(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151486
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】2液型硬化性組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/22 20060101AFI20231005BHJP
C08G 59/50 20060101ALI20231005BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231005BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231005BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08G59/22
C08G59/50
C08L63/00 C
C08K3/22
C08K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061110
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】398053147
【氏名又は名称】コスモ石油ルブリカンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 悟志
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD011
4J002CD101
4J002CD171
4J002DE076
4J002DE106
4J002DF016
4J002EH017
4J002FD016
4J002FD027
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD200
4J002GQ00
4J036AB01
4J036AB10
4J036AG04
4J036AG05
4J036AG06
4J036DC02
4J036DC03
4J036DC06
4J036DC10
4J036DC14
4J036FA03
4J036FA04
4J036FA10
4J036FA11
4J036HA11
4J036JA07
(57)【要約】
【課題】剥離性に優れる硬化物が得られる2液型硬化性組成物又は剥離性に優れる硬化物の提供。
【解決手段】2つのエポキシ基を有し、かつ、2つのエポキシ基の間に2価の脂肪族炭化水素基及びポリエーテル構造からなる群から選択される少なくとも1種を有するエポキシ化合物、反応性希釈剤、及び熱伝導性フィラーを含有するA液と、アミン化合物、可塑剤、及び、熱伝導性フィラーを含有するB液と、を含む2液型硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのエポキシ基を有し、かつ、2つのエポキシ基の間に2価の脂肪族炭化水素基及びポリエーテル構造からなる群から選択される少なくとも1種を有するエポキシ化合物、反応性希釈剤、及び熱伝導性フィラーを含有するA液と、
アミン化合物、可塑剤、及び、熱伝導性フィラーを含有するB液と、
を含む、
2液型硬化性組成物。
【請求項2】
前記エポキシ化合物のエポキシ当量が120以上1000以下である請求項1に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項3】
前記エポキシ化合物が、ダイマー酸変性エポキシ化合物及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1又は請求項2に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項4】
前記エポキシ化合物の25℃における粘度が20mPa・s以上2500mPa・s以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項5】
前記A液及び前記B液が含有する前記熱伝導性フィラーが、それぞれ独立に、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び窒化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2液型硬化性組成物及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話、Personal Digital Assistant;PDA等の電子機器、light emitting diode;LED、Electronic Luminescent;EL等の照明及び表示機器等の性能向上は著しく、それは演算素子や発光素子の著しい性能向上によっている。このような演算素子及び発光素子の性能向上に伴い発熱量も著しく増加し、電子機器、照明、表示機器における放熱をどのように行うかが重要な課題になっている。熱対策として、演算素子及び発光素子の発生する熱をロスすること無く放熱体に伝え、放熱体を通じて放熱するために、発熱体と放熱体との間にTIM(Thermal Interface Materials;熱伝導性材料)を設ける対策が取られている。放熱体としては、例えば、ヒートシンク等が知られ、発熱体としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、LSI(large-scale integration)等が知られている。TIMとして一般に用いられるものとして、放熱シート、熱伝導性グリース、ギャップフィラー等が知られており、初期がペースト状であり、塗布後に硬化して固体となるTIMであるギャップフィラーが注目されている。
【0003】
柔軟性、形状安定性、及び、熱伝導性に優れるギャップフィラーとして、例えば、特許文献1には、「半導体素子を保護するために、前記半導体素子の表面上に塗布して用いられる半導体素子保護用材料を混合によって得ることができる半導体素子保護用の2液混合型の第1,第2の液であり、前記第1の液及び前記第2の液は混合前の液であり、前記第1の液及び前記第2の液は混合して用いられ、前記第1の液及び前記第2の液が混合された混合物が、前記半導体素子保護用材料であり、前記第1の液が、可撓性エポキシ化合物と、可撓性エポキシ化合物とは異なるエポキシ化合物とを含み、前記第2の液が、23℃で液状である硬化剤と、硬化促進剤とを含み、前記第1の液及び前記第2の液の内の少なくとも一方が、熱伝導率10W/m・K以上であり、かつ球状である無機フィラーを含む、半導体素子保護用の2液混合型の第1,第2の液。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、剥離性に優れる硬化物が得られる2液型硬化性組成物又は剥離性に優れる硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 2つのエポキシ基を有し、かつ、2つのエポキシ基の間に2価の脂肪族炭化水素基及びポリエーテル構造からなる群から選択される少なくとも1種を有するエポキシ化合物、反応性希釈剤、及び熱伝導性フィラーを含有するA液と、
アミン化合物、可塑剤、及び、熱伝導性フィラーを含有するB液と、
を含む、
2液型硬化性組成物。
<2> 前記エポキシ化合物のエポキシ当量が120以上1000以下である<1>に記載の2液型硬化性組成物。
<3> 前記エポキシ化合物が、ダイマー酸変性エポキシ化合物及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種を含有する<1>又は<2>に記載の2液型硬化性組成物。
<4> 前記エポキシ化合物の25℃における粘度が20mPa・s以上2500mPa・s以下である<1>~<3>のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
<5> 前記A液及び前記B液が含有する前記熱伝導性フィラーが、それぞれ独立に、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び窒化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、剥離性に優れる硬化物が得られる2液型硬化性組成物又は剥離性に優れる硬化物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。
本開示中、数値範囲を表す「~」は、その上限及び下限としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、「~」で表される数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も同じ単位であることを意味する。
本開示において、組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0009】
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0010】
(2液型硬化性組成物)
本開示に係る2液型硬化性組成物は、2つのエポキシ基を有し、かつ、2つのエポキシ基の間に脂肪族炭化水素基及びポリエーテル構造からなる群から選択される少なくとも1種を有するエポキシ化合物(以下、柔軟性エポキシ化合物ともいう。)、反応性希釈剤、及び熱伝導性フィラーを含有するA液と、アミン化合物、可塑剤、及び、熱伝導性フィラーを含有するB液と、を含む。
【0011】
ギャップフィラーに適用可能な2液型硬化性組成物に対し、従来の2液型硬化性組成物に比し、剥離性に優れる硬化物が得られる2液型硬化性組成物が求められている。本開示に係る2液型硬化性組成物は、上記の組成を有するA液及びB液により構成されることにより、従来の2液型硬化性組成物に比し、剥離性に優れる硬化物が得られる。その理由は、次の通り推測される。
【0012】
本開示に係る2液型硬化性組成物のA液は、柔軟性エポキシ化合物、反応性希釈剤、及び熱伝導性フィラーを含有する。A液が柔軟性エポキシ化合物を含有することで、得られる硬化物の柔軟性が向上する。また、反応性希釈剤を含有することで、A液の粘度を低減しB液と混合しやすくするとともに、得られる硬化物の柔軟性がより向上しやすくなる。
本開示に係る2液型硬化性組成物のB液は、アミン化合物、可塑剤、及び、熱伝導性フィラーを含有する。アミン化合物は硬化剤として作用する。そして、可塑剤を含有することで、得られる硬化物の柔軟性がより向上しやすくなる。
以上のことから、本開示に係る2液型硬化性組成物は、上記の組成を有するA液及びB液により構成されることにより、従来の2液型硬化性組成物に比し、剥離性に優れる硬化物が得られる。
そして、A液及びB液がともに熱伝導性フィラーを含有することで得られる硬化物は良好な熱伝導性を示す。
【0013】
本開示において、「剥離性」は、本開示に係る2液型硬化性組成物から得られる硬化物を被着体から剥離する際の性能のことである。
被着体としては、本開示に係る2液型硬化性組成物から得られる硬化物と接触する任意のものが挙げられる。被着体としては、例えば、発熱体、放熱体などが挙げられる。
【0014】
そのため、本開示に係る2液型硬化性組成物は、剥離性に優れる硬化物が得られると推測される。
【0015】
以下、本開示に係る2液型硬化性組成物が含有する各成分について説明する。
【0016】
<A液>
本開示に係る2液型硬化性組成物はA液を含み、A液は、柔軟性エポキシ化合物、反応性希釈剤、及び熱伝導性フィラーを含有する。
【0017】
<<柔軟性エポキシ化合物>>
A液は、2つのエポキシ基を有し、かつ、2つのエポキシ基の間に2価の脂肪族炭化水素基及びポリエーテル構造からなる群から選択される少なくとも1種を有するエポキシ化合物(柔軟性エポキシ化合物)を含有する。柔軟性エポキシ化合物を含有することで、硬化物としたときの柔軟性が向上する。
なお、エポキシ基とは、3員の脂肪族環基を指す。
ポリエーテル構造とは、複数のエーテル結合を有する構造をいう。
【0018】
柔軟性エポキシ化合物は、2価の脂肪族炭化水素基、及びポリエーテル構造からなる群から選択される少なくとも1種を2つのエポキシ基の間に有していればよく、1分子中にその他の構造を有していてもよい。
【0019】
柔軟性エポキシ化合物に含まれる2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキレン基が挙げられる。
硬化物の剥離性の観点から、アルキレン基の炭素数は1以上30以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上7以下が更に好ましい。
【0020】
アルキレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン、n-へプタレン基などが挙げられる。
【0021】
柔軟性エポキシ化合物に含まれるポリエーテル構造としては、例えば、ポリオキシアルキレン基などが挙げられる。
【0022】
ポリオキシアルキレン基とは、以下の式(1)で表される基を意味する。
式(1)*-(OR1)m-*
式(1)中、R1は、アルキレン基を表す。mは、2以上の整数を表す。なお、*は、結合手を表す。
【0023】
R1で表されるアルキレン基は、炭素数2以上5以下のアルキレン基であることが好ましい。
mは、2以上22以下であることが好ましく、2以上15以下であることがより好ましく、2以上11以下であることが更に好ましい。
【0024】
硬化物の剥離性の観点から、柔軟性エポキシ化合物はダイマー酸変性エポキシ化合物及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0025】
ダイマー酸変性エポキシ化合物とは、エポキシ化合物(少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物)をダイマー酸構造中の少なくとも一つのカルボキシ基と反応させたものである。
ダイマー酸とは不飽和脂肪酸の二量体である。ダイマー酸の原料となる不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸が好ましい。ダイマー酸は、例えば、炭素数18の不飽和脂肪酸を主成分とする植物由来油脂の重合により得られる。ダイマー酸の構造は、環状、非環状のいずれでもよい。
ダイマー酸変性エポキシ化合物の市販品としては、三菱化学(株)製の「jER871」、「jER872」等が挙げられる。
【0026】
ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルとは、下記式(2)で表される化合物を意味する。
式(2) EP-CH2-(OR2)n-O-CH2-EP
式(2)中、R2は、アルキレン基を表す。nは、2以上の整数を表す。EPは、エポキシ基を表す。
【0027】
R2で表されるアルキレン基は、炭素数2以上5以下のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基であることがより好ましい。
nは、2以上22以下であることが好ましく、2以上15以下であることがより好ましく、2以上11以下であることが更に好ましい。
【0028】
ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルとしては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0029】
硬化物の剥離性の観点、及びA液の粘度の観点から、柔軟性エポキシ化合物のエポキシ当量は100以上1000以下であることが好ましく、120以上800以下であることがより好ましく、130以上700以下であることが更に好ましい。
柔軟性エポキシ化合物のエポキシ当量を上記数値範囲内とすることでA液の粘度が下がりやすくなり、B液と混合がしやすくなる。それにより得られる硬化物の柔軟性がより向上しやすくなる。
【0030】
エポキシ当量はISO3001(1991)に準じて測定される値である。
【0031】
A液の粘度の観点から、柔軟性エポキシ化合物の25℃における粘度は、20mPa・s以上2500mPa・s以下であることが好ましく、20mPa・s以上1500mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以上1000mPa・s以下であることが更に好ましい。
【0032】
柔軟性エポキシ化合物の25℃における粘度は、粘度計によって測定される値である。
粘度計としては、例えば、B型粘度計、DV-III ULTRA Brookfield社製が使用可能である。
【0033】
柔軟性エポキシ化合物の含有量としては、A液の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。
A液は柔軟性エポキシ化合物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0034】
<<反応性希釈剤>>
A液は、反応性希釈剤を含有する。反応性希釈剤を含有することで、A液の粘度を低減しB液と混合しやすくするとともに、得られる硬化物の柔軟性がより向上しやすくなる。
【0035】
反応性希釈剤は、一分子内に1つのエポキシ基、及び炭化水素基を有し、かつ、エポキシ基を分子の末端に有する化合物(以下、「希釈用エポキシ化合物」とも称する)である。
ここで、エポキシ基を分子の末端に有するとは、エポキシ基に1つの基が結合していることをいう。
【0036】
反応性希釈剤は、分子の末端に1つのエポキシ基及び炭化水素基を有していればよく、1分子中にその他の構造を有していてもよい。
【0037】
希釈用エポキシ化合物としては、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、イソブチルフェニルグリシジルエーテル、第3ブチルフェニルグリシジルエーテル、アルキル基の炭素数が12以上14以下のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、3級カルボン酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0038】
反応性希釈剤の含有量としては、A液の全質量に対して、1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、2質量%以上4質量%以下であることがより好ましい。
A液は柔軟性エポキシ化合物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0039】
<<熱伝導性フィラー>>
A液は、熱伝導性フィラーを含有する。
ここで熱伝導性フィラーとは、高い熱伝導率を有するフィラーをいう。熱伝導性フィラーとは、例えば、25℃における熱伝導率が5W/m・K以上のフィラーをいい、好ましくは10W/m・K以上のフィラーをいい、特に好ましくは30W/m・K以上のフィラーをいう。
熱伝導性フィラーの熱伝導率はレーザーフラッシュ法(JIS R1611:2010)によって測定される値である。
【0040】
A液及び後述のB液に含まれる熱伝導性フィラーは、同一の熱伝導性フィラーであってもよいし、それぞれ異なる熱伝導性フィラーであってもよいが、貯蔵安定性及び混合性の観点から、A液及び後述のB液に含まれる熱伝導性フィラーは、同一の熱伝導性フィラーであることが好ましい。
【0041】
熱伝導性フィラーが同一であるとは、元素の種類及び比率が全く同じものを指す。
【0042】
熱伝導性フィラーとしては、特に制限はなく、TIMに用いられる公知のフィラーを用いることができる。熱伝導性の観点からは、A液及びB液が含有する熱伝導性フィラーが、それぞれ独立に、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び窒化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化マグネシウム、及び窒化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0043】
-酸化マグネシウム-
熱伝導性フィラーとして用いられる酸化マグネシウムとしては、特に制限されず、熱伝導性フィラーとして通常用いられるMgOが挙げられる。
2液型硬化性組成物に含まれるA液は、酸化マグネシウムを1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
【0044】
酸化マグネシウムとしては、粒子の形態であることが好ましく、粘度と熱伝導性の両立の観点から、体積平均粒子径が10μm以上である粒子が好ましく、10μm~80μmである粒子がより好ましく、10μm~60μmである粒子が更に好ましい。
【0045】
体積平均粒子径は後述の方法により測定される値である。
【0046】
A液が酸化マグネシウムを含有する場合、組成物中に熱伝導性フィラーを高充填する観点から、体積平均粒子径が異なる酸化マグネシウムを2種以上含むことが好ましい。
【0047】
A液が体積平均粒子径の異なる酸化マグネシウムを2種以上含む場合、組成物中に熱伝導性フィラーを高充填する観点から、最小体積粒子径に対する最大体積平均粒子径の比が5倍以上であることが好ましい。
なお、最小体積粒子径及び最大体積平均粒子径は、後述の体積平均粒子径の測定において、得られる体積分布において求められる最小体積粒子径及び最大体積平均粒子径を示す。
【0048】
また、A液が酸化マグネシウムを含む場合、熱伝導性フィラーを高充填する観点から、A液が含有する酸化マグネシウムは、体積平均粒子径が0.05μm~100μmであり、体積平均粒子径が異なり、かつ、体積平均粒子径の差が40μm以上である2種以上の酸化マグネシウムであることがより好ましい。
【0049】
A液が体積平均粒子径の異なる酸化マグネシウムを2種以上含有する場合、体積分布において求められる最大体積平均粒子径を有する酸化マグネシウムの含有量が、熱伝導性フィラー中に含まれる酸化マグネシウムの全質量に対して50質量%以上であることが好ましい。
【0050】
-酸化亜鉛-
熱伝導性フィラーとして適用される酸化亜鉛としては、特に制限されず、熱伝導性フィラーとして通常用いられるZnOが挙げられる。
【0051】
酸化亜鉛としては、粒子の形態であることが好ましく、粘度と熱伝導性の両立の観点から、体積平均粒子径が0.05μm~100μmである粒子が好ましく、0.1μm~50μmである粒子がより好ましい。
【0052】
また、高伝導率の観点から、酸化亜鉛の体積平均粒子径は30μm以上であることが好ましく、30μm~50μmであることがより好ましい。
【0053】
-窒化アルミニウム-
熱伝導性フィラーとして適用される窒化アルミニウムとしては、特に制限されず、熱伝導性フィラーとして通常用いられるAlNが挙げられる。
【0054】
窒化アルミニウムとしては、粒子の形態であることが好ましく、粘度と熱伝導性の両立の観点から、体積平均粒子径が0.05μm~120μmである粒子が好ましく、0.1μm~80μmである粒子がより好ましい。
【0055】
-含有量-
A液が含有する熱伝導性フィラーの含有量としては、熱伝導性の観点から、A液の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%~98質量%であることがより好ましく、85質量%~98質量%であることが更に好ましい。
熱伝導性フィラーの含有量とは、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び窒化アルミニウム、並びに、後述するその他のフィラー化合物の総含有量を意味する。
2液型硬化性組成物に含まれるA液は、熱伝導性フィラーを1種単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0056】
熱伝導性フィラーが酸化マグネシウムを含む場合、熱伝導性の観点から、酸化マグネシウムの含有量としては、A液に含有される熱伝導性フィラーの総質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、85質量%~100質量%であることが更に好ましい。
A液に含まれる熱伝導性フィラーの総質量とは、A液に含まれる酸化亜鉛及び酸化マグネシウム、並びに、後述するその他のフィラー化合物の合計質量を意味する。
2液型硬化性組成物に含まれるA液は、酸化マグネシウムを1種単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0057】
A液が、熱伝導性フィラーとして酸化マグネシウム及び窒化アルミニウムの両方を含有する場合、酸化マグネシウムの含有量(酸化マグネシウムを2種以上含有する場合には総含有量)としては、得られる硬化物の剥離性、形状安定性、及び、熱伝導性の変化の抑制性が良好な硬化物が得られる観点から、A液に含まれる熱伝導性フィラーの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、85質量%~100質量%であることが更に好ましい。
【0058】
A液が、熱伝導性フィラーとして酸化マグネシウム及び窒化アルミニウムの両方を含む場合、得られる硬化物の剥離性、形状安定性、及び、熱伝導性の変化の抑制性が良好な硬化物が得られる観点から、熱伝導性フィラーにおける酸化マグネシウムと窒化アルミニウムとの含有量比(酸化マグネシウム:窒化アルミニウム)は、質量基準で、10:1~1:10であることが好ましく、10:1~1:1であることがより好ましく、9.5:1~5:1であることが更に好ましい。
【0059】
上記体積平均粒子径は、例えば、粒度分布測定装置(例えば、(株)島津製作所製、製品名;ナノ粒子径分布測定装置SALD-7500nano)により、レーザー波長405nmで測定された測定値(粒子径分布)から体積平均粒子径(50%径)として算出される。
【0060】
酸化マグネシウムは、組成物中に熱伝導性フィラーを高充填する観点から、粒子径分布に2つ以上のピークを有することが好ましい。
【0061】
本開示に係る2液型硬化性組成物に含まれるA液は、熱伝導性フィラーとして、上記酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び窒化アルミニウム以外の化合物(本明細書中、「その他のフィラー化合物」とも称する)を含んでいてもよい。
その他のフィラー化合物としては、アルミナ(酸化アルミニウム)、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、カーボン等が挙げられる。
【0062】
熱伝導性フィラーがその他のフィラー化合物を含む場合、その他のフィラー化合物の含有量としては、熱伝導性フィラーの全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
下限値は特に制限はないが、0質量%であってもよい。
【0063】
<B液>
本開示に係る2液型硬化性組成物はA液及びB液を含み、B液は、アミン化合物、可塑剤、及び、熱伝導性フィラーを含有する。
【0064】
<<アミン化合物>>
アミン化合物とは、アミノ基を含有する化合物を意味する。
アミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ポリエーテルアミン等が挙げられる。
脂肪族アミンとは、アミノ基が脂肪族炭化水素基に直接結合しているアミンを指し、ポリエーテルアミン以外のアミン化合物をいう。
芳香族アミンとは、アミノ基が芳香族炭化水素基に直接結合しているアミンを指し、ポリエーテルアミン以外のアミン化合物をいう。
ポリエーテルアミンとは、一分子中にアミノ基と2個以上のエーテル性酸素原子を有するアミン化合物をいう。
【0065】
脂肪族アミンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、トリメチルへキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、イソフォロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0066】
芳香族アミンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート等が挙げられる。
【0067】
ポリエーテルアミンとしては、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
式(3) H2N-R3-(OR4)l-O-R3-NH2
式(3)中、R3及びR4は、アルキレン基を表す。lは、2以上の整数を表す。
【0068】
R3で表されるアルキレン基は、炭素数2以上6以下のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2以上4以下のアルキレン基であることがより好ましい。
【0069】
R4で表されるアルキレン基は、炭素数2以上5以下のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基であることがより好ましい。
【0070】
lは、1以上40以下であることが好ましく、2以上35以下であることがより好ましく、4以上32以下であることが更に好ましい。
【0071】
ポリエーテルアミンとしては、具体的には、ポリオキシプロピレンジアミン(R3及びR4がプロピレン基、lが1以上の化合物)、ポリオキシエチレンジアミン(R3及びR4がエチレン基、lが1以上の化合物)、4,7,10-トリオキサ-トリデカン-1,13-ジアミン(R3がトリメチレン基、R4がエチレン基、lが2の化合物)などが挙げられる。
【0072】
<<可塑剤>>
B液は、可塑剤を含有する。可塑剤を含有することで、得られる硬化物の柔軟性がより向上しやすくなる。
可塑剤としては、特に制限はなく、例えば、可塑剤として使用される得るポリマー、不飽和炭化水素基を有する脂肪酸エステル化合物、芳香族カルボン酸エステル化合物、エポキシ系可塑剤のほか、不飽和炭化水素基を有する脂肪酸及び芳香族カルボン酸を含む油等が挙げられる。
本開示において「ポリマー」とは、重量平均分子量(Mw)が1,000以上である化合物を意味する。
本開示において「ポリマー」の概念には、いわゆるオリゴマーも包含される。
【0073】
ポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、シリコーンポリマー等が挙げられるが、得られる硬化物の剥離性の観点から、アクリル系ポリマーが好ましい。
【0074】
可塑剤がポリマーである場合、得られる硬化物の剥離性の観点から、ガラス転移温度が-20℃以下であるポリマーであることが好ましく、ガラス転移温度が-20℃以下であるアクリル系ポリマーであることがより好ましい。
可塑剤がポリマーである場合、剥離性の観点から、ガラス転移温度が-90℃以上-20℃以下であるポリマーであることが好ましく、ガラス転移温度が-90℃以上-20℃以下であるアクリル系ポリマーであることがより好ましい。
ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析装置(DSC)を用いて測定した、DSC曲線の変曲点を調べることで求められる。
【0075】
不飽和炭化水素基を有する脂肪酸エステル化合物としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等のエステル化合物が挙げられる。
芳香族カルボン酸エステル化合物としては、フタル酸、テレフタル酸、安息香酸、トリメリット酸等のエステル化合物が挙げられる。
【0076】
エポキシ系可塑剤とは、エポキシ基、及び炭化水素基を含有し、かつ、エポキシ基を分子の内部に有する化合物である。
ここで、「エポキシ基を分子の内部に有する」とは、エポキシ基が2つの結合手を有し、エポキシ基に2つの基が結合していることをいう。
【0077】
エポキシ系可塑剤としては、例えば、サンソサイザーE-PS(4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、新日本理化社製)、サンソサイザーE-PO(4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ(9,10-エポキシステアリル)、新日本理化社製)サンソサイザーE-2000H(エポキシ化大豆油、新日本理化社製)サンソサイザーE-9000H(エポキシ化亜麻仁油、新日本理化社製)、アデカサイザーO-130P(エポキシ化大豆油、ADEKA社製)アデカサイザーO-180A(エポキシ化亜麻仁油、ADEKA社製)等が挙げられる。
【0078】
相溶性の観点から、可塑剤はSP(Solubility Parameter)値が11以上である化合物を含有することが好ましい。
SP値は、凝集エネルギー密度、つまり、1分子の単位体積あたりの蒸発エネルギーの平方根で表される値である。
SP値は、沖津法で算出される値である。
沖津法によるSP値の算出方法としては、例えば、日本接着学会誌Vol.29、No.6(1993年)249~259頁に詳述されるものが挙げられる。
【0079】
SP値が11以上である化合物としては、アクリル系ポリマーが挙げられる。
【0080】
アクリル系ポリマーとしては、相溶性の観点から、アクリル酸エステルより形成される構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリルエステルとしては、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。メタ)アクリルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、及びイソブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、アルキルアクリレートは、無官能のアルキルアクリレートであってもよいし、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基(水酸基)等の官能基を有していてもよい。
アルキルアクリレートが有する官能基としては、ヒドロキシ基であることが好ましい。
【0081】
アクリル系ポリマーは、下記式(PAC)で表される構造を有するポリマーであってもよい。
【0082】
【0083】
式(PAC)中、RPは、水素原子又はアルキル基を表す。
式(PAC)中、アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。置換基としては、カルボキシ基又はヒドロキシ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
アルキル基としては、飽和アルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
【0084】
-含有量-
可塑剤の含有量(可塑剤を2種以上含む場合は合計量)は、混合性、耐熱性及び剥離性を両立する観点から、B液の全質量に対して、3質量%~15質量%であることが好ましく、5質量%~12質量%であることがより好ましい。
可塑剤の含有量に対するSP値が11以上である化合物の含有量は、相溶性の観点では多い方がよいが、B液の粘度の観点では少ない方が好ましい。このような観点から、SP値が11以上である化合物の含有量は、可塑剤の含有量に対して、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、8質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
2液型硬化性組成物に含まれるB液は、可塑剤を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0085】
<<熱伝導性フィラー>>
B液は、熱伝導性フィラーを含有する。B液が含有する熱伝導性フィラーは、上述のA液が含有する熱伝導性フィラーと同義であり、好ましい態様も同様である。
B液が含有する熱伝導性フィラーは、A液が含有する熱伝導性フィラーと同一であってもよいし、A液が含有する熱伝導性フィラーと異なっていてもよいが、貯蔵安定性及び混合性の観点から、A液に含まれる熱伝導性フィラーと同一であることが好ましい。
熱伝導性の観点から、B液に含まれる熱伝導性フィラーの含有量としては、B液の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%~98質量%であることがより好ましく、85質量%~98質量%であることが更に好ましい。
【0086】
<<その他の添加剤>>
本開示に係る2液型硬化性組成物は、柔軟性エポキシ化合物、反応性希釈剤、熱伝導性フィラーアミン化合物、及び可塑剤以外の成分(以下、「その他の添加剤」ともいう。)を、A液及び/又はB液に、必要に応じて含んでいてもよい。
その他の添加剤としては、酸化防止剤、防錆剤、難燃剤、着色剤等の添加剤を適宜配合することができる。
上記添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0087】
酸化防止剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、チアジアゾール、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0088】
防錆剤としては、スルホン酸金属塩系化合物、ソルビタン化合物等が挙げられる。
【0089】
難燃剤としては、例えばテトラブロモビスフェノールA及びその誘導体;テトラブロモビスフェノールS及びその誘導体;エチレンビスペンタブロモジフェニル及びその誘導体;トリス(ブロモネオペンチル)ホスフェート及びその誘導体;エチレンビステトラブロモフタルイミド及びその誘導体;トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体;リン酸塩化合物及びその誘導体又はこれらの混合物;硫酸メラミン;赤燐;アルコキシイミノ基ヒンダードアミン系化合物及びその誘導体;などが挙げられる。
難燃剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
着色剤としては、例えばカーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料;等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
<A液とB液との質量比>
A液とB液との質量比は、混合性及び使用性の観点から、質量基準で100:70~100:130であることが好ましく、100:80~100:120であることがより好ましく、100:90~100:110が更に好ましい。
【0092】
(2液型硬化性組成物の製造方法)
本開示に係る2液型硬化性組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法によって製造することができる。
柔軟性エポキシ化合物、反応性希釈剤、及び熱伝導性フィラー、必要に応じて、その他の添加剤を、攪拌容器に投入し、攪拌、混合することで本開示に係る2液型硬化性組成物に含まれるA液が得られる。
また、アミン化合物、可塑剤、及び、熱伝導性フィラー、必要に応じて、その他の添加剤を、攪拌容器に投入し、攪拌、混合することで本開示に係る2液型硬化性組成物に含まれるB液が得られる。
なお、攪拌及び混合には、公知の撹拌機等を用いることができる。
また、各材料(柔軟性エポキシ化合物、反応性希釈剤、熱伝導性フィラーアミン化合物、及び可塑剤、必要に応じてその他の添加剤)の混合順序は、特に制限されるものではない。
【0093】
(硬化物)
本開示に係る硬化物は、本開示に係る2液型硬化性組成物の硬化物である。2型硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に制限されないが、本開示に係る2液型硬化性組成物に含まれるA液及びB液を混合すればよい。
A液及びB液の混合方法としては、特に制限はなく、公知の撹拌機等も用いることができる。
A液とB液との混合比(A液:B液)は、混合性及び使用性の観点から、質量基準で100:80~100:120であることが好ましく、100:90~100:110であることがより好ましく、100:95~100:105が更に好ましい。
A液及びB液を混合する際の温度(すなわち、硬化温度)としては、特に制限はなく、室温(25℃)であってもよいし、10℃~40℃であってもよい。
また、本開示に係る2液型硬化性組成物に含まれるA液及びB液を混合した後に、活性エネルギー線の照射、加熱等を更に行ってもよい。
加熱する場合、加熱温度としては、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。また、加熱温時間としては、30分~120分であることが好ましい。
【0094】
本開示に係る硬化物の熱伝導率としては、熱伝導性の観点から、0.5[W/(m・K)]~50[W/(m・K)]であることが好ましく、1[W/(m・K)]~20[W/(m・K)]であることが好ましい。
【0095】
本開示に係る硬化物の柔らかさとしては、剥離性の観点から、アスカーC硬度が、70以下であることが好ましく、66以下であることがより好ましい。
同様に、ショアOO硬度が90以下であることが好ましく、86以下であることがより好ましい。
本開示において、アスカーC硬度はJIS K 7312:1996に準拠して、ショアOO硬度はASTM D2240に準拠して求められる。
【0096】
<用途>
本開示に係る2液型硬化性組成物は、例えば、基板に形成された凹部(発熱体と放熱体との隙間)に充填されるTIMとして、好適に用いることができる。
本開示に係る2液型硬化性組成物は、剥離性に優れる点から、発熱体、放熱体などの被着体からの剥離が容易となり、被着体の再利用が可能となるため、ギャップフィラーとして好適に適用することができる。
【実施例0097】
以下、本開示に係る2液型硬化性組成物を実施例により具体的に説明する。なお、本開示に係る2液型硬化性組成物は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1~6及び比較例1)
各原料を表1に記載の量(質量部)で配合し、自転・公転ミキサー((株)シンキー製、製品名;あわとり練太郎ARV-310)を用いて、2,000rpm(revolutions per minute)、2分、大気圧下で混合し、2液型硬化性組成物を調製した。
【0098】
実施例1~6及び比較例1で調製した2液型硬化性組成物を用いて、以下の評価を行った。結果は表1に記載した。
【0099】
-評価-
-ショアOO硬度(試料厚み;6mm)-
ASTM D2240に準拠して2液型硬化性組成物の硬化物のショアOO硬度の測定を行った。
表1に記載の混合比でA液とB液とを混合した後、硬化性組成物を30mm×15mm×6mm(厚み6mm)に成型し、表1に記載の2通りの硬化条件(硬化条件A及び硬化条件B)で硬化した。
各硬化条件で得られた硬化物について、硬度計(デュロメーター)(製品名;GS-754G、(株)テクロック製)を用いて、ショアOO硬度の測定を行った。
【0100】
-アスカーC硬度(試料厚み;6mm)-
JIS K 7312:1996に準拠して硬化性組成物の硬化物のアスカーC硬度の測定を行った。
表1に記載の混合比でA液とB液とを混合した後、硬化性組成物を30mm×15mm×6mm(厚み6mm)に成型し、表1に記載の2通りの硬化条件(硬化条件A及び硬化条件B)で硬化した。各硬化条件で得られた硬化物について、アスカーゴム硬度計C型(高分子計器株式会社製)を用いて、得られた硬化物についてアスカーC硬度を測定した。
【0101】
-剥離可否評価-
表1に記載の混合比でA液とB液とを混合した後、アルミ板上に硬化性組成物を30mm×15mm×6mm(厚み6mm)に成型し、表1に記載の2通りの硬化条件(硬化条件A及び硬化条件B)で硬化した。
得られた硬化物について、アルミ板上から手で引張り、剥離可否を評価した。
なお、評価基準は下記の通りである。
A:剥がしやすい(硬化物が柔らかく、屈曲する)
B:剥がしにくい(硬化物が硬く、屈曲しない)
C:剥がれない
【0102】
【0103】
表1中、「当量比」は、A液とB液とを混合した硬化性組成物に含まれるアミン化合物のアミノ基に含まれる水素原子のモル当量数と、柔軟性エポキシ化合物中のエポキシ基のモル当量数との比(アミン化合物中の活性水素のモル当量数:柔軟性エポキシ化合物中のエポキシ基のモル当量数)を意味する。
【0104】
<<柔軟性エポキシ化合物>>
・jER 871:三菱ケミカル社製、jER 871、ダイマー酸変性エポキシ化合物、エポキシ当量416、25℃における粘度が650mPa・s
・EX-920:ナガセケムテックス社製、デナコールEX-920、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量176、25℃における粘度が20mPa・s
<<反応性希釈剤>>
・ED-502S:ADEKA社製、アデカグリシロールED-502S、C12-13混合高級アルコールグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数が12又は13のアルキルグリシジルエーテル)、エポキシ当量320、25℃における粘度が10mPa・s
<<熱伝導性フィラー>>
・HF-01Dc:トクヤマ社製、品名:HF-01Dc、窒化アルミニウム粒子、体積平均粒子径1μm
・RF-10CS-SC:宇部マテリアルズ製、品名:RF-10CS-SC、酸化マグネシウム粒子、体積平均粒子径1μm
・DMG-60:デンカ社製、品名:DMG-60、酸化マグネシウム粒子、体積平均粒子径56μm
【0105】
<<アミン化合物>>
・ラッカマイドWN-620:DIC社製、ラッカマイドWN-620、変性脂肪族ポリアミン
【0106】
<<可塑剤>>
・サンソサイザーE-6000:新日本理化社製、サンソサイザーE-6000、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル(エポキシ系可塑剤)、SP値8.5
・ARUFON UP-1021:東亞合成社製、ARUFON UP-1021、アクリル系ポリマー、SP値13.6
<<その他の添加剤>>
・jER 827:三菱ケミカル社製、jER 827、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
・DISPERBYK-2152:ビックケミー・ジャパン社製、DISPERBYK-2152、高分子ポリエステル
・CLAYTONE-40:ビックケミー・ジャパン社製、CLAYTONE-40、有機変性ベントナイト
・カーボンブラック#25:三菱ケミカル社製、カーボンブラック#25、カーボンブラック
【0107】
上記結果から、本実施例の2液型硬化性組成物及び硬化物は、剥離性に優れる硬化物が得られる2液型硬化性組成物、及び剥離性に優れる硬化物であることがわかる。