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特開2023-151580鋼製枠、土木構造物及び土木構造物を構築する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151580
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】鋼製枠、土木構造物及び土木構造物を構築する方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20231005BHJP
   E02B 7/02 20060101ALI20231005BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E02D17/20 103G
E02B7/02 B
E02D29/02 308
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061266
(22)【出願日】2022-03-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)JFE建材株式会社の顧客訪問営業記録令和3年12月10日,令和3年12月13日 (2)JFE建材株式会社のメーリングリストの登録者へのメール令和3年12月13日 (3)JFE建材株式会社のウェブサイト掲載令和4年1月7日 https://www.jfe-kenzai.co.jp/newsrelease/pdf/210107.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 裕介
【テーマコード(参考)】
2D044
2D048
【Fターム(参考)】
2D044DB45
2D048AA72
(57)【要約】
【課題】土圧に耐えられる強度にしつつも小型化を図ること。
【解決手段】立体枠状に形成され、内部に中詰材(40)が充填される鋼製枠(10)は、一部が地盤(G)に埋設されるアンカー部(8)を備えている。アンカー部(8)は、地盤(G)に埋設される埋設部(82)と、鋼製枠(10)の構成部材(13)と、埋設部(82)とを連結する連結部(81)と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体枠状に形成され、内部に中詰材が充填される鋼製枠であって、
一部が地盤に埋設されるアンカー部を備えることを特徴とする鋼製枠。
【請求項2】
前記アンカー部は、
前記地盤に埋設される埋設部と、
前記鋼製枠の構成部材と、前記埋設部とを連結する連結部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の鋼製枠。
【請求項3】
前記埋設部は、前記鋼製枠の構成部材と前記連結部との連結位置よりも低い位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の鋼製枠。
【請求項4】
前記埋設部は、前記地盤のすべり面よりも深い位置に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の鋼製枠。
【請求項5】
前記埋設部は、土圧の作用方向に直交する方向に延びるように形成されていることを特徴とする請求項2から4までのいずれか一項に記載の鋼製枠。
【請求項6】
前記連結部は、
前記鋼製枠の構成部材に取り付けられる取付部と、
前記取付部と前記埋設部とを繋ぐ繋ぎ部と、
を備えることを特徴とする請求項2から5までのいずれか一項に記載の鋼製枠。
【請求項7】
土圧の作用方向下流側に位置する前面部を備え、
前記取付部は、前記前面部に取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の鋼製枠。
【請求項8】
前記取付部は、土圧の作用方向に直交する方向に延びるように形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の鋼製枠。
【請求項9】
前記繋ぎ部は、複数設けられており、
各繋ぎ部は、土圧の作用方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項6から8までのいずれか一項に記載の鋼製枠。
【請求項10】
立体枠状に形成され、内部に中詰材が充填される複数の鋼製枠と、各鋼製枠の内部に充填される中詰材と、を備える土木構造物であって、
前記鋼製枠の構成部材に連結され、一部が地盤に埋設されるアンカー部を備えることを特徴とする土木構造物。
【請求項11】
前記アンカー部は、少なくとも最下段に配置された少なくとも一部の前記鋼製枠に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の土木構造物。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の土木構造物を構築する方法であって、
前記鋼製枠を設置する工程と、
設置された前記鋼製枠の構成部材に前記アンカー部を連結する工程と、
前記アンカー部の一部を前記地盤に埋設する工程と、
前記鋼製枠の内部に前記中詰材を充填する工程と、
を有することを特徴とする土木構造物を構築する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製枠、土木構造物及び土木構造物を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、堰堤、土留、擁壁等として、傾斜面に設置される土木構造物が知られている。土木構造物は、鋼製の柱材、梁材及び繋ぎ材によって構成された枠体の一部の面に面材を設けた鋼製枠と、鋼製枠の内部に充填された中詰材と、を備えている。隣り合う鋼製枠同士は、上下左右において互いに連結されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、堰堤や土留等の大きさに応じて鋼製枠を必要な数だけ連結しつつ、鋼製枠の内部に砂利等の中詰材を充填して土木構造物を構築している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-184873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、施工領域の土圧が大きい場合には、その土圧に耐えられる強度にするため、鋼製枠を大型化して中詰材の充填量を増やし、土木構造物の断面を大きくする必要がある。
しかし、土木構造物の断面を大きくするには、鋼製枠の構築に使用される鋼材や中詰材の量を増やすことになり、施工も大掛かりになるため、土圧に耐えられる強度にしつつも小型化を図ることができる土木構造物が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、土圧に耐えられる強度にしつつも小型化を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様は、立体枠状に形成され、内部に中詰材が充填される鋼製枠であって、一部が地盤に埋設されるアンカー部を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記アンカー部は、前記地盤に埋設される埋設部と、前記鋼製枠の構成部材と、前記埋設部とを連結する連結部と、を備えることが好ましい。
【0008】
また、前記埋設部は、前記鋼製枠の構成部材と前記連結部との連結位置よりも低い位置に設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記埋設部は、前記地盤のすべり面よりも深い位置に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記埋設部は、土圧の作用方向に直交する方向に延びるように形成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記連結部は、前記鋼製枠の構成部材に取り付けられる取付部と、前記取付部と前記埋設部とを繋ぐ繋ぎ部と、を備えることが好ましい。
【0012】
また、土圧の作用方向下流側に位置する前面部を備え、前記取付部は、前記前面部に取り付けられていることが好ましい。
【0013】
また、前記取付部は、土圧の作用方向に直交する方向に延びるように形成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記繋ぎ部は、複数設けられており、各繋ぎ部は、土圧の作用方向に沿って設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る一態様は、立体枠状に形成され、内部に中詰材が充填される複数の鋼製枠と、各鋼製枠の内部に充填される中詰材と、を備える土木構造物であって、前記鋼製枠の構成部材に連結され、一部が地盤に埋設されるアンカー部を備えることを特徴とする。
【0016】
また、前記アンカー部は、少なくとも最下段に配置された少なくとも一部の前記鋼製枠に設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明に係る一態様は、上記の土木構造物を構築する方法であって、前記鋼製枠を設置する工程と、設置された前記鋼製枠の構成部材に前記アンカー部を連結する工程と、前記アンカー部の一部を前記地盤に埋設する工程と、前記鋼製枠の内部に前記中詰材を充填する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、土圧に耐えられる強度にしつつも小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】土木構造物により構築された堰堤の正面図である。
図2】最下段の鋼製枠の一例を示す斜視図である。
図3】複数の鋼製枠により構成された土木構造物の正面図である。
図4】複数の鋼製枠及び補強枠により構成された土木構造物の右側面図である。
図5】複数の鋼製枠により構成された土木構造物の平面図である。
図6】複数の鋼製枠により構成された土木構造物の底面図である。
図7】最下段の鋼製枠の右側面部の拡大図である。
図8】最上段の鋼製枠の右側面部の拡大図である。
図9】地盤に設けられた状態での図3におけるA-A断面図である。
図10図9におけるアンカー部近傍の拡大図である。
図11図3におけるB-B断面図である。
図12】土木構造物を構築する方法を説明する図である。
図13】土木構造物を構築する方法を説明する図である。
図14】土木構造物を構築する方法を説明する図である。
図15】土木構造物を構築する方法を説明する図である。
図16】土木構造物の他の例を示す図である。
図17】土木構造物の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、土木構造物100は、例えば、傾斜地の地盤Gに設置され、堰堤、土留、擁壁等として使用される。
なお、説明の便宜上、土木構造物100が設置された状態において、土木構造物100の上下方向を「高さ方向H」、左右方向を「幅方向W」、河川の流れ、土砂の流出方向に沿って延びる土木構造物100の方向を「奥行き方向D」とする。高さ方向H、幅方向W及び奥行き方向Dは、互いに直交している。
【0021】
<土木構造物の構成>
図1図4に示すように、土木構造物100は、鋼製枠10と、補強枠20と、根入れ枠30と、中詰材40と、を備えている。土木構造物100は、屈撓性・透水性に優れており、工期短縮や通年施工が可能である。土木構造物100は、複数の鋼製枠10が所定の高さになるように高さ方向Hに積み重ねて連結されているとともに、幅方向W及び奥行き方向Dに互いに連結されて構成されている。土木構造物100は、堰堤や擁壁として設置された状態において、地盤Gの斜面に対応した形状を有している。例えば、土木構造物100は、高さ方向Hに沿って下側から上側に向かって幅方向Wに広がりをもって逆台形状に構成されている。すなわち、土木構造物100は、幅方向Wに連結されている鋼製枠10の数が各段によって異なる。
【0022】
具体的には、図3図4に示すように、土木構造物100は、高さ方向Hに鋼製枠10が4段にわたって積み重ねられている。下側3段の鋼製枠10は、側面視において台形状又は略台形状に形成されており、最上段の鋼製枠10は、側面視において矩形状又は略矩形状に形成されている。
土木構造物100の設置状態において、下側3段の鋼製枠10における下流側の面は、上側から下側に向かうにつれて下流側に傾斜している。下側3段の鋼製枠10における上流の面は、高さ方向Hにおいて鉛直又は略鉛直方向に延びている。これにより、土木構造物100の奥行き方向Dにおける寸法は、高さ方向Hに沿って下側から上側に向かうにつれて小さくなっている。
【0023】
最上段の鋼製枠10は、3段目の鋼製枠10の上側に連結されている。最上段の鋼製枠10における上流側の面及び下流側の面は、高さ方向Hにおいて鉛直又は略鉛直方向に延びている。最上段の鋼製枠10の奥行き方向Dにおける寸法は、3段目における鋼製枠10の天面の奥行き方向Dにおける寸法と同じである。最上段の鋼製枠10は、水通し部101が形成されるように、中央において幅方向Wに所定の間隔をあけて設けられている。
【0024】
補強枠20は、側面視において矩形又は略矩形に形成されていて、下側2段の鋼製枠10の上流側の後面に連結されている。補強枠20は、幅方向Wに沿って鋼製枠10に連結されている。
根入れ枠30は、各段における鋼製枠10の幅方向Wにおける両端部に連結されている。根入れ枠30は、正面視において三角形状又は略三角形状に形成されている。根入れ枠30は、土木構造物100において地盤Gの形状に合わせて斜面に沿って形成されている。土木構造物100は、設置状態において、幅方向Wにおける両端部の根入れ枠30及び根入れ枠30に近い側の幾つかの鋼製枠10並びに河川の底側で地盤Gに埋め戻されている。
【0025】
(鋼製枠)
鋼製枠10は、鋼製の部材を互いに連結して六面体状に形成された枠体である。鋼製枠10は、前面部1と、後面部2と、左側面部3と、右側面部4と、天面部5と、底面部6と、を備えている。なお、鋼製枠10は、土木構造物100の最下段に設置される鋼製枠を例に挙げて説明する。
前面部1は、河川の下流側、土砂の流出方向下流側に面して設けられており、正面視した際に長方形状又は正方形状に形成されている。前面部1は、奥行き方向Dにおいて、後面部2と向かい合うように設けられている。
前面部1は、2本の柱材11と、2本の梁材12と、面材13を備えている。
【0026】
柱材11は、例えば、H形鋼から形成されている。2本の柱材11は、幅方向Wに互いに所定の間隔(梁材12の長さとほぼ同じ長さ)をあけて互いに平行に設けられている。柱材11は、H形鋼のフランジ面が奥行き方向Dに面するように設けられている。柱材11は、その長手方向が高さ方向Hに対して傾斜するように設けられている。具体的には、柱材11は、その上端に向かうにつれて上流側に傾斜するように設けられている。
梁材12は、例えば、H形鋼又は溝形鋼から形成されている。2本の梁材12は、高さ方向Hに互いに所定の間隔(柱材11の長さとほぼ同じ長さ)をあけて互いに平行に設けられている。
【0027】
図2,4,7に示すように、2本の梁材12のうち、下側の梁材12aは、長手方向に交差した断面形状がU字形又は略U字形の溝形鋼から形成されている。下側の梁材12aは、その幅方向(短手方向)の端部が上方を向くように配置されている。下側の梁材12aは、2本の柱材11同士をその下端部において幅方向Wに互いに連結している。具体的には、下側の梁材12aは、柱材11を構成するH形鋼のフランジの間に挿入されていて、梁材12aのフランジと、柱材11のフランジとが互いにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材11と梁材12aは、ピン接合されている。このとき、下側の梁材12aは、柱材11の下端から下方に突出しないように、柱材11に連結されている。
一方、上側の梁材12bは、H形鋼から形成されている。上側の梁材12bは、H形鋼のフランジ面が奥行き方向Dに面するように設けられている。上側の梁材12bは、1段目の鋼製枠10に積み重ねられる2段目の鋼製枠10の下側の梁材を兼ねている。上側の梁材12bは、2本の柱材11同士をその上端部において幅方向Wに互いに連結している。具体的には、上側の梁材12bは、柱材11を構成するH形鋼のフランジの間に挿入されていて、梁材12bのフランジと、柱材11のフランジとが互いにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材11と梁材12bは、ピン接合されている。このとき、上側の梁材12bは、柱材11の上端から上方に突出しないように、柱材11に連結されている。
【0028】
面材13は、鋼製枠10に充填される中詰材40が鋼製枠10から流出することを防止する。面材13は、例えば、長手方向に交差した断面形状がU字形又は略U字形の溝形鋼により形成されている。面材13は、一端が下側の梁材12aに連結されていて、他端が上側の梁材12bに連結されていている。具体的には、面材13は、下側の梁材12aのフランジの間、及び上側の梁材12bのフランジの間に挿入されていて、面材13と下側の梁材12aとが互いにボルト及びナットによって連結されており、面材13と上側の梁材12bとが互いにボルト及びナットによって連結されている。
面材13は、幅方向Wに所定の間隔をあけて複数設けられており、各面材13の端部は、梁材12に連結されている。
なお、柱材11、梁材12及び面材13は、ボルト及びナットにより連結されているが特に限定されず、ピンにより連結されてもよい。このとき、面材13は、柱材11の下端から下方に突出せず、柱材11の上端から上方に突出しないように、梁材12a,12bに連結されている。
また、図2における鋼製枠10は、土木構造物100の最下段に設置される鋼製枠として説明しているため、柱材11が高さ方向Hに対して傾斜して設けられているが、土木構造物100の最上段の鋼製枠10においては、図4図8に示すように、柱材11は、高さ方向Hに沿って設けられている。
また、土木構造物100の最上段に設置される鋼製枠10においては、上側の梁材12bは、長手方向に交差した断面形状がU字形又は略U字形の溝形鋼から形成されている。
【0029】
後面部2は、河川の上流側、土砂の流出方向上流側に面して設けられており、正面視した際に長方形状又は正方形状に形成されている。後面部2は、奥行き方向Dにおいて、前面部1と向かい合うように設けられている。
後面部2は、2本の柱材21と、2本の梁材22と、を備えている。
【0030】
柱材21は、例えば、H形鋼から形成されている。2本の柱材21は、幅方向Wに互いに所定の間隔(梁材22の長さとほぼ同じ長さ)をあけて互いに平行に設けられている。柱材21は、H形鋼のフランジ面が奥行き方向Dに面するように設けられている。柱材21は、その長手方向が高さ方向Hに沿って設けられている。
梁材22は、例えば、H形鋼又は溝形鋼から形成されている。2本の梁材22は、高さ方向Hに互いに所定の間隔(柱材21の長さとほぼ同じ長さ)をあけて互いに平行に設けられている。
【0031】
2本の梁材22のうち、下側の梁材22aは、長手方向に交差した断面形状がU字形又は略U字形の溝形鋼から形成されている。下側の梁材22aは、その幅方向(短手方向)の端部が上方を向くように配置されている。下側の梁材22aは、2本の柱材21同士をその下端部において幅方向Wに互いに連結している。具体的には、下側の梁材22aは、柱材21を構成するH形鋼のフランジの間に挿入されていて、梁材22aのフランジと、柱材21のフランジとが互いにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材21と梁材22aは、ピン接合されている。このとき、下側の梁材22aは、柱材21の下端から下方に突出しないように、柱材21に連結されている。
一方、上側の梁材22bは、H形鋼から形成されている。上側の梁材22bは、H形鋼のフランジ面が奥行き方向Dに面するように設けられている。上側の梁材22bは、1段目の鋼製枠10に積み重ねられる2段目の鋼製枠10の下側の梁材を兼ねている。上側の梁材22bは、2本の柱材21同士をその上端部において幅方向Wに互いに連結している。具体的には、上側の梁材22bは、柱材21を構成するH形鋼のフランジの間に挿入されていて、梁材22bのフランジと、柱材21のフランジとが互いにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材21と梁材22bは、ピン接合されている。このとき、上側の梁材22bは、柱材21の上端から上方に突出しないように、柱材21に連結されている。
なお、土木構造物100の最上段に設置される鋼製枠10においては、上側の梁材22bは、長手方向に交差した断面形状がU字形又は略U字形の溝形鋼から形成されている。
また、後述する補強枠20が連結されない鋼製枠10においては、前面部1と同様に後面部2に面材を設けておくことが好ましい。また、柱材21、梁材22は、ボルト及びナットにより連結されているが特に限定されず、ピンにより連結されてもよい。
【0032】
左側面部3は、鋼製枠10を下流側から見て左側にある面部である。左側面部3は、正面視台形状に形成されている。左側面部3は、前面部1の柱材11と、後面部2の柱材21と、2本の繋ぎ材31と、ブレース材32と、を備えている。柱材11及び柱材21については、上述した通りであるため、説明を省略する。
【0033】
2本の繋ぎ材31のうち、下側の繋ぎ材31aは、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の2本の山形鋼から形成されている。下側の繋ぎ材31aは、互いに一つの面同士が合わせられると共に、互いのもう一つの面が反対方向に奥行き方向Dに沿って延びるように設けられている。下側の繋ぎ材31aは、2本の柱材11,21同士をその下端部において奥行き方向Dに互いに連結している。具体的には、下側の繋ぎ材31aは、長手方向一端部が柱材11のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板31cにボルト及びナットによって連結されており、長手方向他端部が柱材21のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板31dにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材11,21と繋ぎ材31aは、ピン接合されている。ここで、下側の繋ぎ材31aは、2本の山形鋼で継手板31c,31dを挟み込み、ボルト及びナットによって連結されている。また、下側の繋ぎ材31a及び継手板31c,31dは、柱材11,21の下端から下方に突出しないように、柱材11,21に連結されている。好ましくは、柱材11,21の下端、下側の繋ぎ材31aの下端及び継手板31c,31dの下端が同一平面上に設けられるように各部材が配置及び連結されている。
一方、上側の繋ぎ材31bは、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の2本の山形鋼から形成されている。上側の繋ぎ材31bは、一方の平面が高さ方向Hを向くように設けられている。上側の繋ぎ材31bは、2本の柱材11,21同士をその上端部において奥行き方向Dに互いに連結している。具体的には、上側の繋ぎ材31bは、長手方向一端部が柱材11のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板31eにボルト及びナットによって連結されており、長手方向他端部が柱材21のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板31f(図2においては隠れているため、図10参照)にボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材11,21と繋ぎ材31bは、ピン接合されている。なお、上側の繋ぎ材31b及び継手板31e,31fは、柱材11,21の上端から上方に突出しないように、柱材11,21に連結されている。好ましくは、柱材11,21の上端、上側の繋ぎ材31bの上端及び継手板31e,31fの上端が同一平面上に設けられるように各部材が配置及び連結されている。
【0034】
ブレース材32は、鋼製枠10を補強して形状を保持するものであり、例えば、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の山形鋼から形成されている。ブレース材32は、長手方向一端部が継手板31dにボルト及びナットによって連結されており、長手方向他端部が継手板31eにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、ブレース材32は、斜め方向に設けられており、柱材11,21とブレース材32は、ピン接合されている。
なお、繋ぎ材31、ブレース材32は、ボルト及びナットにより連結されているが特に限定されず、ピンにより連結されてもよい。また、ブレース材32は、土木構造物100を構成する全ての鋼製枠に設けられていてもよいし、比較的大きな土圧が作用する一部の鋼製枠にのみ設けられていてもよい。
また、土木構造物100の幅方向Wにおける端部に設置される鋼製枠10においては、前面部1と同様に左側面部3に面材を設けておくことが好ましい。
【0035】
左側面部3において、柱材11と下側の繋ぎ材31aとがなす角度は鋭角であり、柱材11と上側の繋ぎ材31bとがなす角度は鈍角である。また、柱材21と下側の繋ぎ材31aとがなす角度は直角又は略直角であり、柱材21と上側の繋ぎ材31bとがなす角度は直角又は略直角である。
【0036】
右側面部4は、鋼製枠10を下流側から見て右側にある面部である。右側面部4は、正面視台形状に形成されている。右側面部4は、前面部1の柱材11と、後面部2の柱材21と、2本の繋ぎ材41と、ブレース材42と、を備えている。柱材11及び柱材21については、上述した通りであるため、説明を省略する。
【0037】
2本の繋ぎ材41のうち、下側の繋ぎ材41aは、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の2本の山形鋼から形成されている。下側の繋ぎ材41aは、互いに一つの面同士が合わせられると共に、互いにもう一つの面が反対方向に奥行き方向Dに沿って延びるように設けられている。下側の繋ぎ材41aは、2本の柱材11,21同士をその下端部において奥行き方向Dに互いに連結している。具体的には、下側の繋ぎ材41aは、長手方向一端部が柱材11のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板41cにボルト及びナットによって連結されており、長手方向他端部が柱材21のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板41dにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材11,21と繋ぎ材41aは、ピン接合されている。ここで、下側の繋ぎ材41aは、2本の山形鋼で継手板41c,41dを挟み込み、ボルト及びナットによって連結されている。また、下側の繋ぎ材41a及び継手板41c,41dは、柱材11,21の下端から下方に突出しないように、柱材11,21に連結されている。好ましくは、柱材11,21の下端、下側の繋ぎ材41aの下端及び継手板41c,41dの下端が同一平面上に設けられるように各部材が配置及び連結されている。
一方、上側の繋ぎ材41bは、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の2本の山形鋼から形成されている。上側の繋ぎ材41bは、一方の平面が高さ方向Hを向くように設けられている。上側の繋ぎ材41bは、2本の柱材11,21同士をその上端部において奥行き方向Dに互いに連結している。具体的には、上側の繋ぎ材41bは、長手方向一端部が柱材11のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板41eにボルト及びナットによって連結されており、長手方向他端部が柱材21のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板41f(図2においては隠れているため、図4参照)にボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材11,21と繋ぎ材41bは、ピン接合されている。なお、上側の繋ぎ材41b及び継手板41e,41fは、柱材11,21の上端から上方に突出しないように、柱材11,21に連結されている。好ましくは、柱材11,21の上端、上側の繋ぎ材41bの上端及び継手板41e,41fの上端が同一平面上に設けられるように各部材が配置及び連結されている。
【0038】
ブレース材42は、鋼製枠10を補強して形状を保持するものであり、例えば、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の山形鋼から形成されている。ブレース材42は、長手方向一端部が継手板41dにボルト及びナットによって連結されており、長手方向他端部が継手板41eにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、ブレース材42は、斜め方向に設けられており、柱材11,21とブレース材42は、ピン接合されている。
なお、繋ぎ材41、ブレース材42は、ボルト及びナットにより連結されているが特に限定されず、ピンにより連結されてもよい。また、ブレース材42は、土木構造物100を構成する全ての鋼製枠に設けられていてもよいし、比較的大きな土圧が作用する一部の鋼製枠にのみ設けられていてもよい。
また、土木構造物100の幅方向Wにおける端部に設置される鋼製枠10においては、前面部1と同様に右側面部4に面材を設けておくことが好ましい。
【0039】
右側面部4において、柱材11と下側の繋ぎ材41aとがなす角度は鋭角であり、柱材11と上側の繋ぎ材41bとがなす角度は鈍角である。また、柱材21と下側の繋ぎ材41aとがなす角度は直角又は略直角であり、柱材21と上側の繋ぎ材41bとがなす角度は直角又は略直角である。
【0040】
天面部5は、鋼製枠10の上面をなすものであり、平面視矩形状に形成されている。天面部5は、梁材12bと、梁材22bと、繋ぎ材31bと、繋ぎ材41bと、を備えている。ここで、梁材12bは前面部1と兼ねており、梁材22bは後面部2と兼ねており、繋ぎ材31bは左側面部3と兼ねており、繋ぎ材41bは右側面部4と兼ねている。梁材12b、梁材22b、繋ぎ材31b及び繋ぎ材41bについては、上述した通りであるため、説明を省略する。
天面部5は、梁材12b、梁材22b、繋ぎ材31b及び繋ぎ材41bの他に、梁材12bの長手方向中央部と梁材22bの長手方向中央部とを連結する繋ぎ材51bを備えている。
繋ぎ材51bは、繋ぎ材31b,41bと同様、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の2本の山形鋼から形成されている。繋ぎ材51bは、一方の平面が高さ方向Hを向くように設けられている。繋ぎ材51bは、2本の梁材12b,22b同士を奥行き方向Dに互いにボルト及びナットによって連結している。
なお、梁材12b、梁材22b、繋ぎ材31b、繋ぎ材41b及び繋ぎ材51bは、ボルト及びナットにより連結されているが特に限定されず、ピンにより連結されてもよい。
また、図2における鋼製枠10は、土木構造物100の最下段に設置される鋼製枠として説明しているため、天面部5に面材を設けていない構成となっているが、土木構造物100の最上段の鋼製枠10においては、図5に示すように、天面部5に面材53を設けることが好ましい。図5に示すように、天面部5は、中詰材40が鋼製枠10から流出することを防止するための複数の面材53を備えている。面材53は、梁材12bと梁材22bとの間で、幅方向Wに所定の間隔をあけて設けられている。
面材53は、例えば、長手方向に交差した断面形状が矩形又は略矩形の平鋼により形成されている。面材53は、一端が梁材12bに連結されており、他端が梁材22bに連結されている。具体的には、面材53は、梁材12bを構成するH形鋼のフランジと梁材22bを構成するH形鋼のフランジとに架け渡されて互いに連結されている。
【0041】
底面部6は、鋼製枠10の下面をなすものであり、平面視矩形状に形成されている。底面部6は、梁材12aと、梁材22aと、繋ぎ材31aと、繋ぎ材41aと、を備えている。ここで、梁材12aは前面部1と兼ねており、梁材22aは後面部2と兼ねており、繋ぎ材31aは左側面部3と兼ねており、繋ぎ材41aは右側面部4と兼ねている。梁材12a、梁材22a、繋ぎ材31a及び繋ぎ材41aについては、上述した通りであるため、説明を省略する。
底面部6は、梁材12a、梁材22a、繋ぎ材31a及び繋ぎ材41aの他に、梁材12aの長手方向中央部と梁材22aの長手方向中央部とを連結する繋ぎ材51aを備えている。
繋ぎ材51aは、繋ぎ材31a,41aと同様、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の2本の山形鋼から形成されている。繋ぎ材51aは、一方の平面が高さ方向Hを向くように設けられている。繋ぎ材51aは、2本の梁材12a,22a同士を奥行き方向Dに互いにボルト及びナットによって連結している。
底面部6は、中詰材40が鋼製枠10から流出することを防止するための複数の面材63を備えている。面材63は、梁材12aと梁材22aとの間で、幅方向Wに所定の間隔をあけて設けられている。
面材63は、例えば、長手方向に交差した断面形状が矩形又は略矩形の平鋼により形成されている。面材63は、一端が梁材12aに連結されており、他端が梁材22aに連結されている。具体的には、面材63は、梁材12aを構成するH形鋼のフランジと梁材22aを構成するH形鋼のフランジとに架け渡されて互いに連結されている。
なお、梁材12a、梁材22a、繋ぎ材31a、繋ぎ材41a及び面材63は、ボルト及びナットにより連結されているが特に限定されず、ピンにより連結されてもよい。
また、図2における鋼製枠10は、土木構造物100の最下段に設置される鋼製枠として説明しているため、図6にも示すように、底面部6に面材63を設けた構成となっているが、土木構造物100の最下段以外の鋼製枠10においては底面部6に面材63を設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0042】
(補強枠)
補強枠20は、高さ方向Hにおいて下から1段目及び2段目の鋼製枠10の上流側に設けられている。つまり、補強枠20は、後面部2に連結されている。補強枠20は、2本の柱材71と、2本の梁材72と、複数の繋ぎ材73と、面材74と、面材75と、を備えている。
柱材71は、例えば、H形鋼から形成されている。2本の柱材71は、幅方向Wに互いに所定の間隔(梁材72の長さとほぼ同じ長さ)をあけて互いに平行に設けられている。柱材71は、H形鋼のフランジ面が奥行き方向Dに面するように設けられている。柱材71は、その長手方向が高さ方向Hに沿って設けられている。
梁材72は、例えば、H形鋼又は溝形鋼から形成されている。2本の梁材72は、高さ方向Hに互いに所定の間隔(柱材71の長さとほぼ同じ長さ)をあけて互いに平行に設けられている。
【0043】
図2,4,7に示すように、2本の梁材72のうち、下側の梁材72aは、長手方向に交差した断面形状がU字形又は略U字形の溝形鋼から形成されている。下側の梁材72aは、その幅方向(短手方向)の端部が上方を向くように配置されている。下側の梁材72aは、2本の柱材71同士をその下端部において幅方向Wに互いに連結している。具体的には、下側の梁材72aは、柱材71を構成するH形鋼のフランジの間に挿入されていて、梁材72aのフランジと、柱材71のフランジとが互いにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材71と梁材72aは、ピン接合されている。このとき、下側の梁材72aは、柱材71の下端から下方に突出しないように、柱材71に連結されている。
一方、上側の梁材72bは、H形鋼から形成されている。上側の梁材72bは、H形鋼のフランジ面が奥行き方向Dに面するように設けられている。上側の梁材72bは、2本の柱材71同士をその上端部において幅方向Wに互いに連結している。具体的には、上側の梁材72bは、柱材71を構成するH形鋼のフランジの間に挿入されていて、梁材72bのフランジと、柱材71のフランジとが互いにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材71と梁材72bは、ピン接合されている。このとき、上側の梁材72bは、柱材71の上端から上方に突出しないように、柱材71に連結されている。
【0044】
繋ぎ材73は、柱材71の下端部と後面部2の柱材21の下端部とを連結する下側の繋ぎ材73aと、柱材71の上端部と後面部2の柱材21の上端部とを連結する上側の繋ぎ材73bと、を備えている。
下側の繋ぎ材73aは、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の2本の山形鋼から形成されている。下側の繋ぎ材73aは、互いに一つの面同士が合わせられると共に、互いにもう一つの面が反対方向に延びるように設けられている。下側の繋ぎ材73aは、2本の柱材21,71同士をその下端部において奥行き方向Dに互いに連結している。具体的には、図4に示すように、下側の繋ぎ材73aは、長手方向一端部が柱材21のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板73cにボルト及びナットによって連結されており、長手方向他端部が柱材71のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板73dにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材21,71と繋ぎ材73aは、ピン接合されている。ここで、下側の繋ぎ材73aは、2本の山形鋼で継手板73c,73dを挟み込み、ボルト及びナットによって連結されている。また、下側の繋ぎ材73a及び継手板73c,73dは、柱材21,71の下端から下方に突出しないように、柱材21,71に連結されている。好ましくは、柱材21,71の下端、下側の繋ぎ材73aの下端及び継手板73c,73dの下端が同一平面上に設けられるように各部材が配置及び連結されている。さらに、柱材21,71の下端、下側の繋ぎ材73aの下端及び継手板73c,73dの下端は、柱材11,21の下端、下側の繋ぎ材31aの下端及び継手板31c,31dの下端と同一平面上に設けられるように各部材が配置及び連結されている。
一方、上側の繋ぎ材73bは、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の2本の山形鋼から形成されている。上側の繋ぎ材73bは、一方の平面が高さ方向Hを向くように設けられている。上側の繋ぎ材73bは、2本の柱材21,71同士をその上端部において奥行き方向Dに互いに連結している。具体的には、上側の繋ぎ材73bは、長手方向一端部が柱材21のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板73eにボルト及びナットによって連結されており、長手方向他端部が柱材71のフランジに溶接等によって取り付けられた継手板73fにボルト及びナットによって連結されている。すなわち、柱材21,71と繋ぎ材73bは、ピン接合されている。なお、上側の繋ぎ材73b及び継手板は、柱材21,71の上端から上方に突出しないように、柱材21,71に連結されている。好ましくは、柱材21,71の上端、上側の繋ぎ材73bの上端及び継手板の上端が同一平面上に設けられるように各部材が配置及び連結されている。さらに、柱材21,71の上端、上側の繋ぎ材73bの上端及び継手板の上端は、柱材11,21の上端、上側の繋ぎ材31bの上端及び継手板31e,31fの上端と同一平面上に設けられるように各部材が配置及び連結されている。
【0045】
面材74は、鋼製枠10に充填される中詰材40が補強枠20から流出することを防止する。面材74は、例えば、長手方向に交差した断面形状がU字形又は略U字形の溝形鋼により形成されている。面材74は、一端が下側の梁材72aに連結されていて、他端が上側の梁材72bに連結されていている。具体的には、面材74は、下側の梁材72aのフランジの間、及び上側の梁材72bのフランジの間に挿入されていて、面材74と下側の梁材72aとが互いにボルト及びナットによって連結されており、面材74と上側の梁材72bとが互いにボルト及びナットによって連結されている。面材74は、幅方向Wに所定の間隔をあけて複数設けられている。
面材75は、補強枠20に充填される中詰材40が補強枠20から流出することを防止する。面材75は、梁材72aと梁材22aとの間で、幅方向Wに所定の間隔をあけて設けられている。
面材75は、例えば、長手方向に交差した断面形状が矩形又は略矩形の平鋼により形成されている。面材75は、一端が梁材22aに連結されており、他端が梁材72aに連結されている。具体的には、面材75は、梁材22aを構成するH形鋼のフランジと梁材72aを構成するH形鋼のフランジとに架け渡されて互いに連結されている。
なお、柱材71、梁材72、繋ぎ材73、面材74及び面材75は、ボルト及びナットにより連結されているが特に限定されず、ピンにより連結されてもよい。このとき、面材74は、柱材71の下端から下方に突出せず、柱材71の上端から上方に突出しないように、梁材72a,72bに連結されている。面材75は、柱材21,71及び梁材22a及び梁材72aの下端から下方に突出しないように、梁材72a及び梁材22aに連結されている。
なお、補強枠20は、土木構造物100の構成、規模及び設置場所によっては、必ずしも必要な構成ではない。
【0046】
(根入れ枠)
根入れ枠30は、土木構造物100における鋼製枠10の各段に設けられている。具体的には、根入れ枠30は、各段の幅方向Wにおいて両端に設けられている。根入れ枠30は、根入れ枠30は、平面視三角形状に形成されており、設置後は地盤に埋め戻される。
なお、根入れ枠30は、土木構造物100の構成、規模及び設置場所によっては、必ずしも必要な構成ではない。
【0047】
(中詰材)
中詰材40は、鋼製枠10に充填されるものであり、例えば、砕石や砂利から構成されている。土木構造物100は、鋼製枠10に充填された中詰材40の強度により、土圧に耐えることができる。
【0048】
図3図9図11に示すように、土木構造物100を構成する複数の鋼製枠のうち、一部の鋼製枠10は、アンカー部8を備えている。アンカー部8は、鋼製枠10の構成部材(柱材や梁材等)に連結されており、一部が地盤Gに埋設されることにより、地盤Gに反力を取ることで土圧に対する土木構造物100の耐久性を高めることができる。したがって、同じ土圧が作用する条件下において、アンカー部8を設けない土木構造物100よりもアンカー部8を設けた土木構造物100の方が小型化することができる。そのため、土木構造物100のうち、最も大きな土圧が作用する最下段の鋼製枠10にアンカー部8を設けることが効果的である。また、アンカー部8は、全ての鋼製枠10に設けられている必要はなく、土木構造物100の規模、想定される土圧に応じて、適宜必要な数だけ鋼製枠10に設けるとよい。本実施の形態においては、土木構造物100の最下段の鋼製枠10にアンカー部8を設けた例について説明する。
【0049】
図3図9図11に示すように、アンカー部8は、例えば、鋼製枠10に一つずつ設けられており、鋼製枠10の高さ方向中央近傍、すなわち、面材13の長手方向中央近傍において、全ての面材13にわたって設けられている。
アンカー部8は、連結部81と、埋設部82と、を備えている。
【0050】
連結部81は、鋼製枠10の構成部材(柱材や梁材等)と埋設部82とを連結する。連結部81は、取付部81aと、繋ぎ部81bと、を備えている。
取付部81aは、鋼製枠10の構成部材に取り付けられる部分である。取付部81aは、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の山形鋼から形成されている。
取付部81aは、前面部1の面材13に対向し、面材13よりも土圧の作用方向下流側に設けられている。すなわち、取付部81aは、図9図11に示すように、面材13よりも前面部1の外側(下流側)に設けられている。
取付部81aは、前面部1の上下方向に沿って配置された面材13の長手方向中央近傍に設けられており、面材13の長手方向に直交または略直交する方向に延びるように設けられている。取付部81aは、前面部1に設けられた面材13の全てにわたって交差するように設けられている。すなわち、取付部81aは、土圧の作用方向に直交する方向に延びるように設けられている。
取付部81aは、一方の面が面材13に下流側で当接するように配置されており、鋼製枠10の構成部材の一つである面材13を介して鋼製枠10に連結されている。ここで、取付部81aは、面材13にボルト及びナットで連結されていてもよいし、単に面材13に係止させていてもよい。
取付部81aは、例えば、長手方向両端部近傍において、繋ぎ部81bに連結されている。
【0051】
繋ぎ部81bは、取付部81aと埋設部82とを繋ぐものである。繋ぎ部81bは、長手方向に交差した断面形状が円形又は略円形の丸形鋼や、ワイヤロープから形成されている。
繋ぎ部81bは、複数(例えば、二つ)設けられており、一つが取付部81aの一端部近傍と埋設部82の一端部近傍を連結しており、他の一つが取付部81aの他端部近傍と埋設部82の他端部近傍を連結している。二つの繋ぎ部81bは、同じ長さに形成されており、互いに平行又は略平行に設けられている。これにより、取付部81aと埋設部82も平行又は略平行になる。
なお、繋ぎ部81bは、二つに限らず、取付部81aや埋設部82の長さ、想定される土圧の大きさに応じて二つ以上設けてもよい。また、アンカー部8の安定のため、繋ぎ部81bは、複数で、土圧の作用方向(河川の流れ方向)に沿って互いに平行又は略平行に設けることが好ましい。すなわち、繋ぎ部81bの長手方向と、取付部81a及び埋設部82の長手方向とが直交することが好ましい。
【0052】
埋設部82は、地盤Gに埋設され、土木構造物100に土圧が作用した時の反力を取るアンカーとして機能する。埋設部82は、長手方向に交差した断面形状がL字形又は略L字形の山形鋼から形成されている。
埋設部82は、繋ぎ部81bを介して取付部81aに連結されており、奥行き方向Dにおける後面部2の後方の地盤Gに設けられている。すなわち、埋設部82は、取付部81aよりも土圧の作用方向上流側に設けられている。埋設部82は、地盤Gのすべり面Sよりも深い位置に設けられている。
埋設部82は、奥行き方向Dにおいて、取付部81aに対向する位置に設けられている。すなわち、埋設部82は、高さ方向Hにおいて、取付部81aとほほ同じ高さに設けられており、面材13の長手方向に直交または略直交する方向に延びるように設けられている。なお、埋設部82は、面材13と取付部81aとの連結位置とほぼ同じ高さ、又は、当該連結位置よりも低い位置に設けられていることが好ましい。
埋設部82は、その長手方向が取付部81aの長手方向に沿ってほぼ平行になるように取付部81aに繋ぎ材81bを介して連結され、固定されている。埋設部82は、奥行き方向Dにおいて、全ての面材13に対向するように設けられている。すなわち、埋設部82は、土圧の作用方向に直交する方向に延びるように設けられている。
埋設部82は、例えば、長手方向両端部近傍において、繋ぎ材81bに連結されている。
埋設部82は、地盤Gに埋設されることにより、位置が固定されている。すなわち、埋設部82は、土圧が作用して土木構造物100に力が加わった際の反力を取る機能を有する。
【0053】
上述したように、土木構造物100は、鋼製枠10が幅方向Wに並べて連結される共に、高さ方向Hに積み重ねられて連結されることにより、構築されている。
具体的には、図4図7図8に示すように、幅方向Wにおいては、前面部1の柱材11が隣接する鋼製枠10の柱材11を兼ねることで、隣接する鋼製枠10のそれぞれの梁材12を1つの柱材11に連結することにより、鋼製枠10を幅方向Wに連結することができる。
一方、高さ方向Hにおいては、下段の鋼製枠10の柱材11と上段の鋼製枠10の柱材11とを連結板90(図7参照)を介してボルト及びナットで連結し、下段の鋼製枠10の柱材21と上段の鋼製枠10の柱材21とを連結板91を介してボルト及びナットで連結することにより、鋼製枠10同士を連結することができる。なお、後面部2に補強枠20が設けられている場合には、下段の補強枠20の柱材71と上段の補強枠20の柱材71とを連結板92を介してボルト及びナットで連結する。
このとき、前面部1の梁部12は柱材11のフランジの間に収まっており、柱材11から上方に突出しておらず、後面部2の梁部22は柱材21のフランジの間に収まっており、柱材21から上方に突出していない。また、左側面部3の繋ぎ材31a,31bや継手板31c,31d,31e,31fは、柱材11,21の端面と同一平面上に設けられるように配置されており、右側面部4の繋ぎ材41a,41bや継手板41c,41d,41e,41fは、柱材11,21の端面と同一平面上に設けられるように配置されている。
これにより、鋼製枠10を予め工場で製作してユニット化し、この鋼製枠10のユニットを積み重ねて連結板90,91,92を介して連結することにより、土木構造物100を簡単に構築することができる。
【0054】
<土木構造物の構築方法>
土木構造物100を構築する際には、図12に示すように、最初に施工区域のほぼ中央に鋼製枠10を設置する。鋼製枠10は、施工現場で構築してもよいし、予め工場で製作されたものを搬送して設置してもよい。
最初の鋼製枠10の設置後、必要に応じて鋼製枠10の形状を補正し、設置された鋼製枠10の内部に中詰材40を充填していく。中詰材40の充填に際しては、図13に示すように、アンカー部8が設けられる高さまで中詰材40を充填する。
次いで、図14に示すように、アンカー部8を設置する。アンカー部8の設置に際しては、例えば、埋設部82を地盤Gに設けると共に、取付部81aを面材13の外側に配置し、取付部81aと繋ぎ部81bとを連結する。繋ぎ部81bは、充填された中詰材40の上面に載置する。このとき、取付部81aと面材13の距離が離れないように留意する。そして、繋ぎ部81bを埋設部82に連結し、繋ぎ部81bが張った状態で埋設部82を土砂で埋める。
次いで、図15に示すように、鋼製枠10の上端部まで中詰材40を充填し、繋ぎ部81bを中詰材40で埋める。
次いで、中詰材40が充填された最初の鋼製枠10に別の鋼製枠10を連結し、連結後に中詰材40を充填する。アンカー部8が必要な鋼製枠10については、上記の手順で鋼製枠10の連結とアンカー部8の設置、中詰材40の充填を行う。なお、アンカー部8を設けない鋼製枠10においては、鋼製枠10を設置後、鋼製枠10の上端まで中詰材40を充填すればよい。
これらの工程を土木構造物100の幅方向W及び高さ方向Hに繰り返し、必要に応じて幅方向W端部に根入れ枠30を連結し、土砂で土木構造物100の一部を埋め戻す。
以上の工程をもって、土木構造物100が構築される。
【0055】
以上のように、鋼製枠10には、土圧が作用した際に地盤Gに反力を取るアンカー部8が設けられているので、アンカー部8を設けていない同じ構造の鋼製枠10及び土木構造物100に比べて土圧に対する強度を高めることができる。これにより、アンカー部8を設けるだけで、鋼製枠10を大型化して中詰材40の充填量を増やし、土木構造物100の断面を大きくすることと同じ効果を得ることができる。よって、鋼製枠10及び土木構造物100の小型化を図ることができ、施工が大掛かりになることもない。
また、埋設部82を取付部81aよりも低い位置に設けることにより、土圧に対する鋼製枠10及び土木構造物100の強度を高めることができる。
また、埋設部82は、地盤Gのすべり面Sよりも深い位置に設けられているので、土砂が崩れても埋設部82が露出して機能を失うことがない。
また、取付部81a及び埋設部82を土圧に作用方向に直交する方向に延びるように設けることにより、取付部81a及び埋設部82に局所的に大きな力が作用することを防止し、土圧に対する抵抗力を最大限に発揮することができる。
また、取付部81aは、前面部1の面材13の下流側に設けられているので、土圧により曲がろうとする面材13の曲げを防止することができる。
また、複数の繋ぎ部81bが互いに平行又は略平行に配置されているので、取付部81aの一部に局所的に大きな力が作用することを防止することができる。
また、アンカー部8は、土木構造物100の中でも土圧が大きくなる最下段の鋼製枠10に設けられているので、土木構造物100を効果的に補強することができる。
【0056】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、アンカー部8における埋設部82は、取付部81aとほぼ同じ高さに設ける場合に限らず、図16に示すように、埋設部82を取付部81aよりも低い位置に設けてもよい。
また、アンカー部8は、比較的大きな土圧が作用する少なくとも最下段に配置された少なくとも一部の鋼製枠10に設けられる場合に限らず、全ての鋼製枠10に設けられていてもよいし、図17に示すように、最下段と2段目の鋼製枠10に設けられていてもよい。また、一つの鋼製枠10に複数のアンカー部8を設けてもよい。
また、取付部81aは、面材13に限らず、柱材11や梁材12や繋ぎ材31,41に連結されていてもよい。
このような構成においても、上記の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 前面部
2 後面部
3 左側面部
4 右側面部
5 天面部
6 底面部
8 アンカー部
81 連結部
81a 取付部
81b 繋ぎ部
82 埋設部
10 鋼製枠
20 補強枠
30 根入れ枠
40 中詰材
100 土木構造物
G 地盤
S すべり面
図1
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