されるものではない。
なお表1中、R及びRは、一般式(A)中のR及びRの具体例を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
フェノール化合物は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0037】
潤滑油組成物全体に対する、フェノール化合物の含有量が、0.05質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。
【0038】
潤滑油組成物全体に対する、フェノール化合物の含有量を0.05質量%以上0.5質量%以下とすることで、潤滑油組成物の酸化安定性がより向上する。その理由は定かでないが、フェノール化合物と、ナフチルアミン化合物、及びジフェニルアミン化合物との相互作用を強め、酸化防止能をより向上するためと推測される。
【0039】
潤滑油組成物全体に対する、フェノール化合物の含有量は、0.07質量%以上0.45質量%以下であることがより好ましく、0.10質量%以上0.40質量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
本開示に係る潤滑油組成物は、酸化防止剤全体の含有量に対する、フェノール化合物の含有量の比(すなわち、「フェノール化合物の含有量/酸化防止剤全体の含有量」)が、質量基準で0.05以上0.30以下である。
【0041】
酸化防止剤全体の含有量に対する、フェノール化合物の含有量の比は、質量基準で0.07以上0.30以下であることがより好ましく、0.08以上0.28以下であることが更に好ましく、0.08以上0.27以下であることが特に好ましい。
【0042】
-ナフチルアミン化合物-
ナフチルアミン化合物とは、ナフタレン環を有するアミンである。
ナフチルアミン化合物としては、例えば、下記一般式(B)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
【化4】
【0044】
一般式(B)中、Rは炭素数1以上16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。
【0045】
で表される直鎖又は分岐鎖のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、エチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチルヘプチル基、n-ノニル基、メチルオクチル基、エチルヘプチル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基などが挙げられる。
【0046】
は、好ましくは炭素数4以上8以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0047】
ナフチルアミン化合物としては、具体的には、オクチル化フェニルαナフチルアミン(一般式(B)におけるRがオクチル基である化合物)が挙げられる。
【0048】
ナフチルアミン化合物は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0049】
酸化防止剤全体の含有量に対する、ナフチルアミン化合物の含有量の比(すなわち、「ナフチルアミン化合物の含有量/酸化防止剤全体の含有量」)が、質量基準で0.05以上0.50以下であることが好ましく、0.10以上0.35以下であることがより好ましく、0.15以上0.31以下であることが更に好ましい。
【0050】
-ジフェニルアミン化合物-
ジフェニルアミン化合物は、2つのベンゼン環と結合するアミノ基を有するアミンである。
なお、ジフェニルアミン化合物が有する2つのベンゼン環は、それぞれ独立にアミノ基に結合する(言い換えると、2つのベンゼン環は縮合されていない状態で存在する)。
【0051】
ジフェニルアミン化合物としては、例えば、下記一般式(C)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【化5】
【0053】
一般式(C)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上16以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表す。
及びRは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0054】
及びRで表される直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、エチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチルヘプチル基、n-ノニル基、メチルオクチル基、エチルヘプチル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基などが挙げられる。
【0055】
及びRは、好ましくは水素原子又は炭素数3以上9以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又は炭素数4以上8以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。
【0056】
以下の表2に、一般式(C)で表されるジフェニルアミン化合物の具体例を説明するが、これに限定されるものではない。
なお表2中、R及びRは、一般式(C)中のR及びRの具体例を示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2中、ブチル基は、「n-ブチル基、イソブチル基、又はtert-ブチル基」を意味する。
表2中、オクチル基は、「n-オクチル基、イソオクチル基、又はtert-オクチル基」を意味する。
また、R及びRのベンゼン環上の置換位置は、アミノ基のオルト位、メタ位、及びパラ位のすべてを含む。
【0059】
上記のジフェニルアミン化合物は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0060】
酸化防止剤全体の含有量に対する、ジフェニルアミン化合物の含有量の比(すなわち、「ジフェニルアミン化合物の含有量/酸化防止剤全体の含有量」)が、質量基準で0.10以上0.80以下であることが好ましく、0.20以上0.70以下であることがより好ましく、0.30以上0.60以下であることが更に好ましい。
【0061】
-フォスファイト化合物-
本開示において、フォスファイト化合物とは、亜リン酸エステルを意味する。
フォスファイト化合物としては、公知のものを特に限定なく用いることができる。
フォスファイト化合物としては、例えば、トリス(2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート)フォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリステアリルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリイソオクチルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリクレジルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイトなどの亜燐酸トリアルキルエステル類;亜燐酸ジアルキルエステル類;亜燐酸モノアルキルエステル類;などが挙げられる。
【0062】
フォスファイト化合物としては、トリス(アルキルフェニル)フォスファイトが好ましい。
トリス(アルキルフェニル)フォスファイトとしては、下記式(D)で表される化合物が挙げられる。
【0063】
【化6】
【0064】
式(D)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基を示す。
式(D)におけるR及びRとしては、酸化安定性の観点から、炭素数2~6のアルキル基であることが好ましい。
【0065】
式(D)中、R及びRで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基などが挙げられる。
潤滑油組成物の酸化安定性を向上する観点から、式(D)中、R及びRで表されるアルキル基としては、tert-ブチル基であることが好ましい。
潤滑油組成物の酸化安定性を向上する観点から、これら式(D)で表されるトリス(アルキルフェニル)フォスファイトのうち、下記式(D-1)で表される化合物であることが好ましい。
【0066】
【化7】
【0067】
酸化防止剤全体の含有量に対する、フォスファイト化合物の含有量の比(すなわち、「フォスファイト化合物の含有量/酸化防止剤全体の含有量」)が、質量基準で0.05以上0.50以下であることが好ましく、0.10以上0.30以下であることがより好ましく、0.12以上0.20以下であることが更に好ましい。
【0068】
-その他の酸化防止剤-
酸化防止剤は、必要に応じて、フェノール化合物、ナフチルアミン化合物、及びジフェニルアミン化合物以外のその他の酸化防止剤を含有してもよい。
その他の酸化防止剤としては、例えば、フォスファイト化合物以外のリン系酸化防止剤(ジアルキルジチオリン酸亜鉛等)、硫黄系酸化防止剤、金属系酸化防止剤等が挙げられる。
【0069】
(その他の添加剤)
本開示に係る潤滑油組成物は、基油、及び酸化防止剤以外に、その他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加量としては、さび止め剤、腐食防止剤、流動点降下剤、極圧剤、金属不活性剤、油性剤、消泡剤、清浄分散剤などの一般的な潤滑油添加剤などが挙げられる。
【0070】
さび止め剤としては、例えば、脂肪族アミン類、有機スルホン酸金属塩、有機リン酸金属塩、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステルなどが挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。
流動点降下剤としては、例えば、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン等の流動点降下剤などが挙げられる。
極圧剤としては、例えば、リン系極圧剤、ホスフォロチオネートなどが挙げられる。リン系極圧剤としては、正リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステルが好ましく用いられる。
金属不活性剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール又はその誘導体等の金属不活性化剤などが挙げられる。
油性剤としては、例えば、エステル油性剤、アルコール油性剤、エーテル油性剤などが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、ポリアクリレート等のアクリレート系消泡剤、アルキルポリシロキサン等のシロキサン系消泡剤などの消泡剤が挙げられる。
清浄分散剤としては、スルフォネート、フェネート、サリシレート等の金属系清浄剤、コハク酸イミド等の無灰分散剤が挙げられる。
【0071】
<用途>
本開示に係る潤滑油組成物は、酸化安定性に優れるものであり、例えば様々な圧縮機において好適に使用することができる。
中でも、回転式圧縮機用潤滑油として非常に有用である。
【0072】
<潤滑油組成物の調製方法>
潤滑油組成物の調製方法としては、基油、酸化防止剤、に加え、必要に応じてその他の添加剤を適宜混合すればよい。
基油、酸化防止剤、及びその他の添加剤の混合順序は、特に制限されるものではなく、基油に順次混合してもよい。
【実施例0073】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0074】
<実施例1~6、比較例1~4>
基油、酸化防止剤、及びその他の添加剤を下記表3に示す配合割合(体積%、又は質量%)で混合して潤滑油組成物を調製した。
なお、表3中の基油の配合割合は、基油合計の体積に対する、基油成分1、基油成分2又は基油成分3の体積の割合を示す。
表3中の酸化防止剤の配合割合は、潤滑油組成物全体の質量に対する、各化合物の質量の割合を示す。
表3中のその他の添加剤の配合割合は、潤滑油組成物全体の質量に対する、各その他の添加剤の質量の割合を示す。
潤滑油組成物全体の質量に対する、基油の質量の割合は、潤滑油組成物中における酸化防止剤及びその他の添加剤以外の残分である。
【0075】
得られた潤滑油組成物をそれぞれ用いて下記の性能評価を行った。結果を表3に示す。
(酸化安定性:RPVOT試験)
日本工業規格JIS K2514-3(2013)に従い潤滑油酸化安定度試験(RPVOT)を実施した。表に記載した数字は圧力降下するのに要した時間(分)を表し、数値が大きいほど、酸化安定性が高いことを示す。
なお、1400分以上を合格とする。
【0076】
【表3】
【0077】
表3中の略称の詳細について以下に記載する。
(基油(BO))
・基油成分1:水素化分解鉱油(鉱油系潤滑油基油)
40℃動粘度:35.11mm/s、100℃動粘度:6.314mm/s、粘度指数:131、15℃における密度:0.843g/cm3
・基油成分2:水素化精製鉱油(鉱油系潤滑油基油)
40℃動粘度:15.46mm/s、100℃動粘度:3.511mm/s、粘度指数:105、15℃における密度:0.8517g/cm3
・基油成分3:水素化精製鉱油(鉱油系潤滑油基油)
40℃動粘度:32.25mm/s、100℃動粘度:5.577mm/s、粘度指数:111、15℃における密度:0.8599g/cm3
【0078】
(酸化防止剤)
・フェノール化合物:式(A)中、Rが炭素数2のアルキレン基であり、Rが炭素数8のアルキル基であるヒンダードフェノール化合物。具体的には、下記式(A-1)に示すヒンダードフェノール化合物
【0079】
【化8】
【0080】
・ナフチルアミン化合物:オクチル化フェニルαナフチルアミン
前記一般式(B)におけるRがオクチル基である化合物
・ジフェニルアミン化合物:アルキル化ジフェニルアミン
前記一般式(C)におけるR及びRがブチル基又はオクチル基の化合物の混合物
・フォスファイト化合物:トリス(2,4-t-ブチルフェニル)フォスファイト(すなわち式(D-1)で表される化合物)
【0081】
(その他の添加剤)
・流動点降下剤
・防錆剤
・金属不活性化剤
・消泡剤
【0082】
上記結果から、本実施例の潤滑油組成物は、酸化安定性に優れることがわかる。