特開 2023-151521 ウィンドウフィルム

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023151521

(43)【公開日】2023-10-16

(54)【発明の名称】ウィンドウフィルム

(51)【国際特許分類】

   B32B 27/18 20060101AFI20231005BHJP

【ＦＩ】

B32B27/18 A

【審査請求】未請求

【請求項の数】8

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022061173

(22)【出願日】2022-03-31

(71)【出願人】

【識別番号】000102980

【氏名又は名称】リンテック株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100091292

【弁理士】

【氏名又は名称】増田 達哉

(74)【代理人】

【識別番号】100173428

【弁理士】

【氏名又は名称】藤谷 泰之

(74)【代理人】

【識別番号】100091627

【弁理士】

【氏名又は名称】朝比 一夫

(72)【発明者】

【氏名】加茂 実希

【テーマコード（参考）】

4F100

【Ｆターム（参考）】

4F100AA12A

4F100AA33A

4F100AA37A

4F100AK01A

4F100AK25A

4F100AK41B

4F100AT00B

4F100BA03

4F100BA07

4F100BA10A

4F100BA10C

4F100CA07A

4F100CA30A

4F100CB05C

4F100GB07

4F100GB32

4F100JB14A

4F100JK12A

4F100JL13C

4F100YY00A

(57)【要約】

【課題】ハードコート層に、近赤外線吸収剤としてセシウム酸化タングステンを含むウィンドウフィルムにおいて、被着体に貼着した状態で優れた黒色系の外観を呈し、ハードコート層の耐擦過性および近赤外線吸収機能に優れたウィンドウフィルムを提供すること。
【解決手段】本発明のウィンドウフィルムは、基材と、当該基材の一方の面側に設けられたハードコート層と、前記基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを備え、前記ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂の硬化物と、近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステンと、カーボンブラックと、窒化チタンと、を含有する材料で構成され、前記紫外線硬化性樹脂の硬化物は、３３０ｎｍ以上４００ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有する光重合開始剤を含む組成物を用いた重合反応により形成されたものであることを特徴とする。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

基材と、当該基材の一方の面側に設けられたハードコート層と、前記基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを備え、
前記ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂の硬化物と、近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステンと、カーボンブラックと、窒化チタンと、を含有する材料で構成され、
前記紫外線硬化性樹脂の硬化物は、３３０ｎｍ以上４００ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有する光重合開始剤を含む組成物を用いた重合反応により形成されたものであることを特徴とするウィンドウフィルム。

【請求項2】

前記紫外線硬化性樹脂の硬化物：１００．０質量部に対する、前記セシウム酸化タングステンの割合が、１０．０質量部以上１００．０質量部以下である請求項１に記載のウィンドウフィルム。

【請求項3】

前記紫外線硬化性樹脂の硬化物：１００．０質量部に対する、前記カーボンブラックの割合が、０．０５質量部以上７．０質量部以下である請求項１または２に記載のウィンドウフィルム。

【請求項4】

前記紫外線硬化性樹脂の硬化物：１００．０質量部に対する、前記窒化チタンの割合が、０．０２質量部以上３．０質量部以下である請求項１ないし３のいずれか１項に記載のウィンドウフィルム。

【請求項5】

前記カーボンブラック：１００．０質量部に対する、前記窒化チタンの割合が、１０．０質量部以上８０．０質量部以下である請求項１ないし４のいずれか１項に記載のウィンドウフィルム。

【請求項6】

前記紫外線硬化性樹脂を構成する重合性成分：１００．０質量部に対する、前記光重合開始剤の使用量の割合が、０．３質量部以上１８．０質量部以下である請求項１ないし５のいずれか１項に記載のウィンドウフィルム。

【請求項7】

前記ハードコート層の厚さが、０．２μｍ以上２０．０μｍ以下である請求項１ないし６のいずれか１項に記載のウィンドウフィルム。

【請求項8】

前記基材は、ポリエステルを含む材料で構成されている請求項１ないし７のいずれか１項に記載のウィンドウフィルム。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ウィンドウフィルムに関する。

【背景技術】

【0002】

ウィンドウフィルムとは、自動車、船舶、鉄道等の車両、家屋、マンション、オフィスビル等の建築物等の窓ガラスに適用される粘着フィルムであり、太陽光中の紫外線および／または赤外線の遮蔽、プライバシー保護、防犯、ガラスの飛散防止、装飾等を目的として広く使用されている。また、ウィンドウフィルム表面の耐傷性（耐擦過性）を向上させる目的でハードコート層を設けることがある。

【0003】

ハードコート層に、近赤外線吸収剤としてセシウム酸化タングステンを含むウィンドウフィルムが提案されている（例えば、特許文献１）。
このようなウィンドウフィルムでは、太陽光に含まれる近赤外線を吸収して、日射による室内や車内の温度上昇等を効果的に抑制することができる。

【0004】

しかしながら、セシウム酸化タングステンは、透明性の高い材料であり、全光線透過率が高いため、ウィンドウフィルムにそのまま適用した場合、例えば、日射のまぶしい光を遮ることができない等の問題があった。

【0005】

また、従来において、セシウム酸化タングステンを含むハードコート層を備えるウィンドウフィルムを製造しようとした場合、ハードコート層の硬度が不足し、耐擦過性が劣ったものになり易いという問題があった。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【特許文献1】特開２０２１－００１２４２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

本発明の目的は、ハードコート層に、近赤外線吸収剤としてセシウム酸化タングステンを含むウィンドウフィルムにおいて、被着体に貼着した状態で優れた黒色系の外観を呈し、ハードコート層の耐擦過性および近赤外線吸収機能に優れたウィンドウフィルムを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0008】

このような目的は、以下の本発明により達成される。
本発明のウィンドウフィルムは、基材と、当該基材の一方の面側に設けられたハードコート層と、前記基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを備え、
前記ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂の硬化物と、近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステンと、カーボンブラックと、窒化チタンと、を含有する材料で構成され、
前記紫外線硬化性樹脂の硬化物は、３３０ｎｍ以上４００ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有する光重合開始剤を含む組成物を用いた重合反応により形成されたものであることを特徴とする。

【0009】

本発明では、前記紫外線硬化性樹脂の硬化物：１００．０質量部に対する、前記セシウム酸化タングステンの割合が、１０．０質量部以上１００．０質量部以下であることが好ましい。

【0010】

本発明では、前記紫外線硬化性樹脂の硬化物：１００．０質量部に対する、前記カーボンブラックの割合が、０．０５質量部以上７．０質量部以下であることが好ましい。

【0011】

本発明では、前記紫外線硬化性樹脂の硬化物：１００．０質量部に対する、前記窒化チタンの割合が、０．０２質量部以上３．０質量部以下であることが好ましい。

【0012】

本発明では、前記カーボンブラック：１００．０質量部に対する、前記窒化チタンの割合が、１０．０質量部以上８０．０質量部以下であることが好ましい。

【0013】

本発明では、前記紫外線硬化性樹脂を構成する重合性成分：１００．０質量部に対する、前記光重合開始剤の使用量の割合が、０．３質量部以上１８．０質量部以下であることが好ましい。

【0014】

本発明では、前記ハードコート層の厚さが、０．２μｍ以上２０．０μｍ以下であることが好ましい。
本発明では、前記基材は、ポリエステルを含む材料で構成されていることが好ましい。

【発明の効果】

【0015】

本発明によれば、ハードコート層に、近赤外線吸収剤としてセシウム酸化タングステンを含むウィンドウフィルムにおいて、被着体に貼着した状態で優れた黒色系の外観を呈し、ハードコート層の耐擦過性および近赤外線吸収機能に優れたウィンドウフィルムを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0016】

【図1】本発明のウィンドウフィルムの一構成例を示す断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0017】

以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
［１］ウィンドウフィルム
図１は、本発明のウィンドウフィルムの一構成例を示す断面図である。

【0018】

ウィンドウフィルム１は、基材２と、基材２の一方の面側に設けられたハードコート層３と、基材２の他方の面側に設けられた粘着剤層４とを備えている。そして、ハードコート層３は、紫外線硬化性樹脂の硬化物と、近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステンと、カーボンブラックと、窒化チタンと、を含有する材料で構成されており、前記紫外線硬化性樹脂の硬化物は、３３０ｎｍ以上４００ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有する光重合開始剤を含む組成物を用いた重合反応により形成されたものである。

【0019】

このような構成により、被着体に貼着した状態で、優れた黒色系の外観を呈し、ハードコート層３の耐擦過性および近赤外線吸収機能に優れたウィンドウフィルム１を提供することができる。

【0020】

このような効果が得られるのは、ハードコート層３中にカーボンブラックおよび窒化チタンの両方を含むことにより、好適な黒色系の色味とすることができるとともに、紫外線硬化性樹脂の硬化反応に用いられる光重合開始剤が３３０ｎｍ以上４００ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有するものであることにより、紫外線硬化性樹脂の硬化反応に用いられる紫外線がセシウム酸化タングステンによって吸収されてしまい、ハードコート層３を構成する紫外線硬化性樹脂の硬化反応が十分に進行しないことによるハードコート層３の硬度、耐擦過性の低下を効果的に防止することができるためであると考えられる。

【0021】

本発明による優れた効果は、ウィンドウフィルム１が上記のような構成を有することにより得られるのであって、上記のような構成を有していない場合には得られない。

【0022】

例えば、ハードコート層がカーボンブラックおよび窒化チタンのうちの一方のみを含み、他方を含まない場合には、以下のような問題を生じる。すなわち、ハードコート層がカーボンブラックを含み窒化チタンを含まない場合には、被着体に貼着された状態でのウィンドウフィルムの外観が茶色っぽい色味となってしまい、また、ハードコート層が窒化チタンを含みカーボンブラックを含まない場合には、被着体に貼着された状態でのウィンドウフィルムの外観が青色っぽい色味となってしまう。

【0023】

また、紫外線硬化性樹脂の硬化反応に用いられる光重合開始剤が３３０ｎｍ以上４００ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有さない場合には、以下のような問題を生じる。すなわち、光重合開始剤が３３０ｎｍ以上４００ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有さず、３３０ｎｍ未満の波長領域に吸収ピークを有する場合、紫外線硬化性樹脂の硬化反応のために照射した光がセシウム酸化タングステンに高い吸収率で吸収されてしまい、紫外線硬化性樹脂の硬化反応を好適に進行させることができない。その結果、ハードコート層の硬度、耐擦過性が劣ったものとなる。また、光重合開始剤が３３０ｎｍ以上４００ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有さず、４００ｎｍ超の波長領域に吸収ピークを有する場合、ハードコート層形成用の組成物を塗工して紫外線を照射する前に、日射、蛍光灯、ＬＥＤライト等の光源に含まれる光線の影響を受けて硬化してしまうため、良好な面状態の塗工物を得ることができない。

【0024】

なお、本発明において、「吸収ピーク」とは、吸収スペクトルにおいて、極大となる波長であり、溶液中に０．１質量％の濃度で希釈した際の吸光度が０．２Ａｂｓ．以上であるもののことを指す。

【0025】

［１－１］基材
基材２は、ハードコート層３および粘着剤層４を支持する機能を有する。

【0026】

基材２は、いかなる材料で構成されていてもよく、例えば、基材２の構成材料としては、各種樹脂材料等が挙げられるが、基材２は、ポリエステルを含む材料で構成されているのが好ましく、主としてポリエステルで構成されているのがより好ましい。

【0027】

これにより、ウィンドウフィルム１のハンドリング性が良好なものとなり、ウィンドウフィルム１の被着体への貼着等の作業性が向上する。また、ウィンドウフィルム１の耐久性が良好なものとなる。

【0028】

なお、本明細書において、「主として」とは、対象となる部位のうち最も含有率が高いもののことを言う。

【0029】

特に、基材２中におけるポリエステルの含有率は、９０質量％以上であるのが好ましく、９５質量％以上であるのがより好ましい。

【0030】

基材２を構成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられるが、中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。

【0031】

これにより、ウィンドウフィルム１のハンドリング性がより良好なものとなり、ウィンドウフィルム１の被着体への貼着等の作業性がより向上する。また、ウィンドウフィルム１の耐久性がより良好なものとなる。また、後述する材料で構成されるハードコート層３および粘着剤層４との密着性が良好なものとなる。

【0032】

基材２は、上記以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。

【0033】

基材２は、全体にわたって実質的に均一な組成を有していてもよいし、組成の異なる部位を有していてもよい。例えば、基材２は、互いに組成が異なる（例えば、樹脂材料の分子量が異なる場合等を含む）部位を有する複数の層を備えた積層体であってもよいし、組成が厚さ方向に沿って傾斜的に変化する傾斜材料で構成されていてもよい。

【0034】

基材２は、ハードコート層３や粘着剤層４との密着性を高めるための表面処理が施されていてもよい。

【0035】

このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリエチレンイミン系、アクリル系等の接着向上剤の塗布等が挙げられる。

【0036】

これらの表面処理法は、基材２を構成する材料に応じて適宜選ばれるが、一般には接着向上剤の塗布が効果および操作性等の面から好ましい。

【0037】

基材２の厚さは、特に限定されないが、１０μｍ以上３００μｍ以下であるのが好ましく、１５μｍ以上２００μｍ以下であるのがより好ましく、１８μｍ以上１００μｍ以下であるのがさらに好ましい。

【0038】

これにより、ウィンドウフィルム１の飛散防止性が得られるとともに、ウィンドウフィルム１のハンドリング性が向上し、被着体への貼着等の作業を容易に行うことができる。また、湾曲した被着体への形状追従性等が向上し、皺等の発生が効果的に防止される。

【0039】

［１－２］ハードコート層
ハードコート層３は、基材２よりも耐擦過性に優れており、ウィンドウフィルム１全体としての耐擦過性を向上させる機能を有する。

【0040】

これにより、ウィンドウフィルム１を被着体に貼着した後において、優れた耐擦過性を発揮することができる。また、ウィンドウフィルム１を被着体に貼着する作業時における傷つきも効果的に防止することができる。

【0041】

本発明において、ハードコート層３は、紫外線硬化性樹脂の硬化物と、近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステンと、カーボンブラックと、窒化チタンと、を含有する材料で構成されている。

【0042】

［１－２－１］紫外線硬化性樹脂の硬化物
ハードコート層３中に含まれる紫外線硬化性樹脂の硬化物は、紫外線を照射することにより、後に詳述するような光重合開始剤の作用により、重合性化合物が重合してなるものである。

【0043】

［１－２－１－１］重合性化合物
前記重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、（メタ）アクリレート系化合物を好適に用いることができる。

【0044】

なお、本明細書において、「（メタ）アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方を含む概念である。

【0045】

特に、３官能以上の多官能（メタ）アクリレート系化合物やウレタン（メタ）アクリレート系化合物が好適な材料として挙げられる。

【0046】

これにより、ハードコート層３の透明性を十分に優れたものとしつつ。ハードコート層３の硬度、耐擦過性をより優れたものとすることができる。

【0047】

３官能以上の多官能（メタ）アクリレート系化合物としては、例えば、（メタ）アクリレート、ポリエステル（メタ）アクリレート等の３官能基以上を有するアクリル系化合物が挙げられる。

【0048】

ポリエステル（メタ）アクリレートとしては、例えば、トリメチロールエタントリ（メタ）アクリレート、トリメチロールプロパントリ（メタ）アクリレート、ペンタエリスリトールトリ（メタ）アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ（メタ）アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ（メタ）アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ（メタ）アクリレート、グリセロールトリ（メタ）アクリレート、トリアリル（メタ）アクリレート等が挙げられる。これらは、１種を単独で使用してもよいし、２種以上を組み合せて用いてもよい。

【0049】

３官能以上の多官能（メタ）アクリレート系化合物を含む場合、当該多官能（メタ）アクリレート系化合物は、３官能以上であればよいが、５官能以上であることが好ましい。
これにより、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。

【0050】

ウレタン（メタ）アクリレートは、少なくとも（メタ）アクリロイル基およびウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線照射により重合硬化する性質を有するものである。ウレタン（メタ）アクリレートは、例えば、オリゴマー等である。

【0051】

ウレタン（メタ）アクリレートは、例えば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する（メタ）アクリレートを反応させて得ることができる。なお、ウレタン（メタ）アクリレートは、１種または２種以上を組み合わせて用いることができる。

【0052】

ウレタン（メタ）アクリレートの原料となるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を２つ以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、アルキレンジオール、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール、ポリカーボネート型ポリオール等が挙げられる。中でも、ポリエステル型ポリオールが好ましい。

【0053】

なお、ポリオール化合物としては、２官能のジオール、３官能のトリオール、４官能以上のポリオールのいずれであってもよいが、２官能のジオールが好ましく、ポリエステル型ジオールがより好ましい。

【0054】

多価イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート類；イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン－４，４’－ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン－２，４’－ジイソシアネート、ω，ω’－ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族系ジイソシアネート類；４，４’－ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ナフタレン－１，５－ジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート類等が挙げられ、これらから選択される１種または２種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが好ましい。

【0055】

上述のポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する（メタ）アクリレートを反応させてウレタン（メタ）アクリレートを得ることができる。ヒドロキシ基を有する（メタ）アクリレートとしては、少なくとも１分子中にヒドロキシ基および（メタ）アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。

【0056】

具体的なヒドロキシ基を有する（メタ）アクリレートとしては、例えば、２－ヒドロキシエチル（メタ）アクリレート、２－ヒドロキシプロピル（メタ）アクリレート、４－ヒドロキシブチル（メタ）アクリレート、４－ヒドロキシシクロヘキシル（メタ）アクリレート、５－ヒドロキシシクロオクチル（メタ）アクリレート、２－ヒドロキシ－３－フェニルオキシプロピル（メタ）アクリレート、ペンタエリスリトールトリ（メタ）アクリレート、ポリエチレングリコールモノ（メタ）アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ（メタ）アクリレート等のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレート；Ｎ－メチロール（メタ）アクリルアミド等のヒドロキシ基含有（メタ）アクリルアミド；ビニルアルコール、ビニルフェノール、ビスフェノールＡのジグリシジルエステルに（メタ）アクリル酸を反応させて得られる反応物等が挙げられ、これらから選択される１種または２種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートが好ましく、２－ヒドロキシエチル（メタ）アクリレートがより好ましい。

【0057】

ハードコート層３を構成する紫外線硬化性樹脂の硬化物は、重合性化合物として、３官能以上の多官能（メタ）アクリレート系化合物およびウレタン（メタ）アクリレート系化合物のうちの少なくとも一方を構成成分として含む場合、さらに、これら以外の重合性化合物を含んでいてもよい。以下、このような成分をこの項目内において、「その他の成分」とも言う。

【0058】

その他の成分としては、例えば、２官能以下の（メタ）アクリレート系化合物等が挙げられる。

【0059】

ただし、このような場合、ハードコート層３中に含まれる紫外線硬化性樹脂の硬化物を構成する全重合性化合物中に占めるその他の成分の割合は、１０質量％以下であるのが好ましく、５質量％以下であるのがより好ましく、３質量％以下であるのがさらに好ましい。

【0060】

［１－２－１－２］光重合開始剤
前述したように、ハードコート層３を構成する紫外線硬化性樹脂の硬化物は、３３０ｎｍ以上４００ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有する光重合開始剤を含む組成物を用いた重合反応により形成されたものである。

【0061】

前記光重合開始剤は、前記波長領域に複数個の吸収ピークを有していてもよい。
また、前記波長領域内に加えて、他の波長領域にも吸収ピークを有するものであってもよい。

【0062】

前記光重合開始剤は、３３０ｎｍ以上４００ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有するものであればよいが、３４０ｎｍ以上３９０ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有するものであるのが好ましく、３５０ｎｍ以上３８０ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有するものであるのがより好ましく、３６０ｎｍ以上３７０ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有するものであるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。

【0063】

溶液中に０．１質量％の濃度で希釈した際の当該波長の吸光度は、０．２％以上であればよいが、０．３％以上であるのが好ましく、０．４％以上であるのがより好ましく、０．５％以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。

【0064】

前記光重合開始剤としては、例えば、トリフェニルフォスフィンオキサイド系化合物、α－アミノアルキルフェノン系化合物、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物、さらには、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられ、より具体的には、ジフェニル（２，４，６－トリメチルベンゾイル）ホスフィンオキシド、１－ヒドロキシシクロへキシル＝フェニル＝ケトン、ジフェニルケトン、１－ヒドロキシシクロへキシル＝フェニル＝ケトン、２－ヒドロキシ－２－メチルプロピオフェノン、フェニルビス（２，４，６－トリメチルベンゾイル）ホスフィンオキシド、２，２’－ジヒドロキシ－２，２’－ジメチル－１，１’－［メチレンビス（４，１－フェニレン）］ビス（プロパン－１－オン）、２－ベンジル－２－（Ｎ，Ｎ－ジメチルアミノ）－１－（４－モルホリノフェニル）ブタン－１－オン等が挙げられ、これらから選択される１種または２種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、トリフェニルフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。

【0065】

紫外線硬化性樹脂を構成する重合性成分：１００．０質量部に対する、前記光重合開始剤の使用量の割合は、０．３質量部以上１８．０質量部以下であるのが好ましく、０．５質量部以上１５．０質量部以下であるのがより好ましく、１．５質量部以上１０．０質量部以下であるのがさらに好ましい。

【0066】

これにより、ウィンドウフィルム１の製造時における紫外線硬化性樹脂の重合反応をより好適に進行させることができ、ハードコート層３の硬度、耐擦過性、ウィンドウフィルム１の耐久性をより優れたものとすることができる。

【0067】

［１－２－１－３］その他の条件
ハードコート層３中における紫外線硬化性樹脂の硬化物の含有率は、３０．０質量％以上９０．０質量％以下であるのが好ましく、４０．０質量％以上８０．０質量％以下であるのがより好ましく、４５．０質量％以上７５．０質量％以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。

【0068】

［１－２－２］セシウム酸化タングステン
ハードコート層３は、近赤外線吸収剤としてセシウム酸化タングステンを含んでいる。
近赤外線吸収剤は、主に７５０ｎｍ以上１０００ｎｍ以下の近赤外線領域の光を選択的に吸収する機能を有する。
このような特性を有するセシウム酸化タングステンを含むことにより、ハードコート層３に、近赤外線や熱に対し強力な吸収、遮蔽効果を付与することができる。

【0069】

セシウム酸化タングステンは、一般的に、化学式Ｃｓ_０．３３ＷＯ_３で表記される無機ナノ微粒子であり、特に、波長８００ｎｍ以上１２００ｎｍ以下の近赤外線領域の光を強く吸収する。

【0070】

セシウム酸化タングステンの平均粒径は、特に限定されないが、例えば、１ｎｍ以上５０ｎｍ以下であるのが好ましく、５ｎｍ以上３５ｎｍ以下であるのがより好ましい。

【0071】

これにより、高い可視光線透過率と近赤外線吸収性能とを高いレベル両立することができる。

【0072】

なお、セシウム酸化タングステンの平均粒径は、レーザ光による動的光散乱法に基づいて粒子径分布測定装置により測定できる。

【0073】

このようなセシウム酸化タングステン系近赤外線吸収剤としては、例えば、ＹＭＦ０２（住友金属鉱山社製、平均粒径１５ｎｍ、固形分１８．５％）等が市販されている。

【0074】

ハードコート層３におけるセシウム酸化タングステンの含有量は、特に限定されないが、前記紫外線硬化性樹脂の硬化物：１００．０質量部に対して、１０．０質量部以上１００．０質量部以下であるのが好ましく、２０．０質量部以上９０．０質量部以下であるのがより好ましく、３０．０質量部以上８０．０質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ウィンドウフィルム１の近赤外線吸収性能をより優れたものとすることができる。

【0075】

［１－２－３］カーボンブラック
ハードコート層３は、カーボンブラックを含んでいる。

【0076】

ハードコート層３におけるカーボンブラックの含有量は、特に限定されないが、前記紫外線硬化性樹脂の硬化物：１００．０質量部に対して、０．０５質量部以上７．０質量部以下であるのが好ましく、０．１質量部以上５．５質量部以下であるのがより好ましく、０．２質量部以上４．０質量部以下であるのがさらに好ましい。

【0077】

これにより、被着体に貼着した状態でのウィンドウフィルム１の色味をより優れたものとすることができる。

【0078】

［１－２－４］窒化チタン
ハードコート層３は、窒化チタンを含んでいる。

【0079】

ハードコート層３における窒化チタンの含有量は、特に限定されないが、前記紫外線硬化性樹脂の硬化物：１００．０質量部に対して、０．０２質量部以上３．０質量部以下であるのが好ましく、０．０５質量部以上２．４質量部以下であるのがより好ましく、０．０８質量部以上１．８質量部以下であるのがさらに好ましい。

【0080】

これにより、被着体に貼着した状態でのウィンドウフィルム１の色味をより優れたものとすることができる。

【0081】

また、カーボンブラック：１００．０質量部に対する窒化チタンの割合は、１０．０質量部以上８０．０質量部以下であるのが好ましく、１５．０質量部以上７０．０質量部以下であるのがより好ましく、３０．０質量部以上６０．０質量部以下であるのがさらに好ましい。

【0082】

これにより、被着体に貼着した状態でのウィンドウフィルム１の色味をより優れたものとすることができる。

【0083】

［１－２－５］その他の成分
ハードコート層３は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。以下、この項目内において、このような成分を「その他の成分」ともいう。

【0084】

その他の成分としては、例えば、セシウム酸化タングステン以外の近赤外線吸収剤、カーボンブラック、窒化チタン以外の着色剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シラン系カップリング剤、レベリング剤、帯電防止剤、消泡剤等が挙げられる。

【0085】

ただし、ハードコート層３中におけるその他の成分の占める割合は、１０質量％以下であるのが好ましく、５質量％以下であるのがより好ましく、３質量％以下であるのがさらに好ましい。

【0086】

［１－２－６］その他の条件
ハードコート層３は、ハードコート層３形成用の液状の組成物（塗工液）を、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を用いて、基材２上に塗工し、紫外線や電子線を照射して、または加熱して硬化させることにより形成することができる。

【0087】

ハードコート層３形成用の塗工液には、必要に応じて、上述した成分以外の成分を含有させてもよい。このような成分としては、例えば、熱硬化触媒、溶剤等が挙げられる。

【0088】

ハードコート層３の厚さは、特に限定されないが、０．２μｍ以上２０．０μｍ以下であるのが好ましく、０．４μｍ以上１６．０μｍ以下であるのがより好ましく、０．６μｍ以上１２．０μｍ以下であるのがさらに好ましい。

【0089】

これにより、さらに優れた耐擦過性および耐候性が得られるとともに、ウィンドウフィルム１の取り扱いのし易さが向上し、ウィンドウフィルム１の被着体への貼着等の作業性が向上する。また、皺の発生等を好適に防止することができる。

【0090】

［１－３］粘着剤層
粘着剤層４は、一般に優れた柔軟性を有し、被着体に密着する部位である。

【0091】

粘着剤層４を構成する粘着剤としては、例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。

【0092】

これらの中でも、耐候性等の点から、特に、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好適である。

【0093】

合成ゴム系粘着剤の具体例としては、スチレン－ブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴ
ム、イソブチレン－イソプレン、スチレン－イソプレンブロック共重合体、スチレン－ブタジエンブロック共重合体、スチレン－エチレン－ブチレンブロック共重合体等が挙げられる。

【0094】

アクリル系粘着剤の具体例としては、（メタ）アクリル酸ブチル、（メタ）アクリル酸２－エチルヘキシル、（メタ）アクリル酸イソオクチル、（メタ）アクリル酸メチル、（メタ）アクリル酸ヒドロキシエチル、（メタ）アクリル酸ヒドロキシブチル等の共重合体等が挙げられる。

【0095】

ポリビニルエーテル系粘着剤の具体例としては、ポリビニルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等が挙げられる。

【0096】

シリコーン系粘着剤の具体例としては、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
これらの粘着剤は、１種または２種以上を組合せて用いることができる。

【0097】

粘着剤層４は、主として粘着剤で構成されていればよく、粘着剤以外の成分を含んでいてもよい。

【0098】

このような成分としては、例えば、紫外線吸収剤、粘着付与剤、充填剤、軟化剤、酸化防止剤、光安定剤、架橋剤、着色剤、改質剤、防錆剤、難燃剤、加水分解防止剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、シランカップリング剤等が挙げられる。

【0099】

粘着剤層４は、例えば、粘着剤層４形成用の液状の組成物（塗工液）を、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、バーコート等の各種塗布法により、基材２上に塗布することにより行うことができる。

【0100】

塗工液の塗膜を固化させることにより、粘着剤層４を形成することができる。
塗工液は、粘着剤層４とは異なる組成を有していてもよい。例えば、塗工液を塗工した後、含まれる溶媒を除去してもよいし、硬化反応、架橋反応を進行させることにより、重合度、架橋度を異なるものとしてもよい。

【0101】

また、粘着剤層４は、いったん剥離ライナー１０上に形成し、その後、基材２に貼り合せてもよい。

【0102】

粘着剤層４の厚さは、特に限定されないが、例えば、１μｍ以上１００μｍ以下であるのが好ましく、５μｍ以上８０μｍ以下であるのがより好ましく、１０μｍ以上６０μｍ以下であるのがさらに好ましい。

【0103】

これにより、ウィンドウフィルム１の耐久性が得られるとともに、ウィンドウフィルム１の取り扱いのし易さが向上し、被着体への施工（貼着）を容易に行うことができる。また、湾曲した被着体への形状追従性等が向上し、皺等の発生が効果的に防止される。

【0104】

［１－４］その他の条件
ウィンドウフィルム１は、例えば、窓ガラスの室内側の面に貼着する内貼り用のものであってもよいし、窓ガラスの室外側の面に貼着する外貼り用のものであってもよいが、内貼り用のものであるのが好ましい。

【0105】

ウィンドウフィルム１の厚さは、特に限定されないが、１１μｍ以上４００μｍ以下であるのが好ましく、１８μｍ以上２３０μｍ以下であるのがより好ましく、２０μｍ以上１００μｍ以下であるのがさらに好ましい。

【0106】

これにより、ウィンドウフィルム１の耐久性や、より優れた近赤外線吸収機能が得られるとともに、ウィンドウフィルム１のハンドリング性が向上し、被着体への貼着等の作業をより容易に行うことができる。また、湾曲した被着体への形状追従性等が向上し、皺等の発生が効果的に防止される。

【0107】

ここで、「ウィンドウフィルム１の厚さ」とは、被着体に貼着された状態でのウィンドウフィルム１全体の厚さを意味する。したがって、例えば、ウィンドウフィルム１の保管時において、粘着剤層４上に後述するような剥離ライナー１０が配されている場合であっても、剥離ライナー１０の厚さは当該厚さには含まれない。

【0108】

［２］剥離ライナー
ウィンドウフィルム１の粘着剤層４上に剥離ライナー１０が配されていてもよい。

【0109】

剥離ライナー１０は、ウィンドウフィルム１を被着体に貼着する際には、粘着剤層４から剥離される。

【0110】

剥離ライナー１０としては、特に限定されず、ウィンドウフィルムの分野で通常使用されるものであってよい。剥離ライナー１０としては、例えば、樹脂フィルム基材または紙基材の表面に剥離層が設けられたものが挙げられる。

【0111】

樹脂フィルム基材を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート等が挙げられる。また、紙基材を構成する材料としては、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、グラシン紙、上質紙等が挙げられる。

【0112】

剥離層としては、シリコーン、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等の剥離剤を含有するものが挙げられる。

【0113】

剥離ライナー１０の厚さは、特に限定されないが、例えば、１０μｍ以上４００μｍ以下であることが好ましい。また、上記の剥離層が設けられる場合の当該剥離層の厚さは、例えば、０．０１μｍ以上５μｍ以下であるのが好ましい。

【0114】

［３］被着体
次に、ウィンドウフィルム１が貼着される被着体について説明する。

【0115】

ウィンドウフィルム１は、住宅、ビル等の建物や、自動車、電車等の乗物の窓ガラス、鏡、ガラスケースやショーウィンドウのガラス等に好適に適用される。

【0116】

これにより、太陽光に含まれる近赤外線を吸収して、日射による室内や車内の温度上昇等を効果的に抑制することができる。

【0117】

［４］ウィンドウフィルムの貼着方法
次に、ウィンドウフィルム１の貼着方法について説明する。

【0118】

ウィンドウフィルム１を窓ガラス等の被着体に貼着する場合、剥離ライナー１０がある場合には、まず剥離ライナー１０を剥離して粘着剤層４を露出させ、粘着剤層４を被着体に接着させることにより貼着することができる。ここで、粘着剤層４と被着体との界面に界面活性剤を水に添加した施工液を介して貼着し、その後施工液をスキージと呼ばれる治具を用いて掻きだす、いわゆる水貼りと呼ばれる方法により貼着してもよい。

【0119】

以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。

【0120】

例えば、ウィンドウフィルムは、前述した以外の構成を有するものであってもよい。より具体的には、例えば、基材と粘着剤層との間や、基材とハードコート層との間に、少なくとも１層の中間層を有していてもよいし、ハードコート層の外表面側に少なくとも１層のコート層をさらに有していてもよい。

【実施例0121】

以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例中の処理、測定で、温度条件を示していないものについては、室温（２３℃）で行った。

【0122】

［５］ウィンドウフィルムの製造
（実施例１）
まず、紫外線硬化型の５官能アクリレート系化合物と６官能アクリレート系化合物の混合物としてのＭ－４０３（東亞合成社製）と、セシウム酸化タングステンと、カーボンブラックと、窒化チタンと、光重合開始剤としてのＯｍｎｉｒａｄ ＴＰＯ（ＩＧＭ Ｒｅｓｉｎｓ Ｂ．Ｖ．社製）と、溶媒としてのメチルエチルケトンとを用いて、ハードコート層形成用の液状の組成物（塗工液）を調製した。

【0123】

また、基材として、ポリエチレンテレフタレートからなる厚さ５０μｍのフィルム（東洋紡社製、商品名「コスモシャインＡ４３６０」）を用意した。この基材の片面に、ハードコート層形成用の塗工液を、硬化後膜厚が１０μｍになるようにバーコート法で塗工し、７０℃で１分間乾燥させた後に、積算光量２００ｍＪ／ｃｍ^２の紫外線を照射した。これにより、紫外線硬化性樹脂の硬化物と、セシウム酸化タングステンと、カーボンブラックと、窒化チタンとを含むハードコート層を形成した。

【0124】

形成されたハードコート層中における紫外線硬化性樹脂の硬化物：１００．０質量部に対する、セシウム酸化タングステンの割合は４２．０質量部とし、カーボンブラックの割合は２．６質量部とし、窒化チタンの割合は１．１質量部とした。

【0125】

次に、基材のハードコート層が設けられた面とは反対側の面に、アクリル系粘着剤を含む組成物をナイフコート法にて塗工した後、９０℃で２分間乾燥させ、厚さ１０μｍの粘着剤層を形成した。

【0126】

また、剥離ライナーとして、厚さ３８μｍのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面にシリコーン系剥離剤を含む剥離層が形成されたものを用意した。

【0127】

そして、粘着剤層に、剥離ライナーの剥離層を貼り合わせ、粘着剤層が剥離ライナーで保護されたウィンドウフィルムを得た。

【0128】

（実施例２～１４）
ハードコート層形成用の塗工液の調製において、光重合開始剤の種類、カーボンブラック、窒化チタンおよび光重合開始剤の使用量を表１に示すように調整した以外は、前記実施例１と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。

【0129】

（比較例１）
ハードコート層形成用の塗工液の調製において、カーボンブラックおよび窒化チタンを用いなかった以外は、前記実施例１と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。

【0130】

（比較例２、３）
ハードコート層形成用の塗工液の調製において、窒化チタンを用いず、カーボンブラックの使用量を表１に示すように調整した以外は、前記実施例１と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。

【0131】

（比較例４～６）
ハードコート層形成用の塗工液の調製において用いる光重合開始剤の種類を表１に示すように変更した以外は、前記実施例１と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。これらの比較例で用いた光重合開始剤は、いずれも、３３０ｎｍ以上４００ｎｍ以下の波長領域に吸収ピークを有さないものであった。

【0132】

［６］ウィンドウフィルムの評価
得られたウィンドウフィルムにつき、以下の評価を行った。

【0133】

［６－１］全光線透過率
得られたウィンドウフィルムを３ｍｍフロートガラスに貼着して、ヘーズメーター（ＮＤＨ－５０００、日本電色工業社製）を使用し、ＪＩＳ Ｋ７３６１－１：１９９７に準じた方法により、全光線透過率を求め、以下の基準に従い評価した。

【0134】

○：全光線透過率が６０％未満である。
×：全光線透過率が６０％以上である。

【0135】

［６－２］色目
得られたウィンドウフィルムを３ｍｍフロートガラスに貼着して、カラーコンピューターを使用し、透過色相を求め、以下の基準に従い評価した。

【0136】

○：色度ｂ＊が、－１０．０以上２．０以下である。
×：色度ｂ＊が－１０．０未満、または、２．０超である。

【0137】

色度ｂ＊が－１０．０未満であると青味が強すぎ、色度ｂ＊が２．０超であると黄味が強すぎる。

【0138】

［６－３］ハードコート層擦過試験
得られたウィンドウフィルムのハードコート層の表面を、ＳＷ＃００００を用いて、２５０ｇ／ｃｍ^２の圧力で１０往復することにより擦過試験を行った。

【0139】

擦過試験前後でのヘーズ値からΔヘーズを算出した。
Δヘーズ（％）＝擦過試験後のヘーズ値（％） － 擦過試験前のヘーズ値（％）

【0140】

なお、ヘーズ値は、ヘ－ズメーター（日本電色工業社製、商品名：ＮＤＨ－５０００）を用いて、ＪＩＳ Ｋ７１３６：２０００に準じた方法により測定した。

【0141】

以下の判定基準によりハードコート層の硬化性を判定した。
○：Δヘーズが２．５％未満である。
×：Δヘーズが２．５％以上である。

【0142】

表１に、前記各実施例および各比較例について、ハードコート層の条件とともに、上記の評価の結果をまとめて示す。なお、表１中、セシウム酸化タングステンを「ＣＷＯ」、カーボンブラックを「ＣＢ」、窒化チタンを「ＴｉＮ」、Ｏｍｎｉｒａｄ ＴＰＯ（ＩＧＭ Ｒｅｓｉｎｓ Ｂ．Ｖ．社製）を「Ｏ－ＴＰＯ」、Ｏｍｎｉｒａｄ １８４（ＩＧＭ Ｒｅｓｉｎｓ Ｂ．Ｖ．社製）を「Ｏ－１８４」、Ｏｍｎｉｒａｄ ５００（ＩＧＭ Ｒｅｓｉｎｓ Ｂ．Ｖ．社製）を「Ｏ－５００」、Ｏｍｎｉｒａｄ １１７３（ＩＧＭ Ｒｅｓｉｎｓ Ｂ．Ｖ．社製）を「Ｏ－１１７３」、Ｏｍｎｉｒａｄ ８１９（ＩＧＭ Ｒｅｓｉｎｓ Ｂ．Ｖ．社製）を「Ｏ－８１９」、Ｏｍｎｉｒａｄ １２７（ＩＧＭ Ｒｅｓｉｎｓ Ｂ．Ｖ．社製）を「Ｏ－１２７」、Ｏｍｎｉｃａｔ ２５０（ＩＧＭ Ｒｅｓｉｎｓ Ｂ．Ｖ．社製）を「Ｏ－２５０」、Ｏｍｎｉｒａｄ ３７９ＥＧ（ＩＧＭ Ｒｅｓｉｎｓ Ｂ．Ｖ．社製）を「Ｏ－３７９ＥＧ」、Ｏｍｎｉｒａｄ ６５１（ＩＧＭ Ｒｅｓｉｎｓ Ｂ．Ｖ．社製）を「Ｏ－６５１」と示した。また、表１中の各成分の含有量、使用量の単位は「質量部」であり、セシウム酸化タングステン、カーボンブラックおよび窒化チタンの含有量については、紫外線硬化性樹脂の硬化物：１００．０質量部に対する割合を示し、光重合開始剤の使用量については、紫外線硬化性樹脂を構成する重合性成分（紫外線硬化型の５官能アクリレート系化合物）：１００．０質量部に対する割合を示した。

【0143】

【表1】

【0144】

表１から明らかなように、実施例１～１４では、いずれも、優れた結果が得られた。これに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。

【符号の説明】

【0145】

１：ウィンドウフィルム
２：基材
３：ハードコート層
４：粘着剤層
１０：剥離ライナー

【図1】