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特開2023-151805空調モジュール及び空調モジュールの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151805
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】空調モジュール及び空調モジュールの設置方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0007 20190101AFI20231005BHJP
   F24F 1/005 20190101ALI20231005BHJP
   F24F 1/0047 20190101ALI20231005BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20231005BHJP
   F24F 1/0317 20190101ALI20231005BHJP
   F24F 1/0011 20190101ALI20231005BHJP
【FI】
F24F1/0007
F24F1/005
F24F1/0047
F24F1/0007 401A
F24F1/0007 401C
F24F1/0317
F24F1/0011
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061631
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三橋 太
(72)【発明者】
【氏名】宮谷 政和
(72)【発明者】
【氏名】込山 治良
(72)【発明者】
【氏名】中 悟史
【テーマコード(参考)】
3L049
3L051
【Fターム(参考)】
3L049BA00
3L049BB03
3L049BB20
3L051BG05
3L051BJ10
(57)【要約】
【課題】床面付近に配置される給気ユニット及びこれに連結される天吊り空調機の設置が容易な空調モジュール及び空調モジュールの設置方法を提供することを課題とする。
【解決手段】空調対象空間の床面に設置される空調モジュールであって、床面付近に配置される給気ユニットを内置可能な床側フレームと、給気ユニットに連結される天吊り空調機を内側で保持しており、床側フレームの上部に対して取り付け可能な天井側フレームと、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間の床面に設置される空調モジュールであって、
前記床面付近に配置される給気ユニットを内置可能な床側フレームと、
前記給気ユニットに連結される天吊り空調機を内側で保持しており、前記床側フレームの上部に対して取り付け可能な天井側フレームと、を備える、
空調モジュール。
【請求項2】
前記天井側フレームは、前記天吊り空調機に連結される吸気口ユニットを内側で更に保持する、
請求項1に記載の空調モジュール。
【請求項3】
前記天吊り空調機は、全体的に直方体の外形を有すると共に、前記吸気口ユニットが連結される吸込口を前記直方体の側面に有しており、
前記天井側フレームは、前記吸気口が前記給気ユニットの吹き出し方向である正面方向に対し真横へ向く姿勢で前記天吊り空調機を保持している、
請求項2に記載の空調モジュール。
【請求項4】
前記給気ユニットは、前記床側フレームにおいて、前記天吊り空調機の前記吸気口が向いている方向の反対方向寄りに配置されており、
前記床側フレームは、前記給気ユニットが配置されていない箇所に棚板を有する、
請求項3に記載の空調モジュール。
【請求項5】
前記床側フレームは、前記空調対象空間の壁面に背側が沿うように立設されるフレームであり、
前記天井側フレームは、前記床側フレームの上部において前記床側フレームの手前側へ向けて突き出る状態で前記床側フレームの上部に取り付けられる、
請求項1に記載の空調モジュール。
【請求項6】
前記給気ユニットは、前記天吊り空調機から供給される低温空気に旋回成分を与えるガイドフィンを口内に設けた円形状の給気口を正面に複数設けた置換空調用のユニットである、
請求項1に記載の空調モジュール。
【請求項7】
工事現場の建物に請求項1から6の何れか一項に記載の空調モジュールを設置する空調モジュールの設置方法であって、
前記床側フレームと前記天井側フレームを前記工事現場外で各々組み立てる組立作業工程と、
前記床側フレームと前記天井側フレームと前記工事現場に運搬する運搬工程と、
前記床側フレームを前記床面に固定した後、前記天井側フレームを前記床側フレームの上部に取り付ける取付工程と、を有する、
空調モジュールの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調モジュール及び空調モジュールの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の空調システムが提案されている(例えば、特許文献1-2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5780892号公報
【特許文献2】特許第4421347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物内に設置される空調機器の形態としては、例えば、圧縮機や凝縮器等で構成される冷凍サイクルを機内に設けたパッケージクーラー、冷凍機で製造された冷水を機内のコイルに通水するファンコイルユニット、その他各種のものが挙げられる。また、空調対象空間における気流の形態としては、給気口から空気を勢いよく吹き出して室内の空気を強制循環させるものや、室内の温度成層が保たれるように低温空気を低速で吹き出す置換空調などが挙げられる。
【0005】
市販の空調機器の多くは、筐体の適宜の箇所に設けた給気口から空気を吹き出す形態となっている。よって、例えば、市場に多く流通しており、比較的安価に入手可能な天吊り空調機で置換空調を実現したい場合には、床面付近への配置が必要な置換空調用の給気ユニットを別途用意し、天井付近へ配置される天吊り空調機と床面付近に配置される給気ユニットとをダクトで繋ぐ必要があり、現場作業の低減が困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、床面付近に配置される給気ユニット及びこれに連結される天吊り空調機の設置が容易な空調モジュール及び空調モジュールの設置方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、床面付近に配置される給気ユニットを内置可能な床側フレームの上部へ、天吊り空調機を内側で保持する天井側フレームを取り付けることにした。
【0008】
詳細には、本発明は、空調対象空間の床面に設置される空調モジュールであって、床面付近に配置される給気ユニットを内置可能な床側フレームと、給気ユニットに連結される天吊り空調機を内側で保持しており、床側フレームの上部に対して取り付け可能な天井側フレームと、を備える。
【0009】
ここで、床面付近に配置される給気ユニットとは、床面に直接設置される形態のみならず、床面に間接的に設置される形態を含む概念である。また、モジュールとは、床側フレームと天井側フレームとを一体化した状態に限定するものではなく、床側フレームと天井側フレームとを別々にした状態を含む概念である。
【0010】
上記の空調モジュールであれば、床面に設置した床側フレームの上部に天井側フレームを取り付けるだけで、床面付近へ設置する給気ユニットの上部に、天井からの吊り下げを
前提とした設計の天吊り空調機を固定することができる。よって、例えば、比較的安価に入手可能な天井吊り下げ型の空調機で置換空調を実現したいような場合であっても、床側フレームの上部に天井側フレームを固定するという比較的簡単な作業で、床面付近への設置が必要な置換空調用の給気ユニットと、天井からの吊り下げを前提とした設計の天吊り空調機の設置を完了することができる。したがって、上記の空調モジュールであれば、現場作業を極めて簡略化可能であると言える。
【0011】
なお、天井側フレームは、天吊り空調機に連結される吸気口ユニットを内側で更に保持するものであってもよい。これによれば、床側フレームの上部に天井側フレームを固定するという比較的簡単な作業で、天吊り空調機と吸気口ユニットの両方の設置を完了することができる。
【0012】
また、天吊り空調機は、全体的に直方体の外形を有すると共に、吸気口ユニットが連結される吸込口を直方体の側面に有しており、天井側フレームは、吸込口が給気ユニットの吹き出し方向である正面方向に対し真横へ向く姿勢で天吊り空調機を保持していてもよい。これによれば、床側フレームの上部に取り付けた状態における天井側フレームの重心部分を床側フレームの真上へ近づけることが容易になる。
【0013】
また、給気ユニットは、床側フレームにおいて、天吊り空調機の吸気口が向いている方向の反対方向寄りに配置されており、床側フレームは、給気ユニットが配置されていない箇所に棚板を有していてもよい。これによれば、床側フレームの空きスペースを有効活用することができる。
【0014】
また、床側フレームは、空調対象空間の壁面に背側が沿うように立設されるフレームであり、天井側フレームは、床側フレームの上部において床側フレームの手前側へ向けて突き出る状態で床側フレームの上部に取り付けられていてもよい。これによれば、床側フレームを壁面へ寄せた状態で設置できるため、空調モジュールが物理的な障害物になることを抑制可能である。
【0015】
また、給気ユニットは、天吊り空調機から供給される低温空気に旋回成分を与えるガイドフィンを口内に設けた円形状の給気口を正面に複数設けた置換空調用のユニットであってもよい。これによれば、空調対象空間内の温度成層を保ちながらドラフト感の無い置換空調を実現することができる。
【0016】
また、本発明は、方法の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、工事現場の建物に上記何れかに記載の空調モジュールを設置する空調モジュールの設置方法であって、床側フレームと天井側フレームを工事現場外で各々組み立てる組立作業工程と、床側フレームと天井側フレームと工事現場に運搬する運搬工程と、床側フレームを床面に固定した後、天井側フレームを床側フレームの上部に取り付ける取付工程と、を有する方法であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記の空調モジュール及び空調モジュールの設置方法であれば、床面付近に配置される給気ユニット及びこれに連結される天吊り空調機の設置が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る空調モジュールを斜め上から見た図である。
図2図2は、実施形態に係る空調モジュールを斜め下から見た図である。
図3図3は、空調モジュールによる置換空調のイメージを表した図である。
図4図4は、床側フレームを示した図である。
図5図5は、天井側フレームを示した図である。
図6図6は、空調モジュールの設置方法を示した第1の図である。
図7図7は、空調モジュールの設置方法を示した第2の図である。
図8図8は、変形例に係る空調モジュールを斜め上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0020】
図1は、実施形態に係る空調モジュールを斜め上から見た図である。また、図2は、実施形態に係る空調モジュールを斜め下から見た図である。図1では、空調モジュール1を空調対象空間Sの壁面Wに背側が沿うようにして床面Fから立設した状態を示している。また、図2では、空調モジュール1が設置されている床面Fよりも下側から、床面Fを透視した状態で示している。
【0021】
空調モジュール1は、図1及び図2に示されるように、空調対象空間Sの床面Fに設置される空調モジュールであり、天井側フレーム2と床側フレーム3とを備える。天井側フレーム2は、天吊り空調機21や還気チャンバー22、吸気口ユニット26を内側で保持しており、床側フレーム3の上部に取り付けられる。床側フレーム3は、給気ユニット4を内置可能であり、アンカー35で床面Fに固定される(アンカー35は、床面Fに埋め込まれているので大部分が視認不能であるが、図1では理解を容易にするために図示している)。天井側フレーム2と床側フレーム3は、何れも全体的に直方体状のフレームである。よって、直方体状の天井側フレーム2と床側フレーム3を別々に運搬する際、両者が一体になっているものに比べて嵩張らないため、運搬が容易である。
【0022】
空調モジュール1は、吸気口ユニット26の吸気口27から吸引した空調対象空間Sの空気を天吊り空調機21で冷却し、還気チャンバー22やダクトを経由して給気ユニット4の正面の給気口42から低温空気を吹き出す置換空調機である。このため、吸気口27が空調対象空間S内の比較的高い箇所に配置され、給気口42が空調対象空間S内の比較的低い箇所に配置されるように、吸気口27を有する吸気口ユニット26を天井側フレーム2が保持し、床面F付近に設置される給気ユニット4を床側フレーム3が内置可能となっている。
【0023】
天吊り空調機21は、送風用の電動ファンや冷却コイルを内蔵したファンコイルユニットであり、吸気口ユニット26の吸気口27から吸い込んだ空気を冷却し、還気チャンバー22へ送る。吸気口27にはフィルターが配置されている。よって、空調対象空間S内を浮遊する浮遊物は天吊り空調機21内に侵入しない。天吊り空調機21の外装部分には、冷却コイルへ繋がる冷水配管や電動式の弁、ドレン配管、電源ケーブル、コントローラへ繋がる制御用配線等が設けられている。よって、天井側フレーム2の天井側フレーム構造体25は、天吊り空調機21や還気チャンバー22、吸気口ユニット26を保持する役割を果たす他に、天吊り空調機21の外装部分に設けられているこれらの付帯部品類を天井側フレーム2の運搬時に周囲から保護する役割も果たす。
【0024】
天吊り空調機21は、市販の天井吊り下げ型の空調機を流用できる。このため、天吊り空調機21は比較的安価に調達可能である。このような市販の天吊り空調機は、通常、建物の上部階あるいは屋上の床面を構成する床材と、天井面を構成する化粧用の天井パネルとの間にある狭小の天井裏空間に設置される。よって、天吊り空調機21は、図1及び図2に示されるように、基本的に鉛直方向の寸法よりも水平方向の寸法の方が長い横長の外観形状となっている。したがって、天吊り空調機21を内置する天井側フレーム構造体25についても、鉛直方向の寸法よりも水平方向の寸法の方が長い横長の外観形状となって
いる。
【0025】
天井側フレーム2は、図1及び図2に示すように、直方体状の天吊り空調機21の筐体側面にある排気口に還気チャンバー22を連結し、天吊り空調機21の筐体側面のうち排気口の反対側に位置する吸込口に吸気口ユニット26を連結している。よって、天井側フレーム2は、天吊り空調機21を天井側フレーム構造体25の中心部に配置し、吸気口ユニット26と還気チャンバー22で天吊り空調機21を挟み込むような形態となっている。天吊り空調機21と吸気口ユニット26との連結部分、及び、還気チャンバー22と天吊り空調機21との連結部分は、柔接続されており、多少の相対移動が可能なようになっている。すなわち、一方の開口部に嵌め込まれる他方の開口部がやや小さく製作されており、開口部同士の隙間を気密用の柔軟なスポンジパッキン等のシール材で埋める形態を採ることにより、多少の相対移動が可能な柔接続構造となっている。このため、天井側フレーム構造体25に天吊り空調機21や吸気口ユニット26、還気チャンバー22を固定する際、天吊り空調機21と吸気口ユニット26と還気チャンバー22の相対的な位置関係に多少の誤差が生じても、柔接続構造により誤差を吸収可能である。
【0026】
そして、天吊り空調機21は、建物に設けられた吊りボルト等の吊り下げ金具によって吊り下げ状態で使用されることを想定した仕様となっている。よって、天井側フレーム構造体25への天吊り空調機21の固定は、天吊り空調機21の外装面に設けられた吊り下げ用金具の取付部分を使うことになる。そして、天吊り空調機21が電動ファンを内蔵しているため、取付部分には天吊り空調機21から天井側フレーム構造体25への振動の伝達を遮断するための防振ゴム等が使われることになる。このため、天吊り空調機21は、天井側フレーム構造体25に対してある程度相対的な動きを許容される必要がある。一方、吸気口ユニット26や還気チャンバー22は、天吊り空調機21のように電動ファン等の駆動部を内蔵するものではないため、基本的に振動を発しない。よって、吸気口ユニット26や還気チャンバー22は、防振ゴムといった振動伝達を遮断する部品を使わずに天井側フレーム構造体25へ固定される。そこで、天吊り空調機21を吸気口ユニット26や還気チャンバー22に対して柔接続構造とすることにより、天吊り空調機21が電動ファンの振動や地震等により動いても、天吊り空調機21と吸気口ユニット26と還気チャンバー22の接続部分に支障を来さないようにしている。
【0027】
ところで、天吊り空調機21と還気チャンバー22と吸気口ユニット26を一体化した天井側フレーム2は、天吊り空調機21と還気チャンバー22と吸気口ユニット26のそれぞれの単体と比べると、当然に重量が大きい。よって、天井側フレーム2の運搬や床側フレーム3の上部への取り付けを考慮すると、天井側フレーム2全体の可及的な軽量化が望ましい。そこで、天井側フレーム2の天井側フレーム構造体25では、アルミニウム製のアングル材23が用いられている。このため、天井側フレーム構造体25を構成するアングル材23同士を締結する部分においても、アングル材23にリブプレート24をボルトで固定することにより、アングル材23同士を溶接する場合よりも十分な強度が発揮されるようにしている。
【0028】
床側フレーム3を構成する床側フレーム構造体31についても天井側フレーム構造体25と同様であり、天井側フレーム構造体25ではアルミニウム製のアングル材33が用いられている。このため、床側フレーム構造体31を構成するアングル材33同士を締結する部分においても、アングル材33にリブプレート32をボルトで固定することにより、アングル材33同士を溶接する場合よりも十分な強度が発揮されるようにしている。また、床側フレーム構造体31には天井側フレーム2の荷重が加わるため、より強度を高めるためにブレース材34が設けられている。
【0029】
給気ユニット4は、横幅や奥行きよりも高さの方が大きい直方体の筐体41と、筐体4
1の正面を形成するパネルに開口形成される複数の給気口42と、複数の給気口42全体を覆うように配置される多孔板43とを備える。そして、給気ユニット4には、天吊り空調機21から還気チャンバー22や接続ダクト等を通じて供給される低温空気が流入し、給気口42から給気ユニット4の前方へ向かって吹き出るようになっている。
【0030】
各給気口42には、空調対象空間S内に吹き出す低温空気に旋回成分を与えるための複数枚のガイドフィンがそれぞれ固定されている。各給気口42の中心軸回りにガイドフィンがプロペラのような形態で放射状に固定されることで、給気口42を通過する空気に旋回成分が付与される。この旋回成分は、隣り合う給気口42同士で相対する方向となっており、例えば、特定の給気口42で時計方向の旋回成分が付与される場合、隣の給気口42では半時計方向の旋回成分が付与される。これにより、各給気ユニット4の前方へ向かって給気口42から低温空気が低速で吹き出され、周囲の空気を誘引しながら空調対象空間S内へ流れる。そして、空調対象空間S内の温度成層を保ちながらドラフト感の無い置換空調が実現されることになる。このような給気ユニット4を用いれば、給気口42の周囲の空気が誘引されるので、給気口42から吹き出る空気による冷感を人へ感じさせないようにすることができる。よって、本実施形態であれば、旋回成分を付与せずに吹き出された空気で置換空調を行うような方式に比べて、空調対象空間S内に居る人に足元の冷感を感じさせないための再熱または吹き出し温度の下限設定といった対応策が不要である。
【0031】
図3は、空調モジュール1による置換空調のイメージを表した図である。空調モジュール1が作動すると、天井側フレーム2の吸気口ユニット26から吸引された空調対象空間S内の空気が天吊り空調機21において冷却され、低温空気となって給気ユニット4から吹き出る。給気ユニット4から吹き出た低温空気は、周囲の空気を誘引しながら低速で給気ユニット4から横方向へ流れる。そして、空調対象空間S内へ流れた低温空気は、空調対象空間S内に居る人の体温や機械類からの発熱等により徐々に昇温し、対流によりゆっくりと上昇する。そして、上昇した空気は、天井側フレーム2の吸気口ユニット26から再び吸引される。
【0032】
このような置換空調の仕組みに鑑みると、吸気口ユニット26の吸気口27は、例えば、床面Fから3000mm程度の高さに配置されることが好ましい。これよりも高い箇所へ吸気口27が配置されると、空調モジュール1において処理する空調の熱量が過大となり、空調モジュール1のランニングコストが増大する。また、これよりも低い箇所へ吸気口27が配置されると、空調対象空間Sに居る人に空調対象空間S上部の熱気を感じさせる可能性がある。
【0033】
また、空調モジュール1付近における人の通行に鑑みると、天井側フレーム2が人の頭部に触れない高さ(例えば、2.1m以上)となるように床側フレーム3の高さを設定することが好ましい。天井側フレーム2がこのような高さに配置されていれば、天井側フレーム2の下側を人が不自由なく通行可能である。
【0034】
ところで、上述したように、空調モジュール1は、天井側フレーム2が床側フレーム3の上部において床側フレーム3の手前側へ向けて突き出る状態で床側フレーム3の上部に取り付けられており、これにより、床側フレーム3が空調対象空間Sの壁面Wに沿うようにして床面Fに立設できるようになっている。これにより、空調対象空間Sにおいて空調モジュール1が物理的な障害物になることを抑制している。このため、床側フレーム3には、床側フレーム3の上部において床側フレーム3の手前側へ向けて突き出る状態となっている天井側フレーム2を支持するためのアングル材33Aが、床側フレーム構造体31から床側フレーム構造体31の前側で斜め上へ向かって延在するように設けられている。また、床側フレーム構造体31の上部と天井側フレーム構造体25との締結部分に加わる曲げ方向の荷重を少しでも緩和されるように、天井側フレーム2の重心が床側フレーム3
の真上へ近づくような配慮がなされている。
【0035】
すなわち、天吊り空調機21は、冷却コイルや電動ファンを内蔵しているため、吸気口ユニット26や還気チャンバー22よりも重量が大きい。このため、天井側フレーム2の重心は、天井側フレーム2内における天吊り空調機21の位置に依るところが大きい。そこで、本実施形態の空調モジュール1では、天吊り空調機21の吸込口が給気ユニット4の吹き出し方向である正面方向に対し真横へ向く姿勢で天吊り空調機21を天井側フレーム2が保持している。そして、天吊り空調機21を挟むように配置される吸気口ユニット26と還気チャンバー22も、空調モジュール1の正面方向に対し横方向に沿って順に並ぶ形態となっている。このため、天吊り空調機21を天井側フレーム2内において空調モジュール1の背側(壁面W側)へ近づけた位置に配置することが可能となっている。これにより、例えば、吸気口ユニット26と天吊り空調機21と還気チャンバー22を、空調モジュール1の正面側から背側へ向かって順に並べた形態、すなわち、吸気口ユニット26の吸気口27を空調モジュール1の正面方向へ向け、天吊り空調機21を還気チャンバー22よりも空調モジュール1の正面側へ配置した形態に比べて、天井側フレーム2の重心を床側フレーム3の真上へ近づけた状態にすることができる。したがって、床側フレーム構造体31の構造的な強度をより容易に確保することが可能となる。
【0036】
<空調モジュール1の設置方法>
上記実施形態の空調モジュール1は、次のような方法で工事現場の建物に設置可能である。図4は、床側フレーム3を示した図である。また、図5は、天井側フレーム2を示した図である。上記実施形態の空調モジュール1は、例えば、工事現場とは別の場所(例えば、工場等)において天井側フレーム2と床側フレーム3を別々の状態で製作して運搬し、工事現場で組み付け可能である。
【0037】
すなわち、図4に示されるように、床側フレーム3については、工場等において、リブプレート32とアングル材33とブレース材34で床側フレーム構造体31を構成した状態にしておく。アングル材33Aは、リブプレート32Aを介して床側フレーム構造体31へ回動可能な状態で取り付けておき、運搬時はアングル材33Aが遊動しないように床側フレーム構造体31へ仮固定しておくことが好ましい。空調モジュール1を工事現場へ複数設置する場合、複数の床側フレーム3を工場等で製作し、車両等で工事現場へ運搬する。
【0038】
また、図5に示されるように、天井側フレーム2についてはアングル材23とリブプレート24で天井側フレーム構造体25を構成すると共に、天吊り空調機21や還気チャンバー22、吸気口ユニット26を天井側フレーム構造体25へ取り付けておく。そして、空調モジュール1を工事現場へ複数設置する場合、複数の天井側フレーム2を工場等で製作し、車両等で工事現場へ運搬する。
【0039】
図6は、空調モジュール1の設置方法を示した第1の図である。天井側フレーム2や床側フレーム3が工事現場へ運搬されると、まず、壁面Wに背側を沿わせた状態で床側フレーム3を配置し、床側フレーム3の下部36を床面Fにアンカー35で固定する。また、床側フレーム3とは別体で運搬してきた給気ユニット4を、床側フレーム3に形成されている給気ユニット4用の収納部37に収めるように配置し、給気ユニット4を床面Fや床側フレーム3に固定する。給気ユニット4は、床面Fに対して直接固定してもよいし、何らかの部材を介して間接的に固定してもよい。
【0040】
なお、給気ユニット4は、給気ユニット4の給気口42から吹き出る空気の気流が床側フレーム構造体31のアングル材33等による影響を受けないように、収納部37内で適宜の奥行の位置に配置する。給気口42から吹き出る空気は、給気口42の正面方向から
やや広がっていくような形態で流れるため、フレーム構造体31のアングル材33が空気の進路よりもやや離れた位置(例えば、給気口42の正面方向に対し16度程度の開き角の範囲外)に配置されることが好ましい。
【0041】
図7は、空調モジュール1の設置方法を示した第2の図である。床側フレーム3の設置が完了すると、次に、天井側フレーム2を床側フレーム3の上部38にボルトやナットで固定する。また、アングル材33Aを天井側フレーム2の手前側に締結し、天井側フレーム2の手前側をアングル材33Aに支持させる。そして、還気チャンバー22と給気ユニット4とを、柔軟なフレキシブルダクト等で連結する。また、天吊り空調機21を制御するためのコントローラや温度センサを適宜の箇所へ配置し、冷水配管やドレン配管等の接続を行う。温度センサは、床側フレーム3に取り付ける場合、給気ユニット4の給気口42から吹き出る空気が直に当たらない箇所へ取り付けるのが好ましい。置換空調における温度センサの設置箇所としては、検出温度が人の体感温度と同等になる箇所、すなわち、床面Fから1.1m程度の高さが好適である。
【0042】
以上により、工事現場である空調対象空間Sに空調モジュール1を設置する作業が完了する。空調モジュール1であれば、比較的安価に入手可能な天井吊り下げ型の空調機で置換空調を実現したい場合に、床側フレーム3の上部38に天井側フレーム2を固定するという比較的簡単な作業で、床面F付近への設置が必要な置換空調用の給気ユニット4と、天井からの吊り下げを前提とした設計の天吊り空調機21の設置を完了することができる。よって、天吊り空調機21を天井に吊り下げ、天井から吊り下げた天吊り空調機21と床面Fに設置した給気ユニット4とをダクトで繋ぐような形態に比べて、現場作業を極めて簡略化可能である。
【0043】
<変形例>
なお、上記実施形態の空調モジュール1は、例えば、次のように変形してもよい。
【0044】
図8は、変形例に係る空調モジュールを斜め上から見た図である。空調モジュール1は、例えば、図8に示すように、床側フレーム3に棚板39を複数設けた形態であってもよい。床側フレーム3のうち給気ユニット4を配置する箇所以外の部分は、アングル材33で構成される床側フレーム構造体31であるが故に空きスペースとなっている。よって、床側フレーム構造体31に棚板39を設けることで、このような空きスペースを収納スペースとして有効活用することが可能となる。
【0045】
<その他の変形例>
また、上記実施形態では、吸気口27が空調モジュール1の正面に向かって右方向へ開口する形態となっていたが、吸気口ユニット26や天吊り空調機21、還気チャンバー22、給気ユニット4の位置関係を全て左右逆にすることで、吸気口27が空調モジュール1の正面に向かって左方向へ開口する形態にしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、天井側フレーム2が床側フレーム3の上側で床側フレーム3の手前側へ突き出る形態となっていたが、天井側フレーム2は、例えば、天井側フレーム2の重心部分が床側フレーム3の真上に位置するような形態で床側フレーム3へ取り付けられてもよい。これによれば、床側フレーム3が床面Fの有効スペースを減らすことになるが、空調モジュール1全体の重心のバランスが安定する。
【0047】
その他、空調モジュール1は、適宜変形してもよい。空調モジュール1は、例えば、化粧板等を取り付けて天井側フレーム構造体25や床側フレーム構造体31を覆い隠したようなものであってもよい。また、空調モジュール1は、床面Fにアンカー35で固定するのみならず、壁面Wにもアンカーで固定してよい。また、空調モジュール1は、置換空調
ではなく、吸気口から空気を勢いよく吹き出して室内の空気を強制循環させるものであってもよい。また、空調モジュール1は、天井側フレーム2と床側フレーム3が別体構造ではなく一体構造のフレームで形成されていてもよい。一体構造のフレームであれば、現場における組み付け作業が減るため、現場作業の工数を削減することができる。
【符号の説明】
【0048】
S・・空調対象空間
W・・壁面
F・・床面
1・・空調モジュール
2・・天井側フレーム
3・・床側フレーム
4・・給気ユニット
21・・天吊り空調機
22・・還気チャンバー
23・・アングル材
24・・リブプレート
25・・天井側フレーム構造体
26・・吸気口ユニット
27・・吸気口
31・・床側フレーム構造体
32,32A・・リブプレート
33,33A・・アングル材
34・・ブレース材
35・・アンカー
36・・下部
37・・収納部
38・・上部
39・・棚板
41・・筐体
42・・給気口
43・・多孔板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8