(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151797
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20231005BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R21/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061616
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】早川 真司
【テーマコード(参考)】
3D030
3D054
【Fターム(参考)】
3D030DB08
3D030DB48
3D030DB75
3D054AA02
3D054AA07
3D054AA13
3D054BB06
(57)【要約】
【課題】より簡易にエアバッグ装置を取り付けることができるステアリングホイールを提供する。
【解決手段】ステアリングホイール20では、エアバッグ装置取付部25A、25B、25Cの差込穴26にフック45の先端部が挿通されて、差込穴26と、差込穴26を貫通したフック45の先端部との間に、このエアバッグ装置取付部25A、25B、25Cに設置されるトーションスプリング27の一端27Bが介在することによって、フック45がエアバッグ装置取付部25A、25B、25Cと連結される。トーションスプリング27の一端27Bは、ステアリングホイール20の回転軸方向との直交方向から傾斜する傾斜方向に沿って移動可能に配置される。この傾斜方向は、フック45の先端部との距離がフック45の軸心側に進むほど相対的に大きく、フック45の遠心側に進むほど相対的に小さくなるよう設定される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール本体と、
前記ステアリングホイール本体に支持されるリテーナと、
前記リテーナに固定されるエアバッグ装置と、
前記ステアリングホイール本体と前記リテーナとの間に配置され、前記ステアリングホイール本体の回転軸方向に沿って延在する棒状部材と、
を備え、
前記棒状部材は、
前記ステアリングホイール本体及び前記リテーナの一方に基端部が固定されることによって前記一方と連結され、
前記ステアリングホイール本体及び前記リテーナの他方に設けられる挿通孔に先端部が挿通されて、前記挿通孔と、前記挿通孔を貫通した前記先端部との間に、前記他方に設置されるトーションスプリングの一端が介在することによって前記他方と連結され、
前記トーションスプリングの前記一端は、前記回転軸方向との直交方向から傾斜する傾斜方向に沿って移動可能に配置され、前記傾斜方向は、前記棒状部材の前記先端部との距離が前記棒状部材の軸心側に進むほど相対的に大きく、前記棒状部材の遠心側に進むほど相対的に小さくなるよう設定される、
ステアリングホイール。
【請求項2】
前記ステアリングホイール本体と前記リテーナとの間に配置されるダンパ装置を備え、
前記ダンパ装置は、前記ステアリングホイール本体の回転軸方向に沿って延在する棒状のフックと、前記フックの周囲に配置され前記回転軸方向に沿って弾性力を有する弾性体と、を有し、
前記フックは前記棒状部材であり、
前記ダンパ装置は、
前記ステアリングホイール本体及び前記リテーナの一方に前記フックの基端部が固定されることによって前記一方と連結され、
前記ステアリングホイール本体及び前記リテーナの他方に設けられる挿通孔に前記フックの先端部が挿通されて、前記挿通孔と、前記挿通孔を貫通した前記先端部との間に、前記他方に設置されるトーションスプリングの一端が介在することによって前記他方と連結される、
請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記一方側に突出し前記挿通孔が設けられる筒状部と、
前記筒状部の周壁に貫通して形成され、前記トーションスプリングの前記一端を挿通する貫通溝と、を備え、
前記貫通溝は、前記傾斜方向に沿って延在するよう形成される、
請求項1または2に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記トーションスプリングの中央部を設置する傾斜面を備え、
前記傾斜面及び前記貫通溝は、前記傾斜方向に沿って延在するよう形成される、
請求項3に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記挿通孔及び前記トーションスプリングが設けられ、ステアリングシャフト取付孔を中心として周方向に沿って配置される複数の取付部を備え、
前記複数の取付部のうち1つの取付部が、円環状の前記ステアリングホイール本体の6時の方向に配置され、
前記複数の取付部のうち、少なくとも前記1つの取付部において、前記トーションスプリングの前記一端が、前記回転軸方向との直交方向から傾斜する前記傾斜方向に沿って移動可能に配置される、
請求項1に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、エアバッグ装置が設置されるリテーナと、ステアリング側の設置部とを、これらの間に介在するダンパ装置によって連結する構成が知られている。リテーナを設置部に連結する際には、ダンパ装置の軸心部のフックの先端部を設置部の孔に挿通させ、先端部より基部側に設けられる溝にトーションスプリングを篏合させる。これによりフックが孔に係止されて、ダンパ装置を介してリテーナと設置部とが連結される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のダンパ装置と設置部との係止構造では、トーションスプリングが孔の弦方向に延在して設置されており、この状態でダンパ装置のフックの先端部を孔に挿入させる。先端部は例えば円錐形状などトーションスプリングと接触する部分に傾斜面を有している。先端部がトーションスプリングに突き当たると、引き続きフックが押し込まれると先端部の傾斜面によってトーションスプリングが弾性変形して孔の径方向外側に押し出されて、これにより先端部がトーションスプリングより孔の奥側に通過可能となる。先端部が通過した後はトーションスプリングが弾性復帰してフックの溝に篏合する。
【0005】
このように、ダンパ装置のフックを設置部の孔に挿通させてトーションスプリングによって係止させるためには、フックの先端部によってトーションスプリングを孔の径方向外側に弾性変形させるための比較的大きい外力の付加が必要となる。従来のエアバッグ装置付きステアリングホイールにおけるエアバッグ装置の取り付け工程では、取り付け負荷の軽減の観点で改善の余地がある。
【0006】
本開示は、より簡易にエアバッグ装置を取り付けることができるステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の一観点に係るステアリングホイールは、ステアリングホイール本体と、前記ステアリングホイール本体に支持されるリテーナと、前記リテーナに固定されるエアバッグ装置と、前記ステアリングホイール本体と前記リテーナとの間に配置され、前記ステアリングホイール本体の回転軸方向に沿って延在する棒状部材と、を備え、前記棒状部材は、前記ステアリングホイール本体及び前記リテーナの一方に基端部が固定されることによって前記一方と連結され、前記ステアリングホイール本体及び前記リテーナの他方に設けられる挿通孔に先端部が挿通されて、前記挿通孔と、前記挿通孔を貫通した前記先端部との間に、前記他方に設置されるトーションスプリングの一端が介在することによって前記他方と連結され、前記トーションスプリングの前記一端は、前記回転軸方向との直交方向から傾斜する傾斜方向に沿って移動可能に配置され、前記傾斜方向は、前記棒状部材の前記先端部との距離が前記棒状部材の軸心側に進むほど相対的に大きく、前記棒状部材の遠心側に進むほど相対的に小さくなるよう設定される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より簡易にエアバッグ装置を取り付けることができるステアリングホイールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るステアリングホイールの基本構造の分解斜視図
【
図2】実施形態に係るステアリングホイールの基本構造の組立斜視図
【
図3】実施形態に係るステアリングホイール本体の斜視図
【
図4】
図3中のエアバッグ装置取付部を拡大視した斜視図
【
図6】
図4中の3つのエアバッグ装置取付部のうちの1つを拡大視した斜視図
【
図9】本実施形態におけるフックとトーションスプリングとの係合過程を説明する図
【
図10】比較例におけるフックとトーションスプリングとの係合過程を説明する図
【
図11】本実施形態におけるフックとトーションスプリングとの関係を説明する図
【
図12】ダンパ装置の設置位置の変形例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向はステアリングホイール20の回転軸(ステアリングシャフト)の軸線方向である。y方向は、エアバッグ装置取付部25の3つの差込穴26のうちステアリングシャフト取付孔28を挟んで対向する2つの配列方向であり、
図3以降で図示されるエアバッグ装置取付部25B、25Cの配列方向であり、典型的には水平方向である。z方向は、残りの1つの差込穴26とステアリングシャフト取付孔28との配列方向であり、
図3以降で図示されるエアバッグ装置取付部25Aとステアリングシャフト取付孔28との配列方向であり、典型的には上下方向である。以下では説明の便宜上、z正方向側を上側、z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0012】
言い換えると、ステアリングホイール20の設置時において、z正方向は円環状のホイール部22の12時の方向であり、z負方向は6時の方向であり、y正方向は9時の方向であり、y負方向は3時の方向である。
【0013】
<ステアリングホイールの基本構造>
まず、
図1、
図2を参照して、本実施形態に係るステアリングホイール20の基本構造の一例について説明する。
図1は、実施形態に係るステアリングホイール20の基本構造の分解斜視図である。
図2は、実施形態に係るステアリングホイール20の基本構造の組立斜視図である。
【0014】
図1、
図2に示すように、ステアリングホイール20は、ステアリングホイール本体21にエアバッグ装置40を取り付けたものである。ステアリングホイール本体21は、ホイール部22と、スポーク部23と、ボス部24(芯金部)とを有する。
【0015】
ボス部24は、円板状のエアバッグ装置取付部25と、該エアバッグ装置取付部25に設けられたフックの差込穴26、トーションスプリング27、ボス部24の中央に設けられたステアリングシャフト取付孔28等を有する。
【0016】
トーションスプリング27は、略U字形であり、一辺側が差込穴26を弦方向に横切るように配置されている。取付部25には、トンネル状のバネホルダ30が設けられると共に、トーションスプリング27の位置決め用のストッパ31、32が設けられている。トーションスプリング27は、バネホルダ30に挿通され、ストッパ31、32に当接して位置決めされることにより、上記の通り、一辺側が差込穴26を弦方向に横切るように取付部25に取り付けられている。
【0017】
エアバッグ装置40は、リテーナ41と、該リテーナ41に取り付けられたインフレータ42及びエアバッグ43(
図5参照)と、エアバッグ43を覆うモジュールカバー44と、リテーナ41から取付部25に向って突設された複数本(本実施形態では3本)のフック45等を有する。
【0018】
エアバッグ43は、折り畳まれ、インフレータ42と共にボルト46によってリテーナ41に取り付けられている。車両衝突時にインフレータ42がガスを噴出すると、エアバッグ43が膨張し、モジュールカバー44を開裂させて展開する。
【0019】
エアバッグ装置40を取付部25に取り付けるには、
図1に示すように、各フック45をそれぞれ差込穴26に対峙させ、エアバッグ装置40を取付部25に向ってx正方向側に移動させ、フック45を差込穴26に差し込む。そして
図2に示すように各フック45の先端のテーパ部45Aが差込穴26を通過して反対側へ進出すると、テーパ部45Aより基端側の外周面に周方向に沿って設けられる溝45Bにトーションスプリング27が係合し、フック45が取付部25に堅固に固定される。
【0020】
なお、フック45は、後述するダンパ装置50の一要素である。したがって、エアバッグ装置40(リテーナ41)は、ダンパ装置50を介してステアリングホイール本体21に支持されている。
【0021】
なお、
図1、
図2に示す構成では、図示の便宜上、バネホルダ30、ストッパ31、32がエアバッグ装置取付部25の裏側(x正方向側、車体前方側)に配置され、フック45の先端部とトーションスプリング27とも裏側で係合される構成を例示した。しかしながら
図3以降に示す本実施形態の具体的な構成では、これらの要素の配置が異なる。
【0022】
<エアバッグ装置の係合構造>
以降では、本実施形態に係るステアリングホイール20におけるエアバッグ装置40の係合構造の具体的な構成について説明する。なお、
図1、
図2と同様の機能をもつ要素については、
図1、
図2と同一の符号を付して説明は省略する。
【0023】
図3、
図4を参照して、本実施形態に係るエアバッグ装置取付部25A、25B、25Cの構造について説明する。
図3は、実施形態に係るステアリングホイール本体21の斜視図である。
図4は、
図3中のエアバッグ装置取付部25A、25B、25Cを拡大視した斜視図である。なお、
図3は、
図1、
図2と同様にx正方向側から視た図であり、
図4はx負方向側(車両後方側、乗員側)から視た図である。
【0024】
図3、
図4に示すように、本実施形態では、ステアリングシャフト取付孔28を中心として周方向に沿って3つのエアバッグ装置取付部25A、25B、25Cが設けられる。3つのエアバッグ装置取付部25A、25B、25Cの構造は同一である。
【0025】
3つのエアバッグ装置取付部25A、25B、25Cのうち、エアバッグ装置取付部25Aは、z負方向側、すなわち円環状のステアリングホイール20の6時の方向に配置される。エアバッグ装置取付部25Bは、y正方向側、すなわち円環状のステアリングホイール20の3時の方向に配置される。エアバッグ装置取付部25Cは、y負方向側、すなわち円環状のステアリングホイール20の9時の方向に配置される。
【0026】
また、エアバッグ装置取付部25A、25B、25Cでは、トーションスプリング27は、エアバッグ装置取付部25A、25B、25Cの表側(x負方向側、乗員側)に配置される。エアバッグ装置取付部25A、25B、25Cは、x負方向側に突出する筒状部61を有する。筒状部61の軸心方向に沿って設けられる孔は、
図1、
図2を参照して説明した、フック45を差し込むための差込穴26に対応する。
【0027】
筒状部61の周壁には、差込穴26の軸線方向と直交する方向に周壁を貫通して貫通溝62が形成される。この貫通溝62にトーションスプリング27の一端27Bが挿通されて、これによりトーションスプリング27の一端27Bが差込穴26の弦方向に延在して設置される。エアバッグ装置取付部25Aでは貫通溝62はy方向に沿って筒状部61を貫通して設けられ、エアバッグ装置取付部25B、25Cでは貫通溝62はz方向に沿って筒状部61を貫通して設けられる。
【0028】
また、トーションスプリング27の他端27Cは、エアバッグ装置取付部25の表側(x負方向側)に配置されるストッパ32により固定されている。
【0029】
各エアバッグ装置取付部25A、25B、25Cにおいて共通して、トーションスプリング27の一端27Bは、ステアリングシャフト取付孔28を中心とする径方向において、径方向内側に配置される。トーションスプリング27の他端27Cは径方向外側に配置される。また、ステアリングシャフト取付孔28を弦方向に貫通して設置されるトーションスプリング27の一端27Bは、ステアリングシャフト取付孔28を中心とする径方向において、差込穴26の中心よりも径方向内側の位置で差込穴26を貫通するように配置される。
【0030】
図5を参照して実施形態のダンパ装置50について説明する。
図5は、ステアリングホイール20の要部断面図である。
図5の断面図は、例えばステアリングホイール20の6時方向の位置においてz方向に沿った断面である。したがって、3つのエアバッグ装置取付部25A、25B、25Cのうち、6時方向に配置されるエアバッグ装置取付部25Aの断面が図示されている。なお、
図5に図示されていない他のエアバッグ装置取付部25B、25Cの構成も、エアバッグ装置取付部25Aと同様である。
図5は、ステアリングホイール20のうちエアバッグ装置40と、ステアリングホイール本体21の下部とを図示している。なお、説明の便宜上、
図5の構成の詳細な形状は、
図1、
図2のものとは一部異なる場合がある。
【0031】
上述のようにエアバッグ装置40はリテーナ41に固定される。ダンパ装置50は、ステアリングホイール本体21とリテーナ41との間に配置される。ダンパ装置50は、ステアリングホイール20への組み付け時にはx方向に延在し、ステアリングホイール本体21からリテーナ41までの間の固定要素(本実施形態ではリテーナ41)に設けられる孔47に篏合されることによって、その一端である基部が固定要素(リテーナ41)に固定される。
図5の例では、リテーナ41の孔47が、「ダンパ装置50が篏合される孔」となる。
【0032】
また、本実施形態ではダンパ装置50の他端である先端部(テーパ部45A及び溝45B)がステアリングホイール本体21のエアバッグ装置取付部25A(25B、25C)に連結される。エアバッグ装置取付部25A(25B、25C)の差込穴26にフック45の先端部が挿通されて、差込穴26と、差込穴26を貫通したフック45の先端部との間に、このエアバッグ装置取付部25A(25B、25C)に設置されるトーションスプリング27の一端27Bが介在することによって、ダンパ装置50はエアバッグ装置取付部25A(25B、25C)と連結される。すなわち本実施形態では、差込穴26が、フック45の先端部が挿通される挿通孔として機能する。
【0033】
ダンパ装置50は、エアバッグ装置40側、またはステアリングホイール本体21側から付加される外力に応じて、リテーナ41との固定箇所と、エアバッグ装置取付部25A(25B、25C)との連結箇所との間の長さを収縮可能であり、これによりエアバッグ装置40側とステアリングホイール本体21側との間で振動を増幅させ、ステアリングホイール本体21の振動を抑制することができる。
【0034】
ダンパ装置50は、上述のフック45と、ラバー52(弾性体)と、スプリング54と、を有する。
【0035】
上述のようにフック45は、先端部としてテーパ部45Aを備え、テーパ部45Aから基端側(x負方向側)に隣接して溝45Bを備える。フック45は、基端部としてフランジ45Cを有する。
【0036】
フランジ45Cから先端部側にラバー52が篏合される。ラバー52は、フック45の外周面の周方向に亘って設けられる円筒状の部材である。ラバー52は、外力に応じて弾性変形可能な部材であり、例えば合成ゴムや天然ゴムで形成される。ラバー52の外周面には周方向に沿って溝が設けられ、この溝にリテーナ41の孔47の内縁が篏合される。これによりダンパ装置50がリテーナ41に固定される。
【0037】
スプリング54は、フック45の外周面に沿って設置される。スプリング54は、x方向に沿って付勢された状態で設置されている。また、スプリング54は、x方向長さを収縮可能であり、これによりリテーナ41とエアバッグ装置取付部25A(25B、25C)との間隙が縮小して、ダンパ装置50がx方向に収縮可能となっている。
【0038】
なお、ダンパ装置50は、ラバー52を設けない構成でもよい。この場合、例えばフック45の基部の周面にラバー52と同様の溝を設け、この溝にリテーナ41の孔47の内縁が篏合される。また、フック45の基部が例えばリテーナ41にかしめられて固定されるなど、篏合以外の固定手法により固定される構成でもよい。フック45がリテーナ41と一体的に形成される構成でもよい。この構成では、リテーナ41とステアリングホイール本体21とは、ダンパ装置50を介さず、フック45などの剛体の棒状部材により連結される。この場合、ダンパ装置50の機能は設けられない。
【0039】
また、フック45の先端のテーパ部45Aや溝45Bは、フック45の周方向全体に設けずに、トーションスプリング27の一端27Bが介在する側のみに設ける構成でもよい。
【0040】
図5に加えて、
図6~
図8を参照して、エアバッグ装置取付部25A、25B、25Cの構成についてさらに説明する。
図6は、
図4中の3つのエアバッグ装置取付部25A、25B、25Cのうちの1つ25Aを拡大視した斜視図である。
図7は、
図6に示すエアバッグ装置取付部25Aの平面図である。
図8は、
図6に示すエアバッグ装置取付部25Aの側面図である。
【0041】
図7に示すように、トーションスプリング27の一端27Bが、筒状部61に設けられる貫通溝62を介して、筒状部61の差込穴26の内部を差込穴26の弦方向(エアバッグ装置取付部25Aの場合、
図7に示すようにy方向であり、エアバッグ装置取付部25B、25Cの場合z方向(
図4参照))に貫通して配置されている。また、特に本実施形態では、
図6、
図8に示すように、筒状部61に設けられる貫通溝62は、差込穴26の軸線方向(x方向)に対して傾斜する方向に延在するよう形成されている。トーションスプリング27の一端27Bはこの貫通溝62に挿通されているので、トーションスプリング27の一端27Bも、貫通溝62の傾斜方向に沿って移動可能に設置されている。
【0042】
図6、
図8に示すように、エアバッグ装置取付部25Aのx負方向側の面には、z方向に沿って延在する傾斜面63が設けられる。トーションスプリング27の中央の屈曲部27Aは、この傾斜面63上に設置される。なお、エアバッグ装置取付部25B、25Cの場合、傾斜面63はy方向に延在しするよう設けられる(
図4参照)。
【0043】
図8に示すように、傾斜面63と、貫通溝62の傾斜方向は略同一である。したがって、トーションスプリング27の弾性変形しやすい方向と、貫通溝62に沿ったトーションスプリング27の一端27Bの移動可能方向とが一致している。これにより、トーションスプリングの設置方向と、一端の移動方向とが同一方向となるので、スムーズに移動して係合時に容易に取り付けできる。
【0044】
図5、
図8に矢印Aで示すように、トーションスプリング27の一端27Bは、ステアリングホイール20の回転軸方向との直交方向(y方向、z方向)から傾斜する傾斜方向に沿って移動可能に配置される。この傾斜方向は、
図5に矢印Aで示すように、フック45の先端部との距離がフック45の軸心側に進むほど相対的に大きく、フック45の遠心側に進むほど相対的に小さくなるよう設定される。傾斜角度は、例えば水平方向から12度程度である。
【0045】
上記の傾斜方向については、
図9(C)に示すように、フック45の先端部の座面45Dと傾斜面63との隙間が、フック45の軸心側が相対的に大きく、遠心側が小さくなる方向、とも定義できる。また、
図5などに示すように、トーションスプリング27の一端27Bが、ステアリングシャフト取付孔28を中心とする径方向において、差込穴26の中心よりも径方向内側の位置で差込穴26を貫通するように配置される構成では、径方向内側(ステアリングシャフト取付孔28側)に進むほどリテーナ41から離れる方向、とも定義できる。また、傾斜方向は、
図5に示すように、差込穴26を左側、ステアリングシャフト取付孔28を右側となる断面視において、筒状部61の端面やフック45の座面45Dの延在方向(yz平面)に対して、トーションスプリング27の一端27Bを中心として時計回り方向に回転した方向、とも定義できる。
【0046】
図9、
図10を参照して、フック45を差込穴26に差し込むときのトーションスプリング27の作用について説明する。
図9は、本実施形態におけるフック45とトーションスプリング27との係合過程を説明する図である。
図10は、比較例におけるフック45とトーションスプリング27との係合過程を説明する図である。
図9、
図10には共に(A)、(B)、(C)の3段階の状態が図示されており、各図の各段階(A)、(B)、(C)は対応する。
【0047】
本実施形態では、差込穴26の内部に配置されるトーションスプリング27の一端27Bは、貫通溝62の傾斜方向に沿って移動可能に設置されている。一方、比較例では、差込穴26の内部に配置されるトーションスプリング27の一端27Bは、差込穴26の軸心方向と直交する方向(
図10ではz方向)に移動可能に設置されている。
【0048】
本実施形態の取り付け工程では、まず
図9(A)に示すように、フック45の先端部が差込穴26に挿入される。
【0049】
次に、
図9(B)に示すように、フック45の先端のテーパ部45Aがトーションスプリング27の一端27Bに接触する。引き続きフック45の挿入が進むと、テーパ部45Aによってトーションスプリング27の一端27Bが押圧されて、矢印Bで示すように傾斜方向に沿って移動して、差込穴26の径方向外側に押し出される。このとき、トーションスプリング27の移動方向は水平方向ではなく傾斜するので、水平方向の場合と比較してテーパ部45Aの面の法線方向と近い方向となる。このため、比較的小さい外力で移動させることが可能となる。
【0050】
次に、
図9(C)に示すように、フック45のテーパ部45Aがトーションスプリング27の位置を通過すると、トーションスプリング27が弾性復帰して、矢印Cで示すように、テーパ部45Aより基端側の溝45Bに入る。これによりトーションスプリング27がフック45に係合され、フック45の先端部の抜けが防止される。
【0051】
比較例の取り付け工程では、まず
図10(A)に示すように、フック45の先端部が差込穴26に挿入される。
【0052】
次に、
図10(B)に示すように、フック45の先端のテーパ部45Aがトーションスプリング27の一端27Bに接触する。引き続きフック45の挿入が進むと、テーパ部45Aによってトーションスプリング27の一端27Bが押圧されて、矢印Dで示すように差込穴26の軸線方向と直交する径方向(z方向)に沿って移動して、差込穴26の径方向外側に押し出される。このとき、トーションスプリング27の移動方向は、本実施形態の傾斜方向の場合と比較してテーパ部45Aの面の法線方向と遠い方向となる。このため、比較的大きい外力で移動させる必要がある。
【0053】
次に、
図10(C)に示すように、フック45のテーパ部45Aがトーションスプリング27の位置を通過すると、トーションスプリング27が弾性復帰して、矢印Eで示すように、テーパ部45Aより基端側の溝45Bに入る。これによりトーションスプリング27がフック45に係合され、フック45の先端部の抜けが防止される。
【0054】
図9に示したように、トーションスプリング27が傾斜方向に移動可能な構成では、トーションスプリング27を径方向外側に移動させるために付加する外力を相対的に小さくでき、フック先端部のテーパ部45Aに対してトーションスプリング27が避けるやすくできるので、フック45とトーションスプリング27との係合が容易となる。したがって、本実施形態に係るステアリングホイール20は、より簡易にエアバッグ装置40を取り付けることができる。
【0055】
次に、
図11を参照して、トーションスプリング27の作用について説明する。
図11は、本実施形態におけるフック45とトーションスプリング27との関係を説明する図である。
【0056】
本実施形態では、差込穴26の内部に配置されるトーションスプリング27の一端27Bは、貫通溝62の傾斜方向に沿って移動可能に設置されている。
【0057】
エアバッグ装置40のフック45は、多少上下や左右に揺れることが起こり得る。この場合、
図11に示すように、フック45がx方向に対して傾斜した状態で、外力Fにより差込穴26の軸線方向(x負方向)に沿ってフック45が引っ張られる状況が起こり得る。
【0058】
このような状況が生じた場合、
図11に示すように、フック45の基部側がトーションスプリング27の一端27Bが配置される側(
図11ではz正方向側)に傾斜する場合、外力Fによって一端27Bが受けるx方向の荷重fによって、テーパ部45Aの座面45Dの径方向外側に向けて分力f2が発生する。この分力f2によって、一端27Bには径方向外側(z正方向側)に移動するように力が付加される。
【0059】
ここで、本実施形態の構成では、トーションスプリング27の一端27Bが上述の傾斜方向に沿って移動可能であり、すなわち傾斜方向に延在して形成される貫通溝62に沿って移動可能である。このため、
図11に示すように、一端27Bが分力f2を受けて径方向外側(z正方向側)に移動しようとしても、貫通溝62の内壁がz方向と交差する方向に延在するため、
図11に点線で示すように一端27Bが貫通溝62の内壁に突き当たって、これにより矢印Iで示すように径方向内側に押し戻される。この結果、トーションスプリング27とフック45とをより強固に係合することが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態では、3つのエアバッグ装置取付部25A、25B、25Cのすべてにおいて、差込穴26の内部に配置されるトーションスプリング27の一端27Bが差込穴26の径方向に対して傾斜する方向に移動可能に設置される構成を例示した。3つのエアバッグ装置取付部25A、25B、25Cの少なくとも一部にこの構成を適用してもよい。この場合、特にz負方向側、すなわち円環状のステアリングホイール20の6時の方向に配置されるエアバッグ装置取付部25Aに適用するのが好ましい。
【0061】
図12は、ダンパ装置50の設置位置の変形例を示す断面図である。
図12の断面図は、
図5に対応する。
図12に示すように、ダンパ装置50が篏合される孔が設けられる固定要素は、ステアリングホイール本体21であってもよい。
図12の例では、エアバッグ装置取付部25Aの差込穴26が、「ダンパ装置50が篏合される孔」となる。この場合、差込穴26の内縁がダンパ装置50のラバー52に篏合される。一方、ダンパ装置50のフック45は、リテーナ41の孔47に挿入されて連結される。すなわち
図12の例では、
図1~
図11に示した構成と比較して、ダンパ装置50の取り付け方向がx方向に沿って反対になっている。
【0062】
図12の構成の場合、トーションスプリング27の一端27Bは、リテーナ41の孔47と、ダンパ装置50のフック45の先端のテーパ部45A部との間に配置される。この場合、
図12に矢印Jで示すように、トーションスプリング27の一端27Bは、
図5に示した矢印Aとはz軸に対して線対称となる傾斜方向に移動可能に設置される。
【0063】
図12の構成では、リテーナ41の孔47にフック45の先端部が挿通されて、孔47と、孔47を貫通したフック45の先端部との間に、このリテーナ41に設置されるトーションスプリング27の一端27Bが介在することによって、リテーナ41と連結される。すなわち
図12の例では、リテーナ41の孔47が、フック45の先端部が挿通される挿通孔として機能する。
【0064】
図12の構成においても、
図5に示した構成と同様に、ダンパ装置50は、ラバー52を設けない構成でもよい。この場合、例えばフック45の基部の周面にラバー52と同様の溝を設け、この溝にステアリングホイール本体21の差込穴26の内縁が篏合される。また、フック45の基部が例えばステアリングホイール本体21にかしめられて固定されるなど、篏合以外の固定手法により固定される構成でもよい。フック45がステアリングホイール本体21と一体的に形成される構成でもよい。この構成では、リテーナ41とステアリングホイール本体21とは、ダンパ装置50を介さず、フック45などの剛体の棒状部材により連結される。この場合、ダンパ装置50の機能は設けられない。
【0065】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0066】
20 ステアリングホイール
21 ステアリングホイール本体
25A、25B、25C エアバッグ装置取付部(固定要素)
26 差込穴
28 ステアリングシャフト取付孔
40 エアバッグ装置
41 リテーナ(固定要素)
47 孔(挿通孔)
50 ダンパ装置
26 差込穴(挿通孔)
27 トーションスプリング
27B トーションスプリングの一端
45 フック
45A テーパ部(フックの先端部)
45C フランジ(フックの基端部)
45D 座面
61 筒状部
62 貫通溝
63 傾斜面