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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151739
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20231005BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02G3/04
F16B2/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061536
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 博仁
【テーマコード(参考)】
3J022
5G357
【Fターム(参考)】
3J022DA12
3J022EA02
3J022EB02
3J022ED06
3J022FA05
3J022GA07
3J022GA16
5G357DB03
5G357DD02
5G357DE08
5G357DG04
(57)【要約】
【課題】屈曲部における負荷を増大させることなく、屈曲部の曲げ形状を保持する。
【解決手段】ワイヤーハーネスは、弾性変形可能であり、弾性的に屈曲された屈曲部15と、屈曲部15よりも曲率の小さい一対の低曲率部16とを有するハーネス本体10と、ハーネス本体10のうち一対の低曲率部16のみを当接させることによって、屈曲部15の屈曲状態を保持する保持部材20とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能であり、弾性的に屈曲された屈曲部と、前記屈曲部よりも曲率の小さい一対の低曲率部とを有するハーネス本体と、
前記ハーネス本体のうち前記一対の低曲率部のみを当接させることによって、前記屈曲部の屈曲状態を保持する保持部材とを備えているワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記保持部材は、前記低曲率部の外周部よりも硬度の高い材料からなる請求項1に記載のワイヤーハーネス。
【請求項3】
前記保持部材は、全周に亘って連なったリング状をなし、
前記一対の低曲率部は前記保持部材に挿通されている請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネス。
【請求項4】
前記保持部材の内側に配置され、前記低曲率部を前記保持部材との間で挟み付ける位置決め部材を備えている請求項3に記載のワイヤーハーネス。
【請求項5】
前記位置決め部材は、前記一対の低曲率部の間に圧入された状態で前記保持部材に取り付けられている請求項4に記載のワイヤーハーネス。
【請求項6】
前記保持部材及び前記位置決め部材の双方は、前記低曲率部の外周部よりも硬度の高い材料からなる請求項4に記載のワイヤーハーネス。
【請求項7】
前記低曲率部が前記保持部材と前記位置決め部材との間で挟み付けられる方向を、幅方向としたときに、
前記位置決め部材の幅方向の最大寸法は、前記保持部材の内面における幅方向最大寸法から、前記低曲率部の幅方向における最大外形寸法の合計を引いた寸法よりも大きい請求項6に記載のワイヤーハーネス。
【請求項8】
前記位置決め部材の外周面のうち、前記保持部材への組付け過程で前記低曲率部に摺接する縁部には、曲面又はテーパ面からなる干渉緩和部が形成されている請求項6に記載のワイヤーハーネス。
【請求項9】
前記位置決め部材は、前記保持部材における前記低曲率部の挿通方向と同方向に貫通した貫通空間を有する請求項4に記載のワイヤーハーネス。
【請求項10】
前記保持部材及び前記位置決め部材の一方は、弾性的に変位可能な弾性係止片を有し、
前記保持部材及び前記位置決め部材の他方は、前記弾性係止片が係止される係止孔を有している請求項4に記載のワイヤーハーネス。
【請求項11】
前記位置決め部材は、前記保持部材における前記低曲率部の挿通方向と同方向に貫通した貫通空間を有し、
前記弾性係止片は前記位置決め部材に形成され、
前記弾性係止片は、前記位置決め部材を前記保持部材に組み付ける過程で、前記貫通空間内へ進出するように弾性変形する請求項10に記載のワイヤーハーネス。
【請求項12】
前記位置決め部材は、前記弾性係止片が形成された一対の薄肉壁部と、前記薄肉壁部よりも厚さ寸法が大きく、前記一対の低曲率部を押圧して前記保持部材との間で挟み付ける一対の厚肉壁部とを有している請求項11に記載のワイヤーハーネス。
【請求項13】
前記保持部材は、前記係止孔が形成された係止用壁部を有し、
前記係止用壁部の厚さ寸法は、前記薄肉壁部の厚さ寸法よりも大きい請求項12に記載のワイヤーハーネス。
【請求項14】
前記保持部材の壁部と前記位置決め部材の壁部とが前記低曲率部を挟む方向と交差する方向に重なり合うことによって、積層壁部が構成されており、
前記弾性係止片及び前記係止孔の双方は、前記積層壁部に形成されている請求項10に記載のワイヤーハーネス。
【請求項15】
前記積層壁部を2つ有し、
前記2つの積層壁部は、前記一対の低曲率部の並び方向と直交する方向に離隔した2ヶ所に配置され、
前記2つの積層壁部に、夫々、前記弾性係止片と前記係止孔とが形成されている請求項14に記載のワイヤーハーネス。
【請求項16】
前記係止孔を一対有し、
前記一対の係止孔は、前記保持部材における前記低曲率部の挿通方向に対して斜めに並ぶように配置されている請求項14に記載のワイヤーハーネス。
【請求項17】
前記弾性係止片は、長尺の弾性係止片と短尺の弾性係止片とを含み、
前記長尺の弾性係止片と前記短尺の弾性係止片とは、並列して配置されている請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電線束と、電線束に縦添えされる骨部材とを備えたワイヤーハーネスが開示されている。骨部材は曲げ部を有しており、結束手段によって電線束と骨部材とを結束することよって、電線束を所定の曲げ経路に沿って配索することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-022803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電線束を屈曲させた場合、電線束の屈曲部における曲げの外側部位は、引張り力を受けることになる。引張り力を受けている曲げの外側部位に対して、結束手段による締付け力が直接作用すると、屈曲部への負荷が大きくなる。
【0005】
本開示のワイヤーハーネスは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、屈曲部における負荷を増大させることなく、屈曲部の曲げ形状を保持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤーハーネスは、
弾性変形可能であり、弾性的に屈曲された屈曲部と、前記屈曲部よりも曲率の小さい一対の低曲率部とを有するハーネス本体と、
前記ハーネス本体のうち前記一対の低曲率部のみを当接させることによって、前記屈曲部の屈曲状態を保持する保持部材とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、屈曲部における負荷を増大させることなく、屈曲部の曲げ形状を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1のワイヤーハーネスの斜視図である。
図2図2は、ハーネス本体を切断した状態の背面図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、図2のB-B線断面図である。
図5図5は、ハーネス本体を保持部材に取り付けた後、位置決め部材を保持部材に取り付ける前の状態をあらわすA-A線相当断面図である。
図6図6は、保持部材斜視図である。
図7図7は、位置決め部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のワイヤーハーネスは、
(1)弾性変形可能であり、弾性的に屈曲された屈曲部と、前記屈曲部よりも曲率の小さい一対の低曲率部とを有するハーネス本体と、前記ハーネス本体のうち前記一対の低曲率部のみを当接させることによって、前記屈曲部の屈曲状態を保持する保持部材とを備えている。本開示によれば、保持部材は屈曲部に接触しないので、屈曲部においては、保持部材との接触に起因して負荷が増大することはない。よって、屈曲部における負荷を増大させることなく、屈曲部の曲げ形状を保持することができる。
【0010】
(2)前記保持部材は、前記低曲率部の外周部よりも硬度の高い材料からなることが好ましい。この構成によれば、低曲率部の外周部の弾性変形に起因する摩擦抵抗によって、低曲率部と保持部材との間の位置ずれが防止される。保持部材は、低曲率部よりも硬度が高い材料からなるので、比較的変形を生じ難い。したがって、一対の低曲率部が拡開変形することを、確実に防止できる。
【0011】
(3)前記保持部材は、全周に亘って連なったリング状をなし、前記一対の低曲率部は前記保持部材に挿通されていることが好ましい。保持部材は、全周に亘って連なったリング状をなしているので、一対の低曲率部が屈曲部の弾性復元力によって拡開しようとしても、一対の低曲率部の拡開変位を防止できる。これにより、屈曲部を所期の曲率に保つことができる。
【0012】
(4)(3)において、前記保持部材の内側に配置され、前記低曲率部を前記保持部材との間で挟み付ける位置決め部材を備えていることが好ましい。この構成によれば、低曲率部が保持部材に対して軸線方向へ相対変位することを防止できる。
【0013】
(5)(4)において、前記位置決め部材は、前記一対の低曲率部の間に圧入された状態で前記保持部材に取り付けられていることが好ましい。この構成によれば、低曲率部と保持部材との間の摩擦抵抗及び低曲率部と位置決め部材との間の摩擦抵抗によって、保持部材に対する低曲率部の位置ずれを抑制できる。
【0014】
(6)(4)又は(5)において、前記保持部材及び前記位置決め部材の双方は、前記低曲率部の外周部よりも硬度の高い材料からなることが好ましい。この構成によれば、低曲率部を保持部材と位置決め部材との間で確実に挟み付けることができるので、低曲率部の位置ずれを防止することができる。
【0015】
(7)(6)において、前記低曲率部が前記保持部材と前記位置決め部材との間で挟み付けられる方向を、幅方向としたときに、前記位置決め部材の幅方向の最大寸法は、前記保持部材の内面における幅方向最大寸法から、前記低曲率部の幅方向における最大外形寸法の合計を引いた寸法よりも大きいことが好ましい。この構成によれば、保持部材と位置決め部材との間で低曲率部が圧縮変形するので、低曲率部の位置ずれが生じ難い。
【0016】
(8)(6)又は(7)において、前記位置決め部材の外周面のうち、前記保持部材への組付け過程で前記低曲率部に摺接する縁部には、曲面又はテーパ面からなる干渉緩和部が形成されていることが好ましい。位置決め部材を一対の低曲率部の間に割り込ませながら保持部材に取り付けるときに、低曲率部に対して曲面又はテーパ面からなる干渉緩和部が摺接する。これにより、低曲率部が位置決め部材によって傷付けられることを防止できる。
【0017】
(9)(4)~(8)において、前記位置決め部材は、前記保持部材における前記低曲率部の挿通方向と同方向に貫通した貫通空間を有することが好ましい。この構成によれば、位置決め部材の軽量化と材料コストの低減を図ることができる。
【0018】
(10)(4)~(9)において、前記保持部材及び前記位置決め部材の一方は、弾性的に変位可能な弾性係止片を有し、前記保持部材及び前記位置決め部材の他方は、前記弾性係止片が係止される係止孔を有していることが好ましい。弾性係止片と係止孔との係止によって、位置決め部材を保持部材に対して組付け状態に保持することができる。
【0019】
(11)(10)において、前記位置決め部材は、前記保持部材における前記低曲率部の挿通方向と同方向に貫通した貫通空間を有し、前記弾性係止片は前記位置決め部材に形成され、前記弾性係止片は、前記位置決め部材を前記保持部材に組み付ける過程で、前記貫通空間内へ進出するように弾性変形することが好ましい。前記貫通空間が、前記弾性係止片の撓み許容空間としての機能を備えているので、貫通空間とは別に弾性係止片の撓み許容空間を形成する場合に比べると、位置決め部材の形状を簡素化することができる。
【0020】
(12)(11)において、前記位置決め部材は、前記弾性係止片が形成された一対の薄肉壁部と、前記薄肉壁部よりも厚さ寸法が大きく、前記一対の低曲率部を押圧して前記保持部材との間で挟み付ける一対の厚肉壁部とを有していることが好ましい。薄肉壁部に形成された弾性係止片は、弾性的に変位し易いので、位置決め部材を保持部材に組み付ける過程における、弾性係止片と保持部材との間の摩擦抵抗を低減し、組付け作業性の向上を図ることができる。薄肉壁部よりも厚肉の厚肉壁部は、低曲率部からの反力を受けても弾性変形し難いので、保持部材との間で低曲率部を確実に位置決めすることができる。
【0021】
(13)(12)において、前記保持部材は、前記係止孔が形成された係止用壁部を有し、前記係止用壁部の厚さ寸法は、前記薄肉壁部の厚さ寸法よりも大きいことが好ましい。係止用壁部が比較的厚く、係止孔が深いので、係止用壁部の厚さ方向における係止孔と弾性係止片との係止代を大きく確保することができる。
【0022】
(14)(10)~(13)において、前記保持部材の壁部と前記位置決め部材の壁部とが前記低曲率部を挟む方向と交差する方向に重なり合うことによって、積層壁部が構成されており、前記弾性係止片及び前記前記係止孔の双方は、前記積層壁部に形成されていることが好ましい。積層壁部は、低曲率部を挟む方向と交差する方向に重なり合う壁部によって構成されているので、低曲率部に臨んでいない。弾性係止片と係止孔が、低曲率部に臨まない位置に配置されているので、低曲率部と弾性係止片とが干渉することを防止できる。
【0023】
(15)(14)において、前記積層壁部を2つ有し、前記2つの積層壁部は、前記一対の低曲率部の並び方向と直交する方向に離隔した2ヶ所に配置され、前記2つの積層壁部に、夫々、前記弾性係止片と前記係止孔とが形成されていることが好ましい。この構成によれば、弾性係止片と係止孔との係止が、互いに離隔した2ヶ所で行われるので、位置決め部材を保持部材に対して確実に保持することができる。
【0024】
(16)(14)又は(15)において、前記係止孔を一対有し、前記一対の係止孔は、前記保持部材における前記低曲率部の挿通方向に対して斜めに並ぶように配置されていることが好ましい。この構成によれば、一対の係止孔を、保持部材における低曲率部の挿通方向と平行に並べる場合や、低曲率部の挿通方向と直交する方向に並べる場合に比べると、積層壁部の限られたスペース内で係止孔の離隔距離を大きく確保することができる。これにより、積層壁部を構成する保持部材の壁部と、積層壁部を構成する位置決め部材の壁部に対して、積層壁部の重なり方向と平行な仮想軸を中心とする回転力が作用したときに、保持部材の壁部と位置決め部材の壁部との相対回転を抑制することができる。
【0025】
(17)(10)~(16)において、前記弾性係止片は、長尺の弾性係止片と短尺の弾性係止片とを含み、前記長尺の弾性係止片と前記短尺の弾性係止片とは、並列して配置されていることが好ましい。この構成によれば、長さの異なる2つの弾性係止片を並べて配置することによって、位置決め部材を保持部材に組み付けるときの組付け抵抗の低減と、位置決め部材の離脱防止機能とを両立させることができる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1のワイヤーハーネスを、図1図7を参照して説明する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。本実施例1において、前後の方向については、図1,3~7におけるX軸の正方向を前方と定義する。左右の方向については、図1~3,5~7におけるY軸の正方向を右方と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。上下の方向については、図1,2,4,6,7におけるZ軸の正方向を上方と定義する。上下方向と高さ方向を同義で用いる。
【0027】
本実施例1のワイヤーハーネスは、図1に示すように、1本のハーネス本体10と、1つの保持部材20と、1つの位置決め部材30とを組み付けて構成されている。図2に示すように、ハーネス本体10は、並行する複数本(本実施例1では2本)の被覆電線11を、1つの長円形の外装体14で包囲した部材である。被覆電線11は、芯線12を絶縁被覆13で包囲した円形断面のケーブルである。外装体14は、2本の被覆電線11が埋設されたシース、コルゲートチューブ、ゴムチューブ、粘着テープ、筒状のプロテクタ、編組線等で構成されている。ハーネス本体10は、2本の被覆電線11が上下に並ぶ向きにして配索される。
【0028】
図1,3,5に示すように、ワイヤーハーネスを上から見た平面視において、ハーネス本体10は、U字形に折り返すように湾曲した経路に沿うように配索される。ハーネス本体10のうち折り返すように湾曲させた部位を、屈曲部15と定義する。ハーネス本体10のうち、屈曲部15の軸線方向両端から延出した部位を、一対の低曲率部16と定義する。低曲率部16は、曲率が屈曲部15の曲率よりも小さい部位である。低曲率部16は、一直線状に延びていてもよく、僅かに湾曲した部位のどちらでもよい。本実施例1の低曲率部16は、直線状に延びた曲率が0の部位である。保持部材20と位置決め部材30は、一対の低曲率部16のみを接触させることによって、ハーネス本体10を所定の形状に保持し、屈曲部15を所定の曲率で湾曲した状態に保つ。
【0029】
保持部材20は、ハーネス本体10の外周部よりも剛性の高い合成樹脂材料からなる単一部品である。図2に示すように、保持部材20を前方から見た正面視において、保持部材20は、幅寸法が高さ寸法よりも大きい長方形の枠状をなす。保持部材20の内部空間は、保持部材20を前後方向に貫通した収容空間21となっている。図6に示すように、保持部材20は、壁厚方向を左右方向に向けた左右一対の受圧用壁部22と、壁厚方向を上下方向に向けた上下一対の係止用壁部23とを備えている。受圧用壁部22の厚さと係止用壁部23の厚さは、同一寸法である。
【0030】
上下一対の係止用壁部23には、夫々、一対の係止孔24が形成されている。係止孔24は、係止用壁部23を上下方向に貫通した形状である。一対の係止孔24は、保持部材20を上から見た平面視において、前後方向及び左右方向の両方向に対して斜め方向に離隔した位置関係で並ぶように配置されている。保持部材20の前後両面における収容空間21の開口縁部のうち、受圧用壁部22の内側縁部には、テーパ面25が形成されている。
【0031】
位置決め部材30は、ハーネス本体10の外周部よりも剛性の高い合成樹脂材料からなる単一部品である。位置決め部材30の正面視形状は、幅寸法が高さ寸法よりも大きい長方形をなす。図7に示すように、保持部材20は、壁厚方向を左右方向に向けた左右一対の厚肉壁部31と、壁厚方向を上下方向に向けた上下一対の薄肉壁部32とを備えている。厚肉壁部31の厚さは、薄肉壁部32の厚さよりも厚く、受圧用壁部22及び係止用壁部23の厚さよりも厚い。薄肉壁部32の厚さは、受圧用壁部22及び係止用壁部23の厚さよりも薄い。保持部材20は、一対の厚肉壁部31と一対の薄肉壁部32とによって囲まれた貫通空間33を有する。貫通空間33は、保持部材20の前後両面に開口している。
【0032】
上下一対の薄肉壁部32には、夫々、長尺弾性係止片34Lと短尺弾性係止片34Sとが形成されている。長尺弾性係止片34Lは、前後方向に片持ち状に延出する長尺アーム部35Lと、長尺アーム部35Lの延出端から薄肉壁部32の外面側へ突出した長尺側係止突起36Lとを有する。短尺弾性係止片34Sは、前後方向に片持ち状に延出する短尺アーム部35Sと、短尺アーム部35Sの延出端から薄肉壁部32の外面側へ突出した短尺側係止突起36Sとを有する。各弾性係止片34L,34Sは、各弾性係止片34L,34Sの基端部を支点として、貫通空間33内へ進出する方向(上下方向)へ弾性変形することが可能である。
【0033】
1つの薄肉壁部32において、長尺弾性係止片34Lと短尺弾性係止片34Sとが左右に並ぶように配置されている。長尺アーム部35Lの基端部と短尺アーム部35Sの基端部は、前後方向において同じ位置に配置されている。長尺側係止突起36Lと、短尺側係止突起36Sは、係止孔24と同様、前後方向及び左右方向の両方向に対して斜め方向に離隔した位置関係で並ぶように配置されている。
【0034】
図3,5に示すように、位置決め部材30の前後両面における外周縁部のうち、厚肉壁部31の外側縁部には、曲面からなる干渉緩和部37が形成されている。平面視において、干渉緩和部37の半径は、受圧用壁部22のテーパ面25の前後方向の寸法及び左右方向の寸法よりも大きい寸法に設定されている。
【0035】
位置決め部材30の高さ寸法は、収容空間21の高さ寸法と同じか、それよりも僅かに小さい寸法である。位置決め部材30の幅寸法は、収容空間21の幅寸法よりも小さい寸法である。収容空間21の幅寸法と位置決め部材30の幅寸法との寸法差は、ハーネス本体10の幅寸法の2倍よりも小さい寸法に設定されている。
【0036】
次に、本実施例1のワイヤーハーネスの組付け手順を説明する。図5に示すように、ハーネス本体10を弾性変形させて屈曲部15を形成し、屈曲部15を保持部材20の後方から収容空間21に貫通させ、一対の低曲率部16を収容空間21に挿通した状態にする。一対の低曲率部16は、屈曲部15の弾性復元力によって、一対の受圧用壁部22の内面に対して弾性的に押し付けられる。一対の低曲率部16は、受圧用壁部22の内面との間の摩擦力によって、収容空間21に挿通された状態に仮保持される。
【0037】
この後、位置決め部材30を、保持部材20の後方から一対の低曲率部16の間に割り込ませるようにして収容空間21内に組み付ける。この間、一対の厚肉壁部31の外面が一対の低曲率部16に摺接するが、位置決め部材30の前側の干渉緩和部37が低曲率部16に対して斜めに摺接するので、位置決め部材30が低曲率部16に対して引っ掛かりを生じることはない。位置決め部材30の前端部が収容空間21内への進入を開始すると、一対の低曲率部16が、受圧用壁部22と厚肉壁部31との間で左右方向に押し潰されるように弾性変形する。
【0038】
位置決め部材30が収容空間21に進入する過程では、まず、長尺弾性係止片34Lが、長尺側係止突起36Lと係止用壁部23との干渉によって、貫通空間33内へ進出するように弾性変形する。長尺弾性係止片34Lの弾性変形が開始した後、短尺弾性係止片34Sが、短尺側係止突起36Sと係止用壁部23との干渉によって、貫通空間33内へ進出するように弾性変形する。位置決め部材30が、保持部材20に対して所定の組付位置に到達すると、長尺弾性係止片34Lの弾性復帰によって長尺側係止突起36Lが係止孔24に係止すると同時に、短尺弾性係止片34Sの弾性復帰によって短尺側係止突起36Sが係止孔24に係止する。
【0039】
位置決め部材30が保持部材20に組み付けられた状態では、図2,3に示すように、上下両係止用壁部23の左右両端部と受圧用壁部22と厚肉壁部31とによって囲まれた左右一対のハーネス挿通空間38が構成される。一対のハーネス挿通空間38内には、ハーネス本体10のうち一対の低曲率部16のみが挿通されている。屈曲部15は、ハーネス挿通空間38内には存在せず、受圧用壁部22、厚肉部、係止用壁部23のいずれにも接触していない。
【0040】
図1,2,4に示すように、位置決め部材30が保持部材20に組み付けられた状態では、係止用壁部23と薄肉壁部32とが上下方向に重なり合うことによって、二枚重ねの積層壁部39が構成される。積層壁部39は、保持部材20の上面部と上面部とに構成される。2の積層壁部39は、上下方向(低曲率部16が受圧用壁部22と厚肉部との間で挟まれる方向に対して直交する方向)に離隔して配置されている。積層壁部39を構成する係止用壁部23と薄肉壁部32は、ハーネス挿通空間38に臨まない位置に存在する。係止孔24と長尺弾性係止片34Lと短尺弾性係止片34Sも、ハーネス挿通空間38に臨まない位置に配置されている。
【0041】
本実施例1のワイヤーハーネスは、1本のハーネス本体10と、1つの保持部材20と、1つの位置決め部材30とを備えている。ハーネス本体10は、弾性変形可能であり、弾性的に屈曲された屈曲部15と、屈曲部15よりも曲率の小さい一対の低曲率部16とを有する。保持部材20は、ハーネス本体10のうち一対の低曲率部16のみを当接させることによって、屈曲部15の屈曲状態を保持する。位置決め部材30は、一対の低曲率部16の間に圧入された状態で、保持部材20の内側に配置される。保持部材20に取り付けた位置決め部材30は、保持部材20との間で低曲率部16を挟み付ける。低曲率部16と保持部材20との間の摩擦抵抗及び低曲率部16と位置決め部材30との間の摩擦抵抗によって、保持部材20に対する低曲率部16の位置ずれを抑制できる。
【0042】
保持部材20は屈曲部15に接触しないので、屈曲部15においては、保持部材20との接触に起因して負荷が増大することはない。位置決め部材30も屈曲部15に接触しないので、屈曲部15においては、位置決め部材30との接触に起因して負荷が増大することはない。よって、屈曲部15における負荷を増大させることなく、屈曲部15の曲げ形状を保持することができる。低曲率部16は、保持部材20と位置決め部材30との間で挟み付けられるので、屈曲部15(ハーネス本体10)が保持部材20に対して軸線方向へ相対変位することを防止できる。
【0043】
保持部材20は、低曲率部16の外周部よりも硬度の高い材料からなる。低曲率部16の外周部の弾性変形に起因する摩擦抵抗によって、低曲率部16と保持部材20との間の位置ずれが防止される。低曲率部16よりも硬度が高い保持部材20は、比較的変形を生じ難いので、一対の低曲率部16が拡開変形することを、確実に防止できる。位置決め部材30も、低曲率部16の外周部よりも硬度の高い材料からなるので、低曲率部16を保持部材20と位置決め部材30との間で確実に挟み付けることができる。これにより、低曲率部16が保持部材20及び位置決め部材30に対して位置ずれすることを防止できる。
【0044】
保持部材20は、全周に亘って連なったリング状をなす。一対の低曲率部16は、保持部材20の収容空間21に挿通されている。保持部材20は、全周に亘って連なったリング状をなしているので、一対の低曲率部16が屈曲部15の弾性復元力によって拡開しようとしても、一対の低曲率部16の拡開変位を防止できる。これにより、屈曲部15を所期の曲率に保つことができる。
【0045】
低曲率部16は、保持部材20の受圧用壁部22と位置決め部材30の厚肉部との間で、幅方向に挟み付けられる。位置決め部材30の幅方向の最大寸法は、保持部材20の内面(収容空間21)における幅方向最大寸法から、低曲率部16の幅方向における最大外形寸法の合計を引いた寸法よりも大きい。保持部材20と位置決め部材30との間で低曲率部16が圧縮変形するので、低曲率部16の位置ずれが生じ難い。
【0046】
位置決め部材30の外周面のうち、保持部材20への組付け過程で低曲率部16に摺接する縁部には、曲面からなる干渉緩和部37が形成されている。位置決め部材30を一対の低曲率部16の間に割り込ませながら保持部材20に取り付けるときに、低曲率部16に対して干渉緩和部37が摺接することにより、低曲率部16が位置決め部材30の縁部によって傷付けられることを防止できる。
【0047】
位置決め部材30は、保持部材20における低曲率部16の挿通方向と同方向(前後方向)に貫通した貫通空間33を有する。貫通空間33を形成したことによって、位置決め部材30の軽量化と材料コストの低減を図ることができる。貫通空間33に指を入れることができるので、位置決め部材30を作業者の手で掴み易くなっている。
【0048】
位置決め部材30は、弾性的に変位可能な長尺弾性係止片34Lと短尺弾性係止片34Sとを有してする。保持部材20は、長尺弾性係止片34L又は短尺弾性係止片34Sが係止される係止孔24を有している。長尺弾性係止片34Lと係止孔24との係止、及び短尺弾性係止片34Sと係止孔24との係止によって、位置決め部材30を保持部材20に対して組付け状態に保持することができる。
【0049】
位置決め部材30を保持部材20に組み付ける過程では、長尺弾性係止片34Lと短尺弾性係止片34Sが貫通空間33内へ進出するように弾性変形する。貫通空間33は、弾性係止片34L,34Sを弾性変形させるための撓み許容空間としての機能を備えている。位置決め部材30に、貫通空間33とは別に弾性係止片34L,34Sの撓み許容空間を形成する場合に比べると、位置決め部材30の形状を簡素化することができる。
【0050】
位置決め部材30は、長尺弾性係止片34Lと短尺弾性係止片34Sが形成された一対の薄肉壁部32と、薄肉壁部32よりも厚さ寸法の大きい一対の厚肉壁部31とを有している。一対の低曲率部16は、一対の厚肉壁部31と、保持部材20の一対の受圧用壁部22との間で個別に押圧された状態で挟み付けられる。長尺弾性係止片34Lと短尺弾性係止片34Sは、薄肉壁部32に形成されているので、比較的弾性的に変位し易い。位置決め部材30を保持部材20に組み付ける過程において、長尺弾性係止片34L及び短尺弾性係止片34Sと保持部材20との間の摩擦抵抗を低減し、組付け作業性の向上を図ることができる。薄肉壁部32よりも厚肉の厚肉壁部31は、低曲率部16からの反力を受けても弾性変形し難いので、保持部材20との間で低曲率部16を確実に位置決めすることができる。
【0051】
保持部材20は、係止孔24が形成された係止用壁部23を有している。係止用壁部23の厚さ寸法は、薄肉壁部32の厚さ寸法よりも大きい。係止用壁部23は、薄肉部と比較して厚い壁部であるから、係止孔24の深さ寸法(係止用壁部23の厚さ寸法)も比較的大きい。これにより、係止用壁部23の厚さ方向における係止孔24と弾性係止片34L,34S(係止突起36L,36S)との係止代を大きく確保することができる。
【0052】
保持部材20の壁部(係止用壁部23)と位置決め部材30の壁部(薄肉壁部32)が低曲率部16を挟む方向と交差する方向(上下方向)に重なり合うことによって、積層壁部39が構成されている。長尺弾性係止片34Lと短尺弾性係止片34Sと係止孔24は、積層壁部39に形成されている。積層壁部39は、低曲率部16を挟む方向と交差する方向に重なり合う壁部(係止用壁部23と薄肉壁部32)によって構成されているので、低曲率部16に臨んでいない。長尺弾性係止片34Lと短尺弾性係止片34Sと係止孔24が、低曲率部16に臨まない位置に配置されているので、長尺弾性係止片34L及び短尺弾性係止片34Sが低曲率部16と干渉することを防止できる。
【0053】
2つの積層壁部39が、一対の低曲率部16の並び方向と直交する方向(上下方向)に離隔した2ヶ所に配置されている。2つの積層壁部39には、夫々、長尺弾性係止片34Lと短尺弾性係止片34Sと係止孔24とが形成されている。長尺弾性係止片34Lと係止孔24との係止及び短尺弾性係止片34Sと係止孔24との係止が、互いに離隔した2ヶ所で行われるので、位置決め部材30を保持部材20に対して確実に保持することができる。
【0054】
1つの係止用壁部23において、一対の係止孔24が、保持部材20における低曲率部16の挿通方向(前後方向)に対して斜めに並ぶように配置されている。一対の係止孔24を、保持部材20における低曲率部16の挿通方向と平行に並べる場合や、低曲率部16の挿通方向と直交する方向に並べる場合に比べると、積層壁部39の限られたスペース内で一対の係止孔24の離隔距離を大きく確保することができる。これにより、積層壁部39を構成する保持部材20の係止用壁部23と、積層壁部39を構成する位置決め部材30の薄肉壁部32に対して、積層壁部39の重なり方向と平行な上下方向の仮想軸(図2~4参照)を中心とする回転力が作用したときに、係止用壁部23と薄肉壁部32との相対回転を抑制することができる。
【0055】
長尺弾性係止片34Lと短尺弾性係止片34Sとが、並列して配置されている。長さの異なる2つの弾性係止片34L,34Sを並べて配置することによって、位置決め部材30を保持部材20に組み付けるときの組付け抵抗の低減と、位置決め部材30の離脱防止機能とを両立させることができる。
【0056】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記の実施形態も含まれる。
保持部材と位置決め部材との間で挟む低曲率部は、軸線が一直線状に延びる部位に限らず、軸線が僅かに湾曲した部位でもよい。
保持部材は、長方形に限らず、正方形、台形、円形、楕円形、長円形等でもよい。
保持部材は、全周に亘って連なったリング状に限らず、「S字形」や「C字形」をなすものでもよい。
保持部材は、単一部品に限らず、複数の部品を組み付けたものでもよい。
保持部材は、硬質ゴム製のリング状部材の内部に、金属性のリングを埋設して一体化したものでもよい。
保持部材は、硬質ゴムのみで構成されたものでもよい。
位置決め部材は、硬質ゴム製であってもよい。
保持部材とは別体の位置決め部材を設けず、保持部材に、低曲率部を嵌合させる溝や低曲率部を弾性的に挟む弾性片等からなる位置決め機能部を一体に形成し、この位置決め機能部によって保持部材に対する低曲率部の位置ずれを防止してもよい。
弾性係止片を保持部材のみに形成し、係止孔を位置決め部材のみに形成してもよく、弾性係止片と係止孔を、保持部材と位置決め部材の両方に形成してもよい。
一対の係止孔を、保持部材における低曲率部の挿通方向と平行に並ぶように配置してもよく、低曲率部の挿通方向と直交する方向に並ぶように配置してもよい。
並列配置された一対の弾性係止片は、互いに同じ長さであってもよい。
弾性係止片と係止孔は、上下2ヶ所に配置された積層壁部のうちいずれか一方の積層壁部のみに形成されていてもよい。
位置決め部材は、貫通空間を有しない中実部品であってもよい。
位置決め部材を構成する4つの壁部の厚さは、全て、同一寸法であってもよい。
保持部材の係止用壁部の厚さは、位置決め部材の薄肉壁部の厚さと同じでもよく、薄肉壁部より薄くてもよい。
保持部材の受圧用壁部の厚さは、位置決め部材の厚肉壁部の厚さと同じでもよく、厚肉壁部より厚くてもよい。
保持部材の受圧用壁部の厚さと係止用壁部の厚さは、異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…ハーネス本体
11…被覆電線
12…芯線
13…絶縁被覆
14…外装体
15…屈曲部
16…低曲率部
20…保持部材
21…収容空間
22…受圧用壁部
23…係止用壁部(保持部材の壁部)
24…係止孔
25…テーパ面
30…位置決め部材
31…厚肉壁部
32…薄肉壁部(位置決め部材の壁部)
33…貫通空間
34L:長尺弾性係止片(弾性係止片)
34S:短尺弾性係止片(弾性係止片)
35L:長尺アーム部
35S:短尺アーム部
36L:長尺側係止突起
36S:短尺側係止突起
37…干渉緩和部
38…ハーネス挿通空間
39…積層壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7