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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151702
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061457
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 真哉
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB36
2C056EB45
2C056FA10
2C056FB07
2C056HA38
2C056KD06
(57)【要約】
【課題】立体形状の印刷媒体の画質及び画像の印刷速度の向上が図られる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、インクを印刷媒体に吐出するノズル、及び、ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、吐出面に対向して位置するプラテンと、プラテン上に載置された複数の印刷媒体を撮影するカメラと、吐出面に対して交差する交差方向において印刷媒体までの距離を測定する測距センサと、制御部と、を備え、制御部は、プラテン上に載置された複数の印刷媒体をカメラにより撮影して得た画像に基づいて、プラテン上での複数の印刷媒体の位置及び傾きを取得し、複数の印刷媒体に含まれる一部の印刷媒体である第1印刷媒体までの距離を測距センサにより測定させ、複数の印刷媒体の位置及び傾き、並びに、測距センサにより測定された第1印刷媒体までの距離に基づいて、複数の印刷媒体のうち第1印刷媒体以外の印刷媒体と吐出面との間の距離を取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを印刷媒体に吐出するノズル、及び、前記ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、
前記吐出面に対向して位置するプラテンと、
前記プラテン上に載置された複数の前記印刷媒体を撮影するカメラと、
前記吐出面に対して交差する交差方向において前記印刷媒体までの距離を測定する測距センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記プラテン上に載置された複数の前記印刷媒体を前記カメラにより撮影して得た画像に基づいて、前記プラテン上での複数の前記印刷媒体の位置及び傾きを取得し、
複数の前記印刷媒体に含まれる一部の前記印刷媒体である第1印刷媒体までの距離を前記測距センサにより測定させ、
複数の前記印刷媒体の位置及び傾き、並びに、前記測距センサにより測定された前記第1印刷媒体までの距離に基づいて、複数の前記印刷媒体のうち前記第1印刷媒体以外の前記印刷媒体と前記吐出面との間の距離を取得する、
印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記画像に基づいて複数の前記印刷媒体のうち互いに同一種類である複数の第2印刷媒体を判別し、
前記画像から取得した複数の前記第2印刷媒体の位置及び傾き、並びに、複数の前記第2印刷媒体のうちの一部の前記第2印刷媒体を前記第1印刷媒体とした前記第1印刷媒体までの距離に基づいて、複数の前記第2印刷媒体と前記吐出面との間の距離を取得する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記測距センサは、TOF(Time Of Flight)センサである、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ヘッドを搭載して前記ヘッドを移動させるキャリッジを備え、
前記測距センサは、前記キャリッジに配置されている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記測距センサを前記キャリッジにより移動させながら、前記交差方向における前記第1印刷媒体までの距離を前記測距センサにより測定させる、
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記ヘッドから吐出されるインクにより前記印刷媒体に印刷が行われる印刷領域を覆うカバーを備え、
前記カメラは、前記カバーのうち前記印刷領域に対向する範囲の中央に配置されている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記ヘッドから吐出されるインクにより前記印刷媒体に印刷が行われる印刷領域を覆うカバーを備え、
前記カメラは、前記カバーの外に配置されている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記プラテン上の第1領域と、前記第1領域とは異なる前記プラテン上の第2領域とを前記カメラにより撮影する場合、撮影された前記画像における前記第1領域と前記第2領域との境界に前記印刷媒体が位置しないように前記境界を決定し、
前記境界により区切られた前記画像に基づいて、前記プラテン上での複数の前記印刷媒体の位置及び傾きを取得する、
請求項1に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置として、例えば、特許文献1の記録装置が知られている。この記録装置では、カメラにより搬送ベルト上の複数の媒体を撮像し、この画像に基づいて媒体の位置及び回転角度を測定している。そして、記録装置は、測定した位置及び回転角度に基づいて液体吐出ヘッドから液体を吐出させて、複数の媒体に画像を記録している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-177454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような記録装置において、例えば、立体形状の媒体に画像を記録する場合、媒体の高さが変化するに伴って、液体吐出ヘッドから媒体に吐出された液体の着弾位置が変化する。このため、液体の着弾位置が所望の位置からずれて、画質が低下するおそれがある。これに対して、搬送ベルト上の複数の媒体の全ての高さを検出する方法として、例えば、カメラにより検出しようとしても、カメラの画質では媒体の高さを精度良く測定することができない。一方、高精度なセンサにより媒体の高さを検出すると、その検出範囲が狭い。このため、全ての媒体の高さの検出に時間がかかり、画像の記録速度の低下につながるおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事態に鑑み、立体形状の印刷媒体における画質の向上及び画像の印刷速度の向上を図ることができる印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る印刷装置は、インクを印刷媒体に吐出するノズル、及び、前記ノズルが開口する吐出面を有するヘッドと、前記吐出面に対向して位置するプラテンと、前記プラテン上に載置された複数の前記印刷媒体を撮影するカメラと、前記吐出面に対して交差する交差方向において前記印刷媒体までの距離を測定する測距センサと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記プラテン上に載置された複数の前記印刷媒体を前記カメラにより撮影して得た画像に基づいて、前記プラテン上での複数の前記印刷媒体の位置及び配置傾きを取得し、複数の前記印刷媒体に含まれる一部の前記印刷媒体である第1印刷媒体までの距離を前記測距センサにより測定させ、複数の前記印刷媒体の位置及び配置傾き、並びに、前記測距センサにより測定された前記第1印刷媒体までの距離に基づいて、複数の前記印刷媒体のうち前記第1印刷媒体以外の前記印刷媒体と前記吐出面との間の距離を取得する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、立体形状の印刷媒体における画質の向上及び画像の印刷速度の向上を図ることができる印刷装置を提供することができる。
【0008】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態及び各変形例に係る印刷装置を上から見た概略図である。
図2図2は、図1の印刷装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3図3(a)は、プラテンがカバーよりも前方に配置された印刷装置を上から見た概略図である。図3(b)は、プラテンが第1位置に配置された印刷装置を上から見た概略図である。
図4図4(a)は、プラテンが第2位置に配置された印刷装置を上から見た概略図である。図4(b)は、プラテンがカバーよりも後方に配置された印刷装置を上から見た概略図である。
図5図5は、第1印刷媒体までの測定位置に基づいて他の印刷媒体の吐出距離を取得することを説明するための図である。
図6図6(a)は、印刷媒体の配置位置、配置傾き及び吐出距離に基づいて、印刷する画像を補正する場合を説明するための図である。図6(b)は、画像が印刷された印刷媒体を示す図である。
図7図7(a)は、複数の楕円媒体及び1つの矩形媒体が配置されたプラテンを上から見た概略図である。図7(b)は、複数の楕円媒体及び複数の矩形媒体が配置されたプラテンを上から見た概略図である。
図8図8は、本発明の変形例2に係る印刷装置を上から見た概略図である。
図9図9は、本発明の変形例3に係る印刷装置のプラテンを上から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<印刷装置の構成>
本発明の一実施の形態に係る印刷装置10は、図1に示すように、インクをヘッド20のノズル21から印刷媒体Aに吐出して、インクにより印刷媒体A(図6(b))に画像である印刷画像B(図6(b))を印刷する装置である。以下では、印刷装置10を、インクジェットプリンタに適用した例について説明する。また、印刷媒体Aは、例えば、紙及び布などのシート形状、並びに、錠剤、ボール及びマグカップなどの立体形状を有している。
【0011】
印刷装置10は、シリアルヘッド方式であって、ヘッド20、複数のタンク11、カメラ12、測距センサ13、筐体14、搬送装置30、走査装置40及び制御部50を備えている。なお、搬送装置30により印刷媒体Aを搬送する方向を前後方向と称する。前後方向に対して交差(例えば、直交)する方向であって、走査装置40によりヘッド20が移動する方向を左右方向と称する。さらに、前後方向及び左右方向に交差(例えば、直交)する方向を上下方向と称する。但し、印刷装置10の配置はこれに限定されない。
【0012】
ヘッド20は、複数のノズル21及び複数の駆動素子22(図2)を有している。ノズル21はヘッド20の下面である吐出面23に開口している。複数のノズル21は前後方向に並んでノズル列を成して、複数のノズル列は左右方向に並んでいる。ノズル21は、タンク11とチューブにより連通している。例えば、4つのタンク11は、4種類のインクをそれぞれ貯留し、対応するノズル21にインクを供給する。駆動素子22は、圧電素子であって、ノズル21毎に設けられ、ノズル21からインクを吐出する圧力をヘッド20内のインクに付与する。なお、駆動素子22は、圧電素子に係わらず、発熱素子及び静電式アクチュエータ等のアクチュエータであってもよい。
【0013】
搬送装置30は、プラテン31、及び、搬送モータ32(図2)を有している。プラテン31は、平坦な上面を有し、その上面上に配置された印刷媒体Aと、上下方向においてこれに対向して設けられるヘッド20の吐出面23との間の距離を規定する。搬送モータ32は、プラテン31が前後方向に移動可能にプラテン31に連結されている。搬送装置30は、搬送モータ32の駆動によって、プラテン31を前後方向に移動し、プラテン31上に配置された印刷媒体Aを前後方向に搬送する。
【0014】
走査装置40は、キャリッジ41、2本のガイドレール42、走査モータ43、及び、無端ベルト44を有している。2本のガイドレール42は、前後方向においてヘッド20を互いの間に挟むように、プラテン31の上方において左右方向に延びている。キャリッジ41は、ヘッド20を搭載し、左右方向に移動可能に2本のガイドレール42に支持されている。無端ベルト44は、左右方向に延びて、キャリッジ41に取り付けられ、また、走査モータ43にプーリー45を介して取り付けられている。走査モータ43が駆動すると、無端ベルト44が走行し、キャリッジ41はガイドレール42に沿って左右方向に往復移動する。これにより、走査装置40は、印刷媒体Aに対してヘッド20を左右方向に移動させる。
【0015】
筐体14は、ヘッド20、カメラ12及び測距センサ13、走査装置40及び制御部50を内部に収容している。筐体14は、前側開口及び後側開口を有している。プラテン31は、前側開口から前方へ移動可能であって、後側開口から後方へ移動可能に配置されている。また、筐体14は、本体15及びカバー16を有している。本体15は、上側開口を含む箱形状であって、カバー16は、本体15の上側開口を開閉可能に覆っている。
【0016】
カバー16の下面は、筐体14の天面を構成し、上下方向においてプラテン31の上面、及び、その上面上に配置された印刷媒体Aに対向している。カバー16は、ヘッド20が左右方向に移動可能に、ヘッド20をその上方から覆っている。このため、カバー16は、ヘッド20から吐出されるインクにより印刷媒体Aに印刷が行われる印刷領域Gを覆う。印刷領域Gは、印刷装置10において印刷が行われる領域であって、キャリッジ41により左右方向に移動するヘッド20とプラテン31との間の領域であって、ヘッド20からのインクがプラテン31上の印刷媒体Aに着弾する領域である。
【0017】
測距センサ13は、キャリッジ41に取り付けられている。これにより、測距センサ13は、キャリッジ41により左右方向に移動して、吐出面23に対して交差(例えば、直交)する交差方向(例えば、上下方向)において印刷媒体Aまでの距離を測定することができる。測距センサ13は、制御部50に接続されており、測定した距離を制御部50に出力する。測距センサ13は、例えば、TOF(Time Of Flight)センサであって、発光してから、印刷媒体Aからの反射光を受光するまでの時間に基づいて印刷媒体Aまでの距離を測定する。このように、測距センサ13にTOFセンサを用いることにより、印刷媒体Aまでの距離を安価に測定することができる。なお、測距センサ13は、例えば、三角測量により距離を測定する光電センサであってもよい。
【0018】
カメラ12は、カバー16の下面に取り付けられており、カバー16のうち上下方向において印刷領域Gに対向する範囲の中央に配置されている。このカメラ12によって、プラテン31上に配置されたより多くの印刷媒体Aを撮影することができる。カメラ12の撮影範囲は測距センサ13の測定範囲よりも広い。例えば、測距センサ13は、1つの印刷媒体Aまでの距離を測定するのに対し、カメラ12は、複数の印刷媒体Aの画像である撮影画像を取得する。カメラ12は、例えば、CCDカメラなどのイメージセンサが例示される。カメラ12は、制御部50に接続されており、取得した撮影画像を制御部50に出力する。
【0019】
<制御部>
図2に示すように、制御部50は、例えば、コンピュータであって、インターフェース51、演算部52及び記憶部53を有している。インターフェース51は、コンピュータ、カメラ、通信ネットワーク及び記録媒体等の外部装置Eから画像データなどの各種データを受信する。画像データは、印刷媒体Aに印刷される印刷画像Bを示すラスタデータなどである。なお、制御部50は、単独の装置により構成されていてもよく、又は、複数の装置が分散配置されていて、それらが協働して制御部50の動作を行うよう構成されていてもよい。
【0020】
記憶部53は、演算部52からアクセス可能なメモリであって、RAM及びROMを有している。RAMは、画像データなどの外部装置Eから受信したデータ、及び、演算部52により変換されたデータなどの各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種データ処理を行うためのコンピュータプログラム、及び、所定のデータなどを記憶している。なお、コンピュータプログラムは、記憶部53とは異なる外部の記憶媒体であって且つ演算部52からアクセス可能な記憶媒体、例えば、CDROMなどに記憶されていてもよい。
【0021】
演算部52は、例えば、CPUなどのプロセッサ、及び、ASICなどの集積回路などの少なくとも1つの回路を含む。演算部52は、記憶部53に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより各部を制御し、印刷動作及び測距動作などの各種動作を実行する。なお、各種動作の詳細については後述する。
【0022】
このような制御部50は、ヘッド駆動回路24を介してヘッド20の駆動素子22に接続されている。制御部50は、駆動素子22の制御信号をヘッド駆動回路24に出力し、ヘッド駆動回路24が制御信号に基づいて駆動信号を生成して駆動素子22に出力する。駆動素子22は駆動信号に応じて駆動して、ノズル21からインクが吐出される。このように、駆動素子22によるノズル21のインクの吐出が制御される。
【0023】
また、制御部50は、搬送装置30の搬送モータ32及び搬送エンコーダ33に接続されている。制御部50は、搬送エンコーダ33により検出された搬送モータ32の回転角度に応じて、プラテン31、及び、プラテン31上に配置された印刷媒体Aの位置を検出し、これらの移動を制御する。さらに、制御部50は、走査装置40の走査モータ43及び走査エンコーダ46に接続されている。制御部50は、走査エンコーダ46により検出された走査モータ43の回転角度に応じて、キャリッジ41、並びに、キャリッジ41に搭載されたヘッド20及び測距センサ13の位置を検出し、これらの移動を制御する。さらに、制御部50は、測距センサ13及びカメラ12に接続され、これらの駆動を制御する。これにより、測距センサ13による距離の測定、及び、カメラ12による撮影画像の取得が制御される。
【0024】
<測距動作>
このような印刷装置10において、制御部50は、プラテン31上に載置された複数の印刷媒体Aをカメラ12により撮影して得た撮影画像に基づいて、プラテン31上での複数の印刷媒体Aの位置及び傾きを取得する。そして、制御部50は、複数の印刷媒体Aに含まれる一部の印刷媒体Aである第1印刷媒体A1までの距離を測距センサ13により測定させる。そして、制御部50は、複数の印刷媒体Aの位置及び傾き、並びに、測距センサ13により測定された第1印刷媒体A1までの距離に基づいて、複数の印刷媒体Aと吐出面23との間の距離を取得する。この第1印刷媒体A1の数は、1つ以上であって、複数の印刷媒体Aの数よりも少ない。
【0025】
具体的には、図3(a)の例に示すように、プラテン31がカバー16の前方に配置されている。このように、プラテン31がカバー16の外部に露出した状態において、ユーザは、複数の印刷媒体Aをプラテン31上に配置する。それから、図3(b)の例に示すように、制御部50はプラテン31を後方に移動させる。これにより、プラテン31がカバー16内に入り、プラテン31上に配置された印刷媒体Aはカバー16の下面に配置されたカメラ12に対向する。
【0026】
制御部50は、プラテン31を第1位置にて停止してから、プラテン31の第1領域C1をカメラ12により撮影させる。これにより、制御部50は、第1領域C1に配置された複数の印刷媒体Aの撮影画像を取得して記憶部53に記憶する。
【0027】
さらに、図4(a)の例に示すように、制御部50はプラテン31を後方に移動させてから、プラテン31を第1位置よりも後方の第2位置にて停止し、プラテン31の第1領域C1よりも前方の第2領域C2をカメラ12により撮影させる。これにより、制御部50は、第2領域C2に配置された複数の印刷媒体Aの撮影画像を取得して記憶部53に記憶する。この第2領域C2は、その後端が第1領域C1の前端と互いに接するように第1領域C1に隣接していてもよい。また、第2領域C2は、その一部が第1領域C1の一部と重なるように配置されていてもよい。さらに、第1領域C1と第2領域C2との間に印刷媒体Aがない場合には、前後方向において第2領域C2は第1領域C1と間隔を空けて配置されていてもよい。
【0028】
このように、制御部50は、プラテン31上の全ての印刷媒体Aの撮影画像をカメラ12により取得する。それから、制御部50は、カメラ12により取得された第1領域C1及び第2領域C2の撮影画像に画像処理を行う。例えば、制御部50は、プラテン31の色と印刷媒体Aの色の違いに基づいて、プラテン31上の印刷媒体Aの輪郭を抽出する。そして、制御部50は、この輪郭に基づいて各領域C1、C2の所定の位置に基づいた印刷媒体Aの位置を取得する。
【0029】
また、制御部50は、搬送エンコーダ33の検出結果に基づいてプラテン31の所定位置に基づいた第1領域C1及び第2領域C2の位置を取得する。そして、図4(b)に示すように、制御部50は、各領域C1、C2における印刷媒体Aの位置及びプラテン31における各領域C1、C2の位置に基づいて、プラテン31の所定の位置に基づいた印刷媒体Aの位置である配置位置Dを取得する。この印刷媒体Aの配置位置Dは、プラテン31に配置された印刷媒体Aの所定部a0の位置である。所定部a0は、印刷媒体Aの重心、焦点、中心及び角など、印刷媒体Aの特徴部分である。印刷媒体Aの配置位置Dは、例えば、プラテン31における所定の位置を原点とした左右方向及び前後方向における座標で表されていてもよい。
【0030】
さらに、制御部50は、印刷媒体Aの輪郭に基づいて、プラテン31上に配置された印刷媒体Aの傾きである配置傾きθを取得する。例えば、配置傾きθは、前後方向などの所定の方向に対する印刷媒体Aの配置方向の傾きである。図4(b)の例では、楕円形状の印刷媒体Aの配置傾きθは、前後方向と楕円の長軸との成す角度である。ここで、印刷媒体Aの長軸が前後方向と平行であれば、配置傾きθは0度である。印刷媒体Aの長軸が前後方向と直交していれば、配置傾きθは90度である。
【0031】
このように、制御部50は、プラテン31上の複数の印刷媒体Aをカメラ12により撮影する。また、制御部50は、プラテン31上の複数の印刷媒体Aのうちの一部の印刷媒体Aである第1印刷媒体A1までの距離を測距センサ13により測定させる。ここで、制御部50は、左から見て印刷領域Gにおける測距センサ13がプラテン31上の第1印刷媒体A1に重なるように、プラテン31を前後方向に第1印刷媒体A1の配置位置D及び配置傾きθに基づいて移動させる。そして、制御部50は、印刷領域Gにおいて測距センサ13をキャリッジ41により左又は右に第1印刷媒体A1の配置位置D及び配置傾きθに基づいて移動させながら、上下方向における第1印刷媒体A1までの距離を測距センサ13により測定させる。これにより、制御部50は、第1印刷媒体A1において互いに異なる複数の部分までの測定距離を測距センサ13により取得することができる。なお、第1印刷媒体A1における1つの部分までの距離が測距センサ13により測定されてもよい。
【0032】
そして、制御部50は、走査エンコーダ46の検出結果に基づいて左右方向における測定部分Hの位置を取得し、搬送エンコーダ33の検出結果に基づいて前後方向における測定部分Hの位置を取得する。この測定部分Hの位置は、プラテン31における所定の位置を原点とした左右方向及び前後方向における座標である。このため、制御部50は、第1印刷媒体A1の配置位置D及び配置傾きθに基づいて、測定部分Hの位置を、印刷媒体Aの所定部a0の位置を原点とした位置である測定位置に変換する。そして、制御部50は、第1印刷媒体A1における測定部分Hの測定位置、及び、その測定部分Hまでの測定距離を対応付けて記憶する。図5の例では、第1印刷媒体A1において5つの測定部分Hについて測定距離を取得した場合、測定位置と測定距離との5つの組み合わせが記憶部53に記憶される。
【0033】
また、制御部50は、予め記憶部53に記憶されているヘッド20の吐出面23及び測距センサ13の上下方向における位置を記憶部53から取得する。そして、制御部50は、測距センサ13による第1印刷媒体A1までの測定距離、並びに、吐出面23及び測距センサ13の位置に基づいて、第1印刷媒体A1と吐出面23との間の距離である吐出距離を取得する。そして、制御部50は、第1印刷媒体A1における測定位置、及び、その吐出距離を対応付けて記憶部53に記憶する。なお、上下方向におけるヘッド20の吐出面23と測距センサ13との間の間隔が記憶部53に記憶されている場合には、制御部50は、この間隔及び測定距離に基づいて吐出距離を取得してもよい。また、上下方向における位置がヘッド20の吐出面23と測距センサ13とで同じ場合には、制御部50は、測定距離を吐出距離として取得してもよい。
【0034】
そして、制御部50は、プラテン31上における複数の印刷媒体Aの配置位置D及び配置傾きθ、並びに、第1印刷媒体A1までの測定距離及びその測定位置に基づいて、プラテン31上における第1印刷媒体A1以外の他の印刷媒体Aの吐出距離を取得する。この他の印刷媒体Aは、第1印刷媒体A1と同一形状であって、上下方向に対して直交する方向のサイズ、及び、上下方向における高さが第1印刷媒体A1と等しい。
【0035】
このため、制御部50は、第1印刷媒体A1の配置位置Dと他の印刷媒体Aの配置位置Dとの位置差分、並びに、第1印刷媒体A1の配置傾きθと他の印刷媒体Aの配置傾きθとの傾き差分を取得する。制御部50は、位置差分及び傾き差分に基づいて、第1印刷媒体A1の測定位置を他の印刷媒体Aに割り当てる。そして、制御部50は、測定位置における吐出距離を他の印刷媒体Aに割り付ける。このように、制御部50は、第1印刷媒体A1の吐出距離を、第1印刷媒体A1以外の全ての印刷媒体Aの吐出距離として取得する。そして、制御部50は、第1印刷媒体A1及びその他の印刷媒体Aについて、プラテン31における配置位置D及び配置傾きθ、並びに、印刷媒体Aにおける測定位置及び吐出距離を互いに対応付けて印刷媒体データとして記憶部53に記憶する。
【0036】
<印刷動作>
制御部50は、画像データを外部装置Eから取得し、測距動作により得られた印刷媒体データを記憶部53から取得する。そして、制御部50は、画像データ及び印刷媒体データに基づいて印刷動作を実行する。図6(a)及び図6(b)の例に示すように、制御部50が、パス処理にて、右又は左にヘッド20を移動させるキャリッジ41により移動動作を実行するとともに、ヘッド20のノズル21からインクを印刷媒体Aに吐出させる吐出動作を実行する。そして、制御部50は、搬送処理にて、印刷媒体Aを前方へプラテン31により搬送させる。このように、制御部50は、パス処理と搬送処理とを交互に繰り返し、インクにより印刷媒体Aに印刷画像Bを印刷する印刷動作を進行していく。
【0037】
この吐出動作に際し、制御部50は、印刷媒体データにおける各印刷媒体Aの所定部a0の配置位置Dを取得する。この所定部a0の位置と印刷画像Bの範囲とは、予め対応付けて記憶部53に記憶されている。図6(a)の例では、印刷媒体Aの所定部a0が印刷画像Bの範囲の中心になるように、印刷媒体Aの位置と印刷画像Bの範囲とは対応付けられている。よって、制御部50は、この対応関係に基づいて、印刷媒体Aの配置位置Dに応じた印刷画像Bの範囲を取得する。
【0038】
また、制御部50は、印刷媒体データにおける各印刷媒体Aの配置傾きθに基づいて印刷画像Bの範囲を傾かせる。これにより、印刷画像Bの範囲は、上下方向に対して直交する面において配置傾きθ、傾けられる。制御部50は、この傾けられた印刷画像Bの印刷位置、つまり、ヘッド20の吐出面23から吐出されて印刷媒体Aに着弾するインクの位置を取得する。このインクの着弾位置は、吐出面23と印刷媒体Aとの間の吐出距離に応じて、画像データ、並びに、印刷媒体データの配置位置D及び配置傾きθに基づいた着弾位置であるデータ位置からずれる。そこで、制御部50は、印刷媒体データにおける各印刷媒体Aの吐出距離に基づいて、駆動素子22の駆動タイミング、駆動素子22に供給される電圧、及び、駆動素子22に出力する駆動信号の種類のうちの少なくともいずれか一つを制御する。
【0039】
具体的には、制御部50は、駆動素子22の駆動タイミングを、データ位置に基づいた駆動タイミングから吐出距離に応じて補正する。この吐出タイミングの補正により、駆動素子22の駆動によりノズル21からインクが吐出されるタイミングが、吐出距離に応じて補正される。また、制御部50は、駆動素子22に供給される電圧を、画像データに基づいた駆動電圧から吐出距離に応じて補正する。この駆動電圧の補正により、駆動素子22の駆動によりノズル21から吐出されるインクの速度が、吐出距離に応じて補正される。さらに、制御部50は、駆動素子22の駆動信号の種類を、画像データに基づいた種類から吐出距離に応じて補正する。この駆動信号の種類に応じた駆動素子22の駆動によりノズル21から吐出されるインクの量が、吐出距離に応じて補正される。
【0040】
このように、インクの吐出タイミング、吐出されたインクの速度、及び、インクの吐出量が吐出距離に応じて補正されるため、吐出距離の変化に起因した印刷媒体Aにおけるインクの着弾位置のズレが低減し、吐出距離の変化に起因した画質の低下を抑制することができる。また、印刷媒体Aまでの距離の測定に測距センサ13を用いることにより、この測定距離に基づいた印刷媒体Aの吐出距離を精度良く取得でき、吐出距離の変化に起因した画質の低下を抑制することができる。さらに、第1印刷媒体A1までの測定距離を用いて第1印刷媒体A1及びその他の印刷媒体Aの吐出距離を取得することにより、測定時間が短縮化し、印刷画像Bの印刷速度の向上を図ることができる。
【0041】
<変形例1>
変形例1に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、制御部50は、撮影画像に基づいて複数の印刷媒体Aのうち互いに同一種類である複数の第2印刷媒体A2を判別する。制御部50は、撮影画像から取得した複数の第2印刷媒体A2の配置位置D及び配置傾きθ、並びに、複数の第2印刷媒体A2のうちの一部の第2印刷媒体A2を第1印刷媒体A1とした第1印刷媒体A1までの距離に基づいて、複数の第2印刷媒体A2と吐出面23との間の距離である吐出距離を取得する。制御部50は、測距センサ13をキャリッジ41により移動させながら、上下方向における第1印刷媒体A1までの距離を測距センサ13により測定させる。
【0042】
具体的には、図7(a)の例では、プラテン31上における複数の印刷媒体Aは、楕円形状の印刷媒体Aである楕円媒体Ax、及び、矩形状の印刷媒体Aである矩形媒体Ayを含んでいる。この矩形媒体Ayは、1つの印刷媒体Aであるため、第2印刷媒体A2ではない。これに対し、楕円媒体Axは、互いに同一種類である複数の印刷媒体Aであるため、第2印刷媒体A2である。この複数の楕円媒体Axのうちの1つの楕円媒体Axが第1印刷媒体A1である。このように、図7(a)の例では、プラテン31上に2種類の印刷媒体Aが配置されており、この2種類のうちの1種類の印刷媒体Aである楕円媒体Axが第2印刷媒体A2である。
【0043】
この場合、制御部50は、プラテン31上に載置された複数の印刷媒体Aをカメラ12により撮影する。そして、制御部50は、この撮影画像に画像処理を施して、例えば、印刷媒体Aの輪郭を取得し、この輪郭に基づいてプラテン31上での複数の印刷媒体Aの配置位置D及び配置傾きθを取得する。また、制御部50は、図7(a)の例では、輪郭の形状に基づいて、楕円形状の印刷媒体Aである楕円媒体Ax、及び、矩形状の印刷媒体Aである矩形媒体Ayを印刷媒体Aの種類として取得する。そして、制御部50は、楕円媒体Ax及び矩形媒体Ayの数をカウントする。ここで、楕円媒体Axは複数あるのに対し、矩形媒体Ayは1つである。この場合には、制御部50は、複数の楕円媒体Axを第2印刷媒体A2と判別する。
【0044】
そして、制御部50は、複数の楕円媒体Axに含まれる一部の楕円媒体Axを第1印刷媒体A1として、その第1印刷媒体A1までの距離を測距センサ13により測定させる。そして、制御部50は、複数の楕円媒体Axの配置位置D及び配置傾きθ、並びに、測距センサ13により測定された第1印刷媒体A1までの測定距離及び測定位置に基づいて、第1印刷媒体A1及びその他の楕円媒体Axと吐出面23との間の吐出距離を取得する。また、制御部50は、1つの矩形媒体Ayまでの距離を測距センサ13により測定させ、矩形媒体Ayまでの測定距離に基づいて矩形媒体Ayと吐出面23との間の吐出距離を取得する。
【0045】
また、図7(b)の例では、プラテン31上における複数の印刷媒体Aは楕円媒体Ax及び矩形媒体Ayを含んでいる。この楕円媒体Axは、互いに同一種類である複数の印刷媒体Aであるため、第2印刷媒体A2である。この複数の楕円媒体Axのうちの1つの楕円媒体Axが第1印刷媒体A1である。また、矩形媒体Ayも、互いに同一種類である複数の印刷媒体Aであるため、第2印刷媒体A2である。この複数の矩形媒体Ayのうちの1つの矩形媒体Ayが第1印刷媒体A1である。このように、図7(b)の例では、プラテン31上に2種類の印刷媒体Aが配置されており、この2種類の印刷媒体Aである楕円媒体Ax及び矩形媒体Ayが共に第2印刷媒体A2である。
【0046】
この場合、制御部50は、カメラ12による撮影画像に基づいて印刷媒体Aの配置位置D、配置傾きθ、種類及び数を取得する。そして、制御部50は、これらに基づいて、複数の楕円媒体Axを第2印刷媒体A2と判別すると共に、複数の矩形媒体Ayを第2印刷媒体A2と判別する。そして、制御部50は、複数の楕円媒体Axに含まれる一部の楕円媒体Axを第1印刷媒体A1として、その第1印刷媒体A1までの距離を測距センサ13により測定させる。そして、制御部50は、複数の楕円媒体Axの配置位置D及び配置傾きθ、並びに、測距センサ13により測定された第1印刷媒体A1の楕円媒体Axまでの測定距離及び測定位置に基づいて、第1印刷媒体A1及びその他の楕円媒体Axと吐出面23との間の吐出距離を取得する。
【0047】
また、制御部50は、複数の矩形媒体Ayに含まれる一部の矩形媒体Ayを第1印刷媒体A1として、その第1印刷媒体A1までの距離を測距センサ13により測定させる。そして、制御部50は、複数の矩形媒体Ayの配置位置D及び配置傾きθ、並びに、測距センサ13により測定された第1印刷媒体A1の矩形媒体Ayまでの測定距離及び測定位置に基づいて、第1印刷媒体A1及びその他の矩形媒体Ayと吐出面23との間の吐出距離を取得する。
【0048】
このように、複数種類の第2印刷媒体A2がプラテン31上に配置されている場合であっても、制御部50は互いに同一種類である複数の第2印刷媒体A2を判別する。そして、制御部50は、複数の第2印刷媒体A2のうちの一部の第2印刷媒体A2である第1印刷媒体A1までの距離を測定し、この測定距離に基づいた吐出距離を、これと同種類の他の第2印刷媒体A2に適用する。これにより、高精度の吐出距離に基づいて印刷媒体Aに印刷画像Bを印刷するため、立体形状の印刷媒体Aにおける画質の向上を図ることができる。また、印刷媒体Aまでの測定時間の短縮化によって、印刷画像Bの印刷速度の向上を図ることができる。
【0049】
<変形例2>
変形例2に係る印刷装置10は、上記実施の形態及び変形例1において、図8の例に示すように、ヘッド20から吐出されるインクにより印刷媒体Aに印刷が行われる印刷領域Gを覆うカバー16を備えている。カメラ12は、カバー16の外に配置されている。例えば、カメラ12は、前後方向においてプラテン31の移動範囲内であって、左右方向においてプラテン31の中央に配置されている。
【0050】
ここで、カメラ12は、カバー16から前方に突出したプラテン31において、左右方向及び前後方向における中央の上方に配置されていてもよい。この位置にてプラテン31上に複数の印刷媒体Aを配置してから、プラテン31上の印刷媒体Aをカメラ12により撮影することができる。これにより、工程の順序に従って印刷媒体Aをカメラ12により撮影することができるため、印刷画像Bの印刷速度の向上を図ることができる。
【0051】
<変形例3>
変形例3に係る印刷装置10は、上記実施の形態及び変形例1~2において、制御部50は、プラテン31上の第1領域C1と、第1領域C1とは異なるプラテン31上の第2領域C2とをカメラ12により撮影する場合、第1領域C1と第2領域C2との境界に印刷媒体Aが位置しないように、境界を決定する。制御部50は、境界により区切られた画像に基づいて、プラテン31上での複数の印刷媒体Aの配置位置D及び配置傾きθを取得する。
【0052】
例えば、図9に示すように、プラテン31上において複数の印刷媒体Aが配置されている範囲がカメラ12の撮影範囲よりも前後方向において広い場合、1度のカメラ12の撮影により全ての印刷媒体Aを撮影することができない。このような場合、制御部50は、カメラ12に対してプラテン31を前後方向に移動させて、プラテン31上における撮影範囲を前後方向に変えながら、カメラ12により複数回、撮影させる。
【0053】
ここで、制御部50は、例えば、プラテン31を所定の一定速度で後方へ搬送しながら、所定の時間間隔を空けてプラテン31上をカメラ12により撮影する。これにより、図9の例では、プラテン31上の第1領域C1、第2領域C2及び第3領域C3が順に撮影される。第1領域C1の前端が第2領域C2の後端よりも前方であり第3領域C3の後端よりも後方であって、第2領域C2の前端が第3領域C3の後端よりも、前方である。これにより、第1領域C1の前部が第2領域C2の後部に重なり、第2領域C2の前部が第3領域C3の後部に重なっている。この第1領域C1~第3領域C3の各領域の撮影画像において印刷媒体Aの一部が欠けると、その印刷媒体Aの配置位置D及び配置傾きθが撮影画像に基づいて精度良く取得できない。そこで、制御部50は、各印刷媒体Aの全体が第1領域C1~第3領域C3の少なくともいずれかの領域に含まれるように、第1領域C1~第3領域C3を決定する。
【0054】
図9の例では、1つ目の印刷媒体Aa~3つ目の印刷媒体Acは、第1領域C1の外周縁に配置されずに、第1領域C1の外周縁の内側に配置されており、1つ目の印刷媒体Aa~3つ目の印刷媒体Acの各印刷媒体Aの全体が第1領域C1に含まれている。4つ目の印刷媒体Ad及び5つ目の印刷媒体Aeの各印刷媒体Aは、第1領域C1の外周縁に配置されており、一部分が第1領域C1に配置されており、その他の部分が第1領域C1に配置されていない。
【0055】
また、4つ目の印刷媒体Ad~7つ目の印刷媒体Agは、第2領域C2の外周縁に配置されずに、第2領域C2の外周縁の内側に配置されており、4つ目の印刷媒体Ad~7つ目の印刷媒体Agの各印刷媒体Aの全体が第2領域C2に含まれている。8つ目の印刷媒体Ahの各印刷媒体Aは、第2領域C2の外周縁に配置されており、一部分が第2領域C2に配置されており、その他の部分が第2領域C2に配置されていない。
【0056】
さらに、8つ目の印刷媒体Ah~10つ目の印刷媒体Ajは、第3領域C3の外周縁に配置されずに、第3領域C3の外周縁の内側に配置されており、8つ目の印刷媒体Ah~10つ目の印刷媒体Ajの各印刷媒体Aの全体が第3領域C3に含まれている。6つ目の印刷媒体Af及び7つ目の印刷媒体Agの各印刷媒体Aは、第3領域C3の外周縁に配置されており、一部分が第3領域C3に配置されており、その他の部分が第3領域C3に配置されていない。
【0057】
この場合、制御部50は、第1領域C1と第2領域C2との境界である第1境界F1を、第1領域C1と第2領域C2とが重なる範囲において、1つ目の印刷媒体Aa~3つ目の印刷媒体Acと4つ目の印刷媒体Ad及び5つ目の印刷媒体Aeとの間に決定し記憶部53に記憶する。制御部50は、第2領域C2と第3領域C3との境界である第2境界F2を、第2領域C2と第3領域C3とが重なる範囲において、4つ目の印刷媒体Ad~7つ目の印刷媒体Agと8つ目の印刷媒体Ah~10つ目の印刷媒体Ajとの間に決定し記憶部53に記憶する。
【0058】
そして、制御部50は、第1領域C1の後端から第1境界F1までの第1領域C1の撮影画像に1つ目の印刷媒体Aa~3つ目の印刷媒体Acの全体が含まれるため、この撮影画像に基づいて1つ目の印刷媒体Aa~3つ目の印刷媒体Acの配置位置D及び配置傾きθが取得する。制御部50は、第1境界F1から第2境界F2までの第2領域C2の撮影画像に4つ目の印刷媒体Ad~7つ目の印刷媒体Agの全体が含まれるため、この撮影画像に基づいて4つ目の印刷媒体Ad~7つ目の印刷媒体Agの配置位置D及び配置傾きθが取得する。制御部50は、第2境界F2から第3領域C3の前端までの第3領域C3の撮影画像に8つ目の印刷媒体Ah~10つ目の印刷媒体Ajの全体が含まれるため、この撮影画像に基づいて8つ目の印刷媒体Ah~10つ目の印刷媒体Ajの配置位置D及び配置傾きθが取得する。
【0059】
そしてこのように、第1境界F1及び第2境界F2に印刷媒体Aが位置しないように第1境界F1及び第2境界F2を決定することにより、撮影画像に基づいて各印刷媒体Aの配置位置D及び配置傾きθを精度良く取得することができる。そして、1つ目の印刷媒体Aa~10つ目の印刷媒体Ajのうちの一部の第1印刷媒体A1までの測定距離に基づいて、印刷媒体Aa~10つ目の印刷媒体Ajの吐出距離が取得される。この吐出距離に応じて、インクの吐出タイミング、吐出されたインクの速度、及び、インクの吐出量が吐出距離に応じて補正される。このため、印刷画像Bの印刷速度の向上を図りつつ、吐出距離の変化に起因した画質の低下を抑制することができる。
【0060】
なお、上記実施の形態及び変形例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、立体形状の印刷媒体における画質の向上及び画像の印刷速度の向上を図ることができる印刷装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 :印刷装置
12 :カメラ
13 :測距センサ
16 :カバー
20 :ヘッド
21 :ノズル
23 :吐出面
31 :プラテン
41 :キャリッジ
50 :制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9