(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001516
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器
(51)【国際特許分類】
H04N 25/70 20230101AFI20221226BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
H04N5/369
H01L27/146 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102293
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】521182560
【氏名又は名称】ブリルニクス シンガポール プライベート リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大倉 俊介
(72)【発明者】
【氏名】大谷 愛
(72)【発明者】
【氏名】宮内 健
(72)【発明者】
【氏名】大和田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】韓 相萬
(72)【発明者】
【氏名】高柳 功
【テーマコード(参考)】
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
4M118AA02
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA02
4M118DD04
4M118DD12
4M118FA06
4M118FA33
5C024CX06
5C024CX43
5C024CY47
5C024GX03
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY31
5C024GY39
(57)【要約】
【課題】変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供することにある。
【解決手段】画素信号処理部400は、入力ノードND401に入力される画素信号PIXOUTのうち第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)の信号方向を反転させ、反転増幅処理を受けた反転第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)を、接続ノードND402を通してAD変換部430に入力させる第1の読み出し部410と、入力ノードND401に入力される画素信号PIXOUTのうち第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)の信号方向を保持して、非反転第2変換利得信号第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)を、接続ノードND402を通してAD変換部430に入力させる第2の読み出し部420と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換を行い、少なくとも2つの変換利得に応じた信号方向が逆方向である第1変換利得信号および第2変換利得信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、
前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、
前記画素信号処理部は、
前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、
次段回路と接続される接続ノードと、
前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第1変換利得信号の信号方向を反転させ、反転第1変換利得信号を前記接続ノードに出力する第1の読み出し部と、
前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第2変換利得信号の信号方向を保持して、非反転第2変換利得信号を前記接続ノードに出力する第2の読み出し部と、を含む
固体撮像装置。
【請求項2】
前記第1の読み出し部は、
反転入力端子が前記入力ノードに接続される第1の演算増幅器を含む
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記第1の読み出し部は、
前記第1の演算増幅器の反転入力端子と前記入力ノードとの間に直列に接続された第1の入力スイッチおよび第1のサンプリングキャパシタと、
前記接続ノードに接続された前記第1の演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に接続された帰還キャパシタと、
前記接続ノードに接続された前記第1の演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に接続されたリセットスイッチと、を含み、
前記第1の入力スイッチは第1変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持され、
前記第1の演算増幅器の非反転入力端子は少なくとも参照電位に接続可能である
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記第2の読み出し部は、
前記入力ノードと前記接続ノード間に接続された第2の入力スイッチを含み、
前記第2の入力スイッチは第2変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持される
請求項1から3のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記画素信号処理部は、
前記第1の読み出し部および前記第2の読み出し部により共用される第1の演算増幅器を含み、さらに、
前記第1の読み出し部は、
前記第1の演算増幅器の反転入力端子と前記入力ノードとの間に直列に接続された第1の入力スイッチおよび第1のサンプリングキャパシタと、
前記接続ノードに接続された前記第1の演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に接続された帰還キャパシタと、
前記接続ノードに接続された前記第1の演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に接続されたリセットスイッチと、
前記非反転入力端子と参照電位とを選択的に接続する第3のスイッチと、を含み、
前記第2の読み出し部は、
前記入力ノードと前記非反転入力端子との間に直列に接続された前記第2の入力スイッチおよび第2のサンプリングキャパシタと、
前記非反転入力端子と基準電位との間に接続された減衰用キャパシタと、を含み、
前記第1の入力スイッチおよび前記第3のスイッチは第1変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持され、
前記第2の入力スイッチおよび前記リセットスイッチは第2変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持される
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記第2の読み出し部は、
前記第1変換利得信号読み出しモード時に、少なくとも前記第2の入力スイッチと前記非反転入力端子との接続信号ラインを基準電位に接続可能な第4のスイッチを含む
請求項5記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記非反転入力端子と、前記第2のサンプリングキャパシタおよび前記減衰用キャパシタの接続ノードとを選択的に接続可能な第5のスイッチを含む
請求項5記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記第1の読み出し部および前記第2の読み出し部は、
前記第1のサンプリングキャパシタと第2のサンプリングキャパシタが共用され、
前記帰還キャパシタと前記減衰用キャパシタとが共用されている
請求項5記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記入力ノードに前記サンプリングキャパシタが接続され、
前記サンプリングキャパシタと前記第1の演算増幅器の反転入力端子との間に前記第1の入力スイッチが接続され、
前記サンプリングキャパシタと前記第1の演算増幅器の非反転入力端子との間に前記第2の入力スイッチが接続され、
前記接続ノードに接続された前記第1の演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に前記帰還キャパシタが接続され、
前記接続ノードに接続された前記第1の演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に前記リセットスイッチが接続され、
前記帰還キャパシタの一方の電極側と前記第1の演算増幅器の反転入力端子との間に第6のスイッチが接続され、
前記帰還キャパシタの他方の電極側と前記第1の演算増幅器の出力端子との間に第7のスイッチが接続され、
前記帰還キャパシタの一方の電極側と前記第1の演算増幅器の非反転入力端子との間に第8のスイッチが接続され、
前記帰還キャパシタの他方の電極側と基準電位との間に第9のスイッチが接続され、
前記第1の演算増幅器の非反転入力端子と前記参照電位との間に前記第3のスイッチが接続されている
請求項8記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記第1変換利得信号読み出しモード時には、
前記第1の入力スイッチ、前記第3のスイッチ、前記第6のスイッチ、および前記第7のスイッチが導通状態に保持され、
前記第2の入力スイッチ、前記リセットスイッチ、前記第8のスイッチ、および前記第9のスイッチが非導通状態に保持され、
前記第2変換利得信号読み出しモード時には、
前記第1の入力スイッチ、前記第3のスイッチ、前記第6のスイッチ、および前記第7のスイッチが非導通状態に保持され、
前記第2の入力スイッチ、前記リセットスイッチ、前記第8のスイッチ、および前記第9のスイッチが導通状態に保持される
請求項9記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記第1の読み出し部および前記第2の読み出し部は、
前記第1のサンプリングキャパシタと第2のサンプリングキャパシタが共用されている
請求項5記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記入力ノードに前記サンプリングキャパシタが接続され、
前記サンプリングキャパシタと前記第1の演算増幅器の反転入力端子との間に前記第1の入力スイッチが接続され、
前記サンプリングキャパシタと前記第1の演算増幅器の非反転入力端子との間に前記第2の入力スイッチが接続され、
前記接続ノードに接続された前記第1の演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に前記帰還キャパシタが接続され、
前記接続ノードに接続された前記第1の演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に前記リセットスイッチが接続され、
前記サンプリングキャパシタの一方の電極側と前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチとの接続ノードと前記減衰用キャパシタとの間に第10のスイッチが接続され、
前記第1の演算増幅器の非反転入力端子と前記参照電位との間に前記第3のスイッチが接続されている
請求項11記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記第1変換利得信号読み出しモード時には、
前記第1の入力スイッチ、および前記第3のスイッチが導通状態に保持され、
前記リセットスイッチ、および前記第10のスイッチが非導通状態に保持され、
前記第2変換利得信号読み出しモード時には、
前記第1の入力スイッチ、および前記第3のスイッチが非導通状態に保持され、
前記リセットスイッチ、および前記第10のスイッチが導通状態に保持される
請求項12記載の固体撮像装置。
【請求項14】
前記第1の演算増幅器は、
前記反転入力端子が、前記反転入力端子用の第1の反転入力端子に加えて、少なくとも第2反転入力端子を含み、
前記第1の読み出し部は、さらに、
前記第1の演算増幅器の第2反転入力端子と前記入力ノードとの間に直列に接続された第3の入力スイッチおよび第3のサンプリングキャパシタと、
前記接続ノードに接続された前記第1の演算増幅器の出力端子と前記第2反転入力端子との間に接続された第2帰還キャパシタと、
前記接続ノードに接続された前記第1の演算増幅器の出力端子と前記第2の反転入力端子との間に接続された第2リセットスイッチと、を含み、
前記第1の演算増幅器の非反転入力端子は少なくとも参照電位に接続可能である
請求項2または13記載の固体撮像装置。
【請求項15】
前記第1の入力スイッチは第1変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持され、
前記第2の入力スイッチは第2変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持され、
前記第3の入力スイッチは、前記第1変換利得と前記第2変換利得の中間の第3変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持される
請求項14記載の固体撮像装置。
【請求項16】
前記読み出し画素は、
2つの変換利得に応じた信号方向が逆方向である第1変換利得信号および第2変換利得信号を画素信号として読み出し可能であり、
前記画素信号処理部は、
第1変換利得信号読み出しモード時に、前記第1の読み出し部において、第1変換利得による第1の読み出しリセット信号の反転読み出しを行い、次いで、
第1変換利得による第1の読み出し輝度信号の反転読み出しを行い、
第2変換利得信号読み出しモード時に、前記第2の読み出し部において、第2変換利得による第2の読み出し輝度信号の非反転読み出しを行い、次いで、
第2変換利得による第2の読み出しリセット信号の非反転読み出しを行う
請求項1から13のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項17】
前記読み出し画素は、
変換利得に応じた信号方向が逆方向である少なくとも第1変換利得信号および第2変換利得信号を画素信号として読み出し可能であり、
前記画素信号処理部は、
前記第1の読み出し部において、第1変換利得と第2変換利得の中間値を持つ第3変換利得による第3の読み出しリセット信号の反転読み出しを行い、次いで、
前記第1の読み出し部において、第1変換利得による第1の読み出しリセット信号の反転読み出しを行い、次いで、
前記第1の読み出し部において、第1変換利得による第1の読み出し輝度信号の反転読み出しを行い、次いで、
前記第1の読み出し部において、第3変換利得による第3の読み出し輝度信号の反転読み出しを行い、
前記第2の読み出し部において、第2変換利得による第2の読み出し輝度信号の非反転読み出しを行い、次いで、
前記第2の読み出し部において、第2変換利得による第2の読み出しリセット信号の非反転読み出しを行う
請求項14または15記載の固体撮像装置。
【請求項18】
前記画素信号処理部は、
前記第1の読み出し部および第2の読み出し部で処理され、前記接続ノードにより出力される画素信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログデジタル(AD)変換部を有し、
前記第1の読み出し部または前記AD変換部は、
前記第1の演算増幅器の出力端子と前記接続ノードとの接続ライン上に配置されたサンプルホールドスイッチを含み、
前記AD変換部は、
第2の演算増幅器と、
前記第2の演算増幅器の反転入力端子と前記サンプルホールドスイッチとの間に接続された入力キャパシタと、
前記第2の演算増幅器の反転入力端子に接続され、前記第2変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持される第11のスイッチと、
前記第11のスイッチと基準電位との間に接続されたサンプルホールドキャパシタと、
前記第2の演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に接続され、前記第2変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持される第3のリセットスイッチと、を含み、
前記第2の演算増幅器の非反転入力端子は、参照電位または前記第2の演算増幅器の出力端子に接続可能である
請求項1から4のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項19】
光電変換を行い、少なくとも2つの変換利得に応じた信号方向が逆方向である第1変換利得信号および第2変換利得信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、
前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、
前記画素信号処理部は、
前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、
次段回路と接続される接続ノードと、
前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第1変換利得信号の信号方向を反転させ、反転第1変換利得信号を前記接続ノードに出力する第1の読み出し部と、
前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第2変換利得信号の信号方向を保持して、非反転第2変換利得信号を前記接続ノードに出力する第2の読み出し部と、を含む
固体撮像装置の駆動方法であって、
第1変換利得信号読み出しモード時に、前記第1の読み出し部において、第1変換利得による第1の読み出しリセット信号の反転読み出しを行い、次いで、
第1変換利得による第1の読み出し輝度信号の反転読み出しを行い、
第2変換利得信号読み出しモード時に、前記第2の読み出し部において、第2変換利得による第2の読み出し輝度信号の非反転読み出しを行い、次いで、
第2変換利得による第2の読み出しリセット信号の非反転読み出しを行う
固体撮像装置の駆動方法。
【請求項20】
固体撮像装置と、
前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、
前記固体撮像装置は、
光電変換を行い、少なくとも2つの変換利得に応じた信号方向が逆方向である第1変換利得信号および第2変換利得信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、
前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、
前記画素信号処理部は、
前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、
次段回路と接続される接続ノードと、
前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第1変換利得信号の信号方向を反転させ、反転第1変換利得信号を前記接続ノードに出力する第1の読み出し部と、
前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第2変換利得信号の信号方向を保持して、非反転第2変換利得信号を前記接続ノードに出力する第2の読み出し部と、を含む
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を検出して電荷を発生させる光電変換素子を用いた固体撮像装置(イメージセンサ)として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが実用に供されている。
CMOSイメージセンサは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ、医療用内視鏡、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話等の携帯端末装置(モバイル機器)等の各種電子機器の一部として広く適用されている。
【0003】
CMOSイメージセンサは、画素毎にフォトダイオード(光電変換素子)および浮遊拡散層(FD:Floating Diffusion、フローティングディフュージョン)を有するFDアンプを持ち合わせており、その読み出しは、画素アレイの中のある一行を選択し、それらを同時に列(カラム)方向へと読み出すような列並列出力型が主流である。
【0004】
ところで、固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)の画素の構成としては、たとえば一つのフォトダイオード(光電変換素子)に対して、転送素子としての転送トランジスタ、リセット素子としてのリセットトランジスタ、ソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタ、および選択素子としての選択トランジスタをそれぞれ一つずつ有する4トランジスタ(4Tr)構成の基本的な画素を例示することができる。
【0005】
転送トランジスタは、所定の転送期間に選択されて導通状態となり、フォトダイオードで光電変換され蓄積された電荷(電子)をフローティングディフュージョンFDに転送する。
リセットトランジスタは、所定のリセット期間に選択されて導通状態となり、フローティングディフュージョンFDを電源線の電位にリセットする。
選択トランジスタは、読み出しスキャン時に選択されて導通状態となる。これにより、ソースフォロワトランジスタはフローティングディフュージョンFDで電圧信号に変換した列出力の読み出し信号を垂直信号線に出力する。
【0006】
たとえば、読み出しスキャン期間において、リセット期間にフローティングディフュージョンFDがたとえば電源線の電位(基準電位)にリセットされた後、フローティングディフュージョンFDの電荷がFD容量に応じた利得をもって電圧信号に変換されて、基準レベルの読み出しリセット信号(基準レベルの信号)Vrstとして垂直信号線に出力される。
続いて、所定の転送期間に、フォトダイオードで光電変換され蓄積された電荷(電子)がフローティングディフュージョンFDに転送される。そして、フローティングディフュージョンFDの電荷がFD容量に応じた利得をもって電圧信号に変換されて、信号レベルの読み出し信号(信号レベルの信号)Vsigとして垂直信号線に出力される。
画素の出力信号は、カラム読み出し回路において差分信号(Vsig-Vrst)としてCDS(相関二重サンプリング)処理される。
【0007】
このように、通常の画素読み出し信号(以下、画素信号という場合もある)PSは、1つの基準レベルの読み出しリセット信号Vrstと1つの信号レベルの読み出し信号Vsigにより形成される。
【0008】
ところで、特性向上のため、高ダイナミックレンジ(HDR:High Dynamic Range)を持つ高画質の固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)を実現する方法が種々提案されている。
【0009】
高ダイナミックレンジ化のアプローチの一つとして、横型オーバーフロー蓄積容量(LOFIC: Lateral Overflow Integration Capacitor)の構成を挙げることができる(たとえば特許文献1参照)。
LOFIC構成の画素は、上述した基本的構成に、蓄積キャパシタおよび蓄積トランジスタが追加されており、同一露光時間にフォトダイオードから溢れた過飽和電荷を捨てずに蓄積キャパシタに蓄積する。
【0010】
このLOFIC画素は、フローティングディフュージョンの容量Cfd1による変換利得(高利得側:1/Cfd1に比例)と、フローティングディフュージョンの容量Cfd1+蓄積キャパシタC2のLOFIC容量Cloficによる変換利得(低利得側:1/(Cfd1+Clofic)に比例)の2種類を持つことができる。
すなわち、LOFIC画素では、低変換利得(LCG)信号と高変換利得(HCG)信号をそれぞれ使用して、大きな飽和と小さなダークノイズを実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005-328493号公報
【特許文献2】特開2020-115603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、LOFICには、高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の結合(接合)点におけるSNRの低下という重要な問題がある。
すなわち、LOFIC構成のみでは、LCG信号のkTCノイズを取り除くことができないため、HCG信号とLCG信号の結合点におけるSNRが低下する。
【0013】
たとえば特許文献2には、LOFIC対象ではないが、低変換利得データと高変換利得データの接続点におけるノイズギャップを除去でき、消費電力の増大、回路面積の増大を抑止し可能で、しかも高ダイナミックレンジ化を実現できる固体撮像装置の読み出し回路における画素信号処理部の具体的な回路構成が提案されている。
【0014】
ところで、LOFIC構造を持つCMOSイメージセンサでは、高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の信号方向、すなわち、互いにレベル遷移方向が反対であることから、二重読み出し回路が必要となる。
ところが、上記特許文献2に記載の読み出し回路における画素信号処理部は信号方向が互いに同じである単一露光HDR(SEHDR)画素から発生のHCG信号およびLCG信号の両方を読み取ることが可能であることから、LOFIC構造を持つCMOSイメージセンサにはそのまま適用することは困難である。
【0015】
また、LOFIC構造を持つCMOSイメージセンサに適用可能な二重読み出し回路を実現しようとする場合、チップコストを削減するためには、LCG信号とHCG信号の両方を最小限の回路オーバーヘッドで処理でき、また、低消費電力化を実現することが可能な読み出し回路が必要である。
【0016】
本発明は、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供することにある。
本発明は、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能なことはもより、消費電力の増大、回路面積の増大を抑止し可能で、しかも高ダイナミックレンジ化を実現でき、ひいては高画質化を実現することが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の観点の固体撮像装置は、光電変換を行い、少なくとも2つの変換利得に応じた信号方向が逆方向である第1変換利得信号および第2変換利得信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、前記画素信号処理部は、前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、次段回路と接続される接続ノードと、前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第1変換利得信号の信号方向を反転させ、反転第1変換利得信号を前記接続ノードに出力する第1の読み出し部と、前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第2変換利得信号の信号方向を保持して、非反転第2変換利得信号を前記接続ノードに出力する第2の読み出し部と、を含む。
【0018】
本発明の第2の観点は、光電変換を行い、少なくとも2つの変換利得に応じた信号方向が逆方向である第1変換利得信号および第2変換利得信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、前記画素信号処理部は、前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、次段回路と接続される接続ノードと、前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第1変換利得信号の信号方向を反転させ、反転第1変換利得信号を前記接続ノードに出力する第1の読み出し部と、前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第2変換利得信号の信号方向を保持して、非反転第2変換利得信号を前記接続ノードに出力する第2の読み出し部と、を含む固体撮像装置の駆動方法であって、第1変換利得信号読み出しモード時に、前記第1の読み出し部において、第1変換利得による第1の読み出しリセット信号の反転読み出しを行い、次いで、第1変換利得による第1の読み出し輝度信号の反転読み出しを行い、第2変換利得信号読み出しモード時に、前記第2の読み出し部において、第2変換利得による第2の読み出し輝度信号の非反転読み出しを行い、次いで、第2変換利得による第2の読み出しリセット信号の非反転読み出しを行う。
【0019】
本発明の第3の観点の電子機器は、固体撮像装置と、前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、前記固体撮像装置は、光電変換を行い、少なくとも2つの変換利得に応じた信号方向が逆方向である第1変換利得信号および第2変換利得信号を画素信号として読み出し可能な読み出し画素と、前記読み出し画素から読み出された前記画素信号を処理する画素信号処理部と、を含み、前記画素信号処理部は、前記読み出し画素から読み出された画素信号が入力される入力ノードと、次段回路と接続される接続ノードと、前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第1変換利得信号の信号方向を反転させ、反転第1変換利得信号を前記接続ノードに出力する第1の読み出し部と、前記入力ノードに入力される画素信号のうち前記第2変換利得信号の信号方向を保持して、非反転第2変換利得信号を前記接続ノードに出力する第2の読み出し部と、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能となる。
また、本発明によれば、変換利得の異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能なことはもとより、消費電力の増大、回路面積の増大を抑止し可能で、しかも高ダイナミックレンジ化を実現でき、ひいては高画質化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本第1の実施形態に係る読み出し画素の一例を示す回路図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素の読み出しシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る画素信号処理部の構成例を示す回路図である。
【
図5】本第1の実施形態に係る固体撮像装置のデュアル変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
【
図7】本第2の実施形態に係る固体撮像装置のデュアル変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
【
図9】本第3の実施形態に係る固体撮像装置のデュアル変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例および画素と画素信号処理部の積層構造例を示すブロック図である。
【
図11】本発明の第5の実施形態に係る画素信号処理部の構成例を示す回路図である。
【
図12】本発明の第5の実施形態に係る画素信号処理部の第1変換利得信号読み出しモード時におけるアクティブ系回路を説明するための回路図である。
【
図13】本発明の第5の実施形態に係る画素信号処理部の第2変換利得信号読み出しモード時におけるアクティブ系回路を説明するための回路図である。
【
図14】本発明の第6の実施形態に係る画素信号処理部の構成例を示す回路図である。
【
図15】本発明の第6の実施形態に係る画素信号処理部の第1変換利得信号読み出しモード時におけるアクティブ系回路を説明するための回路図である。
【
図16】本発明の第6の実施形態に係る画素信号処理部の第2変換利得信号読み出しモード時におけるアクティブ系回路を説明するための回路図である。
【
図17】本発明の第7の実施形態に係る画素信号処理部の構成例を示す回路図である。
【
図18】本第7の実施形態に係る固体撮像装置の変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図19】本第7の実施形態に係る固体撮像装置の変換利得読み出しモードの低照度下、中照度下、高照度下における動作を説明するための動作シーケンスおよびポテンシャル遷移を示す図である。
【
図20】本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用される電子機器の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素の構成例を示す回路図である。
図3(A)~(E)は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素の読み出しシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【0024】
本実施形態において、固体撮像装置10は、たとえばCMOSイメージセンサにより構成される。
【0025】
この固体撮像装置10は、
図1に示すように、撮像部としての画素部20、垂直走査回路(行走査回路)30、画素信号処理部400を含む読み出し回路(カラム読み出し回路)40、水平走査回路(列走査回路)50、およびタイミング制御回路60を主構成要素として有している。
これらの構成要素のうち、たとえば垂直走査回路30、読み出し回路40、水平走査回路50、およびタイミング制御回路60により画素信号の読み出し部70が構成される。
【0026】
本第1の実施形態において、画素部20に行列状に配列される読み出し画素200は、基本的に、
図2に示すような、構成を有している。
すなわち、読み出し画素200は、転送される電荷を電圧信号として読み出すために保持するフローティングディフュージョンFD(Floating Diffusion;浮遊拡散層)11と、露光期間PEXP中に入射光量に応じた電荷を蓄積する光電変換素子としてのフォトダイオードPD11と、露光期間PEXP中は非導通状態に保持され、転送期間に導通状態に保持されて光電変換素子としてのフォトダイオードPD11に蓄積された電荷をフローティングディフュージョンFD11に転送する転送素子としての転送トランジスタTG11-Trと、フローティングディフュージョンFD11の蓄積電荷を排出するリセット処理が可能なリセット素子としてのリセットトランジスタRST11-Trと、を含んで構成されている。
【0027】
さらに、読み出し画素200は、光電変換素子としてのフォトダイオードPD11から溢れ出るオーバーフロー電荷を蓄積可能な蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11と、フローティングディフュージョンFD11と蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11とを選択的に接続する蓄積接続素子としての蓄積トランジスタSG11-Trと、を含んで構成されている。
【0028】
さらに、読み出し画素200は、光電変換素子としてのフォトダイオードPD11から溢れ、転送トランジスタTG11-Trを通してフローティングディフュージョンFD11に溢れ出る電荷を蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11の形成領域方向にオーバーフローさせることが可能なオーバーフローパスOVFPが形成されている。
オーバーフローパスOVFPの所定領域に形成された蓄積ノードNDS11と基準電位VSSとの間に蓄積キャパシタCS11が接続され、蓄積トランジスタSG11-Trが蓄積ノードNDS11とフローティングディフュージョンFD11との間に接続され、リセットトランジスタRST11-Trが電源電位VAAPIXと蓄積ノードNDS11との間に接続されている。
さらに、読み出し画素200は、フローティングディフュージョンFD11で変換した電圧信号を出力するソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタSF11-Trと、選択素子としての選択トランジスタSEL11-Trを含んで構成されている。
【0029】
本実施形態に係る読み出し画素200は、読み出し部70の制御の下、蓄積接続素子としての蓄積トランジスタSG11-Trを通してフローティングディフュージョンFD11と蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11を選択的に接続することにより、フローティングディフュージョンFD11の容量を第1容量または第2容量に変更して変換利得を第1容量で決まる第1変換利得(たとえば高変換利得:HCG:High Conversion Gain)または第2容量で決まる第2変換利得(たとえば低変換利得:LCG:Low Conversion Gain)に切り換え可能である。
【0030】
このように、固体撮像装置10は、読み出し部70の制御の下、
図3に示すように、指定されるデュアル変換利得読み出しモード期間に、第1容量に応じた第1変換利得(高変換利得:HCG)で画素信号の読み出しを行う第1変換利得モード読み出しと、第2容量(第1容量と異なる)に応じた第2変換利得(低変換利得:LCG)で画素信号の読み出しを行う第2変換利得モード読み出しと、を行うことが可能に構成されている。
【0031】
読み出し画素200は、たとえば横型オーバ一フロー蓄積容量(以下、「L0FIC (Lateral Overflow Integration Capacitor) 」という構造が設けられており、読み出し部70の制御の下、低照度条件下では光電変換素子であるフォトダイオードPD11の蓄積電荷およびオーバーフロー電荷に関連する第2変換利得を用いた2重サンプリング読み出しモード(LOFICモード)動作を行う。
【0032】
本第1の実施形態において、読み出し画素200は、第1容量に応じた第1変換利得(たとえば高変換利得:HCG)で画素信号の読み出しを行う第1変換利得信号読み出しと、第2容量(第1容量と異なる)に応じた第2変換利得(たとえば低変換利得:LCG)で画素信号の読み出しを行う第2変換利得信号読み出しを行うデュアル変換利得信号読み出しが行われる。
本第1の実施形態において、読み出し画素200に対する読み出し処理としては、
図3に示すように、まず第1変換利得信号読み出しモード時に、第1の読み出しリセット信号HCGRSTが読み出され、次いで、第1の読み出し輝度信号HCGSIGが読み出される。
続いて、第2変換利得信号読み出しモード時に、第2の読み出し輝度信号LCGSIGが読み出され、次いで、第2の読み出しリセット信号LCGRSTが読み出される。
【0033】
このように、読み出し画素200から画素信号PXLOUTとして読み出される第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)と第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)は、信号方向(レベル遷移方向)が逆方向の信号として形成される。
【0034】
(画素200の具体的な回路構成)
ここで、
図2の読み出し画素200の具体的な回路構成について説明する。
ここでは、LOFIC構造を持つ読み出し画素200の構成例について説明する。
【0035】
画素部20は、フォトダイオード(光電変換素子)と画素内アンプとを含む読み出し画素200がN行×M列の2次元の行列状(マトリクス状)に配列されている。
【0036】
この読み出し画素200は、たとえば
図2に示すように、光電変換素子としてのフォトダイオードPD11、転送素子としての転送トランジスタTG11-Tr、リセット素子としてのリセットトランジスタRST11-Tr、ソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタSF11-Tr、選択素子としての選択トランジスタSEL11-Tr、蓄積接続素子としての蓄積トランジスタSG11-Tr、蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11、フローティングディフュージョンFD11、および蓄積キャパシタCS11に接続された蓄積ノードNDS11を含んで構成されている。
【0037】
また、読み出し画素200において、フローティングディフュージョンFD11の容量CFDは、低ノイズ用に非常に小さい容量に形成されている。
蓄積キャパシタCS11の容量CS1は、高FWC(Full Well Capacity)用に非常に大きい容量(静電容量)に設定されている。蓄積キャパシタCS11の容量CS1は、フローティングディフュージョンFD11の容量CFDより大きい。
そして、高変換利得にはフローティングディフュージョンFD11の容量CFDが主として用いられ、低変換利得には蓄積キャパシタCS11の容量CS1も用いられる。
【0038】
フォトダイオードPD11は、入射光量に応じた量の信号電荷(ここでは電子)を発生し、蓄積する。
以下、信号電荷は電子であり、各トランジスタがn型トランジスタである場合について説明するが、信号電荷がホールであったり、各トランジスタがp型トランジスタであっても構わない。
【0039】
各読み出し画素200において、フォトダイオード(PD)としては、埋め込み型フォトダイオード(PPD)が用いられる。
フォトダイオード(PD)を形成する基板表面にはダングリングボンドなどの欠陥による界面準位が存在するため、熱エネルギーによって多くの電荷(暗電流)が発生し、正しい信号が読み出せなくなってしまうおそれがある。
埋め込み型フォトダイオード(PPD)では、フォトダイオード(PD)の電荷蓄積部を基板内に埋め込むことで、暗電流の信号への混入を低減することが可能となる。
【0040】
転送トランジスタTG11-Trは、フォトダイオードPD11とフローティングディフュージョンFD11の間に接続され、制御信号TGを通じて制御される。
転送トランジスタTG11-Trは、制御信号TGがハイレベル(H)の期間に選択されて導通状態となり、フォトダイオードPD11で光電変換され蓄積ノードに蓄積された電荷(電子)をフローティングディフュージョンFD11に転送する。
【0041】
リセットトランジスタRST11-Trは、
図2の例では、電源電位VAAPIXと蓄積ノードNDS11との間に接続され、制御信号RSTを通じて制御される。
リセットトランジスタRST11-Trは、制御信号RSTがHレベルの期間に選択されて導通状態となり、蓄積トランジスタSG11-Trが導通状態に保持されているときに、フローティングディフュージョンFD11(および蓄積キャパシタCS11)を電源電位VAAPIXにリセットする。
【0042】
また、本第1の実施形態では、リセットトランジスタRST11-Tr、蓄積トランジスタSG11-Tr、および転送トランジスタTG11-Trが導通状態に保持されてフローティングディフュージョンFD11およびフォトダイオードPD11がリセットされる。
また、本第1の実施形態では、リセットトランジスタRST11-Trおよび蓄積トランジスタSG11-Trが導通状態に保持されてフローティングディフュージョンFD11および蓄積キャパシタCS11がリセットされる。
【0043】
蓄積トランジスタSG11-Trは、蓄積ノードNDS11を介してフローティングディフュージョンFD11(およびリセットトランジスタRST11-Tr)と蓄積キャパシタCS11との間に接続されている。
蓄積トランジスタSG11-Trは、制御線を通じてゲートに印加される制御信号SGにより制御される。
蓄積トランジスタSG11-Trは、制御信号SGがHレベルの期間に選択されて導通状態となり、フローティングディフュージョンFD11(およびリセットトランジスタRST11-Tr)と蓄積キャパシタCS11とを接続する。
本第1の実施形態では、上述したように、リセットトランジスタRST11-Trおよび蓄積トランジスタSG11-Trが導通状態に保持されてフローティングディフュージョンFD11および蓄積キャパシタCS11がリセットされる。
【0044】
なお、本第1の実施形態において、オーバーフローパスOVFPは、
図2に示すように、フォトダイオードPD11のオーバーフロー電荷をフローティングディフュージョンFD11、蓄積トランジスタSG11-Tr、蓄積ノードNDS11を介し蓄積キャパシタCS11に転送可能な経路として形成され(実線の矢印)、かつ、蓄積キャパシタCS11のオーバーフロー電荷を蓄積ノードNDS11、リセットトランジスタRST11-Trを介して電源電位VAAPIXに転送可能な経路として形成されている(破線の矢印)。
【0045】
ソースフォロワトランジスタSF11-Trと選択トランジスタSEL11-Trは、電源電位VAAPIXと垂直信号線LSGN11の間に直列に接続されている。
ソースフォロワトランジスタSF11-TrのゲートにはフローティングディフュージョンFD11が接続され、選択トランジスタSEL11-Trは制御線を通じてゲートに印加される制御信号SELにより制御される。
選択トランジスタSEL11-Trは、制御信号SELがHレベルの選択期間に選択されて導通状態となる。これにより、ソースフォロワトランジスタSF11-TrはFD11で電圧信号に変換した列出力の読み出し電圧信号(VRST1,VSIG1)を垂直信号線LSGN11に出力する。
【0046】
画素部20には、読み出し画素200がN行×M列配置されているので、各制御線はそれぞれN本、垂直信号線はM本ある。
図1においては、各制御線を1本の行走査制御線として表している。
【0047】
垂直走査回路30は、タイミング制御回路60の制御に応じてシャッター行および読み出し行において行走査制御線を通して画素の駆動を行う。
また、垂直走査回路30は、アドレス信号に従い、信号の読み出しを行うリード行と、フォトダイオードPD11に蓄積された電荷をリセットするシャッター行の行アドレスの行選択信号を出力する。
【0048】
読み出し回路40は、画素部20の各列出力に対応して配置された複数の列信号処理回路(図示せず)としての画素信号処理部400を含み、複数の列信号処理回路で列並列処理が可能に構成されてもよい。
読み出し回路40において、画素信号処理部400は、信号方向、換言するとレベル遷移方向が逆方向の信号として形成され、読み出し画素200から画素信号PXLOUTとして読み出される第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)と第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)のいずれか一方の変換利得信号、具体的には第1変換利得信号を反転させる機能を有する。
さらに、画素信号処理部400は、信号方向(レベル遷移方向)をそろえた後、第1変換利得信号と第2変換利得信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログデジタル(AD)変換機能を有する。
なお、画素信号処理部の具体的な回路構成例については後で詳述する。
【0049】
水平走査回路50は、読み出し回路40の複数の画素信号処理部400で処理された信号を走査して水平方向に転送し、図示しない信号処理回路に出力する。
【0050】
タイミング制御回路60は、画素部20、垂直走査回路30、読み出し回路40、水平走査回路50等の信号処理に必要なタイミング信号を生成する。
【0051】
読み出し部70は、デュアル変換利得読み出しモードMDCGが指定されると、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRD、第1変換利得読み出し処理HCGSRD、第2変換利得読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを行う、
【0052】
本第1の実施形態において、読み出し部70は、露光期間PEXPを開始後、読み出しモード処理として、デュアル変換利得読み出しモードMDCGの読み出し処理を行う。
【0053】
たとえば、読み出し部70は、
図3に示すように、リセットトランジスタRST11-Tr、蓄積トランジスタSG11-Tr、および転送トランジスタTG11-Trを所定期間導通状態に保持してフォトダイオードPD11、フローティングディフュージョンFD11、蓄積キャパシタCS11をリセットしてシャッター処理を行い、転送トランジスタTG11-Trを非導通状態にして露光期間PEXPを開始する。
そして、読み出し部70は、露光期間PEXPを開始した後、デュアル変換利得読み出しモードDMCGの処理として、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRD、第1変換利得読み出し処理HCGSRD、第2変換利得読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを順次行う。
【0054】
以上、固体撮像装置10の各部の構成および機能の概要について説明した。
次に、本第1の実施形態に係る読み出し部70のカラム処理系である画素信号処理部400における構成、それに関連した読み出し処理等について詳述する。
【0055】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る画素信号処理部の構成例を示す回路図である。
【0056】
読み出し画素200から読み出される複数の画素信号を増幅、AD変換等可能な画素信号処理部400は、
図4に示すように、入力ノードND401、接続ノードND402、第1の読み出し部410、第2の読み出し部420、およびAD変換部430を含んで構成されている。
【0057】
入力ノードND401は、読み出し画素200から垂直信号線LSGN11に画素信号PXLOUTとして読み出される第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)と第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)が入力され、入力信号を第1の読み出し部410および第2の読み出し部420に供給する。
【0058】
接続ノードND402は、第1の読み出し部410の出力端子および第2の読み出し部320の出力端子が接続され、かつ、次段のAD変換部430の入力端子に接続されている。
接続ノードND402は、第1の読み出し部410により反転処理された第1変換利得信号および第2の読み出し部420により処理された第2変換利得信号をAD変換部430に供給する。
【0059】
第1の読み出し部410は、入力ノードND401に入力される画素信号PIXOUTのうち第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)の信号方向(レベル遷移方向)を反転させ、反転第1変換利得信号を接続ノードND402に出力する。
【0060】
第2の読み出し部420は、入力ノードND401に入力される画素信号PIXOUTのうち第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)の信号方向(レベル遷移方向)を保持して、非反転第2変換利得信号を接続ノードND402に出力する。
【0061】
ここで、本第1の実施形態に係る第1の読み出し部410および第2の読み出し部420の具体的な構成例について
図4に関連付けて説明する。
【0062】
(第1の読み出し部410の構成例)
第1の読み出し部410は、反転入力端子(-)が入力ノードND401からの信号供給ラインに接続される第1の演算増幅器(アンプ)411を含む。
アンプ411は、入力ノードND401からの信号供給ラインに接続される反転入力端子(-)が第1のノードND411に接続され、出力端子が第2のノードND412に接続され、非反転入力端子(+)が第3のノードND413に接続されている。
入力ノードND401と第1のノードND411との間に、第1の入力スイッチ412および第1のサンプリングキャパシタCS411が直列に接続されている。
第2のノードND412と第1のノードND411との間に、帰還キャパシタCF411が接続されている。
第2のノードND412と第1のノードND411との間に、帰還キャパシタCF411と並列に第1のリセットスイッチRST411が接続されている。
第2のノードND412と接続ノードND402との間に、出力スイッチ413が接続されている。
そして、アンプ411の非反転入力端子(+)に接続された第3のノードND413が基準電位VBに接続されている。
【0063】
第1の入力スイッチ412は、たとえばMOSトランジスタにより形成され、制御信号φ1により導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第1の入力スイッチ412は、第1変換利得信号読み出しモード時に制御信号φ1がたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、入力ノードND401に入力される第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)を第1のサンプリングキャパシタCS411を通してアンプ411の反転入力端子(-)に入力させる。
【0064】
出力スイッチ413は、たとえばMOSトランジスタに形成され、制御信号φ1により導通状態、非導通状態が切り換えられる。
出力スイッチ413は、第1変換利得信号読み出しモード時に制御信号φ1がたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、アンプ411により反転増幅処理を受けた反転第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)を、接続ノードND402を通してAD変換部430に入力させる。
【0065】
第1のリセットスイッチRST411は、制御信号RST_HCGにより導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第1のリセットスイッチRST411は、第1変換利得信号読み出しモードの所定の開始期間に制御信号RST_HCGがたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、アンプ411を初期化させる。
【0066】
(第2の読み出し部420の構成例)
第2の読み出し部420は、入力ノードND401と接続ノードND402間の信号転送ラインLS421に接続された第2の入力スイッチ421を含む。
【0067】
第2の入力スイッチ421は、たとえばMOSトランジスタにより形成され、制御信号φ21により導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第2の入力スイッチ421は、第2変換利得信号読み出しモード時に制御信号φ2がたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、入力ノードND401に入力される第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)を、接続ノードND402を通してAD変換部430に入力させる。
【0068】
(AD変換部430の構成例)
AD変換部430は、反転入力端子(-)が接続ノードND402からの信号供給ラインに接続される第2の演算増幅器(アンプ)431を含む。
アンプ431は、接続ND402からの信号供給ラインに接続される反転入力端子(-)が入力ノードND431に接続され、出力端子出力ノードND432に接続され、非反転入力端子(+)が参照電位制御回路432の出力側に接続されている。
接続ノードND402と入力ノードND431との間に、入力キャパシタとしてのサンプリングキャパシタCC431が接続されている。
出力ノードND432と入力ノードND431との間に、第3のリセットスイッチRST431が接続されている。
そして、アンプ431の反転入力端子(-)に接続された第3のノードND431と基準電位VSSと間に第3のスイッチ433およびサンプリングキャパシタCSH431が直列に接続されている。
【0069】
第3の入力スイッチ433は、たとえばMOSトランジスタにより形成され、制御信号φ2により導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第3の入力スイッチ433は、第2変換利得信号読み出しモード時に、サンプリングキャパシタCC431に入力ノードND431を介してサンプリングキャパシタCSH431に接続させる。
サンプリングキャパシタCSH431を設けることにより、画素信号の振幅を調整し、特に高振幅の画素信号の振幅をAD変換可能なレベルに減少(調整)させることで、ダイナミックレンジを拡張することが可能となる。
【0070】
第3のリセットスイッチRST431は、制御信号RST_LCGにより導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第3のリセットスイッチRST431は、第1変換利得信号読み出しモードの所定の開始期間に制御信号RST_LCGがたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、アンプ431を初期化させる。
【0071】
(固体撮像装置10の読み出し動作)
以上、固体撮像装置10の各部の特徴的な構成および機能について説明した。
次に、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10の画素信号の読み出し動作について詳述する。
【0072】
図5(A)~(G)は、本第1の実施形態に係る固体撮像装置のデュアル変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0073】
図5(A)は読み出し画素200のリセットトランジスタRST11-Trの制御信号RSTを、
図5(B)は読み出し画素200の蓄積トランジスタSG11-Trの制御信号SGを、
図5(C)は読み出し画素200の転送トランジスタTG11-Trの制御信号TGをそれぞれ示している。
図5(D)は画素信号処理部400の第1の読み出し部410の第1の入力スイッチ412、出力スイッチ413の制御信号φ1、第2の読み出し部420の第2の入力スイッチ421、並びに、AD変換部430の第3の入力スイッチ433の制御信号φ2を示している。
図5(E)は画素信号処理部400の第1の読み出し部410の第1のリセットスイッチRST411の制御信号RST_HCG、並びに、AD変換部430の第2のリセットスイッチRST431の制御信号RST_LCGを示している。
図5(F)は読み出し画素200から読み出される画素信号PIXOUTを、
図5(G)は画素信号処理部400の第1の読み出し部410および第2の読み出し部420の増幅出力信号AMPOUTを示している。
【0074】
デュアル変換利得読み出しモードMDCGの処理が開始される前に、制御信号RST、SG、TGが所定期間ハイレベルに設定されて、リセットトランジスタRST11-Tr、蓄積トランジスタSG11-Tr、転送トランジスタTG11-Trが所定期間導通状態に保持される。
これにより、フォトダイオードPD11、フローティングディフュージョンFD11、および蓄積キャパシタCS11が固定電位VAAPIXでリセットされる。すなわち、シャッター動作が行われる(
図5(A)~(C))。
【0075】
(第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理)
そして、転送トランジスタTG11-Trが導通状態から非導通状態に切り換えられたタイミングで露光時間PEXPが開始され、第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理が行われる。
露光期間PEXPを開始してから一定期間後、制御信号SGが所定期間だけハイレベルに切り換えられた後、第1の読み出しリセット信号(HCGRST)の読み出し期間となる。
このとき、制御信号SGはローレベルのままに保持され、蓄積トランジスタSG11-Trは非導通状態にあることから、フローティングディフュージョンFD11の電荷と蓄積キャパシタCS11の電荷が分離されており、フローティングディフュージョンFD11の利得がフローティングディフュージョンFD11の容量CFDを含む第1容量で決まる第1変換利得HCGに保持されている。
【0076】
そして、リセット処理後の第1のリセット信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第1容量で決まる第1変換利得HCGで変換した第1の読み出しリセット信号HCGRSTが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第1の読み出しリセット信号HCGRSTに対する所定の処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDが行われる。
【0077】
次いで、第1のリセット信号読み出し期間後の第1の転送期間に制御信号TGがハイレベルに切り換えられて転送トランジスタTG11-Trが導通状態に保持され、フォトダイオードPD11の蓄積電荷がフローティングディフュージョンFD11に転送される。第1の転送期間後、制御信号TGはローレベルに切り換えられ、転送トランジスタTG11-Trは非導通状態に切り換えられる。
【0078】
次いで、第1の転送期間に続く第1の信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第1容量で決まる第1変換利得で変換した第1の読み出し信号HCGSIGが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第1の読み出し信号HCGSIGに対する所定の処理を行う第1変換利得読み出し処理HCGSRD行われる。
【0079】
そして、リセットレベル(VHCGRST,VRH)と信号レベル(VHCGSIG、VSH)を保持するか、あるいは、リセットレベルと信号レベルとの差分によりデジタルCDS演算が行われる。
【0080】
第1変換利得信号読み出しモードにおいて、読み出し回路40では以下の処理が行われる。
第1変換利得信号読み出しモード時には、読み出し回路40の画素信号処理部400の第1の読み出し部410における第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413に制御信号φ1がアクティブのハイレベルで供給される。
一方、第1変換利得信号読み出しモード時には、読み出し回路40の画素信号処理部400の第2の読み出し部420における第2の入力スイッチ421に制御信号φ2が非アクティブのローレベルに保持される。
したがって、第1変換利得信号読み出しモード時には、画素信号処理部400の第1の読み出し部410がアクティブ状態となり、第2の読み出し部420は非アクティブ状態となる。
【0081】
また、第1の読み出し部410においては、第1変換利得信号読み出しモードの所定の開始期間に制御信号RST_HCGがたとえばハイレベルで供給されて第1のリセットスイッチRST411が導通状態に切り換えられ、アンプ411が初期化される。
そして、第1変換利得信号読み出しモードにおいては、第1変換利得信号である第1の読み出しリセット信号HCGRST(電位VRH)が入力され、続いて第1の読み出しリセット信号HCGRSTはアンプ411で反転される。
【0082】
また、第1変換利得信号読み出しモード時において、AD変換部430は、第3の入力スイッチ433および第2のリセットスイッチRST431には非アクティブの制御信号φ2,RST_LCGが供給されていることから、アンプ431の反転入力端子(-)に供給される第1の読み出し部410の出力信号AMPOUTと非反転入力端子(+)に供給される所定電位とを比較処理することで、AD変換を行う。
【0083】
第1変換利得信号読み出しモード時においては、増幅部として機能する第1の読み出し部410には、第1の読み出しリセット信号HCGRST(電位VRH)が入力され、続いて第1の読み出しリセット信号HCGRSTより低電位の第1の読み出し輝度信号HCGSIG(電位VSH)が供給される。
そして、第1の読み出しリセット信号HCGRST(電位VRH)が入力され、続いて第1の読み出しリセット信号HCGRSTはアンプ411において反転増幅作用を受けて、次段のAD変換部430に出力される。
第1の読み出し部410のアンプ411の出力信号AMPOUTは、参照電位VBを基準に、第1の読み出しリセット信号HCGRST(電位VRH)と低電位の読み出し輝度信号HCGSIG(VSH)の差分に容量比倍G(CS/CF)を掛け合わせたレベル増幅された信号(VB+G*(VRH-VSH))となる。
【0084】
(第2変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理)
次いで、第1変換利得読み出し処理HCGSRD後に、制御信号SGがローレベルからハイレベルに切り換えられて、蓄積トランジスタSG11-Trを導通状態に切り換えられて蓄積キャパシタCS11がフローティングディフュージョンFD11と接続される。
これにより、フローディングディフュージョンFD11の電荷と蓄積キャパシタCS11の電荷が共有されてフローティングディフュージョンFD11の利得が第2容量で決まる第2変換利得LCGに切り換えられる。
これにより、第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理から第2変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理に切り換わる。
【0085】
次いで、第1の信号読み出し期間後の第2の転送期間に制御信号TGがハイレベルに切り換えられて転送トランジスタTG11-Trが導通状態に保持され、フォトダイオードPD11の蓄積電荷がフローティングディフュージョンFD11に転送される。第2の転送期間後、制御信号TGはローレベルに切り換えられ、転送トランジスタTG11-Trは非導通状態に切り換えられる。
そして、第1の信号読み出し期間後の第2の転送期間に続く第2の信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第2容量で決まる第2変換利得LCGで変換した第2の読み出し信号LCGSIGが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第2の読み出し信号LCGSIGに対する所定の処理を行う第2変換利得読み出し処理LCGSRDが行われる。
【0086】
次いで、第2の信号読み出し期間経過後に、制御信号RSTがハイレベルに切り換えられ、リセットトランジスタRST11-Trが導通状態に切り換えられ、第2のリセット信号読み出し期間となる。
そして、第2のリセット信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第2容量で決まる第2変換利得LCGで変換した第2の読み出しリセット信号LCGRSTが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第2の読み出しリセット信号LCGRSTに対する所定の処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理HCGRRDが行われる。
【0087】
そして、リセットレベル(LCGRST、VRL)と信号レベル(LCGSIG,VSL)を保持するか、あるいは、リセットレベルLCGRST(VRL)と信号レベルLCGSIG(VSL)の差分によりオフセットノイズキャンセル演算が行われる。
【0088】
第2変換利得信号読み出しモードにおいて、読み出し回路40では以下の処理が行われる。
第2変換利得信号読み出しモード時には、読み出し回路40の画素信号処理部400の第1の読み出し部410における第1の入力スイッチ412および出力スイッチ413に制御信号φ1が非アクティブのローレベルで供給される。
一方、第2変換利得信号読み出しモード時には、読み出し回路40の画素信号処理部400の第2の読み出し部420における第2の入力スイッチ421に制御信号φ2がアクティブのハイレベルに保持される。
したがって、第2変換利得信号読み出しモード時には、画素信号処理部400の第1の読み出し部410が非アクティブ状態となり、第2の読み出し部420はアクティブ状態となる。
これに伴い、第2変換利得信号読み出しモード中には、第1の読み出し部410のアンプ411の電源をオフにすることができることから、消費電力の削減を図ることが可能である。
【0089】
また、第2変換利得信号読み出しモード時において、AD変換部430は、第3の入力スイッチ433および第2のリセットスイッチRST431にはアクティブの制御信号φ2,RST_LCGが供給されることから、アンプ431の反転入力端子(-)に供給される第2の読み出し部420の出力信号AMPOUTは、以下のような処理を受ける。
【0090】
第2変換利得信号読み出しモード時においては、減衰器として機能する第2の読み出し部420、AD変換部430のアンプ431には、反転作用を受けていない、第2の読み出し輝度信号LCGSIG(電位VSL)が入力され、続いて第2の読み出しリセット信号LCGRST(電位VRL)が供給される。
そして、AD変換部430のアンプ431の出力信号AMPOUTは、参照電位VBを基準に、第2の読み出し輝度信号LCGSIG(電位VSL)が入力され、続いて第2の読み出しリセット信号LCGRST(電位VRL)の差分に容量比倍G(CC/(CC+CSH))を掛け合わせたレベル減衰された信号(VB+G*(VRL-VSL))となる。
【0091】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、AD変換処理等が可能な画素信号処理部400は、
図4に示すように、入力ノードND401、接続ノードND402、第1の読み出し部410、第2の読み出し部420,およびAD変換部430を含んで構成されている。
第1の読み出し部410は、入力ノードND401に入力される画素信号PIXOUTのうち第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)の信号方向(レベル遷移方向)を反転させ、反転増幅処理を受けた反転第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)を、接続ノードND402を通してAD変換部430に入力させる。
第2の読み出し部420は、入力ノードND401に入力される画素信号PIXOUTのうち第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)の信号方向(レベル遷移方向)を保持して、非反転第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)を、接続ノードND402を通してAD変換部430に入力させる。
また、AD変換部430は、サンプリングキャパシタCSH431を設けることにより、画素信号の振幅を調整、特に高振幅の画素信号の振幅をAD変換可能なレベルに減少(調整)させることで、ダイナミックレンジを拡張することが可能となる。
【0092】
したがって、本第1の実施形態によれば、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能となる。
また、本第1の実施形態によれば、変換利得の異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能なことはもより、消費電力の増大、回路面積の増大を抑止可能で、しかも高ダイナミックレンジ化を実現でき、ひいては高画質化を実現することが可能となる。
また、第2変換利得信号読み出しモード時には、画素信号処理部400の第1の読み出し部410が非アクティブ状態となり、第2の読み出し部420はアクティブ状態となる。
これに伴い、第2変換利得信号読み出しモード中には、第1の読み出し部410のアンプ411の電源をオフにすることができることから、消費電力の削減を図ることが可能である。
また、AD変換部430には、同じ方向の反転第1変換利得信号と非反転第2変換利得信号を入力させることができることから、既存のADCにより、オーバーヘッドなしで入力される反転第1変換利得信号と非反転第2変換利得信号を変換することが可能となり、ひいては適用されるカメラシステムのコスト低減を図ることが可能となる。
【0093】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
図7(A)~(H)は、本第2の実施形態に係る固体撮像装置のデュアル変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0094】
図7(A)は読み出し画素200のリセットトランジスタRST11-Trの制御信号RSTを、
図7(B)は読み出し画素200の蓄積トランジスタSG11-Trの制御信号SGを、
図7(C)は読み出し画素200の転送トランジスタTG11-Trの制御信号TGをそれぞれ示している。
図7(D)は画素信号処理部400の第1の読み出し部410の第1の入力スイッチ412の制御信号φ1、第2の読み出し部420の第2の入力スイッチ421の制御信号φ2を示している。
図7(E)は画素信号処理部400の第1の読み出し部410の第1のリセットスイッチRST411の制御信号RST_HCGを、
図7(F)はAD変換部430の第2のリセットスイッチRST412の制御信号RST_LCGを示している。
図7(G)は読み出し画素200から読み出される画素信号PIXOUTを、
図7(H)は画素信号処理部400の第1の読み出し部410および第2の読み出し部420の増幅出力信号AMPOUTを示している。
【0095】
本第2の実施形態の画素信号処理部400Aが第1の実施形態の画素信号処理部400が異なる点は、次の通りである。
【0096】
第1の実施形態の画素信号処理部400においては、第1の読み出し部410はアンプ411を有し、第2の読み出し部420はアンプを持たず、第2の入力スイッチ421に接続された信号転送ラインLS421は接続ノードND402に接続されて減衰器として機能する。
そして、第1の読み出し部410と第2の読み出し部420は、アンプ411を共用することなくそれぞれ独立して個別に、処理対象の第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)に対する反転増幅処理と、第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)に対する非反転減衰処理を行う。
【0097】
これに対して、本第2の実施形態の画素信号処理部400Aにおいては、アンプ411Aが第1の読み出し部410Aと第2の読み出し部420Aにより共用されている。
具体的には、第2の読み出し部410Aにおいては、アンプ411Aの非反転入力端子(+)に接続された第3のノードND413と基準電位VBとの間に第4の入力スイッチ414が接続されている。
一方、第2の読み出し部420Aにおいては、第2の入力スイッチ421に接続された信号転送ラインSL421は接続ノードND402の代わりに、アンプ411Aの非反転入力端子(+)に接続された第3のノードND413に接続されている。
さらに、第2の読み出し部420Aにおいては、第2の入力スイッチ421と第3のノードND413との間に第2のサンプリングキャパシタCC421が接続されている。そして、第3のノードND413と第2のサンプリングキャパシタCC421との接続ノードである第5のノードND421と基準電位VSSとの間に減衰用キャパシタCSH421が接続されている。
【0098】
第4の入力スイッチ414は、たとえばMOSトランジスタにより形成され、制御信号φ3により導通状態、非導通状態が切り換えられる。
第4の入力スイッチ414は、第1変換利得信号読み出しモード、または、第2変換利得信号読み出しモードの所定の開始期間に制御信号φ3がたとえばハイレベルで供給されて導通状態に保持され、基準電位VBとアンプ411Aの非反転入力端子(+)とを接続させる。
【0099】
本第2の実施形態によれば、第2変換利得信号読み出しモードにおいて、第2のサンプリングキャパシタCC421と減衰用第キャパシタCSH421が第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)を減衰させる減衰器として機能する。
そして、この減衰器出力はアンプ411Aの非反転入力端子(+)に供給され、非反転入力端子(+)側に適用される非反転ユニティゲイン増幅器でバッファリングされる。
【0100】
また、本第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様に、変換利得の異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出すことが可能なことはもより、消費電力の増大、回路面積の増大を抑止し可能で、しかも高ダイナミックレンジ化を実現でき、ひいては高画質化を実現することが可能となる。
【0101】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例を示す回路図である。
図9(A)~(H)は、本第3の実施形態に係る固体撮像装置のデュアル変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0102】
図9(A)は読み出し画素200のリセットトランジスタRST11-Trの制御信号RSTを、
図9(B)は読み出し画素200の蓄積トランジスタSG11-Trの制御信号を、
図9(C)は読み出し画素200の転送トランジスタTG11-Trの制御信号TGをそれぞれ示している。
図9(D)は画素信号処理部400Bの第1の読み出し部410Bの第1の入力スイッチ411の制御信号φ1、第2の読み出し部420Bの第2の入力スイッチ421Bの制御信号φ2を示している。
図9(E)は画素信号処理部400Bの第1の読み出し部410Bの第4のスイッチ414の制御信号φ3を示している。
図9(F)は画素信号処理部400Bの第1の読み出し部410の第1のリセットスイッチRST421の制御信号RST_HCGを示している。
図9(G)は読み出し画素200から読み出される画素信号PIXOUTを、
図9(H)は画素信号処理部400Bの第1の読み出し部410Bおよび第2の読み出し部420Bの増幅出力信号AMPOUTを示している。
【0103】
本第3の実施形態の画素信号処理部400Bが第2の実施形態の画素信号処理部400Aと異なる点は、次の通りである。
【0104】
本第3の実施形態の画素信号処理部400Bにおいては、第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理時に、第2の読み出し部420Bの信号転送ラインLS421を画素グランドしての基準電位VSSに接続して、アンプ411Bの非反転入力端子(+)側の入力容量をサンプリングキャパシタCC421および減衰用キャパシタCSH421の容量を加算した容量(CC+CSH)として、反転入力端子(-)側に接続されている第1のサンプリングCS421の容量CSとバランスをとるように構成されている。
【0105】
本第3の実施形態の画素信号処理部400Bにおいては、第2の入力スイッチ421Bが、端子入力ノードND401に接続された端子aと、基準電位VSSに接続された端子bと、信号転送ラインLS421に接続された端子cを有し、制御信号φ2がハイレベルのときは端子cと端子aを接続し、ローレベルのときは端子cと端子bを接続する。
【0106】
本第3の実施形態によれば、第1変換利得信号読み出しモードで動作する場合、非反転入力端子(+)側の入力容量はCSとバランスをとるために容量(CC+CSH)にほぼ等しく設定され、画素グランドの変動はアンプ411Bの差動の作用でキャンセルされる。
【0107】
本第3の実施形態の画素信号処理部400Bにおいては、第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理時に、第2の読み出し部420Bの信号転送ラインLS421が画素グランドとしての基準電位VSSに接続されて、アンプ411Bの非反転入力端子(+)側の入力容量をサンプリングキャパシタCC421および減衰用キャパシタCSH421の容量を加算した容量(CC+CSH)として、反転入力端子(-)側に接続されている第1のサンプリングCS421の容量CSとバランスがとられる。
一方、第2変換利得信号読み出しモードにおいて、第2の読み出し部420Bの信号転送ラインLS421が入力ノードND401に接続され、第2のサンプリングキャパシタCC421とアナロググランドとしての基準電位に接続された減衰用第キャパシタCSH421が第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)を減衰させる減衰器として機能する。
そして、この減衰器出力はアンプ411Bの非反転入力端子(+)に供給され、非反転入力端子(+)側に適用される非反転ユニティゲイン増幅器でバッファリングされる。
【0108】
本第3の実施形態によれば、上述した第2の実施形態の効果を得られることはもとより、いわゆる画素グランドノイズキャンセル回路に入力される信号が、アンプ411Bの非反転入力端子(+)側に、サンプリングキャパシタCSH421を介して供給されることから、たとえばカラム(列)ごとのグランド(GND)浮をキャンセルすることができ、ひいては、シェーディングなどのノイズを低減することができる。いわゆるグランドバウンスキャンセル(GBC)が可能である。
【0109】
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態に係る画素信号処理部の要部の構成例および画素と画素信号処理部の積層構造例を示すブロック図である。
【0110】
本第4の実施形態の画素信号処理部400Cが第2の実施形態の画素信号処理部400Aが異なる点は、次の通りである。
本第4の実施形態の画素信号処理部400Cでは、アンプ411Cの非反転入力端子(+)に接続された第3のノードND413とキャパシタCC421,CSH421に接続された第5のノードND421との間に第5のスイッチ422が接続されている。
第5のスイッチ422は、制御信号φ1、φ2により導通状態が制御される。
【0111】
本第4の実施形態の画素信号処理部400Cにおいては、第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理時に、第2の読み出し部420Cの信号転送ラインSL421を基準電位に接続して、アンプ411Cの反転入力端子(+)側の入力容量を第4のサンプリングキャパシタCC421および減衰用キャパシタCSH421の容量を加算した容量(CC+CSH)として、反転入力端子(-)側に接続されている第1のサンプリングCS421の容量CSとバランスをとるように構成されている。
【0112】
本第4の実施形態によれば、第1変換利得信号読み出しモードで動作する場合、非反転入力端子(+)側の入力容量はCSとバランスをとるために容量(CC+CSH)にほぼ等しく設定され、画素グランドの変動はアンプ411Cの差動の作用でキャンセルされる。
【0113】
本第4の実施形態の画素信号処理部400Cにおいては、第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理時に、第2の読み出し部420Cの信号転送ラインLS421が画素グランドとしての基準電位VSSに接続されて、アンプ411Cの非反転入力端子(+)側の入力容量をサンプリングキャパシタCC421および減衰用キャパシタCSH421の容量を加算した容量(CC+CSH)として、反転入力端子(-)側に接続されている第1のサンプリングCS421の容量CSとバランスがとられる。
一方、第2変換利得信号読み出しモードにおいて、第2の読み出し部420Cの信号転送ラインLS421が入力ノードND401に接続され、第2のサンプリングキャパシタCC421とアナロググランドとしての基準電位に接続された減衰用第キャパシタCSH421が第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)を減衰させる減衰器として機能する。
そして、この減衰器出力はアンプ411Cの非反転入力端子(+)に供給され、非反転入力端子(+)側に適用される非反転ユニティゲイン増幅器でバッファリングされる。
【0114】
本第4の実施形態によれば、上述した第2の実施形態の効果を得られることはもとより、画素グランドノイズキャンセル回路に入力される信号が、アンプ411Cの非反転入力端子(+)側に、減衰用キャパシタCSH421を介して供給されることから、たとえばカラム(列)ごとのグランド(GND)浮をキャンセルすることができ、ひいては、シェーディングなどのノイズを低減することができる。いわゆるグランドバウンスキャンセル(GBC)が可能である。
【0115】
また、本第4の実施形態においては、AD変換部430Cが、比較器435,カウンタ436、メモリ437を含むシングルスロープADCにより構成されている。
比較器435は、第1の読み出し部410Cのアンプ411Cの出力信号とある傾きを持った線形に変化するスロープ波形のランプ信号RAMPとを比較し、両信号が交差するまでの間、たとえばハイレベルの信号を出力する。
AD変換部430Cにおいては、このハイレベルの期間をカウンタ436にほじすることでAD変換を行う。
【0116】
(画素と画素信号処理部の積層構造)
また、本第4の実施形態に係る固体撮像装置10Cは、読み出し画素200と画素信号処理部400Cの積層構造を有する。
本第4の実施形態に係る固体撮像装置10Cは、第1の基板(上基板)110と第2の基板(下基板)120の積層構造を有する。
固体撮像装置10Cは、たとえばウェハレベルで貼り合わせた後、ダイシングで切り出した積層構造の撮像装置として形成される。
本例では、第2の基板120上に第1の基板110が積層された構造を有する。
【0117】
第1の基板110には読み出し画素200が形成され、第2の基板120には画素信号処理部400Cが形成されている。
【0118】
このような積層構造において、第1の基板110の読み出し画素200の出力ノードと第2の基板120の画素信号処理部400Cの入力ノードND401とが、たとえば
図10に示すように、それぞれビア(Die-to-Die Via)やマイクロバンプ等を用いて電気的な接続が行われている。
【0119】
(第5の実施形態)
図11は、本発明の第5の実施形態に係る画素信号処理部の構成例を示す回路図である。
図12は、本発明の第5の実施形態に係る画素信号処理部の第1変換利得信号読み出しモード時におけるアクティブ系回路を説明するための回路図である。
図13は、本発明の第5の実施形態に係る画素信号処理部の第2変換利得信号読み出しモード時におけるアクティブ系回路を説明するための回路図である。
【0120】
本第5の実施形態の画素信号処理部400Dが第2の実施形態の画素信号処理部400Aが異なる点は、次の通りである。
本第5の実施形態の画素信号処理部400Dでは、第1の読み出し部410Dおよび第2の読み出し部420Dは、第1のサンプリングキャパシタCS411と第2のサンプリングキャパシタCC421が共用され、帰還キャパシタCF411と減衰用キャパシタとCSH421が共用されている。
本例では、第1のサンプリングキャパシタCS411および帰還キャパシタCF411が用いられている。
【0121】
本第5の実施形態の画素信号処理部400Dの各構成要素の接続は以下のように行われている。
【0122】
画素信号処理部400Dにおいて、入力ノードND401にサンプリングキャパシタCS411が接続され、サンプリングキャパシタCS411と第1の演算増幅器であるアンプ411Dの反転入力端子(-)に接続された第1のノードND411との間に第1の入力スイッチ412が接続され、サンプリングキャパシタCS411とアンプ411Dの非反転入力端子(+)に接続された第3のノードND413との間に第2の入力スイッチ421が接続されている。
アンプ411Dの出力端子に接続された第2のノードND412と反転入力端子(-)に接続された第1のノードND411との間に帰還キャパシタCF411が接続され、アンプ411Dの出力端子に接続された第2のノードND412と反転入力端子(-)に接続された第1のノードND411との間にリセットスイッチRST411が接続されている。
帰還キャパシタCF411の一方の電極側とアンプ411Dの反転入力端子(-)に接続された第1のノードND411との間に第6のスイッチ416が接続され、帰還キャパシタCF411の他方の電極側とアンプ411Dの出力端子に接続された第2のノードND412との間に第7のスイッチ417が接続され、帰還キャパシタCF411の一方の電極側とアンプ411Dの非反転入力端子(+)に接続された第3のノードND413との間に第8のスイッチ418が接続され、帰還キャパシタCF411の他方の電極側と基準電位VSSとの間に第9のスイッチ419が接続され、アンプ411Dの非反転入力端子(+)に接続された第3のノードND413と参照電位VBとの間に第3のスイッチ414が接続されている。
【0123】
このような構成において、第1変換利得信号読み出しモード時には、
図12に示すように、第1の入力スイッチ412、第3のスイッチ414、第6のスイッチ416、および第7のスイッチ417が導通状態に保持される。
一方、第2の入力スイッチ421、リセットスイッチRST411、第8のスイッチ418、および第9のスイッチ419が非導通状態に保持される。
【0124】
第2変換利得信号読み出しモード時には、
図13に示すように、第1の入力スイッチ412、第3のスイッチ414、第6のスイッチ416、および第7のスイッチ417が非導通状態に保持される。
一方、第2の入力スイッチ421、リセットスイッチRST411、第8のスイッチ418、および第9のスイッチ419が導通状態に保持される。
【0125】
本第5の実施形態によれば、上述した第2の実施形態の効果と同様の効果を得られることはもとより、部品点数を削減でき、画素サイズの縮小化を図ることができ、ひいては、積層構造の簡単化を図ることが可能となる。
たとえば、積層構造において、上層の第1の基板110側にサンプリングキャパシタCS411または帰還キャパシタCF411の一方を配置した場合、下層の第2の基板129には残りの他方の帰還キャパシタCF411またはサンプリングキャパシタCS411の1つのみを配置すれば良いことなる。
【0126】
(第6の実施形態)
図14は、本発明の第6の実施形態に係る画素信号処理部の構成例を示す回路図である。
図15は、本発明の第6の実施形態に係る画素信号処理部の第1変換利得信号読み出しモード時におけるアクティブ系回路を説明するための回路図である。
図16は、本発明の第6の実施形態に係る画素信号処理部の第2変換利得信号読み出しモード時におけるアクティブ系回路を説明するための回路図である。
【0127】
本第6の実施形態の画素信号処理部400Eが第2の実施形態の画素信号処理部400Aが異なる点は、次の通りである。
本第6の実施形態の画素信号処理部400Eでは、第1の読み出し部410Eおよび第2の読み出し部420Eは、第1のサンプリングキャパシタCS411と第2のサンプリングキャパシタCC421が共用されている。
本例では、第1のサンプリングキャパシタCS411が用いられている。
【0128】
本第6の実施形態の画素信号処理部400Eの各構成要素の接続は以下のように行われている。
【0129】
画素信号処理部400Eにおいて、入力ノードND401にサンプリングキャパシタCS411が接続され、サンプリングキャパシタCS411と第1の演算増幅器であるアンプ411Eの反転入力端子(-)に接続された第1のノードND411との間に第1の入力スイッチ412が接続され、サンプリングキャパシタCS411とアンプ411Eの非反転入力端子(+)に接続された第3のノードND413との間に2の入力スイッチ421が接続されている。
アンプ411Eの出力端子と反転入力端子(-)に接続された第1のノードND411との間に帰還キャパシタCF411が接続され、アンプ411Eの出力端子に接続された第2のノードND412と反転入力端子(-)に接続された第1のノードND411との間にリセットスイッチRST411が接続され、サンプリングキャパシタCS411の一方の電極側と第1の入力スイッチ412および第2の入力スイッチ421との接続ノードND403と減衰用キャパシタCSH421との間に第10のスイッチ4110が接続され、アンプ411Eの非反転入力端子(+)と参照電位とVBの間に第3のスイッチ414が接続されている。
【0130】
このような構成において、第1変換利得信号読み出しモード時には、
図15に示すように、第1の入力スイッチ412、および第3のスイッチ414が導通状態に保持される。
一方、リセットスイッチRST411、第10のスイッチ4110、および第2の入力スイッチ421が非導通状態に保持される。
【0131】
第2変換利得信号読み出しモード時には、第1の入力スイッチ412、および第3のスイッチ414が非導通状態に保持される。
一方、リセットスイッチ、RST411、第10のスイッチ4110、および第2の入力スイッチ421が導通状態に保持される。
【0132】
本第6の実施形態によれば、上述した第2の実施形態の効果と同様の効果を得られることはもとより、部品点数を削減でき、画素サイズの縮小化を図ることができ、ひいては、積層構造の簡単化を図ることが可能となる。
たとえば、積層構造において、上層の第1の基板110側にサンプリングキャパシタCS411または帰還キャパシタCF411の一方を配置した場合、下層の第2の基板129には残りの他方の帰還キャパシタCF411またはサンプリングキャパシタCS411の1つのみを配置すれば良いことなる。
また、本第6の実施形態によれば、上述した第5の実施形態と比較すると、スイッチ数を削減でき、また、利得調整が容易になる。
【0133】
(第7の実施形態)
図17は、本発明の第7の実施形態に係る画素信号処理部の構成例を示す回路図である。
【0134】
本第7の実施形態の画素信号処理部400Fが第1の実施形態の画素信号処理部400が異なる点は、次の通りである。
第1の実施形態の画素信号処理部400は、読み出し対象信号が2種のデュアル変換利得信号である。
これに対して、本第7の実施形態の画素信号処理部400Fでは、読み出し対象信号が複数種、本第7の実施形態では3種のトリプル変換利得信号である。
【0135】
本第7の実施形態の画素信号処理部400Fの第1の読み出し部410Fにおいて、第1の演算増幅器であるアンプ411Fの入力チャネルが、1チャネルから2チャネルを持つように構成されている。
具体的には、アンプ411Fの反転入力端子(-)を2チャネルに増加している。すなわち、アンプ411Fは、反転入力端子(-)が、
図4の第1の反転入力端子に加えて、第2反転入力端子(-)2を含む。
そして、第1の読み出し部410Fは、さらに、アンプ411Fの第2反転入力端子(-)2と入力ノードND401との間に直列に接続された第3の入力スイッチ412-2および第3のサンプリングキャパシタCS412と、接続ノードND402に接続されたアンプ411Fの出力端子と第2反転入力端子(-)2との間に接続された第2帰還キャパシタCF412と、接続ノードND402に接続されたアンプ411Fの出力端子と反転入力端子(-)2との間に接続された第2リセットスイッチRST412と、を含み、アンプ411Fの非反転入力端子(+)は基準電位VSSに接続されている。
【0136】
画素信号処理部400Fにおいては、第1の入力スイッチ412は第1変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持される。
第2の入力スイッチ421は第2変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持される。
第3の入力スイッチ412-2は、第1変換利得と第2変換利得の中間の第3変換利得信号読み出しモード時に導通状態に保持される。
【0137】
なお、本第7の実施形態の読み出し画素200Fは、たとえば読み出し部70の制御の下、指定されるデュアル変換利得読み出しモード期間に、第1容量に応じた第1変換利得(高変換利得:HCG)で画素信号の読み出しを行う第1変換利得モード読み出しと、第2容量に応じた第2変換利得(低変換利得:LCG)で画素信号の読み出しを行う第2変換利得モード読み出しを行うことが可能に構成される。
そして、画素信号処理部400Fの回路系において、反転高利得処理(I-HCG)、反転低利得処理(I-LCG)、および非反転減衰処理(N-ATT)が行われる。
本第7の実施形態では、画素信号処理部400Fの回路系においては、第1容量に応じた第1変換利得(高変換利得:HCG)と第2容量に応じた第2変換利得(低変換利得:LCG)の中間値を持つ第3容量(第1容量、第2容量と異なる)に応じた第3変換利得(中変換利得:MCG)で画素信号の読み出しを行う。
【0138】
このように、本第7の実施形態によれば、第1変換利得(高変換利得)HCGと第2変換利得(低変換利得)LCGとの間に、第3変換利得(中変換利得)MCGを間に挟むことで、第1変換利得(高変換利得)HCGと第3変換利得(中変換利得)MCGはCDS動作により繋ぎ点でのSNR劣化を最小にでき、さらに第2変換利得(低変換利得)LCGはDDS動作であるが第3変換利得(中変換利得)MCGから繋ぐことで信号量が大きい領域(=SNRが高い領域)でモード遷移ができてSNR劣化を極力少なくすることを可能としている。
【0139】
図18(A)~(G)は、本第7の実施形態に係る固体撮像装置の変換利得読み出しモードにおける読み出し画素からの画素信号の読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
図19(A)~(C)は、本第7の実施形態に係る固体撮像装置の変換利得読み出しモードの低照度下、中照度下、高照度下における動作を説明するための動作シーケンスおよびポテンシャル遷移を示す図である。
【0140】
図18(A)は読み出し画素200FのリセットトランジスタRST11-Trの制御信号RSTを、
図18(B)は読み出し画素200Fの蓄積トランジスタSG11-Trの制御信号SGを、
図18(C)は読み出し画素200Fの転送トランジスタTG11-Trの制御信号TGをそれぞれ示している。
図18(D)は画素信号処理部400Fの第1の読み出し部410Fの第1の入力スイッチ412、出力スイッチ413の制御信号φ1、第2の読み出し部420の第2の入力スイッチ421、並びに、AD変換部430の第3の入力スイッチ433の制御信号φ2を示している。
図18(E)は画素信号処理部400Fの第1の読み出し部410Fの第1のリセットスイッチRST411の制御信号RST_HCG、並びに、AD変換部430の第2のリセットスイッチRST431の制御信号RST_LCGを示している。
図18(F)は読み出し画素200Fから読み出される画素信号PIXOUTを、
図18(G)は画素信号処理部400Fの第1の読み出し部410Fおよび第2の読み出し部420Fの増幅出力信号AMPOUTを示している。
【0141】
画素信号処理部400Fにおいて、変換利得信号の読み出し処理は以下のように行われる。
読み出し画素200Fは、2つの変換利得に応じた信号方向(レベル遷移方向)が逆方向である第1変換利得信号(HCGRST、HCGSIG)および第2変換利得信号(LCGRST、LCGSIG)を画素信号として読み出し可能である。
そして、画素信号処理部400Fは、まず、第1の読み出し部410Fにおいて、第1変換利得HCGと第2変換利得LCGの中間値を持つ第3変換利得MCGによる第3の読み出しリセット信号MCGRSTの反転読み出しを行う(LCG x I-LCG)。
次いで、第1の読み出し部410Fにおいて、第1変換利得HCGによる第1の読み出しリセット信号HCGRSTの反転読み出しを行う(HCG x I-HCG)。
次いで、第1の読み出し部410Fにおいて、第1変換利得HCGによる第1の読み出し輝度信号HCGSIGの反転読み出しを行う(HCG x I-HCG)。
次いで、第1の読み出し部410Fにおいて、第3変換利得MCGによる第3の読み出し輝度信号MCGSIGの反転読み出しを行う(LCG x I-LCG)。
さらに、第2の読み出し部420Fにおいて、第2変換利得LCGによる第2の読み出し輝度信号LCGSIGの非反転読み出しを行う(LCG x N-AT)。
次いで、第2の読み出し部420Fにおいて、第2変換利得LCGによる第2の読み出しリセット信号LCGの非反転読み出しを行う(LCG x N-AT)。
【0142】
本第7の実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、本第7の実施形態によれば、第1変換利得(高変換利得)HCGと第2変換利得(低変換利得)LCGとの間に、第3変換利得(中変換利得)MCGを間に挟むことで、第1変換利得(高変換利得)HCGと第3変換利得(中変換利得)MCGはCDS動作により繋ぎ点でのSNR劣化を最小にでき、さらに第2変換利得(低変換利得)LCGはDDS動作であるが第3変換利得(中変換利得)MCGから繋ぐことで信号量が大きい領域(=SNRが高い領域)でモード遷移ができてSNR劣化を極力少なくすることが可能となる。
【0143】
以上説明した固体撮像装置10,10A~10Fは、デジタルカメラやビデオカメラ、携帯端末、あるいは監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器に、撮像デバイスとして適用することができる。
【0144】
図20は、本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用されるカメラシステムを搭載した電子機器の構成の一例を示す図である。
【0145】
本電子機器300は、
図20に示すように、本実施形態に係る固体撮像装置10,10A,10B,10C,10D,10E,10Fが適用可能なCMOSイメージセンサ310を有する。
さらに、電子機器300は、このCMOSイメージセンサ310の画素領域に入射光を導く(被写体像を結像する)光学系(レンズ等)420を有する。
電子機器300は、CMOSイメージセンサ310の出力信号を処理する信号処理回路(PRC)330を有する。
【0146】
信号処理回路330は、CMOSイメージセンサ310の出力信号に対して所定の信号処理を施す。
信号処理回路330で処理された画像信号は、液晶ディスプレイ等からなるモニタに動画として映し出し、あるいはプリンタに出力することも可能であり、またメモリカード等の記録媒体に直接記録する等、種々の態様が可能である。
【0147】
上述したように、CMOSイメージセンサ310として、前述した固体撮像装置10,10A,10B,10C,10D,10E,10Fを搭載することで、高性能、小型、低コストのカメラシステムを提供することが可能となる。
そして、カメラの設置の要件に実装サイズ、接続可能ケーブル本数、ケーブル長さ、設置高さなどの制約がある用途に使われる、たとえば、監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器を実現することができる。
【符号の説明】
【0148】
10,10A~10F・・・固体撮像装置、20・・・画素部、200,200F・・・読み出し画素、PD11・・・フォトダイオード、FD11・・・フローティングディフュージョン、TG11-Tr・・・転送トランジスタ、RST11-Tr・・・リセットトランジスタ、SF11-Tr・・・ソースフォロワトランジスタ、SG11-Tr・・・蓄積トランジスタ、CS11・・・蓄積キャパシタ、30・・・垂直走査回路、40・・・読み出し回路、400,400A~400F・・・画素信号処理部、410,410A~410F・・・第1の読み出し部、411,411A~411F・・・アンプ(第1の演算増幅器)、ND401・・・入力ノード、ND402・・・接続ノード、420,420A~420F・・・第2の読み出し部、421・・・第2の入力ノード、430・・・AD変換部、431・・・アンプ(第2の演算増幅器)、50・・・水平走査回路、60・・・タイミング制御回路、70・・・読み出し部、300・・・電子機器、310・・・CMOSイメージセンサ、320・・・光学系、330・・・信号処理回路(PRC)。