(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151703
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061458
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏史
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EB13
2C056EB37
2C056EC14
2C056EC37
2C056FA13
2C056FD20
2C056HA37
2C056HA44
2C056KD06
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制しながら、反射光に起因した距離の測定精度の低下を低減することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置10は、印刷媒体Aの印刷領域以上の範囲に亘って並ぶ複数のノズル21、及び、複数の前記ノズル21が開口する吐出面24を有し、前記ノズル21から光硬化性のインクを前記印刷媒体Aに吐出するラインヘッド20と、前記印刷媒体A上のインクに光を照射する光照射部30と、前記印刷媒体Aと前記吐出面24との間の距離を測定するための光学式のセンサ13と、制御部50と、を備え、前記制御部50は、前記光照射部30による光の照射動作と前記センサ13による距離の測定動作とを互いに異なるタイミングで実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の印刷領域以上の範囲に亘って並ぶ複数のノズル、及び、複数の前記ノズルが開口する吐出面を有し、前記ノズルから光硬化性のインクを前記印刷媒体に吐出するラインヘッドと、
前記印刷媒体上のインクに光を照射する光照射部と、
前記印刷媒体と前記吐出面との間の距離を測定するための光学式のセンサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記光照射部による光の照射動作と前記センサによる距離の測定動作とを互いに異なるタイミングで実行させる
印刷装置。
【請求項2】
前記センサの前記測定動作による前記印刷媒体における距離の測定可能範囲は、前記光照射部の前記照射動作による前記印刷媒体における光の照射可能範囲よりも広い、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記照射動作と前記測定動作とを交互に周期的に実行させ、
一周期中の前記照射動作による光の照射時間は、一周期中の前記測定動作による距離の測定時間よりも長い、
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
一周期中の前記照射動作による光の照射時間は、一周期中の前記測定動作による距離の測定時間の5倍以上である、
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記光照射部は、複数の光源、及び、複数の前記光源をそれぞれ駆動する複数の駆動回路を有している、
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷媒体を第1方向に搬送する搬送装置を備え、
前記制御部は、前記光照射部により前記印刷媒体上の各部に照射される積算光量のばらつき量が所定量以下になるように、前記第1方向に並ぶ複数の前記光源を点滅させる、
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記センサは、3Dスキャナである、
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記ラインヘッド、前記光照射部及び前記センサを収容する筐体を備えている、
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置として、例えば、特許文献1の画像記録装置が知られている。この画像記録装置は、インクにより画像を記録媒体に記録する記録部、記録媒体に記録された画像に対して紫外線を照射する紫外線照射部、及び、記録媒体と紫外線照射部との間の照射距離を測定する第1測定部を備えている。そして、画像記録装置は、照射距離を第1測定部によって測定しながら、この照射距離が一定になるように紫外線照射部を移動し、紫外線照射部から紫外線を照射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、画像記録装置では、第1測定部により照射距離を測定しつつ、紫外線照射部により紫外線を照射している。記録媒体の形状によっては、紫外線照射部から照射された光が、記録媒体で反射して第1測定部に入射することがある。このとき、第1測定部が光学式のセンサである場合には、反射光が第1測定部による測定のノイズとして検出され、第1測定部の測定精度の低下を招いてしまう。これに対し、反射光が第1測定部に入射しないように、第1測定部を紫外線照射部から離して配置すると、画像記録装置が大型化してしまう。
【0005】
本発明はこのような事態に鑑み、大型化を抑制しながら、反射光に起因した距離の測定精度の低下を低減することができる印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る印刷装置は、印刷媒体の印刷領域以上の範囲に亘って並ぶ複数のノズル、及び、複数の前記ノズルが開口する吐出面を有し、前記ノズルから光硬化性のインクを前記印刷媒体に吐出するラインヘッドと、前記印刷媒体上のインクに光を照射する光照射部と、前記印刷媒体と前記吐出面との間の距離を測定するための光学式のセンサと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記光照射部による光の照射動作と前記センサによる距離の測定動作とを互いに異なるタイミングで実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、大型化を抑制しながら、反射光に起因した距離の測定精度の低下を低減することができる印刷装置を提供することが可能であるという効果を奏する。
【0008】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る印刷装置を上から見た概略図である。
【
図2】
図1の印刷装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】照射動作及び測定動作のタイミングチャートである。
【
図4】
図4(a)は、センサによる測定可能範囲D0及び周期測定範囲Dを示す図である。
図4(b)は、光照射部による照射可能範囲E0及び周期照射範囲Eを示す図である。
【
図5】変形例に係る印刷装置を上から見た概略図である。
【
図6】
図5の印刷装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】
図7(a)は、センサにより印刷媒体の吐出距離を測定している図である。
図7(b)~
図7(d)は、光照射部により光を印刷媒体に照射している図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0011】
(実施の形態)
<印刷装置の構成>
本発明の一実施の形態に係る印刷装置10は、
図1に示すように、例えば、ラインヘッド20のノズル21から印刷媒体Aにインクを吐出し、光照射部30から光を印刷媒体Aに照射して、画像を印刷するインクジェットプリンタである。インクは、光硬化性のインクであって、例えば、紫外線又は赤外線などの光によって硬化するインクである。
【0012】
印刷媒体Aは、例えば、布帛及び紙などのシート形状、又は、ボール及びマグカップなどの立体形状を有している。例えば、印刷装置10は、3Dプリンタであって、ラインヘッド20から吐出したインクで形成し光照射部30から照射した光により硬化した造形物を作成してもよい。この場合、作成している造形物が印刷媒体Aである。さらに、印刷装置10は、作成した造形物に対してラインヘッド20からインクを吐出して光照射部30からインクに光を照射して、造形物に画像を印刷してもよい。この場合、作成した造形物が印刷媒体Aである。
【0013】
印刷装置10は、ラインヘッド20、光照射部30、搬送装置40、筐体11、タンク12、センサ13及び制御部50を備えている。なお、搬送装置40が印刷媒体Aを搬送する第1方向を前後方向と称する。この前後方向に交差(例えば、直交)する方向であって、複数のノズル21が並ぶ方向を左右方向と称する。また、左右方向及び前後方向に交差(例えば、直交)する方向を上下方向と称する。但し、印刷装置10の配置はこれに限定されない。
【0014】
搬送装置40は、プラテン41、搬送レール、無端ベルト及び搬送モータ42(
図2)を有している。プラテン41は、平坦な上面を有しており、その上面に載置された印刷媒体Aを支持して、上下方向において印刷媒体Aとラインヘッド20との距離である吐出距離を規定する。搬送レールは前後方向に延びて、プラテン41を支持している。無端ベルトは、搬送レールに沿って配置され、プラテン41に接続されると共に、プーリを介して搬送モータ42に連結されている。搬送モータ42が駆動すると、無端ベルトが回転して、プラテン41が前後方向に移動する。これにより、プラテン41に配置された印刷媒体Aが前後方向に搬送される。
【0015】
タンク12は、インクを貯留する容器であって、その数はインクの種類と同数である。タンク12は、チューブなどの配管によりラインヘッド20に連通しており、ラインヘッド20における対応ノズル21にインクを供給する。また、筐体11は、ラインヘッド20、光照射部30、搬送装置40、タンク12、センサ13及び制御部50を内部に収容している。ただし、これらの一部が筐体11の外に配置されていてもよい。例えば、筐体11は前開口及び後開口を有している。この場合、プラテン41は、前後方向に移動する際に、前開口から筐体11よりも前方へ突出し、後開口から筐体11の後方へ突出してもよい。
【0016】
ラインヘッド20は、例えば、複数のチップ22、支持台23、及び、駆動素子25(
図2)を有している。支持台23は、例えば、直方体形状を有し、複数のチップ22を支持し、筐体11に固定されている。チップ22は、例えば、直方体形状を有し、複数のノズル21が設けられている。ノズル21は、チップ22の下面である吐出面24に開口している。複数のノズル21は、チップ22において左右方向に等間隔に列を成して並んで、ノズル列を構成している。各チップ22には、例えば、インクの種類と同数の4本のノズル列が設けられている。各ノズル列のノズル21が左右方向において印刷媒体Aの印刷領域A1以上の範囲に亘って並ぶように、複数のチップ22は左右方向及び前後方向において千鳥状に配置されている。
【0017】
駆動素子25は、圧電素子、発熱素子及び静電式アクチュエータなどであって、ノズル21に対応して設けられている。駆動素子25は、ノズル21からインクを吐出する圧力を、ラインヘッド20内のインクに付与するように駆動する。
【0018】
光照射部30は、印刷処理中の印刷媒体Aの搬送方向においてラインヘッド20よりも下流に配置されている。例えば、印刷媒体Aを前方に搬送しながら、ラインヘッド20からインクを印刷媒体Aに吐出させて印刷する場合、光照射部30はラインヘッド20よりも前方に配置されている。これにより、ラインヘッド20から印刷媒体Aに着弾したインクに、光照射部30から光を照射することができる。
【0019】
光照射部30は、複数の光源31、及び、光源31が搭載された回路基板32を有している。回路基板32は、例えば、絶縁性材料から成り、矩形の平板形状であって、その下面に光源31が搭載されている。光源31は、例えば、LEDなどの発光素子であって、ノズル21から吐出された印刷媒体A上のインクを硬化する光(例えば、紫外線又は赤外線)を発光する。複数の光源31は、前後方向において1つであり、左右方向に等間隔に一列に並んで、光源列を形成している。光源列は、左右方向において印刷媒体Aの印刷領域A1以上の範囲に亘っている。
【0020】
センサ13は、上下方向における印刷媒体Aまでの距離を測定する光学式の測距センサであって、測定した距離を制御部50に出力する。センサ13は、発光ダイオードなどの発光素子、フォトダイオードなどの受光素子及び、プロセッサなどの処理部を有している。センサ13は、発光素子による発光データ及び受光素子による受光データに基づいて処理部が距離を測定する。ラインヘッド20の吐出面24は、所定の位置に配置されている。このため、センサ13は、測定した距離及び吐出面24の所定の配置に基づいて吐出面24と印刷媒体Aとの間の距離である吐出距離を測定するためのセンサとして機能する。なお、制御部50が、センサ13により測定された距離及び吐出面24の所定の配置に基づいて吐出面24と印刷媒体Aとの間の吐出距離を取得してもよい。
【0021】
例えば、センサ13として3Dスキャナが例示される。3Dスキャナのセンサ13は、パターン光投影方式又はレーザー光線方式などの方式によって、プラテン41の上面上に配置された印刷媒体Aの上面の三次元座標を取得する。3Dスキャナは、三次元座標及び吐出面24の所定の配置に基づいて吐出距離を測定するためのセンサとして機能する。3Dスキャナをセンサ13に用いることにより、1度の測定動作によって印刷媒体Aにおける広い範囲の吐出距離を測定することができる。
【0022】
<制御部>
制御部50は、例えば、コンピュータであって、
図2に示すように、インターフェース51、演算部52及び記憶部53を有している。インターフェース51は、コンピュータ、カメラ、通信ネットワーク、記録媒体、ディスプレイ及びプリンタなどの外部装置Bから画像データなどの各種データを受信する。画像データは、印刷媒体Aに印刷される画像を示すラスタデータなどである。なお、制御部50は、単独の装置により構成されていてもよく、又は、複数の装置が分散配置されていて、それらが協働して印刷装置10の動作を行うよう構成されていてもよい。
【0023】
記憶部53は、演算部52がアクセス可能なメモリであって、RAM及びROMなどにより構成されている。RAMは、画像データなどの各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種データ処理を行うためのコンピュータプログラム、及び、所定のデータを記憶している。なお、プログラムは、記憶部53とは異なる外部の記憶媒体であって且つ演算部52からアクセス可能な記憶媒体、例えば、CD-ROMなどに記憶されていてもよい。
【0024】
演算部52は、CPUなどのプロセッサ、及び、ASICなどの集積回路の少なくとも一方の回路などにより構成されている。演算部52は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、印刷装置10の各部を制御して、印刷処理を実行する。
【0025】
このような制御部50は、センサ13に接続されている。制御部50は、ラインヘッド20の駆動素子25に接続され、駆動素子25の駆動を制御する。これにより、駆動素子25の駆動に応じたノズル21からのインクの吐出タイミング、吐出速度及び吐出量などが制御される。制御部50は、光源駆動回路33を介して光源31に接続され、光源31の点滅を制御する。制御部50は、搬送モータ42に接続され、搬送モータ42の駆動を制御する。これにより、搬送モータ42の駆動に応じた印刷媒体Aの搬送、停止及び搬送方向などが制御される。
【0026】
<印刷処理>
制御部50は、画像データを外部装置Bから取得し、画像データに基づいて印刷処理を実行する。ここで、制御部50は、搬送モータ42を制御して、印刷媒体Aを前方へ搬送させる搬送動作を実行する。前方に移動する印刷媒体Aに対して、制御部50は、測定動作をセンサ13に実行させ、センサ13によりラインヘッド20の吐出面24と印刷媒体Aとの間の吐出距離を測定する。さらに、前方に移動しセンサ13により距離が測定された印刷媒体Aに対して、制御部50は、センサ13の前方にあるラインヘッド20に吐出動作を実行させる。この吐出動作において、制御部50は、吐出距離に基づいて駆動素子25を制御し、ラインヘッド20のノズル21からインクを吐出させる。
【0027】
例えば、制御部50は、吐出距離に応じて駆動素子25の駆動タイミングを補正する。この駆動タイミングを画像データに基づいた駆動タイミングから吐出距離に応じてずらすことにより、駆動素子25の駆動によるノズル21からのインクの吐出タイミングが吐出距離に応じて変化する。この吐出タイミングによって、印刷媒体A上におけるインクの着弾位置が吐出距離に応じて調整される。
【0028】
また、制御部50は、吐出距離に応じて駆動素子25に供給される駆動電圧を補正する。この駆動電圧を画像データに基づいた電圧から吐出距離に応じてずらすことにより、駆動素子25の駆動量が吐出距離に応じて変化する。このため、駆動量の変化によってノズル21からのインクの吐出速度が変化するため、印刷媒体A上におけるインクの着弾位置が吐出距離に応じて調整される。
【0029】
このように、印刷媒体Aの立体形状に応じて吐出距離が変化しても、吐出距離に基づいてインクの着弾位置が調整されるため、印刷媒体Aの立体形状に起因したインクの着弾ズレを低減することができる。なお、画像データに基づいた駆動タイミング及び駆動電圧は、吐出距離が所定距離、例えば、15mmのときのタイミング及び電圧である。
【0030】
さらに、ラインヘッド20によりインクが吐出され前方に移動する印刷媒体Aに対して、制御部50は、ラインヘッド20の前方にある光照射部30に照射動作を実行させる。この照射動作において、制御部50は、光源31を制御して、光照射部30から印刷媒体Aに光を照射させる。これにより、印刷媒体A上のインクは光を受けて硬化し、印刷媒体Aに定着する。このようにして、制御部50は、インクにより画像を印刷媒体Aの印刷領域A1に印刷して、印刷処理を進めていく。
【0031】
このように、ラインヘッド20を備えた印刷装置10では、センサ13による測定動作及び光照射部30による照射動作が行われる。また、センサ13及び光照射部30が互いに同じ筐体11内に収容されている。このため、光照射部30から照射されて印刷媒体Aに反射された光がセンサ13に入射し易く、この入射光によってセンサ13の測定精度が低下してしまう。これに対して、制御部50は、光照射部30による光の照射動作とセンサ13による吐出距離の測定動作とを互いに異なるタイミングで実行させる。
【0032】
図3に示すように、制御部50は、照射動作と測定動作とを交互に周期的に実行させる。一周期は、例えば、前後方向における光照射部30による光の照射幅を、印刷媒体Aの搬送速度で割った時間である。光の照射幅は、光源31の照射角、照度及び、光源31と印刷媒体Aとの間の照射距離などに基づいて予め定められている。印刷媒体Aの搬送速度は、例えば、700m/sに予め定められている。なお、センサ13の測定動作と光照射部30の照射動作との間に、これらの動作が干渉しないように、1~5msec程度の隙間時間を設けてもよい。
【0033】
ここで、光照射部30は、光源31を消灯してから、点灯後に次に消灯するまでを一周期として、この光源31の点灯と消灯とを交互に繰り返す。光照射部30は、光源31の点灯により照射動作を実行し、光を印刷媒体Aに照射する。光照射部30は、光源31の消灯により照射動作を実行しない。
【0034】
また、センサ13は、露光開始してから、露光停止後に次に露光開始するまでを一周期として、センサ13の露光とデータ処理とを交互に繰り返す。センサ13は、露光により測定動作を実行し、発光素子から光を印刷媒体Aに照射して、印刷媒体Aによる反射光を受光素子により受光して、印刷媒体Aの形状に関するデータを光学的に取り込む。そして、センサ13は、データ処理時に測定動作を実行せずに、露光により得られた光学データを3D座標に変換する。
【0035】
この周期における光源31の消灯中に、センサ13は、露光である測定動作を行う。このように、センサ13による受光時に光照射部30から光が照射されないため、光照射部30から照射されて印刷媒体Aにより反射された光がセンサ13に入射しない。これにより、光照射部30とセンサ13との間隔を広げずに、光照射部30の光に起因した吐出距離の測定精度の低下を低減することができる。
【0036】
また、周期における光源31の点灯による照射動作中に、センサ13は露光せずにデータ処理を行う。このように、照射動作中の時間にデータ処理に用いることにより、照射動作時間を長くとれ、光照射量の不足によるインクの未硬化を低減することができる。
【0037】
さらに、一周期中の照射動作による光の照射時間は、一周期中の測定動作による照射距離の測定時間よりも長く、例えば、測定時間の5倍以上である。例えば、一周期において、測定動作の時間は10ms以上且つ20ms未満であり、照射動作の時間は50ms以上且つ60ms未満である。これにより、光照射量の不足によるインクの未硬化を低減することができる。
【0038】
図4(a)に示すように、センサ13の測定動作中に印刷媒体Aは移動するため、1周期にセンサ13が印刷媒体Aまでの照射距離を測定する範囲である周期測定範囲Dは、センサ13による測定可能範囲D0、センサ13の測定動作時間、及び、印刷媒体Aの移動速度により得られる。印刷媒体Aの移動速度は予め定められている。センサ13の測定可能範囲D0は、センサ13及び印刷媒体Aが移動せずにセンサ13が印刷媒体Aの吐出距離を測定可能な範囲であって、センサ13の画角及び固定位置により予め定められている。センサ13の測定動作時間は、今回の周期における測定動作の周期測定範囲Dと、次回の周期における測定動作の周期測定範囲Dが重なる又は隣接するように、予め定められている。
【0039】
図4(b)に示すように、光照射部30の照射動作中に印刷媒体Aは移動するため、1周期における光照射部30が光を印刷媒体Aに照射する範囲である周期照射範囲Eは、光照射部30による照射可能範囲E0、光照射部30の照射動作時間、及び、印刷媒体Aの移動速度により得られる。光照射部30の照射可能範囲E0は、光照射部30及び印刷媒体Aが移動せずに光照射部30が印刷媒体Aに光を照射可能な範囲であって、光照射部30の照射角度及び照射強度により予め定められている。光照射部30の照射動作時間は、今回の周期における照射動作の周期照射範囲Eと、次回の周期における照射動作の周期照射範囲Eが重なる又は隣接するように、予め定められている。
【0040】
このセンサ13の測定動作による印刷媒体Aにおける照射距離の測定可能範囲D0は、光照射部30の照射動作による印刷媒体Aにおける光の照射可能範囲E0よりも広い。これにより、1周期における光照射部30の照射時間(光源31の点灯時間)を、1周期におけるセンサ13の測定時間(センサ13の露光時間)よりも長くすることができる。光照射量の不足によるインクの未硬化を低減しつつ、印刷媒体Aの吐出距離を測定することができる。
【0041】
<変形例>
変形例に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、
図6に示すように、光照射部30は、複数の光源31、及び、複数の光源31をそれぞれ駆動する複数の駆動回路である光源駆動回路33を有している。ここで、制御部50は、光照射部30により印刷媒体A上の各部に照射される積算光量のばらつき量が所定量以下になるように、前後方向に並ぶ複数の光源31を点滅させてもよい。
【0042】
具体的には、
図5に示すように、複数の光源31は、左右方向に並ぶ光源列を成し、光照射部30には複数(例えば、3本)の光源列が前後方向に並んでいる。
図6に示すように、複数の光源駆動回路33の数は、光源31と同数である。光照射部30において光源31と光源駆動回路33とが一対一で接続されている。これにより、複数の光源31の駆動は互いに異なる方法で制御可能である。なお、光源駆動回路33の数は、光源31の数よりも少なくてもよい。この場合、互いに同じ光源列の複数の光源31が、互いに同じ光源駆動回路33に接続されてもよい。これにより、複数の光源31は、光源列ごとに制御されてもよい。
【0043】
図7(a)の例では、複数(例えば、3個)の光源31は前後方向に並んでいる。例えば、第1光源31a、第2光源31b及び第3光源31cがこの順で前から並んでいる。第3光源31cが、他の光源31よりも前後方向においてセンサ13に近い。光照射部30において、第1光源31a、第2光源31b及び第3光源31cのそれぞれの光源31が左右方向に並んで列を成している。各光源列において複数の光源31による光の照射範囲が、左右方向において互いに隣接する又は一部が重なるように、複数の光源31が並んでいる。
【0044】
印刷処理では、
図7(a)~
図7(d)に示すように、制御部50は、印刷媒体Aを前方に搬送しながら、ラインヘッド20からインクを画像データに基づいて吐出させると共に、光照射部30による光の照射動作とセンサ13による吐出距離の測定動作とを互いに異なるタイミングで実行させる。例えば、制御部50は、1回の測定動作と3回の照射動作を1周期として、この周期を繰り返し実行させる。まず、
図7(a)に示すように、制御部50は、光照射部30を消灯した状態で、センサ13に露光させて測定動作を実行させる。これにより、センサ13は、光照射部30から照射されて印刷媒体Aで反射された光を受光せずに、印刷媒体Aの形状データを光学的に受光するため、印刷媒体Aの吐出距離を高精度で測定することができる。
【0045】
それから、
図7(b)に示すように、制御部50は、センサ13を露光させずに、センサ13に最も近い第3光源31cを消灯した状態で、これ以外の第1光源31a及び第2光源31bを点灯する。これにより、第1光源31aにより印刷媒体Aの周期照射範囲E1に光が照射され、第2光源31bにより印刷媒体Aの周期照射範囲E2に光が照射される。この周期照射範囲E1及び周期照射範囲E2は、前後方向において互いに隣接又は一部が重なる。
【0046】
続いて、
図7(c)に示すように、制御部50は、センサ13を露光させずに、第1光源31a、第2光源31b及び第3光源31cの全ての光源31を点灯する。これにより、前方に移動する印刷媒体Aにおいて、第1光源31aにより周期照射範囲E2に光が照射され、第2光源31bにより周期照射範囲E3に光が照射され、第3光源31cにより周期照射範囲E4に光が照射される。この周期照射範囲E3及び周期照射範囲E2は、前後方向において互いに隣接又は一部が重なり、周期照射範囲E4及び周期照射範囲E3は、前後方向において互いに隣接又は一部が重なる。
【0047】
さらに、
図7(d)に示すように、制御部50は、センサ13を露光させずに、第1光源31a、第2光源31b及び第3光源31cの全ての光源31を点灯する。これにより、前方に移動する印刷媒体Aにおいて、第1光源31aにより周期照射範囲E3に光が照射され、第2光源31bにより周期照射範囲E4に光が照射され、第3光源31cにより周期照射範囲E5に光が照射される。この周期照射範囲E5及び周期照射範囲E4は、前後方向において互いに隣接又は一部が重なる。
【0048】
このような、制御部50は、
図7(a)に示すセンサ13による測定動作、及び、
図7(b)~
図7(d)に示す光照射部30による光照射動作を1周期として、この周期を繰り返す。この今周期における測定動作による周期測定範囲Dと、この次周期における測定動作による周期測定範囲Dとは、前後方向において互いに隣接又は一部が重なる。これにより、連続する周期において隙間なく印刷媒体Aまでの照射距離を測定することができる。
【0049】
また、印刷媒体Aの各範囲は、2回分の照射動作による積算光量を受けるため、光照射部30により印刷媒体A上の各範囲に照射される積算光量のばらつき量が所定量以下になる。この積算光量は、例えば、光の照度(mW/cm2)と照射時間(s)との積(mJ/cm2)である。照射時間は、印刷媒体Aの搬送速度に基づいて予め定められている。このように、積算光量のばらつきがない又は少ない光を印刷媒体A上のインクが受けて硬化するため、インクの硬化状態のばらつきが低減され、硬化状態に起因する画質の低下を抑制することができる。
【0050】
また、1周期において、センサ13による測定動作の回数よりも、光照射部30による照射動作の回数が多い。これにより、照射動作の間に行うセンサ13のデータ処理の時間を長くとることができる。よって、データ処理において、測定動作により測定された印刷媒体Aの形状データを補正することができるため、吐出距離の測定精度の向上を図ることができる。
【0051】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る印刷装置は、大型化を抑制しながら、反射光に起因した距離の測定精度の低下を低減することができる印刷装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0053】
10 :印刷装置
11 :筐体
13 :センサ
20 :ラインヘッド
21 :ノズル
24 :吐出面
30 :光照射部
31 :光源
40 :搬送装置
50 :制御部