(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151704
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】基板加工装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20231005BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H05K3/46 Y
H05K3/46 X
H05K3/00 T
H05K3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061459
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】592141488
【氏名又は名称】アスリートFA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】仙道 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 良彦
(72)【発明者】
【氏名】仲田 大介
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316CC08
5E316GG15
5E316GG34
5E316HH40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内部配線を持つ電子基板に内部配線が露出したキャビティを形成する基板加工装置を提供する。
【解決手段】基板加工装置1は、電子基板の一つであるICカード2上に導電性のプレート12を配置し、切削工具であるエンドミル15と、スピンドル筐体と電気的に導通がとれるスピンドル14と、を持つ。スピンドルは、グランド電位になるようにする。導電性プレートを、静電容量測定器16に接続し、スピンドルを下降させ、切削工具と電子基板の内部配線が接触した瞬間に、導電性プレートと内部配線間の静電容量が発生する。制御装置17は、その静電容量の上昇を静電容量測定器で検出して、切削工具と電子基板の内部配線の接触を検知する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部配線を持つ電子基板に切削加工により電子基板の内部配線を露出させる基板加工装置において、
基板を載せるためのステージ、
電子基板の上面又は下面で前記電子基板に密着する導電性プレート、
電子基板を位置決めする機構、
XYZ方向に移動自在であり導電性のある切削工具、
導電性プレートと切削工具間の静電容量を測定する機器、
静電容量を測定する機器からの信号を受け取り、前記切削工具の動作を制御する制御装置、を備え、
切削工具が基板内部配線に接触したことを静電容量の測定値変化から検出することを特徴とする基板加工装置。
【請求項2】
前記静電容量を測定する機器は、
ピコファラッド以下の静電容量を測定できる分解能を持つ、
請求項1に記載の基板加工装置。
【請求項3】
前記電子基板は、ICチップと接続される電極を含む内部配線層を持つICカードである、
請求項1または請求項2に記載の基板加工装置。
【請求項4】
内部配線を持つ電子基板に切削加工により基板の内部配線を露出させる基板加工装置において、
電子基板の上面で前記電子基板に密着する導電性プレート、
電子基板を載せるための導電性のあるステージ、
電子基板を位置決めするための機構、
導電性のある切削工具、
導電性プレートと切削工具間の静電容量、およびステージと切削工具間の静電容量の和を測定する機器、
静電容量を測定する機器からの信号を受け取り、前記切削工具の動作を制御する制御装置、を備え、
切削工具が基板内部配線に接触したことを静電容量の測定値変化から検出することを特徴とする基板加工装置。
【請求項5】
前記静電容量を測定する機器は、
ピコファラッド以下の静電容量を測定できる分解能を持つ、
請求項4に記載の基板加工装置。
【請求項6】
前記電子基板は、ICチップと接続される電極を含む内部配線層を持つICカードである、
請求項4または請求項5に記載の基板加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部配線を有するプリント配線板やICカードなどの電子基板に穴開けや座繰加工を行う基板加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージを作製する際に用いるキャビティ基板には、内部配線を持つプリント配線板やICカード基板などがあり、キャビティ部分は内部配線が露出しているものがある。その露出した配線と電気的導通がとれるように半導体チップなどが実装される。このようなキャビティ基板を作製する方法として、内層端子部やダイパット部など所要の個所にあらかじめ窓を開けた後に、接着剤などで貼り合わせる工法がとられている。これに対して、内層削り出し工法は内層、外層を一体積層した後に削り出しによる座繰加工により内層の所要部分を露出させるので、回路間の絶縁の信頼性が高く、密封性に優れた特徴により耐吸湿性や耐透湿性の信頼性が向上する。内層削り出し工法では、内部配線を確実に露出させるために、ドリルやエンドミルで削り出し加工をする際に電子基板の内部配線にドリルやエンドミルが接触したことを検知することが必要となる。
【0003】
特許文献1、特許文献2には
図1に示すように、電子基板70の内部配線703とドリル75間にあらかじめ電圧を印加した状態でスピンドル74を下降させ、内部配線703とドリル75の接触に伴う電気的導通を検出した瞬間にスピンドル74の下降を停止することで、内部配線を露出させる基板加工装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-135647号公報
【特許文献2】特開平11-068324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1または2の機構を用いることで、ドリル75が電子基板70の内部配線703と接触したことを検知できるため、内部配線703を削り取ることなく露出させることができる利点がある。しかしながら、加工前に内部配線703とドリル75との間に電圧を印加しておく必要があるため、あらかじめ内部配線層703に電圧印加回路の回路配線78を接続点79にて電気的に接続しておく必要がある。その際、厚さが薄い内部配線層に回路配線を接続するのが困難な場合があるという課題がある。また、
図2(b)に示すような加工前のICカード2のように内部配線層21が外部に露出していない場合には接触検知のための回路配線ができないという課題もある。また、基板を加工装置にセットするたびに内部配線層と電圧印加回路を接続しなければならないため、基板加工に要する時間が延びてしまうという課題も有する。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で内部配線層を検知し内部配線層が露出したキャビティを形成できる基板加工装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の基板加工装置は、基板を載せるためのステージ、電子基板の上面又は下面で前記電子基板に密着する導電性プレート、電子基板を位置決めする機構、XYZ方向に移動自在であり導電性のある切削工具、導電性プレートと切削工具間の静電容量を測定する機器、
静電容量を測定する機器からの信号を受け取り、前記切削工具の動作を制御する制御装置、を備え、切削工具が基板内部配線に接触したことを静電容量の測定値変化から検出することを特徴とする基板加工装置とする。
【0008】
また、上記発明に加えて、前記静電容量を測定する機器は、ピコファラッド以下の静電容量を測定できる分解能を持つ、基板加工装置であることが好ましい。
【0009】
また、上記発明に加えて前記基板はアンテナパターンおよびICチップと接続される電極からなる内部配線層をもつICカードである基板加工装置としても良い。
【0010】
また、上記課題を解決するために、電子基板の上面で前記電子基板に密着する導電性プレート、電子基板を載せるための導電性のあるステージ、電子基板を位置決めするための機構、導電性のある切削工具、導電性プレートと切削工具間の静電容量、およびステージと切削工具間の静電容量の和を測定する機器、静電容量を測定する機器からの信号を受け取り、前記切削工具の動作を制御する制御装置、を備え、切削工具が基板内部配線に接触したことを静電容量の測定値変化から検出することを特徴とする基板加工装置とする。
【0011】
また、上記発明に加えて、前記静電容量を測定する機器は、ピコファラッド以下の静電容量を測定できる分解能を持つ、基板加工装置であることが好ましい。
【0012】
また、上記発明に加えて前記基板はアンテナパターンおよびICチップと接続される電極からなる内部配線層をもつICカードである基板加工装置としても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、簡単な構成で基板の内部配線を露出させることができる基板加工装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】本発明の実施の形態に係る基板加工装置の概略図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る基板加工装置の導電性プレートの上面および側面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る基板加工装置の等価回路図である。
【
図6】エンドミルがICカードの内部配線層に接触したことを表した図である。
【
図7】導電性プレートをステージと兼用させた構成の基板加工装置の概略図である。
【
図8】本発明の基板加工装置の動作フローを表した図である。
【
図9】本発明の基板加工装置でICカードに穴開け加工を施した時の静電容量の変化を測定した図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態を表す概略図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態における等価回路図である。
【
図12】電子基板が多層配線基板の場合における基板加工装置の説明図である。
【
図13】ICカード位置決め機構を持つステージの概略図である。
【
図14】搬送ベルトを持つICカード位置決め機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明の基板加工装置で加工される電子基板の一つである、ICカード2について、
図2を参照しながら説明する。
【0016】
図2(a)はNFC(Near Field Communication、近距離無線通信)等により無線で情報をやり取りできるICカード2を上方から見た図である。また、
図2(b)は、キャビティ加工前のICカード2の断面図である。このICカード2は、内部にコイルアンテナおよびICチップ25と接続するための電極を有する内部配線層21をPVC(ポリ塩化ビニル)やPET(ポリエチレンテレフタラート)などの絶縁層22および23で挟み込んだ構造となっている。上面の絶縁層22のICチップ25が埋め込まれる部分は、切削工具であるスピンドルとエンドミル(またはドリル)にて切削加工されキャビティ24が形成される。そして
図2(c)の様にキャビティ部分24にICチップ25を埋め込むことで、ICカード2は完成する。
【0017】
このICカード2の作製工程において、切削工具であるスピンドルとエンドミルによる切削加工でキャビティを形成する際には内部配線層21の電極部分を露出させる必要がある。削り方が浅い場合や、深く削りすぎて電極部分を削り取った場合は、ICチップ24とコイルアンテナとの電気的導通がとれなくなってしまうため不良品になってしまう。したがって、基板加工装置でICカード2を切削加工する際はエンドミルが内部配線層21の電極部分に接触したことを検知することで、適切な深さで切削できることが要求される。
【0018】
図2(b)からわかるように、キャビティ形成前のICカード2の内部配線層21は、外部に露出した部分がない。そのため、従来の基板加工装置7では、
図1のように電気的導通をとることでドリル75と内部配線層21の接触を検知することは困難である。これは、加工前にICカード2の内部配線層21を外部回路に電気的接続をしなければならないためである。したがって、ICカード2加工前に内部配線層21と電気的接続をする必要がない接触検知機構が求められる。
【0019】
次に、
図3~
図7を参照しながら、本発明の基板加工装置について説明する。
【0020】
図3は、ICカード2を対象とした本発明の基板加工装置1の概略図である。切削工具であるエンドミル15を装着されたスピンドル14は、XYZ方向に移動可能となっており、ICカード2のキャビティ24となる部分を切削できる。スピンドル14は、エンドミル15部分からチャックを通してスピンドル筐体に電気的導通がとれるような構造となっている。スピンドル14の筐体は、グラウンド線により接地されている。切削工具はスピンドルとエンドミルに限らず、フライス盤機構などXYZ方向に移動しながら切削できる工具が使用できる。ただし、切削する先端部分から筐体まで電気的導通がとれる工具であることが必要である。
【0021】
ステージ11上にはICカード2が配置されている。さらにICカード2上には導電性プレート121が配置され、ICカード2を上部から押さえつけることでICカード2を固定している。
図4は導電性プレート121の側面および上面図である。導電性プレート121は、ICカード2のキャビティに相当する部分にキャビティ加工用窓122が開いており、この窓を通してエンドミル15によりICカード2にキャビティを形成できる。また、導電性プレート121は静電容量測定器16にシールド線の信号線で接続されている。シールド線のシールドはスピンドル14とともに接地されている。本実施例では、静電容量測定器16として、エヌエフ回路設計ブロック社製のCVコンバータCV-242M3を用いた。このCVコンバータは測定された静電容量を1pFあたり10mVの電圧として出力する。静電容量測定器16としては、本実施例で用いたCVコンバータだけではなくインピーダンスアナライザ、LCRメータや静電容量を測定可能なデジタルマルチメータなど、静電容量を測定可能な計測器を利用できる。静電容量測定器16からの測定値出力およびスピンドル14の制御線は、制御装置17に接続されている。
【0022】
図5は、本基板加工装置1の接触検出機構の等価回路である。基板加工装置1では、
図5(b)のように、ICカード2の内部配線層21と導電性プレート121を2つの電極、ICカード絶縁層22を誘電体とした平行平板コンデンサ321を形成している。エンドミル15がICカード2の内部配線層21に接触していない状態では、スイッチ33がOFFの状態となっている。そして、スピンドル14を下降させ
図6のように、エンドミル15がICカード2の内部配線層21に接触すると、スイッチ33がONの状態となり、コンデンサ321の静電容量が静電容量測定器16により測定可能な状態となる。
【0023】
ここで、
図5のコンデンサ321の静電容量Cは、内部配線層の導体表面積をS、内部配線層21上部から導電性プレート121までの絶縁層22の厚みをd、絶縁層22の誘電率をεとすると、
C=εS/d (式1)
と表される。本実施例で用いたICカード2において、
ε=2.61×10
-11F/m、
S=4.0×10
-4m
2、
d=0.3mm
であったので、静電容量Cは式1より約34.8pFと計算される。このことから、本基板加工装置では、ピコファラッド以下の静電容量を測定できる性能を有する静電容量測定器16を用いることが好適である。本実施例で用いたCVコンバータは、0.01pFの分解能を持つため、この条件を満たす。
【0024】
また、本発明の基板加工装置1は
図7の様に、ICカード2の下面のステージ11を電気導通性材料で作製されたステージ兼導電性プレート125として用いることができる。この構成の基板加工装置111の等価回路3は
図5と同等となり、
図3の基板加工装置1と同じ効果が得られる。この時ICカード2上面のプレート123は、ICカードの固定のための押さえの機能だけ持てばよいので、材料に特に制限はない。
【0025】
制御装置17では、静電容量測定器16からの静電容量測定値を監視しながら、スピンドル14の移動制御を行う。本実施例ではC/Vコンバータからの出力電圧を制御装置17で監視している。
【0026】
ICカード2のキャビティ加工について
図8の行程表を参照しながら説明する。
【0027】
[行程S1]
はじめに、加工前のICカード2をステージ11の上にセットする。この際、ICカード2の位置決めを行う。
【0028】
ここで、ICカード2の位置決め機構について説明する。
図3に示すように位置決めピン13をステージ11に設けて、ICカード2の位置決めに使用することができる。また、
図13のようなICカードの形状に合わせた座繰り加工を施したステージ180を用いることで、ICカードを位置決めすることもできる。
【0029】
さらに、
図14に示す機構は、加工するICカード2を搬送ベルト181とガイドレール182により位置決めする構造になっており、
図14(a)はその断面図、
図14(b)はその上面図である。搬送ベルト181により、ICカード2は基板加工装置1内で
図14の左右方向に移動することができる。したがって、ICカード供給ユニットやICカード加工ユニット、ICカード検査ユニット、カード収納ユニット等の複数のユニットを有する不図示の基板加工装置を構築する場合、
図14の位置決め機構を用いることで、ユニット間のICカード2の移動が自在となり、かつ、ICカード2の位置決めを自動化することが可能になる。また、
図14の位置決め機構には、ICカード2上面から導電性プレート121を押し付けることによるICカード2のたわみを防止するためのカード支えステージ183が設けられている。
【0030】
このように、ICカード2の位置決め機構は、様々な形態のものが使用可能であり、ここで示したものに限らず、ICカード2を位置決めできればその形態は制限されない。
【0031】
[行程S2]
次に
図3のように、導電性プレート121をICカード2の上に配置し、ICカード2をステージ21と挟み込み、固定する。
【0032】
[行程S3]
ICカード2および導電性プレート121を配置したのちに、静電容量測定器16により、導電性プレート121とエンドミル14との間の静電容量を制御装置17で監視する。
【0033】
[行程S4]
次に、スピンドル14を-Z方向へ下降させ、ICカード2をエンドミル15で切削する。
【0034】
[行程S5]
スピンドル14を下降させていき、
図6のようにエンドミル15がICカード2の内部配線層21に接触すると、
図5のスイッチ33がON状態になり、導電性プレート121と内部配線層21との間で形成されるコンデンサ321の静電容量Cが静電容量測定器16で検出される。本実施例では、静電容量測定器16としてC/Vコンバータを使用しているので、制御装置17に接続されているC/Vコンバータの出力電圧は上昇する。
【0035】
[行程S6]
静電容量測定器16であるC/Vコンバータからの出力の上昇を制御装置17で検出したら直ちにスピンドル14の下降を停止する。
【0036】
[行程S7]
スピンドル14の下降停止後、スピンドル14をXY方向に移動させて、ICカード2にキャビティ24を切削加工により形成する。
【0037】
[行程S8]
キャビティ24の加工が終了したらスピンドル14を+Z方向に上昇させる。以上の加工で、底面に内部配線層21が露出した状態のキャビティ24を形成できる。
【0038】
[行程S9]
最後に、ICチップ25をキャビティ24にボンディングすることで、ICカード2が完成する。
【0039】
本実施例の基板加工装置1の動作を確認するために、エンドミル15の内部配線層21への接触検知が可能かどうか確かめた。
図9に実験結果を示す。
図9において横軸は経過時間、縦軸はC/Vコンバータにて測定された静電容量である。エンドミル15が接触前の状態では、275pFの静電容量が検出されている。これは、配線に用いたシールドケーブル等の浮遊容量が検出されている状態である。スピンドル14を下降させエンドミル15が内部配線層21に接触すると、静電容量の測定値は約307pFまで急激に上昇した。接触を検知してから10s程度スピンドル14の下降を停止させその後スピンドル14を上昇させると、元の静電容量値(275pF)まで測定値は急減した。この時の静電容量の上昇の実測値は、約32pFであり、前述の式1により求めたコンデンサ321の静電容量Cの計算値に近い値となった。この実験結果により、本発明の基板加工装置1を用いてエンドミル15の内部配線層21への接触検知が可能であることを確認した。実際のキャビティ加工では、接触検知したのちにスピンドルをXY方向に移動させて切削加工すればよい。
【0040】
第2の実施例としての基板加工装置の概略図を
図10に、等価回路を
図11に示す。この実施例では、導電性プレート521だけでなく、ステージ511も静電容量測定器516に電気的接続されている。この構成にすることで、等価回路は
図9のようになる。
図9の等価回路において、導電性プレート521と内部配線層21との間の静電容量C1および、ステージ511と内部配線層21との間の静電容量C2の並列接続となる。このように、2つのコンデンサを並列接続することで、静電容量測定器516で検出される静電容量はC1+C2となるため、より大きな静電容量が測定器516で検出できる。そのため、より感度の高い接触検知が可能になる。
【0041】
本発明の基板加工装置1は、
図12(a)に示すような内部配線層が複数ある多層配線基板にも適用できる。例えば内部配線層(導体層)が3層ある多層配線基板820に対して、静電容量測定器86で検出される静電容量は、切削深さに対して
図12(b)のように検出される。はじめにに第1導体層823にエンドミル85は接触し、静電容量が増加する。その後、第1導体層を貫通すると静電容量が低下し、エンドミル85が第2導体層824に接触すると静電容量は再び増加する。この時、式1におけるdが大きくなるため、静電容量の増加量Cは小さくなる。同様に、第3導体層825に接触したときも静電容量の増加が検出される。このように、本発明の基板加工装置1を用いることで、切削工具の多層配線基板の任意の導体層への接触が検知できる。
【0042】
以上、本発明の基板加工装置1を用いることで、内部配線層21を確実に露出した状態のキャビティをICカード2に形成できた。本発明の基板加工装置を用いることにより、ICカードに導電性プレートを配置するという簡単な構成で内部配線層が露出したキャビティを形成できる。また、本発明の基板加工装置では電子基板の内部配線層に配線する必要がないため、加工準備時間を短縮できる効果もある。
【0043】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。たとえば、ICカード以外のプリント基板や多層基板にも利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 基板加工装置
11 ステージ
121 導電性プレート
122 キャビティ加工用窓
123 カード押えプレート
125 導電性プレート(ステージ兼用)
13 位置決めピン
14 スピンドル
15 エンドミル
16 静電容量測定器
17 制御装置
180 カード固定用座繰り付きステージ
181 カード搬送ベルト
182 ガイドレール
183 カード支えステージ
2 ICカード
21 内部配線層
22 絶縁層(上部)
23 絶縁層(下部)
24 キャビティ
25 ICチップ
3 接触検知機構の等価回路
321 コンデンサ
33 スイッチ
511 ステージ兼導電性プレート
521 導電性プレート
514 スピンドル
515 エンドミル
516 静電容量測定器
517 制御装置
60 第2の実施形態の等価回路
621 コンデンサ
622 コンデンサ
63 スイッチ
7 従来の基板加工装置
70 プリント配線板
701 プリント配線板の上部絶縁層
702 プリント配線板の下部絶縁層
703 プリント配線板の内部導体層
74 スピンドル
75 エンドミルまたはドリル
76 電源
77 制御装置
78 接触検知用配線
79 配線と内部導体層の接続点
81 ステージ
82 導電性プレート
84 スピンドル
85 エンドミル
86 静電容量測定器
820 多層配線基板
822 絶縁層
823 第1導体層
824 第2導体層
825 第3導体層