(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151638
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ポリアリーレンエーテルケトン樹脂及びその製造方法、並びに芳香族ジケトン化合物
(51)【国際特許分類】
C08G 67/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
C08G67/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061363
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】石原 充裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 勇氏
(72)【発明者】
【氏名】柳 智征
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AB00
4J005BA00
4J005BB02
(57)【要約】
【課題】本発明は、高熱時剛性と高耐薬品性を兼ね備え、高い熱時溶融安定性を有し、かつ良好な成形加工性を有するPAEK樹脂を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、一般式(1-1)及び(1-3)からなる群から選択される少なくとも一種の繰り返し単位、並びに(1-2)及び(1-4)からなる群から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を含み、下記(A)及び(B)の関係を満たすことを特徴とする。
(A)ASTM D3418に準じて示差走査熱量測定を行い、2周目のプログラムサイクルに検出され、決定される結晶融点(Tm)ピークを有する。
(B)(繰り返し単位(1-3)のモル):(繰り返し単位(1-4)のモル)が99:1~1:99の範囲である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1-1)及び(1-3)からなる群から選択される少なくとも一種の繰り返し単位、並びに(1-2)及び(1-4)からなる群から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を含み、
下記(A)及び(B)の関係を満たす、
ことを特徴とするポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
(A)ASTM D3418に準じて、加熱及び冷却速度20℃/分の条件で50℃から400℃までの範囲で示差走査熱量測定を行い、温度50℃から測定開始してから2周目のプログラムサイクルに検出され、決定される結晶融点(Tm)ピークを有する。
(B)(一般式(1-3)で表される繰り返し単位のモル):(一般式(1-4)で表される繰り返し単位のモル)が99:1~1:99の範囲である。
【化1】
(式(1-1)中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
【化2】
(式(1-2)中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
【化3】
(式(1-3)中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
【化4】
(式(1-4)中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
【請求項2】
前記示差走査熱量測定において、前記2周目のプログラムサイクルに検出される結晶融解エンタルピー変化(ΔH)が5J/g以上である、請求項1に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
【請求項3】
全繰り返し単位100モル%中の、一般式(1-4)で表される繰り返し単位のモル割合が1モル%以上である、請求項1又は2に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
【請求項4】
ガラス転移温度(Tg)が165℃以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
【請求項5】
前記結晶融点(Tm)が290℃以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
【請求項6】
Al元素の残存質量割合が100質量ppm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
【請求項7】
Cl元素の残存質量割合が1000質量ppm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
【請求項8】
下記式(2-1)で表されるモノマー(2-1)及び/又は下記式(2-2)で表されるモノマー(2-2)と、下記式(2-5)で表されるモノマー(2-5)、下記式(2-6)で表されるモノマー(2-6)及び下記式(2-7)で表されるモノマー(2-7)からなる群から選択される少なくとも一種のモノマーとを含み、さらに下記式(2-3)で表されるモノマー(2-3)、下記式(2-4)で表されるモノマー(2-4)、下記式(2-8)で表されるモノマー(2-8)を含んでいてもよいモノマー成分を、触媒及び溶媒の存在下で反応させることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法。
【化5】
(式中のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはOH基である。)
【化6】
(式中のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはOH基である。)
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂を含むことを特徴とする、成形品。
【請求項11】
一般式(2-5)又は(2-6)で表されることを特徴とする芳香族ジケトン化合物。
【化13】
【化14】
【請求項12】
一般式(4-1)又は(4-2)で表される構造を0.1質量%以上、99.9質量%以下含む、請求項11に記載の芳香族ジケトン化合物。
【化15】
【化16】
【請求項13】
一般式(2-7)で表される化合物の残存質量割合が10000質量ppm以下である、請求項11又は12に記載の芳香族ジケトン化合物。
【化17】
【請求項14】
Al元素の残存質量割合が1000ppm以下である、請求項11~13のいずれか一項に記載の芳香族ジケトン化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂及びその製造方法、並びに芳香族ジケトン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(本明細書において、「PAEK樹脂」と略称することがある)は、耐熱性、強靭性に優れ、高温環境下で連続使用可能なスーパーエンジニアリングプラスチックとして、自動車部品から航空機部材等の輸送機器類だけでなく、医療用部品、繊維等の幅広い用途実績がある。特に耐薬品性に優れていることから、洗浄工程の多い半導体分野での使用に適すること、さらには自己消火性にも優れニートレジンの状態でも難燃性(V-0相当)であることから、電気・電子材料用途にも多く利用されている。
【0003】
従来のPAEK樹脂の製造方法は、(a)芳香族求核置換反応を用いた重合と(b)芳香族求電子置換反応を用いた重合に大別されることが知られている。
(a)を用いた場合には、例えば4,4’-ジフルオロベンゾフェノンとヒドロキノンの二種のモノマーを用い、ジフェニルスルホン中で炭酸カリウムを作用させる芳香族求核置換型の重縮合反応により、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(本明細書において、「PEEK樹脂」と略称することがある)が製造される(特許文献1)。
(b)を用いた場合には、例えばテレフタル酸ジクロリドとジフェニルエーテルの二種のモノマーを用い、無機ルイス酸を作用させることによる芳香族求電子置換型の重縮合反応により、ポリエーテルケトンケトン樹脂が製造される(特許文献2)。
【0004】
一方で例えばPAEK樹脂は溶融状態でポリマーの架橋によって物理化学的及び/又は機械的特性の低下や溶融粘度が変化しやすいこと、さらにはポリマー特性の劣化や溶融粘度の上昇を招くため、この挙動は非常に望ましくないと、特許文献3に記載され広く知られている。この挙動は高温でのポリマーの分解又は分子鎖間での架橋によるものとして理解され、非特許文献1に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54-090296号公報
【特許文献2】米国特許第3065205号明細書
【特許文献3】米国特許第5063265号明細書
【特許文献4】特開平2-248424号公報
【特許文献5】特開昭61-211336号公報
【特許文献6】特開平2-248428号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Macromolecular Science, Part A: Pure and Applied Chemistry, 2012, 49, 571-577.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高温環境下での使用を想定した際にPAEK樹脂の熱物性値を調整するモノマー単位での設計変更の試みがなされている。例えば特許文献4では繰り返し単位構造を変更することでガラス転移温度が高い非晶性のPAEK樹脂が得られることを示している。
【0008】
PAEK樹脂を代表とする熱可塑性樹脂は所望の部材や完成品を製造する段階や3Dプリンティングやペレット化などの半製品を製造する段階で、ガラス転移温度以上さらに好ましくは融点以上の熱を加えることで熱溶融させ、所望の形状へと調整することが通常求められる。
しかしながら、特許文献1~4に記載のPAEK樹脂の熱溶融時の安定性は満足できるものではない。
【0009】
また、電気・電子部品などの製造時には、例えば、エッチング工程、フォトマスク工程、メッキ工程、デスミア工程、レジスト剥離工程などの様々な複雑な操作を含む多くの化学工程が行われることが通常であり、電気・電子材料には極めて強い耐薬品性が求められる。
しかしながら、特許文献1~4に記載のPAEK樹脂の耐薬品性は十分ではない。
【0010】
さらには、自動車を代表する機械部品や石油掘削用パイプなどに関する部品では高温環境下で繰り返し使用しても変形、変質を伴うことがない高い熱時剛性と同時に、機械油や洗浄薬剤、石油や天然ガスなどを代表とする埋蔵資源に浸食されにくい高い耐薬品性が通常求められる。
しかしながら、特許文献1~4に記載のPAEK樹脂は高い熱時剛性と高い耐薬品性の共存については十分に達成できていない。
【0011】
さらに、PAEK樹脂のモノマー構成成分としては、下記の検討もされている。
特許文献2には、PAEK樹脂及びその製造方法としてアリールエーテル及び多核芳香族化合物からなる群からの少なくとも1種の芳香族化合物と、カルボニル基の結合点が少なくとも1個の炭素原子によって分離されている芳香族炭化水素ジカルボニルハライドを、無水条件下の不活性有機溶剤中、ルイス酸触媒の存在下で反応することより芳香族求電子置換型の反応よる重合が開示されている。上記アリールエーテル及び多核芳香族化合物としてはジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ペリレン、フルオレン、ピレン、クリセン、インデン、アクリジンが新規な芳香族主体のポリケトンを提供すること、また、本質的に線形の芳香族ポリケトンを調製する目的に好適と記載されている。一方で、上記芳香族炭化水素ジカルボニルハライドとしてはテレフタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジクロリドのみであり、上記ルイス酸触媒としては塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、五塩化アンチモン、塩化鉄のみであり、上記アリールエーテル及び多核芳香族化合物として明細書中で開示されている例はジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ビフェニルに限られている。
しかしながら、特許文献2に記載のPAEK樹脂は、高熱時剛性、高耐薬品性、熱時溶融安定性については記載がない。
【0012】
また、特許文献5ではPAEK樹脂及びその製造方法として芳香族化合物と、求電子性芳香族系時アシル化合物を、無水条件下の不活性有機溶剤中、ルイス酸触媒の存在下で反応することより芳香族求電子置換型の反応よる重合が開示されている。上記芳香族化合物としてはジフェニルスルフィド、ジベンゾフラン、チアントレン、フェノキサチン、フェノジオキシン、ジフェニレン、ジフェニル、ジベンゾジオキシン、キサントン、4,4’-ジフェノキシビフェニル、2,2’-ジフェノキシビフェニル、1,2-ジフェノキシベンゼン、1,3-ジフェノキシベンゼン、1,4-ジフェノキシベンゼン、1-フェノキシナフタレン、1,2-ジフェノキシナフタレン、ジフェニルエーテル、1,5-ジフェノキシナフタレンが、上記求電子性芳香族系時アシル化合物としてはテレフタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジクロリド、チオ-ビス(4,4’-ベンゾイルクロライド)、ベンゾフェノン-4,4’-ジ(カルボニルクロライド)、オキシ-ビス(4,4’-ベンゾイルクロライド)、ジフェニル-3,3’-ジ(カルボニルクロライド)、カルボニル-ビス(3,3’-ベンゾイルクロライド)、スルホニル-ビス(4,4’-ベンゾイルクロライド)、スルホニル-ビス(3,3’-ヘンゾイルクロライド)、スルホニル-ビス(3,4’-ベンゾイルクロライド)、チオ-ビス(3,4’-ベンゾイルクロライド)、ジフェニル-3,4’-ジ(カルボニルクロライド)、オキシ-ヒス〔4,4’-(クロロベンゾイルクロライド)〕、ナフタレン-1,6-ジ(カルボニルクロライド)、ナフタレン-1,7-ジ(カルボニルクロライド)、ナフタレン-1,5-ジ(カルボニルクロライド)、ナフタレン-2,6-ジ(カルボニルクロライド)、オキシ-ビス〔7,7’-ナフタレン-2,2’-ジ(カルボニルクロライド)〕、チオ-ビス〔8,8’-ナフタレン-2,2’-ジ(カルボニルクロライド)〕、7,7’-ビナフチル-2,2’-ジ(カルボニルクロライド)、ジフェニル-4,4’-ジ(カルボニルクロライド)、カルボニル-ビス〔7,7’-ナフタレン-2,2’-ジ(カルボニルクロライド)〕、スルホニル-ビス〔6,6’-ナフタレン-2,2’-ジ(カルボニルクロライド)〕、ジベンゾフラン-2,7-ジカルボニルクロライド)が、ルイス酸触媒としては塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、塩化第二鉄、臭化アルミニウム、三弗化ほう素、塩化亜鉛、三塩化アンチモン、臭化第二鉄、塩化第二錫をそれぞれ用い、1,2-ジクロロエタン溶媒中で重合することで、ジクロロベンゼン中での製造方法より比較的大きな分子量を有するPAEK樹脂の製造に適すると記載されている。一方で、上記求電子性芳香族系ジアシル化合物としてはテレフタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジクロリドのみであり、上記ルイス酸触媒としては塩化アルミニウムのみであり、上記芳香族化合物として明細書中で開示されている例はジフェニルエーテルに限られている。
しかしながら、特許文献5に記載のPAEK樹脂は、高熱時剛性、高耐薬品性、熱時溶融安定性については記載がない。
【0013】
また、特許文献6ではPAEK樹脂の製造方法として芳香族モノマーとルイス酸触媒と加圧下での二酸化炭素との求電子置換反応芳香族求電子置換型の反応よる重合が開示されている。上記芳香族モノマーとしてはジフェニルエーテル、4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジフェノキシジフェニルスルホン、ジベンゾフラン、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン及びそれらのチオエーテル同等物及びビフェニル、1,2-ジフェニルベンゼン、1,3-ジフェニルベンゼン、1,4-ジフェニルベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンが、ルイス酸触媒としては塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、塩化第二鉄、臭化第二鉄、臭化アルミニウム、四塩化チタン、塩化ガリウム、六塩化モリブデン、塩化亜鉛を用い、溶媒中、加圧下での二酸化炭素と重合することで安価な製造方法に適すると記載されている。一方で上記芳香族モノマーとしてはジフェニルエーテル、4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、ジベンゾフラン、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンのみであり、上記ルイス酸触媒としては塩化アルミニウムのみである。この際、芳香族モノマーとしてはジフェニルエーテルとジベンゾフランを組み合わせて用いることが記載されており、ジフェニルエーテルとジベンゾフランの和に占めるジベンゾフランの割合が大きいほどPAEK樹脂のDSC測定から求められるTmはやや増加傾向にあることが示されている。一方でTgについてはジフェニルエーテルとジベンゾフランの和に占めるジベンゾフランの割合が大きいほど向上する明確な傾向は示されていない。PEK樹脂製造の際には二酸化炭素がカルボニル基源として使用され、加圧条件での製造方法がとられており、特許文献2、4、5に記載の芳香族ジカルボン酸ハロゲン化物との反応とは著しく異なる条件、さらには特殊な基質であると考えられ、本願で解決したフタル酸類をカルボニル基源とする共重合PAEK樹脂への着想は直ちに至るものではない。
【0014】
そこで、本発明は、高熱時剛性と高耐薬品性を兼ね備え、高い熱時溶融安定性を有し、かつ良好な成形加工性を有するPAEK樹脂を提供することを目的とする。
また、高熱時剛性と高耐薬品性を兼ね備え、高い熱時溶融安定性を有するPAEK樹脂を提供するに資する芳香族ジケトン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
下記一般式(1-1)及び(1-3)からなる群から選択される少なくとも一種の繰り返し単位、並びに(1-2)及び(1-4)からなる群から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を含み、
下記(A)及び(B)の関係を満たす、
ことを特徴とするポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
(A)ASTM D3418に準じて、加熱及び冷却速度20℃/分の条件で50℃から400℃までの範囲で示差走査熱量測定を行い、温度50℃から測定開始してから2周目のプログラムサイクルに検出され、決定される結晶融点(Tm)ピークを有する。
(B)(一般式(1-3)で表される繰り返し単位のモル):(一般式(1-4)で表される繰り返し単位のモル)が99:1~1:99の範囲である。
【化1】
(式(1-1)中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
【化2】
(式(1-2)中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
【化3】
(式(1-3)中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
【化4】
(式(1-4)中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
[2]
前記示差走査熱量測定において、前記2周目のプログラムサイクルに検出される結晶融解エンタルピー変化(ΔH)が5J/g以上である、[1]に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
[3]
全繰り返し単位100モル%中の、一般式(1-4)で表される繰り返し単位のモル割合が1モル%以上である、[1]又は[2]に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
[4]
ガラス転移温度(Tg)が165℃以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
[5]
前記結晶融点(Tm)が290℃以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
[6]
Al元素の残存質量割合が100質量ppm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
[7]
Cl元素の残存質量割合が1000質量ppm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂。
[8]
下記式(2-1)で表されるモノマー(2-1)及び/又は下記式(2-2)で表されるモノマー(2-2)と、下記式(2-5)で表されるモノマー(2-5)、下記式(2-6)で表されるモノマー(2-6)及び下記式(2-7)で表されるモノマー(2-7)からなる群から選択される少なくとも一種のモノマーとを含み、さらに下記式(2-3)で表されるモノマー(2-3)、下記式(2-4)で表されるモノマー(2-4)、下記式(2-8)で表されるモノマー(2-8)を含んでいてもよいモノマー成分を、触媒及び溶媒の存在下で反応させることを特徴とする、[1]~[7]のいずれかに記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法。
【化5】
(式中のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはOH基である。)
【化6】
(式中のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはOH基である。)
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
[9]
[1]~[7]のいずれかに記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂を含むことを特徴とする、組成物。
[10]
[1]~[7]のいずれかに記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂を含むことを特徴とする、成形品。
[11]
一般式(2-5)又は(2-6)で表されることを特徴とする芳香族ジケトン化合物。
【化13】
【化14】
[12]
一般式(4-1)又は(4-2)で表される構造を0.1質量%以上、99.9質量%以下含む、[11]に記載の芳香族ジケトン化合物。
【化15】
【化16】
[13]
一般式(2-7)で表される化合物の残存質量割合が10000質量ppm以下である、[11]又は[12]に記載の芳香族ジケトン化合物。
【化17】
[14]
Al元素の残存質量割合が1000ppm以下である、[11]~[13]のいずれかに記載の芳香族ジケトン化合物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高熱時剛性と高耐薬品性を兼ね備え、高い熱時溶融安定性を有し、かつ良好な成形加工性を有するPAEK樹脂を提供することができる。
また、高熱時剛性と高耐薬品性を兼ね備え、高い熱時溶融安定性を有するPAEK樹脂を提供するに資する芳香族ジケトン化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0018】
(ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK樹脂))
本実施形態のPAEK樹脂は、下記一般式(1-1)で表される繰り返し単位及び下記式(1-3)で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも一種の繰り返し単位、並びに下記一般式(1-2)で表される繰り返し単位及び下記式(1-4)で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を含み、下記(A)及び(B)の関係を満たす。
(A)加熱及び冷却速度20℃/分でのASTM D3418に準じた方法に従って昇温条件で50℃から400℃までの範囲で示差走査熱量測定を行い、上記の加熱及び冷却条件において測定開始してから2周目のプログラムサイクルに検出され、決定される結晶融点(Tm)ピークを有する。
(B)(一般式(1-3)で表される繰り返し単位のモル):(一般式(1-4)で表される繰り返し単位のモル)が99:1~1:99の範囲である。
【化18】
(式中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
【化19】
(式中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
【化20】
(式中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
【化21】
(式中、破線は繰り返し単位間の結合位置を示している。)
【0019】
本発明者らは、フタル酸とジベンゾフランのみからなるポリマーは非晶性であるところ、ジベンゾフランに由来する構造を含むポリマーであって、高熱時剛性と高耐薬品性を兼ね備え、高い熱時溶融安定性を有し、かつ良好な成形加工性を有する樹脂について検討を進め、本発明を見出した。本発明によれば、ジフェニルエーテルに由来する構造を有する繰り返し単位(1-3)のモル数と、ジベンゾフランに由来する構造を有する繰り返し単位(1-4)のモル数との割合を調整することで、融点やガラス転移温度が調整可能で、且つ高熱時剛性、高耐薬品性、熱時溶融安定性を有する樹脂が得られる。
【0020】
本明細書において、一般式(1-1)で表される繰り返し単位を「繰り返し単位(1-1)」、一般式(1-2)で表される繰り返し単位を「繰り返し単位(1-2)」、一般式(1-3)で表される繰り返し単位を「繰り返し単位(1-3)」、一般式(1-4)で表される繰り返し単位を「繰り返し単位(1-4)」と称する場合がある。
また、一般式(2-1)で表されるモノマーを「モノマー(2-1)」、一般式(2-2)で表されるモノマーを「モノマー(2-2)」、一般式(2-3)で表されるモノマーを「モノマー(2-3)」、一般式(2-4)で表されるモノマーを「モノマー(2-4)」、一般式(2-5)で表されるモノマーを「モノマー(2-5)」、一般式(2-6)で表されるモノマーを「モノマー(2-6)」、一般式(2-7)で表されるモノマーを「モノマー(2-7)」、一般式(2-8)で表されるモノマーを「モノマー(2-8)」と称する場合がある。
【0021】
実施形態のPAEK樹脂は、繰り返し単位(1-1)及び/又は繰り返し単位(1-3)、並びに繰り返し単位(1-2)及び/又は繰り返し単位(1-4)を少なくとも含む。中でも、本実施形態のPAEK樹脂は、繰り返し単位(1-1)、繰り返し単位(1-2)、繰り返し単位(1-3)、繰り返し単位(1-4)のみからなることが好ましい。
【0022】
本実施形態のPAEK樹脂は、繰り返し単位(1-1)又は繰り返し単位(1-2)と、繰り返し単位(1-4)とが結合した構造を有することが好ましい。
該結合において、繰り返し単位(1-1)又は繰り返し単位(1-2)のカルボニル基と、繰り返し単位(1-4)のジベンゾフランに由来する構造中の酸素原子とが、パラ位に配置される構造を含むことが好ましい。例えば、後述の式(6-2)は、芳香族ジカルボン酸に由来する構造(繰り返し単位(1-1)又は繰り返し単位(1-2)に相当)と、ジベンゾフランに由来する構造(繰り返し単位(1-4)に相当)とが結合し、芳香族ジカルボン酸に由来する構造中のカルボニル基と、ジベンゾフランに由来する構造中の酸素原子とが結合するフェニレンにおいて、該カルボニル基と該酸素原子とがパラ位に配置される上記構造を含む。なお、式(6-2)は該構造を2つ有し、式(6-3)及び(6-5)は該構造を1つ有する。
また、従来のPEKKは、エーテル基とケトン基とに結合するフェニレンにおいて、オルト位にエーテル基とケトン基とが結合するオルト構造体が含まれると、分子内環化反応が進行し、熱や酸化に不安定な構造が生じることがあった。上記構造はジベンゾフランが平面状の繰り返し単位でオルト構造体であっても分子環化反応をしないために不安定構造が生じない。そのため、高熱時剛性、高耐薬品性、熱時溶融安定性に優れる。
【0023】
本実施形態のPAEK樹脂は、繰り返し単位(1-1)、繰り返し単位(1-2)、繰り返し単位(1-3)、繰り返し単位(1-4)それぞれのモル割合を特定の範囲とすることにより、結晶性を維持したまま融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、耐薬品性、を調整することが可能であり、一層良好な成形加工性を発現させられる。
(繰り返し単位(1-3)のモル):(繰り返し単位(1-4)のモル)は、99:1~1:99であり、99:1~5:95であることが好ましく、より好ましくは99:1~20:80、さらに好ましくは90:10~50:50である。
上記モル割合の範囲内で、繰り返し単位(1-4)のモルの割合を大きくしていくと、ガラス転移温度(Tg)を高くすることが可能で耐熱性に一層優れ、熱時溶融安定性に一層優れたPAEK樹脂を得ることができる。繰り返し単位(1-3)のモルの割合を大きくしていくと、結晶化度及び結晶融点(Tm)を高くすることが可能で、耐薬品性及び耐熱性に一層優れたPAEK樹脂を得ることができる。また、上記モル割合の範囲内で、繰り返し単位(1-3)のモルの割合を小さくしていくと、結晶融点(Tm)を比較的低温に調節することができ、成形加工性に一層優れるPAEK樹脂とすることができる。
【0024】
本実施形態のPAEK樹脂は、繰り返し単位(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)の割合を特定の範囲とすることで、高いガラス転移温度と結晶性を兼ね備え、熱溶融時安定性に優れたPAEK樹脂とすることができる。
上記繰り返し単位(1-1)(1-2)(1-3)(1-4)の割合としては、(繰り返し単位(1-1)及び(1-2)の合計):(繰り返し単位(1-3)及び(1-4)の合計)のモル割合が、45:55~55:45であることが好ましい。また、(繰り返し単位(1-1):繰り返し単位(1-2))のモル割合が、100:0~45:55又は30:70~0:100であることが好ましく、より好ましくは100:0~45:55である。また、(繰り返し単位(1-3):繰り返し単位(1-4))のモル割合が、99:1~50:50であることが好ましい。
【0025】
本実施形態のPAEK樹脂は、繰り返し単位(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)の割合を特定の範囲とすることで、任意で適宜最適な数平均分子量Mnに重合度を調整することで、耐熱性と成形加工性及び成形体の強度に優れるPAEK樹脂とすることができる。
上記繰り返し単位(1-1)(1-2)(1-3)(1-4)の割合としては、(繰り返し単位(1-1)及び(1-2)の合計):(繰り返し単位(1-3)及び(1-4)の合計)のモル割合が、45:55~55:45であることが好ましい。
【0026】
本実施形態のPAEK樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で繰り返し単位(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)以外の他の繰り返し単位を含んでいてもよい。他の繰り返し単位を含む場合、繰り返し単位(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)と他の繰り返し単位との合計を100モル%として、他の繰り返し単位は50モル%以下であることが好ましく、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。
また、本実施形態のPAEK樹脂を構成する全繰り返し単位100モル%に対する、繰り返し単位(1-1)、繰り返し単位(1-2)、繰り返し単位(1-3)及び繰り返し単位(1-4)の合計のモル割合は、50モル%超であることが好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。
本実施形態のPAEK樹脂を構成する全繰り返し単位100モル%に対して、エーテル基とケトン基とがオルト位で結合するフェニレンを含む繰り返し単位のモル割合が10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1モル%以下であり、さらに好ましくは0.1モル%以下であり、含まないことが特に好ましい。
【0027】
また、本実施形態のPAEK樹脂は、繰り返し単位繰り返し(1-4)のモル割合を大きくしていくとガラス転移温度及び熱溶融時安定性に優れたPAEK樹脂とすることができる。この理由は定かではないが、以下の様に推測される。すなわち、繰り返し単位(1-1)又は(1-2)と(1-4)が結合した際にはカルボニル基及び芳香環からなり、その炭素は全てsp2混成炭素であるとみなせるため、本質的には平面性の比較的高い剛直な繰り返し単位とみなすことができ、ミクロブラウン運動が抑制されるとともに、高温状態での分子鎖間又は分子鎖内での運動性の自由度、さらには反応性が低下することで優れた効果として生じたものと推測される。また、繰り返し単位(1-1)又は(1-2)と(1-4)が結合した構造は平面性の比較的高い骨格である下記式(2-7)で示されるジベンゾフランを有しており、この分子骨格中に存在する酸素原子の電子的な摂動が分子鎖の成長段階に寄与しながら、数平均分子量が一定値以上に成長させ、かつ本質的に望まない分子鎖間での副反応による架橋を抑制したことでガラス転移温度及び耐熱性、熱溶融時安定性に優れたPAEK樹脂を生じたものと推測される。
本実施形態のPAEK樹脂を構成する全繰り返し単位100モル%に対する、繰り返し単位繰り返し単位(1-4)のモル割合は、1モル%以上であることが好ましく、より好ましくは1~99モル%、さらに好ましくは1~60モル%、特に好ましくは5~55モル%である。
【0028】
本実施形態のPAEK樹脂は、ASTM D3418に準じて、加熱及び冷却速度20℃/分の条件で50℃から400℃までの範囲で示差走査熱量測定を行い、温度50℃から測定開始してから2周目のプログラムサイクルに検出され、決定される結晶融点(Tm)ピークを有する。この際に観測される結晶融解エンタルピー変化(ΔH)は1~100J/gであることが好ましく、より好ましくは5~70J/g、さらに好ましくは6~55J/g、特に好ましくは6~47J/gである。また、5J/g以上であってよい。
結晶融点(Tm)を有し、ΔHが正に大きいほど耐薬品性に優れるため好ましい。なお、結晶融解エンタルピー変化(ΔH)は、上述の示差走査熱量測定により測定を開始してから2周目のプログラムサイクルに検出される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0029】
本実施形態のPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)は、165℃以上であることが好ましく、より好ましくは165~250℃、より好ましくは166~235℃、さらに好ましくは168~230℃、特に好ましくは170~228℃である。
上記ガラス転移温度(Tg)は、例えば、繰り返し単位(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)のモル割合(特に、繰り返し単位(1-3)のモルと、繰り返し単位(1-4)のモルとの割合)を適宜選択することで、調整することができる。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、上述の示差走査熱量測定により測定を開始してから2周目のプログラムサイクルに検出される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0030】
本実施形態のPAEK樹脂の結晶融点(Tm)は、成形加工の取り扱いの観点から、290℃以上であることが好ましく、より好ましくは310~390℃、さらに好ましくは330~385℃である。
なお、上記結晶融点(Tm)は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0031】
本実施形態のPAEK樹脂の結晶融点(Tm)とガラス転移温度(Tg)との差(Tm-Tg)は、高温における強度に一層優れる観点から、110~265℃であることが好ましく、より好ましくは115~260℃、さらに好ましくは120~250℃である。
【0032】
本実施形態のPAEK樹脂100質量%中の、Al元素の残存質量割合は、100質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは50質量ppm以下、さらに好ましくは10質量ppm以下である。
Al元素の質量割合が上記範囲であることにより、ガラス転移温度、融点、及び耐熱性、熱溶融時安定性に優れたPAEK樹脂を調整することが可能となる。これは、Al元素のルイス酸性によりPAEK樹脂中のカルボニル基又は酸素官能基と強い相互作用を示すことに由来し、PAEK樹脂本来のミクロブラウン運動を助長する為と考えられる。また、Al元素が結晶核となり、融点(Tm)に影響を及ぼすためと考えられる。さらには、上記ルイス酸性によりPAEK樹脂中のカルボニル基又は酸素官能基と強い相互作用を示すことで、熱溶融時の分子鎖間又は分子鎖内での分解又は架橋を促進することで熱溶融時安定性に影響を及ぼすためと考えられる。特筆すべき理由は定かではないが、Al元素が残留することでPAEK樹脂を加熱することで何らかの揮発成分が生じ又はこの揮発成分の分解によってさらなる副次的なPAEK樹脂の分解が促進され、耐熱性に影響を及ぼすものと推定される。
【0033】
本実施形態のPAEK樹脂100質量%中の、Cl元素の残存質量割合は、1000質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500質量ppm以下、さらに好ましくは100質量ppm以下である。
Cl元素の質量割合が上記範囲であることにより、ガラス転移温度、融点、及び耐熱性、熱溶融時安定性に優れたPAEK樹脂を調整することが可能となる。これは、Cl元素のルイス塩基によりPAEK樹脂中のカルボニル基又は酸素官能基と強い相互作用を示すことに由来し、PAEK樹脂本来のミクロブラウン運動を助長する為と考えられる。また、Cl元素が結晶核となり、融点(Tm)に影響を及ぼすためと考えられる。さらには、上記ルイス塩基によりPAEK樹脂中のカルボニル基又は酸素官能基と強い相互作用を示すことで、熱溶融時の分子鎖間又は分子鎖内での分解又は架橋を促進することで熱溶融時安定性に影響を及ぼすためと考えられる。特筆すべき理由は定かではないが、Cl元素が残留することでPAEK樹脂を加熱することで何らかの揮発成分が生じ又はこの揮発成分の分解によってさらなる副次的なPAEK樹脂の分解が促進され、耐熱性に影響を及ぼすものと推定される。さらには、Cl元素が残留することで副次的に生成しうる塩化水素などを含む酸性成分がPAEK樹脂のガラス転移温度、融点、及び耐熱性、熱溶融時安定性に対して影響を及ぼすためとも推測できる。
【0034】
(ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法)
本実施形態のPAEK樹脂の製造方法は、上述の本実施形態のPAEK樹脂を製造できる方法であれば特に限定されない。
中でも、本実施形態のPAEK樹脂の製造方法は、モノマー(2-1)及び/又はモノマー(2-2)と、モノマー(2-5)、モノマー(2-6)及びモノマー(2-7)からなる群から選択される少なくとも一種のモノマーとを含み、さらにモノマー(2-3)、モノマー(2-4)およびモノマー(2-8)を含んでいてもよいモノマー成分を、触媒及び溶媒の存在下で反応させる方法(本明細書において、「製造方法(I)」と称する場合がある)が好ましい。
上記触媒としては、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、塩化第二鉄、臭化第二鉄、臭化アルミニウム、四塩化チタン、塩化ガリウム、六塩化モリブデン、塩化亜鉛、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化リチウム、五酸化二リン、リン酸、酢酸無水物、トリクロロ酢酸無水物、式(3-2)で表されるフッ素原子含有酢酸無水物、無水硫酸、発煙硫酸、式(3-3)で表されるフッ素原子含有スルホン酸無水物等が使用可能であるが、反応効率の観点、ポリマー中における望まない副反応や望まない位置で架橋することを含む共有結合の生成を低減させる観点、不純物が低減する観点、および再生が困難な廃棄物削減の観点から、フッ素原子含有酢酸無水物、フッ素原子含有スルホン酸無水物が好ましく、式(3-2)で表されるフッ素原子含有酢酸無水物、式(3-3)で表されるフッ素原子含有スルホン酸無水物がより好ましい。
上記溶媒としては、ジクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ベンゾフェノン、ジフェニルスルホン、ジベンゾスルホラン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、メタンスルホン酸、リン酸、式(3-4)で表されるフッ素原子含有酢酸、式(3-1)で表されるフッ素原子含有スルホン酸等が使用可能であるが、反応効率の観点、及び不純物が低減する観点から、式(3-4)で表されるフッ素原子含有酢酸、フッ素原子含有スルホン酸が好ましく、式(3-1)で表されるフッ素原子含有スルホン酸がより好ましい。
【化22】
(式中のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはOH基である。中でもOH基が好ましい。)
【化23】
(式中のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはOH基である。中でもOH基が好ましい。)
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
(式中のR
1及びR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基又は炭素数1~8のアルキル基である。)
【化31】
(式中のR
1及びR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基又は炭素数1~8のアルキル基である。)
【化32】
(式中のR
1及びR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基又は炭素数1~8のアルキル基である。)
【化33】
(式中のR
1及びR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基又は炭素数1~8のアルキル基である。)
【0035】
上記製造方法は、溶液中でのフリーデルクラフツ反応型の芳香族求電子置換重縮合反応であることが好ましい。上記芳香族求電子置換重縮合反応であることにより、他の重合条件よりも比較的温和な重合条件で反応させることができる。
本実施形態の製造方法は、上記モノマー成分に対して、触媒及び溶媒(好ましくは、上記フッ素原子含有スルホン酸と、上記フッ素原子含有酢酸無水物又は上記フッ素原子含有スルホン酸無水物)を添加し、昇温させ、撹拌することでPAEK樹脂を製造することができる。
【0036】
本実施形態の製造方法において、反応温度は0℃以上160℃未満であることが好ましい。また、総反応時間は、0.5~100時間であることが好ましい。
反応温度の経時的、逐次的な変更や反応時間の長時間化は、未反応のモノマーの消費やより高分子量のポリマーを重合するなどの一般的な観点から製造目的とするポリマーの物性を著しく低下させない変更に関しては何ら制限されるものではない。
【0037】
上記モノマー及び/又は後述のオリゴマー成分に対して、触媒及び溶媒(好ましくは上記フッ素原子含有スルホン酸と、上記フッ素原子含有酢酸無水物又は上記フッ素原子含有スルホン酸無水物)を添加し、反応させる方法において、反応温度が0℃以上であると、得られるポリマーはそれぞれ溶解度が低くなりにくく、析出しにくくなり、反応が途中で止まりにくい。そのため、GPC換算の数平均分子量Mnが高い(例えば3000以上、好ましくは4000以上)のPAEK樹脂を得ることができ、成形加工した際の力学物性、耐熱性に優れる。
【0038】
上記モノマー(2-5)、(2-6)は、単一化合物であってもよいし、異性体の混合物であってもよい。
例えば、モノマー(2-5)は、ジベンゾフランに由来する構造の酸素原子と、該ジベンソフランに由来する構造と結合する芳香族ジカルボン酸に由来する構造のカルボニル基とが、ともにパラ位に配置されるモノマー(後述の式6-2、パラパラ体)、一方がパラ位で他方がメタ位に配置されるモノマー(後述の式6-3)、ともにメタ位に配置されるモノマー(後述の式6-4)、一方がパラ位で他方がオルト位に配置されるモノマー(後述の式6-5)等の異性体から選択される2以上の混合物であってよい。上記混合物は、得られるPAEK樹脂の分子量の制御が容易となる観点、該PAEK樹脂の結晶性、融点、ガラス転移温度の制御が容易となる点から、パラパラ体のモル割合が30モル%以上であることが好ましく、より好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上である。
【0039】
上記フッ素原子含有スルホン酸としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ペンタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等があげられ、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ペンタフルオロプロパンスルホン酸が好ましい。上記フッ素原子含有スルホン酸は、一種を単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0040】
上記フッ素原子含有酢酸としては、例えば、モノフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ヘプタフルオロ酪酸等があげられ、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸が好ましい。上記フッ素原子含有酢酸は、一種を単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0041】
上記フッ素原子含有酢酸無水物としては、例えば、モノフルオロ酢酸無水物、ジフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、ヘプタフルオロ酪酸無水物等があげられ、ジフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物が好ましい。上記フッ素原子含有酢酸無水物は、一種を単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記フッ素原子含有スルホン酸無水物としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ペンタフルオロエタンスルホン酸無水物、ペンタフルオロプロパンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸無水物、ベンゼンスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物等があげられ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ペンタフルオロエタンスルホン酸無水物、ペンタフルオロプロパンスルホン酸無水物が好ましい。上記フッ素原子含有スルホン酸無水物は、一種を単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0043】
上記フッ素原子含有スルホン酸と、上記フッ素原子含有酢酸無水物又は上記フッ素原子含有スルホン酸無水物との添加量の割合は、モル比で[フッ素原子含有スルホン酸]:[フッ素原子含有酢酸無水物又はフッ素原子含有スルホン酸無水物]=100:95~100:5の範囲であることが好ましく、100:90~100:10の範囲であることがより好ましい。
また、上記溶媒と上記触媒とのモル比は、[溶媒]:[触媒]=100:95~100:5の範囲であってよく、100:90~100:10の範囲であってよい。
【0044】
上記フッ素原子含有スルホン酸、上記フッ素原子含有酢酸無水物及び上記フッ素原子含有スルホン酸無水物の合計の添加量と、上記モノマー成分である(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-4)、(2-5)、(2-6)、(2-7)、(2-8)の合計の添加量との割合は、モル比で、[フッ素原子含有スルホン酸、フッ素原子含有酢酸無水物及びフッ素原子含有スルホン酸無水物の合計モル]:[上記モノマー成分である(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-4)、(2-5)、(2-6)、(2-7)、(2-8)の合計モル]=100:95~100:5の範囲であることが好ましく、100:90~100:10の範囲であることがより好ましい。
【0045】
上記製造方法(I)において、上記モノマー成分に加えオリゴマー成分を添加してもよい。上記オリゴマー成分としては、例えば一般式(5-1)、(5-2)、(5-3)、(5-4)で表されるオリゴマーが好ましい。上記オリゴマー成分は、一種を単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、上記モノマー成分の代わりに一般式(5-1)、(5-2)、(5-3)、(5-4)で表されるオリゴマーを用いることもできる。なお、オリゴマー(5-1)、(5-2)、(5-3)、(5-4)は、モノマー(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-4)、(2-5)、(2-6)、(2-7)、(2-8)を含まないものとする。
【化34】
(式中のE
1及びE
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、OH基、-C
6H
4-O-C
6H
4X、-C
12H
6OX、-CO-C
6H
4-O-C
6H
4X、-CO-C
6H
4-COX、-C
6H
4-COXであり、nは1~8の整数、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子、OH基、-COOH基、-COF、-COCl、-COBrである。)
【化35】
(式中のE
1及びE
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、OH基、-C
6H
4-O-C
6H
4X、-C
12H
6OX、-CO-C
6H
4-O-C
6H
4X、-CO-C
6H
4-COX、-C
6H
4-COXであり、nは1~8の整数、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子、OH基、-COOH基、-COF、-COCl、-COBrである。)
【化36】
(式中のE
1及びE
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、OH基、-C
6H
4-O-C
6H
4X、-C
12H
6OX、-CO-C
6H
4-O-C
6H
4X、-CO-C
6H
4-COX、-C
6H
4-COXであり、nは1~8の整数、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子、OH基、-COOH基、-COF、-COCl、-COBrである。)
【化37】
(式中のE
1及びE
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、OH基、-C
6H
4-O-C
6H
4X、-C
12H
6OX、-CO-C
6H
4-O-C
6H
4X、-CO-C
6H
4-COX、-C
6H
4-COXであり、nは1~8の整数、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子、OH基、-COOH基、-COF、-COCl、-COBrである。)
【0046】
オリゴマー成分(例えば、上記(5-1)~(5-4)のオリゴマー)を用いる製造方法も、溶液中でのフリーデルクラフツ反応型の芳香族求電子置換重縮合反応であることが好ましい。上記芳香族求電子置換重縮合反応であることにより、比較的温和な重合条件で反応させることができる。
具体的には、たとえば一般式(5-1)、(5-2)、(5-3)、(5-4)で表されるオリゴマー成分と上記モノマー成分を、溶媒と触媒(好ましくは、上記フッ素原子含有スルホン酸と、上記フッ素原子含有酢酸無水物又は上記フッ素原子含有スルホン酸無水物)の存在下で反応させ、昇温させ、撹拌することでPAEK樹脂を製造することができる。
なお、本実施形態のPAEK樹脂は、オリゴマー成分(5-1)及び/又は(5-3)とオリゴマー成分(5-2)及び/又は(5-4)とを、上記モノマー成分の代わりに用いることで製造することも可能である。
反応温度は0℃以上160℃未満であることが好ましい。また、総反応時間は、0.5~100時間であることが好ましい。反応温度の経時的、逐次的な変更や反応時間の長時間化は、未反応のモノマーの消費やより高分子量のポリマーを重合するなどの一般的な観点から製造目的とするポリマーの物性を著しく低下させない変更に関しては何ら制限されるものではない。
【0047】
上記モノマー、又は上記オリゴマー、又は上記モノマーと上記オリゴマーとの混合物に、上記フッ素原子含有スルホン酸と、上記フッ素原子含有酢酸無水物又は上記フッ素原子含有スルホン酸無水物とを添加し反応させる方法に対して、上記フッ素原子含有スルホン酸、上記フッ素原子含有酢酸無水物及び上記フッ素原子含有スルホン酸無水物の代わりに有機スルホン酸としてメタンスルホン酸やエタンスルホン酸をそれぞれ単独で用いた場合、上記モノマー、上記オリゴマー、一般式(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)を含むポリマーの溶解度が低く、析出してしまうことによって反応速度が著しく鈍化又は反応停止する。そのため、GPC換算の数平均分子量Mnが2000以下のPAEK樹脂を生じることとなり、成形加工した際の力学物性が低下しやすくなる傾向がある。また、耐熱性が低下する傾向がある。ただし、この反応速度低下又は上記モノマー、上記オリゴマーの溶解性不良は有機スルホン酸としてメタンスルホン酸やエタンスルホン酸をそれぞれ単独で用いた場合に特徴的であり、一般式(3-1)で示されるフッ素原子含有スルホン酸又は一般式(3-4)で示されるフッ素原子含有カルボン酸を添加することで改善する。これら(3-1)又は(3-4)の添加量は、反応に使用する仕込みの全スルホン酸量に対して1モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上である。
【化38】
(式中のR
1及びR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基又は炭素数1~8のアルキル基である。)
【化39】
(式中のR
1及びR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基又は炭素数1~8のアルキル基である。)
【0048】
本実施形態のPAEK樹脂は、ニートレジンとしての使用の他にも、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維、フッ素樹脂等をコンパウンドして複合材料としての使用が可能である。
本実施形態のPAEK樹脂は成形加工することで、ペレット、フィルム、ロッド、ボード、フィラメント等の一次加工品や、各種射出成形品あるいは切削加工品により、例えば、ギア、コンポジット、インプラント、3Dプリント成形品等の二次加工品とすることができる。
【0049】
(組成物)
本実施形態の組成物は、上述の本実施形態のPAEK樹脂を少なくとも含み、さらに他樹脂や添加剤を含んでいてよい。上記組成物は、例えば、成形材料として用いることができる。
【0050】
(成形品)
本実施形態の成形品は、上述の本実施形態のPAEK樹脂を少なくとも含み、さらに他の添加剤を含んでいてよい。上記成形体は、例えば上記組成物を成形して得ることができる。
本実施形態の成形品は、特にその用途を限定するものではないが、従来のPEAK樹脂成形品の用途である、自動車、航空機等の他にも、極めて強い耐薬品性が求められる電気電子材料や、健康・安全上を考慮する必要が特に高い医療用部材等での利用が可能である。
【0051】
(芳香族ジケトン化合物)
本実施形態の芳香族ジケトン化合物は、上記一般式(2-5)又は(2-6)で表される化合物である。
上記芳香族ジケトン化合物は、本実施形態のPAEK樹脂の重合の際のモノマー成分として用いることができる。本実施形態のPAEK樹脂の製造において、上記芳香族ジケトン化合物を用いることにより、繰り返し単位(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)の割合が高い樹脂を得ることができる。また、繰り返し単位(1-3)と、繰り返し単位(1-4)のモル割合を目的の割合に制御しやすくなる。
【0052】
上記芳香族ジケトン化合物は、式(2-5)で表される化合物の異性体の混合物、又は式(2-6)で表される化合物の異性体の混合物であってもよい。
上記混合物において、PAEK樹脂として重合した際に得られる樹脂の結晶性が向上する観点から、下記式(4-1)又は(4-2)で表される化合物を含むことが好ましく、上記混合物である芳香族ジケトン化合物100質量%に対して下記式(4-1)又は(4-2)で表される化合物を0.1~99.9質量%含むことが好ましく、10~70質量%含むことがより好ましい。
【化40】
【化41】
【0053】
上記芳香族ジケトン化合物は、該化合物を使用した反応に関する位置選択性を含む反応性調節、反応効率、さらには上記ジケトン化合物を任意の溶媒に溶解さえた際の溶液粘度が上昇する、該ジケトン化合物が反応する条件で反応してしまう為に反応剤を余分に消費してしまう、そして結果的に副生成物を生じてしまう観点から、残存するジベンゾフランが少ないことが好ましい。
上記芳香族ジケトン化合物100質量%に対する式(2-7)で表される化合物の残存質量割合は、10000質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは5000質量ppm以下、さらに好ましくは1000質量ppm以下である。
【0054】
上記芳香族ジケトン化合物は、該化合物を使用した反応に関する位置選択性を含む反応性調節、反応効率、さらには上記ジケトン化合物を任意の溶媒に溶解さえた際の溶液粘度が上昇する観点から、残存するアルミニウム元素が少ないことが好ましい。
上記芳香族ジケトン化合物100質量%に対するアルミニウム元素の残存質量割合は、1000質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500質量ppm以下、さらに好ましくは100質量ppm以下である。
【0055】
上記芳香族ジケトン化合物は、該化合物を使用した反応に関する位置選択性を含む反応性調節、反応効率の観点から、残存する塩素元素が少ないことが好ましい。
上記芳香族ジケトン化合物100質量%に対する塩素元素の残存質量割合は、1000質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500質量ppm以下、さらに好ましくは100質量ppm以下である。
【実施例0056】
以下に実施例を挙げて本発明の詳細をさらに述べるが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
(評価)
[ガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)及び結晶融解エンタルピー変化(ΔH)]
実施例及び比較例にて得たPAEK樹脂について、NETZSCH製DSC装置(DSC3500)を用いて、アルミニウムパンに重合後に特別な熱処理をしていない状態の試料5mgを採取したのち、20mL/minの窒素気流下、20℃/minの昇温条件で50℃から400℃までの測定を行い、20℃/minの条件で400℃から50℃まで降温する条件プログラムにより測定した。ガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)は、上記の昇温条件で50℃→400℃→50℃のサイクルで測定開始してから2周目のプログラムサイクルに検出されるガラス転移点の中点、結晶融点及び結晶化温度のピークのピークトップの温度として求めた。また、2周目のプログラムサイクルに検出される結晶融解エンタルピー変化(ΔH)(J/g)を求めた。
【0058】
[熱重量減少率]
実施例及び比較例にて得たPAEK樹脂について、NETZSCH製TGA装置(TG-DTA2500)を用いて、深底アルミニウムパンに重合後に200℃で8時間真空乾燥した試料10mgを採取したのち、20mL/minの窒素気流下、20℃/minの昇温条件で30℃から400℃までの測定を行い、400℃で30min保持する条件プログラムにより測定した。本測定より求められる熱重量減少率は測定開始点である30℃の重量と測定終点である、昇温プログラム後である400℃での30min保持点での重量差の割合から算出される。
この値から0に近いほどPAEK樹脂の耐熱性が高く、PAEK樹脂中からの分解及び揮発成分が少ないことを示し、100に近いほどPAEK樹脂の耐熱性が低く、PAEK樹脂中からの分解及び揮発成分が多いことを示している。
【0059】
[数平均分子量(Mn)]
実施例及び比較例にて得たPAEK樹脂について、東ソー株式会社製GPC装置(HPLC8320)を使用し、装置コントロールソフトには、HLC-83220GPC EcoSEC System Control Version1.14を使用し、検出器には同装置標準装備のRI検出器を用い、溶離液にトリフルオロ酢酸ナトリウム塩を0.4質量%溶解させたヘキサフルオロイソプロパノールを用いて、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、分子量分布Mw/Mnを測定した。カラムはShodex KF-606Mを用いて測定した。標準物質にはポリメタクリル酸メチル(PMMA)を使用した。測定結果の解析はHLC-83220GPC EcoSEC Data Analysis Version1.15を用い、ベースラインはクロマトグラフのピークの立ち上がりベースラインから立下りベースラインまでで引き、得られたピークよりそれぞれ数平均分子量Mnを標準物質のPMMA検量線(アジレント社、EasiVial)より換算して算出した。
【0060】
[NMRによるPAEK樹脂中の繰り返し単位の定量]
実施例及び比較例にて得たPAEK樹脂について、CDCl3-重水素化トリフルオロ酢酸にPAEK樹脂を溶解させ、日本電子製NMR装置(ECZ-500)を使用し、1Hを観測核として、待ち時間5秒、測定温度25℃、積算回数1024回、標準7.25ppm(残留クロロホルムシグナル)の条件で測定し、それぞれポリマー中の繰り返し単位(1-1)及び繰り返し単位(1-2)のモル割合、繰り返し単位(1-3)及び繰り返し単位(1-4)のモル割合(モル%)を算出した。
【0061】
[元素分析]
実施例及び比較例にて得たPAEK樹脂又はオリゴマー試料約0.1gをテトラフルオロメタキシール(TFM)製分解容器に精秤し、硫酸及び硝酸を加えて、マイクロウェーブ分解装置で加圧酸分解を行った。得られた分解液を50mLに定容して、ICP-MS測定に供した。ICP-MS測定には、アジレント・テクノロジー社製装置(Agilent 7900)を使用し、アルミニウム元素を定量した。また、塩素元素の分析にはDionex社イオンクロマトグラフ(ICS-1500)を使用して定量した。
なお、表中「ND」は検出限界以下を表す。
【0062】
[耐薬品性]
実施例及び比較例にて得たPAEK樹脂について、蓋つきガラス製容器にPAEK樹脂100mgをそれぞれ秤量し、50mLのHFIPを加えて蓋を閉め、40℃に加温しながら10時間振とうし、それぞれ完全に溶解させた。これらの溶液を500mLの蒸留水に攪拌しながらゆっくりと加えてPAEK樹脂を沈殿させた。ろ過により回収し、風乾させた後、沈殿として得られた粉末を蒸留水、エタノールでそれぞれ洗浄を2回繰り返した。続いて100℃で5時間、続いて200℃で8時間真空乾燥させた。乾燥させたサンプル5mgを蓋つきガラス製容器にそれぞれ秤量し、1mLのHFIPを加えて蓋を閉め、50℃に加温しながら振とうした。この時、振とうし始めからサンプルが完全に溶解するまでの時間を基にして、各々のサンプルの薬品耐性を評価した。上記溶解にかかる時間が60分以上であるものを評価◎(優れる)、30分以上60分未満であるものを〇(普通)、10分以上30分未満であるものを△(劣る)、10分未満であるものを×(極めて劣る)として評価した。
【0063】
[熱処理後に生じうる溶媒不要成分生成量]
実施例及び比較例にて得たPAEK樹脂について、蓋つきガラス製容器にPAEK樹脂10gをそれぞれ秤量し、500mLのCHCl3:トリフルオロ酢酸(重量比で4:1)を加えて蓋を閉め、40℃に加温しながら10時間振とうし、それぞれ完全に溶解させた。これらの溶液を2Lの蒸留水に攪拌しながらゆっくりと加えてPAEK樹脂を沈殿させた。ろ過により回収し、風乾させた後、沈殿として得られた粉末を蒸留水、エタノールでそれぞれ洗浄を2回繰り返した。続いて、100℃で5時間、続いて200℃で8時間真空乾燥させた。上記操作にて得られた乾燥PAEK粉末を5.000gアルミニウム製の容器に秤量し、真空電気炉400℃にて減圧下で2時間加熱した。30℃まで電気炉を冷却後に窒素を用いて常圧に戻した。この際にアルミニウム製の容器の中に残留した溶融樹脂重量を秤取った。1.000gを蓋つきガラス製容器に秤取り、100mLのCHCl3:トリフルオロ酢酸(重量比で4:1)を加えて蓋を閉め、40℃に加温しながら10時間振とうした。この時、不溶分が生じたサンプルは不溶分をろ過によって回収し、蒸留水、エタノールでそれぞれ洗浄を2回繰り返した。続いて、100℃で5時間、続いて200℃で8時間真空乾燥させた。上記溶融樹脂重量である1.000gと乾燥させた不溶サンプル重量から計算される割合が1%以下であるものを評価◎(優れる)、1%より大きく3%以下であるものを〇(優れる)、3%より大きく5%以下であるものを△(劣る)、5%より大きいものを×(極めて劣る)として評価した。
【0064】
[GC]
実施例及び比較例にて得たオリゴマーの分析は、GC/MS Agilent7890Agilent5975を使用し以下の条件で行った。
・カラム HP-5MS(L 30m、ID 0.250mm、Film 0.25μm)
・キャリア ヘリウム
・検出器 MSD
・イオン化法 EI
・オーブン温度 40℃(5min hold)→20℃/min→320℃(10min hold)
・注入口温度 250℃
・トランスファー温度 320℃
・質量範囲 m/z 10-800
・注入モード スプリットレス
・注入量 1μL
・測定モード SIM
【0065】
(実施例1A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマー(6-2)233.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが6500であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【化42】
【化43】
【0066】
(実施例2A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)705.0mg、オリゴマー(6-2)466.5mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが7000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【0067】
(実施例3A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸354.0mg、イソフタル酸62.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマー(6-2)233.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸4555.4mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが7200であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【0068】
(実施例4A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸291.0mg、イソフタル酸125.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマー(6-2)233.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸4555.4mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが6900であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【0069】
(実施例5A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸291.0mg、イソフタル酸125.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマー(6-2)233.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸4555.4mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌し、その後、100℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが12000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【0070】
(実施例6A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸291.0mg、イソフタル酸125.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマー(6-2)233.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸4555.4mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌し、その後、150℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが29900であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【0071】
(実施例7A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、ジベンゾフラン84.1mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが7500であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【0072】
(実施例8A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、ジベンゾフラン168.2mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが5000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【0073】
(実施例9A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマー(6-2)とオリゴマー(6-3)とオリゴマー(6-4)をそれぞれ60:35:5の重量比で合計で233.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが6800であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【化44】
【化45】
【0074】
(実施例10A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマー(6-2)とオリゴマー(6-3)とオリゴマー(6-4)とオリゴマー(6-5)をそれぞれ60:34:5:1の重量比で合計で233.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。オリゴマー(6-2)には後述のオリゴマーDを、オリゴマー(6-3)には後述のオリゴマーEを、オリゴマー(6-4)には後述のオリゴマーFを、オリゴマー(6-5)には後述のオリゴマーGをそれぞれ用いた。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが7000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【化46】
【0075】
(実施例11A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸ジクロリド508.0mg、ジクロロベンゼン4433mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で1時間撹拌し溶解させ、溶液温度を0℃~5℃で保ちながらAlCl31545mgをゆっくりと加え、5℃で1時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマー(6-2)233.0mg、オルトジクロロベンゼン4433mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌し溶解させた(第二反応)。第一反応混合物に対して0℃~5℃を保ち、第二反応化合物を添加した。その後、90℃まで昇温させ1時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌しながら1M塩酸100mLにゆっくりと注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した(重合停止回収操作)。ろ別したポリマーについてウエットの状態で1M塩酸100mLを入れたナスフラスコへ入れ、80℃で1時間攪拌した。酸性溶液を室温まで冷却しろ過を行い、1M塩酸20mLでさらに洗浄し風乾した。風乾したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液100mLを入れたナスフラスコへ入れ、室温で1時間攪拌し、ろ別した。ろ別したポリマー中に残留した塩基成分を除くために蒸留水で2回洗浄した。ろ別したポリマーについてウエットの状態でエタノール100mLを入れたナスフラスコへ入れ、60℃で1時間攪拌し、ろ別し、ポリマー中に残留した成分を除くために蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが5000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【0076】
(実施例12A)
実施例11Aと同様の操作にて、重合停止回収操作まで行った。
さらに、ろ別したポリマーについてウエットの状態で1M塩酸100mLを入れたナスフラスコへ入れ、80℃で1時間攪拌した。酸性溶液温度を80℃に保ちながらろ過を行い、50℃の1M塩酸20mLでさらに2回洗浄し風乾した。風乾したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液100mLを入れたナスフラスコへ入れ、室温で1時間攪拌し、ろ別した。ろ別したポリマー中に残留した塩基成分を除くために蒸留水で2回洗浄した。ろ別したポリマーについてウエットの状態でエタノール100mLを入れたナスフラスコへ入れ、60℃で1時間攪拌し、ろ別し、ポリマー中に残留した成分を除くために蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが5000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表1に示す。
【0077】
(実施例13A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸291.2mg、イソフタル酸124.8mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)705.0mg、オリゴマー(6-2)とオリゴマー(6-3)とオリゴマー(6-4)をそれぞれ60:35:5の重量比で合計で466.5mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが7000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表2に示す。
【0078】
(実施例14A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸249.6mg、イソフタル酸166.4mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)1117.5mg、オリゴマー(6-2)とオリゴマー(6-3)とオリゴマー(6-4)をそれぞれ60:35:5の重量比で合計で58.3mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが8000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表2に示す。
【0079】
(実施例15A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸208.0mg、イソフタル酸208.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)1117.5mg、オリゴマー(6-2)とオリゴマー(6-3)とオリゴマー(6-4)をそれぞれ60:35:5の重量比で合計で58.3mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが6500であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表2に示す。
【0080】
(実施例16A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)588.2mg、オリゴマー(6-2)とオリゴマー(6-3)とオリゴマー(6-4)をそれぞれ60:35:5の重量比で合計で583.1mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが7200であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表2に示す。
【0081】
(実施例17A)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸208.0mg、イソフタル酸208.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)588.2mg、オリゴマー(6-2)とオリゴマー(6-3)とオリゴマー(6-4)をそれぞれ60:35:5の重量比で合計で583.1mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが6800であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表2に示す。
【0082】
(実施例18A)
実施例11Aと同様の操作にて、重合停止回収操作まで行った。
さらに、ろ別したポリマーについてウエットの状態で1M水酸化ナトリウム水溶液100mLを入れたナスフラスコへ入れ、室温で1時間攪拌し、ろ別した。ろ別したポリマー中に残留した塩基成分を除くために蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが5000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表2に示す。
【0083】
(実施例19A)
実施例11Aと同様の操作にて、重合停止回収操作まで行った。
さらに、ろ別したポリマーについてウエットの状態で1M水酸化ナトリウム水溶液100mLを入れたナスフラスコへ入れ、室温で1時間攪拌し、ろ別した。ろ別したポリマー中に残留した塩基成分を除くために蒸留水で2回洗浄した。ろ別したポリマーについてウエットの状態でエタノール100mLを入れたナスフラスコへ入れ、60℃で1時間攪拌し、ろ別し、ポリマー中に残留した成分を除くために蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが5000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表2に示す。
【0084】
(実施例20A)
実施例11Aと同様の操作にて、重合停止回収操作まで行った。
さらに、濾別したポリマーを1M塩酸100mLに加え室温で1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーについてウエットの状態で1M水酸化ナトリウム水溶液100mLを入れたナスフラスコへ入れ、室温で1時間攪拌し、ろ別した。ろ別したポリマー中に残留した塩基成分を除くために蒸留水で2回洗浄した。ろ別したポリマーについてウエットの状態でエタノール100mLを入れたナスフラスコへ入れ、60℃で1時間攪拌し、ろ別し、ポリマー中に残留した成分を除くために蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが5000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表2に示す。
【0085】
(実施例21A)
[オリゴマーI使用した重合]
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマー(6-2)とオリゴマー(6-3)とオリゴマー(6-4)とオリゴマー(6-5)をそれぞれ69:13:12:6のモル比で含むオリゴマーIを233.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが3800であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表2に示す。
【0086】
(実施例22A)
[オリゴマーJ使用した重合]
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマー(6-2)とオリゴマー(6-3)とオリゴマー(6-4)とオリゴマー(6-5)をそれぞれ69:13:12:6のモル比で含むオリゴマーJを233.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが3700であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表2に示す。
【0087】
(実施例23A)
[オリゴマーK使用した重合]
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマー(6-2)とオリゴマー(6-3)とオリゴマー(6-4)とオリゴマー(6-5)をそれぞれ69:13:12:6のモル比で含むオリゴマーKを233.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが3850であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表2に示す。
【0088】
(実施例1B)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸332.3mg、トリフルオロメタンスルホン酸9.331g、トリフルオロ酢酸無水物9.331gを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、ジベンゾフラン10.092g、脱水クロロホルム30.000gを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第二反応混合物を0℃で第一反応化合物を添加した。その後、25℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み析出させ、1時間攪拌し、ろ過した(反応停止回収操作)。ろ別したウエット状態のポリマーを風乾させ、さらに170℃の真空下で8時間乾燥させオリゴマー(A)を得た。
得られたオリゴマーを上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表4に示す。
【0089】
(実施例2B)
実施例1Bと同様の操作にて、反応停止回収操作まで行った。
ろ別したウエット状態のままの析出体をポリプロピレン製容器に入れ、エタノール500mL加えて、室温で1時間攪拌した。これをろ過し、同じ操作を2回繰り返した。ろ液は後の操作の為に回収した(ろ液F)。その後、ろ別した固体を室温で一晩風乾させ、さらに170℃の真空下で8時間乾燥させオリゴマー(B)を得た。
得られたオリゴマーを上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表4に示す。
【0090】
(実施例3B)
実施例1Bと同様の操作にて、反応停止回収操作まで行った。
ろ別したウエット状態のままの析出体をポリプロピレン製容器に入れ、エタノール500mL加えて、室温で1時間攪拌した。これをろ過し、同じ操作を2回繰り返した。ろ液は後の操作の為に回収したその後、ろ別した固体を室温で一晩風乾させ、ナスフラスコに入れ、CHCl3:トリフルオロ酢酸(重量比で4:1)から再結晶し、結晶部分を室温で一晩風乾させ、さらに170℃の真空下で8時間乾燥させオリゴマー(C)を得た。
得られたオリゴマーを上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表4に示す。
【0091】
(実施例4B)
実施例1Bと同様の操作にて、反応停止回収操作まで行った。
ろ別したウエット状態のままの析出体をポリプロピレン製容器に入れ、エタノール500mL加えて、室温で1時間攪拌した。これをろ過し、同じ操作を2回繰り返した。ろ液は後の操作の為に回収したその後、ろ別した固体を室温で一晩風乾させ、ナスフラスコに入れ、CHCl3:トリフルオロ酢酸(重量比で4:1)から再結晶し、結晶部分を室温で一晩風乾させた。さらにCHCl3:トリフルオロ酢酸(重量比で3:1)同様の再結晶操作を3回繰り返し、結晶部分を室温で一晩風乾させ、さらに170℃の真空下で8時間乾燥させオリゴマー(D)を得た。
得られたオリゴマーを上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表4に示す。
【0092】
(実施例5B)
実施例3Bと同様の操作にて、オリゴマー(C)を再結晶にて得た際、固液分離の際に得られたろ液を0℃で1時間静置した。このろ液をろ過しより固液分離した。液体成分をエバポレーターで濃縮した。前記のろ過で得られた固体成分及びエバポレーター濃縮成分をそれぞれ170℃の真空下で8時間乾燥させることでオリゴマー(E)とオリゴマー(F)を得た。
得られたオリゴマーを上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表4に示す。
【0093】
(実施例6B)
実施例1Bと同様の操作にて、反応停止回収操作まで行い、ろ別したエタノールを含むろ液Fについて、エバポレーターで濃縮し、得られた固体をエタノールから再結晶した。さらに170℃の真空下で8時間乾燥させオリゴマー(G)を得た。
得られたオリゴマーを上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表4に示す。
【0094】
(実施例7B)
実施例1Bと同様の操作にて、反応停止回収操作まで行い、ろ別したエタノールを含むろ液Fについて、エバポレーターで濃縮し、得られた固体を90%エタノール水溶液から再結晶した。さらに170℃の真空下で8時間乾燥させオリゴマー(H)を得た。
得られたオリゴマーを上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表4に示す。
【0095】
(実施例8B)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、ジベンゾフラン1.68g 、テレフタル酸ジクロリド1.02g、ジクロロメタン133gを加えて溶解させた。 溶液温度を20℃~40℃で保ちながらAlCl32.00gをゆっくりと加え、25℃で1時間撹拌した。その後50℃で8時間加熱した。室温に戻した後、25℃まで冷却後、反応溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層に強撹拌しながら1M塩酸100mLにゆっくりと注ぎ込み、さらに有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ別後にエバポレータで濃縮した。得られた固体をエタノールで洗浄し、さらに170℃の真空下で8時間乾燥させオリゴマー(I)を得た。
得られたオリゴマーを上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表4に示す。
【0096】
(実施例9B)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、ジベンゾフラン1.68g 、テレフタル酸ジクロリド1.02g、ジクロロメタン133gを加えて溶解させた。 溶液温度を20℃~40℃で保ちながらAlCl32.00gをゆっくりと加え、25℃で1時間撹拌した。その後50℃で8時間加熱した。室温に戻した後、25℃まで冷却後、反応溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層に強撹拌しながら1M塩酸100mLにゆっくりと注ぎ込み、さらに有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ別後にエバポレータで濃縮した。得られた固体を50%エタノール水で洗浄し、さらに170℃の真空下で8時間乾燥させオリゴマー(J)を得た。
得られたオリゴマーを上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表4に示す。
【0097】
(実施例10B)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、ジベンゾフラン1.68g 、テレフタル酸ジクロリド1.02g、ジクロロメタン133gを加えて溶解させた。 溶液温度を20℃~40℃で保ちながらAlCl32.00gをゆっくりと加え、25℃で1時間撹拌した。その後50℃で8時間加熱した。室温に戻した後、25℃まで冷却後、反応溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層に強撹拌しながら1M塩酸100mLにゆっくりと注ぎ込み、さらに有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ別後にエバポレータで濃縮した。得られた固体を1M塩酸、50%エタノール水で洗浄し、さらに170℃の真空下で8時間乾燥させオリゴマー(K)を得た。
得られたオリゴマーを上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表4に示す。
【0098】
(比較例1)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)392.0mg、ジベンゾフラン280.3mg、トリフルオロメタンスルホン酸4555.4mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが4500であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表3に示す。
【0099】
(比較例2)
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)294.1Mg、ジベンゾフラン315.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸4555.4mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが8000であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表3に示す。
【0100】
(比較例3)
窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、テレフタル酸80gとイソフタル酸20g、トリフルオロメタンスルホン酸339g、トリフルオロ酢酸無水物315g、ジフェニルエーテル102gをこの順に仕込み、窒素雰囲気下、70℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ、ろ過した。さらに、ろ別したポリマーを蒸留水とエタノールで2回ずつ洗浄した。その後、ポリマーを160℃の真空下で8時間乾燥させた。
上記測定・評価の結果を表3に示す。
【0101】
(比較例4)
窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、テレフタル酸70gとイソフタル酸30g、トリフルオロメタンスルホン酸339g、トリフルオロ酢酸無水物315g、ジフェニルエーテル102gをこの順に仕込み、窒素雰囲気下、40℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ、ろ過した。さらに、ろ別したポリマーを蒸留水とエタノールで2回ずつ洗浄した。その後、ポリマーを160℃の真空下で8時間乾燥させた。
上記測定・評価の結果を表3に示す。
【0102】
(比較例5)
[酸クロリドモノマー及び無水塩化アルミニウム触媒を使用した重合例]
窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、テレフタル酸ジクロリド85gとイソフタル酸ジクロリド37gとジフェニルエーテル102g、o-ジクロロベンゼン525gを仕込み、窒素雰囲気下で5℃以下を保ちながら無水三塩化アルミニウム204gを加え、0℃で30分撹拌した。その後、o-ジクロロベンゼン2000gを加え、130℃で1時間撹拌し、室温まで冷却後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、残留した反応懸濁液を強撹拌した1M塩酸に注ぎ込み、ポリマーを析出させ、ろ過した。さらに、ろ別したポリマーを蒸留水とエタノールで2回ずつ洗浄した。
上記測定・評価の結果を表3に示す。
【0103】
(比較例6)
PEKK樹脂として、ARKEMA社製KEPSTAN7002:PEKKを用いた。上記測定・評価の結果を表3に示す。
【0104】
(比較例7)
PEKK樹脂として、Goodfellow社製:PEKKを用いた。上記測定・評価の結果を表3に示す。
【0105】
(比較例8)
[オリゴマーHを使用した重合]
窒素導入管及び撹拌装置を備えた3つ口フラスコに、テレフタル酸416.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸1138.9mg、トリフルオロ酢酸無水物1313.0mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で5時間撹拌した(第一反応)。窒素導入管、温度計、還流冷却管、及び撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、下記構造式で示されるオリゴマー(6-1)941.0mg、オリゴマーH233.0mg、トリフルオロメタンスルホン酸2277.7mgを仕込み、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した(第二反応)。第一反応混合物に対して25℃で第二反応化合物を添加した。その後、70℃まで昇温させ6時間撹拌した(第三反応)。25℃まで冷却後、反応溶液を強撹拌した蒸留水に注ぎ込み、ポリマーを析出させ1時間攪拌し、ろ過した。ろ別したポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液で2回、蒸留水で2回、エタノールで2回それぞれ洗浄した。その後、ポリマーを室温で一晩風乾させ、170℃の真空下で8時間乾燥させた。GPCを用いて分子量を測定したところ、Mnが2500であり、PAEK樹脂が得られていることを確認できた。
得られたPAEK樹脂を上記のとおり分析した。各種パラメータ及び分析の結果を表3に示す。
【0106】
実施例1A~23AのPAEK樹脂は、表1、2に示されるように165℃以上のガラス転移温度(Tg)、290℃以上の結晶融点(Tm)に調整することができ、市販のPAEK樹脂(表3、比較例3~7)以上に高いガラス転移温度を有する熱時剛性に優れた結晶性の樹脂である。例えば、高温での使用が要求されるPAEK樹脂用途においてガラス転移温度及び融点が高いことは、PAEK樹脂からなる部品、部材、完成品もしくは複合材料の熱時変形や劣化を抑制することができ、産業上有利に働く。
【0107】
実施例1A~23AのPAEK樹脂は耐薬品性評価において、完全溶解にかかった時間がそれぞれ比較例1~14と比較して向上していることがわかる。これらの結果は実施例1A~23Aの樹脂が結晶性であり、かつ一般式(1-4)で表される構造を含むことで剛直な骨格が組み込まれることで、耐薬品性が向上したと考えられる。これに対して比較例1~8では結晶性セグメントが十分発現しない、又は結晶性であっても上記の剛直な骨格を含まず、耐薬品性に劣ったと考えられる。これらはPAEK樹脂に対して耐薬品性が要求される用途に対して有効であり、産業上有利に働く。
さらには、実施例1A~23Aは熱処理後に生じうる溶媒不要成分生成量の評価結果において、不要成分の生成量が少ないことが判る。これは一般式(1-4)で表される構造を含むことで剛直な骨格が組み込まれることで、分子鎖間での反応性が低下し、熱分解挙動が抑制されたためと考えられ、結果として耐熱性が向上したものと考えられる。
【0108】
実施例1B~6Bおよび実施例10Bのオリゴマーは残留するAl元素量が実施例7B~9Bのオリゴマーと比較して低減されていることが判る。また、実施例1B~8Bのオリゴマーは残留するジベンゾフラン量が実施例9B、実施例10Bのオリゴマーと比較して低減されていることが判る。実施例7B~10Bのオリゴマーを用いてPAEK樹脂を重合した実施例21A~23Aは、熱重量減少率が比較的大きく、数平均分子量Mnが比較的小さいことが判る。これは原料として用いたオリゴマー中の残留するAl元素量又は残留するジベンゾフラン量が多いことに起因していると考えられる。詳細な原因は定かではないが、重縮合系のポリマー重合を実施するにあたってのモノマー成分のモル比は到達分子量を制御する重要な因子である。すなわち、これらの残留物が比較的多い場合には、モノマー比率のバランスが崩れるために重合反応中に反応活性末端が封止されることで数平均分子量Mnが小さくなると考えられる。また、これらの残留物はPAEK樹脂の耐熱性に影響を与えるとともに、結晶性樹脂の結晶化度低下又は変質を誘発すると考えられる。したがって、オリゴマーは残留アルミニウム量、残留モノマー量が一定値以下に抑えられることで、耐熱性、機械強度に対して有利に働くことを示しているものと考えられる。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】