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特開2023-151602タイヤ内圧調整用装置及びタイヤ内圧調整用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151602
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】タイヤ内圧調整用装置及びタイヤ内圧調整用方法
(51)【国際特許分類】
   B60S 5/04 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B60S5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061302
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀越 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 洋光
(72)【発明者】
【氏名】福森 肇
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026DA02
3D026DA05
3D026DA10
(57)【要約】
【課題】開示の技術は、気体の充填時におけるタイヤ内の気体の温度を高精度に求めることを可能とし、これにより気体の充填後にタイヤ内の気体の温度が変化しても最適な内圧値となるような内圧調整を行うことが可能なタイヤ内圧調整用装置10、及びタイヤ内圧調整用方法を提供することを目的とする。
【解決手段】タイヤ内圧調整用装置10は、タイヤ内の気体が放出される第1流路と、前記第1流路内に配置された温度センサにより、前記第1流路内における前記放出される気体の温度である第1温度を測定する温度測定部と、前記タイヤ内の気体の温度の予測値として前記第1温度から予測される第2温度が外気温度又は指定した温度に変化した場合に、予め定めた値である前記タイヤの推奨内圧になるように、前記第2温度における前記タイヤの内圧である目標内圧を算出し出力する制御部とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内の気体が放出される第1流路と、
前記第1流路内に配置された温度センサにより、前記第1流路内における前記放出される気体の温度である第1温度を測定する温度測定部と、
前記タイヤ内の気体の温度の予測値として前記第1温度から予測される第2温度が外気温度又は指定した温度に変化した場合に、予め定めた値である前記タイヤの推奨内圧になるように、前記第2温度における前記タイヤの内圧である目標内圧を算出し出力する制御部と
を含むタイヤ内圧調整用装置。
【請求項2】
前記第2温度は、前記気体の放出に伴う断熱膨張の影響による温度変化分、前記第1温度を補正して得られる請求項1に記載のタイヤ内圧調整用装置。
【請求項3】
前記第1温度、前記第2温度又は前記目標内圧を表示する表示部
を含む請求項1又は請求項2に記載のタイヤ内圧調整用装置。
【請求項4】
気体が蓄積されている容器からタイヤ内に気体が充填される第2流路と、
前記第1流路又は前記第2流路の何れか一方へ、気体の流路を切り替える切替部と
を含む請求項1から請求項3の何れか1項に記載のタイヤ内圧調整用装置。
【請求項5】
前記第1流路の全部、又は前記温度センサの周囲である前記第1流路の一部は、断熱材で覆われている
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のタイヤ内圧調整用装置。
【請求項6】
前記タイヤは、ORタイヤ又はTBタイヤである
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のタイヤ内圧調整用装置。
【請求項7】
タイヤ内の気体を第1流路に放出し、
前記第1流路内に配置された温度センサにより、前記第1流路内における前記放出される気体の温度である第1温度を測定する
タイヤ内圧調整用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、タイヤ内圧調整用装置、及びタイヤ内圧調整用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ内の気体の充填は、予め定めた値である推奨内圧になるよう気体を充填することが求められる。しかし、タイヤは取り付けられている車両等の走行直後においては発熱により外気温よりも高温となる。そのため、走行直後に気体を充填するような場合等において、充填時における目標とする圧力を外気温に基づいて設定すると、気体の充填後にタイヤ内の気体の温度が外気温まで下がった際にタイヤの内圧が推奨内圧を下回ってしまう可能性がある。そのため、タイヤ内の気体の温度が外気温度になったときにタイヤの内圧が推奨内圧になるように、充填時における目標とする圧力を充填時のタイヤ内の気体の温度に基づいて調節することが望ましい。
【0003】
例えば、タイヤ内の空気温度に基づき、タイヤの空気圧が予め設定された温度条件となったときに達するタイヤの空気圧を算出する技術がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-229804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先行技術にて開示されている方法においては、タイヤ内の気体の温度を正確に求めることが困難であり、得られた温度に基づいて内圧を充填しても、結果的に最適な値とならないことがあった。
【0006】
開示の技術は、気体の充填時におけるタイヤ内の気体の温度を高精度に求めることを可能とし、これにより気体の充填後にタイヤ内の気体の温度が変化しても最適な内圧値となるような内圧調整を行うことが可能なタイヤ内圧調整用装置、及びタイヤ内圧調整用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1態様は、タイヤ内の気体が放出される第1流路と、前記第1流路内に配置された温度センサにより、前記第1流路内における前記放出される気体の温度である第1温度を測定する温度測定部と、前記タイヤ内の気体の温度の予測値として前記第1温度から予測される第2温度が外気温度又は指定した温度に変化した場合に、予め定めた値である前記タイヤの推奨内圧になるように、前記第2温度における前記タイヤの内圧である目標内圧を算出し出力する制御部と、を含むタイヤ内圧調整用装置である。
【0008】
第2態様は、第1態様のタイヤ内圧調整用装置において、前記第2温度は、前記気体の放出に伴う断熱膨張の影響による温度変化分、前記第1温度を補正して得られる。
【0009】
第3態様は、第1態様又は第2態様のタイヤ内圧調整用装置において、前記第1温度、前記第2温度又は前記目標内圧を表示する表示部を含む。
【0010】
第4態様は、第1態様から第3態様の何れかの態様のタイヤ内圧調整用装置において、気体が蓄積されている容器からタイヤ内に気体が充填される第2流路と、前記第1流路又は前記第2流路の何れか一方へ、気体の流路を切り替える切替部とを含む。
【0011】
第5態様は、第1態様から第4態様の何れかの態様のタイヤ内圧調整用装置において、前記第1流路の全部、又は前記温度センサの周囲である前記第1流路の一部は、断熱材で覆われている。
【0012】
第6態様は、第1態様から第5態様の何れかの態様のタイヤ内圧調整用装置において、前記タイヤは、ORタイヤ又はTBタイヤである。
【0013】
第7態様は、タイヤ内の気体を第1流路に放出し、前記第1流路内に配置された温度センサにより、前記第1流路内における前記放出される気体の温度である第1温度を測定するタイヤ内圧調整用方法である。
【発明の効果】
【0014】
開示の技術によれば、温度センサの周囲の温度がタイヤ内の気体の温度になるまで待機することなく、タイヤ内の気体の温度を予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示に係るタイヤ内圧調整用装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置の気体放出時の模式図である。
図3】第1実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置の気体充填時の模式図である。
図4】第1実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】第1実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置のタイヤ内圧調整処理の流れを示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置のタイヤ内圧調整処理の流れを示すフローチャートである。
図7】変形例に係るタイヤ内圧調整用装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
本開示のタイヤ内圧調整用装置によって、タイヤ1に気体を充填する概略について、図1を用いて説明する。図1は、本開示に係るタイヤ内圧調整用装置10の概略構成図である。
【0018】
タイヤ1は、気体を充填する方式のタイヤである。タイヤ1内の気体は、タイヤ1が走行に使用されることよって、外気温度より高い温度となる。タイヤ1は、例えば、PCR(Passenger Car Radial)タイヤ、OR(Off the Road)タイヤ又はTB(Truck&Bus)タイヤである。ORタイヤ及びTBタイヤは、タイヤ容積が大きいことから、タイヤ内の気体を温度測定のために気体を放出しても、その影響がPCRタイヤに比べて小さいという特徴がある。タイヤ1は、タイヤの種別又は製品ごとに、推奨する内圧である推奨内圧が予め定められている。推奨内圧は、例えば、製品のカタログに記載されているカタログ値等の予め定められた値である。気体は、例えば、空気又は窒素等である。
【0019】
タイヤ内圧調整用装置10は、タイヤ1及びコンプレッサ2に接続されている。タイヤ内圧調整用装置10は、コンプレッサ2に蓄積された気体をタイヤ1に充填する。すなわち、タイヤ内圧調整用装置10は、コンプレッサ2の圧力コントローラ3を制御することによりコンプレッサ2のエアタンク4に蓄積されている気体が流入し、タイヤ1に流入した気体を充填する。また、タイヤ内圧調整用装置10は、タイヤ1内の気体を放出する。
【0020】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置10の気体放出時の模式図である。具体的に、図2は、後述する切替部24により第1流路21に第3流路23が接続されたタイヤ内圧調整用装置10の状態を示す。
タイヤ内圧調整用装置10は、第1流路21、第2流路22、第3流路23及び切替部24を含む。第1流路21、第2流路22及び第3流路23は、気体の流路である。第1流路21は、一端が気体放出口211として、気体放出口211の解放弁213の開口により外気に解放される。第2流路22は、一端が気体充填口221として、気体が蓄積されている容器であるコンプレッサ2に接続されている。第3流路23は、一端がタイヤ接続部231と接続され、タイヤ1内と接続されている。第1流路21内には、第1電磁バルブ210が設けられ、第2流路22内には、第2電磁バルブ220が設けられ、第3流路23内には、第3電磁バルブ230が設けられる。タイヤ内圧調整用装置10は、電源261を起動することにより動作する。
【0021】
第1電磁バルブ210、第2電磁バルブ220及び第3電磁バルブ230の開閉は、ECU(ELECTRONIC CONTROL UNIT)262により制御される。第1電磁バルブ210、第2電磁バルブ220及び第3電磁バルブ230は、それぞれ開かれることにより、第1流路21、第2流路22及び第3流路23内の気体の流通を許容する。切替部24は、第3流路23に接続される流路を、第1流路21又は第2流路22に切り替え、第1流路21又は第2流路22の何れか一方と第3流路23とを接続する。
【0022】
切替部24により第1流路21に第3流路23が接続された状態において、第1電磁バルブ210及び第3電磁バルブ230が開かれると、第1流路21及び第3流路23が連通する。この状態においては、タイヤ1内の気圧が大気圧よりも高いため、タイヤ1内の気体が第1流路21及び第3流路23を通過し、大気に放出される。
【0023】
第1流路21内には、第1温度センサ251及び圧力センサ252が配置されている。第1温度センサ251は、第1流路21及び第3流路23が切替部24により接続され、第1電磁バルブ210及び第3電磁バルブ230が開かれた状態において、タイヤ1内から放出される気体の温度を測定する。また、第1温度センサ251の周囲である第1流路21の一部は、断熱材212で覆われている。断熱材212は、第1流路21の全部又はタイヤ内圧調整用装置10の全部を覆うようにしてもよい。圧力センサ252は、第1流路21及び第3流路23が切替部24により接続され、第1電磁バルブ210及び第3電磁バルブ230が開かれた状態において、タイヤ内の圧力を測定する。なお、第1温度センサ251及び圧力センサ252は、互いに一体となった1つのセンサであってもよい。
ここで、第1流路21内に、第1温度センサ251及び圧力センサ252を配置したチャンバーを設けてもよい。チャンバーは、断熱材212で覆うようにしてもよい。また、チャンバーは、第1流路21内に配置する代わりに、タイヤ内圧調整用装置10に外付けする形態であってもよい。タイヤ内圧調整用装置10に外付けする場合、気体放出口211にチャンバーを接続する。
【0024】
図3は、第1実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置10の気体放出時の模式図である。具体的には、切替部24により第2流路22に第3流路23が接続されたタイヤ内圧調整用装置10の状態を示す。
【0025】
切替部24により第2流路22に第3流路23が接続された状態において、第2電磁バルブ220及び第3電磁バルブ230が開かれると、第2流路22及び第3流路23が連通する。この状態においては、コンプレッサ2からタイヤ1内に気体が充填される。
【0026】
第2流路22内には、第2温度センサ253が配置されている。第2温度センサ253は、第2流路22及び第3流路23が切替部24により接続され、第2電磁バルブ220及び第3電磁バルブ230が開かれた状態において、コンプレッサ2内の気体の温度を測定する。なお、第2温度センサ253は、タイヤ内圧調整用装置10の外側等に設置され、外気温度を測定するようにしてもよい。
【0027】
図4は、タイヤ内圧調整用装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。タイヤ内圧調整用装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16、通信インタフェース17、第1電磁バルブ210、第2電磁バルブ220、第3電磁バルブ230、切替部24及び温度測定部25を有する。各構成は、バス26を介して相互に通信可能に接続されている。
【0028】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。第1実施形態では、ROM12又はストレージ14には、情報処理プログラムが格納されている。本開示において、CPU11を「制御部」又は「ECU」と記載する場合がある。
【0029】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0030】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。タイヤ内圧調整用装置10は、例えば、ユーザによる推奨内圧の入力を入力部15により受け付ける。
【0031】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0032】
通信インタフェース17は、他の機器と通信するためのインタフェースである。当該通信には、たとえば、イーサネット(登録商標)若しくはFDDI等の有線通信の規格、又は、4G、5G、若しくはWi-Fi(登録商標)等の無線通信の規格が用いられる。タイヤ内圧調整用装置10は、例えば、サーバの外部装置から通信インタフェース17を介して推奨内圧を受信する。
【0033】
第1電磁バルブ210、第2電磁バルブ220及び第3電磁バルブ230は、CPU11により開閉が制御される。切替部24は、CPU11により制御され、上述のように、気体の流路を切り替える。
【0034】
温度測定部25は、第1流路21内に配置された第1温度センサ251により、第1流路21内における放出される気体の温度を測定する。温度測定部25は、第1流路21内に配置された圧力センサ252により、タイヤ1内の圧力を測定する。温度測定部25は、第2流路22内に配置された第2温度センサ253により、コンプレッサ2内の気体の温度を測定する。
【0035】
次に、タイヤ内圧調整用装置10の作用について説明する。
図5は、第1実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置10によるタイヤ内圧調整処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から情報処理プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、タイヤ内圧調整が行なわれる。
【0036】
ステップS101では、CPU11は、電源を入れることにより起動する。CPU11は、ステップS102へ移行する。
【0037】
ステップS102では、CPU11は、流路を第1流路21に切り替える。すなわち、CPU11は、切替部24を第1流路21に切り替えることにより、第1流路21と第3流路23とを接続する。CPU11は、ステップS103へ移行する。
【0038】
ステップS103では、CPU11は、第1温度センサ251により温度を測定する。すなわち、CPU11は、温度測定部25により、第1流路21内における放出された気体の温度を測定する。温度測定部25は、第1流路21内に配置された第1温度センサ251により温度を測定する。温度の測定は、実測式又は予測式を問わない。本開示において、測定した温度を「第1温度」と記載する場合がある。CPU11は、ステップS104へ移行する。
【0039】
ステップS104では、CPU11は、圧力センサ252により圧力を測定する。すなわち、CPU11は、タイヤ1内の圧力を測定する。CPU11は、ステップS105へ移行する。
【0040】
ステップS105では、CPU11は、断熱膨張の影響を補正して、タイヤ1内の気体の温度の予測値を算出する。ここで、放出される気体は、タイヤ1内から大気への放出に伴い、断熱膨張により温度が下がる。そのため、第1温度に、断熱膨張の影響を補正した予測値を算出する。すなわち、タイヤ1内の気体の温度の予測値は、気体の放出に伴う断熱膨張の影響による温度変化分、第1温度を算出して得られる。本開示において、予測値である温度を「第2温度」と記載する場合がある。CPU11は、ステップS106へ移行する。
【0041】
ステップS106では、CPU11は、第2温度センサ253により温度を測定する。すなわち、CPU11は、コンプレッサ2内の気体の温度を測定する。CPU11は、ステップS107へ移行する。
【0042】
ステップS107では、外気温度におけるタイヤ1内の圧力を算出する。詳しくは、CPU11は、圧力センサ252が測定したタイヤ1の圧力、第2温度センサ253が測定した温度及び第2温度を入力値として、タイヤ1内の気体の温度が外気温度である場合のタイヤ1の内圧を、ボイル・シャルルの法則に従い算出する。CPU11は、ステップS108へ移行する。
ここで、Pを圧力センサ252が測定したタイヤ1の圧力、Tを第2温度、Tを第2温度センサ253が測定した温度とした場合、Pであるタイヤ1内の気体の温度が外気温度である場合のタイヤ1の内圧を以下の式1により算出する。
=(P/T)×T (式1)
【0043】
ステップS108では、外気温度におけるタイヤ1内の圧力を表示部16に表示する。CPU11は、ステップS109へ移行する。
【0044】
ステップS109では、CPU11は、外気温度におけるタイヤ1内の圧力が推奨内圧か否かを判断する。外気温度におけるタイヤ1内の圧力が推奨内圧でないと判断した場合(ステップS109:NO)、CPU11は、ステップS110へ移行する。外気温度におけるタイヤ1内の圧力が推奨内圧であると判断した場合(ステップS109:YES)、CPU11は、ステップS114へ移行する。
【0045】
ステップS110では、CPU11は、目標内圧を算出する。詳しくは、CPU11は、第2温度、推奨内圧及び第2温度センサ253が測定した温度を入力値として、タイヤ1内の気体の温度が外気温度である場合に、タイヤ1の推奨内圧になるように、第2温度におけるタイヤ1の内圧である目標内圧を、ボイル・シャルルの法則に従い算出する。目標内圧は、換言すれば、気体の充填処理における目標とする内圧である。CPU11は、ステップS111へ移行する。
ここで、Pを推奨内圧、Tを第2温度、Tを外気温度とした場合、Pである目標内圧を以下の式2により算出する。
=(P/T)×T (式2)
【0046】
ステップS111では、流路を第2流路22に切り替える。CPU11は、ステップS112へ移行する。
【0047】
ステップS112では、第1温度、第2温度又は目標内圧を表示部16に表示する。なお、CPU11は、第1温度、第2温度又は目標内圧を外部装置に送信し、外部装置に表示させてもよい。CPU11は、ステップS113へ移行する。
【0048】
ステップS113では、CPU11は、タイヤ1内の圧力が目標内圧に達したか否かを判断する。すなわち、タイヤ内圧調整用装置10は、コンプレッサ2からタイヤ1への気体の充填を受け付ける。タイヤ1内の圧力が目標内圧に達したと判断した場合(ステップS113:YES)、CPU11は、ステップS114へ移行する。タイヤ1内の圧力が目標内圧に達していないと判断した場合(ステップS113:NO)、CPU11は、タイヤ1内の圧力が目標内圧に達するまで待機する。
ステップS114では、CPU11は、解放弁213を開口する。すなわち、CPU11は、第1流路21の残圧を開放する。
【0049】
上述のステップS103及びステップS105の処理により、CPU11は、第1温度を測定し、第1温度に、放出に伴う断熱膨張の影響を補正して、タイヤ1内の気体の温度の予測値を算出する。そして、CPU11は、タイヤ1内の気体の温度が外気温度に変化した場合に推奨内圧になるように、第2温度におけるタイヤ1の内圧を出力する。ここで、出力には、表示又は制御のための信号の出力等が含まれる。
【0050】
以上説明したように、第1実施形態のタイヤ内圧調整用装置10によれば、タイヤ1から外部に排出される気体の温度を測定する。タイヤ1内から外部に流動中の気体の温度を直接測定するため、コンプレッサ2等とタイヤ1とが気体を外部に放出できない流路で繋がれる装置と比較して、温度センサにより直接的にタイヤ1内の気体の温度を測定することが可能となり測定精度が向上する。加えて、温度センサの周囲の温度がタイヤ1内の気体の温度になるまでの時間が短く、効率的な作業が可能となる。
また、第1実施形態のタイヤ内圧調整用装置10によれば、ステップS105において、断熱膨張の影響を考慮し、当該影響を補正して、気体の温度を予測する。従って、流動中の気体の温度を直接測定し、その値をそのまま用いる場合に比べて、より精度が高い温度を予測できる。なお、上記実施形態において、ステップS105を省略しても良い。省略した場合においても、一定の温度測定精度の向上効果及び温度センサの周囲の温度がタイヤ1内の気体の温度になるまでの時間短縮効果は実現できる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の手法は、第1実施形態の構成に加えて、将来予測の外気温度の受付処理を行う。第2実施形態のハードウェア構成及び機能構成は、第1実施形態のハードウェア構成、機能構成とそれぞれ同一である。第1実施形態と同様の構成及び作用となる箇所については同一符号を付して説明を省略する。なお、第2実施形態では、現在の外気温度に関する処理がないため、第2温度センサ253はなくてよい。
【0052】
タイヤ内圧調整用装置10の作用について説明する。
図6は、第2実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置10によるタイヤ内圧調整処理の流れを示すフローチャートである。図5に示すフローチャートと異なる箇所についてのみ説明する。
【0053】
CPU11は、ステップS103の処理の実行後に、ステップS121へ移行する。
【0054】
ステップS121では、CPU11は、将来予測の外気温度を入力部15から受け付ける。将来予測の外気温度は、例えば、タイヤ1が取り付けられている車両が稼働する時期における外気温度である。なお、本開示において、将来予測の外気温度を指定した温度と記載する場合がある。CPU11は、ステップS105へ移行する。
【0055】
CPU11は、ステップS105の処理の実行後に、ステップS122へ移行する。
【0056】
ステップS122では、CPU11は、目標内圧を算出する。詳しくは、CPU11は、第2温度、推奨内圧及び将来予測の外気温度を入力値として、タイヤ1内の気体の温度が将来予測の外気温度である場合に、タイヤ1の推奨内圧になるように、第2温度におけるタイヤ1の内圧である目標内圧を、ボイル・シャルルの法則に従い算出する。CPU11は、ステップS111へ移行する。
ここで、Pを推奨内圧、Tを第2温度、Tを将来予測の外気温度とした場合、Pである目標内圧を以下の式3により算出する。
=(P/T)×T (式3)
【0057】
以上、上述したステップS121及びステップS122の処理により、タイヤ1内の気体の温度が将来予測の外気温度である場合に、タイヤ1の推奨内圧になるように、第2温度におけるタイヤ1の内圧である目標内圧を算出できる。
【0058】
[変形例]
以上、各実施形態のタイヤ内圧調整用装置10について説明してきた。しかし、本開示は、上記各実施形態に限定されない。種々の改良または改変が可能である。
【0059】
各実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置10は、単一の流路としてもよい。図7は、流路を単一とした形態のタイヤ内圧調整用装置10の模式図である。単一の流路とは、上記各実施形態における第1流路21、第2流路22及び第3流路23を統合した流路である。すなわち、タイヤ内圧調整用装置10は、単一の流路内に配置された第1温度センサ251により、単一の流路内における放出される気体の温度を測定する。単一の流路とした場合、タイヤ内圧調整用装置10の構造を簡潔にできる。この場合、タイヤ1内に気体を充填する際には、別途、コンプレッサ2を接続する。
【0060】
各実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置10は、気体放出口211にチャンバーを接続する態様、又は気体放出口211に代えてチャンバーが形成される態様であってもよい。すなわち、タイヤ1内の気体は、大気に代えて、第1流路21からチャンバーに放出される。タイヤ内圧調整用装置10は、チャンバーへ流入する気体の温度を、第1温度センサ251により測定する。そして、タイヤ内圧調整用装置10は、測定した温度に基づいて、タイヤ1内の気体の温度の予測値を算出する。なお、タイヤ内圧調整用装置10は、チャンバーへの放出が止まるのを待たずに、予測式で温度を測定してもよい。
【0061】
各実施形態に係るタイヤ内圧調整用装置10は、タイヤ内圧調整装置に一体的に組み込まれた装置であってもよい。換言すれば、タイヤ内圧調整用装置10は、内圧を調整するための機構を備えていてもよい。タイヤ内圧調整用装置10は、コンプレッサ2による気体の充填を制御してもよい。すなわち、CPU11は、上述したステップS113の処理において、コンプレッサ2からタイヤ1に気体が充填されるようにコンプレッサ2のバルブを開ける。そして、CPU11は、充填によりタイヤ1内の圧力が目標内圧に達した場合、コンプレッサ2からの気体の充填を停止されるようにコンプレッサ2のバルブを閉める。
【0062】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行したタイヤ内圧調整処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、タイヤ内圧調整処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0063】
また、上記各実施形態では、情報処理プログラムは、コンピュータが読み取り可能なストレージ14に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 タイヤ
2 コンプレッサ
3 圧力コントローラ
4 エアタンク
10 タイヤ内圧調整用装置
21 第1流路
22 第2流路
23 第3流路
24 切替部
25 温度測定部
210 第1電磁バルブ
211 気体放出口
212 断熱材
213 解放弁
220 第2電磁バルブ
221 気体充填口
230 第3電磁バルブ
231 タイヤ接続部
251 第1温度センサ
252 圧力センサ
253 第2温度センサ
261 電源
262 ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7