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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151626
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/08 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H03K5/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061349
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真悟
(72)【発明者】
【氏名】大森 鉄男
【テーマコード(参考)】
5J039
【Fターム(参考)】
5J039BB20
5J039DA09
5J039DA10
5J039KK16
5J039KK17
5J039KK18
5J039MM08
(57)【要約】
【課題】チャタリングの発生を低減できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、入力信号が入力される第1入力と、基準信号が入力される第2入力と、第1電位に接続された電流源、第1電位とは異なる第2電位と電流源との間に接続され、入力信号及び基準信号に応じて比較動作を行う第1電流経路部及び第2電流経路部を含む比較段と、を備え、第1電流経路部及び第2電流経路部は、夫々電流源に接続された第1入力回路及び第2入力回路と、夫々第1入力回路及び第2入力回路と第2電位との間に接続された第1負荷回路及び第2負荷回路とを含み、第1入力回路は、互いに並列に接続され、入力信号が入力される第1信号トランジスタ及び基準信号が入力される第1参照トランジスタを含み、第2入力回路は、互いに並列に接続され、入力信号が入力される第2信号トランジスタ及び基準信号が入力される第2参照トランジスタを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号が入力される第1入力と、
基準信号が入力される第2入力と、
第1電位に接続された電流源、前記第1電位とは異なる第2電位と前記電流源との間に接続され、前記入力信号及び前記基準信号に応じて比較動作を行う第1電流経路部及び第2電流経路部を含む比較段と、
を備え、
前記第1電流経路部及び前記第2電流経路部は、夫々前記電流源に接続された第1入力回路及び第2入力回路と、夫々前記第1入力回路及び前記第2入力回路と前記第2電位との間に接続された第1負荷回路及び第2負荷回路とを含み、
前記第1入力回路は、互いに並列に接続され、前記入力信号が入力される第1信号トランジスタ及び前記基準信号が入力される第1参照トランジスタを含み、
前記第2入力回路は、互いに並列に接続され、前記入力信号が入力される第2信号トランジスタ及び前記基準信号が入力される第2参照トランジスタを含む
半導体装置。
【請求項2】
前記第1参照トランジスタのトランジスタサイズは、前記第2参照トランジスタのトランジスタサイズより小さく、
前記第2信号トランジスタのトランジスタサイズは前記第1信号トランジスタのトランジスタサイズより小さい、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1参照トランジスタのトランジスタサイズは、前記第1信号トランジスタのトランジスタサイズより小さく、
前記第2信号トランジスタのトランジスタサイズは、前記第2参照トランジスタのトランジスタサイズより小さい、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記入力信号が小振幅の入力電圧であった場合に、前記比較動作の応答速度が遅い請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1負荷回路及び前記第2負荷回路は、電流ミラー回路によって提供される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1負荷回路及び前記第2負荷回路の各々は、互いに接続されたゲート及びドレインを有するトランジスタを含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1負荷回路及び前記第2負荷回路の各々は、抵抗器を含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記基準信号を生成する基準電圧源をさらに含む請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記電流源に電圧を供給する電圧源回路をさらに含む請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記電圧源回路の出力及び前記比較段の出力が入力され、前記比較段の出力に応じて出力信号を出力する出力段をさらに含む請求項9に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コンパレータを開示する。このコンパレータは、比較動作中においても入力オフセット電圧の変動を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-92655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ADコンバータ、スイッチング電源、監視回路、デルタ-シグマ変調器といった回路は、2つのノードの電圧を比較するコンパレータを用いる。これらの回路におけるコンパレータは、様々な動作環境において動作する。入力信号の様々な波形、例えば、大きな振幅の急峻な波形、大きな振幅のゆっくりとした波形、或いは小さな振幅のゆっくりとした波形が、コンパレータに入力される。ゆっくりとした波形にノイズが重畳されると、コンパレータは、ノイズに応答して、出力にチャタリングを生じることがある。
【0005】
本発明は、チャタリングの発生を低減できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る半導体装置は、入力信号が入力される第1入力と、基準信号が入力される第2入力と、第1電位に接続された電流源、前記第1電位とは異なる第2電位と前記電流源との間に接続され、前記入力信号及び前記基準信号に応じて比較動作を行う第1電流経路部及び第2電流経路部を含む比較段と、を備え、前記第1電流経路部及び前記第2電流経路部は、夫々前記電流源に接続された第1入力回路及び第2入力回路と、夫々前記第1入力回路及び前記第2入力回路と前記第2電位との間に接続された第1負荷回路及び第2負荷回路とを含み、前記第1入力回路は、互いに並列に接続され、前記入力信号が入力される第1信号トランジスタ及び前記基準信号が入力される第1参照トランジスタを含み、前記第2入力回路は、互いに並列に接続され、前記入力信号が入力される第2信号トランジスタ及び前記基準信号が入力される第2参照トランジスタを含む。
【0007】
この半導体装置によれば、入力信号が第1電流経路部における第1信号トランジスタ、及び第2電流経路部における第2信号トランジスタに入力される。電流源の電流は、入力信号に応答して、第1電流経路部及び第2電流経路部の両方に分流される。電流の分流は、比較段の比較動作の応答速度を遅くし、つまり、ノードの電圧の変化速度を遅くする。これにより、比較段は、短い時間幅の波形(例えば、ノイズ)に対して応答しない。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様によれば、チャタリングの発生を低減できる半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係るコンパレータを概略的に示す回路図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、本発明の一実施の形態に係るコンパレータの出力のための論理回路を示す回路図である。
図3図3は、第1参照トランジスタ及び第2信号トランジスタを備えないコンパレータを示す回路図である。
図4図4は、図3に示されたコンパレータの回路シュミュレーション結果を示すグラフである。
図5図5は、本発明の一実施の形態に係るコンパレータの回路シュミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための各実施の形態を説明する。引き続く説明において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付して重複する説明を回避する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係るコンパレータを概略的に示す回路図である。図1において、コンパレータを構成するトランジスタは、単なる例示として電界効果トランジスタの回路記号で描かれている。電界効果トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を有し、これらは回路図内のトランジスタ共通に、それぞれ、「S」、「D」及び「G」として参照される。
【0012】
コンパレータ11は、入力電圧を受ける第1入力13、基準電圧を受ける第2入力15、及び比較段17を含む。
【0013】
比較段17は、出力18、電流源19、第1電流経路部21及び第2電流経路部23を含む。第1電流経路部21及び第2電流経路部23は、電流源19に接続されて、電流源19の電流は、第1電流経路部21及び第2電流経路部23に分かれて流れる。
【0014】
第1電流経路部21及び電流源19は、第1電位VH(例えば電源電位)と第1電位VHと異なる第2電位VL(例えば、接地電位)との間に直列に接続され、第2電流経路部23及び電流源19は、第1電位VHと第2電位VLとの間に直列に接続される。具体的には、電流源19は、第1電位VHと比較段17の中間ノードMNとの間に接続されている。第1電流経路部21及び第2電流経路部23は、第2電位VLと比較段17の中間ノードMNとの間に並列に接続されている。
【0015】
第1電流経路部21は、第1入力回路25及び第1負荷回路26を含み、第1入力回路25及び第1負荷回路26は、順に、電流源19から第2電位VLの方向に直列に接続されている。第1入力回路25は、並列に接続された複数のトランジスタ、本実施例では、第1信号トランジスタ25s及び第1参照トランジスタ25rを含むことができる。第1信号トランジスタ25s及び第1参照トランジスタ25rの各々は、第1負荷回路26に直列に接続されている。
【0016】
第2電流経路部23は、第2入力回路27及び第2負荷回路28を含み、第2入力回路27及び第2負荷回路28は、順に、電流源19から第2電位VLの方向に直列に接続されている。第2入力回路27は、並列に接続された複数のトランジスタ、本実施例では、第2信号トランジスタ27s及び第2参照トランジスタ27rを含むことができる。第2信号トランジスタ27s及び第2参照トランジスタ27rの各々は、第2負荷回路28に直列に接続されている。
【0017】
電流源19、第1入力回路25及び第2入力回路27は、中間ノードMNにおいて互いに接続される。比較段17は、後述する差動増幅段と異なる回路接続を有する。
【0018】
第1参照トランジスタ25rのトランジスタサイズ(WR1/LR1)は、第2参照トランジスタ27rのトランジスタサイズ(WR2/LR2)より小さく、また、第2信号トランジスタ27sのトランジスタサイズ(WS2/LS2)は、第1信号トランジスタ25sのトランジスタサイズ(WS1/LS1)より小さい。ここで、トランジスタのサイズ(又はトランジスタサイズ)は、電界効果トランジスタのトランジスタ幅(W)と該電界効果トランジスタのトランジスタ長(L)との比(W/L)によって規定される。
【0019】
また、第1参照トランジスタ25rのトランジスタサイズ(WR1/LR1)は、第1信号トランジスタ25sのトランジスタサイズ(WS1/LS1)より小さい。また、第2信号トランジスタ27sのトランジスタサイズ(WS2/LS2)は、第2参照トランジスタ27rのトランジスタサイズ(WR2/LR2)より小さい。
【0020】
第1信号トランジスタ25s及び第2信号トランジスタ27sは、第1入力13からの入力信号SINに応答して動作する。第1参照トランジスタ25r及び第2参照トランジスタ27rは、第2入力15からの基準信号SREFに応答して動作する。入力信号SINが入力される第1信号トランジスタ25s及び第2信号トランジスタ27sと、基準信号SREFが入力される第1参照トランジスタ25r及び第2参照トランジスタ27rによって、入力信号SIN及び基準信号SREFに応じた比較動作を行う。
【0021】
このコンパレータ11によれば、第1入力13からの入力信号SINが、第1電流経路部21における第1信号トランジスタ25s、及び第2電流経路部23における第2信号トランジスタ27sに与えられる。また、第2入力15からの基準信号SREFが、第1電流経路部21における第1参照トランジスタ25r、及び第2電流経路部23における第2参照トランジスタ27rに与えられる。電流源19に流れる電流は、第1入力13からの入力信号SIN及び第2入力15からの基準信号SREFに応答して、第1電流経路部21及び第2電流経路部23に分かれて流れる。この分流により、比較段17内のノードの電圧の変化速度を遅くする。これにより、比較段17は、短い時間幅の波形、例えば、ノイズに対して応答しにくくなる。つまり、ノイズに対して比較動作をしにくくなる。
【0022】
具体的には、第1電流経路部21における第1信号トランジスタ25s、及び第2電流経路部23における第2信号トランジスタ27sは、共に、第1入力13からの入力信号SINに応答して動作し、第1電流経路部21における第1参照トランジスタ25r、及び第2電流経路部23における第2参照トランジスタ27rは、共に、第2入力15からの基準信号SREFに応答して動作する一方で、電流源19が、第1電流経路部21及び第2電流経路部23に流れる総電流量を規定している。第1入力13からの入力信号SINに応答して動作する第1信号トランジスタ25s及び第2信号トランジスタ27sへの分流は、第1電流経路部21及び第2電流経路部23の一方に流れる電流量を減らす。また、第2入力15からの信号SREFに応答して動作する第1参照トランジスタ25r及び第2参照トランジスタ27rへの分流は、第1電流経路部21及び第2電流経路部23の一方に流れる電流量を減らす。この第1電流経路部及び第2電流経路部に流れる電流量の減少は、比較段17のノードにおける電圧波形の変化を遅くする。電圧波形の変化の遅延は、第1信号トランジスタ25s及び第2信号トランジスタ27sに入力する信号波形上に重畳されるノイズ、例えば、小さい振幅のスパイク状ノイズに対して、比較段17が応答することを妨げる。つまり、入力する信号波形状にノイズが重畳しても、比較段17がそのノイズに応じて比較動作をすることを妨げる。
【0023】
第1参照トランジスタ25r及び第2参照トランジスタ27rは、第2入力15からの基準信号SREFを受けているため、比較段17における電流量の変化は、第1入力13からの入力信号SINに応答する動作によって引き起こされる。また、比較段17における総電流量は、電流源19により決まり、第1信号トランジスタ25s、第2信号トランジスタ27s、第1参照トランジスタ25r及び第2参照トランジスタ27rのそれぞれのトランジスタサイズによって分流される。トランジスタサイズによる分流については後述する。
【0024】
再び図1を参照すると、コンパレータ11は、基準電圧源29を更に含む。基準電圧源29は、基準電圧を有する基準信号SREFを生成する。第1参照トランジスタ25r及び第2参照トランジスタ27rは、基準電圧源29からの基準信号SREFを受ける。基準電圧源29は、例えば定電圧を生成するバンドギャップ回路、又は抵抗分圧回路を含むことができる。
【0025】
コンパレータ11は、比較段17の出力18からの信号opmを受ける出力段31を更に含む。出力段31は、比較段17の出力18からの信号を増幅するように構成されることができる。出力段31は、比較段17の出力18に接続された入力31a、及び出力31bを有する。
【0026】
コンパレータ11は、出力段31からの出力信号outnを論理レベルの信号に変換する論理回路33を含み、論理回路33は、例えばインバータ回路といった論理ゲート、又はシュミットトリガー回路といったヒステリシス回路を含むことができ、図2(a)及び図2(b)は、それぞれ、CMOS回路として提供されるインバータ回路35a又はシュミットトリガー回路35bを示し、これらの回路は、論理回路33として動作可能である。
【0027】
コンパレータ11は、電圧源回路37を含み、電圧源回路37は、電流源37a及び負荷回路37bを含むことができる。負荷回路37bは、例えば電流ミラー回路を構成できるように接続された1又は複数のトランジスタを含む。電流源37aは、定電流IBを生成する。
【0028】
比較段17では、第1負荷回路26及び第2負荷回路28は、電流ミラー回路、互いに接続されたゲート及びドレインを有するトランジスタ(ダイオード接続されたトランジスタ)、及び抵抗体の少なくともいずれか一つ(具体的には、いずれか一つ、いずれか二つ、又は全て)を含む。
【0029】
具体的には、図1に示されるように、第1負荷回路26及び第2負荷回路28は、電流ミラー回路CM0によって構成されることができる。このコンパレータ11によれば、比較段17の負荷に電流ミラー回路CM0を適用できる。電流ミラー回路CM0は、第2電流経路部23の第2信号トランジスタ27sの電流の変化を第1電流経路部21に伝達できる。
【0030】
また、第1負荷回路26及び第2負荷回路28の各々は、互いに接続されたゲート及びドレインを有するトランジスタを含むことができる。引き続く説明において、「ダイオード接続されたトランジスタ」として参照する)を含むことができ、このトランジスタの導電型は、第1入力回路25及び第2入力回路27内のトランジスタの導電型と異なる。このコンパレータ11によれば、ダイオード接続されたトランジスタを比較段17の負荷に適用できる。
【0031】
さらに、第1負荷回路26及び第2負荷回路28の各々は、抵抗器を含むことができ、抵抗器は、トランジスタのソースS及びドレインDのための半導体導電領域、ゲート電極(G)のためのゲート導電層、並びに専用に準備された抵抗層の少なくともいずれか一つを含む。このコンパレータ11によれば、比較段17の負荷に抵抗器を適用できる。
【0032】
引き続き、図1に示されたコンパレータ11内のトランジスタの接続を説明する。
【0033】
比較段17は、電流源19として動作するように構成された第1導電型(例えばp型)トランジスタ(P0)を含み、トランジスタ(P0)では、ソースSは第2電位VHに接続され、ゲートGは、電圧源回路37からの信号vbを受け、ドレインDは、第1電流経路部21の第1入力回路25内の並列接続された第1導電型トランジスタ(P1M、P2P)のソースSに接続される。並列接続されたトランジスタ(P1M、P2P)のドレインDは、第1負荷回路26の第2導電型(例えばn型)トランジスタ(N1)のドレインDに接続される。
【0034】
また、トランジスタ(P0)のドレインDは、第2電流経路部23の第2入力回路27内の並列接続された第1導電型トランジスタ(P2M、P1P)のソースSに接続される。並列接続トランジスタ(P2M、P1P)のドレインDは、第2負荷回路28の第2導電型トランジスタ(N0)のドレインD及びゲートGに接続される。トランジスタ(N0)及びトランジスタ(N1)は電流ミラー回路CM0を構成する。トランジスタ(N0、N1)のソースSは、第2電位VLに接続される。ノード(opp)は、第2電流経路部23に流れる電流量を第2電流経路部21の第1負荷回路26に伝える。
【0035】
出力段31は、第2導電型トランジスタ(N2)を含む。トランジスタ(N2)のゲートGは比較段17の出力18に接続されて、出力信号(opm)を受ける。トランジスタ(N2)のソースSは、第2電位VLに接続され、トランジスタ(N2)のドレインDは、第2導電型トランジスタ(P4)のドレインDに接続される。トランジスタ(P4)のソースSは、第1電位VHに接続され、トランジスタ(P4)のゲートGは、電圧源回路37からの信号vbを受けている。
【0036】
電圧源回路37は、定電流IBを生成する電流源37a及び第1導電型トランジスタ(P3)を含み、電流源37aはトランジスタ(P3)のドレインD及びゲートGに接続され、トランジスタ(P3)のソースSは、第1電位VHに接続されている。トランジスタ(P3)のゲートGは、信号vbを提供する。トランジスタ(P3)は、トランジスタ(P0)と電流ミラー回路CM1を構成し、トランジスタ(P4)と電流ミラー回路CM2を構成する。
【0037】
図1を参照すると、第1信号トランジスタ25s、第1参照トランジスタ25r、第2信号トランジスタ27s、及び第2参照トランジスタ27rの各々は、p型MOSトランジスタである。本実施の形態は、これに限定されることなく、コンパレータ11が、n型MOSトランジスタの第1信号トランジスタ25s、第1参照トランジスタ25r、第2信号トランジスタ27s、及び第2参照トランジスタ27rを含む。
【0038】
トランジスタサイズによる分流について説明する。既に説明したように、第1信号トランジスタ25sのトランジスタサイズ(WS1/LS1)は、第2信号トランジスタ27sのトランジスタサイズ(WS2/LS2)より大きく設定される。
【0039】
第2信号トランジスタ27sのトランジスタサイズ(WS2/LS2)に対する第1信号トランジスタ25sのトランジスタサイズ(WS1/LS1)のサイズ比(WS1/LS1)/(WS2/LS2)は、第1電流経路部21及び第2電流経路部23のそれぞれにおける入力信号SINに対する分流の比率を決める。
【0040】
また、第1参照トランジスタ25rのトランジスタサイズ(WR1/LR1)に対する第2参照トランジスタ27r(WR2/LR2)のトランジスタサイズのサイズ比によっても、第1電流経路部21及び第2電流経路部23のそれぞれにおける分流の比率を決めることができる。第1電流経路部21の第1参照トランジスタ25rを設けることで、第2電流経路部23の第2信号トランジスタ27s及び第2参照トランジスタ27rとの回路の対称性を補償することができる。また、第2参照トランジスタ27rのトランジスタサイズ(WR2/LR2)は第1参照トランジスタ25rのトランジスタサイズ(WR1/LR1)より大きく設定される。
【0041】
第2信号トランジスタ27sが第2電流経路部23に設けられると共に第1参照トランジスタ25rが第1電流経路部21に設けられる比較段17では、電流源19の固定の電流量が、入力信号SINに応じて、第1電流経路部21及び第2電流経路部23に、分流の比率に従って分かれる。分流の比率は、例えば比較段17の比較動作の応答速度を変化させる。第1電流経路部21の第1信号トランジスタ25sのトランジスタサイズに対する、第2電流経路部23の第2信号トランジスタ27sのトランジスタサイズを大きくしていくと、比較動作の応答速度が遅くなり、比較段17のノードにおける電圧波形の変化を遅くすることができる。
【0042】
比較段17の第1入力回路25及び第2入力回路27のトランジスタのトランジスタサイズは、例として、以下のように設定されることができる。第1信号トランジスタ25sのトランジスタサイズ(WS1/LS1)が第2参照トランジスタ27rのトランジスタサイズ(WR2/LR2)と同じである。第2信号トランジスタ27sのトランジスタサイズ(WS2/LS2)が第1参照トランジスタ25rのトランジスタサイズ(WR1/LR1)と同じである。
【0043】
図3図4及び図5を参照しながら、コンパレータ11、41の動作を説明する。図4及び図5のグラフにおける参照符号を以下に示す。
Ip1m:トランジスタ(P1M)のドレイン電流(Ids)
Ip1p:トランジスタ(P1P)のドレイン電流(Ids)
Ip2m:トランジスタ(P2M)のドレイン電流(Ids)
Ip2p:トランジスタ(P2P)のドレイン電流(Ids)
Ip0:比較段の電流源の電流
Vref:コンパレータの基準電圧値
【0044】
図3は、第1参照トランジスタ25r及び第2信号トランジスタ27sを備えないコンパレータ41を示す回路図である。図4においては、理解を容易にするために、可能な場合には、差動増幅段A0、出力段A2、及び論理ゲートX0において回路記号及びノードに、図1の回路に対応する回路記号及びノードの参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0045】
図4の(a)部は、大振幅の入力電圧Vin(基準電圧Vrefと入力電圧Vinの振幅との差Vppが大きい)を受けたコンパレータ41の出力OUTの電圧波形を示す。コンパレータ41の差動増幅段A0は、入力電圧Vinが基準電圧Vrefを横切ることを検知して、出力OUTが、速やかに変化している。
【0046】
図4の(b)部は、小振幅の入力電圧Vin(基準電圧Vrefと入力電圧Vinの振幅との差Vppが小さい)を受けたコンパレータ41の出力OUTの電圧波形を示す。小振幅の入力電圧Vinは、コンパレータ41に入力されるノイズを模している。コンパレータ41は、入力電圧Vinが基準電圧Vrefを横切る期間に、出力OUTが速やかに変化している。出力OUTは、矩形状のパルス波形を示す。
【0047】
図4の(c)部は、小振幅の入力電圧Vinを受けたコンパレータ41の差動増幅段A0の2つの電流経路を流れるそれぞれの電流(トランジスタのドレイン電流)を示す。
【0048】
図5の(a)部は、図4(b)に示された小振幅の入力電圧Vinを受けたコンパレータ11の出力OUTの電圧波形を示す。コンパレータ11の信号入力は、時間経過に伴って三角形の形状で変化する入力電圧Vinを受ける。入力電圧Vinは、三角形の頂点に対応するピーク電圧値、及び基準電圧値Vrefを示す破線が三角形を横切る区間によって特徴付けられる。図5の(a)部の波形を参照すると、入力波電圧Vinが基準電圧Vrefを横切る交差期間TINTにおいて、出力OUTは変化しない。これは、コンパレータ11がノイズを模した入力に応答せずに、チャタリングの生成を防止できることを示す。コンパレータ11は、図5の(a)部の波形より大きなあるピーク電圧値、及び/又は図5の(a)部の波形より幅広いある交差を有する別の入力電圧に応答して、出力OUTを変化させる。
【0049】
チャタリング防止の観点では、異なるピーク電圧値を有しノイズを模擬する複数の三角形の入力電圧をコンパレータ11に与えて、コンパレータ11の出力OUTが反転するピーク電圧値(これを「反転電圧値」として参照する)と基準電圧源29の基準電圧値Vrefとの差電圧が、コンパレータ11の設計に役に立つ。
【0050】
また、コンパレータ11は、図4(a)に示された大振幅の入力電圧Vinを受けた場合は、入力電圧に応答して、図4(a)に示された出力電圧波形を生成できる。
【0051】
図5の(b)部は、コンパレータ11のトランジスタ(P1P及びP1M)における電流の分流を示し、図5の(c)部は、コンパレータ11のトランジスタ(P2P及びP2M)における電流の分流を示す。
【0052】
コンパレータ11の設計に係る様々な回路シミュレーションの結果に基づき、以下のような例示的な設計指針が提供される。
【0053】
第1参照トランジスタ25rのトランジスタサイズ(WR1/LR1)と第1信号トランジスタ25sのトランジスタサイズ(WS1/LS1)のサイズ比(WS1/LS1):(WR1/LR1)は、例えば1:3である。このとき、第1参照トランジスタ25rに流れる電流量と第1信号トランジスタ25sに流れる電流量の分流比を、1:3とすることができる。
【0054】
第2信号トランジスタ27sのトランジスタサイズ(WS2/LS2)と第2参照トランジスタ27rのトランジスタサイズ(WR2/LR2)のサイズ比(WR2/LR2):(WS2/LS2)は、例えば1:3である。このとき、第2信号トランジスタ27sに流れる電流量と第2参照トランジスタ27rに流れる電流量の分流比を、1:3とすることができる。
【0055】
このコンパレータ11によれば、第1電流経路部21及び第2電流経路部23の各々におけるトランジスタのサイズ比は、第1電流経路部21及び第2電流経路部23の各々における電流量の分流比を規定する。
【0056】
コンパレータ11の設計に係る様々な回路シミュレーションの結果に基づき、以下のような例示的な別の設計指針が提供される。
【0057】
第2信号トランジスタ27sのトランジスタサイズ(WS2/LS2)と第1信号トランジスタ25sのトランジスタサイズ(WS1/LS1)のサイズ比(WS1/LS1):(WS2/LS2)は、例えば、3:1である。このとき、第2信号トランジスタ27sに流れる電流量と第1信号トランジスタ25sに流れる電流量の分流比は、3:1とすることができる。
【0058】
第1参照トランジスタ25rのトランジスタサイズ(WR1/LR1)と第2参照トランジスタ27rのトランジスタサイズ(WR2/LR2)のサイズ比(WR2/LR2):(WR1/LR1)は、例えば、1:3である。このとき、第1参照トランジスタ25rに流れる電流量と第2参照トランジスタ27rに流れる電流量の分流比は、1:3とすることができる。
【0059】
このコンパレータ11によれば、第1入力13(入力信号入力)に係るトランジスタ及び第2入力15(参照入力)に係るトランジスタの各々におけるサイズ比は、電流源19からの電流における信号入力に係るトランジスタ及び参照入力に係るトランジスタの電流量の分流比を規定する。
【0060】
以上説明したように、上記の実施の態様によれば、入力信号が第1電流経路部における第1信号トランジスタ及び第2電流経路部における第2信号トランジスタに入力され、電流源の電流が入力信号に応答して、第1電流経路部及び第2電流経路部の両方に分流されるため、比較段の比較動作の応答速度を遅くし、つまり、ノードの電圧の変化速度を遅くする。従って、比較段はノイズ等の短い時間幅の波形に対して応答せず、チャタリングの発生を低減できるコンパレータを提供できる。
【0061】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
11・・・コンパレータ、13・・・第1入力、15・・・第2入力、17・・・比較段、19・・・電流源、21・・・第1電流経路部、23・・・第2電流経路部、25・・・第1入力回路、25r・・・第1参照トランジスタ、25s・・・第1信号トランジスタ、26・・・第1負荷回路、27・・・第2入力回路、27r・・・第2参照トランジスタ、27s・・・第2信号トランジスタ、28・・・第2負荷回路、29・・・基準電圧源、31・・・出力段、31a・・・入力、31b・・・出力、33・・・論理回路、35a・・・インバータ回路、35b・・・シュミットトリガー回路、37・・・電圧源回路、37a・・・電流源、37b・・・負荷回路、41・・・コンパレータ、CM0、CM1、CM2・・・電流ミラー回路、D・・・ドレイン、G・・・ゲート、S・・・ソース、OUT・・・出力、SIN・・・入力信号、SREF・・・基準信号、VH・・・第1電位、VL・・・第2電位、Vin・・・入力電圧、Vref・・・基準電圧(基準電圧値)、vb・・・信号(電圧信号)。
図1
図2
図3
図4
図5