(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151644
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E02F9/22 C
E02F9/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061379
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三崎 陽二
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB05
2D003BA01
2D003BB02
2D003BB12
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
(57)【要約】
【課題】操作性を向上するショベルを提供する。
【解決手段】下部走行体と、前記下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回させる旋回油圧モータと、作動油を供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから前記旋回油圧モータとへの作動油の供給を制御する方向制御弁と、前記方向制御弁を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記油圧ポンプのポンプ圧が所定の圧力以上のとき、前記方向制御弁のパイロット圧に関する制限をする、ショベル。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体と、
前記上部旋回体を旋回させる旋回油圧モータと、
作動油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから前記旋回油圧モータとへの作動油の供給を制御する方向制御弁と、
前記方向制御弁を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記油圧ポンプのポンプ圧が所定の圧力以上のとき、前記方向制御弁のパイロット圧に関する制限をする、
ショベル。
【請求項2】
操作者によって操作される電気レバーと、
前記制御部は、前記電気レバーの操作量が入力される、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記パイロット圧に関する制限は、前記パイロット圧の増加速度を制限する、
請求項1または請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記パイロット圧に関する制限は、前記ポンプ圧が増加するほど制限が大きくなる、
請求項1または請求項2に記載のショベル。
【請求項5】
前記パイロット圧に関する制限は、前記上部旋回体を旋回させる旋回操作を含む複合操作の際に実行される、
請求項1または請求項2に記載のショベル。
【請求項6】
前記パイロット圧に関する制限は、前記パイロット圧を割合制限する、
請求項1または請求項2に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載される運転室と、前記上部旋回体に取り付けられるブームを含むアタッチメントと、前記ブームを駆動するブームシリンダと、前記ブームシリンダに流入可能な作動油を制御する制御装置と、前記アタッチメントに関する情報を取得する情報取得装置と、を有し、前記制御装置は、ブーム上げ操作が行われる前に、前記アタッチメントに関する情報に応じて前記ブームシリンダに流入可能な作動油の圧力を増大させる、ショベルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2018-164238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上部旋回体の旋回動作とブーム上げ動作等のアタッチメント動作とを同時に操作する複合操作時において、上部旋回体の旋回動作のみを操作する旋回単独動作の場合と比較して、操作レバーの操作量に対する上部旋回体の旋回動作の旋回速度が大きくなる。このため、上部旋回体の旋回動作の操作性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、操作性を向上するショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回させる旋回油圧モータと、作動油を供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから前記旋回油圧モータとへの作動油の供給を制御する方向制御弁と、前記方向制御弁を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記油圧ポンプのポンプ圧が所定の圧力以上のとき、前記方向制御弁のパイロット圧に関する制限をする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作性を向上するショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るショベルの側面図である。
【
図3】
図1のショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
【
図4】旋回油圧モータに関する油圧システムの一部の図である。
【
図5】コントローラによる比例弁の制御を説明するフローチャートである。
【
図6】メインポンプのポンプ圧に対する制御弁のパイロット圧の増加制限を説明するグラフである。
【
図7】制御弁のパイロット圧の変化の一例を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100について説明する。
図1はショベル100の側面図であり、
図2はショベル100の上面図である。
【0010】
本実施形態では、ショベル100の下部走行体1はクローラ1Cを含む。クローラ1Cは、下部走行体1に搭載されている走行アクチュエータとしての走行油圧モータ2Mによって駆動される。具体的には、クローラ1Cは左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。左クローラ1CLは左走行油圧モータ2MLによって駆動され、右クローラ1CRは右走行油圧モータ2MRによって駆動される。
【0011】
下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。旋回機構2は、上部旋回体3に搭載されている旋回アクチュエータとしての旋回油圧モータ2Aによって駆動される。但し、旋回アクチュエータは、電動アクチュエータとしての旋回電動発電機であってもよい。
【0012】
上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例であるアタッチメントATを構成する。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、アタッチメントアクチュエータを構成している。
図1及び
図2に示す例では、バケット6は、掘削バケットであるが、スケルトンバケット又は(除礫バケット)であってもよい。また、バケット6は、バケットチルト機構を備えていてもよい。
【0013】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。キャビン10の内部には、操作装置26、コントローラ30、及び操作方式切換装置SD等が設けられている。また、上部旋回体3には、空間認識装置70等が取り付けられている。なお、本書では、便宜上、上部旋回体3における、アタッチメントATが取り付けられている側を前方とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後方とする。
【0014】
空間認識装置70は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を認識するように構成されている。また、空間認識装置70は、空間認識装置70又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。空間認識装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、撮像装置、LIDAR、距離画像センサ、赤外線センサ等、又はそれらの任意の組み合わせを含む。撮像装置は、例えば、単眼カメラ又はステレオカメラ等である。本実施形態では、空間認識装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた前方センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方センサ70Rを含む。上部旋回体3の上方の空間に存在する物体を認識する上方センサがショベル100に取り付けられていてもよい。
【0015】
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。操作装置26は、例えば、操作レバー及び操作ペダルを含む。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも1つを含む。
【0016】
操作方式切換装置SDは、操作レバーの操作方式を切り換えることができるように構成される。例えば、操作方式切換装置SDは、キャビン10内の右側コンソールに設けられた押しボタンスイッチを含み、押しボタンスイッチが押される度に、第1操作方式と第2操作方式との間で操作レバーの操作方式を切り換えることができるように構成される。例えば、第1操作方式は、左操作レバー26L(
図3参照。)が前方に倒されたときにアーム5が開かれ、左操作レバー26Lが後方に倒されたときにアーム5が閉じられ、左操作レバー26Lが左方に倒されたときに左旋回が実行され、且つ、左操作レバー26Lが右方に倒されたときに右旋回が実行されるように構成されている。また、第1操作方式は、右操作レバー26R(
図3参照。)が前方に倒されたときにブーム4が下げられ、右操作レバー26Rが後方に倒されたときにブーム4が上げられ、右操作レバー26Rが左方に倒されたときにバケット6が閉じられ、且つ、右操作レバー26Rが右方に倒されたときにバケット6が開かれるように構成されている。一方で、第2操作方式は、左操作レバー26L(
図3参照。)が前方に倒されたときに右旋回が実行され、左操作レバー26Lが後方に倒されたときに左旋回が実行され、左操作レバー26Lが左方に倒されたときにアーム5が開かれ、且つ、左操作レバー26Lが右方に倒されたときにアーム5が閉じられるように構成されている。
【0017】
ショベル100の操作者は、例えば、掘削バケットを用いて掘削作業を行う場合に第1操作方式を選択し、スケルトンバケット(除礫バケット)を用いて除礫作業を行う場合に第2操作方式を選択してもよい。
【0018】
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を備えたコンピュータで構成されている。そして、コントローラ30は、各機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して揮発性記憶装置にロードし、対応する処理をCPUに実行させる。各機能は、例えば、操作者によるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、及び、操作者によるショベル100の手動操作を支援したり或いはショベル100を自動的或いは自律的に動作させたりするマシンコントロール機能を含む。コントローラ30は、ショベル100の周囲の監視範囲内に存在する物体とショベル100との接触を回避するためにショベル100を自動的或いは自律的に動作させたり或いは停止させたりする接触回避機能を含んでいてもよい。ショベル100の周囲の物体の監視は、監視範囲内だけでなく監視範囲外に対しても実行される。
【0019】
次に、
図3を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。
図3は、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
図3は、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御系を、それぞれ、二重線、実線、破線及び点線で示している。
【0020】
ショベル100の油圧システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブユニット17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作センサ29、及びコントローラ30等を含む。
【0021】
図3において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14から、センターバイパス管路40又はパラレル管路42を経て作動油タンクまで作動油を循環させることができるように構成されている。
【0022】
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0023】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給できるように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0024】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0025】
パイロットポンプ15は、パイロット圧生成装置の一例であり、パイロットラインを介して油圧制御機器に作動油を供給できるように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロット圧生成装置は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給する機能に加え、パイロットラインを介して各種油圧制御機器に作動油を供給する機能を備えていてもよい。この場合、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。
【0026】
コントロールバルブユニット17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブユニット17は、制御弁171~176を含む。制御弁175は制御弁175L及び制御弁175Rを含み、制御弁176は制御弁176L及び制御弁176Rを含む。コントロールバルブユニット17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できるように構成されている。制御弁171~176は、例えば、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左走行油圧モータ2ML、右走行油圧モータ2MR及び旋回油圧モータ2Aを含む。
【0027】
操作装置26は、操作者がアクチュエータを操作できるように構成されている。本実施形態では、操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータを操作できるように構成された油圧アクチュエータ操作装置を含む。具体的には、油圧アクチュエータ操作装置は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できるように構成されている。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0028】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出できるように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0029】
操作センサ29は、操作者による操作装置26の操作の内容を検出できるように構成されている。本実施形態では、操作センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0030】
メインポンプ14は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。そして、左メインポンプ14Lは、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、右メインポンプ14Rは、右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0031】
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
【0032】
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0033】
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0034】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0035】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0036】
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0037】
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0038】
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0039】
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、及び175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、及び175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0040】
レギュレータ13は、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む。左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収パワー(吸収馬力)がエンジン11の出力パワー(出力馬力)を超えないようにするためである。
【0041】
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行レバー26Dを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
【0042】
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
【0043】
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左側パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0044】
図3に示す例では、左操作レバー26Lは、前後方向に操作されたときにアーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときに旋回操作レバーとして機能する。
【0045】
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
【0046】
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右側パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0047】
図3に示す例では、右操作レバー26Rは、前後方向に操作されたときにブーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときにバケット操作レバーとして機能する。
【0048】
走行レバー26Dは、クローラ1Cの操作に用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、左クローラ1CLの操作に用いられる。左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラ1CRの操作に用いられる。右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
【0049】
吐出圧センサ28は、吐出圧センサ28L及び吐出圧センサ28Rを含む。吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rについても同様である。
【0050】
操作センサ29は、操作センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、29DRを含む。操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作の内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0051】
同様に、操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0052】
コントローラ30は、操作センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。また、コントローラ30は、絞り18の上流に設けられた制御圧センサ19の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19は左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。
【0053】
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。そのため、左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、この制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、この制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、この制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、この制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
【0054】
具体的には、
図3で示されるようにショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。なお、コントローラ30は、右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御する。
【0055】
上述のような構成により、
図3の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス管路40で発生させるポンピングロスを含む。また、
図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できる。
【0056】
また、ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられている。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bは、集合的に「シリンダ圧センサ」とも称される。また、旋回油圧モータ2Aには左旋回圧センサS10L及び右旋回圧センサS10Rが取り付けられている。
【0057】
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。左旋回圧センサS10Lは、旋回油圧モータ2Aの左側ポートにおける作動油の圧力を検出する。右旋回圧センサS10Rは、旋回油圧モータ2Aの右側ポートにおける作動油の圧力を検出する。各センサで検出された値は、コントローラ30に送信される。
【0058】
次に、
図4を参照し、コントローラ30がマシンコントロール機能によってアクチュエータを動作させるための構成について説明する。
図4は、旋回油圧モータ2Aの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【0059】
図4に示すように、油圧システムは、比例弁31を含む。比例弁31は、比例弁31DL、31DRを含む。
【0060】
比例弁31は、マシンコントロール用制御弁として機能する。比例弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートとを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31を介し、コントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。そして、コントローラ30は、比例弁31が生成するパイロット圧を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
【0061】
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。また、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させることができる。
【0062】
例えば、
図4に示すように、左操作レバー26Lは、旋回機構2を操作するためにも用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、左旋回方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、右旋回方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の右側パイロットポートに作用させる。
【0063】
左操作レバー26LにはスイッチNS(NSL)が設けられている。本実施形態では、スイッチNSは、左操作レバー26Lの先端に設けられた押しボタンスイッチである。操作者は、スイッチNSを押しながら左操作レバー26Lを操作できる。また、右操作レバー26RにスイッチNS(NSR)が設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置にスイッチNSが設けられていてもよい。
【0064】
操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0065】
比例弁31DLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DLを介して制御弁173の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DRを介して制御弁173の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DLは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。同様に、比例弁31DRは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0066】
また、比例弁31DLと制御弁173の一方のポート(制御弁173の左側ポート)とを接続するパイロットラインには、パイロット圧を検出するパイロット圧センサ32DLが設けられている。また、比例弁31DRと制御弁173の他方のポート(制御弁173の右側ポート)とを接続するパイロットラインには、パイロット圧を検出するパイロット圧センサ32DRが設けられている。各パイロット圧センサ32DL、32DRで検出された値は、コントローラ30に送信される。
【0067】
この構成により、コントローラ30は、操作者による左旋回操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者による左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者による左旋回操作に応じ、或いは、操作者による左旋回操作とは無関係に、旋回機構2を左旋回させることができる。
【0068】
また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者による右旋回操作に応じ、或いは、操作者による右旋回操作とは無関係に、旋回機構2を右旋回させることができる。
【0069】
また、この構成により、コントローラ30は、操作者による左旋回操作が行われている場合であっても、必要に応じて、制御弁173の左側パイロットポートに作用するパイロット圧を減圧し、左旋回動作を強制的に停止させることができる。操作者による右旋回操作が行われているときに右旋回動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0070】
或いは、コントローラ30は、操作者による左旋回操作が行われている場合であっても、必要に応じて、比例弁31DRを制御し、制御弁173の左側パイロットポートの反対側にある、制御弁173の右側パイロットポートに作用するパイロット圧を増大させ、制御弁173を強制的に中立位置に戻すことで、左旋回動作を強制的に停止させてもよい。操作者による左旋回操作が行われている場合に左旋回動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0071】
なお、
図4では、旋回油圧モータ2Aの操作に関する油圧システム部分について説明したが、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分、アームシリンダ8の操作に関する油圧システム部分、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分、左走行油圧モータ2MLの操作に関する油圧システム部分、右走行油圧モータ2MRの操作に関する油圧システム部分についても同様に構成されてもよい。
【0072】
また、操作装置26の形態として電気式操作レバーに関する説明を記載したが、電気式操作レバーではなく油圧式操作レバーが採用されてもよい。この場合、油圧式操作レバーのレバー操作量は、圧力センサによって圧力の形で検出されてコントローラ30へ入力されてもよい。また、油圧式操作レバーとしての操作装置26と各制御弁のパイロットポートとの間には電磁弁が配置されてもよい。電磁弁は、コントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成される。この構成により、油圧式操作レバーとしての操作装置26を用いた手動操作が行われると、操作装置26は、レバー操作量に応じてパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。また、各制御弁は電磁スプール弁で構成されていてもよい。この場合、電磁スプール弁は、電気式操作レバーのレバー操作量に対応するコントローラ30からの電気信号に応じて動作する。
【0073】
ここで、前述したように、コントローラ30は、操作センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。また、コントローラ30は、絞り18の上流に設けられた制御圧センサ19の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
【0074】
例えば、上部旋回体3の前後方向に対して斜めに地面を掘削する場合、上部旋回体3の旋回操作と、アタッチメントAT(ブーム4、アーム5、バケット6)の掘削操作とを同時に操作する複合操作が行われる。
【0075】
上部旋回体3の旋回動作とブーム上げ動作等のアタッチメント動作とを同時に操作する複合操作時において、上部旋回体3の旋回動作のみを操作する旋回単独動作の場合と比較して、メインポンプ14の吐出量が増加し、メインポンプ14の吐出圧(ポンプ圧)が上昇する。また、旋回操作と掘削操作を伴う複合操作において、旋回油圧モータ2Aの負荷は、アタッチメントATを動作させるブームシリンダ7の負荷よりも小さい。このため、メインポンプ14から旋回油圧モータ2Aへ流れる流量が増加する。この結果、複合操作時において、旋回単独動作の場合と比較して、操作装置26の操作量(左操作レバー26L左右方向の操作量)に対する上部旋回体3の旋回動作の旋回速度が大きくなるおそれがある。
【0076】
次に、制御弁173を制御する比例弁31(31DL、31DR)の制御について、
図5を用いて更に説明する。
図5は、コントローラ30による比例弁31(31DL、31DR)の制御を説明するフローチャートである。
【0077】
ステップS101において、コントローラ30は、旋回操作が入力されているか否かを判定する。ここでは、コントローラ30は、操作センサ29RBで検出した操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作に基づいて、旋回操作が入力されているか否かを判定する。旋回操作が入力されていない場合(S101・NO)、コントローラ30はステップS101の処理を繰り返す。旋回操作が入力されている場合(S101・YES)、コントローラ30の処理はステップS102に進む。
【0078】
ステップS102において、コントローラ30は、メインポンプ14のポンプ圧を取得する。ここでは、コントローラ30は、吐出圧センサ28(28L、28R)でメインポンプ14(14L、14R)のポンプ圧を検出する。
【0079】
ステップS103において、コントローラ30は、ステップS102で取得したメインポンプ14のポンプ圧に基づいて、制御弁173のパイロット圧の増加制限を決定する。
【0080】
ステップS102で決定する制御弁173のパイロット圧の増加制限について、
図6を用いて説明する。
図6は、メインポンプ14のポンプ圧に対する制御弁173のパイロット圧の増加制限を説明するグラフである。
【0081】
図6(a)は、メインポンプ14のポンプ圧に対する制御弁173のパイロット圧の増加制限の一例を説明するグラフである。横軸はメインポンプ14のポンプ圧(MPa)を示す。縦軸は旋回油圧モータ2Aを制御する制御弁173におけるパイロット圧の増加制限(以下、「旋回Pi圧増加制限」とも称する。)(MPa/ms)を示す。
図6(a)の例では、旋回油圧モータ2Aを制御する制御弁173におけるパイロット圧の増加速度を最大値で制限する。
【0082】
図6(a)の例において、メインポンプ14のポンプ圧が第1圧力値P1以下において、旋回Pi圧増加制限は所定の第1制限値B1に設定される。また、メインポンプ14のポンプ圧が第1圧力値P1以上(第2圧力値P2以下)において、メインポンプ14のポンプ圧が増加するに伴って旋回Pi圧増加制限が減少するように設定される。また、メインポンプ14のポンプ圧が第1圧力値P1よりも大きい第2圧力値P2以上において、旋回Pi圧増加制限は第1制限値B1よりも小さい第2制限値B2に設定される。例えば、ステップS102で取得したメインポンプ14のポンプ圧が圧力値P3である場合、旋回Pi圧増加制限は制限値B3と決定する。
【0083】
なお、制御弁173のパイロット圧の増加制限は、
図6(a)に示す制御弁173のパイロット圧の増加速度を制限することに限られない。
【0084】
図6(b)は、メインポンプ14のポンプ圧に対する制御弁173のパイロット圧の増加制限の他の一例を説明するグラフである。横軸はメインポンプ14のポンプ圧(MPa)を示す。縦軸は旋回油圧モータ2Aを制御する制御弁173におけるパイロット圧の増加制限(以下、「増加制限割合」とも称する。)を示す。
図6(b)の例では、旋回油圧モータ2Aを制御する制御弁173におけるパイロット圧の増加速度を割合で制限する。
【0085】
図6(b)の例において、メインポンプ14のポンプ圧が第1圧力値P4以下において、増加制限割合は所定の第1制限割合値C4に設定される。ここで、第1制限割合値C4は、1としてもよい。また、メインポンプ14のポンプ圧が第1圧力値P4以上(第2圧力値P5以下)において、メインポンプ14のポンプ圧が増加するに伴って増加制限割合が減少するように設定される。また、メインポンプ14のポンプ圧が第1圧力値P4よりも大きい第2圧力値P5以上において、増加制限割合は第1制限割合値C4よりも小さい第2制限割合値C5に設定される。例えば、ステップS102で取得したメインポンプ14のポンプ圧が圧力値P6である場合、増加制限割合は制限割合値C6と決定する。ステップS102で取得したメインポンプ14のポンプ圧が圧力値P7である場合、増加制限割合は制限割合値C7と決定する。
【0086】
ステップS104において、コントローラ30は、操作者による左操作レバー26Lの操作に基づく制御弁173のパイロット圧の増加値を確認する。具体的には、コントローラ30は、操作センサ29RBで検出した操作量に基づいて比例弁31(31DL、31DR)を制御した場合における制御弁173のパイロット圧の単位時間当たりの増加値(増加速度)を算出する。
【0087】
ステップS105において、コントローラ30は、ステップS104で算出した制御弁173のパイロット圧の増加値(増加速度)が、ステップS103で決定した増加制限以上か否かを判定する。
【0088】
ここで、
図6(a)の例に示す増加制限において、パイロット圧の増加値(増加速度)が増加制限以上である場合(S105・YES)、コントローラ30の処理はステップS106に進む。一方、パイロット圧の増加値(増加速度)が増加制限以上でない場合(S105・NO)、コントローラ30の処理はステップS107に進む。
【0089】
また、
図6(b)の例に示す増加制限においては、コントローラ30の処理はステップS106に進む。
【0090】
ステップS106において、コントローラ30は、増加制限に従って、補正パイロット圧の増加値(増加速度)を決定する。
【0091】
ここで、
図6(a)の例において、メインポンプ14のポンプ圧P1において、補正パイロット圧の増加値(増加速度)を旋回Pi圧増加制限B1と決定する。
【0092】
ここで、
図6(b)の例において、メインポンプ14のポンプ圧P2において、補正パイロット圧の増加値(増加速度)は、ステップS104で算出したパイロット圧の増加値(増加速度)に係数C2を積算した値と決定する。また、メインポンプ14のポンプ圧P3において、補正パイロット圧の増加値(増加速度)は、ステップS104で算出したパイロット圧の増加値(増加速度)に係数C3を積算した値と決定する。
【0093】
ステップS107において、コントローラ30は、比例弁31(31DL、31DR)への出力値を計算する。ここで、パイロット圧の増加値(増加速度)が増加制限以上である場合(S105・YES)、ステップS106で決定した補正パイロット圧の増加値(増加速度)に基づいて比例弁31の出力値を計算する。一方、パイロット圧の増加値(増加速度)が増加制限以上でない場合(S104・5O)、ステップS104で算出したパイロット圧の増加値に基づいて比例弁31の出力値を計算する。
【0094】
ステップS108において、コントローラ30は、ステップS107で計算した出力値を比例弁31に出力する。そして、コントローラ30の処理は、ステップS101に戻る。
【0095】
ここで、旋回単独動作時において、メインポンプ14のポンプ圧が第1圧力値P1(P4)以下となるものとする。メインポンプ14のポンプ圧が第1圧力値P1(P4)未満の場合、コントローラ30は、操作センサ29RBで検出した左操作レバー26Lに対する左右方向への操作に基づいて、比例弁31を介して制御弁173を制御する。即ち、制御弁173の制御に関して制限を行わない。なお、
図6(a)において、第1制限値B1は、制御弁173のパイロット圧の増加値(増加速度)に対して、十分に大きな値であり、制御弁173の制御に関して制限を行わないことを示す。また、
図6(b)において、第1制限割合値C4は例えば1であり、パイロット圧の増加値(増加速度)に積算してもパイロット圧の増加値(増加速度)と等しく、制御弁173の制御に関して制限を行わないことを示す。
【0096】
また、複合操作時において、メインポンプ14のポンプ圧が第1圧力値P1(P4)以上となるものとする。メインポンプ14のポンプ圧が第1圧力値P1(P4)以上の場合、コントローラ30は、制御弁173の制御に関して制限をする。具体的には、コントローラ30は、制御弁173のパイロット圧の増加値(増加速度)を制限する。よって、メインポンプ14のポンプ圧が上昇した場合であっても、制御弁173のスプールの移動速度が制限されゆっくりと動くことにより、上部旋回体3の旋回速度が抑制され、操作者の操作性を向上させることができる。
【0097】
なお、ステップS102において、コントローラ30は、メインポンプ14のポンプ圧を取得するとともに、旋回油圧モータ2Aの旋回負荷圧を検出してもよい。旋回油圧モータ2Aの旋回負荷圧は、左旋回圧センサS10Lで検出する旋回油圧モータ2Aの左側ポートにおける作動油の圧力と、右旋回圧センサS10Rで検出する旋回油圧モータ2Aの右側ポートにおける作動油の圧力と、の差圧に基づいて算出してもよい。また、コントローラ30は、ポンプ圧とともに旋回負荷圧を用いて、旋回単独動作時であるか、複合操作時であるか、を判定してもよい。また、コントローラ30は、操作センサ29で検出した操作装置26の操作に基づいて、旋回単独動作時であるか、複合操作時であるか、を判定してもよい。
【0098】
図7は、制御弁173のパイロット圧の変化の一例を説明するグラフである。横軸は時間を示し、縦軸は制御弁173のパイロット圧を示す。また、実線で示すパイロット圧700は、操作センサ29RBで検出した左操作レバー26Lに対する左右方向への操作に基づいて比例弁31を制御した場合における制御弁173のパイロット圧の変化を示す。破線で示すパイロット圧701は、
図6(a)で示す旋回Pi圧増加制限B1で制限した場合における制御弁173のパイロット圧の変化を示す。一点鎖線で示すパイロット圧702は、
図6(b)で示す増加制限割合C2で制限した場合における制御弁173のパイロット圧の変化を示す。点線で示すパイロット圧702は、
図6(b)で示す増加制限割合C3で制限した場合における制御弁173のパイロット圧の変化を示す。
【0099】
複合操作時において、
図7のパイロット圧701~703に示すように、制御弁173のパイロット圧の増加速度を制限する。これにより、制御弁173のスプールの移動速度が制限されゆっくりと動くことにより、上部旋回体3の旋回速度が抑制され、操作者の操作性を向上させることができる。
【0100】
また、
図7のパイロット圧701に示すように、旋回Pi圧増加制限(
図6(a)参照)でパイロット圧の増加速度の最大値を制限する。これにより、メインポンプ14のポンプ圧が上昇する複合操作時においても、操作者の操作性を向上させることができる。
【0101】
また、
図7のパイロット圧702、703に示すように、増加制限割合(
図6(b)参照)で制限することにより、左操作レバー26Lに対する左右方向への操作状態に応じて、制御弁173のパイロット圧の増加速度を変化させることができる。これにより、操作者の操作性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0102】
100 ショベル
1 下部走行体
2A 旋回油圧モータ(油圧アクチュエータ)
2M 走行油圧モータ(油圧アクチュエータ)
2ML 左走行油圧モータ(油圧アクチュエータ)
2MR 右走行油圧モータ(油圧アクチュエータ)
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
8 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
9 バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
14 メインポンプ(油圧ポンプ)
17 コントロールバルブユニット
171~176 制御弁(方向制御弁)
19 制御圧センサ
26 操作装置(電気レバー)
28 吐出圧センサ
29 操作センサ
30 コントローラ(制御部)
31 比例弁
32 パイロット圧センサ