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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151815
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061643
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】高山 治久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB04
2C056EB08
2C056EB36
2C056EC06
2C056EC07
2C056EC35
2C056EC37
2C056EC41
2C056EC72
2C056EE18
2C056FA04
2C056FA10
2C056FB03
2C056HA05
(57)【要約】
【課題】液滴の吐出曲がりを従来よりも高精度に判別することができる液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出装置は、ノズルから吐出された液滴が飛翔する飛翔空間へ向けて第1光を照射する第1光源と、第1光源とは異なる位置に設けられ、飛翔空間へ向けて第1光とは交差する向きに第2光を照射する第2光源と、第1光および第2光の照射向き又は照射位置が変わるように第1光源および第2光源をそれぞれ独立して移動させる2つの移動装置と、第1光を検出する第1検出素子と、第2光を検出する第2検出素子と、制御装置とを備え、制御装置は第1光源により第1光を照射させて第2光源により第2光を照射させたときに第1検出素子により検出された第1光に関する第1受光量および第2検出素子により検出された第2光に関する第2受光量に基づき液滴の正常飛翔方向に対する吐出曲がり量を算出する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体に液滴を吐出する複数のノズルが開口した吐出面を有する吐出ヘッドと、
前記ノズルから吐出された液滴が飛翔する飛翔空間へ向けて第1光を照射する第1光源と、
前記第1光源とは異なる位置に設けられ、前記飛翔空間へ向けて前記第1光とは交差する向きに第2光を照射する第2光源と、
前記第1光および前記第2光の照射向き又は照射位置が変わるように前記第1光源および前記第2光源をそれぞれ独立して移動させる2つの移動装置と、
前記第1光源に対して前記飛翔空間を挟んで配置され、前記第1光を検出する第1検出素子と、
前記第2光源に対して前記飛翔空間を挟んで配置され、前記第2光を検出する第2検出素子と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
一方の前記移動装置により前記1光源を移動させ他方の前記移動装置により前記第2光源を移動させて前記第1光源により前記第1光を照射させて前記第2光源により前記第2光を照射させたときに、前記第1検出素子により検出された前記第1光に関する第1受光量および前記第2検出素子により検出された前記第2光に関する第2受光量に基づき、前記液滴の正常飛翔方向に対する吐出曲がり量を算出する、液滴吐出装置。
【請求項2】
前記一方の移動装置は、前記第1光源と前記第1検出素子とを支持すると共に、前記第1光が前記飛翔空間を横断するように前記第1光源を基点として回転可能に構成された第1フレームを有し、
前記他方の移動装置は、前記第2光源と前記第2検出素子とを支持すると共に、前記第2光が前記飛翔空間を横断するように前記第2光源を基点として回転可能に構成された第2フレームを有する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記一方の移動装置は、前記第1フレームに連結された第1ギアおよび前記第1ギアを回転させる第1モータを有し、
前記他方の移動装置は、前記第2フレームに連結された第2ギアおよび前記第2ギアを回転させる第2モータを有する、請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記一方の移動装置は、前記第1フレームを回転させる第1リニアアクチュエータを有し、
前記他方の移動装置は、前記第2フレームを回転させる第2リニアアクチュエータを有する、請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記被印刷媒体を搬送方向へ搬送する搬送装置をさらに備え、
前記第1フレームは、前記第1光源から前記第1光が照射されるときには平面視で前記搬送方向に交差するように配置され、前記第1光が照射されないときには平面視で前記搬送方向と平行に配置され、
前記第2フレームは、前記第2光源から前記第2光が照射されるときには平面視で前記搬送方向に交差するように配置され、前記第2光が照射されないときには平面視で前記搬送方向と平行に配置される、請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記吐出ヘッドを移動方向に移動させるキャリッジと、
前記移動方向の一方側に設けられ、前記吐出ヘッドのフラッシング処理時に前記吐出ヘッドから吐出された液滴を受ける受け部と、
前記移動方向の他方側に設けられ、前記吐出ヘッドに対してパージを行うメンテナンスユニットと、をさらに備え、
前記第1光源、前記第2光源、前記第1検出素子および前記第2検出素子は、前記受け部の周囲又は前記メンテナンスユニットの周囲に配置される、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記吐出ヘッドを移動方向に移動させるキャリッジをさらに備え、
前記第1光源は前記移動方向の一方側に配置され、前記第2光源は前記移動方向の他方側に配置される、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記吐出ヘッドの移動方向と同じ方向に係る第1軸および前記第1軸に対して直交して前記被印刷媒体の搬送方向と同じ方向に係る第2軸からなる平面内における前記液滴の座標を(x,y)とし、前記第1軸と前記第2軸との交点座標を原点とし、前記平面内で前記第1光の入射方向と前記第1軸とが成す鋭角をθとし、前記平面内で前記第2光の入射方向と前記第1軸とが成す鋭角をΦとし、前記第1光源の前記平面内の座標を(-A,0)とし、前記第2光源の前記平面内の座標を(A,0)とするとき、
前記制御装置は、
前記第1光および前記第2光が照射された前記液滴の前記平面内のx座標を、x=A×{(tanΦ-tanθ)/(tanΦ+tanθ)}により算出し、
前記第1光および前記第2光が照射された前記液滴の前記平面内のy座標を、y=(2A×tanθ×tanΦ)/(tanθ+tanΦ)により算出する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記吐出曲がり量が閾値以上である場合に、前記吐出曲がり量が生じている前記ノズルに隣り合うノズルから吐出される前記液滴のサイズを前記吐出曲がり量に応じて変えるように、又は、前記吐出曲がり量が生じている前記ノズルの吐出周期を前記吐出曲がり量に応じて変えるように前記吐出ヘッドの動作を制御する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタ等の画像記録装置に用いられる液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出ヘッドから吐出されたインク滴の吐出曲がりを検出する技術がある。吐出ヘッドから吐出されたインク滴には、正常な吐出経路を飛翔するインク滴、許容される曲がりを有する吐出経路を飛翔するインク滴、および異常な吐出経路を飛翔するインク滴が含まれる。例えば特許文献1には、ビーム光の光軸を中心として光学素子を回転させることで、シート状のビーム光を当該光軸回りに回転させることが開示されている。このようにビーム光を回転させることによって、吐出ヘッドから吐出された上記種々の吐出経路を飛翔するインク滴の各々にビーム光を交差させることができる。この交差により生じた反射光を受光素子で受けることによって、受けた反射光の強度に基づきインク滴の吐出曲がりを判別することが可能であるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-037201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吐出ヘッドから吐出されたインク滴には様々な方向に飛翔するインク滴が含まれるため、上記従来の技術ではインク滴の吐出曲がりを正確に判別することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、液滴の吐出曲がりを従来よりも高精度に判別することができる液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液滴吐出装置は、被印刷媒体に液滴を吐出する複数のノズルが開口した吐出面を有する吐出ヘッドと、前記ノズルから吐出された液滴が飛翔する飛翔空間へ向けて第1光を照射する第1光源と、前記第1光源とは異なる位置に設けられ、前記飛翔空間へ向けて前記第1光とは交差する向きに第2光を照射する第2光源と、前記第1光および前記第2光の照射向き又は照射位置が変わるように前記第1光源および前記第2光源をそれぞれ独立して移動させる2つの移動装置と、前記第1光源に対して前記飛翔空間を挟んで配置され、前記第1光を検出する第1検出素子と、前記第2光源に対して前記飛翔空間を挟んで配置され、前記第2光を検出する第2検出素子と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1光源により前記第1光を照射させて前記第2光源により前記第2光を照射させたときに前記第1検出素子により検出された前記第1光に関する第1受光量および前記第2検出素子により検出された前記第2光に関する第2受光量に基づき、前記液滴の正常飛翔方向に対する吐出曲がり量を算出するものである。
【0007】
本発明に従えば、第1光に関する第1受光量を検出することによって、吐出された液滴の存在の有無および液滴の曲がりの有無を検知することができる。また、第1光と交差する向きに照射される第2光に関する第2受光量を検出することによって、上記の液滴がどの方向にどれだけ曲がって飛翔しているかについての座標情報を取得することができる。このことによって、第1光に関する第1受光量のみでは、曲がって飛翔する液滴の座標情報を取得することはできないが、第2受光量を用いることによって、液滴の正常飛翔方向に対する吐出曲がり量を算出することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液滴の吐出曲がりを従来よりも高精度に判別することが可能な液滴吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置が設けられる画像形成装置を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置を示す平面図である。
図3図1の吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
図4図1の画像形成装置の構成要素を示すブロック図である。
図5】吐出ヘッドから吐出されて飛翔中のインク滴に対してレーザ光を照射する様子を示す図である。
図6】第1光源によるレーザ光と第2光源によるレーザ光とをインク滴に照射する構成を示す平面図である。
図7】第1光源を回転移動させる移動装置の構成を示す斜視図である。
図8】吐出曲がり量について説明するための図である。
図9】移動方向に移動する吐出ヘッドにより吐出されるインク滴のサイズについての補正を説明するための図である。
図10】移動方向に移動する吐出ヘッドにより吐出されるインク滴の吐出周期についての補正を説明するための図である。
図11】ラインヘッドにより吐出されるインク滴の吐出周期についての補正を説明するための図である。
図12】吐出不良検知処理から補正処理までの流れを示すフローチャートである。
図13】第1光源および第2光源を移動させる構成の別例を示す図である。
図14】第1フレームを回転させる構成の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る液滴吐出装置について図面を参照して説明する。以下に説明する液滴吐出装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置1aが設けられる画像形成装置1を示す斜視図である。以下では、画像形成位置1として立体物である被印刷媒体Wに対する印刷も可能なインクジェットプリンタを用いた例を開示するが、画像形成装置1には用紙のみに印刷が可能なインクジェットプリンタ等も含まれる。図1において、相互に直交する方向を、第1方向Ds、第2方向Dfおよび第3方向Dzとする。本実施形態では、例えば、第1方向Dsは後述するキャリッジ3の移動方向であり、第2方向Dfは後述する被印刷媒体Wの搬送方向であり、第3方向Dzは上下方向である。以下の説明では、Dsを移動方向と呼び、Dfを搬送方向と呼び、Dzを上下方向と呼ぶ。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置1は、筐体2と、操作キー4と、表示部5と、被印刷媒体Wが配置されるプラテン6と、上部カバー7とを備える。プラテン6が搬送装置に相当する。また、画像形成装置1は、吐出ヘッド10と、制御装置20(図4)を含むコントローラユニット19とを有する図2の液滴吐出装置1aを備える。吐出ヘッド10は、液滴として例えば紫外線硬化型のインク滴Id(図5)を吐出するインクジェットヘッドである。
【0013】
筐体2は箱状に形成されている。筐体2は開口部2aを有する。筐体2には操作キー4が設けられている。また、操作キー4の近傍には表示部5が設けられている。操作キー4はユーザによる操作入力を受け付ける。表示部5は例えばタッチパネルで構成され、所定情報を表示する。表示部5の一部は操作キーとしても機能する。コントローラユニット19は、操作キー4からの入力又は図略の通信インタフェースを介する外部入力に基づき印刷機能を実現すると共に表示部5の表示を制御する。
【0014】
プラテン6は被印刷媒体Wを載置可能に構成されている。プラテン6は所定の厚みを有し、例えば搬送方向Dfを長手方向とする矩形状の板材により構成される。プラテン6は図略のプラテン支持台により、取り外し可能に支持されている。プラテン支持台は搬送モータ33(図4)の駆動により被印刷媒体Wへの印刷を実行する印刷位置と被印刷媒体Wをプラテン6から取り外す着脱位置との間で搬送方向Dfに移動可能に構成される。これにより、プラテン6は被印刷媒体Wの被吐出面を吐出ヘッド10に対して搬送方向Dfに相対移動させる。印刷時にはプラテン6が搬送方向Dfに移動するため、プラテン6上に載置された被印刷媒体Wが搬送方向Dfに沿って搬送される。
【0015】
上部カバー7は、その端部を持ち上げると上方へ回動するように構成されている。これにより、筐体2の内部が露出する。
【0016】
図2に示すように、液滴吐出装置1aは、貯留タンク62、例えば2つの吐出ヘッド10(10A,10B)と2つの紫外線照射装置40(40A,40B)が搭載されたキャリッジ3、および一対のガイドレール67を備える。なお、2つの吐出ヘッド10と2つの紫外線照射装置40を設けることにしたが、これに限定されるものではなく、1つの吐出ヘッド10と1つの紫外線照射装置40を設けてもよい。
【0017】
キャリッジ3は、移動方向Dsに延在する一対のガイドレール67に支持され、当該ガイドレール67に沿って移動方向Dsに往復動する。これにより、2つの吐出ヘッド10(10A,10B)と2つの紫外線照射装置40(40A,40B)は移動方向Dsに往復動可能になっている。また、吐出ヘッド10はチューブ62aを介して貯留タンク62に接続される。
【0018】
本実施形態において、例えば、吐出ヘッド10Aは、カラーインクと総称されることがあるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色のインク滴Idを吐出する。以上の4色のインク滴Idが被印刷媒体Wに吐出されることで当該被印刷媒体Wにカラー画像が印刷される。一方、吐出ヘッド10Bは、ホワイト(W)のインク滴Idおよびクリア(Cr)のインク滴Idを吐出する。被印刷媒体Wとして例えば布帛にカラー画像を印刷する際には、当該布帛の色や布帛の材質への影響を低減するために、下地インクとして白インクのインク滴Idが先に吐出され、当該白インクのインク滴Idの上にカラーインクのインク滴Idが吐出される。また、クリアインクのインク滴Idは光沢を付与する場合や印刷部分の保護を行う場合に吐出される。
【0019】
貯留タンク62にはインクが貯留されている。貯留タンク62はインクの種類ごとに設けられている。貯留タンク62は、例えば6つ設けられ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ、ホワイト、およびクリアのインクがそれぞれ貯留される。
【0020】
液滴吐出装置1aはさらにパージ部50および受け部54を備える。受け部54はキャリッジ3の移動領域に重なるように一対のガイドレール67のうち移動方向Dsの一方側に配置される。パージ部50はメンテナンスユニットに相当し、キャリッジ3の移動領域に重なるように一対のガイドレール67のうち移動方向Dsの他方側に配置される。
【0021】
パージ部50は、キャップ51、吸引ポンプ52および吸引位置と待機位置との間でキャップ51を昇降する図略の昇降機構を有する。吸引ポンプ52はキャップ51に接続されている。待機位置では吐出面NM(図3)はキャップ51から離間する。一方、吸引位置では吐出面NMがキャップ51に覆われ、密閉空間が形成される。キャップ51が吸引位置にあるときに吸引ポンプ52が駆動されると、上記密閉空間が吸引されてノズル孔121a(図3)からインクが排出されるパージ処理が行われる。
【0022】
また、受け部54はフラッシング処理によって吐出ヘッド10から吐出されたインク滴Idを受ける。
【0023】
次に吐出ヘッド10の詳細構造について説明する。図3に示すように、吐出ヘッド10は貯留タンク62からのインクを用いてインク滴Idを吐出する複数のノズル121を有する。吐出ヘッド10は流路形成体と容積変更部の積層体を有する。流路形成体には、その内部にインク流路が形成され、その下面である吐出面NMに複数のノズル孔121aが開口している。また、上記の容積変更部は、駆動されてインク流路の容積を変更する。このとき、ノズル孔121aではメニスカスが振動してインクが吐出される。
【0024】
吐出ヘッド10の上述の流路形成体は複数のプレートの積層体であり、容積変更部は振動板155およびアクチュエータ(圧電素子)160を含む。振動板155の上には後述の共通電極161が接続されている。
【0025】
複数のプレートは、下から順に、ノズルプレート146、スペーサプレート147、第1流路プレート148、第2流路プレート149、第3流路プレート150、第4流路プレート151、第5流路プレート152、第6流路プレート153、および第7流路プレート154を含んで積層されている。
【0026】
各プレートには大小種々の孔および溝が形成されている。各プレートが積層された流路形成体の内部では孔および溝が組み合わされて、複数のノズル121、複数の個別流路164およびマニホールド122がインク流路として形成されている。
【0027】
ノズル121はノズルプレート146を積層方向に貫通し形成されている。ノズルプレート146の吐出面NMには、ノズル121の先端である複数のノズル孔121aが搬送方向Dfに複数並んでノズル列を形成している。
【0028】
マニホールド122は、吐出圧力が付与される圧力室128に対してインクを供給する。マニホールド122は、搬送方向Dfに延在しており、複数の個別流路164の各一端にそれぞれ接続されている。すなわち、マニホールド122はインクの共通流路として機能する。マニホールド122は、第1流路プレート148~第4流路プレート151を積層方向に貫通した貫通孔および第5流路プレート152の下面から窪んだ窪みが積層方向に重なって形成されている。
【0029】
ノズルプレート146はスペーサプレート147の下方に配置されている。そのスペーサプレート147は例えばステンレス鋼材で形成される。スペーサプレート147は、例えばハーフエッチングによりノズルプレート146側の面からスペーサプレート147の厚み方向に凹むことで、ダンパ部147aを成す薄肉部分とダンパ空間147bとが形成される凹部145を有する。これにより、マニホールド122とノズルプレート146との間に、バッファー空間としてのダンパ空間147bが形成される。
【0030】
マニホールド122には供給ポート122aが連通している。供給ポート122aは例えば筒状に形成され、搬送方向Dfの一端に設けられている。なお、マニホールド122と供給ポート122aとは図略の流路により繋がっている。
【0031】
各個別流路164はマニホールド122にそれぞれ接続されている。個別流路164は、その上流端がマニホールド122に接続され、その下流端がノズル121の基端に接続されている。個別流路164は、第1連通孔125、個別絞り路である供給絞り路126、第2連通孔127、圧力室128、およびディセンダ129で構成されており、これらの構成要素はこの順で配置される。
【0032】
第1連通孔125は、その下端がマニホールド122の上端に接続し、マニホールド122から積層方向の上方に延び、第5流路プレート152における上側部分を積層方向に貫通している。
【0033】
供給絞り路126の上流端は第1連通孔125の上端に接続されている。供給絞り路126は、例えばハーフエッチングにより形成され、第6流路プレート153の下面から窪んだ溝により構成されている。また、第2連通孔127は、その上流端が供給絞り路126の下流端に接続され、供給絞り路126から積層方向の上方に延び、第6流路プレート153を積層方向に貫通して形成されている。
【0034】
圧力室128は、その上流端が第2連通孔127の下流端に接続されている。圧力室128は、第7流路プレート154を積層方向に貫通して形成されている。
【0035】
ディセンダ129は、スペーサプレート147、第1流路プレート148、第2流路プレート149、第3流路プレート150、第4流路プレート151、第5流路プレート152、および第6流路プレート153を積層方向に貫通して形成されている。ディセンダ129は、その上流端が圧力室128の下流端に接続され、下流端がノズル121の基端に接続されている。ノズル121は、例えば積層方向においてディセンダ129に重なり、幅方向においてディセンダ129の中央に配置されている。
【0036】
振動板155は、第7流路プレート154の上に積層されており、圧力室128の上端開口を覆っている。
【0037】
アクチュエータ160は、共通電極161、圧電層162および個別電極163を含み、これらはこの順で配置されている。共通電極161は振動板155の全面を覆っている。圧電層162は共通電極161の全面を覆っている。個別電極163は、圧力室128ごとに設けられ、圧電層162上に配置されている。1つの個別電極163、共通電極161および両電極で挟まれた部分の圧電層162により1つのアクチュエータ160が構成される。
【0038】
個別電極163はドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、制御装置20から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極163に印加する。これに対して、共通電極161は常にグランド電位に保持されている。このような構成において、圧電層162の活性部は駆動信号に応じて共通電極161および個別電極163と共に面方向に伸縮する。これに応じて、振動板155が協働して変形し、圧力室128の容積を増減する方向に変化する。これにより、インク滴Idをノズル121から吐出させる吐出圧力が圧力室128に付与される。
【0039】
吐出ヘッド10において、インクは、供給ポート122aを介してマニホールド122に流入すると、当該マニホールド122から第1連通孔125を介して供給絞り路126に流入し、供給絞り路126から第2連通孔127を介して圧力室128に流入する。その後、インクはディセンダ129を流れ、ノズル121に流入する。ここで、アクチュエータ160により圧力室128に吐出圧力が付与されると、インク滴Idがノズル孔121aから吐出される。
【0040】
図4に示すように、画像形成装置1は、上述の構成要素の他、コントローラユニット19、読取装置26、モータドライバIC30,31、ヘッドドライバIC32、搬送モータ33、キャリッジモータ34、照射装置ドライバIC35、パージドライバIC36、光源ドライバIC37、検出ドライバIC38、およびモータドライバIC39を備える。また、液滴吐出装置1aは上記構成要素に加えて第1光源65、第2光源66、第1検出素子67、第2検出素子68、第1モータ69および第2モータ70を備える。
【0041】
コントローラユニット19は、CPUで構成される制御装置20、記憶部(ROM21、RAM22、EEPROM23、HDD24)、およびASIC25を有する。制御装置20は、上記の各記憶部に接続されていると共に各ドライバIC30~32,35~39および表示部5を制御する。
【0042】
制御装置20は、ROM21に記憶された所定の処理プログラムを実行することにより、種々の機能を実行する。制御装置20は、コントローラユニット19に1つのプロセッサとして実装されていてもよいし、互いに協働する複数のプロセッサとして実装されていてもよい。処理プログラムは、コンピュータ読取可能な光磁気ディスク等又はUSBフラッシュメモリ等の記録媒体KBから読取装置26で読み出されてROM21に記憶される。RAM22には、外部から受信した画像データおよび制御装置20の演算結果等が記憶される。EEPROM23にはユーザが入力した各種の初期設定情報が格納されている。HDD24には特定情報などが記憶される。
【0043】
ASIC25には、モータドライバIC30,31,39と、ヘッドドライバIC32と、照射装置ドライバIC35と、パージドライバIC36と、光源ドライバIC37と、検出ドライバIC38とが接続される。制御装置20は、ユーザから印刷ジョブを受け付けると、処理プログラムに基づいて画像記録指令をASIC25へ出力する。ASIC25は、画像記録指令に基づいて各ドライバIC30~32,35~39を駆動する。制御装置20は、モータドライバIC30により搬送モータ33を駆動することでプラテン6を搬送方向Dfに移動させる。制御装置20は、モータドライバIC31によりキャリッジモータ34を駆動することでキャリッジ3を移動方向Dsに移動させる。
【0044】
制御装置20は、外部装置等から取得した画像データを被吐出面にインク滴Idを吐出するための吐出データに変換する。制御装置20は、変換した吐出データに基づいてヘッドドライバIC32により吐出ヘッド10からインク滴Idを吐出させる。また、制御装置20は、照射装置ドライバIC35により紫外線照射装置40の各発光ダイオードチップから紫外線を照射させる。制御装置20はパージドライバIC36によりパージ部50を駆動する。制御装置20は光源ドライバIC37により第1光源65および第2光源66を駆動し、検出ドライバIC38により第1検出素子67および第2検出素子68を駆動する。また、制御装置20はモータドライバIC39により第1モータ69および第2モータ70を駆動する。
【0045】
図5は吐出ヘッド10から吐出されて飛翔中のインク滴Idに対してレーザ光Lz1を照射する様子を示す図である。図6は第1光源65によるレーザ光Lz1と第2光源66によるレーザ光Lz2とをインク滴Idに照射する構成を示す平面図である。図7は第1光源65を回転移動させる移動装置80の構成を示す斜視図である。
【0046】
図5では、第1光源65から出射されるレーザ光Lz1が第1検出素子67により検出される構成について代表的に説明する。なお、第2光源66から出射されるレーザ光Lz2(後述の図6)が第2検出素子68により検出される構成も上記と同じであるため、特筆すべき場合を除いて説明を省略する。なお、本実施形態においてレーザ光Lz1が第1光に相当し、レーザ光Lz2が第2光に相当する。
【0047】
図5に示すように、第1光源65は、当該第1光源65から出射されるレーザ光Lz1の光軸方向において吐出ヘッド10の位置を基準として一方側に配置される。第1光源65は、ノズル121から吐出されたインク滴Idが飛翔する飛翔空間Shへ向けてレーザ光Lz1を照射する。第1光源65は箱状の光源収納部65a内に配置される。光源収納部65aは、第1光源65から出射されるレーザ光Lz1の出射方向の側にスリット65bを有する。光源収納部65a内には、スリット65bを当該光源収納部65aの内側から覆うようにレンズ65cが配置されている。このような構成において、第1光源65から出射されたレーザ光Lz1はレンズ65cを透過した後、吐出ヘッド10から吐出されて飛翔空間Shを飛翔中のインク滴Idに照射される。
【0048】
第2光源66は第1光源65とは異なる位置に設けられる。第2光源66は飛翔空間Shへ向けてレーザ光Lz1とは交差する向きにレーザ光Lz2を照射する。
【0049】
第1検出素子67はレーザ光Lz1の光軸方向において吐出ヘッド10の位置を基準として他方側に配置される。第1検出素子67は第1光源65に対して飛翔空間Shを挟んで配置される。第1検出素子67はレーザ光Lz1を検出する。同様に、第2検出素子68はレーザ光Lz1の光軸方向において吐出ヘッド10の位置を基準として他方側に配置される。第2検出素子68は第2光源66に対して飛翔空間Shを挟んで配置される。第2検出素子68はレーザ光Lz2を検出する。
【0050】
図6に示すように、第1光源65および第1検出素子67はレーザ光Lz1の光軸方向に延在する第1フレーム71に支持されている。第1フレーム71は、レーザ光Lz1が飛翔空間Shを横断しかつ当該レーザ光Lz1の照射向きが変わるように第1光源65を基点として回転可能に構成されている。同様に、第2光源66および第2検出素子68はレーザ光Lz2の光軸方向に延在する第2フレーム72に支持されている。第2フレーム72は、レーザ光Lz2が飛翔空間Shを横断しかつ当該レーザ光Lz2の照射向きが変わるように第2光源66を基点として回転可能に構成されている。また、同図において第1光源65は移動方向Dsの一方側に配置されており、第2光源66は移動方向Dsの他方側に配置されている。
【0051】
第1フレーム71を第1光源65を基点として回転させる移動装置80の構成について説明する。図7に示すように、移動装置80は、上述の第1フレーム71、第1モータ69、第1モータ69の回転軸75に設けられたウォーム76、ウォームホイール73、および連結軸77を有する。ウォームホイール73が第1ギアに相当する。ウォーム76とウォームホイール73との組み合わせが一般にウォームギアと呼ばれる。ウォームギアを採用すれば、第1モータ69の回転数を落として回転力を伝達することができ、またトルクを上げることができる。
【0052】
ウォーム76の軸とウォームホイール73の軸とが直交した状態でウォーム76とウォームホイール73とは互いに噛合されている。また、連結軸77は上下方向Dzに沿って延在する。連結軸77の下端にウォームホイール73が設けられており、当該連結軸77の上端に第1フレーム71の基端が接続されている。
【0053】
上記の構成において、制御装置20による制御によって第1モータ69の回転軸75が当該回転軸75回りに回転されると、ウォーム76も回転軸75回りに回転する。このとき、ウォームホイール73がその軸回りに回転するため、これに伴いウォームホイール73を介して連結軸77がその軸回りに回転する。これによって、第1フレーム71は第1光源65を基点として回転する。これにより、第1光源65により出射されるレーザ光Lz1の照射向きを変えることができる。
【0054】
同様に、移動装置81は、第2フレーム72、第2モータ70、第2モータ70の回転軸75に設けられたウォーム76、ウォームホイール74、および連結軸77を有する。ウォームホイール74が第2ギアに相当する。なお、移動装置81による第2光源66を基点とした第2フレーム72の回転は上記第1フレーム71の要領と同じであるため、説明を省略する。
【0055】
ここで、制御装置20はインク滴Idの正常飛翔方向に対する吐出曲がり量を算出する。以下、詳細に説明する。
【0056】
最初に図8を用いて吐出曲がり量について説明する。図8に示すように、吐出ヘッド10の正常なノズル121から吐出されたインク滴Idは正常飛翔方向Dnに沿って飛翔する。これに対して、吐出不良が生じているノズル121から吐出されたインク滴Idは、正常飛翔方向Dnに対して例えば第1光源65から離れる側に曲がり角αだけ傾斜した曲がり飛翔方向Dmに沿って飛翔する。この場合、正常飛翔方向Dnに沿って飛翔するインク滴Idに対して当該正常飛翔方向Dnに直交する方向に沿うレーザ光Lz1を照射することができる。また、正常飛翔方向Dnに対して例えば第1光源65から離れる側に曲がり角αだけ傾斜した曲がり飛翔方向Dmに沿って飛翔する上記のインク滴Idに対してもレーザ光Lz1を照射することはできる。しかし、このように曲がり飛翔方向Dmに飛翔するインク滴Idにレーザ光Lz1を照射することはできても、当該インク滴Idはレーザ光Lz1に対しては前方(つまりレーザ光Lz1の進行方向)に位置する。そのため、レーザ光Lz1のみによっては吐出曲がり量である曲がり角αを検知することができない。そこで、レーザ光Lz1と交差する向きからレーザ光Lz2を出射してインク滴Idに照射する。
【0057】
第2光源66は飛翔空間Shへ向けてレーザ光Lz2を照射する。図6において、吐出ヘッド10の移動方向Dsと同じ方向に係るx軸およびx軸に対して直交して被印刷媒体Wの搬送方向Dfと同じ方向に係るy軸からなる平面内におけるインク滴Idの座標を(x,y)とする。なお、x軸が第1軸に相当し、y軸が第2軸に相当する。また、x軸とy軸との交点座標を原点とし、上記平面内でレーザ光Lz1の入射方向Dk1とx軸とが成す鋭角をθとし、上記平面内でレーザ光Lz2の入射方向Dk2とx軸とが成す鋭角をΦとする。さらに、第1光源65の平面内の座標を(-A,0)とし、第2光源66の平面内の座標を(A,0)とする。
【0058】
制御装置は、第1光源65によりレーザ光Lz1をインク滴Idに照射させて第2光源66によりレーザ光Lz2をインク滴Idに照射させる。このとき、制御装置20は、第1検出素子67により検出されたレーザ光Lz1に関する第1受光量および第2検出素子68により検出されたレーザ光Lz2に関する第2受光量に基づき、インク滴Idの正常飛翔方向Dnに対する曲がり角αを吐出曲がり量として算出する。具体的には、図6において、制御装置20はレーザ光Lz1およびレーザ光Lz2が照射されたインク滴Idの平面内のx座標を、x=A×{(tanΦ-tanθ)/(tanΦ+tanθ)}により算出する。また、制御装置20はレーザ光Lz1およびレーザ光Lz2が照射されたインク滴Idの平面内のy座標を、y=(2A×tanθ×tanΦ)/(tanθ+tanΦ)により算出する。そして、制御装置20は、曲がり飛翔方向Dmに飛翔するインク滴Idについて算出した上記x座標およびy座標と、予めROM21等に記憶された正常飛翔方向Dnに飛翔するインク滴Idのx座標およびy座標とをそれぞれ比較して各差分を取得する。制御装置20は、比較結果における各差分に基づいて曲がり角αを吐出曲がり量として算出する。
【0059】
制御装置20は、異なるノズル121から吐出されるインク滴Idにレーザ光Lz1を照射する際には移動装置80の第1回転モータ69を駆動する。これにより、第1フレーム71が回転するため、レーザ光Lz1の照射向きを変えることができ、異なるノズル121から吐出されたインク滴Idに当該レーザ光Lz1を照射することができる。同様に、制御装置20は、異なるノズル121から吐出されたインク滴Idにレーザ光Lz2を照射する際には移動装置81の第2回転モータ70を駆動する。これにより、第2フレーム72が回転するため、レーザ光Lz2の照射向きを変えることができ、異なるノズル121から吐出されたインク滴Idに当該レーザ光Lz2を照射することができる。これにより、各ノズル121から吐出されるインク滴Idについて、それぞれ吐出曲がり量を算出することができる。
【0060】
第1フレーム71は、第1光源65からレーザ光Lz1が照射されるときには平面視で搬送方向Dfに交差するように配置される。一方、図6において二点鎖線で示すように、第1フレーム71は、第1光源65からレーザ光Lz1が照射されないときには平面視で搬送方向Dfと平行に配置される。同様に、第2フレーム72は、第2光源66からレーザ光Lz2が照射されるときには平面視で搬送方向Dfに交差するように配置される。一方、図6において二点鎖線で示すように、第2フレーム72は、第2光源66からレーザ光Lz2が照射されないときには平面視で搬送方向Dfと平行に配置される。
【0061】
また、図6に示すように、第1光源65、第2光源66、第1検出素子67および第2検出素子68は、受け部54を取り囲むように当該受け部54の周囲に配置される。なお、第1光源65、第2光源66、第1検出素子67および第2検出素子68の配置は上記に限定されるものではなく、メンテナンスユニットであるパージ部50を取り囲むように当該パージ部50の周囲に設定してもよい。
【0062】
上述のように、制御装置20は吐出曲がり量として曲がり角αを算出した後、当該吐出曲がり量に応じて吐出に関する補正を行う。以下、詳しく説明する。
【0063】
図9は移動方向Dsに移動する吐出ヘッド10により吐出されるインク滴Idのサイズについての補正を説明するための図である。図10は移動方向Dsに移動する吐出ヘッド10により吐出されるインク滴Idの吐出周期についての補正を説明するための図である。
【0064】
図9に示すように、ノズル121の吐出不良に起因して吐出曲がり量が閾値以上である場合には、インク滴Idmが想定位置から大きくずれて着弾する。そのため、インク滴Idmに隣接する各インク滴Idとインク滴Idmとの間隔が均等ではなくなり、インク滴濃度に偏りが生じる。
【0065】
そこで、制御装置20は、算出した吐出曲がり量が閾値以上である場合に、吐出曲がり量が生じているノズル121に隣り合うノズル121から吐出されるインク滴Idのサイズを吐出曲がり量に応じて変えるように吐出ヘッド10の動作を制御する。例を挙げて説明すると、図9の補正前においてインク滴Idmとの間隔が比較的小さいインク滴Idについては、同図の補正後において比較的小さいサイズのインク滴Idsが着弾される。一方、図9の補正前においてインク滴Idmとの間隔が比較的大きいインク滴Idについては、同図の補正後において比較的大きいサイズのインク滴Idbが着弾される。これにより、インク滴濃度の偏りが生じることを抑えることができる。
【0066】
或いは、制御装置20は、算出した吐出曲がり量が閾値以上である場合に、吐出曲がり量が生じているノズル121の吐出周期を吐出曲がり量に応じて変えるように吐出ヘッド10の動作を制御する。例を挙げて説明すると、図10の補正前においてインク滴Idmが着弾されることで、当該インク滴Idmと移動方向Dsの一方側において隣り合うインク滴Idとの間隔が、インク滴Idmと移動方向Dsの他方側において隣り合うインク滴Idとの間隔よりも小さくなってしまう。そこで、制御装置20は、吐出不良が生じているノズル121の吐出周期を変える。これにより、補正後において、インク滴Idmと移動方向Dsの一方側において隣り合うインク滴Idとの間隔を補正前よりも大きくすることができる。つまり、吐出タイミングを変えることで移動方向Dsにおける着弾位置のずれを補正することができる。このように吐出周期を変えることによっても、インク滴濃度の偏りが生じることを抑えることができる。
【0067】
図11はラインヘッドにより吐出されるインク滴Idの吐出周期についての補正を説明するための図である。吐出ヘッド10としてラインヘッドを採用する場合の補正方法は基本的に図10の内容と同じである。
【0068】
制御装置20は、算出した吐出曲がり量が閾値以上である場合に、吐出曲がり量が生じているノズル121の吐出周期を吐出曲がり量に応じて変えるように吐出ヘッド10の動作を制御する。図11の補正前においてインク滴Idmが着弾されることで、当該インク滴Idmと搬送方向Dfの一方側において隣り合うインク滴Idとの間隔が、インク滴Idmと搬送方向Dfの他方側において隣り合うインク滴Idとの間隔よりも小さくなってしまう。
【0069】
そこで、制御装置20は、吐出不良が生じているノズル121の吐出周期を変える。これにより、補正後において、インク滴Idmと搬送方向Dfの一方側において隣り合うインク滴Idとの間隔と、インク滴Idmと搬送方向Dfの他方側において隣り合うインク滴Idとの間隔とを同じにすることができる。つまり、吐出タイミングを変えることで搬送方向Dfにおける着弾位置のずれを補正することができる。これにより、インク滴濃度の偏りが生じることを抑えることができる。なお、ラインヘッドにより吐出されるインク滴Idのサイズについての補正は図9の内容と同じであるため説明を省略する。
【0070】
図12は吐出不良検知処理から補正処理までの流れを示すフローチャートである。図12に示すように、制御装置20は吐出不良検知処理において吐出曲がり量を算出する(ステップS1)。算出した吐出曲がり量が閾値以上である場合(ステップS2でYES)、制御装置20はパージ部50に吐出ヘッド10のパージ処理を実行させる(ステップS3)。一方、算出した吐出曲がり量が閾値未満である場合(ステップS2でNO)、制御装置20は吐出ヘッド10に通常印刷を実行させる(ステップS4)。なお、吐出不良検知処理においては不吐出の有無も併せて判別してもよい。
【0071】
ステップS3の処理の後、制御装置20は吐出不良検知処理を再度行う(ステップS5)。すなわち、制御装置20はステップS1で吐出曲がり量を算出したノズル121について再び吐出曲がり量を算出する。算出した吐出曲がり量が閾値以上である場合(ステップS6でYES)、制御装置20は吐出不良の程度が補正可能な範囲か否かを判別する(ステップS7)。この場合、補正が不能である場合として、例えば吐出曲がり量が予め設定した上限値に達している場合、吐出不良が生じているノズル121の数が予め設定した上限値に達している場合、および吐出不良が生じているノズル121が2つ以上隣接している場合等を挙げることができる。一方、算出した吐出曲がり量が閾値未満である場合(ステップS6でNO)、制御装置20は吐出ヘッド10に通常印刷を実行させる(ステップS9)。
【0072】
吐出不良の程度が補正可能な範囲である場合(ステップS7でYES)、制御装置20は上述した補正処理を実行し(ステップS8)、ステップS1の処理に戻る。一方、吐出不良の程度が補正可能な範囲でない場合(ステップS7でNO)、制御装置20は吐出ヘッド10の交換を警告する(ステップS10)。具体的には、制御装置20は音声装置に警告音を出力させ又は表示部5において警告表示を行う。
【0073】
以上説明したように、液滴吐出装置1aによれば、レーザ光Lz1に関する第1受光量を検出することによって、吐出されたインク滴Idの存在の有無および当該インク滴Idの曲がりの有無を検知することができる。また、レーザ光Lz1と交差する向きに照射されるレーザ光Lz2に関する第2受光量を検出することによって、上記のインク滴Idがどの方向にどれだけ曲がって飛翔しているかについての座標情報を取得することができる。このことによって、レーザ光Lz1に関する第1受光量のみでは、曲がって飛翔するインク滴Idの座標情報を取得することはできないが、レーザ光Lz2に関する第2受光量を用いることによって、インク滴Idの正常飛翔方向Dnに対する吐出曲がり量を算出することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態では、飛翔空間Shへ向かうレーザ光Lz1およびレーザ光Lz2の照射向きが変わるように第1光源65および第2光源66が回転移動する。これにより、曲がって飛翔するインク滴Idに対してレーザ光Lz2又はレーザ光Lz1を照射し易くなる。これによって、インク滴Idの吐出曲がりを高精度に検知することができる。
【0075】
また、本実施形態では、第1モータ69により第1フレーム71を回転することができ、第2モータ70により第2フレーム72を回転することができる。これにより、低コストかつシンプルで小型の構成により第1フレーム71および第2フレーム72を回転させることができる。
【0076】
また、本実施形態では、第1フレーム71は、第1光源65からレーザ光Lz1が照射されないときには平面視で搬送方向Dfと平行に配置される。また、第2フレーム72は、第2光源66からレーザ光Lz2が照射されないときには平面視で搬送方向Dfと平行に配置される。これにより、液滴吐出装置1aの省スペース化を実現することができる。
【0077】
また、本実施形態では、第1光源65、第2光源66、第1検出素子67および第2検出素子68は受け部54又はパージ部50の周囲に配置される。この場合、熱源である第1光源65と第2光源66を移動させないため、吐出ヘッド10周辺の環境温度が安定し易い。これにより、吐出ヘッド10に対する温度の影響を抑制することができ、ゆえに駆動波形が変わってしまうことを防ぐことができる。また、被印刷媒体Wへの印刷処理時における吐出ヘッド10に対する干渉を防止することができる。
【0078】
また、本実施形態では、第1光源65は移動方向Dsの一方側に配置されており、第2光源66は移動方向Dsの他方側に配置されている。この場合、熱源である第1光源65および第2光源66を移動方向Dsの一方側に集めて配置する場合よりも、吐出ヘッド10に対する熱の影響を抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態では、レーザ光Lz1およびレーザ光Lz2が照射されたインク滴Idの平面内のx座標が、x=A×{(tanΦ-tanθ)/(tanΦ+tanθ)}により算出される。また、レーザ光Lz1およびレーザ光Lz2が照射されたインク滴Idの平面内のy座標が、y=(2A×tanθ×tanΦ)/(tanθ+tanΦ)により算出される。これによって、インク滴Idの吐出曲がり量をより高精度に取得することができる。
【0080】
さらに、本実施形態では、制御装置20は、算出した吐出曲がり量が閾値以上である場合に、吐出曲がり量が生じているノズル121に隣り合うノズル121から吐出されるインク滴Idのサイズを吐出曲がり量に応じて変えるように吐出ヘッド10の動作を制御する。或いは、制御装置20は、算出した吐出曲がり量が閾値以上である場合に、吐出曲がり量が生じているノズル121の吐出タイミングを吐出曲がり量に応じて変えるように吐出ヘッド10の動作を制御する。この点、吐出曲がりを生じさせている不良ノズルから吐出されたインク滴Idmの着弾位置は所望位置からずれる。しかし、不良ノズルに隣り合う各ノズル121から吐出されるインク滴Idのサイズを変え又は不良ノズルの吐出周期を変えることによって、インク滴濃度の偏りが生じることを抑えることができる。
【0081】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0082】
上記実施形態では、第1光源65および第2光源66を回転させてレーザ光Lz1およびレーザ光Lz2の照射向きを変えることで、各ノズル121から吐出されるインク滴Idにレーザ光Lz1,Lz2を照射させた。しかし、インク滴Idにレーザ光Lz1,Lz2を照射させるための構成は上記構成に限定されるものではない。図13は第1光源および第2光源を移動させる構成の別例を示す図である。
【0083】
図13に示すように、第1フレーム71と第2フレーム72とを互いに直交するように配置することができる。同図では、第1フレーム71は移動方向Dsに延在するように配置され、第2フレーム72は搬送方向Dfに延在するように配置される。この場合、第1フレーム71は搬送方向Dfに移動可能に構成され、第2フレーム72は移動方向Dsに移動可能に構成される。この構成によっても、各ノズル121から吐出されるインク滴Idに対してレーザ光Lz1,Lz2を照射させることができる。
【0084】
また、上記実施形態では、第1モータ69により第1フレーム71を回転させ、第2モータ70により第2フレーム72を回転させた。しかし、第1フレーム71と第2フレーム72を回転させるための構成は上記構成に限定されるものではない。図14は第1フレーム71を回転させる構成の別例を示す図である。
【0085】
図14に示すように、第1光源65および第1検出素子67は第1フレーム71aに支持されている。第1フレーム71aは例えば移動方向Dsおよび搬送方向Dfに交差するように配置される。第1フレーム71aは伸縮自在な伸縮部79を有する。このような第1フレーム71aは第1リニアアクチュエータ84により回転移動する。
【0086】
第1リニアアクチュエータ84は移動方向Dsに延在するリニアガイド86と当該リニアガイド86に沿って摺動するスライダー86とを有する。上述と同様に第1モータ69により第1フレーム71aが回転する際に、スライダー86がリニアガイド86に沿って移動方向Dsの一方側に直線移動すると共に第1フレーム71aの伸縮部79が縮む。このように、第1リニアアクチュエータ84により第1フレーム71aを回転移動させることができる。この点、第1モータ69の動力により第1フレーム71を平面内で回転させる際には、当該第1モータ69の回転角が制御因子になる。そのため、第1フレーム71の回転移動量が大きくなるほど、第1フレーム71の移動先である指定位置に対するずれ量が大きくなる。これに対して、第1リニアアクチュエータ84においては、第1フレーム71aを平面内で回転させる際の制御因子はリニアガイド86上におけるスライダー86の位置である。そのため、第1フレーム71aの平面内における回転移動量を大きくしても、第1フレーム71aの位置精度は変わらない。これにより、第1フレーム71aを高精度に回転させることが可能となる。なお、第1フレーム71aに伸縮部79を設けたが、これに限らず、第1フレーム71aに伸縮部79を設けずにスライダー86をリニアガイド86に沿って案内するガイド機構を採用することも可能である。なお、第2光源66および第2検出素子68を支持する第2フレーム72aを回転移動させる第2リニアアクチュエータ85の機能は第1リニアアクチュエータ84と同じであるため説明を省略する。
【0087】
さらに、上記実施形態では、第1モータ69の動力を、ウォーム76およびウォームホイール74により連結軸77を介して第1フレーム71を回転させる回転力に変換したが、これに限定されるものではない。例えば、第1モータ69の動力を連結軸77を介して直接第1フレーム71を回転させる回転力に変換することもできる。
【符号の説明】
【0088】
1a 液滴吐出装置
3 キャリッジ
6 プラテン
10 吐出ヘッド
20 制御装置
50 パージ部
54 受け部
65 第1光源
66 第2光源
67 第1検出素子
68 第2検出素子
69 第1モータ
70 第2モータ
71,71a 第1フレーム
72,72a 第2フレーム
73,74 ウォームホイール
80,81 移動装置
84 第1リニアアクチュエータ
85 第2リニアアクチュエータ
121 ノズル
Df 搬送方向
Dn 正常飛翔方向
Ds 移動方向
Lz1,Lz2 レーザ光
NM 吐出面
Sh 飛翔空間
W 被印刷媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14