(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151589
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】仮想同乗者システム、仮想同乗者方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231005BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20231005BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G01C21/34
G09B29/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061279
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000153546
【氏名又は名称】ロジスティード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 あみ
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直美
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直子
(72)【発明者】
【氏名】福長 由貴
(72)【発明者】
【氏名】阿部 友梨子
(72)【発明者】
【氏名】田尻 美千代
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HC08
2C032HC31
2F129AA01
2F129BB03
2F129DD20
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2F129EE02
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2F129EE29
2F129EE95
2F129GG17
2F129HH12
2F129HH29
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF05
5H181FF22
5H181FF32
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】同乗者から危険を通知される感覚をドライバーが仮想的に感じることができるシステムを提供する。
【解決手段】ドライバー50に音声通知を行う仮想同乗者システム1は、仮想同乗者60を記憶する仮想同乗者記憶部150と、予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するインシデント記憶部151と、ドライバー50が運転する車両20の位置情報と当該車両20の進行方向情報とに基づいて、インシデント記憶部151に記憶されているインシデントを選択する選択部13と、選択されたインシデントの位置に車両20が到達する前に、仮想同乗者60が当該インシデントに対応する音声を出力する出力部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバーに音声通知を行う仮想同乗者システムであって、
仮想同乗者を記憶する仮想同乗者記憶部と、
予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するインシデント記憶部と、
前記ドライバーが運転する車両の位置情報と当該車両の進行方向情報とに基づいて、前記インシデント記憶部に記憶されているインシデントを選択する選択部と、
選択されたインシデントの位置に前記車両が到達する前に、前記仮想同乗者が当該インシデントに対応する音声を出力する出力部と、
を備える、仮想同乗者システム。
【請求項2】
前記インシデント記憶部は、前記予め登録したインシデントに、当該インシデントを登録した車両の特徴情報および/または当該車両のドライバーの特徴情報を更に関連付けて記憶し、
前記選択部は、前記位置情報と併せて、前記車両の特徴情報および/または前記ドライバーの特徴情報に基づいて、前記インシデントを選択する請求項1に記載の仮想同乗者システム。
【請求項3】
前記インシデントが、犯罪、事故、運転アドバイスのうち少なくとも1つである請求項1または請求項2に記載の仮想同乗者システム。
【請求項4】
前記出力部が、前記インシデント記憶部に基づいて、前記予め登録したインシデントを当該インシデントの位置情報でプロットした地図を出力する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の仮想同乗者システム。
【請求項5】
前記出力部が、前記インシデントの位置と前記車両の位置とが所定の条件を満たす場合は、前記仮想同乗者が当該インシデントに対応する音声を出力する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の仮想同乗者システム。
【請求項6】
前記所定の条件は、前記インシデント毎に設定される請求項5に記載の仮想同乗者システム。
【請求項7】
前記仮想同乗者記憶部が、前記仮想同乗者の音声データを記憶し、
前記出力部が、記憶された前記仮想同乗者の音声データに基づいて前記音声を音声出力する請求項1から請求項6のいずれかに記載の仮想同乗者システム。
【請求項8】
前記仮想同乗者記憶部が、複数の仮想同乗者の音声データを記憶し、
前記出力部が、前記ドライバーが選択した仮想同乗者の音声データに基づいて前記音声を音声出力する請求項1から請求項7のいずれかに記載の仮想同乗者システム。
【請求項9】
前記出力部が、選択された前記インシデントに基づいて前記仮想同乗者記憶部の前記複数の仮想同乗者から選択した、仮想同乗者の音声データに基づいて前記音声を音声出力する請求項7に記載の仮想同乗者システム。
【請求項10】
ドライバーに音声通知を行う仮想同乗者システムが実行する方法であって、
仮想同乗者を記憶するステップと、
前記ドライバーが運転する車両の位置情報と当該車両の進行方向情報とに基づいて、記憶されているインシデントを選択するステップと、
選択されたインシデントの位置に前記車両が到達する前に、前記仮想同乗者が当該インシデントに対応する音声を出力するステップと、を含む方法。
【請求項11】
ドライバーに音声通知を行う仮想同乗者システムを、
仮想同乗者を記憶する仮想同乗者記憶部、
予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するインシデント記憶部、
前記ドライバーが運転する車両の位置情報と当該車両の進行方向情報とに基づいて、前記インシデント記憶部に記憶されているインシデントを選択する選択部、
選択されたインシデントの位置に前記車両が到達する前に、前記仮想同乗者が当該インシデントに対応する音声を出力する出力部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバーに仮想的な同乗者として音声通知を行う仮想同乗者システム、仮想同乗者方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のカーナビゲーション・システム等では、目的地までのルートに沿って、リアルタイムに、渋滞情報、事故情報、工事情報など様々な情報を、音声で案内し、ドライバーに対して危険回避を促している。
【0003】
例えば、特許文献1には、リスクのある地点を通過する際、運転者情報を取得し、運転者の状態がリスクを増大させる状態であるか判定し、運転者の状態によって、リスクのある地点の接近を警告して安全運転を促す運転支援装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、車の特定の状況の発生および解消のタイミングを取得し、状況に応じて音声態様に切り替えて出力する音声通知装置が開示されている。さらに、特許文献3には、車両が事故発生地点に近づいているか否かを判定し、車両が事故発生地点に近づいていると判定された場合、事故発生地点で発生した事故の属性に応じたアラートメッセージを報知する情報処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6696679号
【特許文献2】特許第6561515号
【特許文献3】特開2018―055296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、車両では同乗者がいると、同乗者がドライバーの状態や周囲の状況に応じて話しかけるため、結果として、ドライバーの安全運転への意識が高まる。上述のように、特許文献1~3の技術では、運転者の状況や過去の事故属性により音声態様やアラートメッセージを変えて音声による報知をドライバーに行っている。しかしながら、同乗者のように伝えるものではなく、かつ、必ずしもドライバーの安全運転への意識向上に適する報知であるか分からないという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、これらの課題に鑑み、同乗者から危険を通知される感覚をドライバーが仮想的に感じることができる仮想同乗者システム、仮想同乗者方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ドライバーに音声通知を行う仮想同乗者システムであって、仮想同乗者を記憶する仮想同乗者記憶部と予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するインシデント記憶部と、前記ドライバーが運転する車両の位置情報と当該車両の進行方向情報とに基づいて、前記インシデント記憶部に記憶されているインシデントを選択する選択部と、選択されたインシデントの位置に前記車両が到達する前に、前記仮想同乗者が当該インシデントに対応する音声を出力する出力部と、を備える、仮想同乗者システムを提供する。
【0009】
また、本発明は、前記インシデント記憶部は、前記予め登録したインシデントに、当該インシデントを登録した車両の特徴情報および/または当該車両のドライバーの特徴情報を更に関連付けて記憶し、前記選択部は、前記位置情報と併せて、前記車両の特徴情報および/または前記ドライバーの特徴情報に基づいて、前記インシデントを選択する仮想同乗者システムを提供する。
【0010】
また、本発明は、前記インシデントが、犯罪、事故、運転アドバイスのうち少なくとも1つである仮想同乗者システムを提供する。
【0011】
また、本発明は、前記出力部が、前記インシデント記憶部に基づいて、前記予め登録したインシデントを当該インシデントの位置情報でプロットした地図を出力する仮想同乗者システムを提供する。
【0012】
また、本発明は、前記出力部が、前記インシデントの位置と前記車両の位置とが所定の条件を満たす場合は、前記仮想同乗者が当該インシデントに対応する音声を出力する仮想同乗者システムを提供する。
【0013】
また、本発明は、前記所定の条件は、前記インシデント毎に設定される仮想同乗者システムを提供する。
【0014】
また、本発明は、前記仮想同乗者記憶部が、前記仮想同乗者の音声データを記憶し、前記出力部が、記憶された前記仮想同乗者の音声データに基づいて前記音声を出力する仮想同乗者システムを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記仮想同乗者記憶部が、複数の仮想同乗者の音声データを記憶し、前記出力部が、前記ドライバーが選択した仮想同乗者の音声データに基づいて前記音声を音声出力する仮想同乗者システムを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記出力部が、選択された前記インシデントに基づいて前記仮想同乗者記憶部の前記複数の仮想同乗者から選択した、仮想同乗者の音声データに基づいて前記音声を音声出力する仮想同乗者システムを提供する。
【0017】
また、本発明は、ドライバーに音声通知を行う仮想同乗者システムが実行する方法であって、前記仮想同乗者システムは、予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するインシデント記憶部を備え、仮想同乗者を仮想同乗者記憶部に記憶するステップと、前記ドライバーが運転する車両の位置情報と当該車両の進行方向情報とに基づいて、前記インシデント記憶部に記憶されているインシデントを選択するステップと、選択されたインシデントの位置に前記車両が到達する前に、前記仮想同乗者が当該インシデントに対応する音声を出力するステップと、を含む方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、ドライバーに音声通知を行う仮想同乗者システムを、仮想同乗者を記憶する仮想同乗者記憶部と、予め登録したインシデントと、当該インシデントを登録した車両の位置情報とを関係づけて記憶するインシデント記憶部と、前記ドライバーが運転する車両の位置情報と当該車両の進行方向情報とに基づいて、前記インシデント記憶部に記憶されているインシデントを選択する選択部と、選択されたインシデントの位置に前記車両が到達する前に、前記仮想同乗者が当該インシデントに対応する音声を出力する出力部と、として機能させるプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、同乗者から危険を通知される感覚をドライバーが仮想的に感じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る仮想同乗者システムの概要を説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る仮想同乗者システムの機能構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る仮想同乗者データベースを模式的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るインシデントデータベースを模式的に示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る仮想同乗者システムが実行する仮想同乗者処理フローを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るインシデントマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
【0022】
[基本概念/基本構成]
図1は、本発明の実施形態に係る仮想同乗者システム1の概要を説明するための図である。仮想同乗者システム1は、予め記録されたインシデント発生場所に車両が到達する前に、当該インシデントを実際には同乗していない同乗者である仮想同乗者が通知するシステムである。
【0023】
仮想同乗者システム1は、仮想同乗者装置10と、車両20に搭載されたドライブレコーダ30と、当該車両20内にある端末40とを含む。仮想同乗者装置10は、ドライブレコーダ30および端末40それぞれと無線通信ネットワークを介して接続される。仮想同乗者装置10は、オンプレミスでもクラウドサーバであってもよいが、本実施形態ではクラウドサーバとする。
【0024】
また、車両20は、本実施形態では自動車とするが、ドライバー50が必要な車両であればよく、自転車やオートバイであってもよい。また、本実施形態では端末40はドライバー50が保持するモバイル端末であるが、車両に搭載されているカーナビ端末などであってもよい。
【0025】
端末40は、ドライバー50の操作入力に基づいて、仮想同乗者60を設定する。仮想同乗者60には、ドライバーの家族・友人・上司や、芸能人、有名人などの実在する人物や、キャラクターなどを設定することができる。詳細には、端末40にインストールされたアプリ起動して、端末40に記憶されている音声データを仮想同乗者装置10に記憶することで、仮想同乗者60を設定することができる。なお、仮想同乗者装置10に記憶されている仮想同乗者から選択して設定することや、複数人を仮想同乗者60として設定することもできる。
【0026】
ドライブレコーダ30は、車両20の位置情報および進行方向情報を取得し、所定のタイミングにて仮想同乗者装置10に送信する。ドライブレコーダ30は、位置測位センサ(例えば、GNSSセンサやGPSセンサ)で車両20の位置情報を取得し、車両20が搭載するジャイロセンサおよび加速度センサで車両20の進行方向情報を取得する。
【0027】
仮想同乗者装置10は、車両20から取得した位置情報および進行方向情報に基づいて、予め記憶しているインシデント発生情報から、車両20が接近しているインシデント発生場所およびインシデントを取得する。ここで、インシデント発生情報は、過去に発生したインシデント、および当該インシデントの発生場所などを含み、通信ネットワークを介して、車両20や端末40から取得された情報や、WebサイトおよびSNS等から取得された情報から作成された情報である。
【0028】
仮想同乗者装置10は、取得したインシデント発生場所に車両20が到達する前に、記憶している仮想同乗者60の音声データに基づいて生成した、取得したインシデントに対応する音声を端末40に送信する。当該音声は、例えば、インシデントの内容に対応するメッセージを仮想同乗者60が読み上げる音声である。そして、音声を受信した端末40は、当該音声を仮想同乗者60に発話させる。
【0029】
このような仮想同乗者システムによれば、車両がインシデント発生場所に接近すると、機械的な音声ではなく、ドライバーが設定した仮想同乗者の発話によってドライバーにインシデントを通知することができる。それにより、同乗者から危険を通知される感覚をドライバーが仮想的に感じることができ、ドライバーの安全運転の意識向上を図ることができる。また、仮想同乗者が発話することによって、ドライバーに同乗者がいる感覚を感じさせることでもドライバーの安全運転の意識向上を図ることができる。
【0030】
[仮想同乗者システムの機能構成]
図2は、本発明の実施形態に係る仮想同乗者システム1の機能構成を示す図である。仮想同乗者システム1は、仮想同乗者装置10と、仮想同乗者装置10に無線通信ネットワークを介して接続された、ドライブレコーダ30と、端末40と、を備える。
【0031】
[ドライブレコーダの機能構成]
ドライブレコーダ30は、車両20を運転するドライバー50の運転状況を取得する機能を有する。ドライブレコーダ30は、仮想同乗者装置10とデータの送受信を行う送受信部31と、制御部32と、記憶部33と、各種センサ34と、カメラ35と、を備える。各種センサ34は、例えば、GPS(Global Positioning System)センサ、音検出センサ、車速センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、温度センサ、圧力センサ、赤外線センサ、光センサなどがある。
【0032】
制御部32は、カメラ35から車内外の動画像や静止画像(以下、車内外、動/静止画像を区別しない場合には、単に画像という)を取得し、当該画像が撮影された日時と対応付けて記憶部33に記憶する。また、制御部32は、各種センサ34から、位置情報(緯度、経度)、音声、速度、加速度、ハンドル回転角度、ブレーキ踏込量、車内/外温度などの車両状況を取得し、当該車両状況が検知された日時と対応付けて記憶部33に記憶する。
【0033】
記憶部33は、画像および車両状況の他に、ドライバーID、車格、車両IDなどの車両に関する車両情報を記憶している。車両情報は、ドライバーIDと対応付けてドライバーの特徴(年代、ドライバー歴、業種など)を保持していてもよい。また、車両情報は、車両IDと対応付けて、車両の特徴(車格、車両の整備情報、走行距離など)を保持していてもよい。
【0034】
送受信部31は、車両20の位置情報および進行方向と、記憶部33に記憶されている車両情報とを、遂次または所定のタイミングで仮想同乗者装置10に送信する。なお、送受信部31は、位置情報および進行方向以外の車両状況や画像を併せて送信してもよい。
【0035】
車両にインシデントが発生した場合、送受信部31は、記憶部33に記憶された画像および車両状況と、記憶部33に記憶されている車両情報とを運転状況として、仮想同乗者装置10に送信する。インシデントが発生した車両から仮想同乗者装置10に送信された運転状況に基づいてインシデント情報が生成され、後述するインシデントデータベース151に記憶される。
【0036】
[仮想同乗者装置の機能構成]
仮想同乗者装置10は、ドライブレコーダ30および端末40とデータの送受信を行う送受信部11と、管理部12と、選択部13と、音声生成部14と、記憶部15と、を備える。
【0037】
記憶部15は、端末40で設定された仮想同乗者60の音声データを格納する仮想同乗者データベース(本明細書中において、データベースをDBと記載することがある)150と、過去に発生したインシデントに関するインシデント情報を格納するインシデントデータベース151と、を備える。なお、本実施形態において、仮想同乗者装置10はクラウドサーバであるため、記憶部15は、クラウドストレージや分散型台帳で構成されるのが望ましい。
【0038】
管理部12は、端末40から送受信部11を介して取得した仮想同乗者情報に基づいて、仮想同乗者DB150を生成・更新し、記憶部15に記録し管理する。
【0039】
図3は、本実施形態に係る仮想同乗者DBを模式的に示す図である。仮想同乗者DB150の仮想同乗者情報には、仮想同乗者を識別する仮想同乗者ID、仮想同乗者を設定したドライバを識別するドライバID、仮想同乗者名称、仮想同乗者の音声データ、などを示す情報が含まれている。
【0040】
また、管理部12は、インシデントが発生した車両のドライブレコーダ30から送受信部11を介して取得した運転状況に基づいてインシデント情報を生成する。そして、管理部12は、生成したインシデント情報に基づいて、インシデントDB151を生成・更新し、記憶部15に記録し管理する。なお、インシデント情報は、本仮想同乗者システム1が搭載された車両に限らず、他の車両のドライブレコーダから取得したものを含んでいてもよい。また、管理部12は、運転状況以外に、WebサイトおよびSNS等に掲載されたインシデントに関する情報からインシデント情報を作成してもよい。
【0041】
本実施形態において、インシデントとは、事故などの危難が発生するおそれのある、ヒヤリハットとも言われる事態と、アクシデントの両方とを含む。詳細には、インシデントは、車両に関する犯罪、車両に関する事故、車両に関する犯罪や事故になり得る状況や引き起こし得る状況などを示す運転アドバイスなどを含む。運転アドバイスは、例えば、歩行者確認、一時不停止、通学ゾーン、路駐多い、飛出し注意、道路幅狭い、離合できない、高さ制限、安全運転項目などである。
【0042】
図4は、本発明の実施形態に係るインシデントDBを模式的に示す図である。インシデントDB151のインシデント情報には、インシデントを識別するインシデントID、インシデントが発生した場所の緯度/経度、インシデントの区分、インシデント名称、車格、荷室積載率、ルート、開始時刻、終了時刻などを示す情報が含まれている。更に、インシデント情報には、インシデントを発生させたドライバーの特徴(年代、ドライバー歴、業種など)、車両の特徴(車格、車両の整備情報、走行距離など)、車種などの情報が含まれていてもよい。また、天候の情報を含んでも良い。
【0043】
車格とは、自動車の種類や区分、車両の排気量、最大積載量、車高など車の属性情報である。荷室積載率とは、インシデント発生時の車両の荷室の積載率である。ルートとは、インシデント発生時のルートであって、例えば、トラックの配送ルートである。開始時刻/終了時刻は、インシデントが発生した時間帯の開始時刻/終了時刻である。天候とは、インシデント発生した時間帯の天候である。なお、インシデント情報には、少なくともインシデント名称と、インシデントが発生した場所の緯度/経度が含まれればよい。
【0044】
図2に戻って、選択部13は、車両20が接近している場所のインシデントを、車両20のドライブレコーダ30から取得した位置情報および進行方向情報に基づいて、インシデントDB151から選択する。詳細には、選択部13は、取得した位置情報から所定範囲内であって、進行方向にある位置情報を有するインシデントをインシデントDB151から選択する。それにより、車両20がこれから通過する場所で発生したインシデントを選択することができる。なお、所定範囲は、予め設定され、インシデント毎、車格毎などに設定されてもよい。
【0045】
また、選択部13は、現在時刻を位置情報および進行方向情報と併せて選択条件に含めてもよく、現在時刻にのみ発生するインシデント、例えば夜に発生するインシデント、に限定して選択することができる。さらに、選択部13は、ドライブレコーダ30から取得した車両情報の車格を位置情報および進行方向情報と併せて選択条件に含めてもよく、車格の特性に応じて発生するインシデント、例えば車高の高いトラックに発生するインシデント、に限定して選択することができる。
【0046】
さらにまた、選択部13は、位置情報や進行情報と併せて、車格以外の車両の特徴やドライバーの特徴を選択条件に含めてもよく、車両やドライバーに合致したインシデントを限定して選択することができる。例えば、整備が半年以上されていない車両に発生するインシデントや、ドライバーが初心者の場合に、初心者に発生するインシデントを選択できる。更に、その各条件について重み付けして判定してもよい。このように、時間情報、車両情報、ドライバー情報等を複合的に勘案して判定することにより、そのドライバーや車両に対して真に注意が必要であったインシデントを選択することができるようになる。
【0047】
音声生成部14は、選択部13でインシデントが選択されたことに応じて、選択されたインシデントに対応する、仮想同乗者60による音声を生成する。例えば、音声生成部14は、選択部13で選択されたインシデントについてインシデント記憶部151に記憶されている情報に基づいて、インシデントの内容に対応するメッセージを生成する。具体的には、インシデントID「R0011」のインシデントが選択部13で選択された場合、「路上駐車が多いエリアだよ」とのメッセージを生成する。
【0048】
また、インシデントの区分毎、時間帯毎、月や季節といった時期毎のメッセージやキーワードが登録された文言データベースを記憶部15に予め備え、選択部13で選択されたインシデントや現在日時に対応付けられているメッセージやキーワードに基づいて、インシデントの内容に対応するメッセージを生成する。
【0049】
具体的には、インシデント名称「一時不停止」に「よく見て!」、「夜」に「暗いから」が文言データベースに登録されていると、夜の時間帯にインシデントID「R0010」のインシデントが選択部13で選択された場合、インシデント記憶部151と文言データベースと「暗いからよく見て!一時不停止が起きやすいよ。」とのメッセージを生成する。別の例では、インシデント名称「接触事故」に「よく見て!」、雨に「視界が悪いから」が文言データベースに登録されていると、雨の天候時に「接触事故」のインシデントが選択部13で選択された場合、インシデント記憶部151と文言データベースと「視界が悪いからよく見て!接触事故が発生するリスクがあるよ。」とのメッセージを生成する。
【0050】
次に、音声生成部14は、端末40に設定された仮想同乗者60の音声データを仮想同乗者DB150から取得する。続いて、音声生成部14は、取得した音声データに基づいて、生成したインシデントの内容に対応するメッセージから仮想同乗者60の音声を生成する。それにより、仮想同乗者60とした人物やキャラクターの口調、言い回し、声のトーンなどの特徴を反映させた音声を作成することができる。
【0051】
そして、音声生成部14は、生成した音声を、送受信部11を介して端末40に送信する。音声生成部14は、選択部13で選択したインシデントの位置情報が示す位置と車両20の位置情報が示す位置とが、所定の条件を満たした際に、生成した音声を、送受信部11を介して端末40に送信してもよい。
【0052】
ここで、所定の条件は、インシデントの位置情報が示す位置と車両20の位置情報が示す位置との直線距離や経路距離が所定距離以内であることや、車両20の位置情報が示す位置からインシデントの位置情報が示す位置までの車両20の現在速度での所要時間が所定時間内であることである。
【0053】
なお、所定条件は、予め設定され、インシデント毎に設定されてもよい。それにより、運転アドバイスはインシデント位置の直前で、事故のインシデントはインシデント位置の1km手前や到達5分前といったインシデント位置から少し離れたところでといったように、インシデント毎に適切なタイミングで、仮想同乗者60にインシデントに対応した音声を発話させることができる。
【0054】
[端末の機能構成]
端末40は、ドライバー50に操作され、例えば、モバイル端末、カーナビ端末などであって、仮想同乗者装置10とネットワークを介して情報を送受信可能に接続される。端末40は、例えばタッチパネルで構成される入出力部(図示せず)と、例えばスピーカーで構成される音出力部(図示せず)を備える。
【0055】
ドライバー50は、車両に乗車した際に、入出力部を操作して所定のアプリを起動し、アプリを用いて仮想同乗者60を設定する。その後、ドライバー50が車両20を始動させると、ドライブレコーダ30から仮想同乗者装置10への位置情報および進行方向情報の送信が開始される。走行中にインシデント発生場所に接近すると、仮想同乗者装置10から受信した、仮想同乗者60によるインシデントに対応した音声が音出力部から出力される。
【0056】
上記の本システムの機能構成は、あくまで一例であり、1つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて1つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置や端末に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置(記憶部)に格納されたコンピュータ・プログラム(例えば、基幹ソフトや上述の各種処理をCPUに実行させるアプリ等)を読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0057】
[処理フロー]
図5は、本発明の実施形態に係る仮想同乗者システムが実行する仮想同乗者処理フローを示す図である。仮想同乗者処理は、本実施形態では、仮想同乗者装置10が実行する。
【0058】
まず、管理部12は、端末40から送受信部11を介して取得した仮想同乗者情報に基づいて、仮想同乗者DB150(
図3参照)を生成・更新し、記憶部15に記憶し管理する(S1)。次に、選択部13は、ドライブレコーダ30から車両20の位置情報および進行方向情報を取得する(S2)。続いて、選択部13は、S2で取得した位置情報および進行方向情報に基づいて、インシデントDB151(
図4参照)からインシデントを選択する(S3)。
【0059】
次に、音声生成部14は、S3でインシデントが選択されたか否かを判定する(S4)。インシデントが選択された(YES)場合、S5に処理を進め、インシデントが選択されていない(NO)場合、S2に処理を戻す。
【0060】
次に、音声生成部14は、S3で選択されたインシデントに対応する仮想同乗者60の音声を、インシデント記憶部151に記憶されている情報等と仮想同乗者DB150の音声データとに基づいて生成する(S5)。次に、送受信部11は、S5で生成された音声を端末40に送信し、端末40の音出力部から出力することで、仮想同乗者60に発話させる(S6)。
【0061】
次に、選択部13が、ドライブレコーダ30から新たに位置情報および進行方向情報が取得できたか否かに基づいて、車両20が停止しているか否かを判定する。車両20のエンジンが停止されるとドライブレコーダ30から新たに位置情報および進行方向情報が取得できないため、車両20が停止していると判定する。
【0062】
選択部13が車両20が停止していると判定した場合(YES)には処理を終了し、車両20が停止していないと判定した場合(NO)には、運転が継続されていると判断してS2に処理を戻す(S7)。
【0063】
このような仮想同乗者システムによれば、車両がインシデント発生場所に接近すると、機械的な音声ではなく、ドライバーが設定した仮想同乗者の発話によってドライバーにインシデントを通知することができる。それにより、同乗者から危険を通知される感覚をドライバーが仮想的に感じることができ、ドライバーの安全運転の意識向上を図ることができる。また、仮想同乗者が発話することによって、ドライバーに同乗者がいる感覚を感じさせることでもドライバーの安全運転の意識向上を図ることができる。
【0064】
仮想同乗者は、ドライバーが設定することができ、身近な家族、好きな芸能人やキャラクター、改まった気持ちになる上司などを任意に選択できることで、その時の気分に合わせて仮想同乗者を選択することができる。
【0065】
[変形例]
(1)例えば、仮想同乗者システム1のインシデントDB151は、輸送用トラック、オートバイ、バスなどの車両種類や、運送業、輸送業などの業種別に作成してもよい。それにより、車両の車両種類やドライバーの業種に応じたインシデントを選択でき、車両に発生する確率が高いインシデントを選択して通知することができる。
【0066】
(2)例えば、仮想同乗者システム1は、仮想同乗者情報に、ドライバー名称を含めてもよい。それにより、音声生成部14は、ドライバー名称を入れたメッセージ、例えば、「太郎、この先は脇見運転が多い交差点だよ。」を作成することができる。それにより、ドライバーは自分に対してインシデントが通知されていることが実感しやすくなり、安全運転の意識向上を図る効果が向上する。また、同乗者がいる感覚も高まる。
【0067】
(3)例えば、仮想同乗者システム1は、記憶部15に地図情報を記憶し、地図情報とインシデント情報とに基づいて、地図上のインシデントの位置情報にインシデントを示すアイコンを表示したインシデントマップ(
図6参照)を生成して、ドライバーの端末等に送信してもよい。それにより、ドライバーに、インシデントが発生している場所を確認させて、安全運転への注意喚起をすることができる。インシデントマップは、インシデント毎に異なるアイコンを表示したり、インシデントの発生年月日やインシデント名称で検索できるようにしてもよい。また、インシデントが発生した車両のドライバーから収集したコメントを要注意情報として併せて表示してもよい。
【0068】
(4)例えば、仮想同乗者システム1は、更に、車両に搭載されたカーナビ端末とネットワークを介して接続されてもよい。この場合、仮想同乗者装置10は、車両20の位置情報および進行方向情報をカーナビ端末から取得できる。
【0069】
また、カーナビ端末が提示する目的地への経路案内からこれからの進行経路情報も、仮想同乗者装置10は取得することができる。この場合、音声生成部14は、選択部13で選択したインシデントの内容に、取得したこれからの進行経路情報を含めた音声を生成することができる。例えば、交差点のインシデント情報が選択され、取得したこれからの進行経路情報が次の交差点を左折となっている場合に、「事故が多い交差点だよ。左折時の巻き込み注意」との音声を音声生成部14は生成し、仮想同乗者60に発話させることができる。それにより、運転に沿ったインシデントをドライバー50に適切に通知することができる。
【0070】
さらに、カーナビ端末が取得する渋滞や工事といった道路情報を仮想同乗者装置10は取得でき、選択部13でのインシデントの選択や音声生成部14での音声の生成に用いてもよい。それにより、ドライバー50により適切なインシデントを通知することができる。
【0071】
(5)例えば、仮想同乗者システム1は、仮想同乗者情報にインシデント名称やインシデントの区分を含んでもよい。音声生成部14は、選択部13で選択したインシデントに基づいて仮想同乗者を選択し、選択した仮想同乗者によるインシデントに対応した音声を生成することができる。
【0072】
それにより、インシデント毎、インシデントの区分毎に異なる仮想同乗者の音声メッセージとすることができる。例えば、危険度が高いインシデントは上司の音声メッセージで、気をつけようといった軽いインシデントはキャラクターの音声メッセージでと、インシデントの危険度や重要度に応じて音声メッセージにメリハリをつけることができる。
【0073】
(6)例えば、仮想同乗者システム1のインシデント記憶部151は、位置情報を含まないインシデント情報を記憶してもよい。ここで、位置情報を含まないインシデント情報とは、位置に関係なく発生するインシデントの情報であって、例えば、天候、日にち、イベントといった位置情報以外の要因によって発生するインシデント情報である。具体的には、天候が「雪」の時に発生するスリップ事故のインシデントや、日にちが混雑すると言われる「五十日」の時に発生する渋滞による追突事故のインシデントなどである。それにより、位置情報以外を要因とするインシデントも、ドライバーに通知することができる。
【0074】
(7)例えば、仮想同乗者システム1は、仮想同乗者が発話したインシデントを回避したことに応じて、ポイントを付与するポイント付与部を備えてもよい。ポイントがたまるとプレゼントがもらえたりすることで、ドライバーの安全運転への意欲を高めることができる。
【0075】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明として、仮想同乗者システムについて説明したが、本発明において仮想同乗者システムが実行する方法や、仮想同乗者システムを各種手段として機能させるプログラムの発明と捉えることもできる。
【符号の説明】
【0076】
1 仮想同乗者システム
10 仮想同乗者装置
11 送受信部
12 管理部
13 選択部
14 音声生成部
15 記憶部
150 仮想同乗者DB
151 インシデントDB
20 車両
30 ドライブレコーダ
31 送受信部
32 制御部
33 記憶部
34 各種センサ
35 カメラ
40 端末
50 ドライバー
60 仮想同乗者