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特開2023-151587仮想同乗者システム、仮想同乗者方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151587
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】仮想同乗者システム、仮想同乗者方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231005BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231005BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/00 D
G09B29/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061277
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000153546
【氏名又は名称】ロジスティード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】福長 由貴
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直美
(72)【発明者】
【氏名】中村 あみ
(72)【発明者】
【氏名】阿部 友梨子
(72)【発明者】
【氏名】田尻 美千代
【テーマコード(参考)】
2C032
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HC27
2C032HC31
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF05
5H181FF22
5H181FF32
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】同乗者から運転評価がされた感覚をドライバーが仮想的に感じることができる。
【解決手段】ドライバー50の運転評価の音声通知を行う仮想同乗者システム1であって、仮想同乗者60を記憶する仮想同乗者記憶部162と、ドライバー50の運転状況を取得する運転状況取得部と、予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両20の位置情報とを関係づけて記憶するインシデント記憶部161と、ドライバー50が運転する車両20の位置情報に基づいて、インシデント記憶部161に記憶されているインシデントを選択する選択部13と、前記運転状況に基づいて、選択された前記インシデントの発生の有無を判定する判定部14と、前記インシデントが発生していないと判定された場合に、仮想同乗者記憶部162にされた仮想同乗者60がドライバー50を称賛するメッセージを音声出力する出力部と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバーの運転評価の音声通知を行う仮想同乗者システムであって、
仮想同乗者を記憶する仮想同乗者記憶部と、
前記ドライバーの運転状況を取得する運転状況取得部と、
予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するインシデント記憶部と、
前記ドライバーが運転する車両の位置情報に基づいて、前記インシデント記憶部に記憶されているインシデントを選択する選択部と、
前記運転状況に基づいて、選択された前記インシデントの発生の有無を判定する判定部と、
前記インシデントが発生していないと判定された場合に、前記仮想同乗者記憶部にされた仮想同乗者が前記ドライバーを称賛するメッセージを音声出力する出力部と、
を備える、仮想同乗者システム。
【請求項2】
前記インシデント記憶部は、前記予め登録したインシデントに、当該インシデントを登録した車両の特徴および/または当該車両のドライバーの特徴を更に関連付けて記憶し、
前記選択部は、前記位置情報と併せて、前記車両の特徴および/または前記ドライバーの特徴に基づいて、前記インシデントを選択する請求項1に記載の仮想同乗者システム。
【請求項3】
前記メッセージが、前記判定部が発生していないと判定したインシデントを含む請求項1または請求項2に記載の仮想同乗者システム。
【請求項4】
前記インシデントが、犯罪、事故、運転アドバイスのうち少なくとも1つである請求項1から請求項3のいずれかに記載の仮想同乗者システム。
【請求項5】
前記出力部が、前記予め登録したインシデントを当該インシデントの位置情報でプロットした地図を出力する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の仮想同乗者システム。
【請求項6】
前記インシデント記憶部は、所定のインシデントが位置と対応付けられたインシデントマップに基づいて、所定のインシデントデータを抽出し、
抽出したインシデントデータを音声に変換したインシデントと、当該インシデントが登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶し、
前記選択部が、前記ドライバーが運転する車両の位置情報を含む所定の範囲内の位置情報を有するインシデントを前記インシデント記憶部から選択する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の仮想同乗者システム。
【請求項7】
前記所定の範囲は、前記インシデント毎に設定される請求項6に記載の仮想同乗者システム。
【請求項8】
前記仮想同乗者記憶部が、前記仮想同乗者の音声データを記憶し、
前記出力部が、記憶された前記仮想同乗者の音声データに基づいて前記メッセージを音声出力する請求項1から請求項7のいずれかに記載の仮想同乗者システム。
【請求項9】
前記仮想同乗者記憶部が、複数の仮想同乗者の音声データを記憶し、
前記出力部が、前記ドライバーが選択した仮想同乗者の音声データに基づいて前記メッセージを音声出力する請求項8に記載の仮想同乗者システム。
【請求項10】
前記出力部が、選択された前記インシデントに基づいて、前記仮想同乗者記憶部の前記複数の仮想同乗者から選択した仮想同乗者の音声データに基づいて前記メッセージを音声出力する請求項8に記載の仮想同乗者システム。
【請求項11】
ドライバーの運転評価の音声通知を行う仮想同乗者システムが実行する方法であって、
仮想同乗者を仮想同乗者記憶部に記憶するステップと、
前記ドライバーの運転状況を取得するステップと、
予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するステップと、
前記ドライバーが運転する車両の位置情報に基づいて、前記インシデント記憶部に記憶されているインシデントを選択するステップと、
前記運転状況に基づいて、選択された前記インシデントの発生の有無を判定するステップと、
前記インシデントが発生していないと判定された場合に、前記仮想同乗者記憶部にされた仮想同乗者が前記ドライバーを称賛するメッセージを音声出力するステップと、
を含む仮想同乗者システム。
【請求項12】
ドライバーの運転評価の音声通知を行う仮想同乗者システムを、
仮想同乗者を記憶する仮想同乗者記憶部と、
前記ドライバーの運転状況を取得する運転状況取得部と、
予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するインシデント記憶部と、
前記ドライバーが運転する車両の位置情報に基づいて、前記インシデント記憶部に記憶されているインシデントを選択する選択部と、
前記運転状況に基づいて、選択された前記インシデントの発生の有無を判定する判定部と、
前記インシデントが発生していないと判定された場合に、前記仮想同乗者記憶部にされた仮想同乗者が前記ドライバーを称賛するメッセージを音声出力する出力部と、
として機能させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバーの運転評価を音声通知で行う仮想同乗者システム、仮想同乗者方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバーの運転技量を評価するための技術が知られている。特許文献1には、自車両および他車両のうちの少なくとも一方の車両のドライバーの顔を含む撮像画像を取得し、撮像画像および車両の走行状態を参照してドライバーの運転技量を評価し、評価結果を出力する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6414309号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、危険運転をした際に警告を受けることにより安全運転の意識は一時的には高まるが、人間はマイナスの評価だけを受け続けると意欲がそがれてしまう。特許文献1は、マイナスの評価だけでなく、「良くできました」等プラスの評価をも行うものの、文字情報や機械的な音声では意欲向上の効果が弱いという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、これらの課題に鑑み、同乗者から運転評価がされた感覚をドライバーが仮想的に感じることができる仮想同乗者システム、仮想同乗者方法、およびプログラムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ドライバーの運転評価の音声通知を行う仮想同乗者システムであって、仮想同乗者を記憶する仮想同乗者記憶部と前記ドライバーの運転状況を取得する運転状況取得部と予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するインシデント記憶部と、前記ドライバーが運転する車両の位置情報に基づいて、前記インシデント記憶部に記憶されているインシデントを選択する選択部と、前記運転状況に基づいて、選択された前記インシデントの発生の有無を判定する判定部と、前記インシデントが発生していないと判定された場合に、前記仮想同乗者記憶部にされた仮想同乗者が前記ドライバーを称賛するメッセージを音声出力する出力部と、を備える仮想同乗者システムを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記インシデント記憶部は、前記予め登録したインシデントに、当該インシデントを登録した車両の特徴および/または当該車両のドライバーの特徴を更に関連付けて記憶し、前記選択部は、前記位置情報と併せて、前記車両の特徴および/または前記ドライバーの特徴に基づいて、前記インシデントを選択する仮想同乗者システムを提供する。
【0008】
また、本発明は、前記メッセージが、前記判定部が発生していないと判定したインシデントを含む仮想同乗者システムを提供する。
【0009】
また、本発明は、前記インシデントが、犯罪、事故、運転アドバイスのうち少なくとも1つである仮想同乗者システムを提供する。
【0010】
また、本発明は、前記出力部が、前記予め登録したインシデントを当該インシデントの位置情報でプロットした地図を出力する仮想同乗者システムを提供する。
【0011】
また、本発明は、前記インシデント記憶部は、所定のインシデントが位置と対応付けられたインシデントマップに基づいて、所定のインシデントデータを抽出し、抽出したインシデントデータを音声に変換したインシデントと、当該インシデントが登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶し、前記選択部が、前記ドライバーが運転する車両の位置情報を含む所定の範囲内の位置情報を有するインシデントを前記インシデント記憶部から選択する仮想同乗者システムを提供する。
【0012】
また、本発明は、前記所定の範囲は、前記インシデント毎に設定される仮想同乗者システムを提供する。
【0013】
また、本発明は、前記仮想同乗者記憶部が、前記仮想同乗者の音声データを記憶し、前記出力部が、記憶された前記仮想同乗者の音声データに基づいて前記メッセージを音声出力する仮想同乗者システムを提供する。
【0014】
また、本発明は、前記仮想同乗者記憶部が、複数の仮想同乗者の音声データを記憶し、前記出力部が、前記ドライバーが選択した仮想同乗者の音声データに基づいて前記メッセージを音声出力する仮想同乗者システムを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記出力部が、選択された前記インシデントに基づいて、前記仮想同乗者記憶部の前記複数の仮想同乗者から選択した仮想同乗者の音声データに基づいて前記メッセージを音声出力する仮想同乗者システムを提供する。
【0016】
また、本発明は、ドライバーの運転評価の音声通知を行う仮想同乗者システムが実行する方法であって、ドライバーの運転評価を音声通知を行う仮想同乗者システムであって、仮想同乗者を仮想同乗者記憶部に記憶するステップと、前記ドライバーの運転状況を取得するステップと、予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するステップと、前記ドライバーが運転する車両の位置情報に基づいて、前記インシデント記憶部に記憶されているインシデントを選択するステップと、前記運転状況に基づいて、選択された前記インシデントの発生の有無を判定するステップと、前記インシデントが発生していないと判定された場合に、前記仮想同乗者記憶部にされた仮想同乗者が前記ドライバーを称賛するメッセージを音声出力するステップと、を含む仮想同乗者システムを提供する。
【0017】
また、本発明は、ドライバーの運転評価の音声通知を行う仮想同乗者システムを、仮想同乗者を記憶する仮想同乗者記憶部と、前記ドライバーの運転状況を取得する運転状況取得部と、予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するインシデント記憶部と、前記ドライバーが運転する車両の位置情報に基づいて、前記インシデント記憶部に記憶されているインシデントを選択する選択部と、前記運転状況に基づいて、選択された前記インシデントの発生の有無を判定する判定部と、前記インシデントが発生していないと判定された場合に、前記仮想同乗者記憶部にされた仮想同乗者が前記ドライバーを称賛するメッセージを音声出力する出力部と、として機能させるプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、同乗者から運転評価がされた感覚をドライバーが仮想的に感じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る仮想同乗者システムの概要を説明する図である。
図2】本発明の実施形態に係る仮想同乗者システムの機能構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る仮想同乗者データベースを模式的に示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るインシデントデータベースを模式的に示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る仮想同乗者システムが実行する仮想同乗者処理フローを示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るインシデントマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
【0021】
[基本概念/基本構成]
図1は、本発明の実施形態に係る仮想同乗者システム1の概要を説明するための図である。仮想同乗者システム1は、予め記録されたインシデント発生場所にてインシデントが発生しなかった場合に、実際には同乗していない同乗者である仮想同乗者がドライバーを称賛するシステムである。
【0022】
仮想同乗者システム1は、仮想同乗者装置10と、車両20に搭載されたドライブレコーダ30と、当該車両20内にある端末40とを含む。仮想同乗者装置10は、ドライブレコーダ30および端末40それぞれと無線通信ネットワークを介して接続される。仮想同乗者装置10は、オンプレミスでもクラウドサーバであってもよいが、本実施形態ではクラウドサーバとする。また、車両20は、本実施形態では自動車とするが、ドライバー50が必要な車両であればよく、自転車やオートバイであってもよい。また、本実施形態では端末40はドライバー50が保持するモバイル端末であるが、車両に搭載されているカーナビ端末などであってもよい。
【0023】
端末40は、ドライバー50の操作入力に基づいて、仮想同乗者60を設定する。仮想同乗者60には、ドライバーの家族・友人・上司や、芸能人、有名人などの実在する人物や、キャラクターなどを設定することができる。詳細には、端末40にインストールされたアプリ起動して、端末40に記憶されている音声データを仮想同乗者装置10に記憶することで、仮想同乗者60を設定することができる。なお、仮想同乗者装置10に記憶されている仮想同乗者から選択して設定することや、複数人を仮想同乗者60として設定することもできる。
【0024】
ドライブレコーダ30は、車両20の運転状況を取得して、所定のタイミングにて当該運転状況を仮想同乗者装置10に送信する。運転状況には、位置測位センサ(例えば、GNSSセンサやGPSセンサ)で取得した位置情報と、車載カメラにより撮影された車内外の動画像や静止画像とが少なくとも含まれるが、位置測位センサ以外の車載センサから取得した車両に係る各種状況を含んでもよい。
【0025】
仮想同乗者装置10は、車両20にインシデントが発生したか否かを、ドライブレコーダ30から受信した運転状況と予め記憶しているインシデント発生情報と、に基づいて判定する。ここで、インシデント発生情報は、過去に発生したインシデント、および当該インシデントの発生場所などを含み、通信ネットワークを介して、車両20や端末40から取得された情報や、WebサイトおよびSNS等から取得された情報から作成された情報である。
【0026】
仮想同乗者装置10は、車両20にインシデントが発生していないと判定した場合、インシデントが発生しなかったこと、すなわちインシデントを回避する安全運転をドライバー50がしたことを称賛する音声メッセージを端末40に送信する。そして、音声メッセージを受信した端末40は、当該メッセージを仮想同乗者60に発話させる。
【0027】
このような仮想同乗者システムによれば、インシデント発生場所においてインシデントを回避する安全運転をしたドライバーを、文字情報や機械的な音声ではなく仮想同乗者の発話によって称賛することができる。それにより、同乗者から運転評価がされた感覚をドライバーが仮想的に感じることができ、ドライバーの安全運転の意識向上を図ることができる。また、仮想同乗者が発話することによって、ドライバーに同乗者がいる感覚を感じさせることでもドライバーの安全運転の意識向上を図ることができる。
【0028】
[仮想同乗者システムの機能構成]
図2は、本発明の実施形態に係る仮想同乗者システム1の機能構成を示す図である。仮想同乗者システム1は、仮想同乗者装置10と、仮想同乗者装置10に無線通信ネットワークを介して接続された、ドライブレコーダ30と、端末40と、を備える。
【0029】
(ドライブレコーダの機能構成)
ドライブレコーダ30は、車両20を運転するドライバー50の運転状況を取得する運転状況取得部の機能を有する。ドライブレコーダ30は、仮想同乗者装置10とデータの送受信を行う送受信部31と、制御部32と、記憶部33と、各種センサ34と、カメラ35と、を備える。各種センサ34は、例えば、GPS(Global Positioning System)センサ、音検出センサ、車速センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、温度センサ、圧力センサ、赤外線センサ、光センサなどがある。
【0030】
制御部32は、カメラ35から車内外の動画像や静止画像(以下、車内外、動/静止画像を区別しない場合には、単に画像という)を取得し、当該画像が撮影された日時と対応付けて記憶部33に記憶する。また、制御部32は、各種センサ34から、位置情報(緯度、経度)、音声、速度、加速度、ハンドル回転角度、ブレーキ踏込量、車内/外温度などの車両状況を取得し、当該車両状況が検知された日時と対応付けて記憶部33に記憶する。
【0031】
記憶部33は、画像および車両状況の他に、ドライバーID、車両種別、車両IDなどの車両に関する車両情報を記憶している。車両情報は、ドライバーIDと対応付けてドライバーの特徴(年代、ドライバー歴、業種など)を保持していてもよい。また、車両情報は、車両IDと対応付けて、車両の特徴(車格、車両の整備情報、走行距離など)を保持していてもよい。送受信部31は、記憶部33に記憶された画像および車両状況と、記憶部33に記憶されている車両情報とを運転状況として、遂次または所定のタイミングで仮想同乗者装置10に送信する。
【0032】
(仮想同乗者装置の機能構成)
仮想同乗者装置10は、ドライブレコーダ30および端末40とデータの送受信を行う送受信部11と、管理部12と、選択部13と、判定部14と、メッセージ生成部15と、記憶部16と、を備える。
【0033】
記憶部16は、端末40で設定された仮想同乗者60の音声データを格納する仮想同乗者データベース(本明細書中において、データベースをDBと記載することがある)160と、過去に発生したインシデントに関するインシデント情報を格納するインシデントデータベース161と、インシデントが発生しなかった際の仮想同乗者が発話するメッセージを格納したメッセージデータベース162と、を備える。なお、本実施形態において、仮想同乗者装置10はクラウドサーバであるため、記憶部16は、クラウドストレージや分散型台帳で構成されるのが望ましい。
【0034】
管理部12は、端末40から送受信部11を介して取得した仮想同乗者情報に基づいて、仮想同乗者DB160を生成・更新し、記憶部16に記録し管理する。
【0035】
図3は、本実施形態に係る仮想同乗者DBを模式的に示す図である。仮想同乗者DBの仮想同乗者情報には、仮想同乗者を識別する仮想同乗者ID、仮想同乗者を設定したドライバを識別するドライバID、仮想同乗者名称、仮想同乗者の音声データ、などを示す情報が含まれている。
【0036】
また、管理部12は、インシデントが発生した車両20のドライブレコーダ30から送受信部11を介して取得した運転状況に基づいてインシデント情報を作成する。そして、管理部12は、作成したインシデント情報に基づいて、インシデントDB161を生成・更新し、記憶部16に記録し管理する。なお、インシデント情報は、仮想同乗者システム1が搭載された車両に限らず、他の車両のドライブレコーダから取得したものを含んでいてもよい。また、管理部12は、運転状況以外に、WebサイトおよびSNS等に掲載されたインシデントに関する情報からインシデント情報を作成してもよい。
【0037】
本実施形態において、インシデントとは、事故などの危難が発生するおそれのある、ヒヤリハットとも言われる事態と、アクシデントの両方を含む。詳細には、インシデントは、車両に関する犯罪、車両に関する事故、車両に関する犯罪や事故になり得る状況や引き起こし得る状況などを示す運転アドバイスなどを含む。運転アドバイスには、例えば、歩行者確認、通学ゾーン、路駐多い、飛出し注意、道路幅狭い、離合できない、高さ制限、安全運転項目などである。
【0038】
図4は、本発明の実施形態に係るインシデントDBを模式的に示す図である。インシデント情報には、インシデントを識別するインシデントID、インシデントが発生した場所の緯度/経度、インシデントの区分、インシデント名称、インシデントの開始時刻、インシデントの終了時刻などを示す情報が含まれている。更に、インシデント情報には、インシデントを発生させたドライバーの特徴(年代、ドライバー歴、業種など)、車両の特徴(車格、車種、車両の整備情報、車両の点検情報、走行距離など)などの情報が含まれていてもよい。なお、インシデント情報には、少なくともインシデント名称と、インシデントが発生した場所の緯度/経度が含まれればよい。
【0039】
図2に戻って、選択部13は、車両20のドライブレコーダ30から取得した運転状況の位置情報に基づいて、インシデントDB161からインシデントを選択する。詳細には、選択部13は、取得した位置情報と一致する位置情報を有するインシデント情報を、インシデントDB161から取得する。
【0040】
選択部13は、取得した位置情報と一致しなくても、取得した位置情報含む所定の範囲内の位置情報を有するインシデント情報を、インシデントDB161から取得してもよい。それにより、インシデントが発生した場所だけでなく発生した場所付近まで、インシデントの発生の有無を判断するエリアを広げることができる。なお、所定の範囲は、予め設定され、インシデント毎に設定されてもよい。
【0041】
また、選択部13は、現在時刻を位置情報と併せて選択条件に含めてもよく、現在時刻にのみ発生するインシデント、例えば夜に発生するインシデント、に限定して選択することができる。
【0042】
また、選択部13は、位置情報と併せて車両の特徴やドライバーの特徴を選択条件に含めてもよく、車両やドライバーに合致したインシデントを限定して選択することができる。例えば、車両がトラックの場合にトラックで発生するインシデントを、ドライバーが初心者の場合に、初心者に発生するインシデントを選択できる。更に、その各条件について重み付けして判定してもよい。このように、時間情報、車両の特徴、ドライバーの特徴等を複合的に勘案して判定することにより、そのドライバーや車両に対して真に注意が必要であったインシデントを選択することができるようになる。
【0043】
判定部14は、車両20のドライブレコーダ30から取得した運転状況に基づいて、選択部13で選択されたインシデントの発生の有無を判定する。詳細には、記憶部16に各インシデントの判定条件を格納する判定条件DB(図示せず)を備え、判定部14は、選択部で選択されたインシデントの判定条件を判定条件DBから取得する。そして、判定部14は、運転状況が判定条件を満たすか否かによって、インシデントの発生の有無を判定する。また、判定部14は、インシデントが発生した運転状況から作成した学習データに基づいて、インシデントの発生の有無を判定する。
【0044】
判定部14は、選択部13で、取得した位置情報含む所定の範囲内の位置情報を有するインシデント情報を、インシデントDB161から取得する場合には、選択部13で同一のインシデント情報が取得されなくなるまでの運転状況全てに基づいて、選択部13で選択されたインシデントの発生の有無を判定する。すなわち、インシデントが発生した場所だけでなく発生した場所付近まで広げた範囲において、インシデントの発生の有無を判定する。
【0045】
メッセージ生成部15は、判定部14でインシデントが発生していないと判定されたことに応じて、端末40で設定された仮想同乗者60がドライバー50を称賛する音声メッセージを生成する。なお、判定部14で複数のインシデントが発生していないと判定された場合には、予め設定された優先度などに従って、メッセージを生成するインシデントを選択してもよい。詳細には、まず、メッセージ生成部15は、判定部14でインシデントが発生していないと判定されたインシデントのメッセージを、メッセージDB162から取得する。
【0046】
ここで、メッセージDB162に格納されているメッセージは、ドライバー50を称賛する内容のテキスト情報であって、インシデント毎やインシデントの区分毎に設定されるのが望ましく、また、メッセージにはインシデント名称が含まれるのが望ましい。例えば、通学ゾーンのインシデントを回避した場合のメッセージには、「通学ゾーンを無事通過!やったね。」、追突事故のインシデントを回避した場合のメッセージには、「追突事故、起こさなかったね。さすがだね。」などが設定される。
【0047】
次に、メッセージ生成部15は、端末40に設定された仮想同乗者60の音声データを仮想同乗者DB160から取得する。続いて、メッセージ生成部15は、取得した音声データに基づいて、取得したメッセージから仮想同乗者60の音声メッセージを生成する。それにより、仮想同乗者60とした人物やキャラクターの口調、言い回し、声のトーンなどの特徴を反映させた音声データを作成することができる。そして、メッセージ生成部15は、生成した音声メッセージを、送受信部11を介して端末40に送信する。
【0048】
(端末の機能構成)
端末40は、ドライバー50に操作され、例えば、モバイル端末、カーナビ端末などであって、仮想同乗者装置10とネットワークを介して情報を送受信可能に接続される。端末40は、例えばタッチパネルで構成される表示入出力部(図示せず)と、例えばスピーカーで構成される音出力部(図示せず)を備える。
【0049】
ドライバー50は、車両に乗車した際に、表示入出力部を操作して所定のアプリを起動し、アプリを用いて仮想同乗者60を設定する。その後、ドライバー50が車両20を始動させると、ドライブレコーダ30から仮想同乗者装置10への運転状況の送信が開始される。走行中にインシデントを回避すると、仮想同乗者装置10から受信した、仮想同乗者60がドライバー50を称賛する音声メッセージが音出力部から出力される。
【0050】
上記の本システムの機能構成は、あくまで一例であり、1つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて1つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置や端末に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置(記憶部)に格納されたコンピュータ・プログラム(例えば、基幹ソフトや上述の各種処理をCPUに実行させるアプリ等)を読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0051】
[処理フロー]
図5は、本発明の実施形態に係る仮想同乗者システムが実行する仮想同乗者処理フローを示す図である。仮想同乗者処理は、本実施形態では、仮想同乗者装置が実行する。
【0052】
まず、管理部12は、端末40から送受信部11を介して取得した仮想同乗者情報に基づいて、仮想同乗者DB160(図3参照)を生成・更新し、記憶部16に記憶し管理する(S1)。次に、選択部13は、ドライブレコーダ30から運転状況を取得する(S2)。続いて、選択部13は、S2で取得した運転状況に含まれる位置情報に基づいて、インシデントDB161(図4参照)から、位置情報が一致または所定範囲内であるインシデントを選択する(S3)。
【0053】
次に、判定部14は、S2で取得した運転状況に基づいて、S3で選択したインシデントの発生の有無を判定する(S4)。インシデントが発生している(YES)場合、S7に処理を進め、インシデントが発生していない(NO)場合、S5に処理を進める。
【0054】
次に、メッセージ生成部15は、S4でインシデントが発生していないと判定されたことに応じて、端末40で設定された仮想同乗者60がドライバー50を称賛する音声メッセージを生成する(S5)。次に、送受信部11は、S5で生成された音声メッセージを端末40に送信し、端末40の音出力部から出力することで、仮想同乗者60に発話させる(S6)。
【0055】
次に、選択部13は、ドライブレコーダ30から運転状況を取得したか否か判断する。運転状況を取得しない(NO)場合には、車両20が停止され運転が終了したと判断して処理を終了し、運転状況を取得した(YES)場合には、運転が継続されていると判断してS3に処理を戻す(S7)。
【0056】
このような仮想同乗者システムによれば、インシデント発生場所やインシデント発生場所付近においてインシデントを回避する安全運転をしたドライバーを、文字情報や機械的な音声ではなく仮想同乗者の発話によって称賛することができる。それにより、同乗者から運転評価がされた感覚をドライバーが仮想的に感じることができ、ドライバーの安全運転の意識向上を図ることができる。また、仮想同乗者が発話することによって、ドライバーに同乗者がいる感覚を感じさせることでもドライバーの安全運転の意識向上を図ることができる。
【0057】
仮想同乗者は、ドライバーが設定することができ、身近な家族、好きな芸能人やキャラクター、改まった気持ちになる上司などを任意に選択できることで、その時の気分に合わせて仮想同乗者を選択することができる。
【0058】
[変形例]
(1)例えば、仮想同乗者システムは、インシデントが発生したときの天候のような環境情報を、インシデント情報に含めることで、車両の走行環境によっては発生しない、またはすることが少ないインシデントを除くことができる。それにより、より的確な運転評価が可能となる。
【0059】
(2)例えば、仮想同乗者システムは、選択部において、運転者の事故履歴および/または発生したインシデント履歴を選択条件とすることで、個人の運転履歴に応じたインシデントを選択できる。また、メッセージ生成部において、判定部で複数のインシデントが発生していないと判定された場合に、運転者の事故履歴および/または発生したインシデント履歴に従って、個人の運転履歴に応じて、メッセージを生成するインシデントを選択してもよい。
【0060】
それにより、例えば、過去に起こした事故に関係するインシデントや発生回数が多いインシデントといった、ドライバーにとって必要性が高いインシデントに限定して、ドライバーを称賛することができる。その結果、仮想同乗者がたびたび称賛することで、仮想同乗者をドライバーが煩わしく感じて、安全運転の意識向上の効果が低下することを防ぐことができる。
【0061】
(3)例えば、仮想同乗者システムは、仮想同乗者情報に、ドライバー名称を含めてもよい。それにより、メッセージ生成部は、ドライバー名称を入れたメッセージ、例えば、「追突事故、起こさなかったね。太郎、さすがだね。」を作成することができる。それにより、ドライバーは自分が褒められていることが実感しやすくなり、安全運転の意識向上を図る効果が向上する。また、同乗者がいる感覚も高まる。
【0062】
(4)例えば、仮想同乗者システムは、記憶部に地図情報を記憶し、地図情報とインシデント情報とに基づいて、地図上のインシデントの位置情報にインシデントを示すアイコンを表示したインシデントマップ(図6参照)を生成して、ドライバーの端末等に送信してもよい。それにより、ドライバーに、インシデントが発生している場所を確認させて、安全運転への注意喚起をすることができる。インシデントマップは、インシデント毎に異なるアイコンを表示したり、インシデントの発生年月日やインシデント名称で検索できるようにしてもよい。また、インシデントが発生した車両のドライバーから収集したコメントなども併せて表示してもよい。
【0063】
(5)例えば、仮想同乗者システムは、所定期間(1日、1週間など)のドライバーの運転に対して、判定部でインシデントと判定したインシデントを蓄積して、回数が多いインシデントや最も危険であったインシデントを抽出してもよい。そして、抽出したインシデントが、次回以降の運転において発生しなくなった場合には、運転が改善されたことを褒めてもよい。また、抽出したインシデントをドライバーにフィードバックしてもよい。それにより、ドライバーの安全運転の意識向上をより図ることができる。
【0064】
(6)例えば、仮想同乗者システムは、仮想同乗者情報にインシデント名称やインシデントの区分を含んでもよい。メッセージ生成部は、判定部で発生していないと判定されたインシデントに基づいて仮想同乗者を選択し、選択した仮想同乗者がドライバーを称賛する音声メッセージを生成することができる。それにより、インシデント毎、インシデントの区分毎に異なる仮想同乗者の音声メッセージとすることができる。それにより、危険度が高いインシデントは上司の音声メッセージで、気をつけようといった軽いインシデントはキャラクターの音声メッセージでと、インシデントの危険度や重要度に応じて音声メッセージにメリハリをつけることができる。
【0065】
(7)例えば、仮想同乗者システムは、判定部でインシデントが発生していないと判定した場合に、ポイントを付与するポイント付与部を備えてもよい。ポイントがたまるとプレゼントがもらえたりすることで、安全運転への意欲を高めることができる。
【0066】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明として、仮想同乗者システムについて説明したが、本発明において仮想同乗者システムが実行する方法や、仮想同乗者システムを各種手段として機能させるプログラムの発明と捉えることもできる。
【符号の説明】
【0067】
1 仮想同乗者システム
10 仮想同乗者装置
11 送受信部
12 管理部
13 選択部
14 判定部
15 メッセージ生成部
16 記憶部
160 仮想同乗者DB
161 インシデントDB
162 メッセージDB
20 車両
30 ドライブレコーダ
31 送受信部
32 制御部
33 記憶部
34 各種センサ
35 カメラ
40 端末
50 ドライバー
60 仮想同乗者
図1
図2
図3
図4
図5
図6