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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151674
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20231005BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N21/64 F
G01N21/78 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061420
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207778
【弁理士】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】関根 亮
(72)【発明者】
【氏名】野崎 孝明
(72)【発明者】
【氏名】和田 花奈
【テーマコード(参考)】
2G043
2G054
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA17
2G043EA01
2G043GB12
2G043GB13
2G043HA09
2G043JA02
2G043LA03
2G043NA05
2G043NA06
2G054AA02
2G054EA03
2G054GB02
(57)【要約】
【課題】磁気応答性を有する検出対象物を撮像するための磁場および焦点の調節を容易にすることを可能とする撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、磁気応答性を有する検出対象物を含む試料を収容する容器と、開口を有し、検出対象物を容器の内部の検出領域に移動させる方向の磁場を印加する磁場印加部と、容器を移動させて、開口を覆うように磁場印加部に当接させる移動機構と、磁場印加部を挟んで容器と対向し、かつ容器が磁場印加部に当接した状態で焦点が検出領域に含まれるように配置される光学系と、光学系および開口を介して検出領域を撮像する撮像部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気応答性を有する検出対象物を含む試料を収容する容器と、
開口を有し、前記検出対象物を前記容器の内部の検出領域に移動させる方向の磁場を印加する磁場印加部と、
前記容器を移動させて、前記開口を覆うように前記磁場印加部に当接させる移動機構と、
前記磁場印加部を挟んで前記容器と対向し、かつ前記容器が前記磁場印加部に当接した状態で焦点が前記検出領域に含まれるように配置される光学系と、
前記光学系および前記開口を介して前記検出領域を撮像する撮像部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記磁場印加部の下方から鉛直上方に向かって前記容器を移動させて前記磁場印加部に当接させる、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記容器が鉛直上方に向かって移動される前に、水平方向に前記容器を移動させ、
前記容器は、単一の駆動部によって鉛直上方および水平方向にそれぞれ移動される、
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記容器が前記磁場印加部に当接したことを検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記検出領域を撮像するように前記撮像部を制御する制御部と、をさらに有する、
請求項1-3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記容器は、
内壁によって区画され、前記試料が収容される第1収容空間と、
前記内壁を囲む第2収容空間と、
透光性を有する平板状の窓部を有し、前記内壁の上端に当接し、前記窓部が前記第1収容空間の上方に位置するように前記第1収容空間および前記第2収容空間を覆う蓋部と、を有し、
前記内壁の上部は、前記第1収容空間に前記試料を充填したときに前記試料の上面が前記内壁の上端よりも上方に突出するように、疎水性を有して形成される、
請求項1-4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記移動機構は、前記磁場印加部に当接した容器を押圧する、
請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
磁気応答性を有する検出対象物を含む試料を収容する容器を撮像する撮像装置であって、
開口を有し、前記検出対象物を前記容器の内部の検出領域に移動させる方向の磁場を印加する磁場印加部と、
前記容器を移動させて、前記開口を覆うように前記磁場印加部に当接させる移動機構と、
前記磁場印加部を挟んで前記容器と対向し、かつ前記容器が前記磁場印加部に当接した状態で焦点が前記検出領域に含まれるように配置される光学系と、
前記光学系および前記開口を介して前記検出領域を撮像する撮像部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、疾病のリスク判断等の様々な目的のために、検体等の試料に含まれる真菌、細菌、ウイルス等の検出対象物を検出することがなされている。近年では、病原体の簡便な検出方法として、光学的な検出方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、測定対象となる物質に磁性体と蛍光体とを結合させた結合体を含む溶液に励起光を照射して蛍光体を励起させるとともに、磁場を印加して結合体を移動させながら溶液を撮影して検出対象物質を検出する検出方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-190465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような磁気応答性を有する検出対象物を光学的に検出する方法においては、磁場の強さや方向を適切に設定する必要がある。また、検出対象物を撮像するときには、試料に焦点を合わせて撮像する必要がある。しかしながら、試料を測定するたびに磁場を調整し、かつ焦点を調節することは煩雑であった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、磁気応答性を有する検出対象物を撮像するための磁場および焦点の調節を容易にすることを可能とする撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮像装置は、磁気応答性を有する検出対象物を含む試料を収容する容器と、開口を有し、検出対象物を容器の内部の検出領域に移動させる方向の磁場を印加する磁場印加部と、容器を移動させて、開口を覆うように磁場印加部に当接させる移動機構と、磁場印加部を挟んで容器と対向し、かつ容器が磁場印加部に当接した状態で焦点が検出領域に含まれるように配置される光学系と、光学系および開口を介して検出領域を撮像する撮像部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る撮像装置において、移動機構は、磁場印加部の下方から鉛直上方に向かって容器を移動させて磁場印加部に当接させることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る撮像装置において、移動機構は、容器が鉛直上方に向かって移動される前に、水平方向に容器を移動させ、容器は、単一の駆動部によって磁場と平行な方向および磁場に直交する方向にそれぞれ移動されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る撮像装置は、容器が磁場印加部に当接したことを検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて、検出領域を撮像するように撮像部を制御する制御部と、をさらに有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る撮像装置において、容器は、内壁によって区画され、試料が収容される第1収容空間と、内壁を囲む第2収容空間と、透光性を有する平板状の窓部を有し、内壁の上端に当接し、窓部が前記第1収容空間の上方に位置するように第1収容空間および第2収容空間を覆う蓋部と、を有し、内壁の上部は、第1収容空間に試料を充填したときに試料の上面が内壁の上端よりも上方に突出するように、疎水性を有して形成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る撮像装置において、移動機構は、磁場印加部に当接した容器を押圧することが好ましい。
【0013】
本発明に係る撮像装置は、磁気応答性を有する検出対象物を含む試料を収容する容器を撮像する撮像装置であって、開口を有し、検出対象物を容器の内部の検出領域に移動させる方向の磁場を印加する磁場印加部と、容器を移動させて、開口を覆うように磁場印加部に当接させる移動機構と、磁場印加部を挟んで容器と対向し、かつ容器が磁場印加部に当接した状態で焦点が検出領域に含まれるように配置される光学系と、光学系および開口を介して検出領域を撮像する撮像部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る撮像装置は、磁気応答性を有する検出対象物を撮像するための磁場および焦点の調節を容易にすることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】検出装置1の構成を示す模式図である。
図2】検出装置1の機能ブロック図である。
図3】試料容器11の斜視図である。
図4】磁場印加部12の斜視図である。
図5】移動機構13の斜視図である。
図6】移動機構13の動作を説明するための模式図である。
図7】検出装置1によって実行される検出処理の流れを示すフロー図である。
図8】試料容器11に試料を収容する方法を説明するための模式図である。
図9】検出装置2の構成を示す模式図である。
図10】移動機構33の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
図1は実施形態に係る検出装置1の構成を示す模式図であり、図2は検出装置1の機能ブロック図である。検出装置1は、撮像装置の一例である。検出装置1は、磁気応答性を有する検出対象物を含む試料を収容した試料容器の内部に磁場を印加して、検出対象物を試料容器の内部の所定の検出領域に移動させる。検出装置1は、検出領域に移動した検出対象物を撮像して撮像画像を生成し、撮像画像に基づいて検出対象物を検出する。検出対象物は、例えば、磁気応答性物質と結合された、真菌、細菌、ウイルス等の微生物である。検出対象物は、磁気応答性物質そのものであってもよい。検出装置1は、試料容器11、磁場印加部12、移動機構13、照射部14、光学系15、撮像部16、記憶部17、表示部18および処理部19を有する。
【0018】
試料容器11は、検出対象物Tを含む試料を収容する。試料に含まれる検出対象物Tは、蛍光標識物質Eおよび磁気応答性物質Mと結合している。蛍光標識物質Eは、検出対象物Tに特異的に結合する標識物質が蛍光色素と結合されたものである。検出対象物Tが微生物である場合、標識物質は、例えば抗体である。磁気応答性物質Mは、検出対象物Tに特異的に結合する標識物質が化学結合、物理吸着、アビジン-ビオチン結合等により磁性粒子と結合されたものである。検出対象物Tは、磁気応答性物質Mと結合することにより、磁気応答性を有する。
【0019】
図3は、試料容器11の斜視図である。試料容器11は、収容部111および蓋部112を有する。
【0020】
収容部111は、円板状の底面113と、底面113の外周部から上方に延出する円筒状の外壁114を有する。また、収容部111は、外壁114の内側において底面113から上方に延出し、外壁114と略同一の高さを有する円筒状の内壁115を有する。底面113、外壁114および内壁115は、樹脂またはガラス等により形成される。
【0021】
収容部111は、底面113および内壁115により区画される第1収容空間116と、内壁115を囲み、底面113、内壁115および外壁114により区画される第2収容空間117とを有する。すなわち、収容部111は、第1収容空間116と、第1収容空間116を囲む第2収容空間117とを有する二重構造の容器となっている。
【0022】
内壁115の内周面の上部は、第1収容空間116に試料を充填したときに試料の上面が内壁115の上端よりも上方に突出するように、試料に対してぬれにくく(すなわち、試料の内壁115に対する接触角が大きくなるように)形成される。例えば、内壁115の上部は、水分を含む試料に対してぬれにくくなるように、疎水性を有して形成される。この場合、例えば、内壁115は、疎水性の樹脂により形成される。内壁115は親水性のガラスにより形成され、内壁115の上部に疎水性の材料によるコーティングが施されることにより疎水性を有してもよい。疎水性の材料は、例えばフッ化炭素を含むポリマーである。
【0023】
内壁115の上面は、平坦に形成される。これにより、第1収容空間116に試料を充填したときに、試料が第2収容空間117にこぼれ落ちることなく試料の上面が内壁115の上端よりも上方に突出しやすくなる。
【0024】
蓋部112は、収容部111を上方から覆い、第1収容空間116および第2収容空間117を封止する。蓋部112は、収容部111の外壁114の外周面に形成された係合溝118と係合することにより、第1収容空間116および第2収容空間117を封止する。蓋部112は、収容部111と係合した状態で、相互に略同一の高さを有する内壁115および外壁114と当接する。これにより、第1収容空間116および第2収容空間117がそれぞれ独立に封止される。すなわち、試料が第1収容空間116と第2収容空間117との間で移動することが規制されるとともに、第2収容空間117から容器の外部に移動することが規制される。
【0025】
蓋部112は、透光性を有する平板状の窓部119を有する。窓部119は、例えば、透光性の樹脂により形成される。透光性の樹脂は、例えば、アクリル、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンである。窓部119は、蓋部112が収容部111に係合した状態で、第1収容空間116の上方に位置するように配置される。
【0026】
図1および図2に戻り、磁場印加部12は、試料容器11の内部に磁場を印加するための構成である。磁場印加部12は、試料容器11の上部に配置され、検出対象物Tを試料容器11の内部の検出領域Dに移動させる方向の磁場を印加する。図1に示す例では、検出領域Dは試料容器11の第1収容空間116の上部(例えば、上半分)であるため、磁場印加部12は、検出対象物Tに結合した磁気応答性物質Mを上方に移動させる方向の磁場Pを印加する。
【0027】
図4は、磁場印加部12の斜視図である。磁場印加部12は、保持部121および磁石122を有する。
【0028】
保持部121は、円板状に形成され、磁石122を保持する。保持部121の中央には上面と下面とを貫通する開口123が形成される。磁場印加部12は、検出領域Dが開口123を通して上方から視認可能となるように、開口123が試料容器11の検出領域Dの上方に位置するように配置される。開口123の内周面には、磁石122が収容可能な凹部124が形成される。
【0029】
磁石122は、例えば、アルニコ磁石、ネオジム磁石、コバルト磁石等である。磁石122は、凹部124に収容され、磁気応答性物質Mを検出領域Dに移動させる方向の磁場が印加されるように配置される。図4に示す例では、四つの棒状の磁石122がN極を保持部121の開口123の中心に向けて、隣接する磁石122と90度間隔となるように配置されている。これにより、開口123の中心において、磁気応答性物質Mを上方に移動させる方向の磁場Pが印加される。
【0030】
磁石122の数は四つに限られず、磁気応答性物質Mを検出領域Dに移動させる方向の磁場を印加可能となる二つ以上の個数であってよい。磁石122の形状は棒状に限られず、環状等の任意の形状であってもよい。また、保持部121の形状も円板状に限られず、開口123を有している限り任意の形状であってよい。
【0031】
図1および図2に戻り、移動機構13は、試料容器11を保持して移動させるための構成である。検出が実行されていないときには、移動機構13は、作業者が試料容器11に試料を収容することが容易となるような位置で試料容器11を保持する。検出が実行されるときには、移動機構13は、磁場印加部12の下方から鉛直上方である方向D2に沿って試料容器11を移動させて、開口123を覆うように磁場印加部12に当接させる。また、移動機構13は、磁場印加部12に当接した試料容器11を押圧する。
【0032】
図5は、移動機構13の斜視図である。移動機構13は、第1レール131、第1移動部132、第2レール133、第2移動部134、連結部135、容器保持部136および駆動部137を有する。
【0033】
第1レール131は、水平方向に延伸するレールである。第1レール131は、第1移動部132の移動範囲を規制する規制部131aを有する。規制部131aは、第1レール131の延伸方向に平行な側面から突出する。
【0034】
第1移動部132は、平板132a、一対の脚部132bおよび結合部材132cを有する。一対の脚部132bは、平板132aの下面に接合され、第1レール131に摺動可能に係合する。これにより、第1移動部132が第1レール131に沿って水平方向に平行移動可能となる。第1レール131の規制部131aは、一対の脚部132bの間に配置される。これにより、第1移動部132の移動範囲が、脚部132bが規制部131aに接触しない範囲に規制される。平板132aの上面には、連結部135が結合される柱状の結合部材132cが形成される。
【0035】
第2レール133は、鉛直方向に延伸するレールである。第2レール133は、第1移動部132の平板132aの上面から上方に延出するように形成され、第1移動部132に連動して第1レール131に沿って水平方向に平行移動する。
【0036】
第2移動部134は、脚部134a、傾斜部134b、延伸部134cおよび結合部材134dを有する。脚部134aは、傾斜部134bおよび延伸部134cの下面に接合され、第1レール131に摺動可能に係合する。これにより、第2移動部134が第1レール131に沿って水平方向に移動可能となる。傾斜部134bは、脚部134aから第1移動部132の側に向かって延伸する部材である。傾斜部134bは、第1移動部132の側に近づくにつれて高さが高くなるように傾斜した上面を有する。延伸部134cは、脚部134aから第1移動部132とは反対の側に延伸する平板状の部材である。延伸部134cには、駆動部137によって駆動される歯車の歯と係合可能な凹凸構造が形成される。脚部134aの上面には、連結部135が結合される柱状の結合部材134dが形成される。
【0037】
連結部135は、引張コイルばね等の弾性体である。連結部135は、両端が第1移動部132の結合部材132cおよび第2移動部134の結合部材134dにそれぞれ結合されることにより、第1移動部132と第2移動部134とを連結する。連結部135は、第1移動部132と第2移動部134とが離間した場合に、第1移動部132と第2移動部134とを弾性力により引き寄せる。
【0038】
容器保持部136は、保持板136a、係合板136bおよびローラ136cを有する。保持板136aは、試料容器11を保持する平板である。保持板136aの上面には試料容器11を収容可能な凹部136dが形成され、保持板136aは、試料容器11が凹部136dに収容されることにより試料容器11を保持する。係合板136bは、第2レール133に係合する平板である。係合板136bは、保持板136aの一端から保持板136aに直交する方向に延伸する。係合板136bには溝が形成され、係合板136bは溝によって第2レール133に摺動可能に係合する。これにより、容器保持部136が第2レール133に沿って鉛直方向に平行移動可能となる。ローラ136cは、係合板136bの第2移動部134に対向する面から第2移動部134の側に向かって延出する。ローラ136cは、円柱状の形状を有し、周方向に回動可能である。
【0039】
駆動部137は、第1移動部132、第2移動部134および容器保持部136を駆動することにより、試料容器11を移動させるための構成である。駆動部137は、不図示のモータおよび歯車並びにモータおよび歯車を収容する筐体137aを有する。筐体137aには、側面を貫通する貫通孔137bが形成される。貫通孔137bには、第2移動部134の延伸部134cが挿通される。筐体137aが収容するモータは、処理部19から供給される制御信号に基づいて駆動する。歯車は、延伸部134cの凹凸構造に係合し、モータの駆動力を延伸部134cに伝達して延伸部134cを第1レール131の延伸方向に沿って平行移動させる。なお、駆動部137の構成は上述した例に限られず、駆動部137は、延伸部134cを第1レール131の延伸方向に沿って平行移動させることが可能な任意の構成を有してもよい。
【0040】
図6(A)および図6(B)は、移動機構13の動作について説明するための模式図である。図6(A)および図6(B)において、第1移動部132の脚部132bの移動範囲は、規制部131aによって範囲Rに規制されている。
【0041】
図6(A)に示すように、最初に、第1移動部132は、脚部132bが範囲Rのうち最も駆動部137から遠い位置となるように配置される。この状態で駆動部137が駆動されると、駆動部137は第2移動部134を駆動部137に向かう方向D1に平行移動させる。第2移動部134が方向D1に平行移動したことに伴い、連結部135によって第2移動部134に連結された第1移動部132も方向D1に平行移動する。第1移動部132が平行移動したことに伴い、第1移動部132の上面から延伸する第2レール133に係合する容器保持部136も方向D1に平行移動する。すなわち、この状態では、第1移動部132、第2移動部134および容器保持部136は、連結部135の伸縮による影響を除き、相互に略等しい速度で方向D1に平行移動する。これにより、容器保持部136に保持された試料容器11は水平方向に移動する。
【0042】
図6(B)に示すように、第1移動部132の脚部132bが範囲Rのうち最も駆動部137に近い位置に到達すると、第1移動部132および容器保持部136は方向D1への移動を停止する。移動機構13は、第1移動部132および容器保持部136が方向D1への移動を停止したときに、試料容器11の検出領域Dが磁場印加部12の開口123の下方に位置するように配置される。
【0043】
第1移動部132および容器保持部136が方向D1への移動を停止した後も、第2移動部134は、連結部135の弾性力に抗して方向D1への移動を継続する。すなわち、第1移動部132および容器保持部136に対して、第2移動部134が相対的に移動する。この状態で、傾斜部134bの上面がローラ136cに接触すると、ローラ136cは傾斜部134bの上面の法線方向に抗力Qを受ける。傾斜部134bの上面は傾斜しているから、抗力Qは鉛直方向成分と水平方向成分とを含む。容器保持部136は、第2レール133に係合することにより、鉛直方向に平行移動可能であるとともに水平方向への移動が規制されているから、抗力Qを受けて、水平方向である方向D1に移動することなく鉛直方向である方向D2に平行移動する。これにより、容器保持部136に保持された試料容器11は鉛直上方に移動する。
【0044】
第1移動部132および容器保持部136が方向D1への移動を停止したとき、すなわち試料容器11が鉛直方向に移動する前には、試料容器11は、磁場印加部12が印加する磁場の影響を受けないような距離だけ磁場印加部12から離間している。すなわち、試料容器11が鉛直方向に移動する前には、検出対象物Tは検出領域Dに移動していない。検出対象物Tは、試料容器11が鉛直方向に移動している間に検出領域Dへの移動を開始する。
【0045】
移動機構13は、試料容器11が磁場印加部12に当接するまで試料容器11を鉛直方向に移動させる。また、試料容器11が磁場印加部12に当接した後も駆動部137は継続して駆動し、容器保持部136は磁場印加部12に当接した試料容器11を下方から押圧する。
【0046】
このようにして、移動機構13は、水平方向に沿って、磁場印加部12の下方まで試料容器11を移動させる。移動機構13は、その後に、磁場印加部12の下方から鉛直上方に向かって試料容器11を移動させて磁場印加部12に当接させる。
【0047】
図1および図2に戻り、照射部14は、検出対象物Tに結合した蛍光標識物質Eを励起させるための励起光を照射するための構成であり、例えばLED(Light Emitting Diode)光源および制御回路を備える。制御回路は、処理部19から供給された制御信号に基づいてLED光源を制御して、制御信号に応じた光量の励起光を照射させる。照射部14が照射する励起光の波長は、蛍光標識物質Eの励起波長帯に含まれる。すなわち、励起光を照射された蛍光標識物質Eは蛍光を放射する。
【0048】
光学系15は、照射部14から照射された励起光を試料容器11の内部に導くとともに、試料容器11から放射された光を撮像部16に導くための構成である。光学系15は、磁場印加部12を挟んで試料容器11と対向するように配置される。光学系15は、例えば、集光レンズ151、励起光フィルタ152、ダイクロイックミラー153、対物レンズ154および検出フィルタ155を有する。
【0049】
集光レンズ151は、一つまたは複数の凸レンズを有し、照射部14から照射された励起光を集光して励起光フィルタ152に入射する。励起光フィルタ152は、帯域通過型の光学フィルタであり、励起光のピーク波長を含む励起波長帯の光を透過させ、他の波長帯の光を遮光する。ダイクロイックミラー153は、励起光フィルタ152を透過した励起光を反射させて試料容器11の内部に導くとともに、試料容器11からの光を透過させて撮像部16に導く。対物レンズ154は、一つまたは複数の凸レンズおよび絞りを有し、ダイクロイックミラー153で反射された励起光を焦点に導く。検出フィルタ155は、帯域通過型の光学フィルタであり、蛍光標識物質Eが放射する蛍光の波長を含む検出波長帯の光を透過させ、他の波長帯の光を遮光する。
【0050】
光学系15は、試料容器11が磁場印加部12に当接した状態で、焦点が試料容器11の内部の検出領域Dに含まれるように配置される。
【0051】
撮像部16は、検出領域Dを撮像して撮像画像を生成するための構成である。撮像部16は、平凸レンズを備える結像光学系と、受光面に二次元に配列されたCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)からなる撮像素子を備える撮像センサとを有する。撮像部16は、試料容器11の検出領域Dから放射されて光学系15を通過した光が撮像センサの受光面に結像されるように、光学系15および磁場印加部12を挟んで試料容器11に対向するように配置される。撮像部16は、処理部19から供給された制御信号に基づいて撮像を行い、撮像画像を生成する。撮像部16は、生成された撮像画像を処理部19に供給する。
【0052】
記憶部17は、プログラムまたはデータを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。記憶部17は、処理部19による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピュータ読み取り可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体から記憶部17にインストールされる。
【0053】
表示部18は、画像を表示するための構成であり、例えば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイを備える。表示部18は、処理部19から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0054】
処理部19は、検出装置1の動作を統括的に制御するための構成であり、例えばCPU(Central Processing Unit)を備える。処理部19は、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部19は、記憶部17に記憶されているプログラムに基づいて検出装置1の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御するとともに、各種の処理を実行する。
【0055】
処理部19は、移動制御部191、照射制御部192、撮像制御部193、検出部194および出力部195を機能ブロックとして備える。これらの各部は、処理部19によって実行されるプログラムに基づいて実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして検出装置1に実装されてもよい。
【0056】
図7は、検出装置1によって実行される検出処理の流れを示すフロー図である。検出処理は、記憶部17に記憶されたプログラムに基づいて、処理部19が検出装置1の各構成と協働することにより実現される。以下では、検出対象物が人の唾液中の口腔真菌であるものとして説明する。
【0057】
最初に、検出対象物Tを含む試料が反応容器に収容される(ステップS11)。試料は、例えば被検者の唾液である。この場合、試料は、綿棒等を被検者の口腔内に挿入することで採取される。試料が唾液である場合、試料は、被検者が滅菌されたチューブや遠沈管に唾液を吐きだすことによって採取されてもよい。
【0058】
次に、検出対象物Tに蛍光標識物質Eが結合される(ステップS12)。蛍光標識物質Eが反応容器に収容されて攪拌されることにより、検出対象物Tに蛍光標識物質Eが結合される。
【0059】
次に、蛍光標識物質Eが結合された検出対象物Tに磁気応答性物質Mがさらに結合される(ステップS13)。磁気応答性物質Mが反応容器に収容されて攪拌されることにより、検出対象物Tに磁気応答性物質Mが結合される。
【0060】
なお、ステップS12とS13とは同時に実行されてもよく、ステップS13の後にステップS12が実行されてもよい。また、ステップS13の後に、反応容器に収容された検体に対して磁気濃縮洗浄が施されてもよい。これにより、検出対象物Tと結合しなかった蛍光標識物質Eが除去されるため、より高精度に検出対象物Tを検出することが可能となる。
【0061】
次に、検出対象物Tを含む試料が試料容器11に収容される(ステップS14)。試料は、反応容器から試料容器11に移し替えられる。
【0062】
図8(A)および図8(B)は、試料容器11に試料を収容する方法について説明するための模式図である。最初に、図8(A)に示すように、試料容器11の第1収容空間116に試料が収容される。試料は、その上面が内壁115の上端よりも上方に突出するように第1収容空間116に充填される。
【0063】
次に、図8(B)に示すように、試料が第1収容空間116に充填された状態で蓋部112が収容部111に被せられる。内壁115の上端よりも上方の試料は、蓋部112が内壁115の上端に当接するまで、蓋部112に押圧されて第2収容空間117にこぼれ落ちる。これにより、蓋部112が内壁115の上端に当接した状態で、第1収容空間116が試料で満たされた状態になる。
【0064】
図7に戻り、次に、試料容器11が磁場印加部12に当接するように移動される(ステップS15)。まず、試料容器11は、移動機構13の容器保持部136に保持される。続いて、移動制御部191は、駆動部137に制御信号を供給して、駆動部137を駆動させる。駆動部137が駆動したことにより、容器保持部136に保持された試料容器11が水平方向に移動される。試料容器11が磁場印加部12の開口123の下方に到達すると、試料容器11が磁場印加部12に当接するように鉛直方向に移動される。磁場印加部12に当接した試料容器11は、下方から磁場印加部12に押圧される。
【0065】
次に、照射部14は、蛍光標識物質Eを励起させるための励起光を試料容器11の内部に照射する(ステップS16)。照射制御部192は、照射部14に制御信号を供給して、照射部14に、光学系15に向けて所定の光量の励起光を照射させる。照射された励起光は、光学系15により試料容器11の内部に導かれる。これにより、蛍光標識物質Eが励起される。
【0066】
なお、ステップS16はステップS15の前に実行されてもよい。
【0067】
次に、撮像部16は、検出領域Dを撮像する(ステップS17)。撮像制御部193は、撮像部16に制御信号を供給して、撮像部16に検出領域Dを撮像させて撮像画像を生成する。
【0068】
次に、検出部194は、生成された撮像画像に基づいて、試料容器11の内部の検出対象物Tを検出する(ステップS18)。
【0069】
例えば、検出部194は、撮像画像を構成する画素のうち、輝度値が所定値以上である画素を、励起した蛍光標識物質Eに対応する画素として抽出する。検出部194は、公知のクラスタリング手法により、抽出された画素を複数のグループに分類する。検出部194は、例えば、相互の距離が近い画素が同一のグループとなるように抽出された画素を複数のグループに分類する。各グループは、同一の検出対象物Tに結合している蛍光標識物質Eを示している。検出部194は、グループの数を画像に含まれる検出対象物Tの数として計数することにより、検出対象物Tを検出する。
【0070】
次に、出力部195は、検出対象物Tの検出の結果を出力する(ステップS19)。例えば、出力部195は、検出の結果を表示するための表示データを表示部18に供給することにより、検出の結果を出力する。出力部195は、検出の結果をPC(Personal Computer)等の情報処理装置に送信することにより出力してもよい。以上で、検出処理が終了する。
【0071】
以上説明したように、検出装置1は、試料容器11、磁場印加部12、移動機構13、光学系15および撮像部16を有する。試料容器11は、磁気応答性を有する検出対象物Tを含む試料を収容する。磁場印加部12は、開口123を有し、検出対象物Tを試料容器11の内部の検出領域Dに移動させる方向の磁場を印加する。移動機構13は、試料容器11を移動させて、開口123を覆うように磁場印加部12に当接させる。光学系15は、磁場印加部12を挟んで試料容器11に対向し、かつ試料容器11が磁場印加部12に当接した状態で焦点が検出領域Dに含まれるように配置される。撮像部16は、光学系15を介して検出領域Dを撮像する。これにより、検出装置1は、磁気応答性を有する検出対象物を撮像するための磁場および焦点の調節を容易にすることを可能とする。
【0072】
すなわち、試料容器11が磁場印加部12に当接することにより、磁場印加部12と試料容器11との距離が最小となる。したがって、常に一定でありかつ十分な強度の磁場が試料容器11の内部に印加される。また、試料容器11が磁場印加部12に当接することにより、磁場印加部12と試料容器11との位置関係が一定となる。したがって、試料容器11が磁場印加部12に当接した状態で焦点が検出領域Dに含まれるように光学系15をあらかじめ調節しておけば、作業者が測定のたびに焦点を調節する必要がなくなる。
【0073】
好ましくは、移動機構13は、磁場印加部12の下方から鉛直上方に向かって試料容器11を移動させて磁場印加部12に当接させる。これにより、検出装置1は、磁場に直交する方向における磁場の変化の影響を受けることなく検出対象物Tを撮像することを可能とする。
【0074】
すなわち、試料容器11を磁場と概ね平行である鉛直方向に沿って磁場印加部12に近づけることにより、試料容器11の内部において磁場が均等に印加されるようになる。仮に、試料容器11を磁場に垂直な水平方向に沿って試料容器11に近づけると、試料容器11の、水平方向において磁場印加部12に近い部分から順に磁場が印加される。この場合、先に磁場が印加された部分に検出対象物Tが移動して、試料容器11の内部における検出対象物Tの分布が不均一になり、検出対象物Tが適切に撮像できなくなるおそれがある。試料容器11を磁場と概ね平行である鉛直方向に沿って磁場印加部12に近づけることにより、このような弊害が防止され、検出対象物Tが適切に撮像される。
【0075】
なお、鉛直上方とは、厳密な鉛直上方に限られない。鉛直上方とは、試料容器11を移動させることにより検出対象物Tの分布が不均一にならない程度に、磁場の方向との間になす角度が小さい方向であればよい。
【0076】
好ましくは、移動機構13は、試料容器11が鉛直上方に向かって移動される前に、水平方向に沿って試料容器11を移動させる。試料容器11は、単一の駆動部137によって鉛直上方および水平方向にそれぞれ移動される。移動機構13が試料容器11を水平方向に移動させることにより、容器保持部136が任意の位置に移動可能となる。したがって、検出装置1は、作業者が試料容器11を容易に容器保持部136に載置することを可能とする。また、試料容器11が単一の駆動部137によって移動されることにより、移動機構13は複数の駆動部を有する必要がなくなる。したがって、検出装置1は、移動機構13の構成を簡易にすることを可能とする。
【0077】
なお、試料容器11が水平方向に移動されるとは、試料容器11が厳密に水平方向に移動される場合に限られない。試料容器11が水平方向に移動されるとは、水平方向の変位を含むような任意の軌道に従って移動されることを含む。試料容器11が鉛直方向に沿って移動される前には、試料容器11は磁場の影響を受けないような距離だけ磁場印加部12から離間しているため、試料容器11は作業者の作業の利便性を向上させるような任意の軌道に従って移動されてよい。
【0078】
好ましくは、試料容器11は、内壁115によって区画されて試料が収容される第1収容空間116、内壁115を囲む第2収容空間117および蓋部112を有する。蓋部112は、透光性を有する平板状の窓部119を有し、内壁115の上端に当接し、窓部119が第1収容空間116の上方に位置するように第1収容空間116を覆う。内壁115の上部は、第1収容空間116に試料を収容したときに試料の上面が内壁115の上端よりも上部に突出するように、疎水性を有して形成される。これにより、検出装置1は、検出対象物Tをより適切に撮像することを可能とする。
【0079】
すなわち、試料容器11が第1収容空間116および第2収容空間117を有し、内壁115の上端が疎水性を有して形成されることにより、蓋部112が被せられたときに第1収容空間116は空気を含まずに試料で満たされる。したがって、空気と試料との間の光路長の差に起因して焦点がずれることが防止されるとともに、空気と試料との境界における反射の影響が防止されるため、検出対象物Tが適切に撮像される。また、蓋部112が平板状の窓部119を有することにより、試料と窓部119との境界面および窓部119と外気との境界面は、光学系15の光軸と直交する平面となる。したがって、光学系15から検出領域Dまでの光路長が検出領域Dの水平方向における全面にわたって概ね一様となり、検出領域Dの全体が合焦範囲に含まれやすくなるため、検出対象物Tが適切に撮像される。
【0080】
好ましくは、移動機構13は、磁場印加部12に当接した試料容器11を押圧する。試料容器11が磁場印加部12に押圧されることにより、試料が収容されたときに試料容器11の蓋部112の下面が収容部111の外壁114または内壁115に当接していなかったとしても、押圧により蓋部112が外壁114または内壁115に当接する。したがって、第1収容空間116がより確実に試料に満たされるとともに、試料と窓部119との境界面および窓部119と外気との境界面は、より確実に光学系15の光軸と直交する平面となる。これにより、検出装置1は、検出対象物Tをより適切に撮像することを可能とする。
【0081】
上述した説明では、移動機構13は、鉛直上方に向かって試料容器11を移動させて磁場印加部12に当接させるものとしたが、このような例に限られない。試料容器11は、試料容器11を任意の方向に移動させて磁場印加部12に当接させてもよい。図1に示すように、窓部119が検出領域Dの全部を覆っており、検出領域Dの全部が撮像部16によって撮像可能である場合には、磁場に直交する方向における磁場の変化の影響を受けたとしても、検出領域Dに含まれる検出対象物Tを適切に検出することができる。
【0082】
上述した説明では、移動機構13は、試料容器11が鉛直上方に向かって移動される前に、水平方向に沿って試料容器11を移動させるものとしたが、このような例に限られない。移動機構13は、試料容器11を水平方向に沿って移動しなくてもよい。例えば、磁場印加部12の下方に十分な空間がある場合には、容器保持部136を磁場印加部12の下方に配置しておき、作業者は磁場印加部12の下方に配置された容器保持部136に試料を収容した試料容器11を保持させる。移動機構13は、容器保持部136に保持された試料容器11を鉛直方向にのみ移動させる。この場合、移動機構13は、第2レール133,容器保持部136および容器保持部136を磁場と平行な方向に沿って移動させる駆動部137を有していればよい。これにより、移動機構13の構成が簡素化される。
【0083】
上述した説明では、移動機構13の第1移動部132の移動範囲を規制するために、第1レール131が規制部131aを有するものとしたが、このような例に限られない。移動機構13は、第1移動部132の移動範囲を規制可能な任意の構成を有してよい。例えば、移動機構13は、規制部として、容器保持部136の端部136eに当接する壁を有してもよい。容器保持部136は第1移動部132に伴って平行移動するため、容器保持部136の端部136eが壁に当接することにより、第1移動部132の移動範囲が規制される。
【0084】
上述した説明では、試料容器11の内壁115の上面は平坦であるものとしたが、このような例に限られない。試料容器11の内壁115の上面は、上方に湾曲または屈曲して突出していてもよい。これにより、蓋部112が被せられたときに内壁115の上面が蓋部112の下面に嵌合するようになるため、第1収容空間116の気密性が向上する。
【0085】
上述した説明では、試料容器11は、第1収容空間116と第2収容空間117とを有する二重構造の容器であるものとしたが、このような例に限られない。試料容器11は、二重構造でない容器であってもよい。この場合も、作業者が、試料容器11の内部が試料で満たされるように試料を収容することにより、検出対象物Tをより適切に撮像することが可能となる。
【0086】
上述した説明では、検出対象物Tは蛍光標識物質Eおよび磁気応答性物質Mと結合するものとしたが、このような例に限られず、検出対象物Tは蛍光標識物質Eとは結合されなくてもよい。検出対象物Tが撮像画像において認識可能となるような大きさを有している場合には、蛍光標識物質Eを用いなくても検出対象物Tを撮像することができる。
【0087】
図9は、他の実施形態に係る検出装置2の構成を示す模式図である。検出装置2は、磁場印加部12に代えて磁場印加部22を有する点で検出装置1と相違する。磁場印加部22は、当接センサ225をさらに有する点で磁場印加部12と相違する。検出装置2の他の構成は検出装置1の対応する構成と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
当接センサ225は、検出部の一例である。当接センサ225は、試料容器11が磁場印加部12に当接したことを検出するセンサであり、磁場印加部12の試料容器11に対向する面に配置される。当接センサ225は、例えば、接触検出センサ、測距センサ、振動検出センサ等である。当接センサ225は、試料容器11が磁場印加部12に当接したことを検出した場合、処理部19に検出信号を供給する。
【0089】
検出処理のステップS15において試料容器11が移動されて磁場印加部12に当接した場合、ステップS17において、撮像制御部193は当接センサの検出結果に基づいて、検出領域Dを撮像するように撮像部16を制御する。例えば、撮像制御部193は、当接センサから検出信号を取得する。撮像制御部193は、検出信号を取得したことに応じて、撮像部16に制御信号を供給して、撮像部16に検出領域Dを撮像させて撮像画像を生成する。
【0090】
このように、検出装置2において、当接センサ225は、容器が磁場印加部12に当接したことを検出する。検出装置2は、当接センサ225の検出結果に基づいて、検出領域Dを撮像するように撮像部を制御する撮像制御部193を有する。すなわち、撮像部16は、試料容器11が磁場印加部12に当接したことに応じて自動的に検出領域Dを撮像する。これにより、検出装置2は、作業者の検出処理における作業負担を低減することを可能とする。
【0091】
この場合、試料容器11が磁場印加部12に当接したことに応じて自動的に検出領域Dが撮像されるため、ステップS15の前にステップS16を実行することが好ましい。
【0092】
図10(A)および図10(B)は、他の実施形態に係る検出装置が有する移動機構33の動作について説明するための模式図である。移動機構33は、傾斜部134bおよび連結部135に代えて傾斜部334bおよび連結部335を有する点で移動機構13と相違する。移動機構33の他の構成は移動機構13と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0093】
傾斜部334bは、脚部134aから第1移動部132の側に向かって延伸する部材である。傾斜部334bは、第1移動部132の側に近づくにつれて高さが低くなるように傾斜した上面を有する。
【0094】
連結部335は、圧縮コイルばね等の弾性体である。連結部335は、両端が第1移動部132の結合部材132cおよび第2移動部134の結合部材134dにそれぞれ結合されることにより、第1移動部132と第2移動部134とを連結する。連結部335は、第1移動部132と第2移動部134とが近接した場合に、第1移動部132と第2移動部134とを弾性力により離間させる。
【0095】
図10(A)に示すように、最初に、第1移動部132は、脚部132bが範囲Rのうち最も駆動部137に近い位置となるように配置される。この状態で駆動部137が駆動されると、駆動部137は第2移動部134を駆動部137から離れる方向D3に平行移動させる。第2移動部134が方向D3に平行移動したことに伴い、連結部335によって第2移動部134に連結された第1移動部132も方向D3に平行移動する。第1移動部132が平行移動したことに伴い、第1移動部132の上面から延伸する第2レール133に係合する容器保持部136も方向D3に平行移動する。すなわち、この状態では、第1移動部132、第2移動部134および容器保持部136は、連結部335の伸縮による影響を除き、相互に略等しい速度で方向D3に平行移動する。これにより、容器保持部136に保持された試料容器11は水平方向に移動する。
【0096】
図10(B)に示すように、第1移動部132の脚部132bが範囲Rのうち最も駆動部137から遠い位置に到達すると、第1移動部132および容器保持部136は方向D3への移動を停止する。移動機構13は、第1移動部132および容器保持部136が方向D3への移動を停止したときに、試料容器11の検出領域Dが磁場印加部12の開口123の下方に位置するように配置される。
【0097】
第1移動部132および容器保持部136が方向D3への移動を停止した後も、第2移動部134は、連結部135の弾性力に抗して方向D3への移動を継続する。すなわち、第1移動部132および容器保持部136に対して、第2移動部134が相対的に移動する。この状態で、傾斜部334bの上面がローラ136cに接触すると、ローラ136cは傾斜部334bの上面の法線方向に抗力Qを受ける。容器保持部136は、第2レール133に係合することにより、鉛直方向に平行移動可能であるとともに水平方向への移動が規制されているから、抗力Qを受けて、水平方向である方向D1に移動することなく鉛直方向である方向D2に平行移動する。これにより、容器保持部136に保持された試料容器11は鉛直方向に移動する。
【0098】
第1移動部132および容器保持部136が方向D3への移動を停止したとき、すなわち試料容器11が鉛直方向に移動する前には、試料容器11は、磁場印加部12が印加する磁場の影響を受けないような距離だけ磁場印加部12から離間している。すなわち、試料容器11が鉛直方向に移動する前には、検出対象物Tは検出領域Dに移動していない。検出対象物Tは、試料容器11が鉛直方向に移動している間に検出領域Dへの移動を開始する。
【0099】
移動機構33は、試料容器11が磁場印加部12に当接するまで試料容器11を鉛直方向に移動させる。また、試料容器11が磁場印加部12に当接した後も駆動部137は継続して駆動し、容器保持部136は磁場印加部12に当接した試料容器11を下方から押圧する。
【0100】
このようにして、移動機構33は、水平方向に沿って試料容器11を移動させた後に、磁場印加部12の下方から鉛直上方に向かって試料容器11を移動させて磁場印加部12に当接させる。
【0101】
当業者は、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 検出装置
11 試料容器
114 外壁
115 内壁
116 第1収容空間
117 第2収容空間
119 窓部
12 磁場印加部
123 開口
13 移動機構
15 光学系
16 撮像部
図1
図2
図3
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図7
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図10