(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151542
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】位置検知システム、磁気センサ及びセンサブロック
(51)【国際特許分類】
G01D 5/16 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01D5/16 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061208
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾中 和弘
(72)【発明者】
【氏名】米山 琢也
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077CC02
2F077CC08
2F077JJ03
2F077JJ09
2F077JJ23
2F077TT13
(57)【要約】
【課題】位置検知の精度を向上させる。
【解決手段】位置検知システム1は、コイル3及び磁石2と、磁気センサ4と、を備える。コイル3及び磁石2は、磁気的相互作用により相対移動する。磁気センサ4は、コイル3及び磁石2の相対移動位置を検知する。磁気センサ4は、第1主面411を有する第1磁気抵抗素子と、第2主面421を有する第2磁気抵抗素子と、を有する。第1主面411と第2主面421とは、コイル3及び磁石2が相対移動する方向である相対移動方向において並んでいる。第1主面411の法線Ax1と第2主面421の法線Ax1とは、相対移動方向と平行である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気的相互作用により相対移動するコイル及び磁石と、
前記コイル及び前記磁石の相対移動位置を検知する磁気センサと、
を備え、
前記磁気センサは、
第1主面を有する第1磁気抵抗素子と、
第2主面を有する第2磁気抵抗素子と、
を有し、
前記第1磁気抵抗素子の前記第1主面と前記第2磁気抵抗素子の前記第2主面とは、前記コイル及び前記磁石が相対移動する方向である相対移動方向において並んでおり、
前記第1磁気抵抗素子の前記第1主面の法線と前記第2磁気抵抗素子の前記第2主面の法線とは、前記相対移動方向と平行である、
位置検知システム。
【請求項2】
前記コイル及び前記磁石の前記相対移動方向は直線に沿っており、
前記相対移動方向における前記コイル及び前記磁石の相対移動エリアの中心と前記第1磁気抵抗素子の前記第1主面との間の第1距離と、前記相対移動方向における前記相対移動エリアの中心と前記第2磁気抵抗素子の前記第2主面との間の第2距離とが等しい、
請求項1に記載の位置検知システム。
【請求項3】
前記相対移動方向における前記第1磁気抵抗素子の前記第1主面と前記第2磁気抵抗素子の前記第2主面との間の距離は、前記コイル及び前記磁石の相対移動エリアと等しい、
請求項1又は2に記載の位置検知システム。
【請求項4】
前記第1磁気抵抗素子の前記第1主面の中心における前記法線と、前記第2磁気抵抗素子の前記第2主面の中心における前記法線とが一致する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の位置検知システム。
【請求項5】
前記第1磁気抵抗素子及び前記第2磁気抵抗素子は、巨大磁気抵抗効果素子である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の位置検知システム。
【請求項6】
前記磁気センサの出力信号を処理することで前記相対移動位置を検知する処理部を、更に備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の位置検知システム。
【請求項7】
前記第1磁気抵抗素子と前記第2磁気抵抗素子とはハーフブリッジ接続されており、
前記処理部は、前記第1磁気抵抗素子と前記第2磁気抵抗素子との接続点の電位を前記出力信号とする、
請求項6に記載の位置検知システム。
【請求項8】
前記磁気センサは、
前記第1磁気抵抗素子を含む第1センサブロックと、
前記第2磁気抵抗素子を含む第2センサブロックと、
前記第1センサブロックと前記第2センサブロックとを連結させる接続部と、
を有し、
前記接続部は、
前記相対移動方向における第1端と、
前記相対移動方向において前記第1端の反対側に位置する第2端と、
を有し、
前記第1センサブロックは、前記第1端に設けられ、
前記第2センサブロックは、前記第2端に設けられている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の位置検知システム。
【請求項9】
前記磁石と前記磁気センサとは、前記相対移動方向と直交する方向において並んでおり、
前記第1磁気抵抗素子及び前記第2磁気抵抗素子は、前記直交する方向に沿った磁界の強度を検知する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の位置検知システム。
【請求項10】
磁気的相互作用により相対移動するコイル及び磁石の相対移動位置を検知する磁気センサであって、
第1主面を有する第1磁気抵抗素子と、
第2主面を有する第2磁気抵抗素子と、
を備え、
前記第1磁気抵抗素子の前記第1主面と前記第2磁気抵抗素子の前記第2主面とは、前記コイル及び前記磁石が相対移動する相対移動方向において並んでおり、
前記第1磁気抵抗素子の前記第1主面の法線と前記第2磁気抵抗素子の前記第2主面の法線とは、前記相対移動方向と平行である、
磁気センサ。
【請求項11】
磁気的相互作用により相対移動するコイル及び磁石を備える位置検知システムにおいて、前記コイル及び前記磁石の相対移動位置を検知するための磁気センサに用いられるセンサブロックであって、
電気絶縁性を有する基材と、
前記基材に設けられ、主面を有する磁気抵抗素子と、
を備え、
前記磁気抵抗素子の前記主面の法線は、前記コイル及び前記磁石が相対移動する方向である相対移動方向と平行である、
センサブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に位置検知システム、磁気センサ及びセンサブロックに関し、より詳細には、コイル及び磁石の相対移動位置を検知する位置検知システム、磁気センサ及びセンサブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、携帯機器に用いられるポインティングデバイスが記載されている。特許文献1に記載されているポインティングデバイスは、2つのホール素子の出力差でフェライト磁石の位置を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているようなポインティングデバイス(位置検知システム)において、位置検知の精度を向上させることが望まれている。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、位置検知の精度を向上させることができる位置検知システム、磁気センサ及びセンサブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る位置検知システムは、コイル及び磁石と、磁気センサと、を備える。前記コイル及び前記磁石は、磁気的相互作用により相対移動する。前記磁気センサは、前記コイル及び前記磁石の相対移動位置を検知する。前記磁気センサは、第1主面を有する第1磁気抵抗素子と、第2主面を有する第2磁気抵抗素子と、を有する。前記第1主面と前記第2主面とは、前記コイル及び前記磁石が相対移動する方向である相対移動方向において並んでいる。前記第1主面の法線と前記第2主面の法線とは、前記相対移動方向と平行である。
【0007】
本開示の一態様に係る磁気センサは、磁気的相互作用により相対移動するコイル及び磁石の相対移動位置を検知する。前記磁気センサは、第1主面を有する第1磁気抵抗素子と、第2主面を有する第2磁気抵抗素子と、を備える。前記第1主面と前記第2主面とは、前記コイル及び前記磁石が相対移動する相対移動方向において並んでいる。前記第1主面の法線と前記第2主面の法線とは、前記相対移動方向と平行である。
【0008】
本開示の一態様に係るセンサブロックは、磁気センサに用いられるセンサブロックである。前記磁気センサは、磁気的相互作用により相対移動するコイル及び磁石を備える位置検知システムにおいて、前記コイル及び前記磁石の相対移動位置を検知する。前記センサブロックは、基材と、磁気抵抗素子と、を備える。前記基材は、電気絶縁性を有する。前記磁気抵抗素子は、前記基材に設けられ、主面を有する。前記磁気抵抗素子の前記主面の法線は、前記コイル及び前記磁石が相対移動する方向である相対移動方向と平行である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の上記態様に係る位置検知システム、磁気センサ及びセンサブロックによれば、位置検知の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、実施形態に係る位置検知システムの正面図である。
図1Bは、同上に係る位置検知システムの側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る磁気センサの斜視図である。
【
図3】
図3Aは、同上の磁気センサの正面図である。
図3Bは、同上の磁気センサの背面図である。
【
図4】
図4は、同上の位置検知システムが備える処理部を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、同上の位置検知システムに係る相対移動位置と磁界強度との関係の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、同上の位置検知システムに係る相対移動位置と磁界強度との関係の別の例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、同上の位置検知システムに係る相対移動位置と磁界強度との関係の更に別の例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、同上の位置検知システムに係る相対移動位置と出力との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、同上の磁気センサの出力特性とGaAs系ホール素子を用いた磁気センサの出力特性とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、共通する要素についての重複する説明は省略する場合がある。以下の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。本開示において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さのそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、図面中のX軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交している。図面中のX軸、Y軸、及びZ軸は一例であり、位置検知システム1の使用時の方向を規定する趣旨ではない。また、図面中のX軸、Y軸、及びZ軸は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0012】
なお、本開示でいう「直交(垂直)」は、二者間の角度が厳密に90度である状態だけでなく、二者がある程度の誤差の範囲内で直交する状態も含む意味である。つまり、直交する二者間の角度は、90度に対してある程度の差(一例として10度以下)の範囲内に収まる。すなわち、本開示でいう「直交」は、二者でなす角度が80度以上100度以下である場合を含む。本開示でいう「平行」についても同様に、厳密に二者が交わらない状態だけでなく、二者がある程度の差の範囲内で平行である状態も含む意味である。例えば、本開示でいう「平行」は、一方に対する他方の傾きが10度以下であることを含む。すなわち、本開示でいう「平行」は、一方と他方とでなす角度が-10度以上10度以下である場合を含む。
【0013】
実施形態において、測定データなどの2値の比較において、「以下」としているところは「未満」であってもよい。つまり、2値の比較において、2値が等しい場合を含むか否かは、基準値等の設定次第で任意に変更できるので、「以下」か「未満」かに技術上の差異はない。同様に、「以上」としているところは「超過」であってもよい。
【0014】
(1)概要
まず、本実施形態に係る位置検知システム1の概要について、
図1A、
図1B及び
図2を参照して説明する。
【0015】
本実施形態の位置検知システム1は、例えばモータに用いられる。モータは、例えば、スマートフォン等の携帯端末の内蔵カメラ(カメラモジュール)のフォーカス調整に用いられる。モータは、例えば、VCM(Voice Coil Motor)である。
【0016】
図1A、
図1Bに示すように、本実施形態の位置検知システム1は、磁石2と、コイル3と、磁気センサ4と、を備える。
【0017】
コイル3及び磁石2は、コイル3及び磁石2の磁気的相互作用により相対移動する。本開示でいう「磁気的相互作用」とは、磁石2から発生する磁界とコイル3から発生する磁界との相互作用を意味する。また、「相対移動」は、2つの物体のうちの一方が他方に対して移動すること、2つの物体のうちの他方が一方に対して移動すること、2つの物体が互いに移動すること、を含み得る。本実施形態の相対移動方向は、X軸(直線)に沿っている。本実施形態では、コイル3の位置は固定されており、磁石2がコイル3に対して移動する場合を例示する。なお、本実施形態の磁石2は、相対移動方向における第1端A1から第2端A2までの相対移動エリアにおいて、相対移動方向における第1端A1と第2端A2との中心である相対移動エリアの中心A0を基準として移動する。
図1Bの例では、磁石2の移動方向を白抜き矢印で示している。
【0018】
磁気センサ4は、コイル3及び磁石2の相対移動位置を検知する。磁気センサ4は、第第1磁気抵抗素子401(
図2参照)と、第2磁気抵抗素子402(
図2参照)と、を有する。本開示でいう「相対移動位置を検知する」とは、コイル3及び磁石2の相対移動の大きさ(距離)を検知すること、及び、コイル3及び磁石2の相対移動位置を検知することを含み得る。
【0019】
第1磁気抵抗素子401は、第1主面411を有する。また、第2磁気抵抗素子402は、第2主面421を有する。
【0020】
本開示でいう「第1主面及び第2主面」は、少なくともZ軸方向に沿った磁界の強度(磁界強度の変化)に応じて電気抵抗値を変化させるように形成された面である。本実施形態の第1主面411及び第2主面421は、Z軸(相対移動方向に直交かつ磁石2と磁気センサ4とが並ぶ方向)及びY軸と平行な面である。言い換えると第1主面411及び第2主面421はYZ平面と平行な面である。第1主面411及び第2主面421をYZ平面と平行な面とすることで、第1磁気抵抗素子401及び第2磁気抵抗素子402は、Z軸方向に沿った磁界の強度を効率よく検知することができる。
【0021】
第1磁気抵抗素子401の第1主面411と第2磁気抵抗素子402の第2主面421とは、コイル3及び磁石2が相対移動する方向である相対移動方向において(X軸に沿って)並んでいる。そして、第1磁気抵抗素子401の第1主面411の法線Ax1と第2磁気抵抗素子402の第2主面421の法線Ax1とは、相対移動方向(X軸)と平行である。
【0022】
第1主面411と第2主面421とが相対移動方向において並んでおり、法線Ax1が相対移動方向と平行であるため、例えばコイル3及び磁石2が振動するように相対移動する場合であっても、センサブロックを用いてコイル3及び磁石2の位置検知を行うことができる。また、磁界強度の変化に対するセンサブロックの出力変化は優れた直線性(リニアリティ)を示すため、位置検知の精度を向上させることができる。
【0023】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る位置検知システム1の詳細な構成について、
図1A~
図4を参照して説明する。
【0024】
(2.1)位置検知システムの構成
図1A、
図1Bに示すように、位置検知システム1は、磁石2と、コイル3と、磁気センサ4と、処理部5(
図4参照)と、を備える。本実施形態では、位置検知システム1がVCMに用いられ、VCMがカメラモジュールのフォーカス調整に用いられる場合を例示する。より具体的には、本実施形態では、磁石2がカメラモジュールのレンズに固定され、コイル3がカメラモジュールの本体部に固定されている場合を例示する。
【0025】
(2.2)コイルの構成
コイル3は、Z軸に沿った巻回軸を中心として例えば銅等の導線が巻回されている。コイル3は、Z軸方向において、磁石2と並ぶように配置されている。言い換えると、Z軸方向からの平面視においてコイル3と磁石2とは重なっている。なお、Z軸方向において、磁石2からコイル3に向かう向きがZ軸の正の向きである。
【0026】
本実施形態では、磁石2がコイル3に対して移動していないデフォルトの状態(コイル3に電力が供給されていない状態)において、XY平面におけるコイル3の巻回軸の位置と、XY平面における磁石2の中心の位置とが一致している。
【0027】
コイル3は、例えば電源回路から電力が供給されることで、磁界を発生する。コイル3から発生する磁界と、磁石2から発生する磁界との相互作用により、X軸方向に沿って磁石2がコイル3に対して相対移動する。言い換えると、本実施形態では、コイル3は、磁石2を駆動(移動)させる駆動部として機能する。
【0028】
また、本実施形態のコイル3は、コイル3に流れる電流の向きが切り替えられることにより、X軸の正の向き及びX軸の負の向きに磁石2を移動させる。具体的には、本実施形態のコイル3は、相対移動エリアの中心A0からX軸の正の向きに所定距離(第2端A2)まで磁石2を移動させること、及び、相対移動エリアの中心A0からX軸の負の向きに所定距離(第1端A1)まで磁石2を移動させることができる。本実施形態では、所定距離は0.5mmである。すなわち、相対移動エリアは、-0.5mm(第1端A1)から+0.5mm(第2端A2)までの1.0mmである。なお、本実施形態では、Z軸方向からの平面視において、相対移動エリアの中心A0と、コイル3の巻回軸の位置(コイル3の中心)と、磁石2と、磁気センサ4の中心とが一致している。
【0029】
本実施形態では、磁石2がX軸の正の向き及びX軸の負の向きに移動することに伴いレンズが移動することで、フォーカス調整の機能が実現される。
【0030】
(2.3)磁石の構成
図1A、
図1Bに示すように、磁石2は、X軸方向における一端がN極であり他端がS極である単極着磁の磁石である。磁石2は、例えばネオジム磁石である。
【0031】
磁石2は、矩形平板状に形成されている。磁石2の厚さ方向はZ軸方向に沿っている。また、磁石2の長手方向は、磁石2の磁化方向に沿っている。本開示でいう「磁化方向」は、N極とS極とを結ぶ直線に沿う方向である。磁石2の長手方向(磁化方向)は、相対移動方向(X軸)に沿っている。
【0032】
また、磁石2は着磁面(対向面)20を有している。対向面20は、Z軸方向においてコイル3及び磁気センサ4と対向する面である。対向面20の法線は、Z軸と平行である。また、磁石2は、第1面21と第2面22とを有する。第1面21と第2面22とは、相対移動方向において並んでいる。第1面21及び第2面22は対向面20と直交する。第1面21及び第2面22の法線は、相対移動方向と平行である。第1面21から第2面22に向かう向きがX軸の正の向きである。
【0033】
なお、以下の説明において、第1面21が相対移動エリアの第1端A1に位置する状態を、磁石2が相対移動エリアの第1端A1に位置する状態とする。また、第2面22が相対移動エリアの第2端A2に位置する状態を、磁石2が相対移動エリアの第2端A2に位置する状態とする。また、相対移動方向における第1面21と第2面22との中心が、相対移動エリアの中心A0に位置する状態を、磁石2が相対移動エリアの中心A0に位置する状態とする。
【0034】
(2.4)磁気センサの構成
上述のように、磁気センサ4は、コイル3及び磁石2の相対移動位置を検知する。本実施形態の磁気センサ4は、相対移動エリアの中心A0からのX軸に沿った磁石2の変位量を検知することで、コイル3及び磁石2の相対移動位置を検知する。より具体的には、本実施形態の磁気センサ4は、Z軸方向(相対移動方向に直交し磁石2と磁気センサ4とが並ぶ方向)に沿った磁界強度(磁界強度の変化)を検知することで、相対移動エリアの中心A0からのX軸に沿った磁石2の変位量を検知する。
【0035】
磁気センサ4は、コイル3に対して固定されている。
図1A、
図1Bに示すように、磁気センサ4は、相対方向と直交する方向(Z軸方向)において、磁石2と並ぶように配置されている。言い換えると、Z軸方向からの平面視において磁気センサ4と磁石2とは重なっている。Y軸方向からの平面視において磁気センサ4とコイル3とは重なっている。
図2に示すように、本実施形態の磁気センサ4の全体形状は、直方体状である。
【0036】
磁気センサ4は、第1センサブロック41と、第2センサブロック42と、接続部43と、を有する。
【0037】
第1センサブロック41は、コイル3及び磁石2の相対移動位置を検知する磁気センサ4に用いられる。本実施形態の第1センサブロック41の形状は、直方体状である。
図3A、
図3Bに示すように、第1センサブロック41は、第1磁気抵抗素子401と、基材410と、2つの電極412,413と、を備える。
【0038】
本実施形態の基材410の形状は、直方体状である。基材410は電気絶縁性を有する。基材410は、例えばアルミナ基板等で形成されている。基材410は主面4101と対向面とを有する。
【0039】
基材410の主面4101は、相対移動方向における基材410の一端に形成されている。基材410の主面4101の形状は矩形状である。本実施形態の基材410の主面4101の法線Ax1は、相対移動方向と平行である。
【0040】
基材410の対向面は、Z軸方向において磁石2の対向面20と対向する。基材410の対向面の形状は矩形状である。基材410の対向面は、磁石2の対向面20と平行である。基材410の対向面は、基材410の主面4101と隣り合う面である。
【0041】
第1磁気抵抗素子401は、相対移動方向における第1センサブロック41の一端に設けられている。言い換えると、第1磁気抵抗素子401は、基材410の主面4101に設けられている。第1磁気抵抗素子401は、矩形状の平板である。第1磁気抵抗素子401は、磁石2の対向面20に対して垂直な姿勢で配置されている。
【0042】
第1磁気抵抗素子401は、磁気抵抗効果素子(MRS:Magneto Resistive Sensor)である。本実施形態の第1磁気抵抗素子401は、巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magneto Resistance)素子である。より具体的には、本実施形態の第1磁気抵抗素子401は、CIP(current in plane)型GMR素子である。
【0043】
第1磁気抵抗素子401は、第1主面411を有する。
【0044】
第1主面411の形状は、矩形状である。第1主面411の法線Ax1(
図1A参照)は、相対移動方向と平行である。また、第1主面411は、磁石2の対向面20に垂直である。
【0045】
第1磁気抵抗素子401の電気抵抗値は、第1主面411に印加される磁界の強度(磁界強度)に応じて変化する。本実施形態の第1磁気抵抗素子401の電気抵抗値は、第1主面411に印加される磁界のうち少なくともZ軸方向に沿った成分の磁界強度に応じて変化する。すなわち、本実施形態の第1磁気抵抗素子401は、第1主面411に印加される磁界のうち少なくともZ軸方向に沿った成分の磁界強度を検知する。言い換えると、第1磁気抵抗素子401は、相対移動方向と直交する方向であって磁石2と磁気センサ4とが並ぶ方向(Z軸方向)に沿った磁界の強度を検知する。
【0046】
本実施形態の2つの電極412,413は、基材410の対向面に設けられている。ただし、2つの電極412,413は、基材410の他の面に設けられていてもよい。
【0047】
2つの電極412,413は、例えば銅等で形成されている。本実施形態の電極412は、電源(電源部)の高電位側電路と第1センサブロック41(第1磁気抵抗素子401)とを電気的に接続するための電極(端子)である(
図4参照)。本実施形態の電極413は、第1センサブロック41(第1磁気抵抗素子401)と処理部5とを電気的に接続するための電極である(
図4参照)。なお、本開示でいう「電気的に接続」とは、電気的に導通した状態の接続を意味し、直接的な接続だけでなく、例えば電線等の導体を介した間接的な接続も含む。
【0048】
第2センサブロック42は、コイル3及び磁石2の相対移動位置を検知する磁気センサ4に用いられる。本実施形態の第2センサブロック42の形状は、直方体状である。
図3A、
図3Bに示すように、第2センサブロック42は、第2磁気抵抗素子402と、基材410と、2つの電極422,423と、を備える。
【0049】
本実施形態の基材420の形状は、直方体状である。基材420は電気絶縁性を有する。基材420は、例えばアルミナ基板等で形成されている。基材420は主面4201と対向面とを有する。
【0050】
基材420の主面4201は、相対移動方向における基材420の一端に形成されている。基材420の主面4201の形状は矩形状である。本実施形態の基材420の主面4201の法線Ax1は、相対移動方向と平行である。
【0051】
基材420の対向面は、Z軸方向において磁石2の対向面20と対向する。基材420の対向面の形状は矩形状である。基材420の対向面は、磁石2の対向面20と平行である。基材420の対向面は、基材420の主面4201と隣り合う面である。基材420の対向面の法線は、基材420の主面4201の法線と直交する。なお、第2センサブロック42の基材420の対向面と、第1センサブロック41の基材410の対向面とは、同一の仮想平面に含まれる。
【0052】
第2磁気抵抗素子402は、相対移動方向における第2センサブロック42の一端に設けられている。言い換えると、第2磁気抵抗素子402は、基材420の主面4201に設けられている。第2磁気抵抗素子402は、矩形状の平板である。第2磁気抵抗素子402は、磁石2の対向面20に対して垂直な姿勢で配置されている。
【0053】
第2磁気抵抗素子402は、磁気抵抗効果素子(MRS)である。本実施形態の第2磁気抵抗素子402は、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)である。より具体的には、本実施形態の第2磁気抵抗素子402は、CIP型GMR素子である。
【0054】
第2磁気抵抗素子402は、第2主面421を有する。
【0055】
第2主面421の形状は、矩形状である。第2主面421の法線Ax1(
図1A参照)は、相対移動方向と平行である。すなわち、第2主面421は、第1磁気抵抗素子401の第1主面411と平行な面である。また、第2主面421は、磁石2の対向面20に垂直である。
【0056】
本実施形態の第2主面421は、第1磁気抵抗素子401の第1主面411と同じ形状であり、同じ大きさである。言い換えると第1主面411と第2主面421とは、平面視において合同である。また、本実施形態の第2磁気抵抗素子402の第2主面421の中心における法線Ax1と、第1磁気抵抗素子401の第1主面411の中心における法線Ax1とは一致する。第1主面411の中心における法線Ax1と、第2主面421の中心における法線Ax1とを一致させることで、磁石2に対する第1主面411及び第2主面421の位置を揃えることができる。磁石2に対する第1主面411及び第2主面421の位置を揃えることで、磁気センサ4の位置検知の精度を向上させることができる。
【0057】
また、
図1Bに示すように、第2主面421は、相対移動方向において、コイル3及び磁石2の相対移動エリアの中心A0を基準として、第1磁気抵抗素子401の第1主面411と対称となるように配置されている。言い換えると、相対移動方向におけるコイル3及び磁石2の相対移動エリアの中心A0と第1磁気抵抗素子401の第1主面411との間の第1距離X11と、相対移動方向における相対移動エリアの中心A0と第2磁気抵抗素子402の第2主面421との間の第2距離X12とが等しい。相対移動方向において相対移動エリアの中心A0を基準として第1主面411と第2主面421とを対称に配置することで、相対移動エリアに対する第1主面411及び第2主面421の位置を揃えることができる。相対移動エリアに対する第1主面411及び第2主面421の位置を揃えることで、磁気センサ4の位置検知の精度を向上させることができる。
【0058】
第2磁気抵抗素子402の電気抵抗値は、第2主面421に印加される磁界の強度(磁界強度)に応じて変化する。本実施形態の第2磁気抵抗素子402の電気抵抗値は、第2主面421に印加される磁界のうち少なくともZ軸方向に沿った成分の磁界強度に応じて変化する。すなわち、本実施形態の第2磁気抵抗素子402は、第2主面421に印加される磁界のうち少なくともZ軸方向に沿った成分の磁界強度を検知する。言い換えると、第2磁気抵抗素子402は、相対移動方向と直交する方向であって磁石2と磁気センサ4とが並ぶ方向(Z軸方向)に沿った磁界の強度を検知する。
【0059】
本実施形態の2つの電極422,423は、基材420の対向面に設けられている。ただし、2つの電極422,423は、基材420の他の面に設けられていてもよい。
【0060】
2つの電極422,423は、例えば銅等で形成されている。
図4に示すように、本実施形態の電極422は、第2センサブロック42(第2磁気抵抗素子402)と処理部5とを電気的に接続するための電極(端子)である。本実施形態の電極423は、第2センサブロック42(第2磁気抵抗素子402)と電源(電源部)の低電位側電路(基準電位の電路)とを電気的に接続するための電極である。本実施形態では基準電位はグランド(GND)電位である。
【0061】
図4に示すように、本実施形態の第1センサブロック41の第1磁気抵抗素子401と第2センサブロック42の第2磁気抵抗素子402とはハーフブリッジ接続されている。本実施形態の第1センサブロック41の電極413と第2センサブロック42の電極422とは結線されて電気的に接続されている。つまり、電源の高電位側電路と、第1磁気抵抗素子401と、第2磁気抵抗素子402と、電源の低電位側電路と、が直列接続されている。第1センサブロック41の電極413(第2センサブロック42の電極422)の電位(中点電位)が、磁気センサ4が出力する出力信号Vo1となる。
【0062】
接続部43は、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド等で形成されている。接続部43は電気絶縁性を有する。接続部43の形状は直方体状である。接続部43は、第1センサブロック41と第2センサブロック42とを連結させる。接続部43は、相対移動方向における第1端431と、相対移動方向において第1端431の反対側に位置する第2端432とを有する。なお、本実施形態の第1端431及び第2端432は、矩形状の平面である。第1端431には、相対移動方向における第1センサブロック41の基材410の他端が連結される。第2端432には、相対移動方向における第2センサブロック42の基材420の他端が連結される。言い換えると、第1センサブロック41は、接続部43の第1端431に設けられている。第2センサブロック42は、接続部43の第2端432に設けられている。接続部43が第1センサブロック41と第2センサブロック42とを連結させることで、第1センサブロック41及び第2センサブロック42を一体的にすることができる。
【0063】
すなわち、相対移動方向(X軸方向)における磁気センサ4の一端に第1磁気抵抗素子401の第1主面411が設けられ、相対移動方向における磁気センサ4の他端に第2磁気抵抗素子402の第2主面421が設けられている。相対移動方向における第1センサブロック41の第1主面411と第2センサブロック42の第2主面421との距離X1は、コイル3及び磁石2の相対移動エリアと等しい。すなわち、本実施形態の距離X1は、1.0mmである。なお、本実施形態の距離X1は第1距離X11と第2距離X12とを合計した距離である。第1主面411及び第2主面421間の相対移動方向に沿った距離X1と、コイル3及び磁石2の相対移動エリアとを等しくすることで、位置検知の精度をより向上させることができる。
【0064】
(2.5)処理部の構成
図4に示す処理部5は、磁気センサ4の出力信号Vo1を処理することでコイル3及び磁石2の相対移動位置を検知する。本実施形態の位置検知システム1は、磁気センサ4の出力信号Vo1を処理することで、コイル3及び磁石2の相対移動位置を検知することができる。
【0065】
より具体的には、本実施形態の処理部5は、第1センサブロック41の第1磁気抵抗素子401と第2センサブロック42の第2磁気抵抗素子402との接続点の電位(中点電位)を、磁気センサ4からの出力信号Vo1として処理する。
【0066】
図4に示すように、本実施形態の処理部5は、アンプ51と、マイコン52とを有する。
【0067】
アンプ51は、磁気センサ4と電気的に接続されている。アンプ51は、磁気センサ4が出力する出力信号Vo1を増幅して、出力信号Vo2をマイコン52に出力する。
【0068】
マイコン52は、アンプ51が出力する出力信号Vo2を処理することで、コイル3及び磁石2の相対移動位置を検知する。
【0069】
(3)作用効果
次に、
図5~
図9を参照して、本実施形態の位置検知システム1の作用効果について説明する。なお、以下の説明において、第1磁気抵抗素子401と第2磁気抵抗素子402とを区別しない場合、第1磁気抵抗素子401及び第2磁気抵抗素子402の各々を単に「磁気抵抗素子」と呼ぶことがある。また、第1主面411及び第2主面421の各々を区別しない場合、第1主面411及び第2主面421の各々を単に「主面」と呼ぶことがある。
【0070】
図5~
図7に示すグラフG1は、相対移動方向における相対移動エリアの中心A0を基準としたコイル3及び磁石2の相対移動位置と、第1主面411又は第2主面421に印加されるZ軸方向に沿った磁界の強度との関係を示すグラフである。
【0071】
本実施形態では、コイル3及び磁気センサ4が固定されており、磁石2がコイル3及び磁気センサ4に対して移動する。ただし、磁石2が固定されており、コイル3及び磁気センサ4が磁石2に対して移動する場合であっても、位置検知システム1は、磁石2及びコイル3の相対移動位置を検知することができる。ここで、以下の説明では、磁石2が固定されており、コイル3及び磁気センサ4が磁石2に対して移動するとして、位置検知システム1の作用効果を説明する。
【0072】
図5の例では、第1主面411が相対移動エリアの中心A0(0mm)を基準として-0.5mmの位置にあり、第2主面421が相対移動エリアの中心を基準として+0.5mmの位置にある場合(磁石2が相対移動エリアの中心A0に位置している状態)を例示している。なお、
図5~
図7中の-0.5mmの位置は、相対移動エリアの中心A0からX軸の正の側に0.5mm離れた位置である。
図5~
図7中の+0.5mmの位置は、相対移動エリアの中心A0からX軸の負の側に0.5mm離れた位置である。
【0073】
同様に、
図6の例では、第1主面411が相対移動エリアの中心A0を基準として-1.0mmの位置にあり、第2主面421が相対移動エリアの中心A0にある場合(磁石2が相対移動エリアの第1端A1に位置している状態)を例示している。また、
図7の例では、第1主面411が相対移動エリアの中心A0にあり、第2主面421が相対移動エリアの中心A0を基準として+1.0mmの位置にある場合(磁石2が相対移動エリアの第2端A2に位置している状態)を例示している。
【0074】
図5~
図7に示すように、磁気抵抗素子が検知する磁界強度は、磁気抵抗素子(主面)が相対移動エリアの中心A0から離れるほど(グラフG1の位置の絶対値が大きくなるほど)強くなる。例えば、
図6のように、第2主面421が相対移動エリアの中心A0に位置している場合、第2主面421が検知する磁界強度は0である。
【0075】
センサブロック(磁気抵抗素子)は、Z軸方向における磁界の向きの違いを検知できない。そのため、
図5~
図7に示すように、グラフG1は、相対移動エリアの中心A0を基準として左右対称である。したがって、磁気センサ4が磁気抵抗素子を有するセンサブロックを1つのみ有する場合、相対移動エリアの中心A0を基準として、磁気センサ4がX軸の正の側に位置しているのか又は負の側に位置しているのかの区別ができない。
【0076】
ここで、本実施形態の磁気センサ4は、第1磁気抵抗素子401を有する第1センサブロック41と、第2磁気抵抗素子402を有する第2センサブロック42とを有する。また、第1磁気抵抗素子401の第1主面411と第2磁気抵抗素子402の第2主面421とは相対移動方向において並んでいる。本実施形態の位置検知システム1では、コイル3及び磁石2が相対移動方向における正の向き及び負の向きのどちらに向かって相対移動しても、コイル3及び磁石2の相対移動位置を検知することができる。
【0077】
そして、第1センサブロック41の第1磁気抵抗素子401と第2センサブロック42の第2磁気抵抗素子402とはハーフブリッジ接続されており、処理部5は第1磁気抵抗素子401と第2磁気抵抗素子402との接続点の電位を出力信号として処理する。そのため、本実施形態の位置検知システム1では、単純な回路構成でコイル3及び磁石2の相対移動位置を検知することができる。また、処理部5が第1磁気抵抗素子401と第2磁気抵抗素子402との接続点の電位を出力信号として処理するため、ノイズ成分をキャンセルでき、S/N比が良好となる。
【0078】
また、
図5~
図7に示すように、グラフG1は、位置が変化するとグラフG1の接線の傾きが変化する。位置が0mm~+1mmの範囲では、グラフG1は緩やかなS字状の曲線である。また、位置が-1.0mm~0mmの範囲では、グラフG1は緩やかなS字状を左右反転した(逆S字状の)曲線である。すなわち、磁気抵抗素子が検知する磁界強度は位置の変動に対して1次関数的に変化しないため、磁界強度の変化に対する磁気センサ4の出力の直線性に影響する。
【0079】
ここで、本実施形態の位置検知システム1では、相対移動方向における相対移動エリアの中心A0と第1磁気抵抗素子401の第1主面411との間の第1距離X11と、相対移動方向における相対移動エリアの中心A0と第2磁気抵抗素子402の第2主面421との間の第2距離X12とが等しい。すなわち、本実施形態の第1主面411と第2主面421とは相対移動エリアの中心A0を基準として対称に配置されている。第1主面411と第2主面421とが相対移動エリアの中心A0を基準として対称に配置されているため、S字状(逆S字状)の磁界強度の変化がキャンセルされて、磁界強度の変化に対する磁気センサ4の出力の直線性が向上する。
【0080】
図8は、本実施形態の位置検知システム1における磁気センサ4の出力信号Vo1の電圧値と、コイル3及び磁石2の相対移動位置との関係を示している。なお、
図8の例では、Vcc(電源の高電位側電路)は3.0Vである。
図8中の点P1は、磁気センサ4が
図5に示す位置にある場合(磁石2が相対移動エリアの中心A0に位置している状態)の磁気センサ4の出力信号Vo1の電圧値を示す点である。また、点P2は、磁気センサ4が
図6に示す位置にある場合(磁石2が相対移動エリアの第1端A1に位置している状態)の磁気センサ4の出力信号Vo1の電圧値を示す点である。また、点P3は、磁気センサ4が
図7に示す位置にある場合(磁石2が相対移動エリアの第2端A2に位置している状態)の磁気センサ4の出力信号Vo1の電圧値を示す点である。
図8の例では、コイル3及び磁石2の相対移動位置の変化に対する磁気センサ4の出力信号Vo1の電圧値の変化の直線性は、99.94%であり良好である。
【0081】
図9は、本実施形態の磁気センサ4の出力特性と、GaAs系ホール素子を用いた磁気センサの出力特性とを示すグラフである。
図9では、コイル3及び磁石2の相対移動エリアの中心A0を0.5mmとしている。グラフG2は、本実施形態の磁気センサ4の出力特性を示し、グラフG3は、GaAs系ホール素子を用いた磁気センサの出力特性を示す。本実施形態の第1磁気抵抗素子401及び第2磁気抵抗素子402は、CIP型GMR素子である。CIP型GMR膜の第1ピーク出力を用いることで、本実施形態の磁気センサ4の出力信号Vo1は、GaAs系ホール素子と比較して、出力電圧が4倍以上大きくなり、精度が10倍以上向上する。
【0082】
(4)変形例
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0083】
磁石2は、単極着磁のものに限られず、N極及びS極が交互に配列された多極着磁の磁石でもよい。
【0084】
第1磁気抵抗素子401及び第2磁気抵抗素子402は、GMR素子に限られず、トンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunnel Magneto Resistance)素子又は異方性磁気抵抗効果(AMR:Anisotropic Magneto Resistive)素子であってもよい。
【0085】
上記実施形態では、位置検知システム1がVCMに用いられる場合を例示したが、位置検知システム1は、VCM以外のリニアモータに用いられてもよい。なお、本開示でいう「リニアモータ」とは、相対移動方向が直線に沿うモータを意味する。
【0086】
磁石2がカメラモジュールの本体部に固定され、コイル3がカメラモジュールのレンズに固定されていてもよい。磁石2がカメラモジュールの本体部に固定され、コイル3がカメラモジュールのレンズに固定される場合、例えば、磁石2は移動せずに、コイル3が磁石2に対して移動する。
【0087】
上記実施形態では、コイル3及び磁石2の相対移動エリアが1.0mmである場合を例示したが、コイル3及び磁石2の相対移動エリアは1.0mm未満であってもよいし、1.0mm以上であってもよい。例えば、コイル3及び磁石2の相対移動エリアは2.0mmであってもよい。コイル3及び磁石2の相対移動エリアが2.0mmである場合、相対移動方向における第1主面411と第2主面421との間の距離X1は、2.0mmであることが好ましい。
【0088】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る位置検知システム(1)は、コイル(3)及び磁石(2)と、磁気センサ(4)と、を備える。コイル(3)及び磁石(2)は、磁気的相互作用により相対移動する。磁気センサ(4)は、コイル(3)及び磁石(2)の相対移動位置を検知する。磁気センサ(4)は、第1主面(411)を有する第1磁気抵抗素子(401)と、第2主面(421)を有する第2磁気抵抗素子(402)と、を有する。第1主面(411)と第2主面(421)とは、コイル(3)及び磁石(2)が相対移動する方向である相対移動方向において並んでいる。第1主面(411)の法線(Ax1)と第2主面(421)の法線(Ax1)とは、相対移動方向と平行である。
【0089】
この態様によれば、第1主面(411)と第2主面(421)とが相対移動方向において並んでおり、法線(Ax1)が相対移動方向と平行であるため、例えばコイル(3)及び磁石(2)が振動するように相対移動する場合であっても、センサブロックを用いてコイル(3)及び磁石(2)の位置検知を行うことができる。また、磁界強度の変化に対するセンサブロックの出力変化は優れた直線性を示すため、位置検知の精度を向上させることができる。
【0090】
第2の態様に係る位置検知システム(1)では、第1の態様において、コイル(3)及び磁石(2)の相対移動方向は直線に沿っている。第1距離(X11)と第2距離(X12)とが等しい。第1距離(X11)は、相対移動方向におけるコイル(3)及び磁石(2)の相対移動エリアの中心(A0)と第1磁気抵抗素子(401)の第1主面(411)との間の距離である。第2距離(X12)は、相対移動方向における相対移動エリアの中心(A0)と第2磁気抵抗素子(402)の第2主面(421)との間の距離である。
【0091】
この態様によれば、相対移動方向において相対移動方向の中心を基準として第1主面(411)と第2主面(421)とを対称に配置することで、相対移動エリアに対する第1主面(411)及び第2主面(421)の位置を揃えることができる。相対移動エリアに対する第1主面(411)及び第2主面(421)の位置を揃えることで、磁気センサ(4)の位置検知の精度を向上させることができる。
【0092】
第3の態様に係る位置検知システム(1)では、第1又は第2の態様において、相対移動方向における第1磁気抵抗素子(401)の第1主面(411)と第2磁気抵抗素子(402)の第2主面(421)との間の距離(X1)は、コイル(3)及び磁石(2)の相対移動エリアと等しい。
【0093】
この態様によれば、相対移動方向における第1主面(411)と第2主面(421)との間の距離(X1)と、コイル(3)及び磁石(2)の相対移動エリアとが等しいため、位置検知の精度をより向上させることができる。
【0094】
第4の態様に係る位置検知システム(1)では、第1~第3のいずれかの態様において、第1磁気抵抗素子(401)の第1主面(411)の中心における法線(Ax1)と、第2磁気抵抗素子(402)の第2主面(421)の中心における法線(Ax1)とが一致する。
【0095】
この態様によれば、第1主面(411)の中心における法線(Ax1)と、第2主面(421)の中心における法線(Ax1)とを一致させることで、磁石(2)に対する第1主面(411)及び第2主面(421)の位置を揃えることができる。磁石(2)に対する第1主面(411)及び第2主面(421)の位置を揃えることで、磁気センサ(4)の位置検知の精度を向上させることができる。
【0096】
第5の態様に係る位置検知システム(1)は、第1~第4のいずれかの態様において、第1磁気抵抗素子(401)及び第2磁気抵抗素子(402)は、巨大磁気抵抗効果素子である。
【0097】
この態様によれば、GMR膜の第1ピーク出力を用いることで、GaAs系ホール素子と比較して、磁気センサ(4)の出力信号(Vo1)の出力電圧を4倍以上大きくし、出力信号(Vo1)の精度を10倍以上向上させることができる。
【0098】
第6の態様に係る位置検知システム(1)は、第1~第5のいずれかの態様において、処理部(5)を更に備える。処理部(5)は、磁気センサ(4)が出力する出力信号(Vo1)を処理することでの相対移動位置を検知する。
【0099】
この態様によれば、磁気センサ(4)が出力する出力信号(Vo1)を処理部(5)が処理することで、位置検知システム(1)は、の相対移動位置を検知することができる。
【0100】
第7の態様に係る位置検知システム(1)では、第6の態様において、第1磁気抵抗素子(401)と第2磁気抵抗素子(402)とはハーフブリッジ接続されている。処理部(5)は、第1磁気抵抗素子(401)と第2磁気抵抗素子(402)との接続点の電位を出力信号(Vo1)とする。
【0101】
この態様によれば、単純な回路構成でコイル(3)及び磁石(2)の相対移動位置を検知することができる。
【0102】
第8の態様に係る位置検知システム(1)では、第1~第7のいずれかの態様において、磁気センサ(4)は、第1センサブロック(41)と、第2センサブロック(42)と、接続部(43)を有する。第1センサブロック(41)は、第1磁気抵抗素子(401)を含む。第2センサブロック(42)は、第2磁気抵抗素子(402)を含む。接続部(43)は、第1センサブロック(41)と第2センサブロック(42)とを連結させる。接続部(43)は、相対移動方向における第1端(431)と、相対移動方向において第1端(431)の反対側に位置する第2端(432)と、を有する。第1センサブロック(41)は、第1端(431)に設けられている。第2センサブロック(42)は、第2端(432)に設けられている。
【0103】
この態様によれば、接続部(43)が第1センサブロック(41)と第2センサブロック(42)とを連結させることで、第1センサブロック(41)及び第2センサブロック(42)を一体的にすることができる。
【0104】
第9の態様に係る位置検知システム(1)では、第1~第8のいずれかの態様において、磁石(2)と磁気センサ(4)とは、相対移動方向と直交する方向において並んでいる。第1磁気抵抗素子(401)及び第2磁気抵抗素子(402)は、直交する方向に沿った磁界の強度を検知する。
【0105】
この態様によれば、磁気センサ(4)は、相対移動方向と直交する方向であって、磁石(2)と磁気センサ(4)とが並ぶ方向の磁界の強度を検知することができる。
【0106】
第1の態様以外の構成については、位置検知システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0107】
第10の態様に係る磁気センサ(4)は、磁気的相互作用により相対移動するコイル(3)及び磁石(2)の相対移動位置を検知する。磁気センサ(4)は、第1主面(411)を有する第1磁気抵抗素子(401)と、第2主面(421)を有する第2磁気抵抗素子(402)と、を備える。第1主面(411)と第2主面(421)とは、コイル(3)及び磁石(2)が相対移動する相対移動方向において並んでいる。第1主面(411)の法線(Ax1)と第2主面(421)の法線(Ax1)とは、相対移動方向と平行である。
【0108】
この態様によれば、第1主面(411)と第2主面(421)とが相対移動方向において並んでおり、法線(Ax1)が相対移動方向と平行であるため、例えばコイル(3)及び磁石(2)が振動するように相対移動する場合であっても、センサブロックを用いてコイル(3)及び磁石(2)の位置検知を行うことができる。また、磁界強度の変化に対するセンサブロックの出力変化は優れた直線性を示すため、位置検知の精度を向上させることができる。
【0109】
第11の態様に係るセンサブロックは、磁気センサ(4)に用いられるセンサブロック(第1センサブロック41;第2センサブロック42)である。磁気センサ(4)は、磁気的相互作用により相対移動するコイル(3)及び磁石(2)を備える位置検知システム(1)において、コイル(3)及び磁石(2)の相対移動位置を検知する。センサブロックは、基材(410;420)と、磁気抵抗素子(第1磁気抵抗素子401;第2磁気抵抗素子402)と、を備える。基材は、電気絶縁性を有する。磁気抵抗素子は、基材に設けられ、主面(第1主面411;第2主面421)を有する。磁気抵抗素子の主面の法線(Ax1)は、コイル(3)及び磁石(2)が相対移動する方向である相対移動方向と平行である。
【0110】
この態様によれば、例えばセンサブロックを位置検知システム(1)の第1センサブロック(41)又は第2センサブロック(42)として用いることができる。位置検知システム(1)において、第1主面(411)と第2主面(421)とが相対移動方向において並んでおり、法線(Ax1)が相対移動方向と平行であるため、例えばコイル(3)及び磁石(2)が振動するように相対移動する場合であっても、センサブロックを用いてコイル(3)及び磁石(2)の位置検知を行うことができる。また、磁界強度の変化に対するセンサブロックの出力変化は優れた直線性を示すため、位置検知の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0111】
1 位置検知システム
2 磁石
3 コイル
4 磁気センサ
401 第1磁気抵抗素子(磁気抵抗素子)
402 第2磁気抵抗素子(磁気抵抗素子)
41 第1センサブロック(センサブロック)
410 基材
411 第1主面(主面)
42 第2センサブロック(センサブロック)
420 基材
421 第2主面(主面)
43 接続部
431 第1端
432 第2端
5 処理部
Ax1 法線
Vo1 出力信号
X1 距離
X11 第1距離
X12 第2距離