(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151601
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】内圧調整方法、及び内圧調整装置
(51)【国際特許分類】
B60C 23/10 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B60C23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061301
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 洋光
(72)【発明者】
【氏名】福森 肇
(72)【発明者】
【氏名】堀越 正太郎
(57)【要約】
【課題】予め定められた期間にしか内圧調整を行うことができないタイヤに対して、次の内圧調整の機会までタイヤの内圧が予め規定された範囲に収まるようにタイヤの内圧を調整する。
【解決手段】制御装置(1)は、タイヤ(4)を装着した車両の稼働予定期間における予測気温及び車両の運行パターンによって変化するタイヤ(4)の温度の温度帯から、稼働予定期間におけるタイヤ(4)の内圧が規定範囲内に収まるように算出した結果を用いて、タイヤ(4)の内圧を調整するための制御を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを装着した車両の利用が予定されている将来の利用期間の予測気温及び前記車両の運行パターンによって変化する前記タイヤの温度の温度帯から、前記利用期間における前記タイヤの内圧が、前記タイヤに推奨される予め定められた規定範囲内に収まるように算出した結果を用いて、前記タイヤの内圧を調整する
内圧調整方法。
【請求項2】
前記タイヤの温度帯は、日毎に変化する基準温度に対する下限相対温度と上限相対温度によって表された前記車両の稼働状態毎の温度帯であり、
下限相対温度が最も低い前記温度帯の下限相対温度に対応した第1温度から上限相対温度が最も高い前記温度帯の上限相対温度に対応した第2温度まで前記タイヤの温度が変化したとしても、前記利用期間における前記タイヤの内圧が前記規定範囲内に収まるような、前記タイヤの内圧の調整が行われる場所の気温における前記タイヤの内圧を算出し、
算出した内圧に近づくように前記タイヤの内圧を調整する
請求項1に記載の内圧調整方法。
【請求項3】
前記利用期間における前記基準温度の平均値が、前記タイヤの内圧を調整する日における基準温度よりも低い場合、前記第1温度における前記タイヤの内圧が前記規定範囲の下限値となるように前記車両の前記タイヤの内圧を調整し、前記利用期間における前記基準温度の平均値が、前記タイヤの内圧を調整する日における基準温度よりも高い場合、前記第2温度における前記タイヤの内圧が前記規定範囲の上限値となるように前記車両の前記タイヤの内圧を調整する
請求項2に記載の内圧調整方法。
【請求項4】
前記基準温度として、前記予測気温に含まれた前記利用期間における最低気温を用いる
請求項2又は請求項3に記載の内圧調整方法。
【請求項5】
前記タイヤの温度帯が、内圧の調整対象となる前記タイヤに取り付けられ、前記タイヤの温度を測定するセンサから得られた温度、前記車両を前記車両の運行パターンに沿って駆動したシミュレーション結果から得られた前記タイヤの温度、及び前記タイヤが装着されている前記車両と同じ運行パターンで稼働する別車両に装着されているタイヤであって、前記タイヤと種類が同じ同型タイヤから得られた温度の何れかを用いて設定される
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の内圧調整方法。
【請求項6】
前記予測気温が、前記利用期間と同じ期間の過去の気温を用いて推定される
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の内圧調整方法。
【請求項7】
内圧の調整対象となる前記タイヤが産業用車両のタイヤである
請求項1~請求項6の何れか1項に記載した内圧調整方法。
【請求項8】
タイヤを装着した車両の利用が予定されている将来の利用期間の予測気温と、前記車両の運行パターンによって変化する前記タイヤの温度帯と、を取得する取得部と、
前記取得部で取得した前記予測気温と前記タイヤの温度帯から、前記利用期間における前記タイヤの内圧が、前記タイヤに推奨される予め定められた規定範囲内に収まるように算出した結果を用いて、前記タイヤの内圧を調整するための制御を行う制御部と、
を備えた内圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内圧調整方法、及び内圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアーが充填されるタイヤでは、タイヤが設計通りの性能を発揮する上で適正な内圧が予め規定されており、タイヤ点検の際には、タイヤの内圧が規定範囲に収まるように調整することが求められる。
【0003】
そのため、例えば特許文献1には、航空機用タイヤの内圧調整についての手法及び装置が開示されている。また、特許文献2には、外気温の温度変化及び空気圧の漏れ低下分を考慮してタイヤの内圧を調整する手法が開示されている。また、特許文献3には、外気温を測定し、測定した外気温とタイヤの内圧調整時における外気温とを用いて、タイヤの空気圧点検の要否を判断する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-193225号公報
【特許文献2】特開2010-276570号公報
【特許文献3】特開2005-22552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤによっては、例えば冬は周辺の道路が雪に閉ざされるといった車両が稼働する環境等の理由により、冬に入る前の予め定められた期間にしか内圧を調整することができない状況が生じることがある。
【0006】
こうした状況下で稼働する車両のタイヤに対しては、外気温が変化したとしても、次の内圧調整の機会までタイヤの内圧が規定範囲に収まり続けるように、タイヤの内圧を冬に入る前に予め調整しておくことが重要である。
【0007】
しかしながら、これまでは、作業員が経験と勘に基づいて、次の内圧調整の機会までタイヤの内圧が規定範囲に収まり続けるようなタイヤの内圧に調整している。したがって、外気温が予想よりも低くなったり高くなったりした場合、タイヤの内圧が規定範囲を超えることがあった。
【0008】
本開示は、予め定められた期間にしか内圧調整を行うことができないタイヤに対して、次の内圧調整の機会までタイヤの内圧が予め規定された範囲に収まるようにタイヤの内圧を調整することができる内圧調整方法、及び内圧調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1態様は、
タイヤを装着した車両の利用が予定されている将来の利用期間の予測気温及び前記車両の運行パターンによって変化する前記タイヤの温度の温度帯から、前記利用期間における前記タイヤの内圧が、前記タイヤに推奨される予め定められた規定範囲内に収まるように算出した結果を用いて、前記タイヤの内圧を調整する
内圧調整方法である。
【0010】
第2態様は、第1態様の内圧調整方法において、
前記タイヤの温度帯は、日毎に変化する基準温度に対する下限相対温度と上限相対温度によって表された前記車両の稼働状態毎の温度帯であり、
下限相対温度が最も低い前記温度帯の下限相対温度に対応した第1温度から上限相対温度が最も高い前記温度帯の上限相対温度に対応した第2温度まで前記タイヤの温度が変化したとしても、前記利用期間における前記タイヤの内圧が前記規定範囲内に収まるような、前記タイヤの内圧の調整が行われる場所の気温における前記タイヤの内圧を算出し、
算出した内圧に近づくように前記タイヤの内圧を調整する。
【0011】
第3態様は、第2態様の内圧調整方法において、
前記利用期間における前記基準温度の平均値が、前記タイヤの内圧を調整する日における基準温度よりも低い場合、前記第1温度における前記タイヤの内圧が前記規定範囲の下限値となるように前記車両の前記タイヤの内圧を調整し、前記利用期間における前記基準温度の平均値が、前記タイヤの内圧を調整する日における基準温度よりも高い場合、前記第2温度における前記タイヤの内圧が前記規定範囲の上限値となるように前記車両の前記タイヤの内圧を調整する。
【0012】
第4態様は、第2態様又は第3態様の内圧調整方法において、
前記基準温度として、前記予測気温に含まれた前記利用期間における最低気温を用いる。
【0013】
第5態様は、第1態様~第4態様の何れか1態様の内圧調整方法において、
前記タイヤの温度帯が、内圧の調整対象となる前記タイヤに取り付けられ、前記タイヤの温度を測定するセンサから得られた温度、前記車両を前記車両の運行パターンに沿って駆動したシミュレーション結果から得られた前記タイヤの温度、及び前記タイヤが装着されている前記車両と同じ運行パターンで稼働する別車両に装着されているタイヤであって、前記タイヤと種類が同じ同型タイヤから得られた温度の何れかを用いて設定される。
【0014】
第6態様は、第1態様~第5態様の何れか1態様の内圧調整方法において、
前記予測気温が、前記利用期間と同じ期間の過去の気温を用いて推定される。
【0015】
第7態様は、第1態様~第6態様の何れか1態様の内圧調整方法において、
内圧の調整対象となる前記タイヤが産業用車両のタイヤである。
【0016】
第8態様は、
タイヤを装着した車両の利用が予定されている将来の利用期間の予測気温と、前記車両の運行パターンによって変化する前記タイヤの温度帯と、を取得する取得部と、
前記取得部で取得した前記予測気温と前記タイヤの温度帯から、前記利用期間における前記タイヤの内圧が、前記タイヤに推奨される予め定められた規定範囲内に収まるように算出した結果を用いて、前記タイヤの内圧を調整するための制御を行う制御部と、
を備えた内圧調整装置である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、予め定められた期間にしか内圧調整を行うことができないタイヤに対して、次の内圧調整の機会までタイヤの内圧が予め規定された範囲に収まるようにタイヤの内圧を調整することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】タイヤの内圧調整システムの構成例を示す図である。
【
図3】タイヤ温度と外気温の最低温度との関係を表す測定結果の一例を示す図である。
【
図4】車両の運行パターンに基づくタイヤの温度情報の一例を示す図である。
【
図5】制御装置における電気系統の要部構成例を示す図である。
【
図6】制御装置で実行される制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】タイヤ温度-内圧関係の一例を示す図である。
【
図9】第1温度におけるタイヤの内圧を規定範囲の下限値にあわせた場合のタイヤ温度-内圧関係の一例を示す図である。
【
図10】第2温度におけるタイヤの内圧を規定範囲の上限値にあわせた場合のタイヤ温度-内圧関係の一例を示す図である。
【
図11】タイヤの内圧調整システムの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、タイヤ4の内圧調整システムの構成例を示す図である。
図1に示すように、内圧調整システムは、制御装置1、温度センサ2、及び内圧調整装置3を含むシステムである。
【0021】
温度センサ2は、内圧調整の対象であるタイヤ4にエアーの充填を行う場所の気温を測定するセンサである。気温を測定することができるものであれば温度センサ2の種類に制約はなく、例えば熱電対やサーミスタを用いた温度センサ2が用いられる。以降では、タイヤ4の内圧調整が行われる場所の気温を「周囲温度」という。
【0022】
また、エアーとは、タイヤ4に充填される気体のことであり、例えば空気、窒素ガス、及び空気と窒素ガスの混合気体等が用いられる。
【0023】
制御装置1は温度センサ2から周囲温度を取得すると、今回の内圧調整から次に内圧調整が行われるまでの期間にわたって、タイヤ4の内圧がタイヤ4に対して予め設定されている規定範囲に収まるような、周囲温度下における内圧(「目標内圧」という)を算出して内圧調整装置3に通知する。
【0024】
内圧調整装置3は制御装置1から目標内圧を受け付けると、タイヤ4の内圧が通知された目標内圧に近づくように、タイヤ4にエアーを充填する。
【0025】
内圧調整システムでの内圧調整の対象となるタイヤ4の種類に制約はないが、一例として本実施の形態では、山中の工事現場で稼働する杭打機やバックホウ、鉱山及び採石場で鉱石や岩石等を採掘する採掘機、並びに、採掘した鉱石や岩石等を運搬する運搬車に装着されるタイヤ4のように、現場への搬入前の期間や、現場に向かう道路の雪による通行止めが解除された後の期間といった予め定められた期間にしか内圧調整を行うことができない産業用車両のタイヤ4の内圧を調整する例について説明する。なお、本実施の形態におけるタイヤ4とは、特に断りがない限り、内圧調整システムでの内圧調整の対象となるタイヤ4のことをいう。
【0026】
図2は、制御装置1の機能構成例を示す図である。制御装置1は、センサ入力部11、情報取得部12、調整部13、及び通信部14の各機能部と、気温DB15及びタイヤ情報DB16のデータベースを備える。
【0027】
ここで「DB」は“Database”の略語であり、指定された情報を後から読み出せるように記憶するデータ管理機構である。したがって、気温DB15及びタイヤ情報DB16の構築には必ずしも市販のリレーショナルデータベース等を用いる必要はなく、制御装置1に実装されるオペレーティングシステムのファイルシステムを利用してもよい。
【0028】
まず、気温DB15及びタイヤ情報DB16に記憶されているデータについて説明する。
【0029】
気温DB15には、タイヤ4を装着した産業用車両(以降、単に「車両」という)の利用が予定されている将来の利用期間(「稼働予定期間」という)の予測気温である気温予測情報が記憶されている。例えば、冬の期間中に鉱山で使用される予定の搬送車に装着されたタイヤ4の内圧を事前に秋の間に調整するような場合、秋の時点で予想される冬の期間中の気温予測情報が気温DB15に記憶されている。
【0030】
気温DB15に記憶される気温予測情報として、例えば気象庁が発表する気温の予測情報が用いられる。気象庁が発表する気温の予測情報には、稼働予定期間(この場合は冬の期間)における予想最低気温及び予想最高気温が含まれる。したがって、気温DB15には、少なくとも稼働予定期間における予想最低気温及び予想最高気温が記憶されていることになる。
【0031】
一方、タイヤ情報DB16には、車両の運行パターンによって変化するタイヤ4の温度の温度帯を表す温度情報が記憶されている。
【0032】
例えば車両の一例である鉱山で使用される搬送車は、周囲に明るさが感じされる朝から夜まで稼働し、夜から日の出前までの期間は稼働を停止するという運行を連日繰り返す一方、ところどころで1日以上にわたって車両の稼働を停止させる期間を設けるという運行パターンを有している。
【0033】
以降では、連日にわたり車両の稼働が繰り返されている期間を「定常稼働期間」といい、1日以上にわたって車両の稼働を停止させている期間を「長期停止期間」ということにする。更に、長期停止期間から定常稼働期間に移行するまでの過渡期を「スタート期間」という。
【0034】
発明者らは、こうした運行パターンを有する車両のタイヤ4に取り付けられたTPMS(TIRE PRESSURE MONITORING SYSTEM)等のセンサによって、タイヤ4内のエアーの平均温度(「タイヤ温度」という)を測定してみた。
【0035】
図3は、運行パターンに従って稼働する車両における日毎のタイヤ温度の変動幅と、車両が稼働する現場における日毎の外気の最低温度(「最低気温」という)とを、2021年1月から2021年10月まで測定した測定結果の一例を示す図である。
図3における横軸は測定日を表し、縦軸は温度[℃]を表す。
【0036】
また、
図3における各々の点8は日毎の最低気温を表し、点9は、車両のタイヤ温度を表す。車両のタイヤ温度は1日の間に複数回測定したことで、縦軸方向に沿った点9の並びによって日毎のタイヤ温度の変動幅が示されている。
図3において、期間D1、D2、及びD3は、長期停止期間を表している。
【0037】
一方、ライン6A-1は、2021年1月から2021年8月初旬までの最低気温の分布に対する回帰直線を表し、ライン6A-2は、2021年8月初旬から2021年8月末までの最低気温の分布に対する回帰直線を表している。また、ライン6B-1は、2021年1月から2021年8月初旬までの定常稼働期間におけるタイヤ温度の下限値の分布に対する回帰直線を表し、ライン6B-2は、2021年8月初旬から2021年8月末までの定常稼働期間におけるタイヤ温度の下限値の分布に対する回帰直線を表している。
【0038】
図3に示す測定結果によれば、長期停止期間が終了して車両が稼働を始める前のタイヤ温度は最低気温まで低下する傾向があること、及び定常稼働期間におけるタイヤ温度の下限値は、最低気温より20℃程度高い値になる傾向があることがわかる。これは、一日の気温の中でも最低気温がタイヤ温度に影響を与える支配的な要素であることを表している。
【0039】
また、定常稼働期間における車両のタイヤ温度は、概ね[最低気温+35℃]未満に抑えられるが、通常よりも負荷が高い作業が行われた場合には、[最低気温+35℃]以上になることがあることもわかった。なお、通常よりも負荷が高い作業が行われた場合であっても、車両のタイヤ温度が[最低気温+45℃]以上になることはなかった。
【0040】
したがって、タイヤ温度は車両の運行パターンにおける稼働状態毎に特徴的な変化を示し、車両の運行パターンにおけるタイヤ温度は、最低気温を基準にして変化することがわかる。
【0041】
以降では、[最低気温+35℃]を、定常稼働期間におけるタイヤ温度の「標準上限相対温度」といい、[最低気温+45℃]を「高負荷上限相対温度」ということがある。
【0042】
図4は、
図3に示した測定結果から得られた知見に基づいて、車両の運行パターンによって変化するタイヤ温度をモデル化したタイヤ4の温度情報の一例を示す図である。
【0043】
図4に示すように、タイヤ4の温度情報は、車両の運行パターンにおける稼働状態によって複数の温度帯に分割される。具体的には、タイヤ4の温度情報は、日毎に変化する基準温度に対する下限相対温度と上限相対温度によって区分された長期停止域、常用域、及び高温域の3つの温度帯で表される。なお、本実施の形態では、
図3に示した測定結果から得られた知見に基づき、基準温度として最低気温を用いる。
【0044】
タイヤ4の温度情報における長期停止域は、長期停止期間におけるタイヤ温度の下限値から定常稼働期間におけるタイヤ温度の下限値までの温度帯を表す。具体的には、タイヤ4の温度情報における長期停止域は、[最低気温+0℃]以上、かつ、[最低気温+20℃]未満の温度帯を表す。説明の便宜上、長期停止域の温度帯におけるタイヤ温度の下限値である[最低気温+0℃]を「放置下限相対温度」ということがある。
【0045】
タイヤ4の温度情報における常用域は、定常稼働期間におけるタイヤ温度の下限値から標準上限相対温度までの温度帯を表す。具体的には、タイヤ4の温度情報における常用域は、[最低気温+20℃]以上、かつ、[最低気温+35℃]未満の温度帯を表す。
【0046】
タイヤ4の温度情報における高温域は、標準上限相対温度から高負荷上限相対温度までの温度帯を表す。具体的には、タイヤ4の温度情報における高温域は、[最低気温+35℃]以上、かつ、[最低気温+45℃]未満の温度帯を表す。
【0047】
このように、タイヤ4の温度情報は、最低気温との相対値である相対温度で表されている。なお、長期停止域の温度帯の下限値、すなわち、放置下限相対温度は、タイヤ4の温度情報において最も低い温度帯の下限相対温度の一例であり、高温域の温度帯の上限値、すなわち、高負荷上限相対温度は、タイヤ4の温度情報において最も高い温度帯の上限相対温度の一例である。各々の温度帯の上限値及び下限値は、最低気温が決まれば絶対値として表すことができる。
【0048】
また、タイヤ4の温度情報は最低気温を基準温度として表されることから、気温DB15に記憶される気温予測情報には少なくとも最低気温が含まれていればよい。
【0049】
一方、
図2のセンサ入力部11は、温度センサ2から周囲温度を取得し、取得した周囲温度を調整部13が認識可能なデータ形式に変換して調整部13に通知する。例えば温度センサ2が電圧値や抵抗値のような連続値を用いて周囲温度を出力する場合、センサ入力部11は、A/D変換を行って周囲温度を離散値に変換してから調整部13に通知する。
【0050】
情報取得部12は、調整部13の指示に従って、気温DB15及びタイヤ情報DB16から、それぞれ稼働予定期間の気温予測情報とタイヤ4の温度情報を取得する。その上で、情報取得部12は、取得した気温予測情報とタイヤ4の温度情報を調整部13に通知する。すなわち、情報取得部12は、気温DB15及びタイヤ情報DB16と、調整部13とのインターフェースとして機能する。
【0051】
調整部13は、気温DB15から取得した気温予測情報と、タイヤ情報DB16から取得したタイヤ4の温度情報と、温度センサ2で測定された周囲温度とを用いて、稼働予定期間、すなわち、気温予測情報によって表される気温の予測期間において、タイヤ4の内圧が、推奨される規定範囲に収まるようなタイヤ4の内圧を算出する。
【0052】
規定範囲とは、タイヤ4が設計通りの性能を発揮するために予め定められたタイヤ4の内圧であり、タイヤ4毎に設定される。規定範囲は、例えば700kPa以上960kPa以下というように幅をもって表される。
【0053】
調整部13は、ボイルシャルルの法則を利用してタイヤ4の内圧を算出する。ボイルシャルルの法則によれば、体積が一定である場合、圧力と温度の比、すなわち、圧力/温度は一定である。したがって、調整部13は、稼働予定期間の間に、放置下限相対温度に対応した温度(「第1温度」という)から高負荷上限相対温度に対応した温度(「第2温度」という)までタイヤ温度が変化したとしてもタイヤ4の内圧が規定範囲に収まるような、周囲温度の環境下におけるタイヤ4の内圧を目標内圧として算出する。調整部13は、算出した目標内圧を通信部14に通知する。
【0054】
通信部14は、内圧調整装置3と接続されている通信回線5Aを通じて、調整部13から受け付けた目標内圧を内圧調整装置3に送信する。目標内圧を内圧調整装置3に送信することが出来さえすれば、通信回線5Aの接続形態に制約はなく、通信回線5Aは有線回線であっても無線回線であってもよい。
【0055】
内圧調整装置3は制御装置1から目標内圧を受信すると、タイヤ4の内圧が目標内圧に近づくようにタイヤ4にエアーを充填する。
【0056】
したがって、制御装置1の調整部13は、内圧調整装置3を介してタイヤ4の内圧を制御する制御部としての機能を有する。また、制御装置1のセンサ入力部11及び情報取得部12は、調整部13でタイヤ4の内圧を算出するために用いられる情報を取得するための取得部としての機能を有する。
【0057】
こうした制御装置1は、例えばコンピュータ20を用いて構成される。
図5は、コンピュータ20で構成された制御装置1における電気系統の要部構成例を示す図である。
【0058】
コンピュータ20は、
図2に示した各機能部の実行を担うプロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)21、コンピュータ20を制御装置1として機能させる制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)22、CPU21の一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)23、不揮発性メモリ24、及び入出力インターフェース(I/O)25を備える。CPU21、ROM22、RAM23、不揮発性メモリ24、及びI/O25はバス26を介して各々接続されている。
【0059】
不揮発性メモリ24は、不揮発性メモリ24に供給される電力が遮断されたとしても記憶した情報が維持される記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるがハードディスクを用いてもよい。気温DB15に記憶される気温予測情報、及びタイヤ情報DB16に記憶されるタイヤ4の温度情報のように、制御装置1の電源が遮断されても記憶し続ける必要のある情報は不揮発性メモリ24に記憶される。
【0060】
なお、不揮発性メモリ24は必ずしもコンピュータ20に内蔵されている必要はなく、例えばコンピュータ20に着脱可能な可搬型の記憶装置であってもよい。
【0061】
I/O25には、例えば温度センサ2、通信ユニット27、入力ユニット28、及び表示ユニット29が接続される。
【0062】
通信ユニット27は、通信回線5Aに接続され、同じく通信回線5Aに接続されている内圧調整装置3とデータを送受信する通信プロトコルを備える。制御装置1から内圧調整装置3への目標内圧の送信は通信ユニット27を通じて行われる。
【0063】
入力ユニット28は、ユーザの指示を受け付けてCPU21に通知する装置であり、例えばボタン、タッチパネル、マウス、キーボード、及びポインティングデバイスの少なくとも1つが含まれる。
【0064】
表示ユニット29は、CPU21によって処理された情報(例えば算出した目標内圧)を視覚的に表示する表示装置の一例であり、例えば液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等が含まれる。
【0065】
なお、I/O25に接続するセンサやユニットは
図5に示した構成に限定されず、必要に応じて取捨選択することができる。
【0066】
次に、タイヤ4の内圧を目標内圧に調整するために制御装置1で実行される制御処理について説明する。
【0067】
図6は、例えば入力ユニット28を通じてユーザからタイヤ4の内圧調整指示を受け付けた場合に、制御装置1のCPU21によって実行される制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0068】
制御処理を規定する制御プログラムは、例えば制御装置1のROM22に予め記憶されている。制御装置1のCPU21は、ROM22に記憶される制御プログラムを読み込んで制御処理を実行する。
【0069】
なお、タイヤ4の規定範囲、気温予測情報、及びタイヤ4の温度情報はそれぞれ不揮発性メモリ24に予め記憶されているものとする。
【0070】
まず、ステップS10において、CPU21は、不揮発性メモリ24からタイヤ4を装着した車両の稼働予定期間における気温予測情報を取得してRAM23に記憶する。
【0071】
ステップS20において、CPU21は、不揮発性メモリ24からタイヤ4の温度情報を取得してRAM23に記憶する。
図7は、不揮発性メモリ24から取得したタイヤ4の温度情報の一例を示す図である。
【0072】
ステップS30において、CPU21は、温度センサ2から周囲温度を取得してRAM23に記憶する。
【0073】
ステップS40において、CPU21は、ステップS20で取得したタイヤ4の温度情報における放置下限相対温度及び高負荷上限相対温度の各々に対して、ステップS10で取得した気温予測情報に含まれる予想最低気温を加算して第1温度及び第2温度を算出する。
【0074】
その上で、CPU21は、第1温度におけるタイヤ4の内圧と、第2温度におけるタイヤ4の内圧がそれぞれ規定範囲内に収まるような、周囲温度の環境下におけるタイヤ4の内圧を目標内圧として算出する。
【0075】
具体的には、周囲温度をT0、第1温度をT1、第2温度をT2、目標内圧をP0、規定範囲の下限値をP1、規定範囲の上限値をP2とすれば、CPU21は、(1)式及び(2)式を共に満たすような内圧を目標内圧として算出する。
【0076】
(P1/T1)≦(P0/T0) ・・・(1)
(P2/T2)≧(P0/T0) ・・・(2)
【0077】
例えば
図7に示したタイヤ4の温度情報に対して稼働予定期間における予想最低気温が-20℃であった場合、第1温度T
1は-20℃(絶対温度253K)となり、第2温度T
2は25℃(絶対温度298K)となる。
【0078】
これに対して、タイヤ4の規定範囲の下限値P1が700kPa、上限値P2が960kPaで周囲温度T0が27℃である場合、(1)式及び(2)式より、目標内圧P0は830kPa以上966kPa以下になる。例えば、タイヤ4の目標内圧を830kPa以上966kPa以下の範囲内である926kPaに設定すれば、第1温度におけるタイヤ4の内圧は781kPaとなり、第2温度におけるタイヤ4の内圧は920kPaとなるため、車両の稼働予定期間にタイヤ温度が-20℃から25℃まで変化したとしても、タイヤ4の内圧は規定範囲に収まることになる。
【0079】
すなわち、車両の運行パターンに沿ってタイヤ温度が変化したとしても、タイヤ4の内圧は規定範囲に留まり続けることになる。
【0080】
図8は、上記の例で示したタイヤ4の規定範囲と、車両の運行パターンに沿ったタイヤ温度の変化によるタイヤ4の内圧との関係(「タイヤ温度-内圧関係」という)を示す図である。
【0081】
図6のステップS40で目標内圧を算出した後、ステップS50において、CPU21は通信ユニット27を通じて、ステップS40で算出した目標内圧を内圧調整装置3に送信して制御処理を終了する。これにより、内圧調整装置3によってタイヤ4の内圧が目標内圧に調整される。
【0082】
このように本実施の形態に係る内圧調整システムによれば、稼働予定期間の気温予測情報とタイヤ4の温度情報とを取得し、気温予測情報とタイヤ4の温度情報を用いて、稼働予定期間におけるタイヤ4の内圧が規定範囲内に収まるようにタイヤ4の内圧を調整する。したがって、稼働予定期間にタイヤ4の点検ができないような事情があったとしても、作業員が経験と勘に基づいてタイヤ4の内圧を調整する場合と比較して、将来の期間にわたってタイヤ4の内圧が規定範囲内に収まりやすくなる。
【0083】
なお、
図1に示した内圧調整システムでは、制御装置1と内圧調整装置3をそれぞれ独立した装置として記載したが、制御装置1と内圧調整装置3を一体化させてもよい。すなわち、制御装置1を内圧調整装置3の制御部として構成してもよい。
また、本実施の形態では、最低気温を基準温度として用いたが、鉱山等の車両が稼働する現場の最高気温や平均温度を基準温度として用いてもよい。この場合、タイヤ4の温度情報を、鉱山等の車両が稼働する現場の最高気温又は平均温度に対する相対温度で表された温度帯の情報として設定しておけばよい。
【0084】
また、本実施の形態では、気象庁が発表する気温の予測情報を気温予測情報として用いたが、気温予測情報の設定方法はこれに限られない。例えば制御装置1は、鉱山等の車両が稼働する現場における日々の気温データを取得し、稼働予定期間と同じ期間における過去の気温データを用いて、稼働予定期間の気温予測情報を推定してもよい。具体的には、制御装置1は、稼働予定期間と同じ期間における、車両が稼働する現場の過去N年分(Nは自然数)の日毎の最低気温の平均値を、気温予測情報における予想最低気温としてもよい。また、制御装置1は、稼働予定期間と同じ期間における、車両が稼働する現場の過去N年分の日毎の最低気温のうち最も低い最低気温を、気温予測情報における予想最低気温としてもよい。
【0085】
気温予測情報における予想最高気温も、予想最低気温と同様の手法によって稼働予定期間と同じ期間における過去の気温データから推定される。
【0086】
このように、気温予測情報における予想最低気温及び予想最高気温等の気象データを過去の気象データから推定することによって、車両が稼働する場所のように、特定の範囲に限定された局所的な気温予測情報が得られる。局所的な気温予測情報を用いることで、例えば気象庁から市町村単位で発表される気温予測情報を用いた場合と比較して、目標内圧の算出精度が上がり、その結果、稼働予定期間における車両のタイヤ4の内圧が規定範囲から外れにくくなる。
【0087】
また、本実施の形態では、内圧調整の対象であるタイヤ4に取り付けられたTPMSから得られた温度を用いてタイヤ4の温度情報を設定したが、タイヤ4の温度情報の設定方法はこれに限られない。例えば制御装置1は、コンピュータを用いて車両を運行パターンに沿って駆動したシミュレーションの結果から得られたタイヤ4の温度情報や、内圧調整の対象であるタイヤ4が装着されている車両と同じ運行パターンで稼働する別の車両に装着された別のタイヤであって、内圧調整の対象であるタイヤ4と種類が同じ同型のタイヤから得られた温度情報を用いてタイヤ4の温度情報を設定してもよい。
【0088】
これにより、内圧調整の対象であるタイヤ4からタイヤ温度が得られない場合であっても、内圧調整の対象であるタイヤ4の温度情報を得ることができる。
【0089】
<内圧調整の変形例>
図6に示した制御処理のステップS40では、第1温度におけるタイヤ4の内圧と第2温度におけるタイヤ4の内圧がそれぞれタイヤ4の規定範囲内に入れば、第1温度におけるタイヤ4の内圧と第2温度におけるタイヤ4の内圧がどのような値であってもよいように自由度を持たせて目標内圧を設定した。
【0090】
一方で、山中の工事現場や鉱山では自然を相手に作業を行うため、当初は冬の期間を車両の稼働予定期間としていたのが、途中で夏が終了するまで稼働予定期間を延長し、稼働予定期間の間は車両に装着されたタイヤ4の内圧を調整する機会を設けることができないといった状況が発生することがある。このような場合に備え、稼働予定期間における最低気温の平均値が、タイヤ4の内圧を調整する日における最低温度よりも低い場合、第1温度におけるタイヤ4の内圧がタイヤ4の規定範囲の下限値となるようにタイヤ4の内圧を調整した方が好ましい。
【0091】
例えば冬の稼働予定期間に向けて秋の間にタイヤ4の内圧を調整する場合に、稼働予定期間における最低気温が-20℃であったとする。この場合、
図7に示したタイヤ4の温度情報に従えば、タイヤ温度は-20℃まで低下することになる。
【0092】
したがって、CPU21は、タイヤ温度が-20℃の場合にタイヤ4の内圧が規定範囲の下限値である700kPaとなるような、周囲温度の環境下におけるタイヤ4の内圧を目標内圧として算出する。
【0093】
このように、第1温度におけるタイヤ4の内圧をタイヤ4の規定範囲の下限値にあわせることで、第2温度におけるタイヤ4の内圧とタイヤ4の規定範囲の上限値との差分を最も大きくすることができるため、タイヤ4の内圧上昇に対する余裕分が確保できる。
【0094】
当初の稼働予定期間の最低気温よりも最低気温が高い季節に車両を稼働させるとタイヤ温度が上昇し、それに伴いタイヤ4の内圧も上昇する。しかしながら、上述したように、第1温度におけるタイヤ4の内圧をタイヤ4の規定範囲の下限値にあわせることで、タイヤ4の内圧上昇に対する余裕分が確保される。したがって、第1温度におけるタイヤ4の内圧をタイヤ4の規定範囲の下限値にあわせなかった場合に比べて、タイヤ4の圧力がタイヤ4の規定範囲の上限値を超えにくくなる。
【0095】
図9は、
図7に示したタイヤ4の温度情報に対して、第1温度におけるタイヤ4の内圧をタイヤ4の規定範囲の下限値にあわせた場合のタイヤ温度-内圧関係例を示す図である。周囲温度が27℃の下で第1温度におけるタイヤ4の内圧をタイヤ4の規定範囲の下限値にあわせるためには、目標内圧を830kPaにすればよい。
【0096】
この場合、夏の最低気温が25℃であるとすれば、冬から夏まで車両が稼働したとしても、車両の運行パターンによって変化するタイヤ4の温度情報から得られる夏の期間の第2温度(
図9の例では70℃)に対応したタイヤ4の内圧は949kPaとなるため、タイヤ4の内圧が規定範囲内に収まることになる。
【0097】
一方で、当初は夏の期間を車両の稼働予定期間としていたのが、途中で冬が終了するまで稼働予定期間を延長し、稼働予定期間の間は車両に装着されたタイヤ4の内圧を調整する機会を設けることができないといった状況が発生することもある。このような場合に備え、制御装置1のCPU21は、稼働予定期間における最低気温の平均値が、タイヤ4の内圧を調整する日における最低温度よりも高い場合、第2温度におけるタイヤ4の内圧がタイヤ4の規定範囲の上限値となるようにタイヤ4の内圧を調整する。
【0098】
例えば夏の稼働予定期間に向けて春の間にタイヤ4の内圧を調整する場合に、稼働予定期間における最低気温が25℃であったとする。この場合、
図7に示したタイヤ4の温度情報に従えば、タイヤ温度は70℃まで上昇することになる。
【0099】
したがって、CPU21は、タイヤ温度が70℃の場合にタイヤ4の内圧が規定範囲の上限値である960kPaとなるような、周囲温度の環境下におけるタイヤ4の内圧を目標内圧として算出する。
【0100】
このように、第2温度におけるタイヤ4の内圧をタイヤ4の規定範囲の上限値にあわせることで、第1温度におけるタイヤ4の内圧とタイヤ4の規定範囲の下限値との差分を最も大きくすることができるため、タイヤ4の内圧低下に対する余裕分が確保できる。
【0101】
当初の稼働予定期間の最低気温よりも最低気温が低い季節に車両を稼働させるとタイヤ温度が低下し、それに伴いタイヤ4の内圧も低下する。しかしながら、上述したように、第2温度におけるタイヤ4の内圧をタイヤ4の規定範囲の上限値にあわせることで、タイヤ4の内圧低下に対する余裕分が確保される。したがって、第2温度におけるタイヤ4の内圧をタイヤ4の規定範囲の上限値にあわせなかった場合に比べて、タイヤ4の圧力がタイヤ4の規定範囲の下限値を下回りにくくなる。
【0102】
図10は、
図7に示したタイヤ4の温度情報に対して、第2温度におけるタイヤ4の内圧をタイヤ4の規定範囲の上限値にあわせた場合のタイヤ温度-内圧関係例を示す図である。周囲温度が27℃の下で第2温度におけるタイヤ4の内圧をタイヤ4の規定範囲の上限値にあわせるためには、目標内圧を840kPaにすればよい。
【0103】
この場合、夏の最低気温が25℃であるとすれば、夏から冬まで車両が稼働したとしても、車両の運行パターンによって変化するタイヤ4の温度情報から得られる冬の期間の第1温度(
図10の例では-20℃)に対応したタイヤ4の内圧は708kPaとなるため、タイヤ4の内圧が規定範囲内に収まることになる。
【0104】
以上、実施の形態を用いて内圧調整システムの一態様について説明したが、開示した内圧調整システムの形態は一例であり、内圧調整システムの形態は実施の形態に記載の範囲に限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も開示の技術的範囲に含まれる。例えば、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、
図6に示した制御処理内の順序を変更してもよい。
【0105】
本実施形態に係る内圧調整装置において、上述した(1)式及び(2)式を満たす値が存在しない場合は、等式に変更した(1)式及び等式に変更した(2)式のいずれか一方の式を満たす値を目標内圧としてもよい。(1)式を満たす値を目標内圧とした場合、タイヤ4の温度の上昇を抑えるために、タイヤ4の負荷を減らす運用を採用する、という判断ができる。(2)式を満たす値を目標内圧とした場合、稼働前にタイヤ4の温度を上昇させるために、低負荷でウォームアップする運用を採用する、という判断ができる。
【0106】
また、実施の形態では、一例として制御処理をソフトウェアで実現する形態について説明した。しかしながら、
図6に示したフローチャートと同等の処理をハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、制御処理をソフトウェアで実現した場合と比較して処理の高速化が図られる。
【0107】
実施の形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU21)や、専用のプロセッサ(例えば GPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0108】
また、実施の形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は実施の形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0109】
実施の形態では、ROM22に制御プログラムが記憶されている例について説明したが、制御プログラムの記憶先はROM22に限定されない。本開示の制御プログラムは、コンピュータ20で読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば制御プログラムをCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)及びDVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)のような光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、制御プログラムを、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカードのような可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。ROM22、不揮発性メモリ24、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ、及びメモリカードは非一時的(non-transitory)記憶媒体の一例である。
【0110】
更に、制御装置1は、
図11に示すように、通信部14を通じて通信回線5Bに接続された外部装置7から制御プログラムをダウンロードし、ダウンロードした制御プログラムを記憶装置に記憶してもよい。この場合、制御装置1のCPU21は、外部装置7からダウンロードした制御プログラムを読み込んで制御処理を実行する。
【符号の説明】
【0111】
1 制御装置
2 温度センサ
3 内圧調整装置
4 タイヤ
5A(5B) 通信回線
6A(6B) ライン
7 外部装置
8 最低気温を表す点
9 タイヤ温度を表す点
11 センサ入力部
12 情報取得部
13 調整部
14 通信部
15 気温DB
16 タイヤ情報DB
20 コンピュータ(演算装置)
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 不揮発性メモリ
25 I/O
26 バス
27 通信ユニット
28 入力ユニット
29 表示ユニット