(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151790
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】回転子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H02K15/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061596
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新川 尚登
(72)【発明者】
【氏名】松原 正克
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直哉
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615PP02
5H615SS57
(57)【要約】
【課題】回転電機の回転子の製造において、回転子鉄心の正しい回転方向を従来に比して容易に判定可能な手法を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る回転子の製造方法は、使用において回転すべき第1の方向が決定され第1の方向に回転させた場合と第1の方向と反対方向である第2の方向に回転させた場合とで外周面の高さの時間的変動パターンが変化する少なくとも一つのパターンが外周面に形成された回転子鉄心に対し、所定の向きでシャフトを挿入し、回転子鉄心に対してシャフトを固定して回転子を組み立て、回転子を支持台によって回転自在に支持し、支持台により回転子鉄心を所定の方向に回転させながら、レーザ変位計を用いて回転子鉄心の外周面の高さの時間的変化を検出し、検出した時間的変化と基準とする時間的変化とに基づいて、情報処理装置を用いて所定の方向が第1の方向であるか第2の方向であるかを判定すること、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用において回転すべき第1の方向が決定され前記第1の方向に回転させた場合と前記第1の方向と反対方向である第2の方向に回転させた場合とで外周面の高さの時間的変動パターンが変化する少なくとも一つのパターンが外周面に形成された回転子鉄心に対し、所定の向きでシャフトを挿入し、
前記回転子鉄心に対して前記シャフトを固定して回転子を組み立て、
前記回転子を支持台によって回転自在に支持し、
前記支持台により前記回転子鉄心を所定の方向に回転させながら、レーザ変位計を用いて前記回転子鉄心の外周面の高さの時間的変化を検出し、
前記検出した時間的変化と基準とする時間的変化とに基づいて、情報処理装置を用いて前記所定の方向が前記第1の方向であるか前記第2の方向であるかを判定すること、
を備えた回転子の製造方法。
【請求項2】
使用において回転すべき第1の方向が決定され、前記第1の方向に回転させた場合と前記第1の方向と反対方向である第2の方向に回転させた場合とで外周面の高さの時間的変動パターンが変化する少なくとも一つのパターンが外周面に形成された回転子鉄心を支持台によって支持し、
基準パターンが現わされたゲージを用いて前記支持台により前記回転子鉄心の前記少なくとも一つのパターンと前記基準パターンとを比較して、前記支持台に支持された前記回転子鉄心の前記第1の方向を判定し、
判定された前記第1の方向を基準として、前記回転子鉄心に対し、所定の向きでシャフトを挿入し、
前記回転子鉄心に対して前記シャフトを固定して回転子を組み立てること、
を備えた回転子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の回転子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の回転子の回転子鉄心には、外周面に静音及び磁気設計のための溝が形成され、回転軸方向断面が、断面の中心軸に対して非対称となっているものがある。この様な回転子鉄心は、使用する際の回転方向が予め決定されている。また、回転子鉄心に組み付けるシャフトには、負荷と連結するための溝が形成されている。このため、回転軸方向上下について、回転子鉄心に対し正しい向きでシャフトを組み付ける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、回転子鉄心の正しい回転方向は、外観を肉眼で確認するたけでは判別困難である。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、回転電機の回転子の製造において、回転子鉄心の正しい回転方向を従来に比して容易に判定可能な手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る回転子の製造方法は、使用において回転すべき第1の方向が決定され前記第1の方向に回転させた場合と前記第1の方向と反対方向である第2の方向に回転させた場合とで外周面の高さの時間的変動パターンが変化する少なくとも一つのパターンが外周面に形成された回転子鉄心に対し、所定の向きでシャフトを挿入し、前記回転子鉄心に対して前記シャフトを固定して回転子を組み立て、前記回転子を支持台によって回転自在に支持し、前記支持台により前記回転子鉄心を所定の方向に回転させながら、レーザ変位計を用いて前記回転子鉄心の外周面の高さの時間的変化を検出し、前記検出した時間的変化と基準とする時間的変化とに基づいて、情報処理装置を用いて前記所定の方向が前記第1の方向であるか前記第2の方向であるかを判定すること、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る回転電機の回転子の外観図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る回転子の回転子鉄心の外周面の一例を示した図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る回転子の製造方法の流れを示したフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る回転子の組み立て前検査を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る回転子の組み立て前検査を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る回転子の組み立て後検査の検査システムの構成を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る回転子の組み立て後検査の流れを示したフローチャートである。
【
図8】
図8は、レーザ変位計による回転子の外周面高さの測定動作を説明するための図である。
【
図9】
図9は、レーザ変位計によって取得された外周面高さの時間的変化の一例を示した図である。
【
図10】
図10は。
図9に示した測定データ(外周面高さの時間的変化)の領域Rの拡大図である。
【
図11】
図11は、二値化した測定データの一例を示した図である。
【
図12】
図12は、情報処理装置が実行する判定処理のアルゴリズムを説明するための図である。
【
図13】
図13は、
図12のステップS362の検査データ抜き出し処理を説明するための図である。
【
図14】
図14は、
図12のステップS362の検査データ抜き出し処理を説明するための図である。
【
図15】
図15は、
図12のステップS362の検査データ抜き出し処理を説明するための図である。
【
図16】
図16は、
図12のステップS362の検査データ抜き出し処理を説明するための図である。
【
図18】
図18は、変形例に係る回転子の回転子鉄心の外周面に形成されたパターン例を示した図である。
【
図19】
図19は、変形例に係る回転子1の回転子鉄心12の外周面に形成された他のパターン例を示した図である。
【
図20】
図20は、回転子鉄心12の外周面に複数のパターンが形成されている場合において、測定データの取得範囲を説明するための図である。
【
図21】
図21は、回転子鉄心12の外周面に一つのパターンが形成されている場合において、測定データの取得範囲を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態に係る回転電機の回転子及びその製造方法について説明する。なお、以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。以下の実施形態は開示の技術を限定するものではない。そして、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0008】
図1は、実施形態に係る回転電機の回転子(ロータ)1の外観図である。
図1に示した様に、回転子1は、シャフト10、回転子鉄心12、第1エンドプレート16A、第2エンドプレート16B、ナット18を備える。
【0009】
シャフト10は、回転子鉄心12を支持し、中心軸Dの周りで回転自在な円柱形状を有する。シャフト10は、円筒形状を有する回転子鉄心12に対し、中心軸線について同軸に取り付けられる。シャフト10の一方の端部には、負荷と連結するための溝が形成されている。なお、以下の説明では、中心軸Dの延在方向を軸方向、中心軸D回りに回転する方向を周方向、軸方向及び周方向に直交する方向を径方向と呼ぶ。
【0010】
回転子鉄心12は、磁性板材、例えばケイ素鋼等の円環状の複数の電磁鋼板を同心状に積層して円筒形状に形成されている。回転子鉄心12の外周面には、所定の回転特性(振動特性、効率、トルク等)を発揮するため少なくとも一つの溝が形成されているか、磁石がd軸基準で非対称に配置されている。この少なくとも一つの溝により、回転子鉄心12の回転軸方向断面は、断面の中心軸に対して非対称となっている。また、回転子鉄心12については、上記回転特性を発揮するため、使において回転すべき方向(第1の方向)が予め決定されている。従って、シャフト10は、回転子鉄心12を第1の方向に回転させるため、回転軸方向上下について、回転子鉄心12に対し正しい向きで組み付けられる必要がある。
【0011】
回転子鉄心12の外周面には、回転子1の使用において回転すべき方向を判定するためのパターン、言い換えれば、回転子鉄心12に対してシャフト10の軸方向上下を判定するためのパターンが少なくとも一つ形成されている。このパターンは、回転子1を使用において回転すべき方向(第1の方向)に回転させた場合と、第1の方向と反対方向である方向(第2の方向)に回転させた場合とで、外周面の高さの時間的変動パターンが変化するように形成されている。なお、本実施形態においては、回転子鉄心12の外周面には複数のパターンが形成されている場合を例とする。また、
図1においては、回転子鉄心12の外周面のパターンA、パターンB、パターンCを例示した。パターンの具体例については後で詳しく説明する。
【0012】
第1エンドプレート16A及び第2エンドプレート16Bは、シャフト10に取り付けられた回転子鉄心12の軸方向両端に配置され、回転子鉄心12をシャフト10の軸方向の所定位置で保持する。ナット18は、第1エンドプレート16Aの軸方向両端に配置され、第1エンドプレート16Aをシャフト10の軸方向の所定位置で保持する。
【0013】
図2は、実施形態に係る回転子1の回転子鉄心12の外周面の一例を示した図である。
図2に示した様に、回転子鉄心12の外周面には、回転方向を判定するためのパターンBとして、複数の溝14B1、溝14B2、溝14B3による溝パターンが形成されている。なお、
図2においては、パターンBとしての溝14B1、溝14B2、溝14B3のみを例示している。また、回転子鉄心12の正しい回転方向は例えば
図2の矢印ARで示した方向であるとする。
【0014】
溝14B1、溝14B2、溝14B3は、溝14B1と溝14B2の間の外周の長さW2と、溝14B2と溝14B3との間の外周の長さW1とが異なるように形成されている(W1<W2)。従って、回転する回転子鉄心12の外周の一点(所定位置)を観察した場合、溝が出現する時間的間隔(周期)は、回転子鉄心12が径方向について第1の方向に回転した場合と第2の方向に回転した場合とで異なる。
【0015】
なお、回転子鉄心12の外周面のパターンA、B、Cについては、回転子1を第1の方向に回転させた場合と第2の方向に回転させた場合とで、外周面の高さの時間的変動パターンが変化するように形成されていれば、どのようなパターンであってもよい。例えば、パターンA、B、Cがそれぞれ異なる溝パターンであってもよいし、パターンA、B、Cのうち少なくとも二つが同じ溝パターンであっても良い。
【0016】
図3は、実施形態に係る回転子1の製造方法の流れを示したフローチャートである。
図3に示した様に、回転子1の製造方法は、ロータ組み立て前の外観検査(ステップS1)、ロータ組み立て(ステップS2)、ロータ組み立て後の外観検査(ステップS3)を備える。
【0017】
ステップS1のロータ組み立て前の外観検査においては、シャフト10を回転子鉄心12に組み付けるにあたり、回転子鉄心12の正しい回転方向を外観検査によって判定する。ステップS2のロータ組み立てにおいては、ロータ組み立て前の外観検査によって判定された回転子鉄心12の回転方向を基準として、シャフト10を所定の向きで回転子鉄心12に組み付ける。ステップS3のロータ組み立て後の外観検査においては、回転子1を実際に回転させ、回転子鉄心12に対してシャフト10が正しい向きで組み付けられているか否かを判定する。以下、各ステップにおける処理について説明する。
【0018】
[ロータ組み立て前の外観検査:ステップS1]
図4、
図5は、実施形態に係る回転子1の組み立て前検査を説明するための図である。
図4は、回転子1の回転子鉄心12と、組み立て前検査に用いられるパターンB用ゲージ30を示している。
図5は、組み立て前検査に基づいて第1支持台20に所定の向きで設置された回転子鉄心12を示している。パターンB用ゲージ30は、回転子鉄心12の溝14B1、溝14B2、溝14B3に対応した溝パターン301、溝パターン302、溝パターン303を有する。また、パターンB用ゲージ30の矢印304は、回転子鉄心12の正しい回転方向を示している。
【0019】
回転子1の組み立て前検査においては、パターンB用ゲージ30の溝パターンと回転子鉄心12の外周面のパターンBとを対応させることで、パターンB用ゲージ30に表された矢印304により、回転子鉄心12の正しい回転方向を判定することができる。回転子鉄心12は、パターンB用ゲージ30の判定結果に基づいて、
図5に示した様に所定の向きで第1支持台20に設置される。
【0020】
[ロータ組み立て:ステップS2]
所定の向きで第1支持台20に設置された回転子鉄心12の軸方向の一端から、第2エンドプレート16Bが固定されたシャフト10を、軸方向上下の向きを合わせて挿入する。回転子鉄心12に挿入されたシャフト10に対し、回転子鉄心12の軸方向の他端から第1エンドプレート16Aを固定する。ナット18によって、第1エンドプレート16Aを締め付けることで、回転子1が組み立てられる。
【0021】
[ロータ組み立て後の外観検査:ステップS3]
図6は、実施形態に係る回転子の組み立て後検査の検査システムSの構成を説明するための図である。
【0022】
図6に示した様に、検査システムSは、回転子1、第2支持台40、レーザ変位計42、情報処理装置44を備える。第2支持台40は、回転子1を支持し、回転子1を所定の方向に回転させる。レーザ変位計42は、例えば第2支持台40と回転子鉄心12の外周面の間に設置される。レーザ変位計42は、レーザ光を用いて回転子1の外周面高さLの時間的変化(例えば、回転子1の外周面との間の距離の時間的変化)を測定する。情報処理装置44は、例えばコンピュータである。情報処理装置44は、レーザ変位計42からの出力に基づいて、回転子鉄心12に対するシャフト10の向きの適否を判定する。
【0023】
図7は、実施形態に係る回転子1の組み立て後検査の流れを示したフローチャートである。
図7に示した様に、まず、第2支持台40は、回転子1を例えばN[rpm]で所定の方向に回転させる(ステップS31)。
【0024】
次に、レーザ変位計42は、回転子1の回転子鉄心12の外周面高さLの測定を開始する(ステップS32)。
【0025】
図8は、レーザ変位計42による回転子1の外周面高さLの測定動作を説明するための図であり、検査システムSを軸方向から見た簡略図である。
図8に示した様に、N[rpm]で回転する回転子1の外周面に対し、レーザ変位計42から回転子1の外周面に対しレーザ光LA1を照射し、回転子1の外周面において反射したレーザ光LA2を受光する。
【0026】
図7に戻り、レーザ変位計42は、受光したレーザ光LA2に基づいて、N秒(1回転分)以上の回転子1の外周面高さ情報(外周面高さLの時間的変化)を測定する(ステップS33)。
【0027】
第2支持台40は、回転子1の回転を停止する(ステップS34)。
【0028】
情報処理装置44は、測定によって得られた外周面高さLの時間的変化を、判定値Lth(閾値Lth)を用いて二値化する(ステップS34)。
【0029】
図9は、レーザ変位計42によって取得された外周面高さLの時間的変化の一例を示した図である。
図9に示した様に、レーザ変位計42は、回転子1の外周面との間の距離の時間的変化を回転子1の外周面高さLの時間的変化として取得し、情報処理装置44に出力する。
【0030】
図10は、
図9に示した測定データ(外周面高さLの時間的変化)の範囲Tの拡大図である。
図11は、二値化した測定データの一例を示した図である。情報処理装置44は、各時刻における外周面高さL<判定値Lthの場合には「0」、各時刻における外周面高さL≧判定値Lthの場合には「1」として二値化する。その結果、
図9に示した外周面高さLの時間的変化は、例えば
図11に示したNビットの二値化された測定データ(二値化データ)を生成する。
【0031】
情報処理装置44は、二値化データに事前に定められた基準データが存在するか否かを判定する(ステップS36)。なお、本ステップにおける判定処理については、後で詳しく説明する。
【0032】
情報処理装置44は、二値化データに基準データが存在すると判定した場合には(ステップS36のYes)、回転子鉄心12に対してシャフト10の組み付けが適切である旨を出力する(ステップS37)。
【0033】
情報処理装置44は、二値化データに基準データが存在すると判定しない場合には(ステップS36のNo)、回転子鉄心12に対してシャフト10の組み付けが不適切である旨を出力する(ステップS38)。
【0034】
[判定処理のアルゴリズム]
図12は、情報処理装置44が実行する判定処理のアルゴリズムを説明するための図である。
図12に示した様に、まず、情報処理装置44は、レーザ変位計42から測定データ(Nビット配列)を取得する(ステップS360)。
【0035】
情報処理装置44は、取得した測定データ(Nビット配列)から検査データを抜き出すためのパラメータKについて、K=0を設定する(ステップS361)。なお、パラメータKは、測定データ(Nビット配列)から検査データを抜き出す開始データ位置を示す。
【0036】
情報処理装置44は、取得した測定データ(Nビット配列)のうち、K番目(今の場合K=0番目)からM+K番目(今の場合、K=0のためM番目)までのデータ配列を、検査データとして抜き出す(ステップS362)。なお、Mは検査データの長さを表すパラメータであり、M、KはN>M,N>Kを満たす自然数である。
【0037】
図13は、
図12のステップS362の検査データ抜き出し処理を説明するための図である。
図13に示した様に、情報処理装置44は、測定データ(Nビット配列)から、K番目(
図13の例ではK=4番目)からM+K番目(
図13の例ではM=24でありM+K=27番目)までのデータ配列を、検査データとして抜き出す。
【0038】
情報処理装置44は、基準データと検査データとのXOR(排他的論理和)を取り、結果データを算出する(ステップSS363)。ここで、基準データとは、予め準備され、回転子鉄心12を正しい回転方向に回転させた場合に、回転子鉄心12の外周面の高さLの時間変化を測定した場合において出現するパターンBの二値化データを示すものである。
【0039】
図14、
図15、
図16は、
図12のステップS362の検査データ抜き出し処理を説明するための図である。
図14は、情報処理装置44が有する演算回路50を示している。
図15は、演算回路50が実行する演算論理(XOR)を示したテーブルである。
図16は、演算回路50が実行する演算処理及び結果データの一例を示した図である。
【0040】
図14に示した様に、演算回路50は、Mビット配列の基準データとMビット配列の検査データとを入力し、Mビット配列の結果データを出力する。すなわち、演算回路50は、例えばMビット配列の基準データを入力値AとしMビット配列の検査データを入力値Bとし、
図15に示したテーブルに従って演算を実行しMビット配列の結果データを出力する。
【0041】
例えば、
図16において、0ビット番目の検査データは「0」であり判定データは「0」であるから、
図15に示したテーブルに従って結果データは「0」となる。また、1ビット番目の検査データは「0」であり判定データは「1」であるから、
図15に示したテーブルに従って結果データは「1」となる。情報処理装置44の演算回路50は、このような演算をMビット番目まで実行し、Mビット配列の結果データを出力する。
【0042】
情報処理装置44は、結果データ(Mビッド配列)の全ビット値の総和(S=Σm
i=0結果データ(i))を計算する(ステップS364)。
【0043】
情報処理装置44は、結果データの全ビット値総和Sを計算し、得られた総和Sが0か否かを判定する(ステップS365)。
【0044】
図17は、
図12のステップS365の判定処理を説明するための図である。
図17に示した様に、情報処理装置44は、結果データの全ビット値総和Sとして、S=0+1+1+1+1+0+0+0+1+0+0+1+0+0+0+0+1+1+0+0+1+1+1+0=11を計算する。
図17の例では、情報処理装置44は、得られた総和Sは0ではないと判定する。
【0045】
仮に、Mビット配列の基準データとMビット配列の検査データとが完全に一致する場合には、
図15に示した演算論理に従えば、出力されるMビット配列の結果データの値はすべて「0」となる。従って、情報処理装置44は、結果データの全ビット値総和Sが0と判定した場合には(ステップS365のYes)、情報処理装置44は、判定結果として、シャフト10が回転子鉄心12に対して正しい方向に組み付けられている旨の判定結果を出力する(ステップS37)。
【0046】
情報処理装置44は、結果データの全ビット値総和Sが0でないと判定した場合には(ステップS365のNo)、情報処理装置44は、M+KがNを超えるか否かを判定する(ステップS368)。情報処理装置44は、M+KがNを超えないと判定した場合(ステップS368のYes)、KをK+1にインクリメントし(ステップS367)としてステップS362からステップS365までの処理を繰り返し実行する。一方、情報処理装置44は、M+KがNを超えたと判定した場合(ステップS368のNo)、判定結果として、シャフト10が回転子鉄心12に対して正しい方向に組み付けられていない旨の判定結果を出力する(ステップS38)。
【0047】
以上述べた様に、実施形態に係る回転子1は、使用において回転すべき第1の方向が決定され、第1の方向に回転させた場合と第1の方向と反対方向である第2の方向に回転させた場合とで外周面の高さの時間的変動パターンが変化する少なくとも一つのパターンが外周面に形成されている回転子鉄心12を備える。実施形態に係る回転子1の製造方法においては、回転子鉄心12に対し、所定の向きでシャフト10を挿入し、回転子鉄心12に対してシャフト10を固定して回転子1を組み立てる。また、回転子1を第2支持台40によって回転自在に支持し、第2支持台40により回転子鉄心14を所定の方向に回転させながら、レーザ変位計42を用いて回転子鉄心12の外周面の高さの時間的変化を検出する。検出した時間的変化と基準とする時間的変化とに基づいて、情報処理装置44を用いて所定の方向が前記第1の方向であるか前記第2の方向であるかを判定する。
【0048】
従って、回転子1の回転子鉄心12の外周面に形成されたパターンを用いて、使用において回転すべき方向が決定されている回転子鉄心12に対し、外観検査によって、シャフト10を正しい方向で組み付けられているか否かを判定することができる。その結果、回転子鉄心12に対しシャフト10が誤って組み付けられた回転子1の出荷・設置を抑制することができる。
【0049】
以上述べた様に、実施形態に係る回転子1の製造方法は、回転子鉄心12を第1支持台20によって支持し、第1支持台20により回転子鉄心12の少なくとも一つのパターンと基準パターンとを比較して、第1支持台20に支持された回転子鉄心12の第1の方向を判定する。判定された第1の方向を基準として、回転子鉄心12に対し、所定の向きでシャフト10を挿入し、回転子鉄心12に対してシャフト10を固定して回転子1を組み立てる。
【0050】
従って、回転子1の回転子鉄心12の外周面に形成されたパターンを用いて、回転子鉄心12に対しシャフト10を組み付ける前の外観検査によって、シャフト10の組み付け前において回転子鉄心12の使用において回転すべき方向を判定することができる。その結果、その結果、回転子鉄心12に対しシャフト10を誤って組み付けることを抑制できる。
【0051】
(変形例1)
上記実施形態においては、回転子鉄心12の外周面に形成されたパターンA、B、Cの例として、溝301、302、303を例示したが、これはあくまでも例示であり、他の態様のパターンを採用することも可能である。
【0052】
図18は、変形例に係る回転子1の回転子鉄心12の外周面に形成されたパターン例を示した図である。パターンBとして、周方向の幅W3、W4、W5がそれぞれ異なる溝14B4、溝14B5、溝14B6を形成することもできる。なお、
図18の例では、W3>W4>W5である場合を例示した。
【0053】
図19は、変形例に係る回転子1の回転子鉄心12の外周面に形成された他のパターン例を示した図である。パターンBとして、円弧長が異なる複数の凸部が形成されている。なお、
図19では、凸部14B7、14B8、14B9の三つを例示した。
【0054】
いずれの構成によっても、回転子鉄心12の外周面に、回転子1が周方向について一方向に回転した場合と他方向に回転した場合とで、外周面の高さの時間的変化が異なるパターンを形成することができる。
【0055】
(変形例2)
上記実施形態においては、ロータ組み立て後検査において、回転子鉄心12を一回転以上の期間について、回転子鉄心12の外周面の高さLの時間的変化を測定した。しかしながら、回転子鉄心12の外周面の高さLの時間的変化の測定期間は、さらに短縮することもできる。
【0056】
図20は、回転子鉄心12の外周面に複数のパターンが形成されている場合において、測定データの取得範囲を説明するための図であり、回転子鉄心12を軸方向から見た簡略図である。
図20に示した様に、回転子鉄心12の外周に設けられた複数のパターンのそれぞれの周長をR1、パターン間隔RD1、RD2、RD3のうち最長となる周長をRD3とする。この場合、測定データを取得する範囲RDTは、RDT≧(2R1+RD3)を満たす範囲であればよい。
【0057】
図21は、回転子鉄心12の外周面に一つのパターンが形成されている場合において、測定データの取得範囲を説明するための図であり、回転子鉄心12を軸方向から見た簡略図である。
図21に示した様に、回転子鉄心12の外周面に一つのパターンが形成されている場合には、パターン間隔はRD4となる。なお、回転子鉄心12の外周面に一つのパターンが形成されている場合には、回転子鉄心12の外周面の高さLの時間的変化は、少なくとも一回転分必要となる。
【0058】
測定データを取得する範囲RDTを上記範囲とすることで、確実に1つ以上の連続したパターンを測定データ内に収めることができる。
【0059】
(変形例3)
上記実施形態においては、回転子鉄心12の外周面に形成される溝として、所定の回転特性を発揮するため少なくとも一つの溝と、回転子1の使用において回転すべき方向を判定するためのパターンとを区別して説明した。これに対し、所定の回転特性を発揮するための溝を用いて、回転子1の使用において回転すべき方向を判定するためのパターンを形成することも可能である。
【0060】
以上、本発明のいくつかの実施形態(及び変形例)を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 回転子
10 シャフト
12 回転子鉄心
14B1、14B2、14B3、14B4、14B5、14B6 溝
14B7、14B8、14B9 凸部
16A 第1エンドプレート
16B 第2エンドプレート
18 ナット
20 第1支持台
40 第2支持台
42 レーザ変位計
44 情報処理装置
301、302、303 溝パターン
30 パターンB用ゲージ