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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151700
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20231005BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B41J29/38 301
B41J29/46 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061454
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】五味 俊輔
【テーマコード(参考)】
2C061
【Fターム(参考)】
2C061AQ05
2C061CF09
2C061HJ10
2C061HK11
2C061HK19
2C061HV02
2C061HV19
2C061HV44
2C061HV46
(57)【要約】
【課題】停電による印刷効率の低下を低減できる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置10は、印刷部11と、外部電源からの電力を蓄電可能な蓄電部62と、蓄電部62と印刷部11との間で並列に設けられ、蓄電部62から入力された電力の電圧を、複数の処理動作の動作電圧に応じて互いに異なる複数の電圧にそれぞれ変換して印刷部11に出力する複数の電圧変換部65と、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうちの少なくともいずれか1つの電圧変換部65に切り替える切替部64と、制御部50と、を備え、制御部50は、外部電源について停電の発生の有無を検知し、停電の発生を検知した場合には、複数の処理動作のうち未完了動作の動作電圧に応じて、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうちの少なくともいずれか1つに切り替えさせて、未完了動作を実行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからインクを吐出するヘッドを有し、吐出したインクによる印刷媒体への印刷に関する印刷動作及び前記印刷動作のバックアップに関するバックアップ動作を含むと共に互いに動作電圧が異なる複数の処理動作を行う印刷部と、
外部電源からの電力を蓄電可能な蓄電部と、
前記蓄電部と前記印刷部との間で並列に設けられ、前記蓄電部から入力された電力の電圧を、複数の前記処理動作の動作電圧に応じて互いに異なる複数の電圧にそれぞれ変換して前記印刷部に出力する複数の電圧変換部と、
前記蓄電部からの電力の入力先を、複数の前記電圧変換部のうちの少なくともいずれか1つの前記電圧変換部に切り替える切替部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記外部電源について停電の発生の有無を検知し、停電の発生を検知した場合には、複数の前記処理動作のうち未完了動作の動作電圧に応じて、前記蓄電部からの電力の入力先を、複数の前記電圧変換部のうちの少なくともいずれか1つに切り替えさせて、前記未完了動作を実行させる、
印刷装置。
【請求項2】
複数の前記電圧変換部は、
入力された電力の電圧を前記印刷動作の動作電圧に応じて第1電圧に変換する第1電圧変換部と、
入力された電力の電圧を前記第1電圧よりも小さい第2電圧に変換する第2電圧変換部と、を有し、
前記制御部は、前記印刷動作が未完了である状態で停電が発生した場合に、前記印刷動作の動作電圧に応じて、前記蓄電部からの電力の入力先を、複数の前記電圧変換部のうち前記第1電圧変換部に切り替えさせて、前記印刷動作を実行させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷部は、
前記ヘッドにおいて前記ノズルが開口する吐出面を被覆可能なキャップと、
前記ヘッド及び前記キャップを相対移動させる移動装置と、を有し、
前記バックアップ動作は、前記吐出面を被覆するように前記ヘッド及び前記キャップを相対移動させるキャッピング動作を有し、
複数の前記電圧変換部は、
入力された電力の電圧を第1電圧に変換する第1電圧変換部と、
入力された電力の電圧を前記第1電圧よりも小さく且つ前記キャッピング動作の動作電圧に応じて第2電圧に変換する第2電圧変換部と、を有し、
前記制御部は、前記キャッピング動作が未完了である状態で停電が発生した場合に、前記キャッピング動作の動作電圧に応じて、前記蓄電部からの電力の入力先を、複数の前記電圧変換部のうち前記第2電圧変換部に切り替えさせて、前記キャッピング動作を実行させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷部は、不揮発性記憶部を有し、
前記バックアップ動作は、前記未完了動作に関するログデータを前記不揮発性記憶部に記憶させる記憶動作を有し、
複数の前記電圧変換部は、
入力された電力の電圧を第1電圧に変換する第1電圧変換部と、
入力された電力の電圧を前記第1電圧よりも小さく且つ前記記憶動作の動作電圧に応じて第3電圧に変換する第3電圧変換部と、を有し、
前記制御部は、停電が発生した場合に、前記記憶動作の動作電圧に応じて、前記蓄電部からの電力の入力先を、複数の前記電圧変換部のうち前記第3電圧変換部に切り替えさせて、前記記憶動作を実行させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷部は、
前記ヘッドにおいて前記ノズルが開口する吐出面を被覆可能なキャップと、
前記ヘッド及び前記キャップを相対移動させる移動装置と、
前記未完了動作に関するログデータを記憶する不揮発性記憶部と、
前記ノズルに供給されるインクを貯留するタンクと、
前記タンクに貯留されたインクを攪拌する攪拌装置と、を有し、
前記印刷動作は、第1電圧で動作し、
前記バックアップ動作は、
前記第1電圧より小さい第2電圧で動作し前記吐出面を被覆するように前記ヘッド及び前記キャップを相対移動させるキャッピング動作と、
前記第2電圧より小さい第3電圧で動作し前記ログデータを前記不揮発性記憶部に記憶する記憶動作と、
前記第1電圧より小さく前記第2電圧よりも大きい第4電圧で動作し前記タンクに貯留されたインクを攪拌する攪拌動作と、を有し、
前記制御部は、前記印刷動作が未完了である状態で停電が発生した場合に、前記蓄電部からの電力の入力先を、複数の前記電圧変換部のうち前記第1電圧に変換する第1電圧変換部に切り替えさせて、前記印刷動作を実行させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記印刷動作が完了しているが前記キャッピング動作が未完了である状態で停電が発生した場合に、前記蓄電部からの電力の入力先を、複数の前記電圧変換部のうち前記第2電圧に変換する第2電圧変換部に切り替えさせて、前記キャッピング動作を実行させる、
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記印刷動作及び前記キャッピング動作が完了している状態で停電が発生した場合に、前記蓄電部からの電力の入力先を、複数の前記電圧変換部のうち前記第3電圧に変換する第3電圧変換部に切り替えさせて、前記記憶動作を実行させる、
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記印刷動作、前記キャッピング動作、及び前記記憶動作が完了している状態で停電が発生した場合に、前記蓄電部からの電力の入力先を、複数の前記電圧変換部のうち前記第4電圧に変換する第4電圧変換部に切り替えさせて、前記攪拌動作を実行させる、
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記蓄電部の電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記印刷部は、
前記ヘッドにおいて前記ノズルが開口する吐出面を被覆可能なキャップと、
前記ヘッド及び前記キャップを相対移動させる移動装置と、
前記未完了動作に関するログデータを記憶する不揮発性記憶部と、を有し、
前記バックアップ動作は、
前記吐出面を被覆するように前記ヘッド及び前記キャップを相対移動させるキャッピング動作と、
前記未完了動作に関するログデータを前記不揮発性記憶部に記憶させる記憶動作と、を有し、
前記制御部は、前記印刷動作が未完了である状態で停電が発生した場合であって、且つ、前記電圧検出部により検出された電圧に基づいた前記蓄電部の電力が第1所定電力以上である場合には、前記印刷動作、前記キャッピング動作及び前記記憶動作を実行させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記印刷動作が未完了である状態で停電が発生した場合であって、且つ、前記蓄電部の電力が第1所定電力未満であって前記第1所定電力よりも小さい第2所定電力以上である場合には、前記印刷動作を実行させずに、前記キャッピング動作及び前記記憶動作を実行させる、
請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記印刷動作が未完了である状態で停電が発生した場合であって、且つ、前記蓄電部の電力が前記第1所定電力よりも小さい第2所定電力未満である場合には、前記印刷動作を実行させずに、前記印刷動作及び前記キャッピング動作を実行させずに、前記記憶動作を実行させる、
請求項9に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記印刷動作が完了しているが前記キャッピング動作が未完了である状態で停電が発生した場合であって、且つ、前記蓄電部の電力が前記第1所定電力よりも小さい第2所定電力以上である場合には、前記キャッピング動作及び前記記憶動作を実行させる、
請求項9に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記印刷動作が完了しているが前記キャッピング動作が未完了である状態で停電が発生した場合であって、且つ、前記蓄電部の電力が前記第1所定電力よりも小さい第2所定電力未満である場合には、前記キャッピング動作を実行させずに前記記憶動作を実行させる、
請求項9に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記蓄電部の電力の電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記制御部は、前記電圧検出部により検出された電圧に基づいて前記蓄電部の充電状態を判定する、
請求項1に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置として、例えば、特許文献1のインクジェット記録装置が知られている。このインクジェット記録装置は、インクを記録媒体に吐出する記録ヘッド、及び、内部電源を備えている。停電が発生すると、内部電源の残電量に応じて、クリーニング処理を中断するか否かを判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-272830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなインクジェット記録装置では、停電時に記録ヘッドによる画像記録中であれば、画像記録を中断して、内部電源の残電量がクリーニング処理に足りるか否かを判断し、残電量がクリーニング処理に足りない場合には、クリーニング処理を中断している。しかし、このように画像記録及びクリーニング処理を一律に中断すると、印刷効率の低下を招くおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事態に鑑み、停電による印刷効率の低下を低減することができる印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る印刷装置は、ノズルからインクを吐出するヘッドを有し、吐出したインクによる印刷媒体への印刷に関する印刷動作及び前記印刷動作のバックアップに関するバックアップ動作を含むと共に互いに動作電圧が異なる複数の処理動作を行う印刷部と、外部電源からの電力を蓄電可能な蓄電部と、前記蓄電部と前記印刷部との間で並列に設けられ、前記蓄電部から入力された電力の電圧を、複数の前記処理動作の動作電圧に応じて互いに異なる複数の電圧にそれぞれ変換して前記印刷部に出力する複数の電圧変換部と、前記蓄電部からの電力の入力先を、複数の前記電圧変換部のうちの少なくともいずれか1つの前記電圧変換部に切り替える切替部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記外部電源について停電の発生の有無を検知し、停電の発生を検知した場合には、複数の前記処理動作のうち未完了動作の動作電圧に応じて、前記蓄電部からの電力の入力先を、複数の前記電圧変換部のうちの少なくともいずれか1つに切り替えさせて、前記未完了動作を実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、停電による印刷効率の低下を低減することができる印刷装置を提供することができるという効果を奏する。
【0008】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置を概略的に示す図である。
図2図1のヘッドを概略的に示す図である。
図3図1の印刷装置の機能ブロック図である。
図4図1の印刷装置の電気的接続を概略的に示す図である。
図5】蓄電部の電圧と電力との関係を示すグラフである。
図6図1の印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図7】変形例に係る印刷装置の電気的接続を概略的に示す図である。
図8図7の印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図9】充電時における蓄電部の電圧の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<印刷装置の構成>
本発明の一実施の形態に係る印刷装置10は、図1に示すように、インクをヘッド20のノズル21から印刷媒体Aに吐出して、インクにより印刷媒体Aに画像を印刷する装置である。以下では、印刷装置10を、インクジェットプリンタに適用した例について説明するが、印刷装置10はこれに限定されない。また、印刷媒体Aは、例えば、紙及び布等のシートである。
【0011】
印刷装置10は、シリアルヘッド方式であって、印刷部11、プラテン12、タンク13及び制御部50を備えている。印刷部11は、ヘッド20、搬送装置30及び走査装置40を有している。なお、搬送装置30により印刷媒体Aを搬送する方向を前後方向と称する。前後方向に交差(例えば、直交)する方向であって、走査装置40によりヘッド20を移動させる方向を左右方向と称する。また、前後方向及び左右方向に交差(例えば、直交)する方向を上下方向と称する。但し、印刷装置10の配置はこれに限定されない。また、印刷装置10はラインヘッド方式であってもよい。この場合、印刷装置10は走査装置40を備えず、ヘッド20は移動せずに左右方向において印刷媒体Aの長さよりも長い寸法を有している。
【0012】
印刷装置10は、その内部において互いに左右方向に並ぶ印刷範囲及びメンテナンス範囲を有している。プラテン12は、印刷装置10の印刷範囲に配置されており、平坦な上面を有し、その上面上に配置された印刷媒体Aと、これに対向して設けられるヘッド20の下面との間の距離を規定する。タンク13は、インクを貯留する容器であって、インクの種類に応じて複数、印刷装置10に設けられている。例えば、4個のタンク13は、シアンのインク、イエローのインク、マゼンタのインク及びブラックのインクをそれぞれ貯留している。各タンク13は、ヘッド20にチューブにより接続されており、チューブを介してインクをヘッド20における対応ノズル21に供給する。
【0013】
<印刷部>
印刷部11は、吐出したインクによる印刷媒体Aへの印刷に関する印刷動作及び印刷動作のバックアップに関するバックアップ動作を含むと共に互いに動作電圧が異なる複数の処理動作を行う。例えば、印刷部11は、ヘッド20、搬送装置30及び走査装置40に加えて、キャップ14、移動装置15(図3)及び不揮発性記憶部16(図3)をさらに有している。なお、不揮発性記憶部16については後述する。
【0014】
ヘッド20は複数のノズル21を有している。複数のノズル21は前後方向に並んで列を成し、複数のノズル21の列が左右方向に並んでいる。図2に示すように、ノズル21はヘッド20の下面である吐出面23に開口している。また、ヘッド20は、駆動素子22を有している。駆動素子22は、圧電素子であって、ノズル21に対応して設けられており、ノズル21からインクを吐出する圧力をヘッド20内のインクに付与する。
【0015】
図1に示すように、搬送装置30は、例えば、2本の搬送ローラ31、及び、搬送モータ32を有している。2本の搬送ローラ31は、前後方向において互いの間にプラテン12を挟んで配置されている。搬送ローラ31は、左右方向に延びる軸を有し、搬送モータ32に連結されている。搬送ローラ31は、搬送モータ32の駆動によって軸を中心に回転し、印刷媒体Aをプラテン12上において前後方向に搬送する。
【0016】
走査装置40は、キャリッジ41、2本のガイドレール42、走査モータ43、及び、無端ベルト44を有している。キャリッジ41は、ヘッド20を搭載し、左右方向に移動可能に2本のガイドレール42に支持されている。2本のガイドレール42は、前後方向においてヘッド20を互いの間に挟むように、プラテン12の上方において左右方向に延びている。無端ベルト44は、左右方向に延びて、キャリッジ41に取り付けられ、また、走査モータ43にプーリー45を介して取り付けられている。走査モータ43を駆動すると、無端ベルト44が走行し、キャリッジ41はガイドレール42に沿って左右方向に往復移動する。これにより、キャリッジ41は、印刷範囲とメンテナンス範囲との間においてヘッド20を左右方向に移動させる。
【0017】
図1の例では、キャップ14は、走査装置40による左右方向におけるヘッド20の移動範囲内のうち、印刷範囲よりも右のメンテナンス範囲に配置されている。キャップ14は、ゴムなどの弾性材料から成り、上側が開口した箱形状の容器であって、ヘッド20の吐出面23を被覆可能な部材である。
【0018】
図1及び図3に示すように、移動装置15は移動モータ15aを有し、移動モータ15aが駆動することによりヘッド20及びキャップ14を相対移動させる。例えば、移動装置15は、キャップ14がヘッド20の吐出面23に対して当接又は離間するように、ヘッド20に対してキャップ14を上下方向に移動する。なお、キャップ14がヘッド20の吐出面23に対して当接又は離間すれば、移動装置15はキャップ14に対してヘッド20を上下方向に移動させてもよい。
【0019】
移動装置15は、吐出面23よりも下方に位置するキャップ14を上方に移動させて、キャップ14を吐出面23に接近させる。そして、キャップ14の上側開口の周囲を取り囲む上端縁が吐出面23に接触すると、移動装置15はキャップ14の移動を停止する。このキャッピング動作により、吐出面23がキャップ14に被覆されるキャッピング状態になる。このキャッピング状態では、吐出面23とキャップ14の内面との間の空間が閉塞され、吐出面23に開口するノズル21からのインクの乾燥が低減される。
【0020】
一方、移動装置15は、キャップ14を下方に移動させて、吐出面23から離間させて、キャップ14の移動を停止する。このアンキャッピング動作により、吐出面23がキャップ14から離間したアンキャッピング状態になる。アンキャッピング状態では、吐出面23とキャップ14の内面との間の空間が開放されて、吐出面23が外部に現れる。
【0021】
<制御部>
制御部50は、例えば、コンピュータであって、インターフェース51、演算部52、記憶部53及び不揮発性記憶部16を備えている。インターフェース51は、コンピュータ、カメラ、通信ネットワーク、記録媒体、ディスプレイ及びプリンタ等の外部装置Bから画像データ等の各種データを受信する。画像データは、印刷媒体Aに印刷される画像を示すラスタデータなどである。なお、制御部50は、単独の装置により構成されていてもよく、又は、複数の装置が分散配置されていて、それらが協働して印刷装置10の動作を行うよう構成されていてもよい。
【0022】
記憶部53は、演算部52からアクセス可能なメモリであって、RAM及びROMを有している。RAMは、画像データ、及び、演算部52により変換されたデータなどの各種データを一時的に記憶し、給電がなくなると記憶データが消去される。ROMは、各種データ処理を行うためのプログラム及び予め定められているデータなどを記憶している。なお、プログラムは、記憶部53とは異なる外部の記憶媒体であって且つ演算部52からアクセス可能な記憶媒体、例えば、CD-ROMなどに記憶されていてもよい。
【0023】
不揮発性記憶部16は、演算部52によりアクセス可能なメモリであって、例えば、フラッシュメモリなどが例示される。不揮発性記憶部16は、記憶データを書き換え可能であって、外部からの給電がなくても記憶データを保持する。なお、不揮発性記憶部16は制御部50とは別に設けられていてもよい。また、不揮発性記憶部16は記憶部53に含まれていてもよい。
【0024】
演算部52は、例えば、CPUなどのプロセッサ、及び、ASICなどの集積回路の少なくとも一方の回路を含む。演算部52は、プログラムを実行することにより各部を制御し、処理動作などの各種動作を実行する。なお、各種動作の詳細については後述する。
【0025】
このような制御部50は、ヘッド駆動回路24を介して駆動素子22に接続されている。制御部50は、駆動素子22の制御信号を画像データに基づいてヘッド駆動回路24に出力し、ヘッド駆動回路24が制御信号に基づいて駆動信号を生成して駆動素子22に出力する。駆動素子22は駆動信号に応じて駆動して、ノズル21からインクが吐出される。
【0026】
また、制御部50は、搬送装置30の搬送モータ32に接続され、搬送モータ32の駆動を制御する。これにより、搬送装置30による印刷媒体Aの搬送が制御される。さらに、制御部50は、走査装置40の走査モータ43に接続され、走査モータ43の駆動を制御する。これにより、走査装置40によるヘッド20の移動が制御される。制御部50は、移動装置15の移動モータ15aに接続され、移動モータ15aの駆動を制御する。これにより、キャップ14の移動が制御される。
【0027】
<電源制御回路>
図4に示すように、印刷装置10は、AC/DC変換部60を有している。AC/DC変換部60は、商業用電源など外部電源Cに接続され、外部電源Cから交流電圧の電力が供給される。また、AC/DC変換部60は、制御部50に接続されており、外部電源Cが給電可能な場合には、交流電圧の電力を、例えば、36Vの直流電圧の電力に変換して制御部50に供給する。
【0028】
制御部50は、ヘッド制御部50a、搬送制御部50b、走査制御部50c、移動制御部50dを有している。このヘッド制御部50a、搬送制御部50b、走査制御部50c、移動制御部50dは、演算部52(図3)及び記憶部53(図3)により構成されている。ヘッド制御部50aは、ヘッド20に接続され、ヘッド20からのインクの吐出を制御する。搬送制御部50bは、搬送装置30に接続され、搬送装置30による印刷媒体Aの搬送を制御する。走査制御部50cは、走査装置40に接続され、走査装置40によるヘッド20の移動を制御する。移動制御部50dは、移動装置15に接続され、移動装置15によるキャッピング動作を制御する。
【0029】
外部電源Cが印刷装置10に電力を供給可能な場合には、制御部50は外部電源Cからの電力によって駆動し、印刷部11に給電している。さらに、AC/DC変換部60に接続された回路には電圧検出部67が設けられている。制御部50は、電圧検出部67により検出された電圧に基づいて外部電源CからAC/DC変換部60を介した給電の停止、つまり停電を検出する。
【0030】
また、AC/DC変換部60は、充電用電圧変換部61に接続されており、交流電圧の電力を、例えば、36Vの直流電圧の電力に変換して充電用電圧変換部61に供給する。充電用電圧変換部61は、蓄電部62に接続されており、例えば、36Vを8Vに電圧を変換して、電力を蓄電部62に供給する。蓄電部62は、充電及び放電可能な電子部品であって、例えば、コンデンサ及び二次電池が例示される。蓄電部62は、外部電源Cが電力を供給可能な間に外部電源Cから充電されて蓄電する。蓄電部62は、制御部50に接続されており、外部電源Cから印刷装置10への電力の供給が停止すると、蓄電部62は蓄えた電力を放電して制御部50に給電する。
【0031】
さらに、蓄電部62には、電圧検出部63が接続されている。電圧検出部63は、蓄電部62に接続された電子回路における電圧を検出して制御部50に出力する。図5の例に示すように、蓄電部62の電力は、電圧が高くなるほど大きくなる所定の関係を有している。この所定の関係は、制御部50の記憶部53に予め記憶されている。例えば、蓄電部62がコンデンサである場合、電力U=1/2×C×Vの式で表される。このCは静電容量(F)であり、Vは電圧(V)である。これにより、制御部50は、電圧検出部63により検出された電圧に基づいて、蓄電部62に蓄えられている電力を取得することができる。
【0032】
図4に示すように、蓄電部62は、切替部64を介して複数の電圧変換部65に接続されている。切替部64は、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうちの少なくともいずれか1つの電圧変換部65に切り替える。切替部64は制御部50に接続されており、電圧変換部65の切り替えが制御部50により制御される。
【0033】
切替部64は、例えば、3つのスイッチ(第1スイッチ64a、第2スイッチ64b、第3スイッチ64c)を有している。第1スイッチ64a、第2スイッチ64b及び第3スイッチ64cは、並列に蓄電部62に接続されている。複数の電圧変換部65は、例えば、第1電圧変換部65a、第2電圧変換部65b及び第3電圧変換部65cを有している。第1スイッチ64aは、蓄電部62及び第1電圧変換部65aに切断可能に接続されている。第2スイッチ64bは、蓄電部62及び第2電圧変換部65bに切断可能に接続されている。第3スイッチ64cは、蓄電部62及び第3電圧変換部65cに切断可能に接続されている。
【0034】
複数の電圧変換部65は、蓄電部62と印刷部11との間で並列に設けられ、蓄電部62から入力された電力の電圧を、複数の処理動作の動作電圧に応じて互いに異なる複数の電圧にそれぞれ変換して印刷部11に出力する。
【0035】
第1電圧変換部65aは、入力された電力の電圧を印刷動作の動作電圧に応じて第1電圧に変換する。例えば、第1電圧変換部65aは、制御部50のヘッド制御部50a、搬送制御部50b及び走査制御部50cに接続されている。第1電圧変換部65aは、入力された電力の5V以上且つ8V以下の電圧を、ヘッド20などによる印刷動作の動作電圧に応じて第1電圧の36Vに変換する。そして、第1電圧変換部65aは、電圧を変換した電力をヘッド制御部50aを介してヘッド20に供給し、搬送制御部50bを介して搬送装置30に供給し、走査制御部50cを介して走査装置40に供給する。これにより、印刷部11のヘッド20、搬送装置30及び走査装置40は、外部電源Cの停電時において蓄電部62からの電力によって印刷動作が可能になる。
【0036】
第2電圧変換部65bは、入力された電力の電圧を第1電圧よりも小さい第2電圧に変換する。例えば、第2電圧変換部65bは、制御部50の移動制御部50dを介して印刷部11の移動装置15に接続されており、入力された電力の3V以上且つ8V以下の電圧を、移動装置15によるキャッピング動作の動作電圧に応じて第2電圧、例えば、24Vに変換して、電圧を変換した電力を移動制御部50dを介して移動装置15に供給する。これにより、移動装置15は、外部電源Cの停電時において蓄電部62からの電力によってキャッピング動作が可能になる。
【0037】
第3電圧変換部65cは、入力された電力の電圧を第1電圧よりも小さい第3電圧に変換する。例えば、第3電圧変換部65cは、印刷部11の不揮発性記憶部16に接続されており、入力された電力の1V以上且つ8V以下の電圧を、不揮発性記憶部16による記憶動作の動作電圧に応じて第3電圧、例えば、5Vに変換して、電圧を変換した電力を不揮発性記憶部16に供給する。これにより、不揮発性記憶部16は、外部電源Cの停電時において蓄電部62からの電力によって記憶動作が可能になる。
【0038】
<処理動作>
処理動作は、印刷動作及びバックアップ動作を含んでいる。印刷動作は、第1電圧で駆動素子22、搬送装置30及び走査装置40を画像データに基づいて駆動させて、画像を印刷媒体Aに印刷する動作である。この印刷動作では、制御部50は、画像データを取得し、画像データに基づいてパス及び搬送を実行する。パスでは、制御部50が、右又は左にヘッド20を移動させながら、ヘッド20からインクを印刷媒体Aに吐出させる。搬送では、制御部50は、印刷媒体Aを前方へ搬送させる。そして、印刷装置10は、パスと搬送とを交互に繰り返し、インクにより印刷媒体Aに画像を印刷する印刷動作を進めていく。
【0039】
バックアップ動作は、キャッピング動作及び記憶動作を有している。キャッピング動作は、第1電圧より小さい第2電圧で動作し吐出面23を被覆するようにキャップ14を移動させる動作である。このキャッピング動作では、制御部50は、キャップ14をヘッド20の吐出面23に接近させるように移動させて、キャップ14を吐出面23に当接させる。これにより、吐出面23がキャップ14により被覆され、吐出面23に開口するノズル21におけるインクの乾燥を抑制することができる。この乾燥によるインクの増粘が抑制され、増粘に起因したインクの吐出不良を抑制することができる。
【0040】
記憶動作は、第2電圧より小さい第3電圧で動作しログデータを不揮発性記憶部16に記憶する動作である。すなわち、制御部50は、ヘッド20、移動装置15、搬送装置30、走査装置40及び制御部50が動作する度に、その動作内容をログデータとして記憶部53に記憶している。また、制御部50は、印刷動作の進行に合わせて、画像データに基づいた駆動素子22の制御信号を順次、ヘッド駆動回路24に出力すると共に、出力せずに残っている画像データである未印刷画像データをログデータとして記憶部53に記憶している。
【0041】
外部電源Cの停電が発生すると、制御部50は、ログデータのうち、少なくとも未完了動作に関するログデータを不揮発性記憶部16に記憶する。例えば、制御部50は、キャップ14を吐出面23から離すアンキャッピング動作を実行した後に、キャップ14により吐出面23を被覆するキャッピング動作を実行していない。この場合には、制御部50は、キャッピング動作を未完了動作として、アンキャッピング動作のログデータを未完了動作に関するログデータとして不揮発性記憶部16に記憶する。このログデータにより、キャッピング動作が未完了であって、吐出面23はアンキャッピング状態であることがわかる。
【0042】
また、制御部50は、画像データに基づいて駆動素子22の制御信号をヘッド駆動回路24に出力し始めて印刷を開始してから、この画像データに基づいた制御信号の出力を終了していない。この場合には、制御部50は、印刷動作を未完了動作として、印刷開始のログデータ及び未印刷画像データを未完了動作に関するログデータとして不揮発性記憶部16に記憶する。このログデータにより印刷動作が開始しているが終了していない印刷動作中、つまり印刷動作が未完了であって、印刷動作がどこまで進んでいるかがわかる。
【0043】
<印刷装置の制御方法>
印刷装置10は、例えば、図6の制御方法に一例に示すフローチャートに沿って制御部50により制御される。まず、制御部50は、外部電源Cについて停電の発生の有無を検知する(ステップS1)。制御部50は、停電の発生を検知した場合には(ステップS1:YES)、複数の処理動作のうち未完了動作の動作電圧に応じて、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうちの少なくともいずれか1つに切り替えさせて、未完了動作を実行させる。
【0044】
具体的には、制御部50は、電圧検出部63により検出された蓄電部62の電圧を取得し、図5の例に示す所定の対応関係に基づいて電圧に応じた蓄電部62の電力を取得する(ステップS2)。そして、制御部50は、印刷動作中か否かをログデータに基づいて判定する(ステップS3)。印刷開始のログデータの後に印刷終了のログデータが記憶部53に記憶されていない場合には、制御部50は印刷動作中であると判定する(ステップS3:YES)。そして、制御部50は、ステップS2で取得した蓄電部62の電力が第1所定電力以上か否かを判定する(ステップS4)。
【0045】
このように、制御部50は、印刷動作が未完了である状態で停電が発生した場合であって(ステップS3:YES)、且つ、蓄電部62の電力が第1所定電力以上である場合には(ステップS4:YES)、印刷動作、キャッピング及び記憶動作を未完了動作として実行させる(ステップS5~S7)。第1所定電力は、少なくとも印刷動作、キャッピング動作及び記憶動作の処理動作を実行可能な電力であって、予め記憶部53に記憶されている。
【0046】
このステップS5において、制御部50は、印刷動作の動作電圧に応じて、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうち第1電圧変換部65aに切り替えさせて、印刷動作を実行させる。この第1電圧変換部65aにより、蓄電部62からの電力は電圧が第1電圧に変換されて、この第1電圧の電力によってヘッド20、搬送装置30及び走査装置40が駆動されて、印刷動作が実行される。この印刷動作により、停電による印刷動作の中断に起因した印刷効率の低下を低減することができる。
【0047】
また、ステップS6において、制御部50は、キャッピング動作の動作電圧に応じて、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうち第2電圧変換部65bに切り替えさせて、キャッピング動作を実行させる。この第2電圧変換部65bにより、蓄電部62からの電力は電圧が第2電圧に変換されて、この第2電圧の電力によって移動装置15が駆動されて、キャップ14が移動して吐出面23を被覆する。このキャッピング動作により、吐出面23に開口したノズル21においてインクの乾燥が低減され、乾燥に起因したインクの吐出不良による印刷効率の低下を低減することができる。
【0048】
さらに、ステップS7において、制御部50は、記憶動作の動作電圧に応じて、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうち第3電圧変換部65cに切り替えさせて、記憶動作を実行させる。この第3電圧変換部65cにより、蓄電部62からの電力は電圧が第3電圧に変換されて、この第3電圧の電力によって未完了動作に関するログデータが不揮発性記憶部16に記憶される。この際、印刷動作及びキャッピング動作が完了していれば、印刷終了のログデータ及びキャッピング動作のログデータを未完了動作に関するログデータと不揮発性記憶部16に記憶する。この記憶動作により、停電後の再起動時に未完了動作がない状況がわかり、停電に起因した印刷効率の低下を低減することができる。
【0049】
また、印刷動作中のステップS4において、制御部50は、ステップS2で取得した蓄電部62の電力が第1所定電力未満である場合には(ステップS4:NO)、この蓄電部62の電力が第2所定電力以上か否かを判定する(ステップS8)。第2所定電力は、第1所定電力よりも小さく、少なくともキャッピング動作及び記憶動作を実行可能な電力であって、予め記憶部53に記憶されている。ここで、蓄電部62の電力が第1所定電力未満であって且つ第2所定電力以上であれば(ステップS8:YES)、制御部50は、未完了動作のうち印刷動作を実行せずに、キャッピング動作及び記憶動作を実行させる(ステップS6、S7)。一方、印刷動作中において蓄電部62の電力が第2所定電力未満であれば(ステップS8:YES)、制御部50は、未完了動作のうち印刷動作を中断して、印刷動作及びキャッピング動作を実行せずに、記憶動作を実行させる(ステップS7)。これにより、蓄電部62の電力を最大限に用いて未完了動作を行うことによって、停電に起因した印刷効率の低下を低減することができる。
【0050】
続いて、印刷動作が完了している場合には(ステップS3:NO)、制御部50は、アンキャッピング状態か否かを判定する(ステップS9)。ここで、アンキャッピング動作の後にキャッピング動作のログデータが記憶部53に記憶されていない場合には、制御部50はアンキャッピング状態であると判定する(ステップS9:YES)。そして、制御部50は、ステップS2にて取得された蓄電部62の電力が第2電力以上か否かを判定する(ステップS8)。
【0051】
このように、制御部50は、印刷動作が完了しているがキャッピング動作が未完了である状態で停電が発生した場合であって(ステップS9:YES)、且つ、ステップS2で取得された蓄電部62の電力が第2所定電力以上である場合には(ステップS8:YES)、キャッピング動作及び記憶動作を未完了動作として実行させる(ステップS6、S7)。このように、未完了動作を停電時に実行させることにより、停電に起因した印刷効率の低下を低減することができる。
【0052】
これに対し、アンキャッピング状態において(ステップS9:YES)、ステップS2で取得された蓄電部62の電力が第2所定電力未満である場合には(ステップS8:NO)、未完了動作のうちキャッピング動作を実行させずに、記憶動作を実行する(ステップS7)。これにより、蓄電部62の電力を最大限に用いてバックアップ動作を行うことによって、停電に起因した印刷効率の低下を低減することができる。
【0053】
また、制御部50は、印刷動作及びキャッピング動作が完了している状態で停電が発生した場合には(ステップS9:NO)、記憶動作を未完了動作として実行させる(ステップS7)。これにより、印刷終了のログデータ及びキャッピング動作のログデータが未完了動作に関するログデータと不揮発性記憶部16に記憶されるため、このログデータに基づいて停電後の再起動時に処理が行えるため、停電に起因した印刷効率の低下を低減することができる。
【0054】
このように、制御部50は、停電時に複数の処理動作のうち未完了動作の動作電圧に応じて、蓄電部62からの電力の入力先を複数の電圧変換部65のうちの少なくともいずれか1つの電圧変換部65に切り替えさせて、未完了動作を実行させる。これにより、蓄電部62からの電力の電圧を未完了動作に合わせて適切に変換し、多段階の電圧変換によるエネルギーロスの発生を抑制することができる。このため、できるだけ多くの未完了動作を実行することにより、停電による印刷効率の低下を低減することができる。
【0055】
<変形例1>
変形例1に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、図1及び図3に示すように、印刷部11が、ノズル21に供給されるインクを貯留するタンク13と、タンク13に貯留されたインクを攪拌する攪拌装置17と、を有している。バックアップ動作は、第1電圧より小さく第2電圧よりも大きい第4電圧で動作しタンク13に貯留されたインクを攪拌する攪拌動作を有している。
【0056】
攪拌装置17は、図1に示すように、例えば、回転軸17a、プロペラ17b及び攪拌モータ17cを有している。プロペラ17bは、回転軸17aに取り付けられており、回転軸17aからその径方向に延びている。攪拌モータ17cは、回転軸17aに接続されており、回転軸17aを回転駆動する。これにより、プロペラ17bは、タンク13内において回転軸17aを中心に回転する。よって、タンク13内のインクがプロペラ17bにより攪拌されて、インクの含有物の沈殿及び増粘を低減することができる。
【0057】
図7に示すように、切替部64は、例えば、第1スイッチ64a、第2スイッチ64b及び第3スイッチ64cに加えて、第4スイッチ64dを有している。第1スイッチ64a、第2スイッチ64b、第3スイッチ64c及び第4スイッチ64dは、並列に蓄電部62に接続されている。また、複数の電圧変換部65は、例えば、第1電圧変換部65a、第2電圧変換部65b及び第3電圧変換部65cに加えて、第4電圧変換部65dを有している。第4スイッチ64dは、蓄電部62及び第4電圧変換部65dに切断可能に接続されている。
【0058】
第4電圧変換部65dは、入力された電力の電圧を攪拌動作の動作電圧に応じて第4電圧に変換する。例えば、第4電圧変換部65dは、制御部50の攪拌制御部50eを介して攪拌装置17に接続されている。第4電圧変換部65dは、入力された電力の3V以上且つ8V以下の電圧を、攪拌装置17による攪拌動作の動作電圧に応じて第4電圧の24Vに変換して、電圧を変換した電力を攪拌制御部50eを介して攪拌装置17に供給する。攪拌制御部50eは、制御部50の演算部52(図3)及び記憶部53(図3)により構成され、攪拌装置17の攪拌モータ17c(図3)の駆動を制御する。これにより、攪拌装置17は、停電時において蓄電部62からの電力によって攪拌動作が可能になる。
【0059】
このような印刷装置10は、例えば、図8の制御方法に一例に示すフローチャートに沿って制御部50により制御される。この図8のフローチャートでは、図6のステップS7の処理の後にステップS10及びS11の処理が実行される。具体的には、制御部50は、記憶動作を実行した後に(ステップS7)、S5で実行させた印刷動作、S6で実行させたキャッピング動作、及び、S7で実行させた記憶動作の処理動作が完了していれば(ステップS10:YES)、攪拌動作を実行させる(ステップS11)。ここで、制御部50は、印刷動作、キャッピング動作及び記憶動作が完了している状態で停電が発生した場合に、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうち第4電圧に変換する第4電圧変換部65dに切り替えさせて、攪拌動作を実行させる。
【0060】
これにより、第4電圧により攪拌装置17が攪拌動作を実行するため、タンク13のインクが攪拌されて、インクの含有物の沈殿及び増粘などが抑制され、停電後の再起動時の吐出不良が低減されて、吐出不良に起因した印刷効率の低下を低減することができる。また、未完了動作の実行により残っている蓄電部62の電力が尽きるまで攪拌動作を継続することにより、蓄電部62の電力を有効利用でき、停電に起因した印刷効率の低下を低減することができる。
【0061】
<変形例2>
変形例2に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例1において、制御部50は、電圧検出部63による検出電圧に基づいて蓄電部62の充電状態を判定する。具体的には、制御部50は、蓄電部62の充電時に電圧検出部63により検出された電圧を取得し、図9に示すように、蓄電部62の電圧の経時変化を監視する。外部電源Cからの蓄電部62の充電時には、電圧は時間経過に伴い増加し、その単位時間当たりの電圧の変化率は所定率以上である。その変化率は、蓄電部62に蓄電された電力が大きくなるほど減少し、時間の経過に伴い減少していく。そして、変化率が所定率未満になると、蓄電部62の充電が完了した満充電状態になる。
【0062】
この満充電状態の蓄電部62の電圧は、経年劣化などにより低下していく。例えば、時間Taにおける充電時の電圧の経時変化のグラフVaでは、時刻T0にて電圧の変化率が所定率未満となって、蓄電部62は満充電となり、その際の電圧はV0である。この時間Taの後の時間Tbにおける充電時の電圧の経時変化のグラフVbでは、時刻T1にて電圧の変化率が所定率未満となって、蓄電部62は満充電となり、その際の電圧はV1である。電圧V1は電圧V0よりも小さく、所定電圧よりも低くなる。
【0063】
このため、制御部50は、電圧検出部63により検出された蓄電部62の電圧を取得すると共に、その変化率を算出する。制御部50は、グラフVaでは時刻T2にて電圧がV1に達し、その変化率が所定率以上であるため、蓄電部62の充電状態は満充電前の充電中であると判定する。一方、制御部50は、グラフVbでは時刻T1にて電圧がV1に達し、その変化率が所定率未満であるため、蓄電部62の充電状態は満充電であると判定する。例えば、印刷装置10が、表示装置などの出力部72(図3)を備えている場合、制御部50は、判定した充電状態を出力部72に出力する。これにより、ユーザは、蓄電部62の充電状態を把握することができる。
【0064】
また、制御部50は、変化率が所定未満の満充電時の電圧を取得する。制御部50は、グラフVaではその電圧V0が所定電圧以上であるため、蓄電部62を使用可能であると判定する。一方、制御部50は、グラフVbではその電圧V1が所定電圧未満であるため、蓄電部62が劣化していると判定する。制御部50は、劣化と判定した場合、蓄電部62の交換などの警告を出力部72に出力する。これにより、ユーザは、警告に基づいて蓄電部62を交換することにより、蓄電部62の劣化に起因した印刷効率の低下を低減することができる。
【0065】
<その他の変形例>
上記実施の形態及び全変形例に係る印刷装置10では、処理動作は、キャッピング動作及び記憶動作を有していた。しかしながら、処理動作は、これ以外の動作を含んでいてもよい。例えば、処理動作は、ワイピング動作、循環動作、フラッシング動作及びパージ動作を少なくとも1つ有していてもよい。例えば、印刷動作が未完了である状態で停電が発生した場合に、印刷動作、ワイピング動作、循環動作、キャッピング動作、記憶動作及び攪拌動作がこの順で実行させてもよい。また、印刷動作が完了しているがキャッピング動作が未完了である状態で停電が発生した場合に、フラッシング動作、パージ動作、ワイピング動作、循環動作、キャッピング動作、記憶動作及び攪拌動作がこの順で実行されてもよい。
【0066】
処理動作がワイピング動作を有する場合、印刷装置10は、ワイパー18(図1)及びワイピング装置19(図3)を印刷部11として備えている。ワイパー18は、メンテナンス範囲に配置されており、例えば、ゴムなどの弾性部材であって、平板形状を有している。ワイピング装置19は、ワイピングモータ19aを有し、第2電圧変換部65bに接続されている。ワイピング装置19は、制御部50により制御されて、ワイピングモータ19aの駆動により吐出面23及びワイパー18を相対移動させる。例えば、ワイパー18が左右方向において吐出面23よりも長く延びている場合には、ワイピング装置19はワイパー18を吐出面23に当接させながら前後方向に移動させる。また、ワイパー18が前後方向において吐出面23よりも長く延びている場合には、ワイピング装置19はワイパー18を吐出面23に当接させながら左右方向に移動させる。
【0067】
このような印刷装置10の制御方法では、例えば、図6のステップS6において、制御部50は、キャッピング動作が未完了な状態で停電が発生すると、キャッピング動作の前に、ワイピング動作の動作電圧に応じて、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうち第2電圧変換部65bに切り替えさせて、ワイピング動作を実行させる。この第2電圧変換部65bにより、蓄電部62からの電力は電圧が第2電圧に変換されて、この第2電圧の電力によってワイピング装置19が駆動されて、ワイパー18が吐出面23に当接しながら移動する。これにより、吐出面23に残ったインクがワイパー18により除去され、残ったインクに起因した画質の低下を低減することができる。
【0068】
また、処理動作が循環動作を有する場合、印刷装置10は、図2に示すように、サブタンク25及び加圧ポンプ26を印刷部11として備えている。ヘッド20には、ノズル21、個別流路27、供給マニホールド28及び帰還マニホールド29が形成されている。供給マニホールド28及び帰還マニホールド29のそれぞれは複数の個別流路27に接続され、個別流路27はノズル21に接続されている。供給マニホールド28には、前後方向に長く延び、その長手方向の一端に供給管28aが接続されている。帰還マニホールド29には、前後方向に長く延び、その長手方向の一端に帰還管29aが接続されている。この供給管28a及び帰還管29aがサブタンク25に接続されている。サブタンク25、供給管28a、供給マニホールド28、個別流路27、帰還マニホールド29及び帰還管29aは、この順で接続されており、循環経路を構成している。また、サブタンク25は、タンク13(図1)が接続されており、タンク13からインクが供給される。供給管28aに加圧ポンプ26が設けられている。加圧ポンプ26は、第2電圧変換部65bに接続されており、その駆動が制御部50により制御される。
【0069】
このような印刷装置10の制御方法では、例えば、図6のステップS6において、制御部50は、キャッピング動作が未完了な状態で停電が発生すると、キャッピング動作の前に、循環動作の動作電圧に応じて、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうち第2電圧変換部65bに切り替えさせて、循環動作を実行させる。この第2電圧変換部65bにより、蓄電部62からの電力は電圧が第2電圧に変換されて、この第2電圧の電力によって加圧ポンプ26が駆動される。この加圧ポンプ26を所定時間、駆動させることにより、ヘッド20におけるインクは循環経路を循環する。このため、インクにおける固形物の沈殿及びインクの増粘が抑制されて、画質の低下を低減することができる。
【0070】
また、処理動作がフラッシング動作を有する場合、印刷装置10は、図1に示すように、受け部70を印刷部11として備えている。受け部70は、印刷装置10のメンテナンス範囲に配置されており、例えば、上部が開口した容器である。
【0071】
このような印刷装置10の制御方法では、例えば、図6のステップS6において、制御部50は、印刷動作が完了しているがキャッピング動作が未完了な状態で停電が発生すると、キャッピング動作の前に、フラッシング動作の動作電圧に応じて、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうち第1電圧変換部65aに切り替えさせて、フラッシング動作を実行させる。この第1電圧変換部65aにより、蓄電部62からの電力は電圧が第1電圧に変換されて、この第1電圧の電力によってキャリッジ41及び駆動素子22が駆動される。これにより、吐出面23が受け部70の上部開口に対向するようにヘッド20がキャリッジ41により移動されて、インクがノズル21から受け部70へ駆動素子22により吐出される。これによって、ノズル21内のインクが吐出されて、ノズル21の増粘が抑制されるため、インクの増粘に起因した画質の低下を低減することができる。
【0072】
また、処理動作がパージ動作を有する場合、印刷装置10は、図1に示すように、吸引ポンプ71を印刷部11として備えている。吸引ポンプ71は、吸引管71aによりキャップ14内に連通しており、制御部50により制御されている。吸引ポンプ71は、第2電圧変換部65bに接続されており、その駆動が制御部50により制御される。なお、以下では、パージ動作として、吸引ポンプ71を用いた吸引パージについて説明するが、パージ動作は、加圧ポンプ26(図2)などを用いた加圧パージであってもよい。
【0073】
このような印刷装置10の制御方法では、図6のステップS6において、制御部50は、印刷動作が完了しているがキャッピング動作が未完了な状態で停電が発生すると、キャッピング動作の前に、パージ動作の動作電圧に応じて、蓄電部62からの電力の入力先を、複数の電圧変換部65のうち第2電圧変換部65bに切り替えさせて、パージ動作を実行させる。この第2電圧変換部65bにより、蓄電部62からの電力は電圧が第2電圧に変換されて、この第2電圧の電力によって移動装置15及び吸引ポンプ71が駆動されて、キャップ14が吐出面23を被覆した状態で、キャップ14及び吐出面23により囲まれた空間が吸引ポンプ71により吸引される。これにより、ノズル21内のインクが排出されて、ノズル21の増粘が抑制されるため、インクの増粘に起因した画質の低下を低減することができる。
【0074】
上記実施の形態及び変形例において、ヘッド20は、駆動素子22に圧電素子を用いた方式(ピエゾ方式)を採用したが、この方式に限定されない。例えば、ヘッド20は、駆動素子22に発熱体を用いたサーマル方式、又は、駆動素子22に導電性振動板及び電極を用いた静電方式を採用し得る。
【0075】
なお、上記実施の形態及び変形例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の印刷装置は、停電による印刷効率の低下を低減することができる印刷装置等として有用である。
【符号の説明】
【0077】
10 :印刷装置
11 :印刷部
13 :タンク
14 :キャップ
15 :移動装置
16 :不揮発性記憶部
17 :攪拌装置
20 :ヘッド
21 :ノズル
23 :吐出面
50 :制御部
53 :記憶部
62 :蓄電部
63 :電圧検出部
64 :切替部
65 :電圧変換部
65a :第1電圧変換部
65b :第2電圧変換部
65c :第3電圧変換部
65d :第4電圧変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9