(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151556
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】熱電変換モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 10/01 20230101AFI20231005BHJP
H10N 10/13 20230101ALI20231005BHJP
H10N 10/857 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L35/34
H01L35/30
H01L35/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061227
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末吉 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】関 佑太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 邦久
(72)【発明者】
【氏名】升本 睦
(57)【要約】
【課題】支持基材及びはんだ層を有さない薄型で一括の多面取りが可能な熱電変換モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】(A)~(D)の工程を含む熱電変換モジュールの製造方法。(A)P型とN型熱電変換材料のチップとを配列して熱電変換材料層を形成する工程;(B)P及びN型用コンタクトホール有する絶縁層L1を形成する工程;(C)P及びN型用コンタクトホールを有する絶縁層L2を形成する工程;(D)絶縁層L1上に、隣り合う1対のP及びN型用コンタクトホールを接続する電極片M1を、隣り合う電極片M1同士が間隔をあけてチップ配列方向に配置させると共に、絶縁層L2上に、隣り合う1対のN及びP型用コンタクトホールを接続する電極片M2を、隣り合う電極片M2同士が接触しないように間隔をあけてチップ配列方向に配置することにより、電極片M1、P型熱電変換材料、電極片M2、N型熱電変換材料の順に電気的に接続させる工程
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)の工程を含む、熱電変換モジュールの製造方法。
(A)支持体S上にP型熱電変換材料のチップとN型熱電変換材料のチップとを配列して熱電変換材料層を形成する工程
(B)前記熱電変換材料層のうち前記支持体S側の面とは反対側の面を覆っており、かつ前記P型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるP型用コンタクトホール及び前記N型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるN型用コンタクトホールを有する絶縁層L1を形成する工程
(C)前記支持体Sを剥離した後、前記熱電変換材料層のうち前記支持体Sが剥離された面を覆っており、かつ前記P型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるP型用コンタクトホール及び前記N型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるN型用コンタクトホールを有する絶縁層L2を形成する工程
(D)前記絶縁層L1上に、隣り合う1対のP型用コンタクトホール及びN型用コンタクトホールを接続する電極片M1を、隣り合う電極片M1同士が接触しないように間隔をあけてチップ配列方向に配置させると共に、前記絶縁層L2上に、隣り合う1対のN型用コンタクトホール及びP型用コンタクトホールを接続する電極片M2を、隣り合う電極片M2同士が接触しないように間隔をあけてチップ配列方向に配置することにより、前記電極片M1、前記P型熱電変換材料のチップ、前記電極片M2、前記N型熱電変換材料のチップの順に電気的に接続させる工程
【請求項2】
前記(A)の工程の前に下記(Z)の工程を含む、請求項1に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(Z)前記支持体S上の外周部に枠を設ける工程
【請求項3】
前記(B)の工程は、下記(B-1)及び(B-2)の工程を含む、請求項1又は2に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(B-1)前記P型熱電変換材料のチップ及び前記N型熱電変換材料のチップの、前記支持体S側の面とは反対側の面上に、絶縁層L1’を形成する工程
(B-2)前記絶縁層L1’に対し露光現像処理又はレーザー照射を行うことにより、パターニングして前記絶縁層L1を形成する工程
【請求項4】
前記(C)の工程は、下記(C-1)及び(C-2)の工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(C-1)前記P型熱電変換材料のチップ及び前記N型熱電変換材料のチップの、前記支持体S側から剥離された面上に、絶縁層L2’を形成する工程
(C-2)前記絶縁層L2’に対し露光現像処理又はレーザー照射を行うことにより、パターニングして前記絶縁層L2を形成する工程
【請求項5】
前記(D)の工程は、下記(D-1)~(D-4)の工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(D-1)前記絶縁層L1、前記P型熱電変換材料のチップ及び前記N型熱電変換材料のチップの表面に、電極片形成層M1’を形成する工程
(D-2)前記電極片形成層M1’をパターニングして電極片M1を形成する工程
(D-3)前記絶縁層L2、前記P型熱電変換材料のチップ及び前記N型熱電変換材料のチップの表面に、電極片形成層M2’を形成する工程
(D-4)前記電極片形成層M2’をパターニングして電極片M2を形成する工程
【請求項6】
前記(D)の工程の後に下記(E-1)~(E-3)の工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(E-1)前記電極片M1及び前記絶縁層L1の表面に保護層H1’を積層する工程
(E-2)前記電極片M2及び前記絶縁層L2の表面に保護層H2’を積層する工程
(E-3)前記電極片M1又は前記電極片M2の表面の一部を露出させる取り出し電極用のコンタクトホールを有する保護層H1を形成する工程
【請求項7】
前記(E-3)の工程の後に下記(F-1)~(F-2)の工程を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(F-1)前記電極片M1及び前記保護層H1’の表面に放熱層T1’を積層する工程
(F-2)前記放熱層T1’をエッチング処理によりパターニングして、取り出し電極とパターニングにより得られる放熱層T1を保護層H1の表面に形成する工程
【請求項8】
前記(B)の工程の後で且つ前記(C)の工程の前に、さらに下記(B’)の工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(B’)前記(B)の工程で得られた前記絶縁層L1上に支持体S1を積層する工程
【請求項9】
前記支持体Sは、樹脂フィルム上に粘着剤から形成した粘着剤層を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記枠は、金属、セラミックス又は樹脂からなる、請求項2に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記絶縁層L1’及びL2’は、それぞれ独立に、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、マレイミド樹脂、及びエポキシ樹脂から選ばれる、請求項3又は4に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項12】
前記絶縁層L1’及びL2’の厚さは、それぞれ独立に、5~200μmである、請求項3、4及び11のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項13】
前記保護層H1’及び保護層H2’は、それぞれ独立に、絶縁性樹脂及びセラミックスから選ばれる、請求項6又は7に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項14】
前記保護層H1’及び保護層H2’の厚さは、それぞれ独立に、5~300μmである、請求項6、7及び13のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項15】
前記放熱層T1’及びT2’は、それぞれ独立に、金、銀、銅、ニッケル、スズ、鉄、クロム、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、インジウム、亜鉛、モリブデン、マンガン、チタン、アルミニウム、ステンレス、及び真鍮から選ばれる、請求項7に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項16】
前記放熱層T1’及びT2’の厚さは、それぞれ独立に、5~550μmである、請求項7又は15に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項17】
前記電極片M1及び電極片M2を構成する電極材料は、それぞれ独立に、金、銀、銅、ニッケル、クロム、白金、パラジウム、ロジウム、モリブデン、アルミニウム、又はこれらのいずれかの金属を含む合金から選ばれる、請求項1、6及び7のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項18】
前記電極片M1及び電極片M2は、それぞれ独立に、スパッタ膜、蒸着膜及びめっき膜からなる群より選ばれる少なくとも1種の膜で形成される、請求項1、5、6及び17のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項19】
前記熱電変換モジュールの総厚さが、150~5,000μmである、請求項1~18のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項20】
前記P型熱電変換材料のチップ及び前記N型熱電変換材料のチップは、熱電半導体組成物からなる、請求項1~19のいずれか1項に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項21】
前記熱電半導体組成物が、熱電半導体材料、樹脂、並びに、イオン液体及び無機イオン性化合物の一方又は双方を含む、請求項20に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エネルギーの有効利用手段の一つとして、ゼーベック効果やペルチェ効果などの熱電効果を有する熱電変換モジュールにより、熱エネルギーと電気エネルギーとを直接相互変換するようにした装置がある。
【0003】
前記熱電変換モジュールとして、いわゆるπ型の熱電変換素子の使用が知られている。π型の熱電変換素子は、互いに離間するー対の電極を基板上に設け、例えば、―方の電極上にP型熱電素子の下面を、他方の電極上にN型熱電素子の下面を、同じく互いに離間して設け、両型の熱電素子の上面同士を対向する基板上の同一の電極に接続する構成を基本単位とし、通常、当該基本単位を両基板内で複数、電気的には直列接続に、熱的には並列接続になるように構成されている。
近年、このようなπ型の熱電変換素子等を含む熱電変換モジュールを用いた製品等の本格的な実用化にあたり、熱電変換モジュールの薄型化、材料の削減、生産性の向上、信頼性の向上等の様々な要求がある。たとえば、特許文献1、2には、前述したπ型の熱電変換素子を用いた熱電変換モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-102643号公報
【特許文献2】国際公開2017/074003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の熱電変換モジュールは、P型熱電材料からなるP型エレメントと、N型熱電材料からなるN型エレメントと、これら異種エレメントを一対ずつ接合してPN接合対を形成可能な金属電極を有する2枚の基板等、から構成されており、少なくとも金属電極やエレメントを支持する基材が使用されていることから、熱電変換モジュールの薄型化、構成材料の削減等については何ら検討されていない。同様に、特許文献2の熱電変換モジュールでは、最終構成において支持体となる基材を含まないが、通常基板が配置される箇所に、接触熱伝導層が設けられており、しかも当該接触熱伝導層は、通常用いられる基材と同種の窒化アルミニウム、窒化シリコン、アルミナ等からなるものであり、支持体としても機能することから、熱電変換モジュールの薄型化、構成材料の削減等についての検討は実質されていない。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、支持基材及びはんだ層を有さない薄型で一括の多面取りが可能な熱電変換モジュールの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、隣接するP型熱電変換材料のチップとN型熱電変換材料のチップとの共通の電極片を、当該電極片の中央部に配置した絶縁層を介し跨ぐように配線する製造方法を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[21]を提供するものである。
[1]下記(A)~(D)の工程を含む、熱電変換モジュールの製造方法。
(A)支持体S上にP型熱電変換材料のチップとN型熱電変換材料のチップとを配列して熱電変換材料層を形成する工程
(B)前記熱電変換材料層のうち前記支持体S側の面とは反対側の面を覆っており、かつ前記P型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるP型用コンタクトホール及び前記N型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるN型用コンタクトホールを有する絶縁層L1を形成する工程
(C)前記支持体Sを剥離した後、前記熱電変換材料層のうち前記支持体Sが剥離された面を覆っており、かつ前記P型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるP型用コンタクトホール及び前記N型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるN型用コンタクトホールを有する絶縁層L2を形成する工程
(D)前記絶縁層L1上に、隣り合う1対のP型用コンタクトホール及びN型用コンタクトホールを接続する電極片M1を、隣り合う電極片M1同士が接触しないように間隔をあけてチップ配列方向に配置させると共に、前記絶縁層L2上に、隣り合う1対のN型用コンタクトホール及びP型用コンタクトホールを接続する電極片M2を、隣り合う電極片M2同士が接触しないように間隔をあけてチップ配列方向に配置することにより、前記電極片M1、前記P型熱電変換材料のチップ、前記電極片M2、前記N型熱電変換材料のチップの順に電気的に接続させる工程
[2]前記(A)の工程の前に下記(Z)の工程を含む、上記[1]に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(Z)前記支持体S上の外周部に枠を設ける工程
[3]前記(B)の工程は、下記(B-1)及び(B-2)の工程を含む、上記[1]又は[2]に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(B-1)前記P型熱電変換材料のチップ及び前記N型熱電変換材料のチップの、前記支持体S側の面とは反対側の面上に、絶縁層L1’を形成する工程
(B-2)前記絶縁層L1’に対し露光現像処理又はレーザー照射を行うことにより、パターニングして前記絶縁層L1を形成する工程
[4]前記(C)の工程は、下記(C-1)及び(C-2)の工程を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(C-1)前記P型熱電変換材料のチップ及び前記N型熱電変換材料のチップの、前記支持体S側から剥離された面上に、絶縁層L2’を形成する工程
(C-2)前記絶縁層L2’に対し露光現像処理又はレーザー照射を行うことにより、パターニングして前記絶縁層L2を形成する工程
[5]前記(D)の工程は、下記(D-1)~(D-4)の工程を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(D-1)前記絶縁層L1、前記P型熱電変換材料のチップ及び前記N型熱電変換材料のチップの表面に、電極片形成層M1’を形成する工程
(D-2)前記電極片形成層M1’をパターニングして電極片M1を形成する工程
(D-3)前記絶縁層L2、前記P型熱電変換材料のチップ及び前記N型熱電変換材料のチップの表面に、電極片形成層M2’を形成する工程
(D-4)前記電極片形成層M2’をパターニングして電極片M2を形成する工程
[6]前記(D)の工程の後に下記(E-1)~(E-3)の工程を含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(E-1)前記電極片M1及び前記絶縁層L1の表面に保護層H1’を積層する工程
(E-2)前記電極片M2及び前記絶縁層L2の表面に保護層H2’を積層する工程
(E-3)前記電極片M1又は前記電極片M2の表面の一部を露出させる取り出し電極用のコンタクトホールを有する保護層H1を形成する工程
[7]前記(E-3)の工程の後に下記(F-1)~(F-2)の工程を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(F-1)前記電極片M1及び前記保護層H1’の表面に放熱層T1’を積層する工程
(F-2)前記放熱層T1’をエッチング処理によりパターニングして、取り出し電極とパターニングにより得られる放熱層T1を保護層H1の表面に形成する工程
[8]前記(B)の工程の後で且つ前記(C)の工程の前に、さらに下記(B’)の工程を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
(B’)前記(B)の工程で得られた前記絶縁層L1上に支持体S1を積層する工程
[9]前記支持体Sは、樹脂フィルム上に粘着剤から形成した粘着剤層を有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[10]前記枠は、金属、セラミックス又は樹脂からなる、上記[2]に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[11]前記絶縁層L1’及びL2’は、それぞれ独立に、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、マレイミド樹脂、及びエポキシ樹脂から選ばれる、上記[3]又は[4]に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[12]前記絶縁層L1’及びL2’の厚さは、それぞれ独立に、5~200μmである、上記[3]、[4]及び[11]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[13]前記保護層H1’及び保護層H2’は、それぞれ独立に、絶縁性樹脂及びセラミックスから選ばれる、上記[6]又は[7]に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[14]前記保護層H1’及び保護層H2’の厚さは、それぞれ独立に、5~300μmである、上記[6]、[7]及び[13]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[15]前記放熱層T1’及びT2’は、それぞれ独立に、金、銀、銅、ニッケル、スズ、鉄、クロム、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、インジウム、亜鉛、モリブデン、マンガン、チタン、アルミニウム、ステンレス、及び真鍮から選ばれる、上記[7]に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[16]前記放熱層T1’及びT2’の厚さは、それぞれ独立に、5~550μmである、上記[7]又は[15]に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[17]前記電極片M1及び電極片M2を構成する電極材料は、それぞれ独立に、金、銀、銅、ニッケル、クロム、白金、パラジウム、ロジウム、モリブデン、アルミニウム、又はこれらのいずれかの金属を含む合金から選ばれる、上記[1]、[6]及び[7]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[18]前記電極片M1及び電極片M2は、それぞれ独立に、スパッタ膜、蒸着膜及びめっき膜からなる群より選ばれる少なくとも1種の膜で形成される、上記[1]、[5]、[6]及び[17]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[19]前記熱電変換モジュールの総厚さが、150~5,000μmである、上記[1]~[18]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[20]前記P型熱電変換材料のチップ及び前記N型熱電変換材料のチップは、熱電半導体組成物からなる、上記[1]~[19]のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
[21]前記熱電半導体組成物が、熱電半導体材料、樹脂、並びに、イオン液体及び無機イオン性化合物の一方又は双方を含む、上記[20]に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、支持基材及びはんだ層を有さない薄型で一括の多面取りが可能な熱電変換モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の熱電変換モジュールの製造方法に従った工程の実施形態1を工程順に示す説明図である。
【
図2】本発明の熱電変換モジュールの製造方法に従った工程の実施形態2を工程順に示す説明図である。
【
図3】本発明の熱電変換モジュールの製造方法に従った工程の実施形態3を工程順に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[熱電変換モジュールの製造方法]
本発明の熱電変換モジュールの製造方法は、下記(A)~(D)の工程を含むことを特徴としている。
(A)支持体S上にP型熱電変換材料のチップとN型熱電変換材料のチップとを配列して熱電変換材料層を形成する工程
(B)前記熱電変換材料層のうち前記支持体S側の面とは反対側の面を覆っており、かつ前記P型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるP型用コンタクトホール及び前記N型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるN型用コンタクトホールを有する絶縁層L1を形成する工程
(C)前記支持体Sを剥離した後、前記熱電変換材料層のうち前記支持体Sが剥離された面を覆っており、かつ前記P型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるP型用コンタクトホール及び前記N型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるN型用コンタクトホールを有する絶縁層L2を形成する工程
(D)前記絶縁層L1上に、隣り合う1対のP型用コンタクトホール及びN型用コンタクトホールを接続する電極片M1を、隣り合う電極片M1同士が接触しないように間隔をあけてチップ配列方向に配置させると共に、前記絶縁層L2上に、隣り合う1対のN型用コンタクトホール及びP型用コンタクトホールを接続する電極片M2を、隣り合う電極片M2同士が接触しないように間隔をあけてチップ配列方向に配置することにより、前記電極片M1、前記P型熱電変換材料のチップ、前記電極片M2、前記N型熱電変換材料のチップの順に電気的に接続させる工程
本発明の熱電変換モジュールの製造方法においては、隣接するP型熱電変換材料のチップとN型熱電変換材料のチップとの共通の電極片を、当該電極片の中央部に配置した絶縁層を介し跨ぐような形状に、P型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップの上下面に直接製膜(配線)することにより、電極を支持基材上に形成することなく、従来用いていたはんだ層及び支持体が不要な、薄型の熱電変換モジュールを一括で効率的に作製することができる。
【0011】
以降の説明では、(A)、(B)、(C)及び(D)のそれぞれの各工程を、この順に、「(A)熱電変換材料のチップ配列工程、又は、(A)工程」、「(B)絶縁層L1形成工程、又は、(B)工程」、「(C)絶縁層L2形成工程、又は、(C)工程」、「(D)電極片形成工程、又は、(D)工程」ともいうことがある。また、他の(E-1)や(F-1)等の各工程を、この順に、「(E-1)工程」、「(F-1)工程」等ともいうことがある。さらに、「P型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップ」を、単に「熱電変換材料のチップ」ともいうことがある。
以下、本発明の熱電変換モジュールの製造方法について、図を用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明の熱電変換モジュールの製造方法に従った工程の実施形態1を工程順に示す説明図であり、(a)は枠2を備える支持体S上にP型熱電変換材料のチップ3pとN型熱電変換材料のチップ3nとを配列して熱電変換材料層3を形成した後の断面構成図であり、(b)は熱電変換材料層3の上面に絶縁層L1’を形成した後の断面構成図であり、(c)は絶縁層L1’にP型用コンタクトホール5p及びN型用コンタクトホール5nを設けた絶縁層L1を形成した後の断面構成図であり、(d)は絶縁層L1上に支持体S1を設けた後、支持体Sを剥離し、熱電変換材料層3の、絶縁層L1とは反対側の面に絶縁層L2’を形成した後の断面構成図であり、(e)は絶縁層L2’にP型用コンタクトホール5p’及びN型用コンタクトホール5n’を設けた絶縁層L2を形成した後の断面構成図であり、(f)は支持体S1を剥離した後、絶縁層L1及び絶縁層L2上に、電極片形成層M1’及び電極片形成層M2’をこの順に形成した後の断面構成図であり、(g)は電極片形成層M1’及び電極片形成層M2’をパターニングして電極片M1及び電極片M2を形成することにより製造された熱電変換モジュール1の断面構成図である。
【0013】
図2は、本発明の熱電変換モジュールの製造方法に従った工程の実施形態2を工程順に示す説明図であり、(a)は
図1の(g)の構成を有する熱電変換モジュール1において、電極片M1及び絶縁層L1の表面に保護層H1’を積層、並びに、電極片M2及び絶縁層L2の表面に保護層H2’を積層した後の断面構成図であり、(b)は電極片M1の表面の一部を露出させる取り出し電極用のコンタクトホール12を有する保護層H1を形成することにより製造された熱電変換モジュール11の断面構成図である。
【0014】
図3は、本発明の熱電変換モジュールの製造方法に従った工程の実施形態3を工程順に示す説明図であり、(a)は
図2の(b)の構成を有する熱電変換モジュール11において、電極片M1の表面及び保護層H1’の表面に放熱層T1’を積層、並びに、保護層H2’の表面に放熱層T2’を積層した後の断面構成図であり、(b)は放熱層T1’をパターニングして、取り出し電極13とパターニングにより得られる放熱層T1を保護層H1の表面に形成することにより製造された熱電変換モジュール21の断面構成図である。
【0015】
(A)熱電変換材料のチップ配列工程
本発明の熱電変換モジュールの製造方法においては、熱電変換材料のチップ配列工程を含む。
熱電変換材料のチップ配列工程は、支持体S上にP型熱電変換材料のチップとN型熱電変換材料のチップとを配列して熱電変換材料層を形成する工程である。
例えば、前述した
図1(a)において、支持体S上にP型熱電変換材料のチップ3pとN型熱電変換材料のチップ3nを配列し熱電変換材料層3を形成する工程である。
P型熱電変換材料のチップとN型熱電変換材料のチップとを配列する方法は、特に制限されないが、例えば、予め準備したP型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップを個々に配列してもよいし、また、P型熱電変換材料のチップとN型熱電変換材料のチップとが、配列された態様で作製されたものを、例えば、粘着剤層を介して支持体S上に貼着することにより配列してもよい。
前記支持体Sは、好ましくは、樹脂フィルム上に粘着剤から形成した粘着剤層を含む。
粘着剤層は、粘着性樹脂を含むものであればよく、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、重合性化合物、重合開始剤等の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
粘着剤層は、粘着性樹脂を含む粘着剤組成物から、公知の方法で形成することができる。例えば、塗布方法により形成させることができる。
粘着性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイソブチレン樹脂等のゴム系樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、及びポリビニルエーテル樹脂等が挙げられる。
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~50μm程度であることが好ましく、2~30μmであることがより好ましい。
【0016】
さらに、P型熱電変換材料のチップとN型熱電変換材料のチップとが交互に配列されるように支持体S上に直接形成してもよい。
P型熱電変換材料のチップとN型熱電変換材料のチップとを直接形成する方法としては、スクリーン印刷、ディスペンサー等による塗布で行うことができる。
【0017】
前記(A)の工程の前に下記(Z)の工程を含むことが好ましい。
(Z)支持体S上の外周部に枠を設ける工程
枠を設けることにより、得られた熱電変換モジュールの外周部の封止が必要なくなる。
前記枠は、金属、セラミックス又は樹脂からなる。封止性能の観点からは金属、セラミックスを用いることが好ましい。また、軽量化の観点からは樹脂を用いることが好ましい。
金属としては、金、銀、銅、ニッケル、クロム、白金、パラジウム、ロジウム、モリブデン、アルミニウム、鉄、鉄-ニッケル合金、又はりん青銅等が挙げられる。
セラミックスとしては、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、窒化ケイ素、炭化ケイ素等を主成分(セラミックス中で50質量%以上)とする材料が挙げられる。なお、前記主成分以外に、例えば、希土類化合物を添加することもできる。
樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。なお、樹脂を用いる場合は、硬質性樹脂を用いたリジッド材であってもよく、柔軟性樹脂を用いたフレキシブル材であってもよい。
【0018】
本発明に用いる熱電変換材料のチップは、特に制限されず、熱電半導体材料からなるものであっても、熱電半導体組成物からなる薄膜であってもよい。
屈曲性、薄型、熱電性能の観点から、熱電半導体材料(以下、「熱電半導体粒子」ということがある。)、樹脂、イオン液体及び無機イオン性化合物の一方又は双方を含む熱電半導体組成物からなる薄膜からなることが好ましい。
なお、本明細書において、「熱電変換材料」又は「熱電変換材料のチップ」は同義であり、また、「熱電変換材料層」とも同義である。
【0019】
(熱電半導体材料)
熱電変換材料のチップに用いる熱電半導体材料は、例えば、微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕し、熱電半導体粒子として使用することが好ましい(以下、熱電半導体材料を「熱電半導体粒子」ということがある。)。
熱電半導体粒子の粒径は、好ましくは10nm~100μm、より好ましくは20nm~50μm、さらに好ましくは30nm~30μmである。
前記熱電半導体粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析装置(Malvern社製、マスターサイザー3000)にて測定することにより得られ、粒径分布の中央値とした。
【0020】
本発明に用いる熱電変換材料のチップにおいて、P型熱電変換材料のチップ及びN型変換材料のチップを構成する熱電半導体材料としては、温度差を付与することにより、熱起電力を発生させることができる材料であれば特に制限されず、例えば、P型ビスマステルライド、N型ビスマステルライド等のビスマス-テルル系熱電半導体材料;GeTe、PbTe等のテルライド系熱電半導体材料;アンチモン-テルル系熱電半導体材料;ZnSb、Zn3Sb2、Zn4Sb3等の亜鉛-アンチモン系熱電半導体材料;SiGe等のシリコン-ゲルマニウム系熱電半導体材料;Bi2Se3等のビスマスセレナイド系熱電半導体材料;β―FeSi2、CrSi2、MnSi1.73、Mg2Si等のシリサイド系熱電半導体材料;酸化物系熱電半導体材料;FeVAl、FeVAlSi、FeVTiAl等のホイスラー材料、TiS2等の硫化物系熱電半導体材料等が用いられる。
【0021】
これらの中でも、本発明に用いる前記熱電半導体材料は、P型ビスマステルライド又はN型ビスマステルライド等のビスマス-テルル系熱電半導体材料であることが好ましい。
前記P型ビスマステルライドは、キャリアが正孔で、ゼーベック係数が正値であり、例えば、BiXTe3Sb2-Xで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Xは、好ましくは0<X≦0.8であり、より好ましくは0.4≦X≦0.6である。Xが0より大きく0.8以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、P型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
また、前記N型ビスマステルライドは、キャリアが電子で、ゼーベック係数が負値であり、例えば、Bi2Te3-YSeYで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Yは、好ましくは0≦Y≦3(Y=0の時:Bi2Te3)であり、より好ましくは0.1<Y≦2.7である。Yが0以上3以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、N型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
【0022】
熱電半導体粒子の前記熱電半導体組成物中の含有量は、好ましくは、30~99質量%である。より好ましくは、50~96質量%であり、さらに好ましくは、70~95質量%である。熱電半導体粒子の含有量が、上記範囲内であれば、ゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が大きく、また電気伝導率の低下が抑制され、熱伝導率のみが低下するため高い熱電性能を示すとともに、十分な皮膜強度、屈曲性を有する膜が得られ好ましい。
【0023】
また、熱電半導体粒子は、アニール処理(以下、「アニール処理A」ということがある。)されたものであることが好ましい。アニール処理Aを行うことにより、熱電半導体粒子は、結晶性が向上し、さらに、熱電半導体粒子の表面酸化膜が除去されるため、熱電変換材料のゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が増大し、熱電性能指数をさらに向上させることができる。
【0024】
(樹脂)
本発明に用いる樹脂は、熱電半導体材料(熱電半導体粒子)間を物理的に結合する作用を有し、熱電変換モジュールの屈曲性を高めることができるとともに、塗布等による薄膜の形成を容易にする。
樹脂としては、耐熱性樹脂、又はバインダー樹脂が好ましい。
【0025】
耐熱性樹脂は、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理等により熱電半導体粒子を結晶成長させる際に、樹脂としての機械的強度及び熱伝導率等の諸物性が損なわれず維持される。
前記耐熱性樹脂は、耐熱性がより高く、且つ薄膜中の熱電半導体粒子の結晶成長に悪影響を及ぼさないという点から、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、屈曲性に優れるという点からポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂がより好ましい。
【0026】
前記耐熱性樹脂は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、屈曲性を維持することができる。
【0027】
また、前記耐熱性樹脂は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、熱電変換材料のチップの屈曲性を維持することができる。
【0028】
前記耐熱性樹脂の前記熱電半導体組成物中の含有量は、0.1~40質量%、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは、1~20質量%、さらに好ましくは2~15質量%である。前記耐熱性樹脂の含有量が、上記範囲内であると、熱電半導体材料のバインダーとして機能し、薄膜の形成がしやすくなり、しかも高い熱電性能と皮膜強度が両立した膜が得られ、熱電変換材料のチップの外表面には樹脂部が存在する。
【0029】
バインダー樹脂は、焼成(アニール)処理(後述する「アニール処理B」に対応、以下同様。)後の、熱電変換材料のチップの作製時に用いるガラス、アルミナ、シリコン等の基材からの剥離も容易にする。
【0030】
バインダー樹脂としては、焼成(アニール)温度以上で、90質量%以上が分解する樹脂を指し、95質量%以上が分解する樹脂であることがより好ましく、99質量%以上が分解する樹脂であることが特に好ましい。また、熱電半導体組成物からなる塗布膜(薄膜)を焼成(アニール)処理等により熱電半導体粒子を結晶成長させる際に、機械的強度及び熱伝導率等の諸物性が損なわれず維持される樹脂がより好ましい。
バインダー樹脂として、焼成(アニール)温度以上で90質量%以上が分解する樹脂、即ち、前述した耐熱性樹脂よりも低温で分解する樹脂、を用いると、焼成によりバインダー樹脂が分解するため、焼成体中に含まれる絶縁性の成分となるバインダー樹脂の含有量が減少し、熱電半導体組成物における熱電半導体粒子の結晶成長が促進されるので、熱電変換材料層における空隙を少なくして、充填率を向上させることができる。
なお、焼成(アニール)温度以上で所定値(例えば、90質量%)以上が分解する樹脂であるか否かは、熱重量測定(TG)による焼成(アニール)温度における質量減少率(分解前の質量で分解後の質量を除した値)を測定することにより判断する。
【0031】
このようなバインダー樹脂として、熱可塑性樹脂や硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のポリビニル重合体;ポリウレタン;エチルセルロース等のセルロース誘導体;などが挙げられる。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、光硬化性アクリル樹脂、光硬化性ウレタン樹脂、光硬化性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、熱電変換材料層における熱電変換材料の電気抵抗率の観点から、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリカーボネート、エチルセルロース等のセルロース誘導体がより好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
【0032】
バインダー樹脂は、焼成(アニール)処理工程における熱電半導体材料に対する焼成(アニール)処理の温度に応じて適宜選択される。バインダー樹脂が有する最終分解温度以上で焼成(アニール)処理することが、熱電変換材料層における熱電変換材料の電気抵抗率の観点から好ましい。
本明細書において、「最終分解温度」とは、熱重量測定(TG)による焼成(アニール)温度における質量減少率が100%(分解後の質量が分解前の質量の0%)となる温度をいう。
【0033】
バインダー樹脂の最終分解温度は、通常150~600℃、好ましくは200~560℃、より好ましくは220~460℃、特に好ましくは240~360℃である。最終分解温度がこの範囲にあるバインダー樹脂を用いれば、熱電半導体材料のバインダーとして機能し、印刷時に薄膜の形成がしやすくなる。
【0034】
バインダー樹脂の熱電半導体組成物中の含有量は、0.1~40質量%、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは0.5~10質量%、特に好ましくは0.5~5質量%である。バインダー樹脂の含有量が、上記範囲内であると、熱電変換材料層における熱電変換材料の電気抵抗率を減少させることができる。
【0035】
熱電変換材料中におけるバインダー樹脂の含有量は、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~5質量%、特に好ましくは0~1質量%である。熱電変換材料中におけるバインダー樹脂の含有量が、上記範囲内であれば、熱電変換材料層における熱電変換材料の電気抵抗率を減少させることができる。
【0036】
(イオン液体)
熱電半導体組成物に含まれ得るイオン液体は、カチオンとアニオンとを組み合わせてなる溶融塩であり、-50℃以上400℃未満のいずれかの温度領域において液体で存在し得る塩をいう。換言すれば、イオン液体は、融点が-50℃以上400℃未満の範囲にあるイオン性化合物である。イオン液体の融点は、好ましくは-25℃以上200℃以下、より好ましくは0℃以上150℃以下である。イオン液体は、蒸気圧が極めて低く不揮発性であること、優れた熱安定性及び電気化学安定性を有していること、粘度が低いこと、かつイオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体材料間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。また、イオン液体は、非プロトン性のイオン構造に基づく高い極性を示し、耐熱性樹脂との相溶性に優れるため、熱電変換材料の電気伝導率を均一にすることができる。
【0037】
イオン液体は、公知または市販のものが使用できる。例えば、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、イミダゾリウム等の窒素含有環状カチオン化合物及びそれらの誘導体;テトラアルキルアンモニウム系のアミン系カチオン及びそれらの誘導体;ホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、テトラアルキルホスホニウム等のホスフィン系カチオン及びそれらの誘導体;リチウムカチオン及びその誘導体等のカチオン成分と、Cl-、Br-、I-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、NO3
-、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、(FSO2)2N-、(CF3SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、F(HF)n
-、(CN)2N-、C4F9SO3
-、(C2F5SO2)2N-、C3F7COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
【0038】
上記のイオン液体の中で、高温安定性、熱電半導体材料及び樹脂との相溶性、熱電半導体材料間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、イオン液体のカチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0039】
カチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体として、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファートが好ましい。
【0040】
また、カチオン成分が、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体として、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]が好ましい。
【0041】
また、上記のイオン液体は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
【0042】
イオン液体の熱電半導体組成物中の含有量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~20質量%である。イオン液体の含有量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下が効果的に抑制され、高い熱電性能を有する膜が得られる。
【0043】
(無機イオン性化合物)
熱電半導体組成物に含まれ得る無機イオン性化合物は、少なくともカチオンとアニオンから構成される化合物である。無機イオン性化合物は400~900℃の幅広い温度領域において固体で存在し、イオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体材料間の電気伝導率の低減を抑制することができる。
【0044】
無機イオン性化合物の熱電半導体組成物中の含有量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~10質量%である。無機イオン性化合物の含有量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下を効果的に抑制でき、結果として熱電性能が向上した膜が得られる。
なお、無機イオン性化合物とイオン液体とを併用する場合においては、熱電半導体組成物中における、無機イオン性化合物及びイオン液体の含有量の総量は、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~10質量%である。
【0045】
P型及びN型の熱電半導体組成物を、塗布する方法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、バーコート法、ドクターブレード法等の公知の方法が挙げられ、特に制限されない。塗膜をパターン状に形成する場合は、所望のパターンを有するスクリーン版を用いて簡便にパターン形成が可能なスクリーン印刷、ステンシル印刷、スロットダイコート等が好ましく用いられる。
次いで、得られた塗膜を乾燥することにより、薄膜が形成されるが、乾燥方法としては、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80~150℃であり、加熱時間は、加熱方法により異なるが、通常、数秒~数十分である。
また、熱電半導体組成物の調製において溶媒を使用した場合、加熱温度は、使用した溶媒を乾燥できる温度範囲であれば、特に制限はない。
【0046】
熱電変換材料のチップの厚さは、特に限定されるものではなく、熱電性能と皮膜強度の点から、好ましくは100nm~1000μm、より好ましくは300nm~600μm、さらに好ましくは5~400μmである。
【0047】
熱電半導体組成物からなるP型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップは、さらにアニール処理(以下、「アニール処理B」ということがある。)を行うことが好ましい。該アニール処理Bを行うことで、熱電性能を安定化させるとともに、熱電変換材料チップ中の熱電半導体粒子を結晶成長させることができ、熱電性能をさらに向上させることができる。アニール処理Bは、特に限定されないが、通常、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行われ、用いる熱電半導体組成物等の耐熱温度に依存するが、100~500℃で、数分~数十時間行われる。
【0048】
(B)絶縁層L1形成工程
本発明の熱電変換モジュールの製造方法においては、絶縁層L1形成工程を含む。
絶縁層L1形成工程は、熱電変換材料層のうち支持体S側の面とは反対側の面を覆った絶縁層を形成し、次いで当該絶縁層にP型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるP型用コンタクトホール及びN型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるN型用コンタクトホールを有する絶縁層L1を形成する工程である。
【0049】
(B)の工程は、好ましくは(B-1)及び(B-2)の工程を含む。
【0050】
(B-1)工程は、P型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップの、支持体S側の面とは反対側の面上に、絶縁層L1’を形成する工程である。
例えば、
図1(b)において、P型熱電変換材料のチップ3pとN型熱電変換材料のチップ3nとを配列して形成した熱電変換材料層3の上面に絶縁層L1’を形成する工程である。
絶縁層L1’を形成する方法としては、P型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップ間、及びそれら周辺の隙間が埋まらないように形成する方法が好ましい。例えば、ラミネート等、公知の方法が使用できる。
前記絶縁層L1’は、好ましくは、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、マレイミド樹脂、及びエポキシ樹脂から選ばれる。
絶縁層L1’の厚さは、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは10~100μmであり、さらに好ましくは15~30μmである。絶縁層L1’の厚さがこの範囲にあると、隣接する電極片間の絶縁性が担保でき、かつ熱電変換モジュールの厚さの増大要因にはならない。
【0051】
(B-2)工程は、前記絶縁層L1’に対し露光現像処理又はレーザー照射を行うことにより、パターニングして前記絶縁層L1を形成する工程である。
例えば、
図1(c)において、絶縁層L1’にP型用コンタクトホール5p及びN型用コンタクトホール5nを設けることにより、絶縁層L1を形成する工程である。
絶縁層L1を形成する方法としては、公知の方法を用いることができ、特に制限されないが、絶縁層L1’に対し露光現像処理又はレーザー照射によりP型用コンタクトホール及びN型用コンタクトホールを設けることが好ましい。
露光現像処理方法にあっては、例えば、絶縁層L1’として、感光性樹脂を用いた場合、コンタクトホール形成用の所望のフォトマスクを介し、紫外線等を照射し露光し、次いで、現像液等を用い処理を行う方法等が挙げられる。
また、レーザー照射にあっては、例えば、炭酸ガスレーザー、紫外線レーザー等による加工方法等が挙げられる。
【0052】
前記(B)の工程の後で且つ前記(C)の工程の前に、さらに下記(B’)の工程を含んでいてもよい。
(B’)前記(B)の工程で得られた前記絶縁層L1上に支持体S1を積層する工程
例えば、
図1(c)において、絶縁層L1に支持体S1を積層する工程である。
支持体S1は、支持体Sと材料が同じであっても異なっていてもよい。
【0053】
(C)絶縁層L2形成工程
本発明の熱電変換モジュールの製造方法においては、絶縁層L2形成工程を含む。
絶縁層L2形成工程は、支持体Sを剥離した後、熱電変換材料層のうち支持体Sが剥離された面を覆った絶縁層を形成し、次いで当該絶縁層にP型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるP型用コンタクトホール及びN型熱電変換材料のチップの各々の表面における一部を露出させるN型用コンタクトホールを形成する工程である。
【0054】
(C)の工程は、好ましくは下記(C-1)及び(C-2)の工程を含む。
【0055】
(C-1)工程は、P型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップの、支持体S側から剥離された面上に、絶縁層L2’を形成する工程である。
例えば、
図1(d)において、絶縁層L1上に支持体S1を設けた後、支持体Sを剥離し、熱電変換材料層3の、絶縁層L1とは反対側の面に絶縁層L2’を形成する工程である。
絶縁層L2’を形成する方法、絶縁層L2’に用いる材料、及び絶縁層L2’の厚さは、前述した絶縁層L1’と同様である。
【0056】
(C-2)工程は、絶縁層L2’に対し露光現像処理又はレーザー照射を行うことにより、パターニングして絶縁層L2を形成する工程である。
例えば、
図1(e)において、絶縁層L2’にP型用コンタクトホール5p’及びN型用コンタクトホール5n’を設けることにより、絶縁層L2を形成する工程である。
露光現像処理又はレーザー照射については、前述した絶縁層L1’と同様である。
【0057】
(D)電極片形成工程
本発明の熱電変換モジュールの製造方法においては、電極片形成工程を含む。
電極片形成工程は、絶縁層L1上に、隣り合う1対のP型用コンタクトホール及びN型用コンタクトホールを接続する電極片M1を、隣り合う電極片M1同士が接触しないように間隔をあけてチップ配列方向に配置させると共に、絶縁層L2上に、隣り合う1対のN型用コンタクトホール及びP型用コンタクトホールを接続する電極片M2を、隣り合う電極片M2同士が接触しないように間隔をあけてチップ配列方向に配置することにより、電極片M1、N型熱電変換材料のチップ、前記電極片M2、前記P型熱電変換材料のチップの順に電気的に接続させる工程である。
【0058】
(D)の工程は、好ましくは下記(D-1)~(D-4)の工程を含む。
【0059】
(D-1)工程は、絶縁層L1、P型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップの表面に、電極片形成層M1’を形成する工程である。
例えば、
図1(e)において、絶縁層L1から支持体S1を剥離した後、(f)に示すように、絶縁層L1上に、電極片形成層M1’を形成する工程である。
【0060】
(D-2)工程は電極片形成層M1’をパターニングして電極片M1を形成する工程である。
例えば、
図1(f)において、電極片形成層M1’をパターニングして、(g)に示すように電極片M1を形成する工程である。
【0061】
(D-3)工程は、絶縁層L2、P型熱電変換材料のチップ及びN型熱電変換材料のチップの表面に、電極片形成層M2’を形成する工程である。
例えば、
図1(e)において、支持体S1を剥離した後、(f)に示すように、絶縁層L2上に、電極片形成層M2’を形成する工程である。
【0062】
(D-4)工程は、前記電極片形成層M2’をパターニングして電極片M2を形成する工程である。
例えば、
図1(f)において、電極片形成層M2’をパターニングして、(g)に示すように電極片M2を形成する工程である。
【0063】
本発明に用いる電極片形成層M1’及び電極片形成層M2’(以下、単に「電極形成層」ということがある。)には、熱電性能を維持する観点から、高い導電性、高い熱伝導性が求められる。
このため、電極片形成層は、すなわち、電極片M1及び電極片M2(以下、単に「電極片」ということがある。)は、それぞれ独立に、好ましくはスパッタ膜、蒸着膜及びめっき膜からなる群より選ばれる少なくとも1種の膜で形成される。
電極形成層、すなわち、電極片を構成する電極材料は、それぞれ独立に、好ましくは金、銀、銅、ニッケル、クロム、白金、パラジウム、ロジウム、モリブデン、アルミニウム、又はこれらのいずれかの金属を含む合金から選ばれる。
【0064】
電極形成層をパターニングし電極片とする方法としては、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法が挙げられる。
所定のパターン形状に加工する具体的な方法としては、例えば、露光現像処理で直接形成する手法、露光現像処理後にエッチングで形成する手法、レーザー加工により直接形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、パターン精度やタクトタイムの観点から、露光現像処理後にエッチングで形成する手法が特に好ましい。
【0065】
前記電極形成層の厚さは、用いる絶縁層L1及び絶縁層L2の厚さによるが、好ましくは5~200μm、より好ましくは8~150μm、さらに好ましくは10~120μmである。電極形成層の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり、電極片として十分な強度が得られる。
【0066】
(D)の工程の後に、さらに下記(E-1)~(E-3)の工程を含むことが好ましい。
【0067】
(E-1)工程は、電極片M1及び絶縁層L1の表面に保護層H1’を積層する工程である。
例えば、
図2(a)に示すように、
図1(g)の構成を有する熱電変換モジュール1の電極片M1及び絶縁層L1の表面に保護層H1’を積層する工程である。
【0068】
(E-2)工程は、電極片M2及び絶縁層L2の表面に保護層H2’を積層する工程
である。
例えば、
図2(a)に示すように、
図1(g)の構成を有する熱電変換モジュール1の電極片M2及び絶縁層L2の表面に保護層H2’を積層する工程である。
【0069】
(E-3)工程は、前記電極片M1又は前記電極片M2の表面の一部を露出させる取り出し電極用のコンタクトホールを有する保護層H1を形成する工程である。
例えば、
図2(b)においては、電極片M1の表面の一部を露出させる取り出し電極用のコンタクトホール12を有する保護層H1を形成する工程である。
【0070】
保護層H1’及び保護層H2’に用いる材料は、特に制限されず、公知のものが使用できる。前記保護層H1’及び保護層H2’は、それぞれ独立に、好ましくは絶縁性樹脂及びセラミックスから選ばれる。
絶縁性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(特にポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂等の樹脂類;アルキルチタネート;エチレンイミン;等が挙げられる。これらは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
セラミックスとしては、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、窒化ケイ素、炭化ケイ素等を主成分(セラミックス中で50質量%以上)とする材料が挙げられる。なお、前記主成分以外に、例えば、希土類化合物を添加することもできる。
【0071】
保護層H1’及び保護層H2’を積層する方法としては、前記材料を適当な溶剤に溶解又は分散させてなる保護層形成用溶液を、公知の方法により塗布し、得られた塗膜を乾燥させ、所望により、加熱又は光照射することにより形成することができる。また、別途保護層形成用フィルムを形成し、ロールラミネーターや平坦プレス加工機でラミネートさせて保護層H1’及び保護層H2’を形成してもよい。ラミネートは常温で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。
保護層H1’及び保護層H2’の厚さは、熱電性能の観点から、適宜決定されるが、それぞれ独立に、好ましくは5~300μm、より好ましくは25~200μm、さらに好ましくは50~100μmである。
保護層H1’及び保護層H2’を塗布によって形成する場合、保護層の厚さは、それぞれ独立に、好ましくは5~150μm、より好ましくは10~100μm、さらに好ましくは15~50μmである。
保護層H1’及び保護層H2’をラミネートによって形成する場合、保護層の厚さは、それぞれ独立に、好ましくは20~300μm、より好ましくは40~200μm、さらに好ましくは50~100μmである。
【0072】
(E-3)の工程の後に、さらに下記(F-1)~(F-2)の工程を含むことが好ましい。
【0073】
(F-1)工程は、前記電極片M1及び前記保護層H1’の表面に放熱層T1’を積層する工程である。
例えば、
図3(a)に示すように、
図2(b)の構成を有する熱電変換モジュール11の電極片M1の表面及び保護層H1’の表面に放熱層T1’を積層する工程である。
【0074】
(F-2)工程は、放熱層T1’をエッチング処理によりパターニングして、取り出し電極とパターニングにより得られる放熱層T1を保護層H1の表面に形成する工程である。
例えば、
図3(b)に示すように、(a)において、放熱層T1’をパターニングして、取り出し電極13とパターニングにより得られる放熱層T1を保護層H1の表面に形成する工程である。
【0075】
(E-3)の工程の後に、下記(F-2)の工程を含んでいてもよい。
(F-2)保護層H2’の表面に放熱層T2’を積層する工程
例えば、
図3(b)に示すように、保護層H2’の表面に放熱層T2’を積層する工程である。
【0076】
放熱層T1’及び放熱層T2’に用いる材料は、特に制限されず、公知のものが使用できる。好ましくは、それぞれ独立に、金、銀、銅、ニッケル、スズ、鉄、クロム、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、インジウム、亜鉛、モリブデン、マンガン、チタン、アルミニウム、ステンレス、及び真鍮から選ばれる。
【0077】
放熱層T1’及び放熱層T2’を積層する方法としては、特に制限されないが、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)等のドライプロセス、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティング法や電着法等のウェットプロセス、銀塩法、電解めっき法、無電解めっき法等が挙げられる。
また、放熱層T1’及び放熱層T2’のパターニングは、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により行うことができる。
放熱層T1’及び放熱層T2’の熱伝導率は、それぞれ独立に、好ましくは5~500W/(m・K)、より好ましくは8~500W/(m・K)、さらに好ましくは10~450W/(m・K)、特に好ましくは12~420W/(m・K)、最も好ましくは15~400W/(m・K)である。
【0078】
放熱層T1’及び放熱層T2’の厚さは、熱電性能の観点から、適宜決定されるが、5~550μmが好ましく、40~530μmがより好ましく、80~510μmがさらに好ましい。
【0079】
本発明の熱電変換モジュールの製造方法により製造された、熱電変換モジュールの総厚さは、好ましくは150~5,000μmである。
【0080】
本発明の熱電変換モジュールは、従来使用していた支持体としての基材及びはんだ層が不要であり、熱電変換モジュールを薄型にできる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の熱電変換モジュールによれば、従来の熱電変換モジュールをより薄型にでき、軽量、小型化、高集積化につなげることが期待される。
【符号の説明】
【0082】
1,11,21:熱電変換モジュール
2:枠
3p:P型熱電変換材料のチップ
3n:N型熱電変換材料のチップ
3:熱電変換材料層
L1,L2:絶縁層(コンタクトホール有)
L1’,L2’:絶縁層
S,S1:支持体
5p,5p’:P型用コンタクトホール
5n,5n’:N型用コンタクトホール
M1’,M2’:電極片形成層
M1,M2:電極片(パターン有)
H1’,H2’:保護層
H1,H2:保護層(コンタクトホール有)
T1’,T2’:放熱層
T1,T2:放熱層(パターン有)
12:取り出し電極用コンタクトホール
13:取り出し電極