(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151610
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】インペラ
(51)【国際特許分類】
C02F 3/16 20230101AFI20231005BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20231005BHJP
B01F 23/234 20220101ALI20231005BHJP
B01F 27/1111 20220101ALI20231005BHJP
【FI】
C02F3/16
C02F3/12 A
B01F23/234
B01F27/1111
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061313
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂
(72)【発明者】
【氏名】谷本 礼佳
【テーマコード(参考)】
4D028
4D029
4G035
4G078
【Fターム(参考)】
4D028BB03
4D028BC24
4D028BC26
4D028BD06
4D028BD10
4D029AA05
4D029BB02
4G035AB24
4G078AA30
4G078AB20
4G078BA05
4G078CA01
4G078CA08
4G078DA21
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、被処理水に対する酸素の供給効率を向上させることにより、回転に必要な動力を低下させることができるインペラを提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、被処理水に対して曝気及び/又は撹拌を行うインペラであって、軸と、軸から径方向外側に延びる複数の羽根部と、周方向において隣り合う二つの羽根部の間に配置され、二つの羽根部を連結する複数のつなぎ板と、を備え、つなぎ板と軸との間には、隙間が形成されており、羽根部は軸の回転方向後方に向かって屈曲又は湾曲し、かつ、羽根部の径方向外側の少なくとも先端又は全体において、羽根部の上端が軸の回転方向側に向かって屈曲又は湾曲することを特徴とする、インペラを提供する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に対して曝気及び/又は撹拌を行うインペラであって、
軸と、
前記軸から径方向外側に延びる複数の羽根部と、
周方向において隣り合う二つの羽根部の間に配置され、前記二つの羽根部を連結する複数のつなぎ板と、を備え、
前記つなぎ板と前記軸との間には、隙間が形成されており、
前記羽根部は前記軸の回転方向後方に向かって屈曲又は湾曲し、かつ、
前記羽根部の径方向外側の少なくとも先端又は全体において、前記羽根部の上端が前記軸の回転方向側に向かって屈曲又は湾曲することを特徴とする、インペラ。
【請求項2】
前記羽根部は平面形状の板を複数の箇所で屈曲することにより形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
被処理水に対して曝気及び/又は撹拌を行うインペラであって、
軸と、
前記軸から径方向外側に延びる複数の羽根部と、
周方向において隣り合う二つの羽根部の間に配置され、前記二つの羽根部を連結する複数のつなぎ板と、を備え、
前記つなぎ板と前記軸との間には、隙間が形成されており、
前記羽根部は前記軸の回転方向後方に向かって湾曲し、平面形状の板を複数の箇所で屈曲することにより形成されていることを特徴とする、インペラ。
【請求項4】
請求項1~3何れか一項に記載のインペラを備えることを特徴とする、撹拌装置。
【請求項5】
請求項4に記載の撹拌装置を用いた水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的水処理設備用の縦軸型曝気撹拌装置のインペラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水や汚水等の被処理水を生物処理する生物処理設備として、無終端状の循環水路が形成されたオキシデーションディッチ槽を使用する方法が知られている。このオキシデーションディッチ槽における曝気撹拌装置としては、縦軸型、横軸型及び斜軸型の3種類が知られている。
特許文献1には、オキシデーションディッチ槽内に配置され、排水の液面に略垂直な方向、すなわち、液面に対して交差する方向を軸方向として回転して、排水の曝気撹拌を行うインペラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オキシデーションディッチ槽において被処理水を曝気撹拌するためには、曝気撹拌装置を長時間可動させ続ける必要がある。そのため、被処理水と常に接しているインペラは、曝気撹拌装置の動力を増加させることなく、被処理水に対する酸素の供給効率を向上させることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明の課題は、被処理水に対する酸素の供給効率を向上させることにより、回転に必要な動力を低下させることができるインペラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題について鋭意検討した結果、軸から径方向外側に延びる複数の羽根部と、複数の羽根部を連結するつなぎ板を備えるインペラにおいて、羽根部を軸の回転方向後方に向かって湾曲させることにより、被処理水に対する酸素の供給効率を向上させることができることを見出して本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下のインペラである。
【0007】
上記課題を解決するための本発明のインペラは、被処理水に対して曝気及び/又は撹拌を行うインペラであって、軸と、軸から径方向外側に延びる複数の羽根部と、周方向において隣り合う二つの羽根部の間に配置され、二つの羽根部を連結する複数のつなぎ板と、を備え、つなぎ板と軸との間には、隙間が形成されており、羽根部は軸の回転方向後方に向かって屈曲又は湾曲し、かつ、羽根部の径方向外側の少なくとも先端又は全体において、羽根部の上端が軸の回転方向側に向かって屈曲又は湾曲することを特徴とする。
【0008】
本発明のインペラによれば、羽根部が軸の回転方向後方に向かって屈曲又は湾曲していることにより、つなぎ板の上面又は下面に沿って通過する被処理水を効率良く加速させることが可能となる。また、羽根部の径方向外側の少なくとも先端又は全体において、羽根部の上端が軸の回転方向側に向かって屈曲又は湾曲していることにより、つなぎ板の上面又は下面に沿って通過する被処理水を効率よく大気中に飛散させることができるため、被処理水の飛散量が増加して酸素供給効率を一層向上することができる。
これらの特徴により低動力で被処理水の曝気・撹拌を行うことができるため、省エネルギーで酸素供給効率を効果的に増加させることが可能となるインペラを提供することができる。換言すれば、このインペラを用いることで省エネルギーで酸素供給効率を効果的に増加させることが可能となる水処理装置を提供することができる。
【0009】
また、本発明のインペラの一実施態様としては、羽根部は平面形状の板を複数の箇所で屈曲することにより形成されていることを特徴とする。
この特徴によれば、平面状の板を無段階に曲げることで湾曲した羽根部を形成する場合と比較して、少ない作業工程で羽根部を製造することができる。これにより、インペラの製造コストを大幅に下げることや、インペラの製造時間を短縮することが可能となる。換言すれば、このインペラを用いた曝気撹拌装置の製造コストや製造時間を大幅に短縮することができる。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明のインペラは、被処理水に対して曝気及び/又は撹拌を行うインペラであって、軸と、軸から径方向外側に延びる複数の羽根部と、周方向において隣り合う二つの羽根部の間に配置され、二つの羽根部を連結する複数のつなぎ板と、を備え、つなぎ板と軸との間には、隙間が形成されており、羽根部は軸の回転方向後方に向かって湾曲し、平面形状の板を複数の箇所で屈曲することにより形成されていることを特徴とする。
この特徴によれば、羽根部が軸の回転方向後方に向かって屈曲又は湾曲していることにより、つなぎ板の上面又は下面に沿って通過する被処理水を効率良く加速させることが可能となる。また、平面状の板を無段階に曲げることで湾曲した羽根部を形成する場合と比較して、少ない作業工程で羽根部を製造することができるため、インペラの製造コストを大幅に下げることや、インペラの製造時間を短縮することが可能となる。換言すれば、このインペラを用いた曝気撹拌装置の製造コストや製造時間を大幅に短縮することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被処理水に対する酸素の供給効率を向上させることにより、回転に必要な動力を低下させることができるインペラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】無終端水路を平面から見た場合における、本発明の生物処理設備の構成を示す概略説明図である。
【
図1B】無終端水路を平面から見た場合における、本発明の生物処理設備の構成を示す概略説明図である。
【
図2】無終端水路の断面における、本発明の縦軸型曝気撹拌装置の構造を示す概略説明図である。
【
図3A】本発明の第一の実施態様におけるインペラを示す概略斜視図である。
【
図3B】本発明の第一の実施態様におけるインペラを示す概略平面図である。
【
図3C】本発明の第一の実施態様におけるインペラを示す概略平面図である。
【
図3D】本発明の第一の実施態様におけるインペラを示す
図3BのV-V方向における概略断面図である。
【
図3E】本発明の第一の実施態様におけるインペラを示す
図3BのV-V方向における概略断面図である。
【
図3F】本発明の第一の実施態様におけるインペラにおけるつなぎ板の形状を示す
図3DのV-V方向における概略断面図である。
【
図3G】本発明の第一の実施態様におけるインペラにおける羽根部の径方向外側の先端部分を示す
図3DのV-V方向における概略断面図である。
【
図4A】本発明の第二の実施態様におけるインペラを示す概略斜視図である。
【
図4B】本発明の第二の実施態様におけるインペラを示す概略平面図である。
【
図4C】本発明の第二の実施態様におけるインペラを示す
図4BのV-V方向における概略断面図である。
【
図5A】本発明の第三の実施態様のインペラの外観を表す平面図である。
【
図5B】本発明の第三の実施態様のインペラの外観を表す底面図である。
【
図5C】本発明の第三の実施態様のインペラの外観を示す正面図である。
【
図5D】本発明の第三の実施態様のインペラの外観を示す背面図である。
【
図5E】本発明の第三の実施態様のインペラの外観を示す左側面図である。
【
図5F】本発明の第三の実施態様のインペラの外観を示す右側面図である。
【
図5G】本発明の第三の実施態様のインペラの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のインペラ、撹拌装置、水処理方法は主に、生物学的水処理設備用の縦軸型曝気撹拌装置や、生物学的水処理方法に利用するものである。
また、以下のインペラ、撹拌装置に対する説明は、水処理方法の説明も兼ねるものである。
【0014】
[第一の実施態様]
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1Aは、第一の実施態様における無終端水路2を平面から見た場合における、生物処理設備1の構成を示す概略説明図である。なお、図中の矢印は、無終端水路2を流れる循環流を表したものである。
【0015】
(生物処理設備)
本発明における生物処理設備1は、無終端水路2内で被処理水を循環しながら生物処理を行うオキシデーションディッチ法に使用するものである。被処理水は、特に制限されないが、例えば、下水、畜産廃水、工場廃水等の有機性廃水が挙げられる。
生物処理設備1は、
図1Aに示すように周囲壁21及び区画壁22により形成された無終端水路2、無終端水路2に設置された縦軸型曝気撹拌装置3及びガイド板7を備えている。
【0016】
無終端水路2は、平行に延びる直線状の2本の直線水路2aと、2本の直線水路2aの両端において直線水路2aを連結して被処理の循環流を形成する循環水路2bからなる。
第一の実施態様の生物処理設備1では、
図1Aに示すように直線水路2aの区画壁22の近傍に縦軸型曝気撹拌装置3が設置されている。
また、
図1Bに示すように、縦軸型曝気撹拌装置3は、無終端水路2の循環流路2bに配置してもよい。
【0017】
縦軸型曝気撹拌装置3は、流路内の被処理水に対して表面曝気を行い、被処理水に酸素を供給するものである。また、縦軸型曝気撹拌装置3は、近傍に配置されたガイド板7と共に、無終端水路2に循環流を形成する。具体的には、縦軸型曝気撹拌装置3が被処理水内に撹拌流を発生し、この撹拌流の流れを、近傍に配置されたガイド板7が案内することにより無終端水路2に循環流を形成する。
【0018】
(縦軸型曝気撹拌装置)
図2は、本実施態様における縦軸型曝気撹拌装置3の構造を示す概略説明図である。
図2に示すように、縦軸型曝気撹拌装置3は、被処理水を曝気撹拌するためのインペラ31、インペラ31を回転するための動力を供給する駆動部33を備えている。
また、本実施態様におけるインペラ31は、駆動部33に連結された軸31Cと、軸31Cに放射状に取り付けられた複数の羽根部31Aと、複数の羽根部31Aを連結するつなぎ板31Bを備える。
【0019】
また、
図3Aには、本発明の第一の実施態様のインペラ31の斜視図を示し、
図3Bには、本発明の第一の実施態様のインペラ31を軸方向から見た平面図を示す。
図3A、
図3Bに示すように、つなぎ板31Bは、軸31Cとの間に、隙間を介して設置されており、この隙間は、被処理水を揚水するための通水孔31Dを形成する。
【0020】
次に、縦軸型曝気撹拌装置3の動作について説明する。
図2に示すように、縦軸型曝気撹拌装置3は、通水孔31Dを被処理水中に配置し、羽根部31Aの先端が水面上に出るように設置する。この位置でインペラ31を回転すると、羽根部31Aにより掻き寄せられた被処理水は、遠心力により羽根部31Aの先端から飛沫として周囲に飛散する。縦軸型曝気撹拌装置3の近傍に配置されたガイド板7は、上端が水面付近に位置するように設置されており、被処理水の飛沫は、ガイド板7を越えて遠方まで飛散することができる。被処理水の飛沫は、大気中を飛散する間に空気を取り込み、空気を含む状態で被処理水に着水する。これにより、被処理水に酸素を供給することができる。
【0021】
羽根部31Aから被処理水が飛散すると、つなぎ板31Bと軸31Cの間に形成された通水孔31Dから被処理水が流れ込むため、連続して被処理水をインペラ31の周囲に飛散することができる。
【0022】
また、被処理水中に位置する羽根部31Aは、被処理水中に撹拌流を形成する。撹拌流は、ガイド板7により下流側に向かって案内され、無終端水路2に循環流を形成する。
【0023】
次に、インペラ31の各部について詳細に説明する。
<軸>
軸31Cは、
図2に示すように、駆動部33に連結されており、駆動部33からの動力によりインペラ31を回転駆動させることを目的とするものである。
軸31Cは、駆動部33からの動力によりインペラ31を回転駆動させることができれば、形状等は特に限定されるものではない。例えば、円柱状、多角柱状などの形状のものが挙げられる。また、軸31Cは、内部が空洞である中空構造でもよい。この場合、軸31Cの強度を保ちつつ、インペラ31全体を軽量化できるため、低い動力で被処理水を曝気撹拌することができる。
【0024】
軸の材質は、特に制限されないが、例えば、鉄やステンレスなどの金属製、硬質プラスチックなどの樹脂製などが挙げられる。強度や耐腐食性の観点から、ステンレスなどの耐腐食性の金属が好ましい。
【0025】
図2に示すように、軸31Cは、複数の軸からなり、複数の軸を連結する連結部31Eを備える。軸31Cを複数の軸に分割可能とすることにより、インペラ31の被処理水の水深に対する位置を調整することができる。例えば、被処理水の底部付近にインペラ31を設置する場合には、連結部31Eを分割して、延伸のための軸(不図示)を追加して、軸31Cの長さを延伸することができる。
【0026】
また、
図2に示すように、昇降装置31Fを備えてもよい。昇降装置31Fは、インペラ31を昇降させるための装置であり、昇降装置31Fを備えることにより、インペラ31の高さ位置を微調整することが可能となる。インペラ31の高さを微調整することにより、インペラ31により形成する飛沫の量や飛散距離を調整することができるため、被処理水に対する酸素の供給効率を向上させることで、回転に必要な動力を低下させるという本発明の効果をより発揮することができる。
【0027】
<羽根部>
図3Aに示すように、羽根部31Aは、軸31Cから径方向外側に向かって延伸するように形成されており、かつ後述する複数の曲部K301~K303を支点にインペラ31の回転方向後方に向けて屈曲するように形成されている。また、軸31Cには、複数の羽根部31Aが取り付けられている。
第一の実施態様の羽根部31Aは、軸31Cの軸方向(略鉛直方向)と略平行に設置された羽根板310Aと羽根部310Aの一部分である羽根板310Bによって構成されている。
【0028】
図3A、
図3Bに示すように、羽根板310Aは、板面が軸方向(略鉛直方向)と略平行に設置される。羽根板310Bは、径方向外側の先端部分において、羽根板310Aの上端をインペラ31の回転方向前方に向けて、後述する曲部O1を支点に屈曲させたものである。羽根板310Bは、羽根板310Aで掻き寄せた被処理水を羽根板310Aに沿って径方向外側に案内する。羽根板310Bを設けることにより、被処理水の飛散量が増加して酸素供給効率を一層向上することができる。
また、
図3Bに示すように、羽根板310A(破線まで)は、軸31Cの軸心から放射状に固定されている。羽根板310Aを軸心から放射状に固定することにより、インペラ31の回転時のバランスが取り易い。
【0029】
また、
図3Dに示すように、羽根部31Aは、軸31Cからインペラ径方向外側に向かって上向きに傾斜している。これにより、被処理水を遠方まで飛散させることができるため、酸素の供給率効率を高めることができる。なお、羽根部31Aと被処理水の水面とのなす角は、例えば、10~80°であり、好ましくは20~60°である。
【0030】
また、羽根板310Aの下端の形状は、径方向外側先端から軸31Cに向かって、羽根板310Aの幅が拡大している。これにより、被処理水の内部に配置される軸31C付近では、羽根板310Aが大きくなるため、強い撹拌流を形成することができる。
【0031】
羽根部31Aの設置数は、特に限定されない。羽根部31Aの設置数は、好ましくは、インペラ31を平面視した場合において等間隔に2~12枚程度であることが挙げられる。この場合、効果的に被処理水を撹拌及び大気中に飛散させることができる。さらに好ましくは、インペラ31の設置数は、インペラ31を平面視した場合において等間隔に6~8枚であることが挙げられる。この場合、発生する撹拌流の強さと大気中に飛散される被処理水の水量が最適となるため、効率よく被処理水を曝気撹拌することができる。
【0032】
また、
図3A、
図3Bに示すように、周方向に隣り合う羽根板310Aの間には、つなぎ板31Bが連結する。また、
図3Dに示すように、つなぎ板31Bは、羽根板310Aの中腹に固定されており、羽根板310Aは、つなぎ板31Bの上表面側に位置する羽根板上部311と、つなぎ板31Bの下表面側に位置する羽根板下部312に分割されている。羽根板上部311は、インペラ31が回転により通水孔31Dより揚水された被処理水を、インペラ31の周囲に飛散させる機能を有する。羽根板下部312は、水中に配置され主として被処理水に撹拌流を形成するものである。また、羽根板下部312は、先端を被処理水面上に配置することにより、インペラの周囲に被処理水を飛散させることもできる。
【0033】
羽根部31Aの材質は、特に制限されないが、例えば、鉄やステンレスなどの金属製、硬質プラスチックなどの樹脂製などが挙げられる。強度や耐腐食性の観点から、ステンレスなどの耐腐食性の金属が好ましい。
【0034】
なお、羽根部31Aの形状は、特に制限されず、例えば、第一の実施態様では、羽根板310Aの板面が軸31Cの軸方向(略鉛直方向)と略平行に設置されるが、羽根板310Aの板面を水面に対して傾斜して固定してもよい。
【0035】
<曲部>
図3Bに示すように、曲部は羽根板310Aを特定の方向へ傾斜させる支点となる部分である。
曲部Kは、各羽根板310Aをインペラ31の回転方向後方に向かって傾斜させる複数の部分である。第一の実施態様においては曲部をK301~K303の3ヶ所設けているが、複数であれがこれに限定されない。例えば、曲部Kの数は、各羽根板310Aにつき2ヶ所から10ヶ所であることが挙げられる。これによると、羽根板310Aを無段階に曲線を描くように湾曲させる曲げ加工を行うことにより製造する場合と比較して、インペラの製造コストと製造時間を大幅に縮小することができる上、つなぎ板の上面又は下面に沿って通過する被処理水を効率良く加速させることが可能となる。また、好ましくは、曲部Kの数は各羽根板310Aにつき3~5ヶ所であることが挙げられる。これによれば、最低限の曲げ加工を行うことで、更にインペラの製造コストと製造時間を大幅に縮小することができる上、つなぎ板の上面又は下面に沿って通過する被処理水を効率良く加速させることが可能となる。なお、各曲部K301~K303における羽根部310Aの傾斜角度は、例えば、好ましくは100~170°であり、より好ましくは110~160°である。
また、
図3Cに示すように、特定の曲部Kを設けず、羽根板310Aが全体的に緩やかに湾曲するようにインペラ31の回転方向後方に向かって傾斜させてもよい。これによると、より滑らかにつなぎ板の上面又は下面に沿って通過する被処理水を径方向外側へ導くことができるため、さらに、被処理水を安定して加速させることが可能となる。
【0036】
図3G(a)に示すように、曲部Oは、径方向外側の先端部分において、各羽根板310Aの上端をインペラ31の回転方向前方に向けて傾斜させる支点となる部分である。
第一の実施態様におけるインペラ31では、曲部Oは、各羽根板310Aにつき、O301の1ヶ所のみである。これによると、最低限の曲げ加工を行うことで、インペラの製造コストや製造時間を大幅に削減することができる。また、つなぎ板31Bの上面又は下面に沿って通過する被処理水を効率よく大気中に飛散させることができる上、被処理水の飛散量が増加して酸素供給効率を一層向上することができる。なお、曲部O301における羽根板310Bと羽根板310Aのなす角は、例えば、好ましくは100~170°であり、より好ましくは110~160°である。
また、
図3G(b)に示すように、特定の曲部Oを設けず、羽根板310Aの上端がインペラ31の回転方向前方に向けて全体的に緩やかに湾曲するように傾斜させてもよい。これによると、つなぎ板31Bの上面又は下面に沿って通過する被処理水をより安定して大気中に飛散させることができる上、酸素供給効率を一層向上することができる。
【0037】
<つなぎ板>
図3A~
図3Cに示すように、つなぎ板31Bは、軸31Cとの間に隙間を介して羽根板310Aに固定されており、当該隙間は、被処理水が通過する通水孔31Dを形成する。
【0038】
第一の実施態様のつなぎ板31Bは、
図3Dに示すように、
図3BのV-V方向において、通水孔31Dからインペラの外径に向かい羽根部31Aの形状に沿うように、傾斜して設置される。これにより、つなぎ板31Bの上面又は下面に沿って通過する被処理水を効率よく大気中に飛散させることができる。
【0039】
また、つなぎ板31Bの別の態様として、つなぎ板31Bは、羽根部31Aから隣り合う回転方向前方の羽根部31Aに向けて外周から通水孔31Dへ向かう傾斜角度が高くなるように設置してもよい。すなわち
図3Bの星印に示す位置が最も低い位置となる。これにより、
図3Bの星印の位置から被処理水をすくい上げることで、通水孔31Dより効率良く羽根板上部311へ吸い上げる可能となる。なお、すくい上げられた被処理水の流れは、矢印に示す。
【0040】
また、つなぎ板31Bの別の態様として、
図3Eに示すように、
図3BのV-V方向において、つなぎ板31Bは、通水孔31Dからインペラ外径に向けて、上方に更に傾斜させてもよい。これにより、通水孔31Dから吸い上げた被処理水が効率よく羽根板上部311の上端付近に導くことが可能となり、更に効率よく被処理水を大気中に飛散させることができる。
【0041】
第一の実施態様のつなぎ板31Bは、
図3F(a)に示すように、
図3DのV-V方向において隣り合う羽根板310B同士をフラットに接続している。
また、つなぎ板31Bの別の態様として、
図3F(b)に示すように、つなぎ板31Bは、
図3DのV-V方向において隣り合う羽根板310B同士をインペラの回転方向に向かって
図3F(b)における下方向に下がるように傾斜するように接続してもよい。これにより、被処理水を通水孔31Dより効率良く羽根板上部311へ吸い上げる可能となる。
【0042】
つなぎ板31Bは、板部材により形成され、その材質は、特に制限されないが、例えば、鉄やステンレスなどの金属製、硬質プラスチックなどの樹脂製などが挙げられる。強度や耐腐食性の観点から、ステンレスなどの耐腐食性の金属が好ましい。
【0043】
なお、軸31C、羽根部31A、つなぎ板31Bは、それぞれ別体として連結しても、一体として形成してもよい。
【0044】
(ガイド板)
ガイド板7は、
図1Aに示すように、縦軸型曝気撹拌装置3を直線流路2aに配置する際に縦軸型曝気撹拌装置3のインペラ31によって発生した撹拌流を整流することで、無終端水路2内の被処理水を撹拌及び循環させることを目的とするものである。縦軸型曝気撹拌装置3の上流側を覆うように区画壁22に固定されている。
ガイド板の設置高さは、
図2に示すように、上端は被処理水の略水面に位置し、下端は縦軸型曝気撹拌装置の下端と同等、もしくはやや上位に位置している。ガイド板の上端を略水面に位置することにより、インペラ31の回転により飛散する飛沫が周囲に着水し、酸素供給効率を高めることができる。また、浮遊するスカムを消失させる作用に優れる。
また、ガイド板の下端を、縦軸型曝気撹拌装置の下端と同等に設置することにより、インペラ31の回転により発生した撹拌流を所定の位置に誘導することができる。
また、
図1Bに示すように、縦軸型曝気撹拌装置3を循環水路2bに配置する際は、循環水路2b近傍の周囲壁21がガイド板7と同様の働きをするため、ガイド板7を設けることを要しない。
【0045】
[第二の実施態様]
図4A~
図4Cは、各々第二の実施態様におけるインペラ41の構造を示す斜視図、平面図、断面図である。
以下、図面を用いて詳細に解説していく。なお、軸41C、つなぎ板41B及び通水孔41Dについては、第一の実施態様における軸31C、つなぎ板31B及び通水孔31Dと同一の内容であるため説明を省略する。
【0046】
<羽根部>
第二の実施態様におけるインペラ41は、
図4Aに示すように、各羽根部41Aにおいて、各々の羽根板410Aの上端に羽根板410Bを備えている点において、第一の実施態様におけるインペラ31と異なる。その他の、羽根板410A、羽根板上部411、羽根板下部412、曲部K401~K403については、第一の実施態様における羽根板310A、羽根板上部311、羽根板下部312、曲部K301~K303と同一の内容であるため説明を省略する。
【0047】
第二の実施態様における羽根板410Bは、各羽根部41Aの各々の羽根板410Aの上端をインペラ41の回転方向前方に向けて、後述する曲部O401~O404を支点に屈曲させたものである。羽根板410Bは、羽根板310Bと同様に羽根板410Aで掻き寄せた被処理水を羽根板310Aに沿って径方向外側に案内するものであるが、羽根板410Aの上端全てに羽根板410Bを設けることにより、インペラの回転速度を上昇させても更に安定して被処理水の飛散量が増加させることが可能となり、酸素供給効率を一層向上することができる。
また、羽根板410Bは、羽根板410Aの上端の一部のみに設けられていてもよい。例えば、羽根板410Aの径方向先端部分から羽根板410Aの全長の半分までの範囲に設けられていることが好ましい。
【0048】
<曲部>
第二の実施態様における曲部Oは、各羽根部41Aの羽根板410Aの上端部分に羽根板410Bを形成するため、複数設けられている。曲部Oの数は、第二の実施態様においては曲部O401~O404の4ヶ所設けているが、これは曲部Kの数に対応したものであり幾つであっても構わない。
【0049】
[第三の実施態様]
図5A~
図5Gは、各々第三の実施態様におけるインペラの形状を示す平面図、底面図、正面図、背面図、左側面図、右側面図、斜視図である。
図5A~
図5Gの図中において、破線で示されている部分は、本実施態様におけるインペラの軸部分の形状を表している。実線で示されている部分は、軸部分以外である本実施態様のインペラの羽根部及び、つなぎ板の形状を示している。
本実施態様のインペラにおける軸部分の形状はどのようなものであってもよい。例えば、円柱状、多角柱状などの形状のものが挙げられる。
【0050】
第三の実施態様におけるインペラは、水処理槽内に配置され、被処理水の液面に略垂直な方向、すなわち、液面に対して交差する方向を軸方向として回転して、被処理水の曝気撹拌を行うものである。
【0051】
なお、上述した実施態様は曝気撹拌装置のインペラの一例を示すものである。本発明に係るインペラは、上述した実施態様に限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係るインペラを変形してもよい。
【0052】
例えば、羽根部及びつなぎ板を同軸上に縦に二つ設置してもよい。
これにより、下側に配置されたインペラを被処理水に完全に水没させることで被処理水を撹拌し、上側に配置されたインペラで被処理水を大気中に飛散させることができるため、曝気効率を維持しながら撹拌力を向上させることができる。
【0053】
また、羽根板の軸に対する角度や、羽根板やつなぎ板の軸に対する角度を、インペラ設置後に容易に変更できるような構造としてもよい。この場合、被処理水の粘性等に対応して、容易に最適な曝気撹拌能力を発揮するように現場でインペラの形状を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のインペラは、生物学的水処理設備用の縦軸型曝気撹拌装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 生物処理設備、2 無終端水路、2a 直線水路、2b 循環水路、21 周囲壁、22 区画壁、3 縦軸型曝気撹拌装置、31,41 インペラ、31A,41A 羽根部、31B,41B つなぎ板、31C,41C 軸、31D,41D 通水孔、310A,310B,410A,410B 羽根板、311,411 羽根板上部、312,412 羽根板下部、31E 連結部、31F 昇降装置、33 駆動部、7 ガイド板、K301~K303,K401~K403 曲部K、O301,O401~O404 曲部O