(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151676
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】防水シート接合装置および防水シート接合方法
(51)【国際特許分類】
E04D 15/06 20060101AFI20231005BHJP
E04D 5/14 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04D15/06 J
E04D5/14 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061422
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩和
(57)【要約】
【課題】防水シートの敷設施工時において、作業者が防水シート接合装置を前方側に押す際に、ノズルの先端を視認性良く作業者により視認して、防水シート同士の重なり部における、防水シート同士の接合を、優れた精度で実施することができる防水シート接合装置、および、かかる防水シート接合装置を用いた防水シート接合方法を提供すること。
【解決手段】防水シート接合装置1は、供給系10と走行系9とを備え、供給系10は、貯留部2と、液状材料を重なり部101に吐出するノズル5とを有し、走行系9は、車体91と、車体91の前方側に配置されたノズル支持部3と、車体91の後方側に上方向に伸びて設けられたポール96とを有し、ノズル5から後方125cm、高さ150cmの位置からノズル5を見たときに、車体91が配置された床面となす角度をθ1とし、ポール96と床面とがなす角度をθ2としたとき、40≦θ1≦θ2なる関係を満足する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水性を有する防水シートを、溶剤または接着剤を含む液状材料を用いて、躯体としての床面に敷設する際に用いられる防水シート接合装置であって、
前記液状材料を前記防水シートに供給する供給系と、
フレームと該フレームに回転可能に支持された車輪とを有し、該車輪の回転により前記供給系ごと前進方向に沿って走行する車体と、前記フレームの後方側から上方向に向かって伸びるポールと該ポールの先端に設けられたハンドルとを有する操舵部と、を有する走行系とを備え、
前記防水シートが有する第1防水シートと第2防水シートとを、前記前進方向に沿って、前記第2防水シートを下側として縁部で重ね合わせることで形成された重なり部に前記液状材料を供給することにより、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが接合され、
前記供給系により、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが重なる前記重なり部に、前記液状材料が供給された後に、前記走行系が備える回転可能に支持されたローラにより、前記液状材料が供給された前記重なり部を、前記第1防水シートの表側から転圧するように構成されており、
前記供給系は、前記液状材料を貯留する貯留部と、前記液状材料を前記重なり部に吐出するノズルと、前記液状材料が通過する流路とを有し、これらが前記貯留部と前記ノズルとが前記流路を介して連通されており、
前記走行系は、さらに、前記車体の前方側に配置された、前記ノズルを支持するノズル支持部を有し、
前記ノズルから後方125cm、高さ150cmの位置から前記ノズルを見たときに、前記車体が配置された前記床面となす角度をθ1[°]とし、前記ポールと前記床面とがなす角度をθ2[°]としたとき、40≦θ1≦θ2なる関係を満足することを特徴とする防水シート接合装置。
【請求項2】
前記走行系は、前記車体と前記ノズル支持部との間に位置するノズル支持部揺動機構を有し、
前記ノズル支持部揺動機構は、内側に空間を備える枠状をなしている請求項1に記載の防水シート接合装置。
【請求項3】
前記角度θ1は、40°以上60°以下である請求項1または2に記載の防水シート接合装置。
【請求項4】
前記角度θ2は、40°以上90°以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の防水シート接合装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の防水シート接合装置を用いて、前記防水シートを接合する接合工程を有することを特徴とする防水シート接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シート接合装置および防水シート接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高耐久化が求められるのに伴って、多くの建築物の屋上やベランダ等の床部において、防水シートを敷設施工したシート防水構造が採用されている。
【0003】
このシート防水構造では、躯体としての床部に対する防水シートの敷設において、例えば、2枚の防水シートの縁部同士を上下に重ね合わせて、その重なり部を接着剤によって接合した構成をなすものが知られている。
【0004】
防水シート同士の重なり部を接着剤により接合する際に、供給装置を用いて前記重なり部に接着剤を供給することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の供給装置は、接着剤を貯留するタンクと、タンクに接続され、接着剤が通過するチューブと、チューブの前記タンクと反対側に位置する先端部に接続され、接着剤を前記重なり部に排出(供給)するノズルとを有している。
【0006】
この供給装置では、供給装置を作業者が前方側に押すことで、供給装置を防水シート同士の重なり部に沿って移動させる際に、タンクに貯留された接着剤を、チューブを介して、供給装置の前方側に配置されたノズルの先端から、防水シート同士の重なり部に供給し、その後、上側に位置する防水シートを表側から、供給装置がノズルよりも後方側に備えるローラで転圧することで、防水シート同士の重なり部において、防水シート同士が接合される。
【0007】
かかる構成の供給装置では、防水シート同士の重なり部に対して安定的に接着剤を供給するには、防水シート同士の重なり部に沿った供給装置の移動の際に、防水シート同士の重なり部に対応して、ノズルの先端が位置ズレすることなく配置されていることが求められる。
【0008】
そのため、防水シートの敷設施工時において、作業者が供給装置を前方側に押す際には、ノズルの先端が作業者により視認され、これにより、ノズルの先端の位置ズレを防止するために、供給装置の位置修正を行いつつ、供給装置を前方側に移動させ得ることが求められる。しかしながら、現状の供給装置では、作業者によるノズルの先端の視認性にまで考慮されていないのが実情であった。
【0009】
また、このような問題は、特許文献1に記載の供給装置を用いて、タンクに貯留された接着剤を、防水シート同士の重なり部に供給する場合に限らず、接着剤に代えて溶剤を液状材料としてタンクに貯留し、この溶剤を防水シート同士の重なり部に供給して、溶剤により防水シート同士を溶着する場合にも、同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、防水シートの敷設施工時において、作業者が防水シート接合装置を前方側に押す際に、ノズルの先端を視認性良く作業者により視認して、防水シート同士の重なり部における、防水シート同士の接合を、優れた精度で実施することができる防水シート接合装置、および、かかる防水シート接合装置を用いた防水シート接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、下記(1)~(5)に記載の本発明により達成される。
(1) 防水性を有する防水シートを、溶剤または接着剤を含む液状材料を用いて、躯体としての床面に敷設する際に用いられる防水シート接合装置であって、
前記液状材料を前記防水シートに供給する供給系と、
フレームと該フレームに回転可能に支持された車輪とを有し、該車輪の回転により前記供給系ごと前進方向に沿って走行する車体と、前記フレームの後方側から上方向に向かって伸びるポールと該ポールの先端に設けられたハンドルとを有する操舵部と、を有する走行系とを備え、
前記防水シートが有する第1防水シートと第2防水シートとを、前記前進方向に沿って、前記第2防水シートを下側として縁部で重ね合わせることで形成された重なり部に前記液状材料を供給することにより、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが接合され、
前記供給系により、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが重なる前記重なり部に、前記液状材料が供給された後に、前記走行系が備える回転可能に支持されたローラにより、前記液状材料が供給された前記重なり部を、前記第1防水シートの表側から転圧するように構成されており、
前記供給系は、前記液状材料を貯留する貯留部と、前記液状材料を前記重なり部に吐出するノズルと、前記液状材料が通過する流路とを有し、これらが前記貯留部と前記ノズルとが前記流路を介して連通されており、
前記走行系は、さらに、前記車体の前方側に配置された、前記ノズルを支持するノズル支持部を有し、
前記ノズルから後方125cm、高さ150cmの位置から前記ノズルを見たときに、前記車体が配置された前記床面となす角度をθ1[°]とし、前記ポールと前記床面とがなす角度をθ2[°]としたとき、40≦θ1≦θ2なる関係を満足することを特徴とする防水シート接合装置。
【0013】
(2) 前記走行系は、前記車体と前記ノズル支持部との間に位置するノズル支持部揺動機構を有し、
前記ノズル支持部揺動機構は、内側に空間を備える枠状をなしている上記(1)に記載の防水シート接合装置。
【0014】
(3) 前記角度θ1は、40°以上60°以下である上記(1)または(2)に記載の防水シート接合装置。
【0015】
(4) 前記角度θ2は、40°以上90°以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の防水シート接合装置。
【0016】
(5) 上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の防水シート接合装置を用いて、前記防水シートを接合する接合工程を有することを特徴とする防水シート接合方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ノズルから後方125cm、高さ150cmの位置からノズルを見たときに、車体が配置された床面となす角度をθ1とし、ポールと床面とがなす角度をθ2としたとき、40≦θ1≦θ2なる関係を満足している。そのため、防水シートの敷設施工時において、作業者が防水シート接合装置を前方側に押す際に、ノズルの先端を視認性良く作業者により視認することができる。したがって、作業者は、防水シート接合装置を用いた、防水シート同士の重なり部における、防水シート同士の接合、すなわち、防水シートの敷設施工を、優れた精度で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の防水シート接合装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印A方向である側面視で見た側面図である。
【
図3】
図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印C方向である正面視で見た正面図である。
【
図4】
図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印B方向である平面視で見た平面図である。
【
図5】
図1に示す防水シート接合装置が備える供給系の構成を示す模式図である。
【
図6】
図1に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大側面図である。
【
図7】
図1に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図である。
【
図8】
図1に示す防水シート接合装置が備えるノズル支持部を拡大して示す部分拡大斜視図である。
【
図9】
図1に示す防水シート接合装置が備えるノズル支持部を拡大して示す部分拡大側面図である。
【
図10】
図1に示す防水シート接合装置が備える開閉弁を拡大して示す部分拡大縦断面図である。
【
図11】本発明の防水シート接合装置の第2実施形態が備える押圧部を拡大して示す部分拡大側面図である。
【
図12】本発明の防水シート接合装置の第2実施形態が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図である。
【
図13】本発明の防水シート接合装置の第3実施形態が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図である。
【
図14】防水シートの施工状態の一例を示す分解斜視図である。
【
図15】防水シートの施工状態の一例を示す分解斜視図である。
【
図16】
図14に示す防水シートの施工状態の他の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の防水シート接合装置および防水シート接合方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
本発明の防水シート接合装置は、防水性を有する防水シートを、溶剤または接着剤を含む液状材料を用いて、躯体としての床面に敷設する際に用いられる防水シート接合装置であって、前記液状材料を前記防水シートに供給する供給系と、フレームと該フレームに回転可能に支持された車輪とを有し、該車輪の回転により前記供給系ごと前進方向に沿って走行する車体と、前記フレームの後方側から上方向に向かって伸びるポールと該ポールの先端に設けられたハンドルとを有する操舵部と、を有する走行系とを備え、前記防水シートが有する第1防水シートと第2防水シートとを、前記前進方向に沿って、前記第2防水シートを下側として縁部で重ね合わせることで形成された重なり部に前記液状材料を供給することにより、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが接合され、前記供給系により、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが重なる前記重なり部に、前記液状材料が供給された後に、前記走行系が備える回転可能に支持されたローラにより、前記液状材料が供給された前記重なり部を、前記第1防水シートの表側から転圧するように構成されており、前記供給系は、前記液状材料を貯留する貯留部と、前記液状材料を前記重なり部に吐出するノズルと、前記液状材料が通過する流路とを有し、これらが前記貯留部と前記ノズルとが前記流路を介して連通されており、前記走行系は、さらに、前記車体の前方側に配置された、前記ノズルを支持するノズル支持部を有し、前記ノズルから後方125cm、高さ150cmの位置から前記ノズルを見たときに、前記車体が配置された床面となす角度をθ1[°]とし、前記ポールと前記床面とがなす角度をθ2[°]としたとき、40≦θ1≦θ2なる関係を満足する。
【0021】
本発明の防水シート接合装置では、上記の通り、ノズルから後方125cm、高さ150cmの位置から前記ノズルを見たときに、前記車体が配置された床面となす角度をθ1とし、前記ポールと前記床面とがなす角度をθ2としたとき、40≦θ1≦θ2なる関係を満足する。このような、ノズルから後方125cm、高さ150cmの位置とは、防水シートの敷設(接合作業)を行なう作業者がハンドル93を把持した際に、作業者が、その自身の眼を容易に配置し得る位置であると言うことができ、その位置からノズルを見たときの床面となす角度θ1と、ポールと床面とがなす角度θ2との関係式が40≦θ1≦θ2を満足することで、防水シートの敷設施工時において、作業者が防水シート接合装置を前方側に押す際に、ノズルの先端を視認性良く作業者により視認することができる。したがって、作業者は、防水シート接合装置を用いた、防水シート同士の重なり部における、防水シート同士の接合、すなわち、防水シートの敷設施工を、優れた精度で実施することができる。以下、この防水シート接合装置について詳述する。
【0022】
<<防水シート接合装置>>
<第1実施形態>
図1は、本発明の防水シート接合装置の第1実施形態を示す斜視図、
図2は、
図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印A方向である側面視で見た側面図、
図3は、
図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印C方向である正面視で見た正面図、
図4は、
図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印B方向である平面視で見た平面図、
図5は、
図1に示す防水シート接合装置が備える供給系の構成を示す模式図、
図6は、
図1に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大側面図、
図7は、
図1に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図、
図8は、
図1に示す防水シート接合装置が備えるノズル支持部を拡大して示す部分拡大斜視図、
図9は、
図1に示す防水シート接合装置が備えるノズル支持部を拡大して示す部分拡大側面図、
図10は、
図1に示す防水シート接合装置が備える開閉弁を拡大して示す部分拡大縦断面図、
図14は、防水シートの施工状態の一例を示す分解斜視図、
図15は、防水シートの施工状態の一例を示す分解斜視図、
図16は、
図14に示す防水シートの施工状態の他の構成例を示す斜視図である。
【0023】
なお、
図8中、(a)は、ノズルの先端が-y軸側に位置する状態を示し、(b)は、ノズルの先端が+y軸側に位置する状態を示しており、
図9中、(a)は、走行系が備える車体に対して、ノズルが相対的に下側に位置する状態を示し、(b)は、走行系が備える車体に対して、ノズルが相対的に上側に位置する状態を示している。
【0024】
【0025】
図1に示す防水シート接合装置1(以下、単に「接合装置」と言うこともある)は、防水性を有する防水シート100を、液状材料としての溶剤Q(可溶性溶剤)または接着剤を用いて、防水シート100の重なり部101において、接合する際に用いられる装置であるが、本実施形態では、溶剤Qを用いて溶着により接合する場合について説明する。
【0026】
また、防水シート100は、躯体に対して敷設(施工)されるが、この躯体としては、特に限定されず、例えば、屋上やベランダ等が挙げられ、この躯体が備える床面(床部)に対して、接合装置1を用いて防水シート100が敷設(施工)される。
【0027】
ところで、接合装置1を用いて、防水シート100同士が縁部において重なる重なり部101で接合して、躯体の床面に敷設される防水シート100の敷設態様としては、特に限定されず、例えば、
図14や
図15に示す態様がある。
【0028】
図14に示す態様では、帯状の防水シート100(以下「防水シート100A」と言うこともある)と、防水シート100Aよりも幅が大きい2枚の防水シート100(以下「防水シート100B」と言うこともある)とを備えている。防水シート100B同士が間を開けて隣り合って、躯体の床面に、敷設されている。防水シート100Aは、防水シート100B同士の間を埋めるように、上側から敷設されている。そして、防水シート100Aと各防水シート100Bとは、縁部が重なることで重なり部101を形成しており、この重なり部101が接合しろとなって、接合装置1を用いて接合されることで、防水シート100が床面に敷設される。すなわち、躯体が備える床面(床部)が防水シート100で被覆され、これにより、躯体の床面に防水が施される。
【0029】
なお、
図14に示す態様では、防水シート100Bを、断熱パネル150B、すなわち、いわゆる「塩ビ鋼板」等に代えることもできる。具体的には、
図16に示すように、断熱パネル150Bは、隣り合う2つのものが、これら同士の間を開けることなく、縁部同士を突き合わせるようにして配置され、この状態で、母屋160に固定されている。そして、2つの断熱パネル150Bの縁部同士を突き合わせることで形成された境界部151を覆うように、耐火シート155が接合され、さらに、境界部151の耐火シート155が接合された領域を包含するように、防水シート100Aが接合されている。この断熱パネル150B同士の境界部151に対する、耐火シート155を介した防水シート100Aの接合に接合装置1が用いられ、この防水シート100Aの接合により、母屋160に断熱パネル150Bを敷設することで形成された床面に防水が施される。
【0030】
ここで、断熱パネル150Bは、内層がガルバリウム鋼板(登録商標)やステンレス鋼板等の各種鋼板(金属板)や断熱層からなる基板で構成され、最外層が防水シート100Bと同様に防水性を有するシート(防水シート)で構成された防水層(塩ビ層)からなるものである。すなわち、本発明では、基板上に形成された防水層をも、防水シート100B(第2防水シート)と言うこととする。換言すれば、
図16に示す態様では、基板上に形成された防水層と、防水シート100Aとの接合に、接合装置1が用いられる。
【0031】
なお、
図16に示す、2つの断熱パネル150Bのうちのいずれか一方は、母屋160等の構成によっては、防水シート100Bで構成することもできる。
【0032】
また、
図14に示す態様では、2つの防水シート100B同士の間を開けて、2つの防水シート100B同士を隣り合うように配置したが、これに限定されず、
図16に示すように、2つの断熱パネル150B(換言すれば防水シート100B)は、これら同士の間を開けることなく、2つの断熱パネル150Bの縁部同士を突き合わせるようにして配置させることもできる。
【0033】
図15に示す態様では、躯体の床面に平行となるように敷設された、防水シート100B同士(以下、上側に位置するものを「防水シート100BA」、下側に位置するものを「防水シート100BB」と言うこともある)が縁部で重なり合うことで重なり部101(重ね合わせ部)を形成している。そして、この重なり部101が接合しろとなって、接合装置1を用いて接合されることで、防水シート100が床面に敷設される。すなわち、躯体が備える床面(床部)が防水シート100で被覆され、これにより、躯体の床面に防水が施される。
【0034】
なお、
図15に示す態様では、2つの防水シート100Bのうちの下側の防水シート100BBを、前述した断熱パネル150Bに代えてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、一例として、
図15に示す態様の接合に接合装置1を用いる場合について説明する。
【0036】
なお、床面に敷設される防水シート100の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリ塩化ビニルであるのが好ましい。ポリ塩化ビニルは、溶剤溶着性に優れる。そのため、接合装置1から供給される溶剤Qで溶着により防水シート100同士を接合することで、防水シート100同士の密着性を向上させることができる。
【0037】
上記のような、躯体が備える床面に対する防水シート100の敷設に、防水シート接合装置1が用いられ、この接合装置1は、
図1に示すように、溶剤Qを防水シート100に供給する供給系10と、供給系10ごと走行する走行系9と、を備えている。以下、接合装置1が備える各部の構成について説明する。
【0038】
走行系9は、供給系10ごと走行する車体91と、車体91の下部に前後方向に回転可能に支持されたローラ92Aを有する押圧部7と、供給系10が有するノズル5を支持するノズル支持部3と、ノズル支持部3を車体91に±z軸方向に移動可能に支持するノズル支持部揺動機構6と、車体91の上部に支持、固定されたハンドル93とを有している。
【0039】
車体91は、フレーム94と、車体91(フレーム94)の下部に、前後方向にそれぞれ回転可能に支持された2つ(1対)の車輪92Bおよび2つ(1対)のキャスター92Cとを備えている。
【0040】
フレーム94は、
図1~
図4に示すように、1つの天板941と、2つの側板942と、4つの突出板943とを有している。これらのうち、1つの天板941は、平面形状が四角形状をなすx軸方向に伸びる平板であり、その平面がxy平面とほぼ平行をなして配置されて、フレーム94の本体部を構成している。また、2つの側板942は、x軸方向に伸びる長尺物であり、天板941を介してy軸方向に、その平面がyz平面とほぼ平行をなして並べられて配置された状態で、天板941に接合している。さらに、4つの突出板943は、平面形状が四角形状をなす小片板であり、天板941の4角に対応する位置おいて、その平面がxy平面とほぼ平行をなして配置された状態で、それぞれ、側板942に接合することで、側板942(天板941)から突出するように設けられた突出部を構成している。
【0041】
フレーム94には、天板941の4角に対応する位置に、それぞれ、側板942から突出して突出板943が設けられ、これらのうち、+x軸方向側(前方側)に位置する2つの突出板943に、その下側において、2つの(1対)の車輪92Bがy軸方向に沿って対向するように配置され、また、-x軸方向側(後方側)に位置する2つの突出板943に、その下側において、2つの(1対)のキャスター92Cがy軸方向に沿って対向するように配置されている。すなわち、フレーム94は、その前方側において2つの車輪92Bを備え、その後方側において2つのキャスター92Cを備えている。
【0042】
これら車輪92Bおよびキャスター92Cのうち、各車輪92B(第1車輪)は、z軸方向(鉛直方向)の軸周りに旋回が規制されて、前後方向すなわち±x軸方向に沿って回転可能に突出板943に支持されている。換言すれば、各車輪92Bは、旋回することなく、y軸周りに回転すること、すなわち、前後方向に沿った回転のみが許容される。
【0043】
また、各キャスター92Cは、z軸方向(鉛直方向)の軸周りに旋回可能に、かつ、この旋回に伴い、前後方向から左右方向まで、すなわち±x軸方向から±y軸方向までの範囲内で連続的に旋回し、その旋回した方向に沿って回転可能に突出板943に支持されている。換言すれば、各キャスター92Cは、z軸方向(上下方向)の軸周りでの旋回と、前記旋回に伴う、前後方向から左右方向までの任意の方向に沿った回転との双方が許容される。
【0044】
かかる構成をなす車輪92Bおよびキャスター92Cを備える接合装置1において、各車輪92Bおよび各キャスター92Cが前後方向に回転することにより、接合装置1(走行系9)は、供給系10ごと走行することができる。すなわち、防水シート100の接合作業を行なう作業者は、ハンドル93を把持した状態で、各車輪92Bおよび各キャスター92Cを+x軸方向(前方方向)に回転させることで、車体91すなわち接合装置1は、+x軸方向(前方方向)に前進し、各車輪92Bおよび各キャスター92Cを-x軸方向に回転させることで、車体91すなわち接合装置1は、-x軸方向に後進する。そして、接合装置1の+x軸方向への前進および-x軸方向への後進の際に、対向する車輪92Bは、それぞれ、x軸方向(前進方向)に沿った対をなす車輪走行ラインLkを走行し、対向するキャスター92Cは、それぞれ、x軸方向(前進方向)に沿った対をなす車輪走行ラインLkを走行する。より詳しくは、y軸方向(左右方向)において対向する車輪92Bおよびキャスター92Cのうち、+y軸方向側に位置する車輪92Bおよびキャスター92Cは、車輪走行ラインLk1を走行し、-y軸方向側に位置する車輪92Bおよびキャスター92Cは、車輪走行ラインLk2を走行する。
【0045】
また、接合装置1(走行系9)において、前述の通り、フレーム94の+x軸方向側(前方側)に、旋回することなく、前後方向に沿った回転のみが許容される1対の車輪92Bが設けられ、また、フレーム94の-x軸方向側(後方側)に、z軸方向の軸周りでの旋回と、前後方向から左右方向までの任意の方向に沿った回転との双方が許容される1対のキャスター92Cが設けられている。さらに、防水シート100の接合作業の際に、作業者が把持するハンドル93は、後述の通り、フレーム94の後方側に、その上方に向かって突出したポール96を介して支持されている。
【0046】
そのため、作業者が防水シート100の接合作業を行なう際に、作業者がハンドル93を把持した状態で、接合装置1(走行系9)を、+x軸方向(前方方向)に前進させたとき、接合装置1(車体91)は後輪操舵がなされる。このように、走行系9を、後輪操舵がなされるものとすることで、-x軸方向側に位置するキャスター92Cの±y軸方向へのハンドル93による操作により、+y軸方向側に位置する車輪92Bの車輪走行ラインLk1に沿った走行、および、-y軸方向側に位置する車輪92Bの車輪走行ラインLk2に沿った走行を、優れた精度で実施することができる。したがって、車輪92Bと同様に、+x軸方向側に位置するノズル5のローラ走行ラインLsに沿った走行、さらには、ノズル5よりも-x軸方向側に位置する押圧部7が備えるローラ92Aのローラ走行ラインLsに沿った走行を、優れた精度で実施することができる。よって、接合装置1の+x軸方向側への移動を、作業者によるハンドル93を+x軸方向側に押すことで実施した際に、ノズル5およびローラ92Aを、ローラ走行ラインLs上に位置する防水シート100B同士の重なり部101に対応して、継続的に位置精度よく配置させることができる。したがって、作業者は、接合装置1を用いて、防水シート100B同士の重なり部101において、防水シート100B同士を優れた精度で接合することができる。
【0047】
ハンドル93は、車体91におけるフレーム94が備える側板942後方側に接続された接続部材944の中央部から、上方に向かって突出したポール96に支持、固定されている。
【0048】
これにより、防水シート100の接合作業を行なう作業者は、ハンドル93を把持して、その状態で、接合装置1を+x軸方向(前進方向)に押し込んだり、または、接合装置1を-x軸方向に引き込んだりすることで、接合装置1を+x軸方向(前進方向)に前進させたり、または、接合装置1を-x軸方向(後退方向)に後進させたりする操作を行うことができる。
【0049】
また、ポール96には、その途中に、以下で説明する供給系10が備える貯留部2が移動可能に固定して設けられている。
【0050】
また、ポール96には、その途中に、以下で説明する供給系10が備えるレバー44が設けられている。このレバー44の作業者による操作により、接合装置1を+x軸方向に前進させて、重なり部101において防水シート100B同士を接合する際、すなわち防水シート100Bの敷設施工時に、この重なり部101に対して、溶剤Qを供給することができる。さらに、溶剤Qの供給の切り替えを行うレバー44が、ポール96のように、作業者の手元の近傍に設けられていることから、溶剤の供給と非供給との切り替えを容易に行うことができる。
【0051】
このポール96は、その長さが好ましくは80cm以上110cm以下程度、より好ましくは90cm以上105cm以下程度に設定され、また、車体91が配置された床面すなわち防水シート100Bが敷設される床面とポール96とがなす角度θ2が、
図2では90°をなしているが、好ましくは40°以上90°以下程度、より好ましくは55°以上90°以下程度に設定される。これにより、防水シート100Bの敷設施工時に、ハンドル93を把持した状態で、作業者が接合装置1を前進させる際に、この前進に不要な力を要することがないため、長時間に亘って安定的に、接合装置1を前進させることができる。
【0052】
なお、このハンドル93とポール96とにより、車体91(走行系9)ひいては接合装置1の操舵をおこなう操舵部を構成する。
【0053】
押圧部7は、本実施形態では、
図1~
図4、
図6、
図7に示すように、y軸方向において対向する車輪92B同士およびキャスター92C同士の間、すなわち、x軸方向に沿った対をなす車輪走行ラインLk同士の間の位置において、x軸方向(前進方向)に沿った状態で、並んで合計3つ車体91に連結されている。
【0054】
また、各押圧部7は、y軸方向(前進方向に直交する直交方向)に並べられ間隙を介して互いに対向して配置された2枚(2つ)の側板71(連結板)と、2枚の側板71の間に配置された複数(本実施形態では、7つ)のローラ92A(押圧ローラ)と、2枚の側板71にそれぞれ連結された4つの連結部材72とを有している。
【0055】
押圧部7において、各ローラ92Aは、2枚の側板71同士(第1ローラ指示部材および第2ローラ支持部材)の間で、x軸方向(前進方向)に沿って間隔を空けて並んだ状態で、車軸(回転軸)を介して2枚の側板71に、それぞれ、その一端部と他端部とが回転可能に支持されている。そして、2つの側板71の上端において、それぞれ連結された2つの連結部材72(第1連結部材および第2連結部材)が、車体91が有する天板941に連結されることで、複数のローラ92Aが、連結部材72を介した状態で、車体91(天板941)に対して回転可能に支持されている。
【0056】
このように、本実施形態では、1つの押圧部7において、複数のローラ92Aが設けられている。なお、
図2、
図6では、1つの押圧部7が7つのローラ92Aを備えているが、その数が2つ以上であれば、7つ未満であっても、7つ以上であっても、いずれであってもよい。
【0057】
押圧部7において、各ローラ92Aは、それぞれ、その幅が重なり部101の幅を包含し得る大きさに設定されており、車体91すなわち接合装置1の走行により、車輪92Bが回転するとともに、このローラ92Aも回転する。したがって、例えば、作業者による接合装置1の操作により、車体91を+x軸方向に前進させた場合には、各車輪92Bが+x軸方向に回転し、さらに、ローラ92Aも同様に+x軸方向に回転する。また、車体91を-x軸方向に後進させた場合には、各車輪92Bが-x軸方向に回転し、さらに、ローラ92Aも同様に-x軸方向に回転する。そして、車体91の+x軸方向への前進および-x軸方向への後進の際に、ローラ92Aは、対向する車輪92Bが走行する対をなす車輪走行ラインLk同士の間において、x軸方向に沿ったローラ走行ラインLsを走行する。このローラ92Aが走行する位置が、防水シート100BBと防水シート100BAとが縁部において重なることで形成された重なり部101に対応しており、後述する供給系10が備えるノズル5から溶剤Qが供給された後に、この重なり部101を、ローラ92Aにより、防水シート100BAの表側から転圧することで、防水シート100BAと防水シート100BBとを接合することができる。
【0058】
また、かかる構成をなす各ローラ92Aは、押圧部7において、2枚の側板71(第1ローラ指示部材および第2ローラ支持部材)の間に配置された状態で、2つの側板71に、それぞれ、ローラ92Aの一端部と他端部とが回転可能に連結されている。さらに、これら2つの側板71は、合計4つの連結部材72を介して、フレーム94(天板941)に連結されている。より詳しくは、2つの側板71は、
図6、
図7に示すように、1つの側板71において、その上側の前方側および後方側の隅部に対応して、連結部材72が連結されることで、一方の側板71(第1ローラ指示部材)に対して2つの連結部材72(第1連結部材)が連結され、他方の側板71(第2ローラ指示部材)に対して2つの連結部材72(第2連結部材)が連結されている。
【0059】
さらに、一方の側板71に連結された連結部材72(第1連結部材)、および、他方の側板71に連結された連結部材72(第2連結部材)は、それぞれ、天板941に対して上下方向(z軸方向)に摺動可能に連結された軸部74(第1軸部材および第2軸部材)と、コイル状(ばね状)とされ、天板941の下側において、内側に軸部74が挿通された付勢部材としてのコイル部73(第1ばねおよび第2ばね)とを有している。そして、軸部74は、天板941に対して、コイル部73のばね力に抗した状態で連結されている。
【0060】
かかる構成をなす、付勢部材を備える連結部材72により、各押圧部7において、一方の側板71に連結された連結部材72(第1連結部材)、および、他方の側板71に連結された連結部材72(第2連結部材)が備えるコイル部73(第1ばねおよび第2ばね)が独立して伸縮することで、フレーム94(天板941)に対してローラ92Aを、その一端部および他端部(各端部)で、それぞれ独立して、上下方向(z軸方向)に揺動可能に、下方向(-z軸方向)に向かって付勢することができる(
図2、
図3、
図6、
図7参照)。
【0061】
したがって、各押圧部7において、ローラ92Aは、その一端部および他端部で、それぞれ、天板941(車体91)に対して、上下方向(z軸方向)に揺動可能に、下方向(-z軸方向)に向かって付勢される。よって、押圧部7が備えるローラ92Aで防水シート100BAを、その表側から転圧することで防水シート100BAと防水シート100BBとを接合する際に、付勢力が異なるコイル部73を軸部74に挿通することで、防水シート100BAに掛かる荷重の大きさを所望の大きさに設定することができる。
【0062】
また、防水シート100BAと防水シート100BBとを接合する際に、防水シート100を敷設する床部に凹凸すなわち段差がたとえ形成されていたとしても、ローラ92Aの一端部および他端部において、それぞれが独立して、天板941(車体91)に対して、上下方向(z軸方向)に揺動(移動)し得るため、ローラ92Aを、この凹凸の形状に対応して追従させることができる。したがって、ローラ92Aがこの凹凸を乗り越えて、床部の凹凸が形成されている位置に対応する防水シート100においても、重なり部101における、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、確実に実施することができる。すなわち、防水シート100B同士の重なり部101に対するローラ92Aによる転圧を、優れた精度で実施することができる。
【0063】
さらに、
図2、
図6に示す通り、複数のローラ92Aを備える押圧部7は、それぞれ独立して、x軸方向(前進方向)に沿った状態で、並んで合計3つ車体91に連結されている。このように、凹凸の形状に対応して追従することができるローラ92Aが1つの押圧部7に対応して複数(本実施形態では、7つ)設けられ、複数(本実施形態では3つ)の押圧部7が独立してx軸方向に沿って車体91に連結されている。各押圧部7をかかる構成をなすものとすることによって、1つの押圧部7が備える各ローラ92Aは、x軸方向に隣接するローラ92Aに対して、ほぼ影響することなく、独立して凹凸の形状に対応して追従することができる。よって、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、優れた精度で実施することができる。
【0064】
また、複数のローラ92Aを備える押圧部7では、各押圧部7が備える連結部材72のコイル部73として、ばね弾性力が異なるものを用いることで、前方に位置する押圧部7と後方に位置する押圧部7とにおいて、複数のローラ92A(ローラ群)により、防水シート100BAに掛かる荷重の大きさ(押圧力)は、前方に位置する押圧部7よりも後方に位置する押圧部7の方が大きく設定されているのが好ましい。具体的には、前方に位置する押圧部7により防水シート100BAに掛かる押圧力が2kg/押圧部であり、後方に位置する2つの押圧部7により防水シート100BAに掛かる押圧力がそれぞれ5kg/押圧部であることが好ましい。これにより、重なり部101における、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合が、前方に位置する押圧部7により仮接合がなされ、その後、後方に位置する2つの押圧部7により本接合がなされることとなる。そのため、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、より優れた強度で実施することができる。
【0065】
なお、車体91(フレーム94)に配置される押圧部7の配置数は、+x軸方向に沿って、すなわち、ローラ走行ラインLsに沿って3つであるが、3つより多くても少なくてもよく、その数に限定されず、1つであってもよい。ただし、本実施形態のように、複数設けることで、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、より確実に実施することができる。
【0066】
ノズル支持部3は、供給系10が有するノズル5を支持し、本実施形態では、
図1~
図4、
図8、
図9に示すように、車体91の前方側すなわち車体91の+x軸方向側において、ノズル支持部揺動機構6を介して、車体91に連結されている。これにより、ノズル支持部3は、ノズル5を、押圧部7が備えるローラ92Aよりも前方側(+x軸方向側)において、防水シート100B同士の重なり部101に対応して配置させる。
【0067】
ノズル支持部3は、
図8、
図9に示すように、ノズル支持部揺動機構6にxz平面に平行に回転可能に連結された第1支持部33と、ノズル5を支持する第2支持部34とを備えている。
【0068】
この第1支持部33は、2つの側板331と、底板334と、2つの軸部332と、2つの連結板336とを有している。
【0069】
これらのうち、底板334は、xy平面に平行に配置された平板であり、その-y軸方向側(右側)の端部および+y軸方向側(左側)の端部に、それぞれ、z軸方向に沿って並べられた側板331が接合されている。
【0070】
また、2つの連結板336は、それぞれ、x軸方向に伸びる長尺物であり、間隙を介してy軸方向に沿って対向して配置された状態で、-x軸方向側(後方側)の端部がノズル支持部揺動機構6の前板61に接合されている。
【0071】
さらに、2つの軸部332は、全体形状が円柱状をなしており、それぞれ、-y軸方向側(右側)の側板331および連結板336にy軸方向に沿って設けられた孔部、ならびに、+y軸方向側(左側)の側板331および連結板336にy軸方向に沿って設けられた孔部に挿通されている。これにより、第1支持部33ひいては第2支持部34は、すなわち、ノズル支持部3は、ノズル支持部揺動機構6に対して、y軸方向(左右方向)に沿って設けられた孔部に挿通された軸部332を回動中心として、xz平面に対して平行に、回動可能に固定される。したがって、軸部332は、ノズル支持部揺動機構6に対して、ノズル支持部3を、その軸周り、すなわちy軸周りに回動可能とする第1回動点を構成する。なお、第1回動点を軸周りとして、ノズル支持部3を回動可能とするノズル支持部3の構成は、かかる構成のものに限らず、例えば、後述する、第2回動点を軸周りとして、ノズル支持部揺動機構6を回動可能とするノズル支持部揺動機構6の構成を適用することによっても、第1回動点を軸周りとして、ノズル支持部3を回動可能とすることができる。
【0072】
また、第2支持部34は、側板341と、頂板342と、側板341に回転可能に支持された2つの車輪343と、流路31と頂板342とを連結する連結部材344と、頂板342とノズル5とを連結する連結部材345とを有している。
【0073】
これらのうち、側板341は、z軸方向に沿って配置された平板である。また、2つの車輪343(第2車輪)は、円盤状をなし、側板341の下端において、その側面に、互いに間隙を介して、この側板341の厚さ方向を回転軸として回転可能に支持されている。そして、車体91の前進の際に、車輪343が回転することにより、第2支持部34は、ノズル5を支持した状態で、車体91とともに走行する。
【0074】
さらに、頂板342は、xy平面に平行に配置された長尺物であり、その一方の端部に、側板341の+z軸方向側(上側)の端部が接合されている。また、連結部材344は、円柱状をなし、第1支持部33の底板334にz軸方向に沿って設けられた孔部に挿通された状態で、流路31の先端と、頂板342の他方の端部側とを連結している。これにより、流路31が第2支持部34に固定されるとともに、第2支持部34は、第1支持部33に対して、z軸方向(上下方向)に沿って設けられた孔部に挿通された連結部材344を回動中心として、xy平面に対して平行に、回動可能に固定される。
【0075】
また、連結部材345は、円柱状をなし、z軸方向に沿って配置され、+z軸方向側(上側)の端部において、頂板342の一方の端部側を、頂板342の-z軸方向側の面(下面)で連結しており、さらに、-z軸方向側(下側)の端部において、ノズル5の基端側を、ノズル5がxy平面に平行をなして側板341の反対側に突出するように、連結している。これにより、ノズル5は、第2支持部34の第1支持部33に対する、連結部材344を回動中心とした回動により、
図8(a)に示すように、ノズル5の先端が-y軸方向側(右側)を向く位置と、
図8(b)に示すように、ノズル5の先端が+y軸方向側(左側)を向く位置との双方を取り得ることができる。すなわち、ノズル5は、+x軸方向(前進方向)に対して、ノズル5の先端が正角に直交する方向(-y軸方向側)側に位置する第1の位置と、+x軸方向(前進方向)に対して、ノズル5の先端が負角に直交する方向側(+y軸方向側)に位置する第2の位置との双方を取り得ることができる。
【0076】
さらに、ノズル5は、連結部材345を介した頂板342への固定時に、2つの車輪343(第2車輪)同士の間の間隙に対応するように、配置されており、これにより、ノズル5の先端側を、防水シート100B同士の重なり部101に対応して、安定的に配置させることができる。
【0077】
また、連結部材344、連結部材345および頂板342には、それぞれ、その内部に、溶剤Qが流れる内部流路311、内部流路312および内部流路313が形成されている。そのため、
図8に示すように、連結部材344の+z軸方向側(上側)の端部において、流路31の先端側を連結し、連結部材345の-z軸方向側(下側)の端部において、ノズル5の基端側を連結することで、連結部材344、345および頂板342における内部流路を介して、流路31からの溶剤Qを、ノズル5に供給することができる。すなわち、内部流路311~313は、流路31とノズル5との間において、溶剤Qが通過する(流れる)流路を構成する。なお、以下では、特に説明しない限り、流路31と内部流路311~313とを含めて、単に流路31として説明する。
【0078】
なお、連結部材344、連結部材345および頂板342、すなわち、ノズル支持部3において、内部流路311~313が形成された部材は、溶剤Qとして強力な有機溶媒が用いられることがあるという観点からは、好ましくはステンレス鋼、中でも、より好ましくはSUS316/316L、SUS304、さらに好ましくはSUS316/316Lで構成される。これにより、連結部材344、345および頂板342が溶剤Qにより腐食されるのを、的確に抑制または防止することができる。
【0079】
さらに、第2支持部34がxy平面に対して平行に回動する回動中心の軸となる、連結部材344に対して、流路31を連結し、さらに、この連結部材344に、この軸に沿った内部流路を形成することで、流路31が第2支持部34を回動させる際の障害となるのを確実に防止して、第2支持部34を円滑に回動させることができる。
【0080】
かかる構成をなすノズル支持部3は、前述の通り、車体91の前方側において、ノズル支持部揺動機構6を介して、車体91に連結されるが、この連結される位置が、本発明では、ノズル支持部3が備えるノズル5から後方125cm、高さ150cmの位置からノズル5を見たときに、車体91が配置された床面すなわち防水シート100Bが敷設される床面となす角度をθ1とし、ポール96と床面とがなす角度をθ2としたとき、40≦θ1≦θ2なる関係を満足する位置に設定されている(
図2参照)。
【0081】
ここで、ノズル5から後方125cm、高さ150cmの位置とは、防水シート100Bの敷設(接合作業)を行なう作業者がハンドル93を把持した際に、作業者が、その自身の眼を容易に配置し得る位置であると言うことができる。そのため、その位置からノズル5を見たときの床面となす角度θ1[°]と、ポール96と床面とがなす角度θ2[°]との関係式が40≦θ1≦θ2を満足することで、防水シート100Bの敷設施工時において、作業者が接合装置1を、+x軸方向側すなわち前方側に押す際に、車体91の+z軸方向側すなわち上方側に位置するポール96やハンドル93等に遮られるのを的確に抑制または防止して、後述するノズル支持部揺動機構6の内側に形成された空間を介して、ノズル5の先端を視認性良く作業者により視認することができる。したがって、作業者は、接合装置1を用いた、防水シート100B同士の重なり部101における、防水シート100B同士の接合、すなわち、防水シート100Bの敷設施工を、優れた精度で実施することができる。
【0082】
また、角度θ1と角度θ2との関係式は、40≦θ1≦θ2を満足すればよいが、40≦0.5・θ2≦θ1≦θ2を満足するのが好ましく、40≦0.8・θ2≦θ1≦θ2を満足するのがより好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0083】
さらに、角度θ1の大きさは、具体的には、好ましくは40°以上60°以下、より好ましくは48°以上57°以下に設定される。これにより、40≦θ1≦θ2なる関係を、確実に満足させることができる。
【0084】
ノズル支持部揺動機構6は、
図1~
図4、
図8、
図9に示すように、x軸方向において、ノズル支持部3と車体91との間に位置して、ノズル5を支持するノズル支持部3を、車体91に対して±z軸方向に移動可能に支持するものである。
【0085】
このノズル支持部揺動機構6は、前板61と、2つの側板62と、軸部63と、2つの連結板64とを有している。
【0086】
これらのうち、前板61は、yz平面に平行に配置されたy軸方向に伸びる長尺物であり、その-y軸方向側(右側)の端部および+y軸方向側(左側)の端部に、それぞれ、xz平面に平行にx軸方向に沿って並べられた側板62が接合されている。このような、前板61と側板62とにより、コの字状をなす枠部材が構成される。
【0087】
また、2つの連結板64は、xz平面に平行にz軸方向に伸びる長尺物であり、間隙を介してy軸方向に沿って対向して配置された状態で、-z軸方向側(下方側)の端部が、それぞれ、フレーム94の2つの側板942の+x軸方向側(前方側)に接合されている。
【0088】
さらに、軸部63は、全体形状が円柱状(棒状)をなしており、-y軸方向側(右側)の側板62および連結板64、ならびに、+y軸方向側(左側)の側板62および連結板64にそれぞれy軸方向に沿って設けられた孔部に、挿通されている。これにより、ノズル支持部揺動機構6ひいてはノズル支持部3は、側板942(フレーム94)に対して、y軸方向(左右方向)に沿って設けられた孔部に挿通された軸部63を回動中心として、xz平面に対して平行に、回動可能に固定される。したがって、軸部63は、フレーム94ひいては車体91に対して、ノズル支持部揺動機構6を、その軸周り、すなわちy軸周りに回動可能とする第2回動点を構成する。なお、第2回動点を軸周りとして、ノズル支持部揺動機構6を回動可能とするノズル支持部揺動機構6の構成は、かかる構成のものに限らず、例えば、前述した、第1回動点を軸周りとして、ノズル支持部3を回動可能とするノズル支持部3の構成を適用することによっても、第2回動点を軸周りとして、ノズル支持部揺動機構6を回動可能とすることができる。
【0089】
以上のような構成をなしている第1支持部33および第2支持部34を備えるノズル支持部3において、前述の通り、第2支持部34は、第2支持部34が備える連結部材344を回動中心として(z軸周りに)、ノズル支持部揺動機構6に連結された第1支持部33に対して回動可能に固定されている。したがって、この第2支持部34の第1支持部33に対する回動により、
図8に示すように、第2支持部34に固定されたノズル5をも、z軸方向に沿った連結部材344の軸を回動中心として、すなわちz軸周りとして、矢印β
1方向と矢印β
2方向とに回動させることができる。
【0090】
これにより、接合装置1による防水シート100B同士の接合に先立って、ノズル5を上側に位置する防水シート100BAの裏側に挿入する(配置させる)際には、ノズル5を矢印β
1方向に回動させて、ノズル5の先端が+y軸側を向く位置(第2の位置;
図8(b)参照)とした後に、ノズル5を矢印β
2方向に回動させて、ノズル5の先端が-y軸側を向く位置(第1の位置;
図8(a)参照)とすることで、その挿入操作を比較的容易に行うことができる。また、ノズル5を防水シート100Bの裏側から抜去する際には、再度、ノズル5を矢印β
1方向に回動させることで、その抜去操作を行うことができる。このようにノズル5の挿入、抜去操作を、ノズル5をz軸周りに回動可能とすることで、迅速かつ円滑に行うことができる。したがって、作業者は、接合装置1を用いた、防水シート100B同士の重なり部101における、防水シート100B同士の接合を、優れた作業性をもって実施することができる。
【0091】
なお、頂板342と底板334とには、ノズル5の先端が-y軸側を向く位置(
図8(a)参照)と、ノズル5の先端が+y軸側を向く位置(
図8(b)参照)とした際に、互いに連通する連通孔が形成されるように、それぞれ、頂板342には2つの穴部が、底板334には1つの孔部が設けられている。そして、ノズル5をz軸周りに回動させる際には、固定棒346を連通孔から抜き取り、また、
図8(a)に示すように、ノズル5の先端が-y軸側を向く位置とする際には、連通孔に、固定棒346を挿通することで、この位置に、第2支持部34を第1支持部33に対して固定することができる。したがって、接合装置1を+x軸方向に沿って前進させて、防水シート100BAと防水シート100BBとを接合する際に、ノズル5が矢印β
1方向に回動することに起因して、ノズル5の位置ズレが生じるのを確実に防止することができる。さらに、
図8(b)に示すように、ノズル5の先端が+y軸側を向く位置とする際には、連通孔に固定棒346を挿通することで、この位置に、第2支持部34を第1支持部33に対して固定することができる。また、固定棒346は、嵌合または螺合のいずれで貫通孔に挿入されるものであってもよいし、さらに、固定棒346に連結されたレバーの操作により、固定棒346が挿入される挿入位置と、固定棒346が抜き取られる抜取位置との双方を移動可能に構成されたものであってもよい。
【0092】
また、ノズル支持部3およびノズル支持部揺動機構6において、前述の通り、第1支持部33ひいては第2支持部34は、すなわち、ノズル支持部3は、第1支持部33が備える軸部332を回動中心(第2回動点)として、フレーム94に連結されたノズル支持部揺動機構6に対して回動可能に固定されている。したがって、この第1支持部33のノズル支持部揺動機構6に対する回動により、
図8(b)、
図9(a)に示すように、第1支持部33ひいては第2支持部34を、すなわち、ノズル支持部3を、y軸方向に沿った軸部332の軸を回動中心として、すなわちy軸周りとして、矢印α
1方向と矢印α
2方向とに回動させることができる。
【0093】
さらに、ノズル支持部揺動機構6ひいてはノズル支持部3は、ノズル支持部揺動機構6が備える軸部63を回動中心(第1回動点)として、車体91が備えるフレーム94に対して回動可能に固定されている。したがって、このノズル支持部揺動機構6のフレーム94に対する回動により、
図9(a)に示すように、ノズル支持部揺動機構6ひいてはノズル支持部3を、y軸方向に沿った軸部63の軸を回動中心として、すなわちy軸周りとして、矢印α
3方向と矢印α
4方向とに回動させることができる。
【0094】
したがって、このようなノズル支持部3の軸部332の軸を回動中心(第2回動点)とした回動、および、ノズル支持部揺動機構6ひいてはノズル支持部3の軸部63の軸を回動中心(第1回動点)とした回動により、ノズル支持部3の第2支持部34に固定されたノズル5をも、これらの回動に伴って移動させることができる。すなわち、ノズル支持部3を、車輪92Bと平行となるy軸周りで回動させることで、フレーム94(車体91)に対してノズル5を、z軸方向(上下方向)に移動可能に支持することができる。また、ノズル支持部揺動機構6およびノズル支持部3は、第2支持部34(ノズル支持部3)の自重により、ノズル5を下方向に向かって移動可能に支持することができる。
【0095】
そして、第2支持部34は、側板341(第2支持部34)の下端において、側板341の側面の厚さ方向を回転軸として回転可能に支持された車輪343(第2車輪)を有している。これにより、この車輪343は、ノズル5を上側に位置する防水シート100BAの裏側、すなわち防水シート100B同士の重なり部101に挿入して、
図8(a)に示すように、y軸方向に沿って配置させた際に、y軸周りとして回転し得るように構成される。そのため、車体91のx軸方向に沿った前進の際に、ノズル支持部3も同様に、車体91に連結された状態で前進するが、このとき、車輪343は、
図9(a)に示すように、防水シート100BB上に接地した状態で、回転する。
【0096】
このように、車体91の前進、すなわち接合装置1の前進の際に、ノズル支持部3が備える側板341の下端に設けられた車輪343が、防水シート100BB上に接地した状態で回転しつつ、第2支持部34が備える側板341が前進することから、側板341に固定されたノズル5が、防水シート100B同士の重なり部101から位置ズレするのを的確に抑制または防止することができる。
【0097】
特に、ノズル5が連続的に上下移動することで、ノズル5がフレーム94(車体91)に対して下側に位置する状態と、ノズル5がフレーム94(車体91)に対して上側に位置する状態との双方を取り得ることができ、さらに、第2支持部34の自重により、ノズル5が下側に移動し得るように構成されている。したがって、防水シート100BAと防水シート100BBとを接合する際に、防水シート100を敷設する床部に凹凸すなわち段差がたとえ形成されていたとしても、車輪343を備える側板341すなわち第2支持部34を、この凹凸の形状に対応して追従させた状態で、車輪343を回転させることができる。そのため、側板341に固定されたノズル5をも、この凹凸の形状に対応して追従させることができるため、ノズル5が、防水シート100B同士の重なり部101から位置ズレするのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、防水シート100B同士の重なり部101に対して、溶剤Qを、優れた精度で供給することができる。
【0098】
なお、車体91の前進の際に、第2支持部34が備える側板341の下端と、防水シート100BBの表面との摩擦を低減させることが可能な場合には、側板341の下端に対する車輪343の配置を省略することもできる。
【0099】
また、ノズル支持部3は、ノズル支持部揺動機構6のフレーム94(車体91)に対する、軸部63を回動中心とした回動により、
図9(a)に示すように、ノズル支持部3すなわちノズル5が防水シート100B同士の重なり部101に対応して配置された位置(液状材料塗布可能位置)と、
図9(b)に示すように、ノズル支持部3すなわちノズル5が、防水シート100Bから、+z軸方向(高さ方向)において離間し、x軸方向における車体91に対応する位置、すなわち、車体91の上側の位置(退避位置)との双方を取り得ることができる。このように、接合装置1を、ノズル支持部3すなわちノズル5が、車体91の上側に配置される退避位置を取り得る構成とすることで、特に、防水シート100Bを敷設施工しない未施工時に、接合装置1の移動を効率よく行うことができ、結果的に、防水シート100Bの敷設施工の作業性の向上を図ることができる。
【0100】
さらに、
図9(a)に示す液状材料塗布可能位置と、
図9(b)に示す退避位置との間での、軸部63を回動中心とする、ノズル支持部3の回動角度範囲は、0°~180°程度の範囲であることが好ましく、0°~150°程度の範囲であることがより好ましい。これにより、退避位置において、ノズル支持部3を、車体91の上側の位置に、確実に配置させることができる。
【0101】
また、フレーム94(車体91)が備える+y軸方向側の側板942には、z軸方向に伸びる長尺物である係止板65が、その平面がxz平面とほぼ平行をなして配置された状態で、側板942から+z軸方向に突出した状態で接合されている。これにより、ノズル支持部3を、退避位置に配置させた際に、この係止板65が、ノズル支持部3を係止する係止部として機能して、車体91の上側の位置に、ノズル支持部3を、安定的に配置させることができる。
【0102】
さらに、フレーム94(車体91)の+x軸方向側において、ノズル支持部揺動機構6は、軸部63の軸を回動中心として、前板61と側板62とにより構成されるコの字状をなす枠部材が、フレーム94に対して回動可能に固定されている。この前板61と側板62とからなる枠部材が、コの字の枠状をなし、その内側が空間で構成されている。そのため、角度θ1と角度θ2との関係式が40≦θ1≦θ2を満足することで、ハンドル93を把持した状態で、接合装置1を+x軸方向側に向かって、作業者が前進させる際に、作業者は、この枠部材の内側を介して、ノズル5の位置を視認することができる。
【0103】
供給系10は、走行系9が備える車体91に搭載され、走行系9とともに走行しつつ、防水シート100、より具体的には防水シート100B同士が重なる重なり部101に溶剤Qを供給する構造体である。
【0104】
供給系10は、
図5等に示すように、溶剤Qを貯留する貯留部2と、貯留部2に連通し、貯留部2からの溶剤Qが通過する流路31と、流路31に連通し、流路31を通過した溶剤Qを防水シート100B同士が重なる重なり部101に供給(吐出)するノズル5と、ノズル5から吐出させる溶剤Qの流量を調整する流量調整部41と、流路31における溶剤Qの通過を開閉する開閉弁43と、開閉弁43にワイヤー45を介して接続されたレバー44とを有し、貯留部2、流量調整部41、開閉弁43およびノズル5が、この順で、流路31を介して連通され、開閉弁43にレバー44がワイヤー45を介して接続された状態で、配置されている。すなわち、貯留部2とノズル5とを連結する流路31の途中に、流量調整部41と開閉弁43とがこの順で設けられ、これらのうち開閉弁43にワイヤー45を介してレバー44が設けられている。
【0105】
かかる構成をなす供給系10が備える各部が、走行系9が備える車体91上に配置されている。以下、この供給系10を構成する各部について説明する。
【0106】
貯留部2は、本実施形態では、
図1に示すように、円筒状をなすタンク(溶剤タンク)で構成されている。
【0107】
この貯留部2は、後述するノズル5に、流量調整部41、流路31および開閉弁43を介して、その上方でポール96に移動可能に固定されており、これにより、車体91上に配置されている。
【0108】
貯留部2には、重なり部101に供給されることで、重なり部101で防水シート100B同士(防水シート100BAと防水シート100BBと)を溶着させるために用いられる、溶剤Qが貯留されている。この溶剤Qとしては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ニトロベンゼン、四塩化炭素、ピリジン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、トルエン、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、テトラヒドロフランであることが好ましい。テトラヒドロフランは、揮発性に優れ、各種樹脂材料が溶解性を示す。そのため、防水シート100B同士を溶着させるために用いる溶剤として好ましい。
【0109】
これらの溶剤Qは、その20℃における粘度が0.1mPa・s以上5.0mPa・s以下程度、テトラヒドロフランは、0.58mPa・s程度のものである。そのため、貯留部2の高さや、ノズル5の吐出口の個数および直径等を後述する範囲内に設定することで、ノズル吐出流量(満量時)が1.0mL/s以上1.6mL/s以下であることと、ノズル吐出流量(1/3量時)が0.8mL/s以上1.2mL/s以下であることとの双方を、比較的容易に満足させることができるようになる。
【0110】
この貯留部2には、その底部(下端)においてノズル5に他端(先端)が連通する流路31の一端(基端)が連結されており、貯留部2がノズル5に対して鉛直方向において上方に位置していることから、貯留部2に貯留された溶剤Qが、その自重により、流路31を介してノズル5に供給されるように構成されている。
【0111】
このとき、貯留部2は、その高さが、防水シート100Bが敷設される床部に対して、好ましくは0.3m以上1.2m以下、より好ましくは0.8m以上1.0m以下に設定されてポール96に固定されている。
【0112】
また、貯留部2は、その容量が好ましくは500mL以上1000mL以下、より好ましくは500mL以上1000mL以下に設定されている。
【0113】
貯留部2の高さ、および、貯留部2の容量を、それぞれ、前記範囲内に設定することで、溶剤Qが、その自重により、流路31を介してノズル5から排出(吐出)する際に、ノズル吐出流量(満量時)が1.0mL/s以上1.6mL/s以下であることと、ノズル吐出流量(1/3量時)が0.8mL/s以上1.2mL/s以下であることとの双方を、比較的容易に満足させることができる。
【0114】
また、貯留部2は、透明または半透明をなすものであり、
図1~
図3に示すように、貯留部2には、溶剤Qが満量である位置にはマーカーが設けられ、満量に対して1/3である位置には貯留部2をポール96に固定する金具が設けられている。これにより、作業者は、貯留部2における溶剤Qの充填量を、防水シート100Bの敷設施工時であっても視認し得ることから、溶剤Qの補充のタイミング等を容易に知ることができる。なお、溶剤Qが満量に対して1/3である位置においても、満量である位置と同様に、マーカーが設けられていてもよい。
【0115】
流路31は、貯留部2の底部、流量調整部41、開閉弁43およびノズル5に、液密的に接続されており、これにより、車体91上に配置されている。
【0116】
この流路31は、貯留部2とノズル5とに、それぞれ、その一端と他端とが接続され、これにより、貯留部2に貯留された溶剤Qがノズル5に供給される。
【0117】
また、流路31は、溶剤Qが通過する金属製または樹脂製のパイプで一部または全部を構成することができるが、溶剤Qがテトラヒドロフランのような強力な有機溶媒である場合には、テフロン(登録商標)チューブまたはシリコンチューブ等で構成することが好ましい。
【0118】
この流路31は、その内周面における直径(内径)が好ましくはφ0.7mm以上3.0mm以下程度、より好ましくはφ1.0mm以上2.0mm以下程度に設定されている。前記直径が前記範囲内に設定されることで、溶剤Qをノズル5から排出(吐出)させる際に、ノズル吐出流量(満量時)が1.0mL/s以上1.6mL/s以下であることと、ノズル吐出流量(1/3量時)が0.8mL/s以上1.2mL/s以下であることとの双方を、比較的容易に満足させることができる。
【0119】
なお、流路31は、複数本のパイプが継手を介して接続されたものであってもよいし、1本のパイプで構成されていてもよい。また、パイプは、その長手方向の途中が1箇所または複数箇所で屈曲または湾曲していてもよい。
【0120】
ノズル5は、流路31の他端(先端)、すなわち貯留部2と反対側の先端部に、液密的に接続されており、これにより、車体91上に配置されている。
【0121】
このノズル5は、本実施形態では、針状をなす金属製の中空体で構成され、その基端側において、流路31に連通し、また、
図5に示すように、その先端側から中央部側において、後方側、すなわち、-x軸方向側に向かって開口し、流路31を通過した溶剤Qを、防水シート100B同士の重なり部101に吐出する吐出口51を有している。そして、吐出口51から吐出された溶剤Qは、防水シート100B同士、すなわち防水シート100BAと防水シート100BBとの接合に供される。なお、溶剤Qの吐出口51からの吐出時において、ノズル5は、xy平面と平行に-y軸方向側に向かって突出している。
【0122】
このノズル5において、吐出口51は、複数設けられ、その数は、好ましくは2個以上6個以下、より好ましくは2個以上3個以下であり、その直径は、好ましくはφ0.4mm以上0.8mm以下、より好ましくはφ0.4mm以上0.6mm以下に設定されている。これにより、溶剤Qをノズル5から排出(吐出)させる際に、ノズル吐出流量(満量時)が1.0mL/s以上1.6mL/s以下であることと、ノズル吐出流量(1/3量時)が0.8mL/s以上1.2mL/s以下であることとの双方を、比較的容易に満足させることができる。
【0123】
また、ノズル5における、吐出口51による合計の開口面積は、好ましくは1.50mm2以上4.01mm2以下、より好ましくは1.55mm2以上3.08mm2以下の範囲内に設定される。これにより、溶剤Qをノズル5から排出(吐出)させる際に、ノズル吐出流量(満量時)が1.0mL/s以上1.6mL/s以下であることと、ノズル吐出流量(1/3量時)が0.8mL/s以上1.2mL/s以下であることとの双方を、より容易に満足させることができる。
【0124】
なお、ノズル5の吐出口51から吐出される溶剤Qは、滝状、液滴状、霧状等のいずれの形態をなしていてもよい。
また、ノズル5には、当該ノズル5を補強する補強材が設けられていてもよい。
【0125】
そして、
図1、
図5に示すように、ノズル5は、溶剤Qを吐出する際には、防水シート100Bの幅方向の一方側、すなわち、+y軸方向側から、上側の防水シート100BAの裏側(防水シート100BAと防水シート100BBとの間)に挿入される。
【0126】
供給系10は、このようなノズル5を有し、このノズル5から溶剤Qを吐出することで、防水シート100B同士の重なり部101に溶剤Qが供給される。
【0127】
流量調整部41は、貯留部2の下側に設けられた、流路31との連結口の近傍に固定されることで、フレーム94上に配置された、後述する開閉弁43に流路31を介して、その上方で固定されている。これにより、車体91上に配置されている。このように、流量調整部41が、貯留部2の近傍に設けられていることから、作業者による操作を容易に行うことができる。
【0128】
また、この流量調整部41は、貯留部2とノズル5との途中に、流路31に連通して設けられている。すなわち、流路31を流れる溶剤Qが、流量調整部41を通過するように、流路31に連結されている。
【0129】
この流量調整部41は、例えば、可変絞り弁で構成される。これにより、流量調整部41は、絞り開度を変えることによって、流路31を通過する溶剤Qの流量を無段階に調整することができる。このような流量調整部41により、溶剤Qの種類に応じて、防水シートの敷設施工前に、貯留部2での溶剤Qの満量時における、溶剤Qの流量を調整することで、ノズル吐出流量(満量時)が1.0mL/s以上1.6mL/s以下であることと、ノズル吐出流量(1/3量時)が0.8mL/s以上1.2mL/s以下であることとの双方を、比較的容易に満足させることができる。
【0130】
なお、流量調整部41は、
図5等に記載のように、手動操作のネジの回転により溶剤Qの流量調整を行うよう構成されていてもよいし、または、例えば溶剤Qの粘度に基づいて自動的に溶剤Qの流量調整を行うよう構成されていてもよい。また、流量調整部41の調整は、その作業の効率化の観点からは、防水シートの敷設施工前に1度だけ実施することが好ましいが、用いる溶剤Qの粘度等によっては、防水シートの敷設施工の途中に実施してもよい。
【0131】
また、本実施形態では、貯留部2と流量調整部41との間には、流路31に連結して、ドレイン46が設けられている。これにより、流路31に気泡が混入した場合には、このドレイン46を介して、この気泡を除去することができる。また、溶剤Qの交換の際には、貯留部2に貯留されている、不要となった溶剤Qを、ドレイン46から抜き取ることができる。また、このドレイン46が、貯留部2の下部直下すなわち近傍に、設けられていることから、作業者による操作を容易に行うことができる。
【0132】
開閉弁43は、フレーム94に連結されたノズル支持部3が備える頂板342上に固定されており、これにより、ノズル支持部3を介して、車体91上に配置されている。
【0133】
この開閉弁43は、供給系10において、流量調整部41とノズル5との途中で、流路31とノズル5とを連結する、内部流路311~313のうち、頂板342が備える内部流路313に連結して設けられている。この開閉弁43により、内部流路313の開閉を行うことで、ノズル5からの重なり部101に対する溶剤Qの供給のオン/オフが切り替えられる。
【0134】
開閉弁43は、本実施形態では、
図10に示すように、頂板342に連結された円柱状をなす軸筒434と、軸筒434に挿通された軸体432と、コイル状(ばね状)とされ、軸筒434内において、内側に軸体432が挿通された付勢部材としてのコイル体431とを有している。そして、軸体432は、軸筒434内に、コイル体431のばね力に抗した状態で収納されている。
【0135】
そして、軸体432は、その太さが先端側433において漸減する針状体をなしており、その基端においてワイヤー45が連結され、このワイヤー45の軸体432とは反対側の端部には、レバー44が連結されている。
【0136】
レバー44は、前述の通り、車体91に連結するポール96の途中に、設けられている。このレバー44の作業者による操作(牽引)により、ワイヤー45を介して、軸体432は、コイル体431のばね力に抗して、レバー44側、すなわち+z軸方向側に引き寄せられて、牽引位置(許容位置)に配置される(
図10(b)参照)。これに対して、レバー44の操作により、ワイヤー45を牽引した状態を解除すると、軸体432は、コイル体431のばね力により、レバー44とは反対側、すなわち-z軸方向側に移動して、非牽引位置(非許容位置)に配置される(
図10(a)参照)。このように、作業者によるレバー44の操作により、軸体432は、牽引位置と非牽引位置との双方を取り得ることができる。また、レバー44に、牽引した状態を維持する固定機構を設けることで、固定機構の作用(固定)時には軸体432を許容位置に維持して配置させ、固定機構の解除時には軸体432を非許容位置に維持して配置させることができる。
【0137】
また、軸体432において、先端側433は、頂板342が備える内部流路313の途中に位置する、嵌合部314の形状に嵌め合わされる形状をなしている。そのため、レバー44の操作により、ワイヤー45を介して、軸体432を、-z軸方向側(下側)に移動させて非牽引位置(非許容位置)に配置させると、先端側433に嵌合部314が嵌め合わされ、これにより、内部流路313内における溶剤Qの通過が遮断される。すなわち、内部流路313内における溶剤Qの通過が許容されない。
【0138】
これに対して、レバー44の操作により、ワイヤー45を牽引することで、軸体432を、+z軸方向側(上側)に移動させて牽引位置(許容位置)に配置させると、嵌合部314への先端側433の嵌め合わせが解除され、これにより、内部流路313内における溶剤Qの通過が遮断されず、内部流路313内における溶剤Qの通過が許容される。
【0139】
このように、軸体432の先端側433は、内部流路313内における溶剤Qの通過(流れ)を仕切る仕切弁として機能する。また、レバー44とワイヤー45とにより、軸体432すなわち開閉弁43の牽引位置(許容位置)と非牽引位置(非許容位置)との間の移動を操作する開閉操作部が構成される。
【0140】
したがって、接合装置1を+x軸方向に前進させて、重なり部101において防水シート100B同士を接合する際、すなわち、防水シートの敷設施工時に、レバー44の作業者による操作により、軸体432の先端側433が内部流路313の嵌合部314に位置しない許容位置に配置させることで、この重なり部101に対して、溶剤Qを供給することができる(
図10(b)参照)。これに対して、施工現場の移動時や、重なり部101に対する接合装置1の位置合わせ時のような非施工時に、レバー44の作業者による操作により、軸体432の先端側433が内部流路313の嵌合部314に位置する許容位置に配置させることで、この重なり部101に対する溶剤Qの供給が停止される(
図10(a)参照)。このように、防水シート100の接合作業を行なう作業者によるレバー44の操作によって、ノズル5からの重なり部101に対する溶剤Qの供給(オン)/非供給(オフ)を、切り替えることができる。
【0141】
そして、このレバー44が、前述の通り、車体91の+z軸方向側に設けられたポール96の途中に設けられている。そのため、作業者によるレバー44の操作を比較的容易に実施し得ることから、重なり部101に対する溶剤Qの供給/非供給を、レバー44により容易に切り替えることができる。したがって、作業者は、防水シート接合装置を用いた、防水シート100の敷設施工を、優れた作業性をもって実施することができる。
【0142】
また、嵌合部314は、
図10に示すように、頂板342において、内部流路313がy軸方向(水平方向)に沿った流れから、z軸方向(上下方向)に沿った流れへと流路の方向が変わる屈曲点に対応して設けられ、軸体432は、その中心軸が、z軸方向に沿った内部流路313の中心軸に重なるように、嵌合部314に対応して配置されている。そして、軸体432を、非許容位置に配置させて、軸体432の先端側433を、嵌合部314に嵌め合わせた際に、軸体432の先端側433がz軸方向に沿った内部流路313内に挿通される(
図10(a)参照)。このとき、先端側433から基端側に向かって太さが漸増する軸体432の途中が内部流路313に係止することで、内部流路313の流路が塞がれるように構成されている。かかる構成により、溶剤Qの通過(流れ)を仕切ることで、開閉弁43にパッキン等を用いることなく、内部流路313における溶剤Qの通過を確実に防止することができる。そのため、パッキン等の劣化を考慮することなく、テトラヒドロフランのような強力な有機溶媒であっても溶剤Qとして用いることができる。
【0143】
そして、接合装置1により防水シート100B同士を接合させる際に、接合装置1を作業者による押込みにより+x軸方向に沿って前進させつつ、作業者によるレバー44の操作により、開閉弁43を開くことで、貯留部2とノズル5とが、流路31を介して、連通され(
図5参照)、貯留部2に貯留された溶剤Qの自重により、貯留部2の外側、すなわち、貯留部2の底部に連結されている流路31側に、貯留部2に貯留された溶剤Qが押し出され、流路31を介して、ノズル5が備える吐出口51から吐出されることで、防水シート100Bの重なり部101に供給される。
【0144】
このとき、ノズル5が備える吐出口51からの溶剤Qのノズル吐出流量(満量時)が1.0mL/s以上1.6mL/s以下であることと、ノズル吐出流量(1/3量時)が0.8mL/s以上1.2mL/s以下であることとの双方を満足していることが好ましい。これにより、貯留部2に貯留された溶剤Qの貯留量が満量であるときから、その使用により、満量に対して1/3となったとき、すなわち少量となったときまで、防水シート100B同士の重なり部101において防水シート100Bを安定的に溶融状態とすることができる。また、防水シート100B同士の重なり部101に、溶剤Qが過剰な供給量で供給されるのを確実に防止して、重なり部101から防水シート100BB側に漏出する溶剤Qの幅を、10mm以下の大きさに設定することができる。
【0145】
ここで、溶剤Qのノズル吐出流量(満量時)は、1.0mL/s以上1.6mL/s以下であるのが好ましいが、1.2mL/s以上1.4mL/s以下であるのがより好ましい。また、ノズル吐出流量(1/3量時)は、0.8mL/s以上1.2mL/s以下であるのが好ましいが、0.9mL/s以上1.1mL/s以下であるのがより好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0146】
このように、防水シート100Bが溶融状態とされたとき、車体91の進行方向において、ノズル5は、各ローラ92Aよりも前方に位置している。そのため、重なり部101において防水シート100Bを溶融状態とした後、すなわち、供給系10によりノズル5を介して溶剤Qが供給された後に、防水シート100B同士が、重なり部101において、走行系9が備えるローラ92Aにより、その表側から転圧される(
図1、
図2等参照)。
【0147】
この転圧により、溶剤Qの供給により溶融した防水シート100B同士が、重なり部101において、接合されることとなる。その結果、重なり部101における、防水シート100BAと防水シート100BBとの間の防水性が確保されることとなる。以上のような接合装置1を用いた、ノズル5を介した重なり部101への溶剤Qの供給と、この溶剤Qの供給の後のローラ92Aによる防水シート100Bの転圧とにより、接合装置1を用いて防水シート100を接合することができ、これら溶剤Qの供給と、防水シート100Bの転圧とで、接合装置1を用いた接合工程(防水シート接合方法)が構成される。
【0148】
このとき、上記の通り、貯留部2に貯留された溶剤Qの貯留量が満量であるときから、その使用により少量となったときまで、防水シート100B同士の重なり部101において防水シート100Bが安定的に溶融状態とされているため、溶剤Qの供給の後のローラ92Aによる防水シート100Bの転圧により、防水シート100B同士の接合を優れた精度で実施することができる。
なお、接合工程の終了後、ノズル5が防水シート100B同士の間から抜去される。
【0149】
また、上記のような接合装置1を用いた重なり部101における防水シート100B同士の接合では、
図1、
図4に示すように、走行系9において、押圧部7が備えるローラ92Aは、重なり部101上に沿って、防水シート100BA(第1防水シート)の表側が転圧されるローラ走行ラインLsを走行し、供給系10において、車体91が搭載する貯留部2は、ローラ走行ラインLsとは異なる、ローラ走行ラインLsと平行をなす車輪走行ラインLkを走行する。
【0150】
そして、異なるラインLs、Lkを走行する車体91と押圧部7とが、押圧部7が備える連結部材72を介して接合され、この連結部材72により、押圧部7が車体91(天板941)に対して、上下方向(z軸方向)に揺動可能に、かつ、下方向(-z軸方向)に向かって付勢されている。これにより、押圧部7が備えるローラ92Aで防水シート100BAを、その表側から転圧する際の荷重の大きさを所望の大きさに設定することができる。したがって、押圧部7が備えるローラ92Aにより防水シート100Bにかかる荷重をA[N]とし、車体91が搭載する貯留部2を備える供給系10により防水シート100Bにかかる荷重をB[N]としたとき、A<Bなる関係を満足し得るように構成されている。
【0151】
そのため、重なり部101において、防水シート100BAの表側からローラ92Aで転圧する際に、例えば、貯留部2に満量の溶剤Qが貯留されて、車体91の自重が大きくなったとしても、押圧部7が備えるローラ92Aにより、重なり部101に大きな荷重が付与されるのを、確実に防止して、ローラ92Aにより防水シート100Bにかかる荷重Aを防水シート100B同士の接合に適切な大きさに設定することができる。よって、重なり部101における防水シート100B同士の接合の際に、重なり部101に位置する防水シート100Bにシワが生じるのを的確に抑制または防止して、防水シート100B同士を優れた精度で接合することができる。なお、溶剤Qの貯留量が、その使用により少量となったときには、車体91の自重が小さくなることに起因して、ローラ92Aにより防水シート100Bにかかる荷重Aが所定の大きさよりも小さくなる場合には、着脱自在な錘を、車体91のフレーム94が備える天板941に載置することで、荷重Aを所定の大きさに設定することができる。
【0152】
なお、本実施形態では、フレーム94の+x軸方向側に2つの車輪92B(第1車輪)が設けられ、フレーム94の-x軸方向側に2つのキャスター92Cが設けられる場合について説明したが、この場合に限定されず、車体91のx軸方向への直進性、x軸方向およびy軸方向への操舵性等を考慮して、フレーム94には4つの車輪92Bが設けられていてもよいし、4つのキャスター92Cが設けられていてもよい。
【0153】
<第2実施形態>
図11は、本発明の防水シート接合装置の第2実施形態が備える押圧部を拡大して示す部分拡大側面図、
図12は、本発明の防水シート接合装置の第2実施形態が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図である。
【0154】
以下、この図を参照して本発明の防水シート接合装置の第2実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0155】
本実施形態は、走行系9が備える押圧部7の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0156】
すなわち、
図11、
図12に示すように、各押圧部7は、本実施形態では、1つのローラ92Aを備えており、各押圧部7において、ローラ92Aは、隣接する押圧部7が備えるローラ92Aに対して間隔を空けて、x軸方向(前進方向)に沿って並んだ状態で、2枚の側板71に、ローラ92Aの一端部と他端部とが回転可能に連結されている。換言すれば、本実施形態では、1つの押圧部7において、1つのローラ92Aが設けられている。
【0157】
そして、各押圧部7において、1つのローラ92Aは、2枚の側板71同士(第1ローラ指示部材および第2ローラ支持部材)の間で、車軸(回転軸)を介して2枚の側板71に、それぞれ、その一端部と他端部とが回転可能に支持されている。そして、2つの側板71の上端において、それぞれ連結された2つの連結部材72(第1連結部材および第2連結部材)が、車体91が有する天板941に連結されることで、ローラ92Aが、連結部材72を介した状態で、車体91(天板941)に対して回転可能に支持されている。
【0158】
このように、押圧部7を、2つ(1対)の側板71の間で、1つのローラ92Aが回転可能に連結された構成のものとした場合においても、連結部材72が備えるコイル部73が伸縮することで、フレーム94に対してローラ92Aを、その一端部および他端部で、それぞれ独立して、上下方向(z軸方向)に揺動可能に、下方向(-z軸方向)に向かって付勢することができるが、特に、隣接するローラ92Aに対して、独立して、ローラ92Aを、下方向(-z軸方向)に向かって付勢することができる。そのため、防水シート100BAと防水シート100BBとを接合する際に、防水シート100を敷設する床部に凹凸すなわち段差がたとえ形成されていたとしても、各ローラ92Aが、それぞれ独立して、この凹凸を乗り越えることができることから、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、より優れた精度で実施することができる。
【0159】
なお、車体91(フレーム94)に配置される押圧部7の配置数、すなわち、ローラ92Aの配置数は、
図11に示す構成では、+x軸方向に沿って、すなわち、ローラ走行ラインLsに沿って5つであるが、5つより多くても少なくてもよく、その数に限定されず、1つであってもよい。ただし、本実施形態のように、複数設けることで、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、より確実に実施することができる。
【0160】
このような第2実施形態の防水シート接合装置1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0161】
<第3実施形態>
図13は、本発明の防水シート接合装置の第3実施形態が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図である。
【0162】
以下、この図を参照して本発明の防水シート接合装置の第3実施形態について説明するが、前述した第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0163】
本実施形態は、走行系9が備える押圧部7の構成が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
【0164】
すなわち、
図13に示すように、本実施形態では、ローラ92Aが備える車軸(回転軸)の一端部と他端部とがともに球面で構成され、また、2枚の側板71(連結板)が、それぞれ、球面軸受け711を備えており、車軸の一端部と他端部とが、それぞれ、各側板71の球面軸受け711に当接して固定されている。これにより、押圧部7において、ローラ92Aは、その一端部と他端部とで、それぞれ、各側板71(連結板)に車軸が球面軸受けされている。
【0165】
このように、ローラ92Aの各端部において、それぞれ、各側板71(連結板)に車軸が球面軸受けされることで、連結部材72が備えるコイル部73の伸縮により、ローラ92Aが上下方向(±z軸方向)に揺動する際に、ローラ92Aを前後方向(±x軸方向)にも揺動させることが可能となる。すなわち、ローラ92Aの揺動(移動)の自由度が高くなっている。
【0166】
したがって、防水シート100BAと防水シート100BBとを接合する際に、防水シート100を敷設する床部に凹凸すなわち段差がたとえ形成されていたとしても、ローラ92Aを、この凹凸をより確実に乗り越えさせることができる。そのため、床部の凹凸が形成されている位置に対応する防水シート100においても、重なり部101における、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、より確実に実施することができる。すなわち、防水シート100B同士の重なり部101に対するローラ92Aによる転圧を、より優れた精度で実施することができる。
【0167】
このような第3実施形態の防水シート接合装置1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0168】
以上、本発明の防水シート接合装置および防水シート接合方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、防水シート接合装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0169】
例えば、接合装置1は、液状材料として溶剤Qを貯留部2に貯留し、これにより、ノズル5から防水シート100B同士の間に溶剤Qを供給することとしたが、溶剤Qに代えて液状材料として接着剤を、防水シート100B同士の間に供給して、防水シート100B同士を接合するようにすることもできる。
【0170】
また、本発明では、前記第1~第3実施形態で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
【0171】
さらに、本発明の防水シート接合方法では、任意の目的で、1以上の工程を追加することができる。
【符号の説明】
【0172】
1 防水シート接合装置
2 貯留部
3 ノズル支持部
5 ノズル
6 ノズル支持部揺動機構
7 押圧部
9 走行系
10 供給系
31 流路
33 第1支持部
34 第2支持部
41 流量調整部
43 開閉弁
44 レバー
45 ワイヤー
46 ドレイン
47 供給量調整部
51 吐出口
61 前板
62 側板
63 軸部
64 連結板
65 係止板
71 側板
72 連結部材
73 コイル部
74 軸部
91 車体
92A ローラ
92B 車輪
92C キャスター
93 ハンドル
94 フレーム
96 ポール
100 防水シート
100A 防水シート
100B 防水シート
100BA 防水シート
100BB 防水シート
101 重なり部
150B 断熱パネル
151 境界部
155 耐火シート
160 母屋
311 内部流路
312 内部流路
313 内部流路
314 嵌合部
331 側板
332 軸部
334 底板
336 連結板
341 側板
342 頂板
343 車輪
344 連結部材
345 連結部材
346 固定棒
431 コイル体
432 軸体
433 先端側
434 軸筒
711 球面軸受け
941 天板
942 側板
943 突出板
944 接続部材
Lk 車輪走行ライン
Lk1 車輪走行ライン
Lk2 車輪走行ライン
Ls ローラ走行ライン
Q 溶剤
θ1 角度
θ2 角度