(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151718
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20231005BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20231005BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G03G21/00 500
G03G15/02 103
G03G15/02 102
G03G21/00 386
G03G21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061486
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】柴田 千晴
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200FA02
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA49
2H200HA12
2H200HA30
2H200HB03
2H200HB28
2H200LB01
2H200PA27
2H200PA28
2H200PB05
2H200PB26
2H200PB35
2H200PB38
2H270KA04
2H270KA58
2H270LA04
2H270LA70
2H270LA80
2H270LD05
2H270MF16
2H270MF17
2H270MH09
2H270QB07
2H270QB09
2H270QB11
2H270RA03
2H270RA12
2H270RB04
2H270RC03
2H270RC11
2H270RC17
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】画像形成装置において、帯電器の異常放電を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】制御部は、帯電器に印加される電圧が閾値Vth以上となった場合に、エラーを出力する。また、制御部は、異常放電検知回路が、異常放電の発生を検知した場合に、閾値Vthを、異常放電の発生の所定時間前に帯電器に印加された放電前電圧Vsよりも低い値に更新する。これにより、次回以降の印刷処理において、異常放電が発生する前に、エラーを出力できる。したがって、異常放電が発生する前に、ユーザに対して、クリーニング等の処置を促すことができる。その結果、異常放電の発生を抑制できる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
感光体ドラムと、
前記感光体ドラムの表面を帯電させる帯電器と、
を有するドラムカートリッジと、
前記ドラムカートリッジを用いた印刷処理を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記帯電器に電圧を印加する電圧印加回路と、
前記電圧印加回路の電流値に基づいて、異常放電の発生を検知する異常放電検知回路と、
を有し、
前記制御部は、
前記帯電器に印加される電圧が閾値以上となった場合に、エラーを出力し、
前記異常放電検知回路が、前記異常放電の発生を検知した場合に、前記閾値を、前記異常放電の発生の所定時間前に前記帯電器に印加された放電前電圧よりも低い値に更新することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記ドラムカートリッジは、
前記閾値を記憶するドラムメモリ
をさらに備えることを特徴とする、画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、
前記異常放電検知回路が前記異常放電の発生を検知した場合、実行中の印刷処理を停止させ、
前記帯電器に印加される電圧が前記閾値以上となった場合、実行中の印刷処理が終了した後に、前記エラーを出力することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置であって、
情報を表示するディスプレイ
をさらに備え、
前記制御部は、前記帯電器に印加される電圧が前記閾値以上となった場合、前記ディスプレイに、前記帯電器のクリーニングを促す情報を表示することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記所定時間は、500ミリ秒以下であることを特徴とする、画像形成装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、
前記閾値が、予め設定された下限値よりも低い場合、前記閾値の更新を行わないことを特徴とする、画像形成装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記放電前電圧が、予め設定された基準値以下の場合、前記閾値の更新を行わないことを特徴とする、画像形成装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、
前記異常放電検知回路が、前記異常放電の発生を検知した場合に、前記閾値を、前記放電前電圧よりも、予め設定された低下量だけ低い値に更新することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、
前記ドラムカートリッジの使用量を表すカウント値が、所定の寿命カウント値を超えてから、前記異常放電検知回路が前記異常放電の発生を検知した場合、前記閾値を、前記放電前電圧よりも前記低下量以上に低い安全値に更新することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項10】
請求項8に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、
前記異常放電検知回路が、前記異常放電の発生を検知した回数が、所定の回数に到達した場合、前記閾値を、前記放電前電圧よりも前記低下量以上に低い安全値に更新することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置であって、
複数の前記感光体ドラムと、
複数の前記帯電器と、
を有し、
前記異常放電検知回路は、複数の前記帯電器のいずれか一つにおいて異常放電が発生したことを検知し、
前記制御部は、
前記異常放電検知回路が、前記異常放電の発生を検知した場合に、複数の前記帯電器の前記放電前電圧に基づいて、前記異常放電が発生した帯電器を特定し、特定された前記帯電器の前記閾値を更新することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項12】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記帯電器は、
帯電ワイヤーと、
帯電グリッドと、
を有するスコロトロン型帯電器であり、
前記電圧印加回路は、前記帯電ワイヤーに電圧を印加することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項13】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記ドラムカートリッジは、トナーが収容されたトナーカートリッジと共に使用されることを特徴とする、画像形成装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像形成装置であって、
前記トナーカートリッジは、現像ローラを有することを特徴とする、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置が知られている。画像形成装置は、本体フレームに対して着脱可能なドラムカートリッジを有する。ドラムカートリッジは、感光体ドラムと、感光体ドラムを帯電させる帯電器と、を有する。従来の画像形成装置については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の画像形成装置では、帯電器にトナーなどの汚れが付着すると、帯電器の抵抗値が大きくなるため、帯電器に印加される電圧値が高くなる。そして、帯電器に印加される電圧値が高くなると、帯電器において異常放電が発生しやすくなる。
【0005】
異常放電の発生を抑制するためには、例えば、帯電器に印加される電圧値が閾値以上になったときにエラーを出力して、ユーザに帯電器の清掃を促すことが考えられる。しかしながら、清掃により除去しきれない汚れが帯電器に蓄積されると、閾値よりも低い電圧で、異常放電が発生する場合がある。
【0006】
本開示の目的は、画像形成装置において、帯電器の異常放電を抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1開示は、画像形成装置であって、感光体ドラムと、前記感光体ドラムの表面を帯電させる帯電器と、を有するドラムカートリッジと、前記ドラムカートリッジを用いた印刷処理を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記帯電器に電圧を印加する電圧印加回路と、前記電圧印加回路の電流値に基づいて、異常放電の発生を検知する異常放電検知回路と、を有し、前記制御部は、前記帯電器に印加される電圧が閾値以上となった場合に、エラーを出力し、前記異常放電検知回路が、前記異常放電の発生を検知した場合に、前記閾値を、前記異常放電の発生の所定時間前に前記帯電器に印加された放電前電圧よりも低い値に更新することを特徴とする。
【0008】
本願の第2開示は、第1開示の画像形成装置であって、前記ドラムカートリッジは、前記閾値を記憶するドラムメモリをさらに備えることを特徴とする。
【0009】
本願の第3開示は、第1開示または第2開示の画像形成装置であって、前記制御部は、前記異常放電検知回路が前記異常放電の発生を検知した場合、実行中の印刷処理を停止させ、前記帯電器に印加される電圧が前記閾値以上となった場合、実行中の印刷処理が終了した後に、前記エラーを出力することを特徴とする。
【0010】
本願の第4開示は、第1開示または第2開示の画像形成装置であって、情報を表示するディスプレイをさらに備え、前記制御部は、前記帯電器に印加される電圧が前記閾値以上となった場合、前記ディスプレイに、前記帯電器のクリーニングを促す情報を表示することを特徴とする。
【0011】
本願の第5開示は、第1開示または第2開示の画像形成装置であって、前記所定時間は、500ミリ秒以下であることを特徴とする。
【0012】
本願の第6開示は、第1開示または第2開示の画像形成装置であって、前記制御部は、前記閾値が、予め設定された下限値よりも低い場合、前記閾値の更新を行わないことを特徴とする。
【0013】
本願の第7開示は、第1開示または第2開示の画像形成装置であって、前記放電前電圧が、予め設定された基準値以下の場合、前記閾値の更新を行わないことを特徴とする。
【0014】
本願の第8開示は、第1開示または第2開示の画像形成装置であって、前記制御部は、前記異常放電検知回路が、前記異常放電の発生を検知した場合に、前記閾値を、前記放電前電圧よりも、予め設定された低下量だけ低い値に更新することを特徴とする。
【0015】
本願の第9開示は、第8開示の画像形成装置であって、前記制御部は、前記ドラムカートリッジの使用量を表すカウント値が、所定の寿命カウント値を超えてから、前記異常放電検知回路が前記異常放電の発生を検知した場合、前記閾値を、前記放電前電圧よりも前記低下量以上に低い安全値に更新することを特徴とする。
【0016】
本願の第10開示は、第8開示の画像形成装置であって、前記制御部は、前記異常放電検知回路が、前記異常放電の発生を検知した回数が、所定の回数に到達した場合、前記閾値を、前記放電前電圧よりも前記低下量以上に低い安全値に更新することを特徴とする。
【0017】
本願の第11開示は、第1開示または第2開示の画像形成装置であって、複数の前記感光体ドラムと、複数の前記帯電器と、を有し、前記異常放電検知回路は、複数の前記帯電器のいずれか一つにおいて異常放電が発生したことを検知し、前記制御部は、前記異常放電検知回路が、前記異常放電の発生を検知した場合に、複数の前記帯電器の前記放電前電圧に基づいて、前記異常放電が発生した帯電器を特定し、特定された前記帯電器の前記閾値を更新することを特徴とする。
【0018】
本願の第12開示は、第1開示または第2開示の画像形成装置であって、前記帯電器は、帯電ワイヤーと、帯電グリッドと、を有するスコロトロン型帯電器であり、前記電圧印加回路は、前記帯電ワイヤーに電圧を印加することを特徴とする。
【0019】
本願の第13開示は、第1開示または第2開示の画像形成装置であって、前記ドラムカートリッジは、トナーが収容されたトナーカートリッジと共に使用されることを特徴とする。
【0020】
本願の第14開示は、第13開示の画像形成装置であって、前記トナーカートリッジは、現像ローラを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本願の第1開示~第14開示によれば、エラーを出力するための閾値を、放電前電圧よりも低い値に更新する。これにより、次回以降の印刷処理において、異常放電が発生する前に、エラーを出力できる。したがって、異常放電の発生を抑制できる。
【0022】
また、本願の第2開示によれば、使用開始後のドラムカートリッジが他の画像形成装置に装着された場合でも、適切な閾値に基づいてエラーを出力できる。
【0023】
また、本願の第6開示によれば、帯電器に印加できる電圧の範囲が過度に狭くなることを防止できる。
【0024】
また、本願の第7開示によれば、帯電器への汚れの蓄積ではなく、異物混入等の単発的な理由で異常放電が発生した場合には、閾値の更新を行わない。これにより、帯電器に印加できる電圧の範囲が、必要以上に狭くなることを防止できる。
【0025】
また、本願の第9開示によれば、ドラムカートリッジのカウント値が寿命カウント値を超えた場合、閾値を、十分に低い安全値まで下げる。これにより、ドラムカートリッジが寿命を超えた後に、異常放電が発生することを抑制できる。
【0026】
また、本願の第10開示によれば、異常放電の発生を検知した回数が、所定の回数に到達した場合、閾値を、十分に低い安全値まで下げる。これにより、異常放電が繰り返し発生することを抑制できる。
【0027】
また、本願の第11開示によれば、帯電器毎に異常放電検知回路を設けることなく、前記異常放電が発生した帯電器を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図4】初期処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】ラッチ処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】電圧監視処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】放電監視処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】電圧印加回路が帯電器に印加する電圧値の変化を示したグラフである。
【
図10】第1変形例の閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】第2変形例の閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】第3変形例の閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】第4変形例の閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】第5変形例の閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
<1.画像形成装置の構成>
図1は、画像形成装置1の概要図である。画像形成装置1は、電子写真方式のプリンタである。具体的には、画像形成装置1は、レーザプリンタまたはLEDプリンタである。
図1に示すように、画像形成装置1は、ケーシング10、4つのトナーカートリッジ20、ドラムカートリッジ30、制御部40、およびディスプレイ50を備える。
【0031】
ケーシング10は、箱状の本体フレーム11と、カバー12とを有する。4つのトナーカートリッジ20、ドラムカートリッジ30、および制御部40は、本体フレーム11の内部に収容される。
【0032】
本体フレーム11は、開口13を有する。カバー12は、
図1中に二点鎖線で示した閉鎖位置と、
図1中に実線で示した開放位置との間で、回動可能である。カバー12が閉鎖位置に配置されたときには、本体フレーム11の開口13が、カバー12により覆われる。カバー12が開放位置に配置されたときには、本体フレーム11の開口13が開放される。
【0033】
4つのトナーカートリッジ20は、ドラムカートリッジ30に対して、着脱可能である。トナーカートリッジ20の内部には、現像剤であるトナーが収容されている。4つのトナーカートリッジ20は、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のトナーを収容する。各トナーカートリッジ20は、現像ローラ21を有する。現像ローラ21は、現像軸に沿って延びる円筒状の部材である。現像ローラ21は、現像軸について回転可能である。トナーカートリッジ20の内部に収容されたトナーは、現像ローラ21の外表面に担持される。
【0034】
ドラムカートリッジ30は、本体フレーム11に対して着脱可能である。より具体的には、ドラムカートリッジ30は、4つのトナーカートリッジ20が装着された状態で、本体フレーム11に装着可能である。すなわち、ドラムカートリッジ30は、4つのトナーカートリッジ20と共に使用される。
図1に示すように、ドラムカートリッジ30は、ドラムフレーム31、4つの感光体ドラム32、4つの帯電器33、およびドラムメモリ34を有する。
【0035】
ドラムフレーム31は、4つのトナーカートリッジ20に対応する4つのスロット311を有する。1つのトナーカートリッジ20は、1つのスロット311に装着される。
【0036】
感光体ドラム32は、スロット311ごとに設けられる。感光体ドラム32は、ドラム軸に沿って延びる円筒状の部材である。感光体ドラム32は、ドラム軸について回転可能である。感光体ドラム32の外表面は、感光材料に覆われている。
【0037】
スロット311にトナーカートリッジ20が装着されると、現像ローラ21の外表面が、感光体ドラム32の外表面に接触する。トナーカートリッジ20内のトナーは、現像ローラ21の外表面から感光体ドラム32の外表面に供給される。そして、感光体ドラム32の外表面に担持されたトナーが、印刷用紙に転写される。
【0038】
帯電器33は、スロット311ごとに設けられる。帯電器33は、感光体ドラム32の外表面を帯電させる装置である。本実施形態の帯電器33は、帯電ワイヤーと帯電グリッドとを有する、スコロトロン型帯電器である。帯電器33は、帯電ワイヤーに印加される電圧によって発生するコロナ放電により、感光体ドラム32の外表面を帯電させる。
【0039】
ドラムメモリ34は、情報の読み出しおよび書き込みが可能な記憶媒体である。ドラムメモリ34は、例えば、フラッシュROMまたはEEPROMである。ドラムメモリ34は、ドラムフレーム31に取り付けられている。ドラムメモリ34は、ドラムカートリッジ30に関する情報を記憶する。具体的には、ドラムメモリ34は、ドラムカートリッジ30を識別するための識別情報を記憶している。識別情報は、例えば、シリアルナンバーである。
【0040】
図2は、画像形成装置1の制御ブロック図である。
図2に示すように、ドラムメモリ34は、ドラムカートリッジ30の使用量を表すカウント値Nを記憶している。カウント値Nは、例えば、感光体ドラム32の累積回転数、感光体ドラム32による累積印刷枚数、および感光体ドラム32による累積印刷ドット数の少なくともいずれかである。感光体ドラム32の累積回転数、感光体ドラム32による累積印刷枚数、および感光体ドラム32による累積印刷ドット数は、いずれも、識別情報により特定される1つのドラムカートリッジ30において、印刷の度にインクリメントまたはデクリメントされて算出される値である。
【0041】
また、ドラムメモリ34は、放電履歴情報Hを記憶している。放電履歴情報Hは、過去に発生した帯電器33の異常放電に関する情報である。放電履歴情報Hは、後述する異常放電検知回路44により異常放電の発生が検知された場合に、ドラムメモリ34に記憶される。
【0042】
また、ドラムメモリ34は、使用不可フラグFを記憶している。使用不可フラグFは、ドラムカートリッジ30が使用不可である否かを示す情報である。使用不可フラグFがONの場合、そのドラムカートリッジ30が使用不可であることを示す。使用不可フラグFがOFFの場合、そのドラムカートリッジ30が使用可能であることを示す。
【0043】
また、ドラムメモリ34は、閾値Vthを記憶している。閾値Vthは、後述する電圧監視処理において使用される電圧値の閾値である。
【0044】
制御部40は、ドラムカートリッジ30を用いた印刷処理を制御する。
図2に示すように、制御部40は、プロセッサ41、本体メモリ42、電圧印加回路43、および異常放電検知回路44を有する。
【0045】
プロセッサ41は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。本体メモリ42は、情報の読み出しおよび書き込みが可能な記憶媒体である。本体メモリ42は、例えばフラッシュROMまたはEEPROMである。本体メモリ42は、プロセッサ41と同一の基板上に配置されていてもよく、他の箇所に配置されていてもよい。
【0046】
本体メモリ42は、画像形成装置1の動作を制御するためのコンピュータプログラムを記憶している。プロセッサ41は、本体メモリ42に記憶されたコンピュータプログラムに従って、種々の処理を実行する。具体的には、プロセッサ41は、後述する初期処理、電圧監視処理、および放電監視処理を実行可能である。
【0047】
図2に示すように、ドラムカートリッジ30が本体フレーム11に装着された状態において、制御部40は、ドラムメモリ34と、電気的に接続される。これにより、プロセッサ41は、ドラムメモリ34からの情報の読み出しおよびドラムメモリ34への情報の書き込みが可能となる。
【0048】
電圧印加回路43は、帯電器33に電圧を印加するための電気回路である。
図3は、電圧印加回路43の回路図である。上述の通り、本実施形態の帯電器33は、帯電ワイヤー331と、帯電グリッド332とを有する。帯電ワイヤー331および帯電グリッド332は、感光体ドラム32の外表面の近傍に位置する。また、帯電グリッド332は、感光体ドラム32の外表面と、帯電ワイヤー331との間に位置する。
【0049】
電圧印加回路43は、電源431、抵抗器432、および電流計433を有する。電源431の+極は、帯電ワイヤー331に接続されている。電源431の-極は、接地されている。これにより、電源431は、帯電ワイヤー331に電圧を印加できる。抵抗器432の一端は、帯電グリッド332に接続されている。抵抗器432の他端は、接地されている。抵抗器432には、帯電ワイヤー331の電位に応じた電流が流れる。電流計433は、抵抗器432に流れる電流値を計測する。
【0050】
制御部40は、帯電グリッド332の電圧値が一定となるように、帯電ワイヤー331の電圧値を制御する。抵抗器432の抵抗値は一定であるため、帯電グリッド332の電圧値と、抵抗器432に流れる電流値は、比例する。したがって、制御部40は、電流計433により計測される電流値が一定となるように、電源431が帯電ワイヤー331に印加する電圧値をフィードバック制御する。帯電ワイヤー331に埃やトナーが付着すると、帯電ワイヤー331の抵抗値が上がるため、上記のフィードバック制御により、電源431から帯電ワイヤー331に印加される電圧値が上昇する。
【0051】
異常放電検知回路44は、帯電器33における異常放電の発生を検知するための電気回路である。異常放電とは、通常のコロナ放電とは異なる、火花放電等の異常な放電である。異常放電検知回路44は、電圧印加回路43に流れる電流値に基づいて、異常放電の発生を検知する。より具体的には、電圧印加回路43は、図示を省略したトランス(transformer,変圧器)を有する。異常放電検知回路44は、トランスに流れる電流値が、予め設定された許容範囲を超えた場合に、異常放電が発生したと検知する。
【0052】
ディスプレイ50は、画像形成装置1の動作に関する種々の情報を表示する。ディスプレイ50は、本体フレーム11の外表面に位置する。ディスプレイ50には、例えば、液晶ディスプレイが使用される。ディスプレイ50は、制御部40と電気的に接続されている。ディスプレイ50は、制御部40から出力される情報に基づいて、画像形成装置1の動作状況やエラー等を表示する。
【0053】
制御部40は、印刷処理の実行時に、図示を省略したモータを駆動させる。現像ローラ21および感光体ドラム32は、このモータから伝達される駆動力によって、回転する。また、制御部40は、上述した電圧印加回路43により、帯電器33に電圧を印加する。これにより、感光体ドラム32の外表面が帯電する。
【0054】
さらに、制御部40は、図示を省略した光源ユニットの光源を発光させる。光源ユニットから出射された光は、感光体ドラム32の外表面に照射される。これにより、感光体ドラム32の外表面に、静電潜像が形成される。トナーカートリッジ20から供給されるトナーは、現像ローラ21を介して、感光体ドラム32の静電潜像上に供給される。これにより、感光体ドラム32の外表面に、トナー像が形成される。続いて、印刷用紙が、感光体ドラム32と、図示を省略した転写ベルトとの間へ搬送される。これにより、感光体ドラム32の外表面から印刷用紙へ、トナー像が転写される。その後、画像形成装置1内の定着ユニットにおいて、印刷用紙にトナー像が熱定着される。その結果、印刷用紙に画像が印刷される。
【0055】
<2.初期処理について>
続いて、画像形成装置1の動作について説明する。
図4は、画像形成装置1が印刷可能となるまでの初期処理の流れを示すフローチャートである。
【0056】
制御部40は、まず、画像形成装置1のカバー12が閉鎖された状態で、電源がOFFからONに切り替えられたか、または、電源がONの状態でカバー12が開放位置から閉鎖位置へ回動されたかを判定する(ステップS11)。制御部40は、ステップS11の条件を満たさないと判定した場合(ステップS11:No)、引き続き、ステップS11の判定処理を繰り返す。
【0057】
制御部40は、画像形成装置1のカバー12が閉鎖された状態で、電源がOFFからONに切り替えられたか、または、電源がONの状態でカバー12が開放位置から閉鎖位置へ回動されたと判定した場合(ステップS11:Yes)、ドラムメモリ34に記憶された情報を読み出すラッチ処理を行う(ステップS12)。
【0058】
図5は、ラッチ処理の流れを示すフローチャートである。
図5に示すように、ラッチ処理では、制御部40は、ドラムメモリ34に記憶されたカウント値Nの読み出し(ステップS21)、放電履歴情報Hの読み出し(ステップS22)、使用不可フラグFの読み出し(ステップS23)、および閾値Vthの読み出し(ステップS24)を行う。ただし、ステップS21~S24の処理は、
図5とは異なる順序で実行されてもよい。
【0059】
図4に戻る。ラッチ処理が終了すると、制御部40は、使用不可フラグFがONであるか否かを判定する(ステップS13)。制御部40は、使用不可フラグFがONであると判定した場合(ステップS13:Yes)、印刷処理を実行不能とする(ステップS14)。この場合、制御部40は、印刷ジョブの入力を受け付けない。
【0060】
一方、制御部40は、使用不可フラグFがOFFであると判定した場合(ステップS13:No)、印刷処理を実行可能とする(ステップS15)。この場合、制御部40は、印刷ジョブの入力を待つ。
【0061】
<3.電圧監視処理について>
続いて、印刷処理の実行時に、帯電器33に印加される電圧値を監視する電圧監視処理について、説明する。
図6は、電圧監視処理の流れを示すフローチャートである。
【0062】
上述したステップS15の後、制御部40に印刷ジョブが入力されると、制御部40は、印刷処理を開始する(ステップS31)。その際、電圧印加回路43が、帯電器33に電圧を印加する。より具体的には、電源431から帯電ワイヤー331に、電圧が印加される。
【0063】
印刷処理が開始されると、制御部40は、電圧印加回路43から帯電器33に印加される電圧値が、閾値Vth以上であるか否かを判定する(ステップS32)。そして、印刷処理の間、電圧印加回路43から帯電器33に印加される電圧値が、閾値Vth以上とならなかった場合(ステップS32:No)、制御部40は、エラーを出力することなく、印刷処理を終了する(ステップS33)。
【0064】
帯電ワイヤー331に埃やトナーが付着すると、上述したフィードバック制御により、電圧印加回路43から帯電器33に印加される電圧値が上昇する。電圧印加回路43から帯電器33に印加される電圧値が、閾値Vth以上となった場合(ステップS32:Yes)、制御部40は、実行中の印刷処理が終了した後に(ステップS34)、エラーを出力する(ステップS35)。具体的には、制御部40は、ディスプレイ50に、帯電器33のクリーニングを促す情報を表示する。より詳細には、制御部40は、ディスプレイ50に、帯電ワイヤー331のクリーニングを促す情報を表示する。
【0065】
<4.放電監視処理について>
続いて、印刷処理の実行時に、帯電器33の異常放電を監視する放電監視処理について、説明する。
図7は、放電監視処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
上述したステップS15の後、制御部40に印刷ジョブが入力されると、制御部40は、印刷処理を開始する(ステップS41)。その際、電圧印加回路43が、帯電器33に電圧を印加する。より具体的には、電源431から帯電ワイヤー331に、電圧が印加される。また、制御部40は、電圧印加回路43が帯電ワイヤー331に印加した電圧値の履歴を、本体メモリ42に記憶する。
【0067】
印刷処理が開始されると、制御部40は、異常放電が発生したか否かを判定する(ステップS42)。具体的には、異常放電検知回路44が、異常放電が発生したか否かを検知する。そして、印刷処理の間、異常放電検知回路44が、異常放電の発生を検知しなかった場合(ステップS42:No)、制御部40は、エラーを出力することなく、印刷処理を終了する(ステップS43)。
【0068】
一方、異常放電検知回路44が、異常放電の発生を検知した場合(ステップS42:Yes)、制御部40は、印刷ジョブを最後まで印刷することなく、実行中の印刷処理を停止させる(ステップS44)。
【0069】
この場合、制御部40は、閾値更新処理を行う(ステップS45)。
図8は、閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、制御部40は、まず、異常放電の発生の所定時間前に帯電器33に印加された放電前電圧Vsを、本体メモリ42から読み出す(ステップS61)。より具体的には、制御部40は、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した時刻の所定時間前に、電圧印加回路43が帯電ワイヤー331に印加した放電前電圧Vsを、本体メモリ42から読み出す。
【0070】
上記の所定時間は、制御部40の本体メモリ42に、予め記憶されている。所定時間は、例えば、500ミリ秒以下であることが望ましい。これにより、帯電器33に異常放電が発生する直前の電圧値を、放電前電圧Vsとすることができる。
【0071】
続いて、制御部40は、閾値Vthを、放電前電圧Vsよりも低い値に更新する(ステップS62)。より具体的には、制御部40は、閾値Vthを、放電前電圧Vsよりも、予め設定された低下量ΔVだけ低い値に更新する。低下量ΔVは、制御部40の本体メモリ42に、予め記憶されている。その後、制御部40は、更新後の閾値Vthを、ドラムメモリ34に書き込む(ステップS63)。
【0072】
図7に戻る。続いて、制御部40は、カウント値Nおよび放電履歴情報Hに基づいて、前回の異常放電発生時から、所定カウントが経過しているか否かを判定する(ステップS46)。所定カウントは、予め本体メモリ42に記憶されている。カウント値Nが累積印刷枚数の場合、所定カウントは、例えば、100枚とされる。
【0073】
制御部40が、前回の異常放電発生時から、所定カウントが経過していないと判定した場合(ステップS46:No)、前回の異常放電発生時に、帯電器33のクリーニングが適切に実行されなかった可能性がある。この場合、制御部40は、放電履歴情報Hを更新することなく、エラーを出力する(ステップS47)。具体的には、制御部40は、ディスプレイ50に、帯電器33のクリーニングを促す情報を表示する。より詳細には、制御部40は、ディスプレイ50に、帯電ワイヤー331のクリーニングを促す情報を表示する。
【0074】
一方、制御部40が、前回の異常放電発生時から、所定カウントが経過していると判定した場合(ステップS46:Yes)、制御部40は、放電履歴情報Hを更新する(ステップS48)。具体的には、制御部40は、異常放電が発生したことと、異常放電が発生したときのカウント値Nとを、対応付けた状態で、ドラムメモリ34に記憶させる。
【0075】
続いて、制御部40は、カウント値Nおよび放電履歴情報Hに基づいて、異常放電の発生回数が所定の条件以上であるか否かを判定する(ステップS49)。具体的には、制御部40は、カウント値Nが、ドラムカートリッジ30の寿命を示す寿命カウント値を超えてから、異常放電が2回発生したか、あるいは、カウント値Nが寿命カウント値の2倍を超えてから、異常放電が発生したかを判定する。
【0076】
制御部40が、異常放電の発生回数が、上記の条件を満たさないと判定した場合(ステップS49:No)、制御部40は、使用不可フラグFをONにすることなく、エラーを出力する(ステップS47)。具体的には、制御部40は、ディスプレイ50に、帯電器33のクリーニングを促す情報を表示する。より詳細には、制御部40は、ディスプレイ50に、帯電ワイヤー331のクリーニングを促す情報を表示する。
【0077】
一方、制御部40が、異常放電の発生回数が、上記の条件を満たすと判定した場合(ステップS49:Yes)、制御部40は、使用不可フラグFをONにする(ステップS50)。そして、制御部40は、変更後の使用不可フラグFを、ドラムメモリ34に記憶させる。そして、制御部40は、エラーを出力する(ステップS51)。具体的には、制御部40は、ディスプレイ50に、ドラムカートリッジ30の交換を要求する情報を表示する。
【0078】
<5.印加電圧の変化について>
図9は、電圧印加回路43が帯電器33に印加する電圧値の変化を示したグラフである。
図9の横軸は、ドラムカートリッジ30のカウント値Nを示している。
図9の縦軸は、電圧印加回路43が帯電器33に印加する電圧値を示している。
【0079】
図9に示すように、画像形成装置1において、ドラムカートリッジ30を用いて印刷を行うと、電圧印加回路43から帯電器33に印加される電圧値が、徐々に上昇する。そして、
図9中のカウント値N1の時点のように、電圧印加回路43から帯電器33に印加される電圧値が、閾値Vthに到達すると、上述したステップS34のエラー出力が実行される。これにより、帯電ワイヤー331の清掃が行われる。帯電ワイヤー331が清掃されると、電圧印加回路43から帯電器33に印加される電圧値は、再び低下する。
【0080】
このように、ドラムカートリッジ30は、帯電器33に印加される電圧値の上昇、閾値Vthに基づくエラーの出力、帯電ワイヤー331の清掃、のサイクルを繰り返しながら、使用される。
【0081】
ただし、ドラムカートリッジ30を長期に使用すると、帯電ワイヤー331または帯電グリッド332に蓄積された汚れを起点として、異常放電が発生しやすくなる。このため、
図9中のカウント値N2の時点のように、電圧印加回路43から帯電器33に印加される電圧値が、閾値Vthより低いにもかかわらず、異常放電が発生する場合がある。この場合、上記のステップS45において、閾値Vthを、放電前電圧Vsよりも低い値に更新する。
【0082】
このようにすれば、制御部40は、次回以降の印刷処理において、電圧印加回路43から帯電器33に印加される電圧値が放電前電圧Vsよりも低いときに、エラーを出力できる。したがって、異常放電が発生する前に、ユーザに対して、クリーニング等の処置を促すことができる。
【0083】
特に、本実施形態では、制御部40が、更新後の閾値Vthを、ドラムメモリ34に記憶させる。このようにすれば、ある画像形成装置1において使用を開始したドラムカートリッジ30が、他の画像形成装置1に装着された場合でも、他の画像形成装置1の制御部40が、適切な閾値Vthに基づいてエラーを出力できる。
【0084】
<6.変形例>
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではない。以下では、種々の変形例について、上記の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0085】
<6-1.第1変形例>
図10は、第1変形例の閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。
図10の例では、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した場合、制御部40は、閾値Vthが、予め設定された下限値よりも低いか否かを判定する(ステップS60a)。そして、制御部40が、閾値Vthが下限値以上であると判定した場合には(ステップS60a:No)、制御部40は、上記の実施形態と同様に、ステップS61~S63の処理を行い、閾値Vthを更新する。
【0086】
ただし、
図10の例では、制御部40が、閾値Vthが下限値よりも低いと判定した場合には(ステップS60a:Yes)、制御部40は、閾値Vthの更新を行わない。すなわち、この場合、制御部40は、ステップS61~S63の処理を実行しない。
【0087】
閾値Vthの更新を繰り返すと、帯電器33に印加できる電圧の範囲が徐々に狭くなる。しかしながら、
図10のように、閾値Vthに下限値を設定して、閾値Vthが下限値を下回らないようにすれば、帯電器33に印加できる電圧の範囲が、過度に狭くなることを防止できる。
【0088】
なお、上述した下限値は、例えば、本体メモリ42に予め記憶させておけばよい。
【0089】
<6-2.第2変形例>
図11は、第2変形例の閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。
図11の例では、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した場合、制御部40は、まず、本体メモリ42から放電前電圧Vsを読み出す(ステップS61)。次に、制御部40は、放電前電圧Vsが、予め設定された基準値以下であるか否かを判定する(ステップS61a)。そして、制御部40が、放電前電圧Vsが基準値よりも大きいと判定した場合には(ステップS61a:No)、制御部40は、上記の実施形態と同様に、ステップS62~S63の処理を行い、閾値Vthを更新する。
【0090】
ただし、
図11の例では、制御部40が、放電前電圧Vsが基準値以下であると判定した場合には(ステップS61a:Yes)、制御部40は、閾値Vthの更新を行わない。すなわち、この場合、制御部40は、ステップS62~S63の処理を実行しない。
【0091】
異常放電は、ドラムカートリッジ30を長期に使用した場合に、帯電ワイヤー331の表面に徐々に汚れが蓄積することによって、発生する。しかしながら、このような汚れの蓄積ではなく、単発的に異物が混入したときにも、異常放電が発生する場合がある。そのような場合にまで、閾値Vthを更新すると、帯電器33に印加できる電圧の範囲が、必要以上に狭くなる。しかしながら、
図11のように、放電前電圧Vsに、閾値Vthを更新するための基準値を設定すれば、単発的に異物が混入したようなときに、閾値Vthを更新しないようにすることができる。これにより、帯電器33に印加できる電圧の範囲が、必要以上に狭くなることを防止できる。
【0092】
なお、上述した基準値は、例えば、本体メモリ42に予め記憶させておけばよい。
【0093】
<6-3.第3変形例>
図12は、第3変形例の閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。
図12の例では、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した場合、制御部40は、まず、本体メモリ42から放電前電圧Vsを読み出す(ステップS61)。次に、制御部40は、カウント値Nが、所定の寿命カウント値を超えているか否かを判定する(ステップS61b)。
【0094】
制御部40が、カウント値Nが寿命カウント値以下であると判定した場合には(ステップS61b:No)、制御部40は、上記の実施形態と同様に、閾値Vthを更新する(ステップS62)。この場合、制御部40は、閾値Vthを、放電前電圧Vsよりも、予め設定された低下量ΔVだけ低い値に更新する。
【0095】
一方、制御部40が、カウント値Nが、所定の寿命カウント値を超えていると判定した場合には(ステップS61b:Yes)、制御部40は、閾値Vthを、安全値に更新する(ステップS62a)。安全値は、上述したステップS62において更新される閾値Vthよりも低い値である。すなわち、安全値は、放電前電圧Vsよりも低下量ΔV以上に低い値である。
【0096】
ステップS62またはステップS62aの後、制御部40は、更新後の閾値Vthを、ドラムメモリ34に書き込む(ステップS63)。
【0097】
このように、
図12の例では、カウント値Nが所定の寿命カウント値を超えてから、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した場合、制御部40は、閾値Vthを安全値に更新する。これにより、閾値Vthを、十分に低い値まで低下させることができる。したがって、ドラムカートリッジ30が寿命を超えた後に、異常放電が発生することを抑制できる。
【0098】
なお、上述した寿命カウント値および安全値は、例えば、本体メモリ42に予め記憶させておけばよい。
【0099】
<6-4.第4変形例>
図13は、第4変形例の閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。
図13の例では、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した場合、制御部40は、まず、本体メモリ42から放電前電圧Vsを読み出す(ステップS61)。次に、制御部40は、使用中のドラムカートリッジ30において異常放電が発生した回数が、所定の回数に到達したか否かを判定する(ステップS61c)。具体的には、制御部40は、放電履歴情報Hに基づいて、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した回数が、所定の回数に到達したか否かを判定する。
【0100】
制御部40が、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した回数が、所定の回数に到達していないと判定した場合には(ステップS61c:No)、制御部40は、上記の実施形態と同様に、閾値Vthを更新する(ステップS62)。この場合、制御部40は、閾値Vthを、放電前電圧Vsよりも、予め設定された低下量ΔVだけ低い値に更新する。
【0101】
一方、制御部40が、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した回数が、所定の回数に到達したと判定した場合には(ステップS61c:Yes)、制御部40は、閾値Vthを、安全値に更新する(ステップS62a)。安全値は、上述したステップS62において更新される閾値Vthよりも低い値である。すなわち、安全値は、放電前電圧Vsよりも低下量ΔV以上に低い値である。
【0102】
ステップS62またはステップS62aの後、制御部40は、更新後の閾値Vthを、ドラムメモリ34に書き込む(ステップS63)。
【0103】
このように、
図13の例では、制御部40は、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した回数が、所定の回数に到達した場合、閾値Vthを安全値に更新する。これにより、閾値Vthを、十分に低い値まで低下させることができる。したがって、異常放電が繰り返し発生することを抑制できる。
【0104】
なお、上述した所定の回数および安全値は、例えば、本体メモリ42に予め記憶させておけばよい。
【0105】
<6-5.第5変形例>
図14は、第5変形例の閾値更新処理の流れを示すフローチャートである。上記の実施形態では、異常放電検知回路44が、帯電器33毎に、異常放電が発生したことを検知していた。これに対し、第5変形例では、異常放電検知回路44が、4つの帯電器33のいずれか一つにおいて、異常放電が発生したことを検知する。
【0106】
この場合、制御部40は、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した後、まず、4つの帯電器33のそれぞれの放電前電圧Vsを、本体メモリ42から読み出す(ステップS61)。そして、制御部40は、4つの帯電器33の放電前電圧Vsに基づいて、異常放電が発生した帯電器33を特定する(ステップS61d)。具体的には、制御部40は、4つの帯電器33のうち、放電前電圧Vsが最も高い帯電器33を、異常放電が発生した帯電器33と特定する。
【0107】
その後、制御部40は、特定された帯電器33の閾値Vthを更新する(ステップS62)。そして、制御部40は、更新された閾値Vthをドラムメモリ34に書き込む(ステップS63)。このようにすれば、異常放電検知回路44が、帯電器33毎に異常放電が発生したことを検知できなくても、制御部40は、放電前電圧Vsに基づいて、異常放電が発生した帯電器33を特定できる。したがって、異常放電検知回路44を簡略化できる。
【0108】
<6-6.他の変形例>
上記の実施形態では、異常放電検知回路44が異常放電の発生を検知した場合、制御部40は、印刷処理の停止(ステップS44)の直後に、閾値更新処理(ステップS45)を実行していた。しかしながら、制御部40は、ステップS46~S51の処理を行った後に、閾値更新処理を実行してもよい。
【0109】
また、上記の実施形態では、帯電器33が、スコロトロン型の帯電器である場合について、説明した。しかしながら、帯電器33は、帯電ローラ等の他方式の帯電器であってもよい。
【0110】
また、上記の実施形態では、ドラムカートリッジ30が、4つの感光体ドラム32を備えていた。しかしながら、ドラムカートリッジ30が備える感光体ドラム32の数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0111】
また、上記の実施形態では、ドラムカートリッジ30が、4つの帯電器33を備えていた。しかしながら、ドラムカートリッジ30が備える帯電器33の数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0112】
また、上記の実施形態では、ドラムカートリッジ30に、4つのトナーカートリッジ20を装着可能であった。しかしながら、ドラムカートリッジ30に装着可能なトナーカートリッジ20の数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0113】
例えば、ドラムカートリッジ30は、1つの感光体ドラム32と1つの帯電器33とを備えていてもよい。そして、1つのトナーカートリッジが装着されたドラムカートリッジが、本体フレーム11に複数装着可能であってもよい。
【0114】
また、トナーカートリッジ20は、現像ローラ21を有していなくてもよい。その場合、ドラムカートリッジ30が、現像ローラ21を有していてもよい。
【0115】
また、放電履歴情報Hは、過去に生じた全ての異常放電についての情報を保持していてもよい。また、古くなった情報は、順次に消去されてもよい。
【0116】
また、上記の実施形態および変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 画像形成装置
10 ケーシング
20 トナーカートリッジ
30 ドラムカートリッジ
31 ドラムフレーム
32 感光体ドラム
33 帯電器
34 ドラムメモリ
40 制御部
43 電圧印加回路
44 異常放電検知回路
50 ディスプレイ
331 帯電ワイヤー
332 帯電グリッド
431 電源
432 抵抗器
433 電流計
N カウント値
H 放電履歴情報
F 使用不可フラグ
Vth 閾値
Vs 放電前電圧
ΔV 低下量