(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151569
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20231005BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20231005BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60C11/12 D
B60C5/00 H
B60C11/03 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061248
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】中田 達也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC11
3D131BC12
3D131BC15
3D131BC20
3D131BC33
3D131CB06
3D131EA01V
3D131EA08U
3D131EA08V
3D131EB05U
3D131EB08U
3D131EB23X
3D131EB24X
3D131EB86V
3D131EB87V
3D131EB91V
3D131EB94V
3D131EB99V
3D131EC01X
3D131EC02V
(57)【要約】
【課題】本発明は、摩耗性能の低下を抑制しつつも、ブロック状の陸部の接地性を向上させ得る、タイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】陸部が第1の幅方向サイプによりブロック状部分に区画され、前記第1の幅方向サイプは、少なくとも一部がタイヤ幅方向に対して傾斜して延び、前記ブロック状部分のタイヤ幅方向の幅は、接地幅の25%以上であり、前記第1の幅方向サイプは、前記第1の幅方向サイプの延在方向の一部に途切れ部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部の踏面に、タイヤ周方向に延びる1本のみ又は2本のみの周方向主溝と、前記周方向主溝間又はトレッド端と前記周方向主溝との間によって区画される複数の陸部と、を備えたタイヤであって、
前記陸部は、前記陸部を区画する2本の前記周方向主溝間又はトレッド端と前記周方向主溝との間を連通する、タイヤ幅方向に延びる第1の幅方向サイプにより、ブロック状部分に区画され、
前記第1の幅方向サイプは、少なくとも一部がタイヤ幅方向に対して傾斜して延び、
前記ブロック状部分のタイヤ幅方向の幅は、接地幅の25%以上であり、
前記第1の幅方向サイプは、前記第1の幅方向サイプの延在方向の一部に途切れ部を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記途切れ部は、前記第1の幅方向サイプの車両装着時外側の端から、前記端から前記幅方向サイプの延在方向に沿って前記ブロック状部分のタイヤ幅方向の幅の25%の距離だけ離間した位置までの間に位置する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1の幅方向サイプを有する前記陸部は、タイヤ赤道面上に位置するセンター陸部である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記途切れ部の延在長さは、前記陸部のタイヤ幅方向の幅の10%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ、特に、高い排水性能、制動性能及び旋回性能を有する高性能タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ、特に高性能タイヤにおいて、ブロック状の陸部の接地性を向上させる技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなタイヤにおいては、摩耗性能が低下する場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、摩耗性能の低下を抑制しつつも、ブロック状の陸部の接地性を向上させ得る、タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)トレッド部の踏面に、タイヤ周方向に延びる1本のみ又は2本のみの周方向主溝と、前記周方向主溝間又はトレッド端と前記周方向主溝との間によって区画される複数の陸部と、を備えたタイヤであって、
前記陸部は、前記陸部を区画する2本の前記周方向主溝間又はトレッド端と前記周方向主溝との間を連通する、タイヤ幅方向に延びる第1の幅方向サイプにより、ブロック状部分に区画され、
前記第1の幅方向サイプは、少なくとも一部がタイヤ幅方向に対して傾斜して延び、
前記ブロック状部分のタイヤ幅方向の幅は、接地幅の25%以上であり、
前記第1の幅方向サイプは、前記第1の幅方向サイプの延在方向の一部に途切れ部を有することを特徴とする、タイヤ。
ここで、トレッド部の「踏面」とは、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した状態(以下、最大負荷状態という)において、路面と接することとなるトレッド部の表面のタイヤ周方向全域にわたる部分をいう。
また、「周方向主溝」とは、タイヤ周方向に延びる、溝幅(開口幅)が2mm以上の溝をいうものとする。「周方向主溝」が「タイヤ周方向に延びる」とは、タイヤ周方向に対して延びる場合の他、タイヤ周方向に対して5°以下の傾斜角度で傾斜して延びる場合も含まれる。また、タイヤ周方向に真っすぐ延びる場合のみならず、ジグザグ状、湾曲状に延びる場合も含まれる。
また、「トレッド端」とは、上記最大負荷状態における接地面のタイヤ幅方向外側端を意味する。
また、「第1の幅方向サイプ」の「サイプ」とは、タイヤ転動時にトレッド接地面内において閉口する程度の極めて幅の狭い溝部である。
「ブロック状部分のタイヤ幅方向の幅」は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態(以下、基準状態という)でのタイヤ幅方向の幅(最大幅)をいう。「接地幅」とは、上記最大負荷状態における接地面のタイヤ幅方向の幅(最大幅)をいう。
【0007】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、「最大負荷荷重」は、上記の最大負荷能力に対応する荷重をいう。
【0008】
(2)前記途切れ部は、前記第1の幅方向サイプの車両装着時外側の端から、前記端から前記第1の幅方向サイプの延在方向に沿って前記ブロック状部分のタイヤ幅方向の幅の25%の距離だけ離間した位置までの間に位置する、上記(1)に記載のタイヤ。
【0009】
(3)前記第1の幅方向サイプを有する前記陸部は、タイヤ赤道面上に位置するセンター陸部である、上記(1)又は(2)に記載のタイヤ。
【0010】
(4)前記途切れ部の延在長さは、前記陸部のタイヤ幅方向の幅の10%以下である、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のタイヤ。
ここで、「ブロック状部分のタイヤ幅方向の幅」は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態(以下、基準状態という)での幅(最大幅)をいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、摩耗性能の低下を抑制しつつも、ブロック状の陸部の接地性を向上させ得る、タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるタイヤのトレッドパターンの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。なお、詳細な説明は省略するが、本実施形態のタイヤは、一対のビード部からそれぞれ径方向外側に延びるサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨ってトレッド部を含むクラウン部が連なり、一方のビード部からクラウン部を通り、他方のビード部にわたって延びる、有機繊維コード或いはスチールコードのプライからなるカーカスと、このカーカスとトレッド間に配置した例えばスチール製のコードからなるベルト層を有するベルトを備えた、一般的なタイヤ構造を適用することができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態にかかるタイヤのトレッドパターンの一部を示す図である。このタイヤは、トレッド部の踏面1に、タイヤ周方向に延びる複数本(図示例で2本)の周方向主溝2(2a、2b)を備えている。このタイヤは、トレッド端と周方向主溝2とにより区画される2つのショルダー陸部3b、3cと、タイヤ赤道面CL上に位置し周方向主溝2間によって区画されるセンター陸部3aと、を備えている。
図1においては、2本の周方向主溝2(2a、2b)のタイヤ幅方向外側の領域(すなわちショルダー陸部)については図示を一部省略している。特には限定されないが、周方向主溝2の溝幅(上記基準状態での開口幅)は、例えば12~18mmとすることができ、溝深さ(最大深さ)は、例えば5~6mmとすることができる。本例では、周方向主溝を2本のみ有し、一方の周方向主溝2aは、車両装着時外側に位置し、他方の周方向主溝2bは、車両装着時内側に位置し、車両装着時外側に位置する周方向主溝2aの溝幅は、車両装着時内側に位置する周方向主溝2bの溝幅よりも小さい。これにより、車両装着時外側の圧縮剛性の低下を抑制して、センター陸部3aにおいて摩耗しやすい車両装着時外側の摩耗性能を向上させることができる。なお、「溝深さ」や後述の「サイプ深さ」とは、上記基準状態における、溝やサイプの最大深さを意味する。
【0015】
図1に示す例では、センター陸部3aは、センター陸部3を区画する2本の周方向主溝2(2a、2b)間を連通する、タイヤ幅方向に延びる第1の幅方向サイプ4によりセンターブロック状部分5に区画されている。
【0016】
特には限定されないが、第1の幅方向サイプ4のサイプ幅(開口幅)は、例えば0.3~0.4mmとすることができ、サイプ深さ(最大深さ)は、例えば3~4mmとすることができる。第1の幅方向サイプ4は、少なくとも一部(本例では全体)がタイヤ幅方向に対して傾斜して延びている。第1の幅方向サイプ4の傾斜部分のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、特には限定されないが例えば5~15°とすることができる。5°以上とすることにより、制動時の前後力に対する抵抗成分となる周方向成分を持たせて摩耗性能を向上させることができる。一方で、15°以下とすることにより、摩耗の原因となる横力に対する抵抗成分となる幅方向成分を持たせることと、センターブロック状部分5の角部が鋭角になりすぎないようにすることとにより、摩耗性能を向上させることができる。摩耗性能は、前後力よりも横力による寄与の方が大きいため、5~15°という、幅方向に対する小さめの傾斜角度にすることが好ましい。
【0017】
本実施形態では、センターブロック状部分5のタイヤ幅方向の幅は、接地幅の25%以上である。これにより、センターブロック状陸部5での接地幅を確保して十分なグリップ性能を得ることができる。特に軽荷重の車両の高速性能時に効果を有効に発揮することができる。ここで、「接地幅」とは、上記最大負荷状態における接地面のタイヤ幅方向の幅(最大幅)をいう。
【0018】
図1に示すように、第1の幅方向サイプ4は、第1の幅方向サイプ4の延在方向の一部に途切れ部4aを有している。すなわち、途切れ部4aは、本例では、面取り部4bと同じ高さの陸部である。途切れ部4aは、踏面1と同じ高さの陸部とすることもできる。これにより、センターブロック状部分5が第1の幅方向サイプ4によってタイヤ周方向に完全に分断されないようにして、センターブロック状部分5の圧縮剛性を高め、摩耗性能の低下を抑制することができる。本例では、途切れ部4aは、第1の幅方向サイプ4の車両装着時外側の端から、該端から第1の幅方向サイプ4の延在方向に沿ってセンターブロック状部分5のタイヤ幅方向の幅の25%の距離だけ離間した位置までの間に位置している。接地性が高い車両装着時外側に途切れ部4aを設けることで圧縮剛性が高まることによる接地性への悪影響を緩和することができる。また、車両装着時外側の端からの離間距離を上記の範囲とすることで、後述の隆起する形状を有する部分から途切れ部4aを離し、接地性の悪化を緩和することができる。途切れ部4aの延在長さは、センター陸部3aのタイヤ幅方向の幅の10%以下である。これにより、接地性の悪化を緩和することができる。
【0019】
図1に示す例では、第1の幅方向サイプ4は、開口部に面取り部4bが設けられている。これにより、第1の幅方向サイプ4付近での圧縮剛性を適度に低減させて接地性をより一層向上させることができる。図示例では、面取り部4bは、第1の幅方向サイプ4のタイヤ周方向両側の開口部に設けられているが、いずれか一方に設けることもでき、あるいは、面取り部4bを有しない構成とすることもできる。
【0020】
図2Aは、
図1のA-A断面を示す図であり、
図2Bは、
図1のB-B断面を示す図であり、
図2Cは、
図1のC-C断面を示す図である。
図2A~
図2Cに示すように、センターブロック状部分5の各々は、四方から中央部に向かって(
図2A、
図2Cに示す断面では円弧に従う形状にて)隆起する形状を有する。ここで、
図2Aにおいては、タイヤ周方向における、上記隆起する形状をなす部分の踏面1からの落ち始め位置をP1、P2で示している。また、
図2Cにおいては、タイヤ幅方向における、上記隆起する形状をなす部分の踏面1からの落ち始め位置をQ1、Q2で示している。本例において、P1、P2間の曲率半径は、P1よりブロック外側やP2よりブロック外側の領域の曲率半径よりも大きく、Q1、Q2間の曲率半径は、Q1よりブロック外側やQ2よりブロック外側の領域の曲率半径よりも大きい。ここで、タイヤ周方向における「落ち始め位置」とは、リム組前の状態のタイヤ周方向断面(踏面のプロファイルの頂点(タイヤ径方向最外側点)を通る断面)において、上記頂点からの落ち高(タイヤ径方向内側への離間距離)が、タイヤ幅方向に隣接する周方向主溝の溝深さ(最大深さ)の1/6以上となる踏面のプロファイル領域のうち、最も上記頂点に近い点をいう。また、タイヤ幅方向における「落ち始め位置」とは、リム組前の状態のタイヤ幅方向断面(上記頂点を通る断面)において、上記頂点からの落ち高(タイヤ径方向内側への離間距離)が、タイヤ幅方向に隣接する周方向主溝の溝深さ(最大深さ)の1/6以上となる踏面のプロファイル領域のうち、最も上記頂点に近い点をいう。なお、隣接する周方向主溝が2本あり、溝深さが異なる場合は、溝深さが深い方の最大深さをいうものとする。
【0021】
図1に戻って、このタイヤは、センターブロック状部分5の各々に、タイヤ幅方向にタイヤ赤道面CLを横切って延び、両端がセンターブロック状部分5内で終端する、第2の幅方向サイプ6を(図示例で1本)有する。本例では、第2の幅方向サイプ6の延在長さは、センターブロック状部分5のタイヤ幅方向の幅の50%以上である。特には限定されないが、第2の幅方向サイプ6のサイプ幅(開口幅)は、例えば0.3~0.4mmとすることができ、サイプ深さ(最大深さ)は、例えば3~4mmとすることができる。第2の幅方向サイプ6は、少なくとも一部(本例では全体)がタイヤ幅方向に対して傾斜して延びている。図示例では、第2の幅方向サイプ6は、第1の幅方向サイプ4に略平行に延びている。第2の幅方向サイプ6の傾斜部分のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、特には限定されないが例えば0~15°とすることができる。第2の幅方向サイプ6は、タイヤ幅方向に(傾斜せずに)延びていても良い。
【0022】
本例では、第2の幅方向サイプ6の両端は、タイヤ周方向において、上記隆起する形状をなす部分の踏面1からの落ち始め位置P1、P2よりもセンターブロック状部分5の中央部側に位置する。これにより、隆起する形状の部分の圧縮剛性を緩和して接地性をより一層向上させることができる。また、第2の幅方向サイプ6の両端は、タイヤ幅方向において、上記隆起する形状をなす部分の踏面1からの落ち始め位置Q1、Q2よりもセンターブロック状部分5の外側(センターブロック状部分5の端側)に位置する。本例では、タイヤ周方向においては、第2の幅方向サイプ6の両端と上記落ち始め位置P1、P2との位置関係を上記のようにしているため、隆起する部分の圧縮剛性が低下し過ぎないように、タイヤ幅方向では、上記のような位置関係としてセンターブロック状部分5全体での接地圧の均一化を図っている。
【0023】
ここで、センターブロック状部分5に、タイヤ周方向に延び、溝深さが第1幅方向サイプ4のサイプ深さよりも浅い、周方向浅溝7が設けられている。これにより、センターブロック状部分5の圧縮剛性を適度に緩和して、特に走行初期において接地性を向上させることができる。本例では、周方向浅溝7は、車両装着時内側に位置している。摩耗しにくい車両装着時内側の圧縮剛性を緩和することで、摩耗性能と上記の接地性とを両立させることができるからである。ここで、周方向浅溝7の溝幅(開口幅)は、特には限定されないが、例えば1mm以下とすることができ、周方向浅溝7の溝深さ(最大深さ)は、例えば、第1の幅方向サイプ4のサイプ深さの1/3~1/2とすることができ、特には限定されないが、例えば1~2mmとすることがでできる。
【0024】
以下、本実施形態のタイヤの作用効果について説明する。
本実施形態のタイヤは、センターブロック状部分5が第1の幅方向サイプ4により区画されているため、(サイプ部分を有しない)幅方向溝により陸部が完全にブロックに区画される場合と比べてセンター陸部3aの圧縮剛性が高く、高性能タイヤに適した性能を発揮することができる。また、本実施形態のタイヤは、周方向主溝2を1本のみ又は2本のみ(本例では2本のみ)有しているため、センター陸部3aを広い接地幅とすることで十分なグリップ性能を確保することができる。特に軽荷重の車両の高速性能時に効果を有効に発揮することができる。また、本実施形態では、センターブロック状部分5のタイヤ幅方向の幅が、接地幅の25%以上である。これにより、センターブロック状陸部5での接地幅を確保して十分なグリップ性能を得ることができる。また、本実施形態では、第1の幅方向サイプ4がタイヤ幅方向に対して傾斜しているため、制動時の前後力に対する抵抗成分となる周方向成分を持たせて、摩耗性能を向上させることができる。
そして、本実施形態のタイヤは、第1の幅方向サイプ4は、第1の幅方向サイプ4の延在方向の一部に途切れ部4aを有するため、センターブロック状部分5が第1の幅方向サイプ4によってタイヤ周方向に完全に分断されないようにして、センターブロック状部分5の圧縮剛性を高め、摩耗性能の低下を抑制することができる。
以上のように、本実施形態のタイヤによれば、摩耗性能の低下を抑制しつつも、ブロック状の陸部の接地性を向上させ得る。
【0025】
なお、上記の実施形態では、2本の周方向主溝間に区画されるセンター陸部3aにおけるセンターブロック状部分5において、第1の幅方向サイプ4は、少なくとも一部がタイヤ幅方向に対して傾斜して延び、センターブロック状部分5のタイヤ幅方向の幅は、接地幅の25%以上であり、第1の幅方向サイプ4は、第1の幅方向サイプ4の延在方向の一部に途切れ部4aを有する構成としているが、周方向主溝2とトレッド端とに区画されるショルダー陸部3bにおけるブロック状部分において、第1の幅方向サイプ4は、少なくとも一部がタイヤ幅方向に対して傾斜して延び、ブロック状部分のタイヤ幅方向の幅は、接地幅の25%以上であり、第1の幅方向サイプ4は、第1の幅方向サイプ4の延在方向の一部に途切れ部4aを有する構成としても良い。
【0026】
上述のように、途切れ部は、第1の幅方向サイプの車両装着時外側の端から、該端から第1の幅方向サイプの延在方向に沿ってブロック状部分のタイヤ幅方向の幅の25%の距離だけ離間した位置までの間に位置していることが好ましい。接地性が高い車両装着時外側に途切れ部を設けることで圧縮剛性が高まることによる接地性の悪影響を緩和することができる。また、車両装着時外側の端からの離間距離を上記の範囲とすることで、隆起する形状を有する部分から途切れ部を離し、接地性の悪化を緩和することができる。
【0027】
ここで、第1の幅方向サイプを有する陸部は、タイヤ赤道面上に位置するセンター陸部であることが好ましい。センター陸部において接地性と耐摩耗性とを両立させることが、高性能タイヤに特に適しているからである。
【0028】
また、途切れ部の延在長さは、陸部のタイヤ幅方向の幅の10%以下とすることが好ましい。これにより、接地性の悪化を緩和することができる。
【0029】
また、ブロック状部分の各々に、タイヤ幅方向にタイヤ赤道面を横切って延び、両端がブロック状部分内で終端する、第2の幅方向サイプを有することが好ましい。ブロック状部分の圧縮剛性がさらに緩和され、ブロック状部分の接地性を向上させることができる。そのような第2の幅方向サイプの両端がブロック状部分内で終端していることで、ブロック状部分のもげ等の発生も抑制することができる。
【0030】
上述のように、ブロック状部分のタイヤ幅方向の幅が、接地幅の25%以上であることが好ましく、これにより、ブロック状陸部での接地幅を確保して十分なグリップ性能を得ることができる。
また、上述のように、第2の幅方向サイプの延在長さは、ブロック状部分のタイヤ幅方向の幅の50%以上であることが好ましく、これにより、十分な接地圧均一化の効果を得ることができる。
【0031】
また、上述のように、第2の幅方向サイプの両端は、タイヤ周方向において、上記隆起する形状をなす部分の踏面からの落ち始め位置P1、P2よりもブロック状部分の中央部側に位置することが好ましい。上記隆起する形状をなす部分の圧縮剛性を緩和して接地性を向上させ得るからである。また、第2の幅方向サイプの両端は、タイヤ幅方向において、上記隆起する形状をなす部分の踏面からの落ち始め位置Q1、Q2よりもブロック状部分の外側(ブロック状部分の端側)に位置することが好ましい。ブロック状部分全体の接地圧の均一化を図ることができるからである。
【0032】
また、上述のように、周方向主溝を2本のみ有する場合、一方の周方向主溝は、車両装着時外側に位置し、他方の周方向主溝は、車両装着時内側に位置し、車両装着時外側に位置する周方向主溝の溝幅は、車両装着時内側に位置する周方向主溝の溝幅よりも小さいことが好ましい。これにより、車両装着時外側の圧縮剛性の低下を抑制して、摩耗しやすい車両装着時外側の摩耗性能を向上させることができる。
【0033】
また、上述のように、ブロック状部分に、タイヤ周方向に延び、溝深さが第1幅方向サイプのサイプ深さよりも浅い、周方向浅溝が設けられていることが好ましい。これにより、ブロック状部分の圧縮剛性を適度に緩和して、接地性を向上させることができる。
【0034】
また、上述のように、周方向浅溝は、車両装着時内側に位置していることが好ましい。摩耗しにくい車両装着時内側の圧縮剛性を緩和することで、特に走行初期において摩耗性能と上記の接地性とを両立させることができるからである。
【0035】
また、各ブロック状部分において、1つのみの第2の幅方向サイプを有することにより、ブロック状部分の圧縮剛性が過度に低下しないようにすることができる。
【0036】
周方向主溝は、2本のみ有することが好ましい。これにより、ブロック状陸部での接地幅を確保して十分なグリップ性能を得ることができる。特に軽荷重の車両の高速性能時に効果を有効に発揮することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
1:踏面、 2:周方向主溝、 3:陸部、 4:第1の幅方向サイプ、
5:センターブロック状部分、 6:第2の幅方向サイプ、 7:周方向浅溝、
CL:タイヤ赤道面