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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151828
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】リフォーム用の防音床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/20 20060101AFI20231005BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20231005BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04F15/20
E04F15/02 A
E04G23/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061659
(22)【出願日】2022-04-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】595143458
【氏名又は名称】有限会社スイサク
(74)【代理人】
【識別番号】100079234
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 彰夫
(72)【発明者】
【氏名】櫂谷 克己
【テーマコード(参考)】
2E176
2E220
【Fターム(参考)】
2E176AA03
2E176AA09
2E176BB25
2E176BB29
2E220AA19
2E220AA29
2E220AA33
2E220AC01
2E220BA01
2E220BA19
2E220BB04
2E220BB16
2E220BC03
2E220BC06
2E220CA07
2E220DB09
2E220DB19
2E220EA03
2E220FA03
2E220GA09X
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GA25Y
2E220GA26Y
2E220GB01X
2E220GB01Y
2E220GB32X
2E220GB33X
2E220GB33Y
2E220GB35Y
2E220GB38Y
(57)【要約】
【課題】
凹凸面を有する薄板状の硬質素材であって、主としてリフォームの際にフローリング材の上に貼着する防音床材を提案する。
【解決手段】
凹凸面を有する硬質素材である床材本体2と、該床材本体の上面に貼着する表皮シート3とを備え、該床材本体には、その表側4において異なる横幅を有する凹状帯5を所定の間隔をおいて平行に形成するとともに、その裏側7において、表側の凹状帯5と交差させて異なる横幅を有する凹状帯8を平行に形成することにより、床材本体2の内部において上方からの衝撃音が入り込む空気層の凹状帯5,8が交差状に多数並列することで衝撃音を吸収できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸面を有する硬質素材である床材本体と、該床材本体の上面に貼着する表皮シートとを備え、該床材本体には、その表側において異なる横幅を有する凹状帯を所定の間隔をおいて平行に形成することにより、所定幅の表面帯部が間隔をおいて平行に多数存在するとともに、その裏側において、表側の凹状帯と交差させて異なる横幅を有する凹状帯を平行に形成することにより、所定幅の裏面帯部が間隔をおいて平行に多数存在し、床材本体の内部において上方からの衝撃音が入り込む空気層の凹状帯が交差状に多数並列することで衝撃音を吸収できるリフォーム用の防音床材。
【請求項2】
凹凸面を有する硬質素材である床材本体と、該床材本体の上面に貼着する表皮シートとを備え、該床材本体には、その表側において、異なる横幅を有する凹状帯を所定の間隔をおいて平行に形成することにより、所定幅の表面帯部が間隔をおいて平行に多数存在し、さらに各表面帯部の平面に異なる横幅の浅溝を設けるとともに、その裏側において、表側の凹状帯と交差させて異なる横幅を有する凹状帯を平行に形成することにより、所定幅の裏面帯部が間隔をおいて平行に多数存在し、さらに各裏面帯部の平面に異なる横幅の浅溝を設けることにより、床材本体の内部において上方からの衝撃音が入り込む空気層の凹状帯および浅溝が交差状に多数並列することで衝撃音を吸収できるリフォーム用の防音床材。
【請求項3】
床材本体は厚さ2.5~3.5mmの硬質プラスチック、金属または木材である薄板材の硬質素材からなり、且つ表皮シートは厚さが1mm以下である請求項1記載の防音床材。
【請求項4】
床材本体の表側および裏側の凹状帯の横幅は8~15mmの範囲内および浅溝の横幅は3~6mmの範囲内であり、凹状帯および浅溝の横幅は横方向に順次またはランダムに異なっている請求項1記載の防音床材。
【請求項5】
床材本体において平行の表面帯部と平行の裏面帯部は直交状に配列され、矩形状平面の単層部が4個1組で表面全体にほぼ均等に分散することにより、床材本体が上方から押圧されても部分的に撓まない請求項1記載の防音床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸面を有する薄板状の硬質素材であり、主としてリフォームの際にフローリング材の上に貼着する防音床材に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションなどの住宅では、通常、洋式室内の床面にフローリング材を敷設し、このフローリング材として塗装した合板、MDF、パーチクルボード、樹脂板またはラミネートした化粧シート材の単体を用い、さらに発泡ポリウレタンなどの軟質層を積層することがある。フローリング材は、多層構造によって高い耐衝撃性とともに床衝撃音の遮音性や吸音性を求められている。
【0003】
例えば、特開2018-54833号、特開2020-535330号、特開2021-95737号は、遮音性および耐衝撃性を高めるために多孔質材料層、繊維層、ガラスファイバー層、PEフォーム層、熱可塑性樹脂層、軟質層、コア層、PVC層、プライマー層や合板層などを積層した多層構造の床材である。この多層構造のために、特開2018-54833号では全厚が30~100mm、特開2021-95737号では全厚が8~12mmであり、特開2020-535330号では比較的厚いPEフォーム層とプライマー層を除いても厚さが約4mm以上に達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-54833号公報
【特許文献2】特開2020-535330号公報
【特許文献3】特開2021-95737号公報
【特許文献4】特開2014-211064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2018-54833号などに開示の床材は遮音性を高めるために厚みが大きく、新築住宅用には設置可能であっても、住宅リフォームのためにフローリング材の上に貼着するには厚すぎて到底使用できない。これに対して、特開2014-211064号はリフォーム用の床材に関し、該床材の全厚を5~10mmに定め、床材の全厚を相当に薄く保っている。
【0006】
特開2014-211064号では、床材の全厚が5~10mmであっても、軟質層の厚さは2~4mmおよび硬質層の厚さは3~7mmであり、さらに表面の化粧シートおよび3層の接着層が存在し且つ実施例を参照すると、実際には全厚が7mm前後に達するものと推定できる。この結果、特開2014-211064号に開示の床材は、リフォームのために一部のフローリング材の上に貼着することが可能であっても、多くの場合には厚すぎて敷設することができない。
【0007】
床材の全厚が4mm前後であれば、リフォーム用の床材としてフローリング材の上に貼着できる。現状では、リフォーム用の床材には、主にシート状の発泡ポリウレタンフォーム、PVCまたは薄板合板を用いており、これらは多少の耐衝撃性や耐荷重性を有しても、遮音性や吸音性の効果は殆どなく、遮音性や吸音性を低下させる場合もある。
【0008】
本発明は、現状のリフォーム用床材に関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、薄板状の構造であっても上方からの衝撃音を効果的に吸収できるリフォーム用の防音床材を提供することを目的としている。本発明の他の目的は、4mm未満の薄板状構造であるから既存のフローリング材の上に貼着しても違和感が少なく且つ軽量で運搬も容易である防音床材を提供することである。本発明の別の目的は、床材本体が凹凸面を有する硬質素材の単体であるから比較的安価な防音床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る防音床材は、凹凸面を有する硬質素材である床材本体と、該床材本体の上面に貼着する表皮シートとを備える。この床材本体には、その表側において、異なる横幅を有する凹状帯を所定の間隔をおいて平行に形成することにより、所定幅の表面帯部が間隔をおいて平行に多数存在するとともに、その裏側において表側の凹状帯と交差させて異なる横幅を有する凹状帯を平行に形成することにより、所定幅の裏面帯部が間隔をおいて平行に多数存在する。本発明の防音床材では、床材本体の内部において上方からの衝撃音が入り込む空気層の凹状帯が交差状に多数並列することで衝撃音を吸収できる。
【0010】
本発明に係る防音床材において、この床材本体には、その表側において、異なる横幅を有する凹状帯を所定の間隔をおいて平行に形成することにより、所定幅の表面帯部が間隔をおいて平行に多数存在し、さらに各表面帯部の平面に異なる横幅の浅溝を設けてもよい。この床材本体の裏側には、表側の凹状帯と交差させて異なる横幅を有する凹状帯を平行に形成することにより、所定幅の裏面帯部が間隔をおいて平行に多数存在し、さらに各裏面帯部の平面に異なる横幅の浅溝を設けてもよい。この防音床材では、床材本体の内部において上方からの衝撃音が入り込む空気層の凹状帯および浅溝が交差状に多数並列することで衝撃音を吸収できる。
【0011】
本発明に係る防音床材において、床材本体は厚さ2.5~3.5mmの硬質プラスチック、金属または木材である薄板材の硬質素材からなり、且つ表皮シートは厚さが1mm以下であると好ましい。また、床材本体の表側および裏側の凹状帯の横幅は8~15mmおよび浅溝の横幅は3~6mmであると好ましく、凹状帯および浅溝の横幅は横方向に順次またはランダムに異なっている。さらに、床材本体において平行の表面帯部と平行の裏面帯部は直交状に配列され、矩形状平面の単層部が4個1組で表面全体にほぼ均等に分散することにより、床材本体が上方から押圧されても部分的に撓むことはない。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る防音床材は、リフォーム用として既存のフローリング材の上に貼着すると、薄板状の構造であっても上方からの衝撃音を効果的に吸収できる。本発明の防音床材において、床材本体は表裏面に浅い凹凸面を有し、この床材本体の上に表皮シートを接着してからフローリング材上に貼着すると、両端開放の密封凹状帯が交差状に並列することによって異なる体積の空気層が多数形成され、これらの空気層の存在によって衝撃音の反射と屈折を起こし、広範囲の波長の騒音を吸収できる。また、床材本体の表裏面において各表面帯部の平面に異なる横幅の浅溝を設けると、両端開放の密封凹状帯がいっそう多く交差状に並列することにより、広範囲の波長の騒音をより効果的に吸収できる。
【0013】
本発明に係る防音床材は、全体で4mm前後の薄板状構造であるから既存のフローリング材の上に貼着しても敷設後に違和感が少なく、マンションなどのリフォーム用に適している。本発明の防音床材は、薄板状の構造であるから軽量であり、多数枚を積み重ねると運搬および保管も容易である。
【0014】
本発明に係る防音床材は、主たる床材本体をプラスチック射出成形などで連続的に製造でき、縦横幅が1000m前後に達しても連続製造が可能である。この床材本体は、硬質プラスチック、金属または木材の薄い単体であるから、その製造に用いる素材量は少ないので安価である。したがって、本発明の防音床材は、従来の多層構造の床材よりも遙かに迅速に製造でき、しかも安価に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る防音床材の一例を示す部分側面である。
図2図1の防音床材で用いる床材本体を示す部分斜視図である。
図3図1の防音床材で用いる床材本体を示す部分平面図である。
図4】本発明の防音床材を従来のリフォーム用床材などとともに示す加振透過音の振動グラフである。
図5】本発明の防音床材を従来のリフォーム用床材などとともに示す落下衝撃音の振動グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る防音床材1は、図1および図2に示すように、凹凸面を有する硬質素材である床材本体2と、該床材本体の上面に貼着する表皮シート3とからなる。平坦な床材本体2には、その表側4において、異なる横幅を有する凹状帯5を所定の間隔をおいて平行に形成することにより、所定幅の表面帯部6が間隔をおいて平行に多数存在する。また、図3に示すように、床材本体2の裏側7において、表側の凹状帯5と交差させて、異なる横幅を有する別の凹状帯8を平行に形成することにより、所定幅の裏面帯部10が間隔をおいて平行に多数存在する。
【0017】
防音床材1は、厚さが4mm前後であるとリフォーム用床材として好適である。床材本体2には、厚さ2.5~3.5mmであるABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネートや高密度ポリエチレン樹脂のような硬質熱可塑性プラスチック、フェノール樹脂や不飽和ポリエステル樹脂のような硬質熱硬化性プラスチック、アルミニウムやステンレス鋼板のような金属板、薄板木材などを用いることができる。床材本体2のプラスチックには、ガラス繊維、タルク、木粉などを充填して高硬度にしてもよい。また、表皮シート3は厚さが1mm以下のシートであり、該シートの表面に意匠性を付与する絵柄模様、その表面の耐傷性などを付与する表面保護層を設けてもよい。表皮シート3は、防音床材1を敷設する環境に応じて素材を定め、高温の使用環境では難燃プラスチックや金属板を用い、コスト重視ならば硬質ポリオレフィン類を使用する。
【0018】
床材本体2の表側4および裏側7には、異なる横幅を有する凹状帯5または8を所定の間隔をおいて平行に形成することにより、各2本の凹状帯の間隔が個々の表面帯部6または裏面帯部10に相当する。表面帯部6および裏面帯部10の横幅は、凹状帯5,8の横幅が個々に増減するのと異なり、全てが同一であってもまたは個々に異なっていてもよく、その横幅は5~15mm程度の範囲に保たれていればよい。
【0019】
各凹状帯5,8は、通常、深さ約1mm以下の矩形、浅V字形、湾曲形状などの任意の断面形状である。各凹状帯5,8の横幅は8~15mmの範囲内にあり、その横幅が横方向へ順次またはランダムに異なる。各凹状帯5,8は、防音床材1の全面において、横幅が8~15mmの範囲内でミリ単位で異なるものがほぼ同数に存在するように配列されている。凹状帯5,8の横幅は、8mm未満であると振動数の高い騒音を吸音しにくくなり、15mmを越えると振動数の低い騒音でも吸音しなくなる。
【0020】
図3に示すように、床材本体2において、表側の凹状帯5と裏側の凹状帯8を交差させて配置するため、平行の表面帯部6と平行の裏面帯部10が交差する。表面帯部6と裏面帯部10の交差角度は任意であるけれども、好ましくは直交状に配列すると床材本体2の作製が容易である。
【0021】
表面帯部6および裏面帯部10の平面は平坦であっても、または丸孔、角穴、短寸長溝、十字溝やS字蛇行溝などを設けてもよく、異なる横幅の浅溝12,14を設けると吸音効果が多少増大するので好ましく、さらに床材本体2への加工も容易である。浅溝12,14は、通常、深さ約1mm以下の矩形、V字形などの任意の断面形状であり、図示のように帯部6,10の横方向の中心に位置させると好ましい。各浅溝12,14の横幅は3~6mmの範囲内にあり、防音床材1の全面において、横幅3~6mmの範囲内で単一幅または適宜に分散するように配列されている。浅溝12,14の横幅は、3mm未満であると補完的な吸音効果が生じず、6mmを越えてしまっても吸音効果は殆ど生じない。
【0022】
表面帯部6と裏面帯部10が交差する部分は、浅溝12,14の部分を除いて床材本体2の高さ方向に空間部が存在しないので、この部分を単層部16と称する。図3から明らかなように、単層部16は矩形状平面を有し、床材本体2において、4個1組で表面全体にほぼ均等に分散している。床材本体2は、全面に分散した4個1組の単層部16の存在によって、高い耐荷重性を有し、上方から強く押圧されても部分的に撓むことがない。
【0023】
防音床材1において、床材本体2は図示のように表裏面に浅い凹凸面を有し、該床材本体の上に表皮シート3を接着している。防音床材1を公知のフローリング材18(図1)の上に貼着すると、両端開放で表裏側の密封凹状帯5,8が交差状に並列することによって異なる体積の空気層が多数形成され、これらの空気層の存在によって衝撃音の反射と屈折を起こし、広範囲の波長の騒音を吸収できる。また、この床材本体の表裏面において各表面帯部の平面に異なる横幅の浅溝を設けると、両端開放の密封凹状帯がいっそう多く交差状に並列することにより、広範囲の波長の騒音をより効果的に吸収できる。
【0024】
防音床材1について、建築総合試験所で軽量床衝撃音(LL)の床衝撃音レベル低減量を測定し、この測定法はJIS-A1418に準ずるタッピング機を用いた簡易測定法である。測定に用いる防音床材1はアクリル樹脂製であって実施例1と同様の形状である。防音床材1は、コンクリート床に敷設したフローリング材の上に載置し、同様に載置した木製上張りフロアおよびPVCタイルと比べ、さらに該フローリング材単独の場合と比較する。その測定結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
防音床材1は、リフォーム用床材を目指しているので、実際の使用時と同様にフローリング材を撤去しないでその上に載置している。従来の床材である木製上張りフロアおよびPVCタイルでは、軽量床衝撃音(LL)についてフローリング材に貼りつけると床衝撃音がほぼ変わらない測定結果を得る。表1の床衝撃音レベル低減量では、すべての床材のLL値がオクターブ帯域中心周波数で約50となってほぼ同様である。防音床材1については、フローリング材上に接着せず、単に載置しただけなので測定時の衝撃によって振動して測定値が数dB悪くなっている。
【0027】
次に、防音床材1について、建築総合試験所で重量床衝撃音(LH)の床衝撃音レベル低減量を測定し、この測定法はJISA1418に準ずるタイヤを用いた簡易測定法である。測定に用いる防音床材1はアクリル樹脂製であって実施例1と同様の形状である。防音床材1は、コンクリート床に敷設したフローリング材の上に載置し、同様に載置した木製上張りフロアまたはPVCタイルと比べ、さらに該フローリング材単独の場合と比較する。その測定結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
防音床材1は、実際の使用時と同様にフローリング材を撤去しないでその上に載置するだけである。従来の床材である木製上張りフロアおよびPVCタイルでは、重量床衝撃音(LH)についてフローリング材に貼りつけると床衝撃音がほぼ変わらない測定結果を得る。表2の床衝撃音レベル低減量では、防音床材1のLH値はオクターブ帯域中心周波数で約60から55と良くなっている。防音床材1はフローリング材上に接着せず、載置しただけなので測定時の衝撃によって振動して測定値が数dB悪くなっている。
【0030】
防音床材1は、全体厚さが約4mmであるから既存のフローリング材の上に貼着しても目立たず、フローリング材に接着するのが容易で敷設後に違和感が少なく、マンションや戸建住宅などのリフォーム用の商品として好適である。防音床材1は、全体で4mm前後の薄板状の構造であっても上方からの衝撃音を効果的に吸収でき、薄板状の構造であるから軽量であり、多数枚を積み重ねると運搬および保管も容易である。
【0031】
防音床材1は、主たる床材本体2をプラスチック射出成形や薄板材の表裏切削などで連続的に製造でき、縦横幅が1000m前後に達しても連続製造が可能である。この床材本体は、硬質プラスチック、金属または木材の薄い単体であるから、その製造に用いる素材量は少ないので安価である。
【実施例0032】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。平坦な防音床材1において、床材本体2の素材として、厚さ3mmのABS樹脂シートを用いる。図1において、表皮シート3は厚さが1mmのプラスチックシートであり、該シートの表面に意匠性を付与する木材模様を施し、床材本体2の上に接着する。
【0033】
床材本体2において、その表側4において、多数の凹状帯5を所定の間隔をおいて平行に形成することにより、多数の表面帯部6を平行に有する。図3に示すように、床材本体2の裏側7には、多数の別の凹状帯8を平行に形成することにより、多数の裏面帯部10が平行に有する。表側4の凹状帯5と裏側7の凹状帯8は直角に交差させる。
【0034】
各表面帯部6および裏面帯部10の横幅は10mmであり、凹状帯5,8は深さ約1mmの矩形の断面形状である。図2図3において、凹状帯5aの横幅は8mm、凹状帯5bの横幅は9mm、凹状帯5cの横幅は10mm、凹状帯5dの横幅は11mm、凹状帯5eの横幅は12mmであり、横幅15mmの次は8mmに戻す。凹状帯8aの横幅は8mm、凹状帯8bの横幅は9mm、凹状帯8cの横幅は10mm、凹状帯8dの横幅は11mm、凹状帯8eの横幅は12mmであり、横幅15mmの次は8mmに戻す。
【0035】
平坦な表面帯部6および裏面帯部10の横幅はすべて10mmである。表面帯部6および裏面帯部10の上面において、その横方向の中心に縦方向に延びる浅溝12,14を設ける。浅溝12,14はともに横幅5mm、深さ1mmである。各浅溝12,14は、防音床材1の全面において単一幅で配列している。
【0036】
実施例1の防音床材1について、軽量衝撃音である加振透過音を測定することにより上方からの騒音を吸収できることを示す。この実験に際し、2階の厚さ120mmのコンクリート床(床スラブ)の上にフローリング材を敷設し、該フローリング材の上面に防音床材1を接着する。次に、タッピング機を防音床材1の上に配置して、1階に取り付けた低周波騒音計で各振動数の騒音を測定した。
【0037】
比較のために、コンクリート床上のフローリング材の上に公知のリフォーム材(発泡ポリウレタンシートおよび硬質の表面シート)を敷設して接着した場合と、何も敷設せずにフローリング材のみの場合も騒音を測定した。これらの測定結果を図4に示す。
【0038】
実施例1の防音床材1は、公知のリフォーム材を敷設した場合と比べて、加振透過音について100~315Hzおよび800Hzでは騒音レベルが低く、1000~2500Hzdでは公知のリフォーム材の方が低い。全音域(overall)の騒音レベルで判断すると、実施例1の防音床材1は、公知のリフォーム材よりも約3.5dB(55.77-52.47dB)騒音レベルが低い。また、実施例1の防音床材1は、フローリング材のみの場合より約0.3dB(53.01-52.47dB)騒音レベルが低い。
【0039】
この結果、公知のリフォーム材ではフローリング材単体よりも加振透過音の騒音レベルが多少上昇するのに対し、実施例1の防音床材1はフローリング材単体とほぼ同等または多少騒音レベルが低くなる。したがって、実施例1の防音床材1は、公知のリフォーム材と比べて騒音レベルの低下が見られることにより、衝撃透過音の低減効果が一定程度あると判断できる。
【実施例0040】
実施例2の防音床材は、実施例1のそれと同様の素材を用いてほぼ同じ構造にする。表面帯部6および裏面帯部10の上面において、その横方向の中心に縦方向に延びる浅溝12,14を設ける。浅溝12,14はともに横幅3mm、深さ1mmである。各浅溝12,14は、防音床材1の全面において単一幅で配列している。
【0041】
実施例2の防音床材について、重量衝撃音である落下透過音を測定することにより上方からの騒音を吸収できることを示す。この実験に際し、2階の厚さ120mmのコンクリート床(床スラブ)の上にフローリング材を敷設し、該フローリング材の上面に防音床材を接着する。次に、軽タイヤを防音床材の上方1mから落下させ、1階に取り付けた低周波騒音計で各振動数の騒音を測定した。
【0042】
比較のために、コンクリート床上のフローリング材の上に公知のリフォーム材(発泡ポリウレタンシートおよび硬質の表面シート)を敷設して接着した場合と、何も敷設せずにフローリング材のみの場合と、フローリング材も除いた床スラブのみの場合の騒音を測定した。これらの測定結果を図5に示す。
【0043】
実施例2の防音床材は、公知のリフォーム材を敷設した場合と比べて、落下透過音について100~2000Hzおよび800Hzでは騒音レベルが低い。全音域(overall)の騒音レベルで判断すると、実施例2の防音床材は公知のリフォーム材よりも約2dB(67.14-65.12dB)騒音レベルが低い。また、実施例2の防音床材は、スラブのみの場合より約2.2dB(67.29-65.12dB)、フローリング材のみの場合より約1.1dB(66.19-65.12dB)騒音レベルが低い。
【0044】
この結果、実施例2の防音床材は、フローリング材単体よりも全周波数域で騒音レベルの低下が見られ、全音域(overall)の騒音レベルで1dB程度騒音レベルが低い。したがって、実施例2の防音床材は、公知のリフォーム材と比べて騒音レベルの低下が見られることにより、衝撃透過音の低減効果が一定程度あると判断できる。
【符号の説明】
【0045】
1 防音床材
2 床材本体
3 表皮シート
5 表側の凹状帯
6 表面帯部
8 裏側の凹状帯
10 裏面帯部
12 表側の浅溝
14 裏側の凹状帯
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-03-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸面を有する硬質プラスチック材である厚さ2.5~3.5mmの床材本体と、該床材本体の上面に貼着する厚さ1mm以下の表皮シートとを備え、該床材本体には、その表側において異なる横幅を有する凹状帯を所定の間隔をおいて平行に形成することにより、所定幅の表面帯部が間隔をおいて平行に多数存在するとともに、その裏側において、表側の凹状帯と交差させて異なる横幅を有する凹状帯を平行に形成することにより、所定幅の裏面帯部が間隔をおいて平行に多数存在し、床材本体の内部において上方からの衝撃音が入り込む空気層の凹状帯が交差状に多数並列することで衝撃音を吸収できるリフォーム用の防音床材。
【請求項2】
凹凸面を有する硬質素材である床材本体と、該床材本体の上面に貼着する表皮シートとを備え、該床材本体には、その表側において、異なる横幅を有する凹状帯を所定の間隔をおいて平行に形成することにより、所定幅の表面帯部が間隔をおいて平行に多数存在し、さらに各表面帯部の平面に異なる横幅の浅溝を設けるとともに、その裏側において、表側の凹状帯と交差させて異なる横幅を有する凹状帯を平行に形成することにより、所定幅の裏面帯部が間隔をおいて平行に多数存在し、さらに各裏面帯部の平面に異なる横幅の浅溝を設けることにより、床材本体の内部において上方からの衝撃音が入り込む空気層の凹状帯および浅溝が交差状に多数並列することで衝撃音を吸収できるリフォーム用の防音床材。
【請求項3】
床材本体は厚さ2.5~3.5mmの硬質プラスチック、金属または木材である薄板材の硬質素材からなり、且つ表皮シートは厚さが1mm以下である請求項記載の防音床材。
【請求項4】
床材本体の表側および裏側の凹状帯の横幅は8~15mmの範囲内および浅溝の横幅は3~6mmの範囲内であり、凹状帯および浅溝の横幅は横方向に順次またはランダムに異なっている請求項記載の防音床材。
【請求項5】
床材本体において平行の表面帯部と平行の裏面帯部は直交状に配列され、矩形状平面の単層部が4個1組で表面全体にほぼ均等に分散することにより、床材本体が上方から押圧されても部分的に撓まない請求項記載の防音床材。