(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151814
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 451
B41J2/01 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061642
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏史
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB11
2C056EB13
2C056EB37
2C056FA04
2C056FA10
2C056KD06
(57)【要約】
【課題】吐出ヘッドの吐出面と被印刷媒体の被吐出面との距離に関する情報を迅速かつ高精度に取得することが可能な液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出装置は、被印刷媒体の被吐出面に対して吐出面に設けられたノズル孔から液滴を吐出する吐出ヘッドと、吐出面と被吐出面との距離を検出するTOFセンサと、吐出ヘッドおよびTOFセンサを搭載し、移動方向に移動するキャリッジと、吐出面と被吐出面との距離を検出する補正用センサと、制御装置と、を備え、制御装置は、キャリッジを移動方向に移動させた際のTOFセンサによる検出結果を補正用センサによる検出結果に基づき補正して吐出面と被吐出面との距離に関する情報を取得する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体の被吐出面に対して吐出面に設けられたノズル孔から液滴を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出面と前記被吐出面との距離を検出するTOFセンサと、
前記吐出ヘッドおよび前記TOFセンサを搭載し、移動方向に移動するキャリッジと、
前記吐出面と前記被吐出面との距離を検出する補正用センサと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記キャリッジを前記移動方向に移動させた際の前記TOFセンサによる検出結果を前記補正用センサによる検出結果に基づき補正して前記吐出面と前記被吐出面との距離に関する情報を取得する、液滴吐出装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記TOFセンサによる検出結果から前記吐出面と前記被吐出面との距離に関する暫定情報を取得し、かつ、
前記補正用センサにより検出された前記距離のうちのピーク値と、前記TOFセンサによる検出結果から得られた前記暫定情報中のピーク値との差分に基づき、前記暫定情報を補正して前記吐出面と前記被吐出面との距離に関する情報を取得する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記補正用センサは前記被吐出面に接触することで前記吐出面と前記被吐出面との距離を検出する接触式センサである、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記補正用センサは前記吐出ヘッドと前記被印刷媒体との距離を調整する際に用いるヘッドギャップセンサである、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記補正用センサは前記被吐出面に対して前記吐出面と平行に光を出射することで前記吐出面と前記被吐出面との距離を検出する光センサである、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記TOFセンサは前記キャリッジの移動方向において前記吐出ヘッドと隣り合って配置されている、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記補正用センサは前記被吐出面における高さが異なる複数の部分の高さをそれぞれ検出し、
前記制御装置は、前記補正用センサによる各検出結果に基づき前記TOFセンサによる検出結果を補正する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記被印刷媒体を支持し上下動可能なプラテンをさらに備え、
前記補正用センサは、前記プラテンが上下動する際に前記被吐出面における同じ位置についての前記距離をそれぞれ検出し、
前記制御装置は、前記補正用センサによる各検出結果に基づき前記TOFセンサによる検出結果を補正する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記被印刷媒体を搬送方向に搬送するプラテンをさらに備え、
前記TOFセンサは前記搬送方向に直線状に複数並んで配置されている、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記補正用センサは、前記プラテンにより前記被印刷媒体が前記搬送方向に搬送される際に前記吐出面と前記被吐出面との距離を検出し、
前記TOFセンサは、前記キャリッジが前記移動方向に移動する際に前記距離を検出する、請求項9に記載の液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタ等の画像形成装置に用いられる液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被印刷媒体と吐出ヘッドの吐出面との距離を検出する技術として、例えば特許文献1には、被印刷媒体に向けて出射した光が当該被印刷媒体に反射して戻ってくるまでの時間をTOF(Time Of Flight)センサにより計測し、当該計測結果に基づき上記距離を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、TOFセンサにおいては、受光部における光電変換の感度やアナログ-デジタル変換時のノイズ等に起因して測定誤差が生じ易い。そのため、吐出ヘッドの吐出面と被印刷媒体の被吐出面との距離に関する情報を高精度に取得することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、吐出ヘッドの吐出面と被印刷媒体の被吐出面との距離に関する情報を迅速かつ高精度に取得することが可能な液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液滴吐出装置は、被印刷媒体の被吐出面に対して吐出面に設けられたノズル孔から液滴を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出面と前記被吐出面との距離を検出するTOFセンサと、前記吐出ヘッドおよび前記TOFセンサを搭載し、移動方向に移動するキャリッジと、前記吐出面と前記被吐出面との距離を検出する補正用センサと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記キャリッジを前記移動方向に移動させた際の前記TOFセンサによる検出結果を前記補正用センサによる検出結果に基づき補正して前記吐出面と前記被吐出面との距離に関する情報を取得するものである。
【0007】
本発明に従えば、TOFセンサにより吐出面と被吐出面との距離に関する情報を迅速に取得することができる。また、制御装置によって、TOFセンサによる検出結果が補正用センサによる検出結果に基づき補正される。これにより、TOFセンサによる検出結果が精度の高い数値になる。以上によって、吐出面と被吐出面との距離に関する情報を迅速かつ高精度に取得することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出ヘッドの吐出面と被印刷媒体の被吐出面との距離に関する情報を迅速かつ高精度に取得することが可能な液滴吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置が設けられる画像形成装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置を示す平面図である。
【
図3】
図1の吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
【
図4】
図1の画像形成装置の構成要素を示すブロック図である。
【
図5】吐出ヘッドの吐出面と被印刷媒体の被吐出面との距離の検出について説明するための図である。
【
図6】TOFセンサによる検出結果の補正方法について説明するための図である。
【
図7】補正用センサの例としてのヘッドギャップセンサを示す図である。
【
図8】補正用センサの例としての光センサを示す図である。
【
図9】プラテンを上下動させて被吐出面における同じ位置についての距離を検出する態様を示す図である。
【
図10】補正用センサとしての光センサの別例を示す図である。
【
図11】複数のTOFセンサが設けられる態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る液滴吐出装置について図面を参照して説明する。以下に説明する液滴吐出装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置1aが設けられる画像形成装置1を示す斜視図である。
図1において、相互に直交する方向を、第1方向Ds、第2方向Dfおよび第3方向Dzとする。本実施形態では、例えば、第1方向Dsは後述するキャリッジ3の移動方向であり、第2方向Dfは後述する被印刷媒体Wの搬送方向であり、第3方向Dzは上下方向である。以下の説明では、Dsを移動方向と呼び、Dfを搬送方向と呼び、Dzを上下方向と呼ぶ。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置1は、筐体2と、操作キー4と、表示部5と、被印刷媒体Wが配置されるプラテン6と、上部カバー7とを備える。また、画像形成装置1は、吐出ヘッド10と、制御装置20(
図4)を含むコントローラユニット19とを有する
図2の液滴吐出装置1aを備える。吐出ヘッド10は、液滴として例えば紫外線硬化型のインク滴Dt(
図5)を吐出するインクジェットヘッドである。
【0013】
筐体2は箱状に形成されている。筐体2は開口部2aを有する。筐体2には操作キー4が設けられている。また、操作キー4の近傍には表示部5が設けられている。操作キー4はユーザによる操作入力を受け付ける。表示部5は例えばタッチパネルで構成され、所定情報を表示する。表示部5の一部は操作キーとしても機能する。コントローラユニット19は、操作キー4からの入力又は図略の通信インタフェースを介する外部入力に基づき印刷機能を実現すると共に表示部5の表示を制御する。
【0014】
プラテン6は被印刷媒体Wを載置可能に構成されている。プラテン6は所定の厚みを有し、例えば搬送方向Dfを長手方向とする矩形状の板材により構成される。プラテン6は図略のプラテン支持台により、取り外し可能に支持されている。プラテン支持台は搬送モータ33(
図4)の駆動により被印刷媒体Wへの印刷を実行する印刷位置と被印刷媒体Wをプラテン6から取り外す着脱位置との間で搬送方向Dfに移動可能に構成される。これにより、プラテン6は被印刷媒体Wの被吐出面を吐出ヘッド10に対して搬送方向Dfに相対移動させる。印刷時にはプラテン6が搬送方向Dfに移動するため、プラテン6上に載置された被印刷媒体Wが搬送方向Dfに沿って搬送される。また、プラテン6は上記のプラテン支持台の駆動により上下動可能に構成されている。
【0015】
上部カバー7は、その端部を持ち上げると上方へ回動するように構成されている。これにより、筐体2の内部が露出する。
【0016】
図2に示すように、液滴吐出装置1aは、貯留タンク62、例えば2つの吐出ヘッド10(10A,10B)と2つの紫外線照射装置40(40A,40B)が搭載されたキャリッジ3、および一対のガイドレール67を備える。なお、2つの吐出ヘッド10と2つの紫外線照射装置40を設けることにしたが、これに限定されるものではなく、1つの吐出ヘッド10と1つの紫外線照射装置40を設けてもよい。
【0017】
キャリッジ3は、移動方向Dsに延在する一対のガイドレール67に支持され、当該ガイドレール67に沿って移動方向Dsに往復動する。これにより、2つの吐出ヘッド10(10A,10B)と2つの紫外線照射装置40(40A,40B)は移動方向Dsに往復動可能になっている。また、吐出ヘッド10はチューブ62aを介して貯留タンク62に接続される。
【0018】
本実施形態において、例えば、吐出ヘッド10Aは、カラーインクと総称されることがあるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色のインク滴Dtを吐出する。以上の4色のインク滴Dtが被印刷媒体Wに吐出されることで当該被印刷媒体Wにカラー画像が印刷される。一方、吐出ヘッド10Bは、ホワイト(W)のインク滴Dtおよびクリア(Cr)のインク滴Dtを吐出する。被印刷媒体Wとして例えば布帛にカラー画像を印刷する際には、当該布帛の色や布帛の材質への影響を低減するために、下地インクとして白インクのインク滴Dtが先に吐出され、当該白インクのインク滴Dtの上にカラーインクのインク滴Dtが吐出される。また、クリアインクのインク滴Dtは光沢を付与する場合や印刷部分の保護を行う場合に吐出される。
【0019】
貯留タンク62にはインクが貯留されている。貯留タンク62はインクの種類ごとに設けられている。貯留タンク62は、例えば6つ設けられ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ、ホワイト、およびクリアのインクがそれぞれ貯留される。
【0020】
次に吐出ヘッド10の詳細構造について説明する。
図3に示すように、吐出ヘッド10は貯留タンク62からのインクを用いてインク滴Dtを吐出する複数のノズル121を有する。吐出ヘッド10は流路形成体と容積変更部の積層体を有する。流路形成体には、その内部にインク流路が形成され、その下面である吐出面NMに複数のノズル孔121aが開口している。また、上記の容積変更部は、駆動されてインク流路の容積を変更する。このとき、ノズル孔121aではメニスカスが振動してインクが吐出される。
【0021】
吐出ヘッド10の上述の流路形成体は複数のプレートの積層体であり、容積変更部は振動板155およびアクチュエータ(圧電素子)160を含む。振動板155の上には後述の共通電極161が接続されている。
【0022】
複数のプレートは、下から順に、ノズルプレート146、スペーサプレート147、第1流路プレート148、第2流路プレート149、第3流路プレート150、第4流路プレート151、第5流路プレート152、第6流路プレート153、および第7流路プレート154を含んで積層されている。
【0023】
各プレートには大小種々の孔および溝が形成されている。各プレートが積層された流路形成体の内部では孔および溝が組み合わされて、複数のノズル121、複数の個別流路164およびマニホールド122がインク流路として形成されている。
【0024】
ノズル121はノズルプレート146を積層方向に貫通し形成されている。ノズルプレート146の吐出面NMには、ノズル121の先端である複数のノズル孔121aが搬送方向Dfに複数並んでノズル列を形成している。
【0025】
マニホールド122は、吐出圧力が付与される圧力室128に対してインクを供給する。マニホールド122は、搬送方向Dfに延在しており、複数の個別流路164の各一端にそれぞれ接続されている。すなわち、マニホールド122はインクの共通流路として機能する。マニホールド122は、第1流路プレート148~第4流路プレート151を積層方向に貫通した貫通孔および第5流路プレート152の下面から窪んだ窪みが積層方向に重なって形成されている。
【0026】
ノズルプレート146はスペーサプレート147の下方に配置されている。そのスペーサプレート147は例えばステンレス鋼材で形成される。スペーサプレート147は、例えばハーフエッチングによりノズルプレート146側の面からスペーサプレート147の厚み方向に凹むことで、ダンパ部147aを成す薄肉部分とダンパ空間147bとが形成される凹部145を有する。これにより、マニホールド122とノズルプレート146との間に、バッファー空間としてのダンパ空間147bが形成される。
【0027】
マニホールド122には供給ポート122aが連通している。供給ポート122aは例えば筒状に形成され、搬送方向Dfの一端に設けられている。なお、マニホールド122と供給ポート122aとは図略の流路により繋がっている。
【0028】
各個別流路164はマニホールド122にそれぞれ接続されている。個別流路164は、その上流端がマニホールド122に接続され、その下流端がノズル121の基端に接続されている。個別流路164は、第1連通孔125、個別絞り路である供給絞り路126、第2連通孔127、圧力室128、およびディセンダ129で構成されており、これらの構成要素はこの順で配置される。
【0029】
第1連通孔125は、その下端がマニホールド122の上端に接続し、マニホールド122から積層方向の上方に延び、第5流路プレート152における上側部分を積層方向に貫通している。
【0030】
供給絞り路126の上流端は第1連通孔125の上端に接続されている。供給絞り路126は、例えばハーフエッチングにより形成され、第6流路プレート153の下面から窪んだ溝により構成されている。また、第2連通孔127は、その上流端が供給絞り路126の下流端に接続され、供給絞り路126から積層方向の上方に延び、第6流路プレート153を積層方向に貫通して形成されている。
【0031】
圧力室128は、その上流端が第2連通孔127の下流端に接続されている。圧力室128は、第7流路プレート154を積層方向に貫通して形成されている。
【0032】
ディセンダ129は、スペーサプレート147、第1流路プレート148、第2流路プレート149、第3流路プレート150、第4流路プレート151、第5流路プレート152、および第6流路プレート153を積層方向に貫通して形成されている。ディセンダ129は、その上流端が圧力室128の下流端に接続され、下流端がノズル121の基端に接続されている。ノズル121は、例えば積層方向においてディセンダ129に重なり、幅方向においてディセンダ129の中央に配置されている。
【0033】
振動板155は、第7流路プレート154の上に積層されており、圧力室128の上端開口を覆っている。
【0034】
アクチュエータ160は、共通電極161、圧電層162および個別電極163を含み、これらはこの順で配置されている。共通電極161は振動板155の全面を覆っている。圧電層162は共通電極161の全面を覆っている。個別電極163は、圧力室128ごとに設けられ、圧電層162上に配置されている。1つの個別電極163、共通電極161および両電極で挟まれた部分の圧電層162により1つのアクチュエータ160が構成される。
【0035】
個別電極163はドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、制御装置20から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極163に印加する。これに対して、共通電極161は常にグランド電位に保持されている。このような構成において、圧電層162の活性部は駆動信号に応じて共通電極161および個別電極163と共に面方向に伸縮する。これに応じて、振動板155が協働して変形し、圧力室128の容積を増減する方向に変化する。これにより、インク滴Dtをノズル121から吐出させる吐出圧力が圧力室128に付与される。
【0036】
吐出ヘッド10において、インクは、供給ポート122aを介してマニホールド122に流入すると、当該マニホールド122から第1連通孔125を介して供給絞り路126に流入し、供給絞り路126から第2連通孔127を介して圧力室128に流入する。その後、インクはディセンダ129を流れ、ノズル121に流入する。ここで、アクチュエータ160により圧力室128に吐出圧力が付与されると、インク滴Dtがノズル孔121aから吐出される。
【0037】
図4に示すように、画像形成装置1は、上述の構成要素の他、読取装置26、モータドライバIC30,31、ヘッドドライバIC32,35、搬送モータ33、キャリッジモータ34、照射装置ドライバIC36,37、TOF(Time Of Flight)センサ38、および補正用センサ39を備える。
【0038】
コントローラユニット19は、CPUで構成される制御装置20、記憶部(ROM21、RAM22、EEPROM23、HDD24)、およびASIC25を有する。制御装置20は、上記の各記憶部に接続されていると共に各ドライバIC30~32,35~37、表示部5、TOFセンサ38、および補正用センサ39を制御する。
【0039】
制御装置20は、ROM21に記憶された所定の処理プログラムを実行することにより、種々の機能を実行する。制御装置20は、コントローラユニット19に1つのプロセッサとして実装されていてもよいし、互いに協働する複数のプロセッサとして実装されていてもよい。処理プログラムは、コンピュータ読取可能な光磁気ディスク等又はUSBフラッシュメモリ等の記録媒体KBから読取装置26で読み出されてROM21に記憶される。RAM22には、外部から受信した画像データおよび制御装置20の演算結果等が記憶される。EEPROM23にはユーザが入力した各種の初期設定情報が格納されている。HDD24には特定情報などが記憶される。
【0040】
ASIC25には、モータドライバIC30,31と、ヘッドドライバIC32,35と、照射装置ドライバIC36,37と、TOFセンサ38と、補正用センサ39とが接続される。制御装置20は、ユーザから印刷ジョブを受け付けると、処理プログラムに基づいて画像記録指令をASIC25へ出力する。ASIC25は、画像記録指令に基づいて各ドライバIC30~32,35~37を駆動する。制御装置20は、モータドライバIC30により搬送モータ33を駆動することでプラテン6を搬送方向Dfに移動させる。制御装置20は、モータドライバIC31によりキャリッジモータ34を駆動することでキャリッジ3を移動方向Dsに移動させる。
【0041】
制御装置20は、外部装置等から取得した画像データを、被吐出面にインク滴Dtを吐出するための吐出データに変換する。制御装置20は、変換した吐出データに基づいてヘッドドライバIC32,35により吐出ヘッド10からインク滴Dtを吐出させる。また、制御装置20は、照射装置ドライバIC36,37により紫外線照射装置40A,40Bの各発光ダイオードチップから紫外線を照射させる。
【0042】
図5は吐出ヘッド10の吐出面NMと被印刷媒体Wの被吐出面WMとの距離の検出について説明するための図である。
図5に示すように、被印刷媒体Wの被吐出面WMは例えば吐出ヘッド10の吐出面NMに平行な第1方向と平行な被吐出面と当該第1方向に対して交差する傾斜面とを含む。
【0043】
キャリッジ3は上述の通り吐出ヘッド10および紫外線照射装置40を搭載すると共に、TOFセンサ38および補正用センサ39を搭載する。TOFセンサ38はキャリッジ3の移動方向Dsにおいて吐出ヘッド10と隣り合って配置されている。また、補正用センサ39は移動方向DsにおいてTOFセンサ38と隣り合って配置されている。
【0044】
制御装置20は、キャリッジ3が移動方向Dsに移動する際に、吐出ヘッド10の吐出面NMと被印刷媒体Wの被吐出面WMとの距離DhをTOFセンサ38に検出させる。TOFセンサ38は、出射したレーザ光が被吐出面WMに反射して戻るまでの時間を計測し、その計測時間を距離に換算するものである。TOFセンサ38は被印刷媒体Wの被吐出面WMにおける高さが異なる複数の部分の高さをそれぞれ検出する。
【0045】
また、制御装置20は、吐出面NMと被吐出面WMとの距離Hhを補正用センサ39に検出させる。この場合、補正用センサ39はプラテン6により被印刷媒体Wが搬送方向Dfに搬送される際に距離Hhを検出する。補正用センサ39は被印刷媒体Wの被吐出面WMにおける高さが異なる複数の部分の高さをそれぞれ検出する。
【0046】
制御装置20は、TOFセンサ38による検出結果および補正用センサ39による検出結果を受け取る。そして、制御装置20は、TOFセンサ38による検出結果である距離Dhを、補正用センサ39による検出結果である距離Hhに基づき補正する。これにより、制御装置20は吐出面NMと被吐出面WMとの距離に関する情報、すなわち補正後の距離に関する情報を取得する。以下、詳しく説明する。
【0047】
図6はTOFセンサ38による検出結果の補正方法について説明するための図である。まず、制御装置20はTOFセンサ38による検出結果から吐出面NMと被吐出面WMとの距離Dhに関する暫定プロファイルPzを取得する。暫定プロファイルPzが暫定情報に相当する。暫定プロファイルPzとは、TOFセンサ38の検出結果を基に取得される、移動方向Dsにおける吐出面NMと被吐出面WMとの距離Dhが複数集まった集合体である。吐出ヘッド10の吐出面NMの高さは一定であるため、暫定プロファイルPzの軌跡は被印刷媒体Wの移動方向Dsにおける形状とほぼ一致する。
図6では、暫定プロファイルPzを例えば円弧状とする。また、制御装置20は暫定プロファイルPzにおける各暫定値Vbの中からピーク値Vbpを取得する。このピーク値Vbpは被印刷媒体Wの被吐出面WMにおける最頂部に対応する値である。
【0048】
次に、制御装置20は補正用センサ39により検出された距離Hhに関する情報のうちのピーク値Vapを取得する。この場合、制御装置20はTOFセンサ38による検出が開始される前に被印刷媒体Wが搬送方向Dfに搬送される際にピーク値Vapを取得する。このピーク値Vapは被印刷媒体Wの被吐出面WMにおける最頂部に対応する値である。制御装置20は取得したピーク値Vapと暫定プロファイルPzにおけるピーク値Vbpとの差分Gvを算出する。
【0049】
次に、制御装置20は算出した差分Gvに基づいて暫定プロファイルPzにおける各暫定値Vbを補正する。この場合、制御装置20は暫定プロファイルPzにおける各暫定値Vbにそれぞれ差分Gvを加算する補正を実行する。この補正により、制御装置20は各暫定値Vbに差分Gvが加算された各値Vaをそれぞれ取得する。これにより、吐出面NMと被吐出面WMとの距離に関する情報である複数の値Vaの集合体であるプロファイルPsを取得することができる。このように暫定プロファイルPzを補正することによって、プロファイルPsを得ることができる。
【0050】
図7は補正用センサ39の例としてのヘッドギャップセンサ50を示す図である。補正用センサ39は、被吐出面WMに接触することで吐出面NMと被吐出面WMとの距離Hhを検出する接触式センサの一例であるヘッドギャップセンサ50であってよい。ヘッドギャップセンサ50は、吐出ヘッド10と被印刷媒体Wとの距離を調整する際に用い、画像形成装置1における液滴吐出装置1aに通常備えられるセンサである。
【0051】
図7に示すように、ヘッドギャップセンサ50は搬送方向Dfと同じ方向回りに回転する回転軸51と当該回転軸51に接続された接触部52とを有する。回転軸51には、当該回転軸51の回転角を検出するエンコーダが設けられる。接触部52が上下方向Dzに沿う状態の位置を基準位置とする。接触部52は被印刷媒体Wの被吐出面WMに接触すると、基準位置から回転移動する。制御装置20は、接触部52が回転移動する際にエンコーダより得られる回転角に基づき吐出面NMと被吐出面WMとの距離Hhを取得する。
【0052】
図8は補正用センサ39の例としての光センサ55を示す図である。
図8に示すように、補正用センサ39は被吐出面WMに対して吐出面NMに垂直な方向に光を出射することで吐出面NMと被吐出面WMとの距離Hhを検出する光センサ55であってよい。この場合、光センサ55は例えばレーザダイオードおよび受光ダイオードを含み、レーザダイオードから出射されたレーザ光が被吐出面WMにて反射し、その反射光が受光ダイオードに受光される。レーザ光が出射された後、被吐出面WMで反射した反射光が受光されるまでの時間は被吐出面WMの位置によって異なる。したがって、レーザ光が出射された後に被吐出面WMで反射した反射光が受光されるまでの時間を検出することで、距離Hhを取得することができる。
【0053】
図9はプラテン6を上下動させて被吐出面WMにおける同じ位置についての距離Hhを検出する態様を示す図である。
【0054】
図9に示すように、補正用センサ39としての光センサ55は、プラテン6が上下動する際に被吐出面WMにおける同じ位置Wpについての距離をそれぞれ検出してもよい。この場合、光センサ55はプラテン6が通常高さ位置に配置された状態で被吐出面WMの位置Wpに対してレーザ光を出射し、それにより吐出面NMと位置Wpとの距離Hh1を検出する。また、光センサ55はプラテン6が通常高さ位置よりも高い位置に配置された状態で被吐出面WMの位置Wpに対してレーザ光を出射し、それにより吐出面NMと位置Wpとの距離Hh2を検出する。また、TOFセンサ38も、プラテン6が通常高さ位置に配置された状態における吐出面NMと位置Wpとの距離と、プラテン6が通常高さ位置よりも高い位置に配置された状態における吐出面NMと位置Wpとの距離を検出する。制御装置20は、光センサ55による各検出結果である距離Hh1,Hh2に基づきTOFセンサ38による検出結果を補正する。具体的には、制御装置20は、光センサ55により検出された2つの距離Hh1,Hh2の差分と、TOFセンサ38により検出された上記2つの距離の差分とを比較してTOFセンサ38による検出結果を補正する。例えば、光センサ55による上記差分が1.0mmであり、TOFセンサ38による上記差分が0.9mmである場合に、制御装置20は補正値としての0.1mm(=1.0mm-0.9mm)をTOFセンサ38の検出結果に対して加算する補正を実行する。
【0055】
上述の光センサ55の代わりに、
図10に示す補正用センサ39を用いてもよい。この補正用センサ39は、レーザ光を出射する投光部56および当該レーザ光を受光する受光部57を含む。受光部57は被印刷媒体Wを基準にして投光部56の反対側に配置される。この構成において、被印刷媒体Wを支持するプラテン6を下降させつつ、投光部56からレーザ光を出射する。このレーザ光が被印刷媒体Wから反射せず、被印刷媒体Wの上方を通過したタイミング、つまり受光部57によりレーザ光が受光されたタイミングにおけるプラテン6の高さ位置から吐出面NMと被吐出面WMとの距離Hhを検出してもよい。なお、上記のようにプラテン6を下降させる代わりに、投光部56および受光部57を下降させてもよい。或いは、光源から出射されたレーザ光を遮った分の光量に基づき被印刷媒体Wの最頂部と吐出面NMとの距離Hhを検出してもよい。
【0056】
図11は複数のTOFセンサ38が設けられる態様を示す図である。
図11に示すように、TOFセンサ38は搬送方向Dfに直線状に複数並んで配置されてもよい。搬送方向Dfに沿って並ぶ一方のTOFセンサ38と他方のTOFセンサ38との間隔はそれぞれ同じである。
図11では、4つのTOFセンサ38が設けられているが、搬送方向Dfに並ぶTOFセンサ38の数は上記に限定されるものではない。
【0057】
以上説明したように、液滴吐出装置1aによれば、TOFセンサ38により吐出面NMと被吐出面WMとの距離Dhに関する情報を迅速に取得することができる。TOFセンサ38による検出結果は、一般的に受光部における光電変換の感度やアナログ-デジタル変換時のノイズ等に起因して測定誤差が生じ易い。そこで、制御装置20によって、TOFセンサ38による検出結果が補正用センサ39による検出結果に基づき補正される。これにより、TOFセンサ38による検出結果が精度の高い数値になる。以上によって、吐出面NMと被吐出面WMとの距離に関する情報を迅速かつ高精度に取得することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、補正用センサ39による検出結果のうちのピーク値Vapを補正基準として用いることで、TOFセンサ38の検出結果における各暫定値Vbを容易に補正することができる。
【0059】
また、本実施形態では、補正用センサ39として、接触式センサであるヘッドギャップセンサ50を用いることで、吐出面NMと被吐出面WMとの距離Hhを高精度に検出することができる。また、液滴吐出装置1aにもともと備えられるヘッドギャップセンサ50を補正用センサ39として用いることで、補正用センサを新たに設ける必要がなくなり、コストを抑えることができる。
【0060】
また、本実施形態では、補正用センサ39として光センサ55,56を用いることで、吐出面NMと被吐出面WMとの距離Hhを高精度に検出することができる。
【0061】
また、本実施形態では、TOFセンサ38がキャリッジ3の移動方向Dsにおいて吐出ヘッド10と隣り合って配置されている。これにより、TOFセンサ38は、キャリッジ3の移動方向Dsにおける移動に伴って吐出面NMと被吐出面WMとの距離Dhを連続的に検出することができる。
【0062】
また、本実施形態では、補正用センサ39は被吐出面WMにおける高さが異なる複数の部分の高さをそれぞれ検出し、制御装置20は補正用センサ39による各検出結果に基づきTOFセンサ38による検出結果を補正する。これにより、より高精度な補正結果を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態では、光センサ55はプラテン6が上下動する際に被吐出面WMにおける同じ位置Wpについての距離Hh1,Hh2をそれぞれ検出し、制御装置20は光センサ55による各検出結果に基づきTOFセンサ38による検出結果を補正する。これにより、吐出面NMと被吐出面WMとの距離に関する情報をより高精度に得ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、TOFセンサ38は搬送方向Dfに直線状に複数並んで配置されていてもよい。この場合、吐出面NMと被吐出面WMとの距離Dhを搬送方向Dfに亘って広く検出することができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、補正用センサ39はプラテン6により被印刷媒体Wが搬送方向Dfに搬送される際に吐出面NMと被吐出面WMとの距離Hhを検出し、TOFセンサ38はキャリッジ3が移動方向Dsに移動する際に距離Dhを検出する。これにより、被印刷媒体W全体についての高精度な、吐出面NMと被吐出面WMとの距離に関する情報を得ることができる。
【0066】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0067】
上記実施形態では、補正用センサ39として、ヘッドギャップセンサ50や光センサ55,56を採用したが、これに限られるものではない。補正用センサ39として、例えばミリ波レーダ等の電波センサや超音波センサ等を用いてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、制御装置20は、ピーク値Vapと暫定プロファイルPzにおけるピーク値Vbpとの差分Gvに基づき暫定プロファイルPzにおける各暫定値Vbを補正した。しかし、これに限られるものではない。制御装置20は、ピーク値Vapでない値(つまり被印刷媒体Wにおける最頂部でない部分の高さの値)とピーク値Vbpとの差分に基づき暫定プロファイルPzにおける各暫定値Vbを補正することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1a 液滴吐出装置
3 キャリッジ
6 プラテン
10 吐出ヘッド
20 制御装置
38 TOFセンサ
39 補正用センサ
50 ヘッドギャップセンサ
55,56 光センサ
121a ノズル孔
Df 搬送方向
Dh 吐出面と被吐出面との距離
Ds 移動方向
Dt インク滴
Gv 差分
Hh 吐出面と被吐出面との距離
NM 吐出面
Pz 暫定プロファイル
Vap ピーク値
Vbp ピーク値
W 被印刷媒体
WM 被吐出面