(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151813
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231005BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 201
B41J2/205
B41J2/01 211
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061641
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏史
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB08
2C056EB13
2C056EB29
2C056EB37
2C056EC07
2C056EC11
2C056EC26
2C056EC31
2C056EC72
2C056EC74
2C056EC78
2C056EC79
2C056EC80
2C056ED01
2C056ED09
2C056FA04
2C056FA10
2C056FB10
2C057AF21
2C057AL22
2C057AM15
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
2C057CA01
2C057CA09
(57)【要約】
【課題】ユーザが望むように見える画像を形成することが可能な液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出装置は、吐出面と平行な平行面および吐出面に対して傾斜した傾斜面を含む被吐出面を有する被印刷媒体に画像データに基づいて液滴を吐出する吐出ヘッドと、吐出面と平行面との距離、および吐出面と傾斜面との距離を検出する距離検出装置と、制御装置とを備え、制御装置は、距離検出装置による検出結果から液滴を吐出すべき被吐出面が傾斜面である場合に、傾斜面に対する液滴の吐出制御に関する複数の印刷モードのうちユーザにより選択された印刷モードに関する情報を取得し、ユーザにより選択された印刷モードに基づき傾斜面に対する液滴の吐出制御を行う。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出面と平行な平行面および前記吐出面に対して傾斜した傾斜面を含む被吐出面を有する被印刷媒体に画像データに基づいて液滴を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出面と前記平行面との距離、および前記吐出面と前記傾斜面との距離を検出する距離検出装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記距離検出装置による検出結果から前記液滴を吐出すべき前記被吐出面が前記傾斜面である場合に、前記傾斜面に対する前記液滴の吐出制御に関する複数の印刷モードのうちユーザにより選択された印刷モードに関する情報を取得し、ユーザにより選択された前記印刷モードに基づき前記傾斜面に対する前記液滴の吐出制御を行う、液滴吐出装置。
【請求項2】
前記複数の印刷モードは、
前記傾斜面において隣り合う前記液滴同士の、前記平行面と平行な第1方向におけるピッチが、前記平行面において隣り合う前記液滴同士の、前記第1方向におけるピッチと同じである第1印刷モード、および、
前記傾斜面において隣り合う前記液滴同士の、前記傾斜面と平行な第2方向におけるピッチが、前記平行面において隣り合う前記液滴同士の、前記第1方向におけるピッチと同じである第2印刷モードを含む、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第2印刷モードにおいて、前記傾斜面が前記吐出面と成す角度に応じて、前記傾斜面の、前記吐出面に垂直な方向における印刷解像度を変更するように前記吐出ヘッドの動作を制御する、請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記吐出面と成す角度が第1角度である第1傾斜面と、前記吐出面と成す角度が前記第1角度よりも大きい第2角度である第2傾斜面とを含み、
前記制御装置は、前記第2印刷モードにおいて、前記第2傾斜面の前記印刷解像度が前記第1傾斜面の前記印刷解像度よりも高くなるように前記吐出ヘッドの動作を制御する、請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記吐出ヘッドを搭載し、移動方向に移動するキャリッジをさらに備え、
前記吐出ヘッドは、前記被印刷媒体上に前記液滴を吐出するノズルおよび前記ノズルに連通した圧力室の液体に圧力を付与するアクチュエータを有し、
前記制御装置は、前記第2印刷モードにおいて、前記第2傾斜面の前記印刷解像度を前記第1傾斜面の前記印刷解像度よりも高くする際に、前記キャリッジの移動速度を前記第1傾斜面に対する印刷時よりも低下させ、又は、前記アクチュエータを駆動する駆動波形における1駆動周期内の吐出パルスの数を前記第1傾斜面に対する印刷時よりも多くする、請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記複数の印刷モードは、前記傾斜面に吐出すべき前記液滴の体積が前記平行面に吐出すべき前記液滴の体積よりも大きくなるように前記吐出ヘッドの動作が制御される第3印刷モードを含む、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第3印刷モードにおいて、前記平行面に吐出すべき前記液滴の体積よりも大きい体積の前記液滴を前記傾斜面に吐出する処理の代わりに又は当該処理と併せて、前記傾斜面に吐出すべき前記液滴の単位面積当たりの個数が前記平行面に吐出すべき前記液滴の単位面積当たりの個数よりも多くなるように前記吐出ヘッドの動作を制御する、請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第3印刷モードにおいて、前記傾斜面が前記吐出面と成す角度に応じて前記傾斜面に吐出すべき前記液滴の体積又は前記液滴の個数が変わるように前記吐出ヘッドの動作を制御する、請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記傾斜面は、前記吐出面と成す角度が第1角度である第1傾斜面と、前記吐出面と成す角度が前記第1角度よりも大きい第2角度である第2傾斜面とを含み、
前記制御装置は、前記第3印刷モードにおいて、前記第2傾斜面に吐出すべき前記液滴の体積が前記第1傾斜面に吐出すべき前記液滴の体積よりも大きくなるように、又は、前記第2傾斜面に吐出すべき前記液滴の個数が前記第1傾斜面に吐出すべき前記液滴の個数よりも多くなるように前記吐出ヘッドの動作を制御する、請求項8に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記吐出ヘッドを搭載して移動方向に移動するキャリッジと、前記被印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送部とをさらに備え、
前記被印刷媒体の前記傾斜面および前記平行面は前記搬送方向に沿って設けられ、
前記制御装置は、前記傾斜面に対して複数のパス印字を行うように前記キャリッジの動作および前記吐出ヘッドの動作を制御する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記傾斜面に対するパス印字の回数が前記平行面に対するパス印字の回数よりも多くなるように前記キャリッジの動作および前記吐出ヘッドの動作を制御する、請求項10に記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
前記制御装置は、ユーザが前記複数の印刷モードのうちの何れかを選択した後に、前記被印刷媒体における印字態様を示すレビュー画面についての画像データを出力する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項13】
前記吐出ヘッドを搭載し、移動方向に移動するキャリッジをさらに備え、
前記制御装置は、前記キャリッジを前記移動方向へ移動させながら前記距離検出装置による前記距離の検出を行った後に前記画像データを出力する、請求項12に記載の液滴吐出装置。
【請求項14】
前記制御装置は、ユーザが、前記傾斜面の、前記吐出面に垂直な方向における印刷解像度を任意に入力した解像度入力情報を取得する、請求項12に記載の液滴吐出装置。
【請求項15】
前記吐出ヘッドを搭載し、移動方向に移動するキャリッジをさらに備え、
前記制御装置は、前記画像データに基づいて前記平行面に求められる印刷解像度と、前記キャリッジの移動分解能に基づき決まる前記平行面における最高印刷解像度との比率を基に、前記傾斜面に対する前記液滴の吐出制御を行う際における前記傾斜面と前記吐出面との成す角度の上限値を決定する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタ等の画像形成装置に用いられる液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置により液滴が吐出される被印刷媒体には、印刷用紙の他に、例えばマグカップおよびスマホケース等の立体物もある。このような立体物は傾斜面を有することがある。しかし、吐出ヘッドの吐出面から被印刷媒体までの距離が変化する立体物においては、当該距離に応じて液滴の着弾ずれが生じる。そのため、被印刷媒体における一部において、印刷された画像が間延びしてしまう。
【0003】
そこで、傾斜面に画像を形成する際に、画像データにおいて当該傾斜面に対応する画像の尺度を縮めることが開示されている(特許文献1参照)。傾斜面に対する画像の尺度を縮めることによって、当該傾斜面に垂直な方向から見た場合の画像を所望形状にすることができるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法により立体物の傾斜面に画像を印刷した場合でも、この画像を吐出面に垂直な方向から見た場合には当該画像が縮んで見えてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、ユーザが望むように見える画像を形成することが可能な液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液滴吐出装置は、吐出面と平行な平行面および前記吐出面に対して傾斜した傾斜面を含む被吐出面を有する被印刷媒体に画像データに基づいて液滴を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出面と前記平行面との距離、および前記吐出面と前記傾斜面との距離を検出する距離検出装置と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記距離検出装置による検出結果から前記液滴を吐出すべき前記被吐出面が前記傾斜面である場合に、前記傾斜面に対する前記液滴の吐出制御に関する複数の印刷モードのうちユーザにより選択された印刷モードに関する情報を取得し、ユーザにより選択された前記印刷モードに基づき前記傾斜面に対する前記液滴の吐出制御を行うものである。
【0008】
本発明に従えば、ユーザにより選択された印刷モードに基づき傾斜面に対して液滴が吐出されるため、当該傾斜面においてユーザが望む見え方をする画像を形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液滴を着弾させるべき領域であるのに当該液滴が着弾しない領域(空白部分)が生じないようにできる液滴吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置が設けられる画像形成装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置を示す平面図である。
【
図3】
図1の吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
【
図4】
図1の画像形成装置の構成要素を示すブロック図である。
【
図6】第1印刷モードについて説明するための図である。
【
図7】第1印刷モードに基づく被印刷媒体における印字態様を示すレビュー画面の図である。
【
図8】第2印刷モードについて説明するための図である。
【
図9】
図9Aは第2印刷モードにおいて平行面と垂直な方向から被印刷媒体を見た場合のレビュー画面の図であり、
図9Bは第2印刷モードにおいて傾斜面と垂直な方向から被印刷媒体を見た場合のレビュー画面の図である。
【
図10】
図10Aは傾斜面が吐出面と成す角度が第1角度である被印刷媒体を示す図であり、
図10Bは傾斜面が吐出面と成す角度が第1角度よりも大きい第2角度である被印刷媒体を示す図である。
【
図11】
図11Aは1駆動周期における吐出パルスの数が4つである駆動波形を示す図であり、
図11Bは1駆動周期における吐出パルスの数が5つである駆動波形を示す図である。
【
図12】第3印刷モードの一例について説明するための図である。
【
図13】第3印刷モードの他例について説明するための図である。
【
図14A】搬送方向に並んだ傾斜面および平行面における吐出制御を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る液滴吐出装置について図面を参照して説明する。以下に説明する液滴吐出装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置1aが設けられる画像形成装置1を示す斜視図である。
図1において、相互に直交する方向を、第1方向Ds、第2方向Dfおよび第3方向Dzとする。本実施形態では、例えば、第1方向Dsは後述するキャリッジ3の移動方向であり、第2方向Dfは後述する被印刷媒体Wの搬送方向であり、第3方向Dzは上下方向である。以下の説明では、Dsを移動方向と呼び、Dfを搬送方向と呼ぶ。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置1は、筐体2と、操作キー4と、表示部5と、被印刷媒体Wが配置されるプラテン6と、上部カバー7とを備える。プラテン6が搬送部に相当する。また、画像形成装置1は、吐出ヘッド10と、制御装置20(
図4)を含むコントローラユニット19とを有する
図2の液滴吐出装置1aを備える。吐出ヘッド10は、液滴として例えば紫外線硬化型のインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。
【0014】
筐体2は箱状に形成されている。筐体2は開口部2aを有する。筐体2には操作キー4が設けられている。また、操作キー4の近傍には表示部5が設けられている。操作キー4はユーザによる操作入力を受け付ける。表示部5は例えばタッチパネルで構成され、所定情報を表示する。表示部5の一部は操作キーとしても機能する。コントローラユニット19は、操作キー4からの入力又は図略の通信インタフェースを介する外部入力に基づき印刷機能を実現すると共に表示部5の表示を制御する。
【0015】
プラテン6は被印刷媒体Wを載置可能に構成されている。プラテン6は所定の厚みを有し、例えば搬送方向Dfを長手方向とする矩形状の板材により構成される。プラテン6は図略のプラテン支持台により、取り外し可能に支持されている。プラテン支持台は搬送モータ33(
図4)の駆動により被印刷媒体Wへの印刷を実行する印刷位置と被印刷媒体Wをプラテン6から取り外す着脱位置との間で搬送方向Dfに移動可能に構成される。これにより、プラテン6は被印刷媒体Wの被吐出面を吐出ヘッド10に対して搬送方向Dfに相対移動させる。印刷時にはプラテン6が搬送方向Dfに移動するため、プラテン6上に載置された被印刷媒体Wが搬送方向Dfに沿って搬送される。
【0016】
上部カバー7は、その端部を持ち上げると上方へ回動するように構成されている。これにより、筐体2の内部が露出する。
【0017】
図2に示すように、液滴吐出装置1aは、貯留タンク62、例えば2つの吐出ヘッド10(10A,10B)と2つの紫外線照射装置40(40A,40B)が搭載されたキャリッジ3、および一対のガイドレール67を備える。なお、2つの吐出ヘッド10と2つの紫外線照射装置40を設けることにしたが、これに限定されるものではなく、1つの吐出ヘッド10と1つの紫外線照射装置40を設けてもよい。
【0018】
キャリッジ3は、移動方向Dsに延在する一対のガイドレール67に支持され、当該ガイドレール67に沿って移動方向Dsに往復動する。これにより、2つの吐出ヘッド10(10A,10B)と2つの紫外線照射装置40(40A,40B)は移動方向Dsに往復動可能になっている。また、吐出ヘッド10はチューブ62aを介して貯留タンク62に接続される。
【0019】
本実施形態において、例えば、吐出ヘッド10Aは、カラーインクと総称されることがあるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色のインク滴を吐出する。以上の4色のインク滴が被印刷媒体Wに吐出されることで当該被印刷媒体Wにカラー画像が印刷される。一方、吐出ヘッド10Bは、ホワイト(W)のインク滴およびクリア(Cr)のインク滴を吐出する。被印刷媒体Wとして例えば布帛にカラー画像を印刷する際には、当該布帛の色や布帛の材質への影響を低減するために、下地インクとして白インクのインク滴が先に吐出され、当該白インクのインク滴の上にカラーインクのインク滴が吐出される。また、クリアインクのインク滴は光沢を付与する場合や印刷部分の保護を行う場合に吐出される。
【0020】
貯留タンク62にはインクが貯留されている。貯留タンク62はインクの種類ごとに設けられている。貯留タンク62は、例えば6つ設けられ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ、ホワイト、およびクリアのインクがそれぞれ貯留される。
【0021】
液滴吐出装置1aはさらにパージ部50およびワイプ部54を備える。パージ部50およびワイプ部54は、キャリッジ3の移動領域に重なるように一対のガイドレール67のうち移動方向Dsの一端側に配置される。
【0022】
パージ部50は、キャップ51、吸引ポンプ52および昇降機構53を有する。吸引ポンプ52はキャップ51に接続されている。昇降機構53は、吸引位置と待機位置との間でキャップ51を昇降する。待機位置では、吐出面NM(
図3)はキャップ51から離間する。一方、吸引位置では、吐出面NMがキャップ51に覆われ、密閉空間が形成される。キャップ51が吸引位置にあるときに吸引ポンプ52が駆動されると、上記密閉空間が吸引されて、後述のノズル孔121a(
図3)からインクが排出されるパージ処理が行われる。
【0023】
また、ワイプ部54は、2つのワイパー55,56、および移動機構57を有する。2つのワイパー55,56は移動機構57に支持されている。吐出面NMがこれらのワイパー55,56に対向する位置に配置された状態で移動機構57が搬送方向Dfに移動する。これにより、2つのワイパー55,56は搬送方向Dfに移動しつつワイプ動作(つまり吐出面NMの払拭)を行う。
【0024】
次に吐出ヘッド10の詳細構造について説明する。
図3に示すように、吐出ヘッド10は貯留タンク62からのインクを用いてインク滴を吐出する複数のノズル121を有する。吐出ヘッド10は流路形成体と容積変更部の積層体を有する。流路形成体には、その内部にインク流路が形成され、その下面である吐出面NMに複数のノズル孔121aが開口している。また、上記の容積変更部は、駆動されてインク流路の容積を変更する。このとき、ノズル孔121aではメニスカスが振動してインクが吐出される。
【0025】
吐出ヘッド10の上述の流路形成体は複数のプレートの積層体であり、容積変更部は振動板155およびアクチュエータ(圧電素子)160を含む。振動板155の上には後述の共通電極161が接続されている。
【0026】
複数のプレートは、下から順に、ノズルプレート146、スペーサプレート147、第1流路プレート148、第2流路プレート149、第3流路プレート150、第4流路プレート151、第5流路プレート152、第6流路プレート153、および第7流路プレート154を含んで積層されている。
【0027】
各プレートには大小種々の孔および溝が形成されている。各プレートが積層された流路形成体の内部では孔および溝が組み合わされて、複数のノズル121、複数の個別流路164およびマニホールド122がインク流路として形成されている。
【0028】
ノズル121はノズルプレート146を積層方向に貫通し形成されている。ノズルプレート146の吐出面NMには、ノズル121の先端である複数のノズル孔121aが搬送方向Dfに複数並んでノズル列を形成している。
【0029】
マニホールド122は、吐出圧力が付与される圧力室128に対してインクを供給する。マニホールド122は、搬送方向Dfに延在しており、複数の個別流路164の各一端にそれぞれ接続されている。すなわち、マニホールド122はインクの共通流路として機能する。マニホールド122は、第1流路プレート148~第4流路プレート151を積層方向に貫通した貫通孔および第5流路プレート152の下面から窪んだ窪みが積層方向に重なって形成されている。
【0030】
ノズルプレート146はスペーサプレート147の下方に配置されている。そのスペーサプレート147は例えばステンレス鋼材で形成される。スペーサプレート147は、例えばハーフエッチングによりノズルプレート146側の面からスペーサプレート147の厚み方向に凹むことで、ダンパ部147aを成す薄肉部分とダンパ空間147bとが形成される凹部145を有する。これにより、マニホールド122とノズルプレート146との間に、バッファー空間としてのダンパ空間147bが形成される。
【0031】
マニホールド122には供給ポート122aが連通している。供給ポート122aは例えば筒状に形成され、搬送方向Dfの一端に設けられている。なお、マニホールド122と供給ポート122aとは図略の流路により繋がっている。
【0032】
各個別流路164はマニホールド122にそれぞれ接続されている。個別流路164は、その上流端がマニホールド122に接続され、その下流端がノズル121の基端に接続されている。個別流路164は、第1連通孔125、個別絞り路である供給絞り路126、第2連通孔127、圧力室128、およびディセンダ129で構成されており、これらの構成要素はこの順で配置される。
【0033】
第1連通孔125は、その下端がマニホールド122の上端に接続し、マニホールド122から積層方向の上方に延び、第5流路プレート152における上側部分を積層方向に貫通している。
【0034】
供給絞り路126の上流端は第1連通孔125の上端に接続されている。供給絞り路126は、例えばハーフエッチングにより形成され、第6流路プレート153の下面から窪んだ溝により構成されている。また、第2連通孔127は、その上流端が供給絞り路126の下流端に接続され、供給絞り路126から積層方向の上方に延び、第6流路プレート153を積層方向に貫通して形成されている。
【0035】
圧力室128は、その上流端が第2連通孔127の下流端に接続されている。圧力室128は、第7流路プレート154を積層方向に貫通して形成されている。
【0036】
ディセンダ129は、スペーサプレート147、第1流路プレート148、第2流路プレート149、第3流路プレート150、第4流路プレート151、第5流路プレート152、および第6流路プレート153を積層方向に貫通して形成されている。ディセンダ129は、その上流端が圧力室128の下流端に接続され、下流端がノズル121の基端に接続されている。ノズル121は、例えば積層方向においてディセンダ129に重なり、幅方向においてディセンダ129の中央に配置されている。
【0037】
振動板155は、第7流路プレート154の上に積層されており、圧力室128の上端開口を覆っている。
【0038】
アクチュエータ160は、共通電極161、圧電層162および個別電極163を含み、これらはこの順で配置されている。共通電極161は振動板155の全面を覆っている。圧電層162は共通電極161の全面を覆っている。個別電極163は、圧力室128ごとに設けられ、圧電層162上に配置されている。1つの個別電極163、共通電極161および両電極で挟まれた部分の圧電層162により1つのアクチュエータ160が構成される。
【0039】
個別電極163はドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、制御装置20から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極163に印加する。これに対して、共通電極161は常にグランド電位に保持されている。このような構成において、圧電層162の活性部は駆動信号に応じて共通電極161および個別電極163と共に面方向に伸縮する。これに応じて、振動板155が協働して変形し、圧力室128の容積を増減する方向に変化する。これにより、インク滴をノズル121から吐出させる吐出圧力が圧力室128に付与される。
【0040】
吐出ヘッド10において、インクは、供給ポート122aを介してマニホールド122に流入すると、当該マニホールド122から第1連通孔125を介して供給絞り路126に流入し、供給絞り路126から第2連通孔127を介して圧力室128に流入する。その後、インクはディセンダ129を流れ、ノズル121に流入する。ここで、アクチュエータ160により圧力室128に吐出圧力が付与されると、インク滴がノズル孔121aから吐出される。
【0041】
図4に示すように、画像形成装置1は、上述の構成要素の他、コントローラユニット19、読取装置26、モータドライバIC30,31、ヘッドドライバIC32,35、搬送モータ33、キャリッジモータ34、照射装置ドライバIC36,37、パージドライバIC38、ワイプドライバIC39、および3Dカメラ58を備える。3Dカメラ58は距離検出装置に相当する。
【0042】
コントローラユニット19は、CPUで構成される制御装置20、記憶部(ROM21、RAM22、EEPROM23、HDD24)、およびASIC25を有する。制御装置20は、上記の各記憶部に接続されていると共に各ドライバIC30~32,35~39および表示部5を制御する。
【0043】
制御装置20は、ROM21に記憶された所定の処理プログラムを実行することにより、種々の機能を実行する。制御装置20は、コントローラユニット19に1つのプロセッサとして実装されていてもよいし、互いに協働する複数のプロセッサとして実装されていてもよい。処理プログラムは、コンピュータ読取可能な光磁気ディスク等又はUSBフラッシュメモリ等の記録媒体KBから読取装置26で読み出されてROM21に記憶される。RAM22には、外部から受信した画像データおよび制御装置20の演算結果等が記憶される。EEPROM23にはユーザが入力した各種の初期設定情報が格納されている。HDD24には特定情報などが記憶される。
【0044】
ASIC25には、モータドライバIC30,31と、ヘッドドライバIC32,35と、照射装置ドライバIC36,37と、パージドライバIC38と、ワイプドライバ39と、3Dカメラ58とが接続される。制御装置20は、ユーザから印刷ジョブを受け付けると、処理プログラムに基づいて画像記録指令をASIC25へ出力する。ASIC25は、画像記録指令に基づいて各ドライバIC30~32,35~39を駆動する。制御装置20は、モータドライバIC30により搬送モータ33を駆動することでプラテン6を搬送方向Dfに移動させる。制御装置20は、モータドライバIC31によりキャリッジモータ34を駆動することでキャリッジ3を移動方向Dsに移動させる。
【0045】
制御装置20は、外部装置等から取得した画像データを被吐出面にインク滴を吐出するための吐出データに変換する。制御装置20は、変換した吐出データに基づいてヘッドドライバIC32,35により吐出ヘッド10からインク滴を吐出させる。また、制御装置20は、照射装置ドライバIC36,37により紫外線照射装置40A,40Bの各発光ダイオードチップから紫外線を照射させる。制御装置20は、パージドライバIC38によりパージ部50の吸引ポンプ52および昇降機構53を駆動する。制御装置20は、ワイプドライバIC39によりワイプ部54の移動機構57を駆動する。また、3Dカメラ58は、吐出ヘッド10の吐出面NMと被印刷媒体Wの平行面HMとの距離H1(
図5)、および吐出面NMと傾斜面KM1,KM2との距離H2(
図5)を検出する。制御装置20は3Dカメラ58により検出された検出結果を取得する。
【0046】
図5に示すように、液滴吐出装置1aは立体物からなる被印刷媒体Wにもインク滴Dtを吐出することができる。被印刷媒体Wはインク滴Dtが吐出される被吐出面WMを有する。被吐出面WMは、吐出面NMと平行な平行面HMと当該吐出面NMに対して傾斜した傾斜面KM1,KM2とを含む。傾斜面KM1は、平行面HMと平行な第1方向D1において当該平行面HMの一方側に配置される。傾斜面KM2は、第1方向D1において平行面HMの他方側に配置される。
【0047】
吐出ヘッド10がインク滴Dtを吐出する際にキャリッジ3が移動方向Dsに移動するので、吐出ヘッド10から吐出されたインク滴Dtは吐出面NMに垂直な吐出方向Dvに沿って飛翔せずに、実際には吐出面NMに対して傾斜した方向に飛翔する。その結果、インク滴Dtの着弾ずれが生じる。そこで、
図5に示すように吐出方向Dvから見て、傾斜面KM1において隣り合うインク滴Dt同士のピッチPkと、平行面HMにおいて隣り合うインク滴Dt同士のピッチPhとが同じになるように吐出ヘッド10の動作を制御することが考えられる。しかし、傾斜面KM1に垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合に、傾斜面KM1に形成された画像が間延びして見えてしまうことがある。そこで、本実施形態の液滴吐出装置1aには、傾斜面KM1,KM2に対するインク滴Dtの吐出制御に関する複数の印刷モードが設けられている。ユーザは、印字開始前に操作キー4等を用いて複数の印刷モードのうちから一つの印刷モードを選択することができる。複数の印刷モードには、第1印刷モードと、第2印刷モードと、第3印刷モードがある。以下、各印刷モードについて説明する。
【0048】
図6は第1印刷モードについて説明するための図である。
図6の説明では、ユーザにより第1印刷モードが選択されたものとする。ユーザにより選択された第1印刷モードに基づく印刷が開始される前に、3Dカメラ58は吐出ヘッド10の吐出面NMと被印刷媒体Wの平行面HMとの距離、および吐出面NMと被印刷媒体Wの傾斜面KM1,KM2との距離を検出する。
【0049】
制御装置20は3Dカメラ58による検出結果を受け取る。制御装置20は、受け取った検出結果からインク滴Dtを吐出すべき被吐出面WMが傾斜面KM1,KM2である場合に、第1印刷モードに関して傾斜面KM1,KM2に対する情報をRAM22から取得し、当該第1印刷モードに基づき吐出制御を行う。後述の第2印刷モードおよび第3印刷モードも同じとする。
【0050】
第1印刷モードは、
図6に示すように傾斜面KM1,KM2において隣り合うインク滴Dt同士の、平行面HMと平行な第1方向D1におけるピッチP11が、平行面HMにおいて隣り合うインク滴Dt同士の、第1方向D1におけるピッチP12と同じである印刷モードである。第1印刷モードによれば、吐出方向Dvから被印刷媒体Wを見た場合に、傾斜面KM1,KM2における画像が歪んだり間延びして見えることが防止又は抑制される。これにより、第1印刷モードは比較的遠くから被印刷媒体Wを見ることが多い場合、例えば被印刷媒体Wが看板等である場合に有効な印刷モードである。
【0051】
ここで、
図7に示すように、ユーザが第1印刷モードを選択した後に、選択された第1印刷モードに基づく被印刷媒体Wにおける印字態様を示すレビュー画面5rが表示部5に表示される。このとき、制御装置20はレビュー画面5rについての画像データをASIC25に出力する。例えば画像データが文字「ABC」であり、「A」が傾斜面KM1に印刷され、「B」が平行面HMに印刷され、「C」が傾斜面KM2に印刷されるとする。この場合、ユーザは被印刷媒体Wの傾斜面KM1、平行面HMおよび傾斜面KM2における印字態様をレビュー画面5rにて視認することができる。
図7に示すように、傾斜面KM1,KM2における画像が歪んだり間延びして見えることがない。このように、ユーザは印刷が始まる前に被印刷媒体Wにおける印字態様をレビュー画面5rにて事前に確認することができる。なお、制御装置20はキャリッジ3を移動方向Dsへ移動させながら3Dカメラ58による距離の検出を行った後に画像データを出力する。これにより、被印刷媒体W全体の印字態様を示すレビュー画面5rが表示部5に表示される。
【0052】
続いて、第2印刷モードについて説明する。
図8は第2印刷モードについて説明するための図である。
【0053】
第2印刷モードは、
図8に示すように傾斜面KM1において隣り合うインク滴Dt同士の、傾斜面KM1と平行な第2方向D21におけるピッチP2が、平行面HMにおいて隣り合うインク滴Dt同士の、第1方向D1におけるピッチP12と同じである印刷モードである。同様に、傾斜面KM2において隣り合うインク滴Dt同士の、傾斜面KM2と平行な第2方向D22におけるピッチP2が、平行面HMにおいて隣り合うインク滴Dt同士の、第1方向D1におけるピッチP12と同じである。第2印刷モードによれば、傾斜面KM1に垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合に、傾斜面KM1における画像が歪んだり間延びして見えることが防止又は抑制される。これにより、第2印刷モードは例えばマグカップ等の比較的傾斜面の多い被印刷媒体Wに印刷を行う場合に有効な印刷モードである。
【0054】
図9に示すように、ユーザが複数の印刷モードのうち第2印刷モードを選択した後に、選択された第2印刷モードに基づく被印刷媒体Wにおける印字態様を示すレビュー画面5rが表示部5に表示される。
図9A,9Bにおいて、例えば画像データが文字「ABC」である場合に、ユーザは被印刷媒体Wの傾斜面KM1、平行面HMおよび傾斜面KM2における印字態様を視認することができる。
【0055】
表示部5は、平行面HMに垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合のレビュー画面5r(
図9A)と、傾斜面KM1に垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合のレビュー画面5r(
図9B)を表示することができる。
図9Aに示すように、平行面HMに垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合には、傾斜面KM1,KM2における画像は縮んで見える。一方、
図9Bに示すように、傾斜面KM1に垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合には、平行面HMにおける画像は縮んで見えるが、傾斜面KM1における画像は縮んで見えることがない。傾斜面KM1に垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合には、傾斜面KM2における画像(「C」)は見えないため、レビュー画面5rでは当該画像を点線で表示してもよい。なお、傾斜面KM2に垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合の傾斜面KM2における画像をレビュー画面5rに表示すると共に、傾斜面KM1に垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合の傾斜面KM1における画像を点線で表示してもよい。
【0056】
ユーザがレビュー画面5rにて印字態様を確認した後、傾斜面KM1,KM2の印刷解像度を任意に入力することが可能な画面を表示部5に表示させてもよい。この場合、制御装置20は、ユーザが傾斜面KM1,KM2の印刷解像度を任意に入力した解像度入力情報を取得し、当該解像度入力情報に基づく画像データをASIC25に出力する。ASIC25は解像度入力情報に基づく画像データを表示部5に表示させる。これにより、ユーザは自身が入力した任意の解像度入力情報に基づく印字態様を表示部5にて確認することができる。
【0057】
第2印刷モードにおいて、制御装置20は、傾斜面KM1が吐出面NMと成す角度に応じて、傾斜面KM1の印刷解像度を変更するように吐出ヘッド10の動作を制御する。以下、具体的に説明する。なお、以下に記載する印刷解像度とは、吐出面NMに垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合の印刷解像度をいう。
【0058】
図10Aに示す被印刷媒体Wは、吐出面NMと成す角度が第1角度α1である傾斜面KM11と、平行面HMと、傾斜面KM21を含む。なお、傾斜面KM21が吐出面NMと成す角度もα1である。傾斜面KM11および傾斜面21が第1傾斜面に相当する。一方、
図10Bに示す被印刷媒体Wは、吐出面NMと成す角度が、第1角度α1よりも大きい第2角度α2である傾斜面KM12と、平行面HMと、傾斜面KM22を含む。なお、傾斜面KM22が吐出面NMと成す角度もα2である。傾斜面KM12および傾斜面22が第2傾斜面に相当する。
【0059】
制御装置20は、第2印刷モードにおいて、傾斜面KM12の印刷解像度が傾斜面KM11の印刷解像度よりも高くなるように吐出ヘッド10の動作を制御する。このとき、制御装置20は、傾斜面KM12に対する印刷時におけるキャリッジ3の移動速度を、傾斜面KM11に対する印刷時よりも低下させる。これにより、傾斜面KM12の印刷解像度を傾斜面KM11の印刷解像度よりも高くすることができる。同様に、制御装置20は、第2印刷モードにおいて、傾斜面KM22の印刷解像度が傾斜面KM21の印刷解像度よりも高くなるように吐出ヘッド10の動作を制御する。
【0060】
第2印刷モードにおいて、傾斜面KM12の印刷解像度を傾斜面KM11の印刷解像度よりも高くする際に、制御装置20は次の制御を行ってもよい。すなわち、制御装置20は、傾斜面KM12に対する印刷時にアクチュエータ160を駆動する駆動波形における1駆動周期内の吐出パルスの数を傾斜面KM11に対する印刷時よりも多くする。具体的には、制御装置20は傾斜面KM11に対する印刷時に、
図11Aに示すように1駆動周期における吐出パルスPdの数が例えば4つである駆動波形Wp1を用いて吐出ヘッド10の動作を制御する。これに対して、制御装置20は傾斜面KM12に対する印刷時には、
図11Bに示すように1駆動周期における吐出パルスPdの数が例えば5つである駆動波形Wp2を用いて吐出ヘッド10の動作を制御する。これにより、傾斜面KM12の印刷解像度を傾斜面KM11の印刷解像度よりも高くすることが可能となる。なお、傾斜面KM22の印刷解像度を傾斜面KM21の印刷解像度よりも高くする場合の制御も同様とする。
【0061】
制御装置20は、傾斜面KM11と吐出面NMとの成す角度α1の上限値を決定してもよい。この場合、制御装置20は、画像データに基づいて平行面HMに求められる印刷解像度とキャリッジ3の移動分解能に基づき決まる平行面HMにおける最高印刷解像度との比率を基に上記の上限値を決定することができる。例えば角度α1が75°である場合には、平行面HMに対する傾斜面KM1の長さの比率が4となり、傾斜面KM1に要求される印刷解像度が平行面HMの印刷解像度の4倍となる。そのため、傾斜面KM1に対する印字を上記印刷解像度に基づいて行うことが難しい。そこで、傾斜面KM11と吐出面NMとの成す角度α1の上限値を例えば75°にすることができる。
【0062】
次いで、第3印刷モードについて説明する。
図12および
図13は第3印刷モードについて説明するための図である。
【0063】
図12に示すように、第3印刷モードにおいては、傾斜面KM1,KM2に吐出すべきインク滴Dtbの体積が平行面HMに吐出すべきインク滴Dtの体積よりも大きくなるように吐出ヘッド10の動作が制御される。第1印刷モードと同様に、傾斜面KM1,KM2において隣り合うインク滴Dt同士の第1方向D1におけるピッチP11は、平行面HMにおいて隣り合うインク滴Dt同士の第1方向D1におけるピッチP12と同じである。また、傾斜面KM1,KM2に対してインク滴Dtbを吐出することで、各傾斜面KM1,KM2におけるインク滴Dtb同士の間隔SP1を、平行面HMにおけるインク滴Dt同士の間隔SP2と同じにすることができる。このような第3印刷モードによれば、吐出方向Dvから被印刷媒体Wを見た場合に傾斜面KM1,KM2における画像が間延びして見えることが抑制されるという第1印刷モードの効果と併せて、上記の間隔SP1と間隔SP2とが同じであることによって、傾斜面KM1,KM2に垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合に画像の濃淡差が目立ち難くなる。
【0064】
制御装置20は、第3印刷モードにおいて、平行面HMに吐出すべきインク滴Dtの体積よりも大きい体積のインク滴Dtを傾斜面KM1,KM2に吐出する上述の処理の代わりに又は当該処理と併せて、次の制御を行ってもよい。すなわち、
図13に示すように、制御装置20は、傾斜面KM1,KM2に吐出すべきインク滴Dtの単位面積当たりの個数が平行面HMに吐出すべきインク滴Dtの単位面積当たりの個数よりも多くなるように吐出ヘッド10の動作を制御してもよい。この場合、傾斜面KM1,KM2にはインク滴Dtよりも体積の小さい複数のインク滴Dtsを吐出してもよい。このような処理によっても、傾斜面KM1,KM2に垂直な方向から被印刷媒体Wを見た場合に画像の濃淡差が目立ち難くなる。なお、第2印刷モードと同様に、第3印刷モードにおいて、制御装置20は傾斜面KM1,KM2が吐出面NMと成す角度に応じて、傾斜面KM1,KM2の印刷解像度を変更するように吐出ヘッド10の動作を制御してもよい。
【0065】
次に、搬送方向Dfに傾斜面が存在する被印刷媒体Wに対しても、傾斜面の印刷解像度を平行面の印刷解像度よりも上げるべく印刷を行うことができる。
図14Aは搬送方向Dfに並んだ傾斜面KM1および平行面HMにおける吐出制御を説明するための平面図である。
【0066】
制御装置20は、傾斜面KM1に対して複数のパス印字を行うようにキャリッジ3の動作および吐出ヘッド10の動作を制御する。詳細には、制御装置20は、傾斜面KM1に対するパス印字の回数が平行面HMに対するパス印字の回数よりも多くなるようにキャリッジ3の動作および吐出ヘッド10の動作を制御する。具体的には、
図14Aに示すように、制御装置20は傾斜面KM11に対しては例えば4つのパス印字を吐出ヘッド10に行わせ、平行面HMに対しては例えば2つのパス印字を吐出ヘッド10に行わせる。このように、傾斜面KM1に対するパス印字を平行面HMに対するパス印字よりも多く行うことで、平行面HMと搬送方向Dfに並ぶ傾斜面KM1の印刷解像度を当該平行面HMの印刷解像度よりも高くすることができる。
【0067】
以上説明したように、液滴吐出装置1aによれば、ユーザにより選択された印刷モードに基づき傾斜面KM1,KM2に対してインク滴Dtが吐出されるため、当該傾斜面KM1,KM2においてユーザが望む見え方をする画像を形成することができる。
【0068】
また、本実施形態では、印刷モードには、第1印刷モードおよび第2印刷モードが含まれる。この場合、ユーザは、被印刷媒体Wを見る主な方向に基づき複数の印刷モードのうち第1印刷モード又は第2印刷モードを選択することができる。これにより、画像が間延びしたり、或いは縮んだりするように見えることを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態では、第2印刷モードにおいて、傾斜面KM1,KM2が吐出面NMと成す角度に応じて、傾斜面KM1,KM2の、吐出面NMに垂直な方向における印刷解像度が変更される。これによって、吐出面NMに対する傾斜KM1,KM2面の角度に応じた適切な印刷解像度を実現することができる。
【0070】
また、本実施形態では、制御装置20は、第2印刷モードにおいて、傾斜面KM12の印刷解像度が傾斜面KM11の印刷解像度よりも高く、かつ傾斜面KM22の印刷解像度が傾斜面KM21の印刷解像度よりも高くなるように吐出ヘッド10の動作を制御する。これにより、角度が大きくなるにつれ傾斜面の印刷解像度を適切なものにすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、制御装置20は、第2印刷モードにおいて傾斜面KM12の印刷解像度を傾斜面KM11の印刷解像度よりも高くする場合に、キャリッジ3の移動速度を傾斜面KM11に対する印刷時よりも低下させる。或いは、制御装置20は、上記の場合にアクチュエータ160を駆動する駆動波形Wp2における1駆動周期内の吐出パルスPdの数を傾斜面KM11に対する印刷時に用いる駆動波形Wp1よりも多くする。この場合、印刷解像度を容易に高くすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、印刷モードにさらに第3印刷モードが含まれる。この場合、傾斜面KM1,KM2において隣り合うインク滴Dt同士の間隔を、平行面HMにおいて隣り合うインク滴Dt同士の間隔と同じにすることが可能となる。これにより、被印刷媒体Wを見る角度による濃淡差が生じ難い。また、体積の大きいインク滴Dtbを吐出することで、インク滴Dtを多数吐出する場合よりも印刷時間を短くすることができる。
【0073】
また、本実施形態では、制御装置20は、第3印刷モードにおいて、平行面HMに吐出すべきインク滴Dtの体積よりも大きい体積のインク滴Dtbを傾斜面KM1,KM2に吐出する処理の代わりに又は当該処理と併せて、以下の制御を行ってもよい。すなわち、制御装置20は、傾斜面KM1,KM2に吐出すべきインク滴Dtの単位面積当たりの個数が平行面HMに吐出すべきインク滴Dtの単位面積当たりの個数よりも多くなるように吐出ヘッド10の動作を制御してもよい。この場合、インク滴Dtを多数吐出することによって、体積の大きい液滴Dtbを吐出する場合よりも画像を綺麗に且つきめ細やかに形成することができる。
【0074】
また、本実施形態では、制御装置20は、第3印刷モードにおいて、傾斜面KM1,KM2が吐出面NMと成す角度に応じて傾斜面KM1,KM2に吐出すべきインク滴Dtの体積又はインク滴Dtの個数が変わるように吐出ヘッド10の動作を制御する。この場合、吐出面NMに対する傾斜面KM1,KM2の角度に応じて濃淡差が生じ難い適切な画像を形成することができる。
【0075】
また、本実施形態では、制御装置20は、第3印刷モードにおいて傾斜面KM1,KM2の吐出面NMに対する角度が大きくなるにつれ、吐出すべきインク滴Dtの体積が大きくなるように吐出ヘッド10の動作を制御してもよい。或いは、制御装置20は、第3印刷モードにおいて傾斜面KM1,KM2の吐出面NMに対する角度が大きくなるにつれ、吐出すべきインク滴Dtの個数が多くなるように吐出ヘッド10の動作を制御してもよい。一般に傾斜面の傾斜角度が大きいと当該傾斜面に着弾する液滴が少なくなり、それ故傾斜面におけるインク滴Dtの配置密度が低下する。これに対して、本実施形態では、上記角度が大きくなるにつれ、体積の大きいインク滴Dtが吐出され、又は多くのインク滴Dtが吐出されるため、傾斜面KM1,KM2におけるインク滴Dtの配置密度の低下を防ぐことができる。
【0076】
また、本実施形態では、被印刷媒体Wの傾斜面KM1および平行面HMが搬送方向Dfに沿って設けられている場合に、制御装置20は傾斜面KM1に対して複数のパス印字を行うようにキャリッジ3の動作および吐出ヘッド10の動作を制御する。これによって、搬送方向Dfに傾斜面KM1が存在する被印刷媒体Wに対して印刷を行う場合でも、当該傾斜面KM1においてユーザが望む見え方をする画像を形成することができる。
【0077】
また、本実施形態では、制御装置20は、傾斜面KM1に対するパス印字の回数が平行面HMに対するパス印字の回数よりも多くなるようにキャリッジ3の動作および吐出ヘッド10の動作を制御する。これによって、傾斜面KM1に垂直な方向から当該傾斜面KM1を見たときに画像が間延びしない。
【0078】
また、本実施形態では、印刷が開始される前に、印字態様を示すレビュー画面5rが表示部5に表示される。この場合、ユーザは印刷が始まる前に被印刷媒体Wにおける印字態様をレビュー画面5rにて事前に確認することができる。
【0079】
また、本実施形態では、制御装置20はキャリッジ3を移動方向Dsへ移動させながら3Dカメラ58による距離H1,H2の検出を行った後に画像データを出力する。この場合、被印刷媒体W全体の印字態様を示すレビュー画面5rを表示することができる。
【0080】
また、本実施形態では、ユーザは傾斜面KM1,KM2の印刷解像度を任意に入力することができる。これにより、ユーザはレビュー画面5rを確認して印字態様に問題があるときに印刷解像度を手動で修正することが可能となる。
【0081】
さらに、本実施形態では、制御装置20は傾斜面KM11と吐出面NMとの成す角度α1の上限値を決定する。この場合、所望の印刷解像度を実現し得る上記角度α1の限界値を事前に把握しつつ印刷を実行することができる。
【0082】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0083】
上記実施形態では、吐出面NMと平行面HMとの距離H1および吐出面NMと傾斜面KM1,KM2との距離H2を3Dカメラ58で検出することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ユーザが距離H1,H2を入力し、その入力情報を記憶部に記憶させ、記憶されたその情報を制御装置20が取得するようにしてもよい。或いは、3Dスキャナ等の距離検出装置により検出してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、被印刷媒体Wに2つの傾斜面KM1,KM2のみを設けたが、傾斜面の個数は1つでもよく、又は3つ以上でもよい。
【0085】
さらに、上記実施形態において、傾斜面KM1に吐出された一方のインク滴Dtbと他方のインク滴Dtbとの間に、インク滴Dtよりも体積の小さいインク滴を配置してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1a 液滴吐出装置
3 キャリッジ
5 表示部
5r レビュー画面
6 プラテン
10 吐出ヘッド
20 制御装置
58 3Dカメラ
121 ノズル
128 圧力室
160 アクチュエータ
D1 第1方向
D2 第2方向
Df 搬送方向
Ds 移動方向
H1 吐出面と平行面との距離
H2 吐出面と傾斜面との距離
HM 平行面
KM1,KM2,KM11,KM12,KM21,KM22 傾斜面
NM 吐出面
P11,P12 第1方向におけるピッチ
P2 第2方向におけるピッチ
Pd 吐出パルス
W 被印刷媒体
WM 被吐出面
Wp1,Wp2 駆動波形
α1 第1角度
α2 第2角度