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特開2023-151880神経損傷の予防及び神経を保護する化合物、その調製方法、その医薬組成物、及びそれらの使用
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  • 特開-神経損傷の予防及び神経を保護する化合物、その調製方法、その医薬組成物、及びそれらの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151880
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】神経損傷の予防及び神経を保護する化合物、その調製方法、その医薬組成物、及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/64 20060101AFI20231005BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231005BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20231005BHJP
   C07D 409/12 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C07D317/64 CSP
A61P25/00
A61P9/00
A61P25/28
C07D405/12
C07D409/12
A61K31/36
A61K31/381
A61K31/4155
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061731
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】519112623
【氏名又は名称】健裕生技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 連滋
(72)【発明者】
【氏名】蔡 ▲ケイ▼冰
(72)【発明者】
【氏名】藺 以文
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 淑芬
(72)【発明者】
【氏名】劉 世弘
(72)【発明者】
【氏名】劉 金緯
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 必燦
(72)【発明者】
【氏名】陳 美惠
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC81
4C063CC92
4C063DD22
4C063DD81
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BA13
4C086BB02
4C086BC36
4C086GA02
4C086GA04
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA16
4C086ZA36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、神経損傷を効果的に予防し、神経を保護するための新規化合物、及びその調製方法を提供する。その上、本発明はまた、新規化合物を含む医薬組成物、及び神経損傷を予防し神経を保護するための新規化合物の使用を提供する。
【解決手段】以下の式により表される化合物である。

式中、RはH又はC1~6の非置換アルキル基であり、LはC1~6の非置換アルキレン基であり、LはC1~6の非置換アルキレン基又はC6~18の非置換アリーレン基であり、YはC1~6の非置換アルキレン基、C2~6の非置換アルケニレン基、アシルオキシ基、又はアミド基であり、Zはヒドロキシ基、カルボキシル基、C1~6の非置換アルキル基、ジヒドロキシベンジル基、C1~6の非置換エステル基、C6~18の非置換アリール基等であり、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I);
【化1】

(I)
により表される化合物であって、
式中、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基又は6~18個の炭素原子を有する非置換アリーレン基であり、
Yは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基、2~6個の炭素原子を有する非置換アルケニレン基、アシルオキシ基、又はアミド基であり、
Zはヒドロキシ基、カルボキシル基、1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基、ジヒドロキシベンジル基、1~6個の炭素原子を有する非置換エステル基、6~18個の炭素原子を有する非置換アリール基、2-メトキシベンゼンスルホンアミド、2,3-ジメチル-1-フェニル-5-ピラゾロン、又は2-メチル-4-シアノチオフェンであって、
n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である、化合物。
【請求項2】
Yが、非置換エチレン基、非置換プロピレン基、非置換ブチレン基、非置換プロペニレン基、アシルオキシ基、又はアミド基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zが、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メチル基、ピロカテキン、-COOCHCH、非置換フェニル基、2-メトキシベンゼンスルホンアミド、2,3-ジメチル-1-フェニル-5-ピラゾロン、又は2-メチル-4-シアノチオフェンである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が、非置換メチレン基、非置換エチレン基、非置換プロピレン基、又は非置換フェニレン基である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
式(I)により表される前記化合物が、
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の化合物の調製方法であって、以下:
ステップ(a):4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル誘導体である第1の反応物を提供するステップ、
ステップ(b):ハロゲン化炭化水素、無水物、フェノール化合物、芳香族アルコール、エステル、ベンゼンスルホンアミド誘導体、エステル塩酸塩誘導体、フェノール塩酸塩誘導体、アンチピリン誘導体、又はチオフェン誘導体を含む第2の反応物を提供するステップ、及び
ステップ(c):前記第1の反応物と前記第2の反応物を反応させ、前記化合物を得るステップを含む、調製方法。
【請求項7】
前記第1の反応物が、4,7-ジメトキシ-5-メチル-6-ヨード-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-ヨード-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-ヒドロキシメチル-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-アミノメチル-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、又は4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルを含む、請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記第2の反応物が、3,3-ジメチルアリルブロミド、1-ブロモブタン、無水酢酸、4-アミノフェノール、フェニルメタノール、エチルp-アミノベンゾエート、5-[(R)-(2-アミノ-プロピル)]-2-メトキシ-ベンゼンスルホンアミド、4-アミノ酪酸メチルエステル塩酸塩、β-アラニンメチルエステル塩酸塩、アラニンメチルエステル塩酸塩、4-(2-アミノエチル)-1,2-ベンゼンジオール塩酸塩、4-アミノアンチピリン、又は2-アミノ-3-シアノ-5-メチルチオフェンを含む、請求項6又は7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記第1の反応物が、4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルであり、前記ステップ(a)が、4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸を塩素化に供し、予め4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルを形成し、それにより前記第1の反応物を得るステップを更に含む、請求項6又は8に記載の調製方法。
【請求項10】
前記第1の反応物が、4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルであり、前記第2の反応物がエステル塩酸塩誘導体であり、前記ステップ(c)が前記第1の反応物と前記第2の反応物とを反応させ、メチルエステル中間体を得て、次いで前記メチルエステル中間体を加水分解に供して前記化合物を得るステップを更に含む、請求項6又は8に記載の調製方法。
【請求項11】
神経損傷を予防し、神経を保護するための医薬組成物であって、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項12】
神経損傷の予防及び神経の保護が、脳卒中及びアルツハイマー病の予防及び/又は処置を含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が、医薬的に許容される担体を更に含む、請求項11又は12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、その調製方法、その医薬組成物、及びそれらの使用に関し、より詳細には、神経損傷を予防し、神経を保護する化合物、その調製方法、その化合物を含む医薬組成物、及び神経損傷を予防し、神経を保護するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性又は神経損傷によって引き起こされる疾患は通常、患者の生活の質に長期間影響を及ぼす。しかし、前述の疾患の効果的かつ非侵襲的処置は、今までのところ不足していた。現在、例えば脳卒中、脳虚血、脳損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病及び眼網膜症といった関連する疾患から神経損傷を予防し、神経系の神経を保護するのに有効な薬剤は、関連分野における主要研究となっている。
【0003】
神経組織はニューロン及び神経膠からなる。神経の再生能力が弱いため、神経再生を促進し、神経系損傷後の二次損傷からニューロンを保護する方法は、臨床的処置においては重要なトピックである。
【0004】
ニューロン損傷の分子機構としては、多量のカルシウム摂取によって引き起こされるカルシウム過負荷、興奮性アミノ酸の大量放出、並びにフリーラジカル及び炎症から生じる直接的なニューロン損傷が挙げられる。
【0005】
近年、オカダ酸(OKA)は、神経変性疾患及びアルツハイマー病を研究するための神経損傷モデルを構築するために使用される。オカダ酸は、プロテインホスファターゼ1(PP1)及びプロテインホスファターゼ2(PP2又はPP2A)の阻害薬である。PP1及びPP2Aはタウタンパク質のリン酸化レベルを低下させることができるため、オカダ酸はPP1及びPP2Aを阻害することができ、タウタンパク質上で多量のリン酸化を誘発してアルツハイマー病のモデルを構築する。このモデルは、アルツハイマー病の処置における薬剤の効力を実証するために使用され得る。
【0006】
今日、アルツハイマー病によって引き起こされる老年認知症向けの薬剤の選択肢は大量に存在する。ドネペジル、リバスチグミン及びガランタミンといった抗コリンエステラーゼの薬剤は、軽度~中等度の認知症症例で使用され、中等度~重度の認知症症例では、前述のドネペジル及び例えばメマンチンといったNMDA拮抗薬などの薬剤が使用され得る。
【0007】
一方、虚血性脳卒中向けの処置選択肢は限定されている。ただし、虚血性脳卒中は死亡及び障害の主な原因である。一般に、脳卒中又は脳損傷が、虚血性脳損傷、その後、血液再灌流によって引き起こされる二次損傷の原因となる場合、脳神経は数日~数ヶ月で死ぬことになる。具体的に言えば、虚血再灌流が脳神経組織に生じる場合、これは多量の活性酸素種(ROS)を産生し、カルシウム摂取を促す。これらの物質は炎症機構を誘発させ、サイトカイン及び白血球を活性化し、虚血領域に浸透する。これにより、炎症を誘発させ、脳神経組織の損傷の原因となる。
【0008】
そのため、虚血性脳卒中向けに一般的に使用される薬剤としては、クロピドグレル、アスピリン、チクロピジン及びジピリダモールといった抗血栓効果を有する抗血栓薬、ヘパリン、低分子量ヘパリン及びワルファリンなど、血栓症を予防するために使用され、血栓の拡大及び塞栓の産生を低減させる抗凝固薬、ウロキナーゼ及び組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)など、フィブリン分解を誘発させる血栓溶解薬、マンニトール及びグリセロールなど、重度脳卒中によって引き起こされる水頭症を予防するための薬剤、並びにピラセタム及びニモジピンなど、カルシウムチャネルを制御し、フリーラジカルを除去し、さらに虚血領域の脳細胞の代謝率を減少させることによって脳ニューロンの大量壊死を予防する薬剤が挙げられる。
【0009】
しかしながら、神経関連疾患を予防及び処置するための前述の薬剤の臨床効果は、依然として満足できるものではない。したがって、患者により多様な医療処置の選択肢を提供するため、産業的実践及び臨床的実践の両方で、神経損傷を効果的に予防し、神経を保護するための方法を見出し、開発する火急の必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の欠点に基づき、本発明は、神経損傷を予防し、かつ神経を保護する作用を有する新規化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するため、本発明は以下の式(I);
【化1】

(I)
により表される化合物を提供し、
式中、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基又は6~18個の炭素原子を有する非置換アリーレン基であり、
Yは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基、2~6個の炭素原子を有する非置換アルケニレン基、アシルオキシ基、又はアミド基であり、
Zはヒドロキシ基、カルボキシル基、1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基、ジヒドロキシベンジル基、1~6個の炭素原子を有する非置換エステル基、6~18個の炭素原子を有する非置換アリール基、2-メトキシベンゼンスルホンアミド、2,3-ジメチル-1-フェニル-5-ピラゾロン、又は2-メチル-4-シアノチオフェンであって、
n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である。
【0012】
本明細書において、説明「1~6個の炭素原子を有するアルキル基」は、直鎖アルキル基又は分枝鎖アルキル基であってもよく、これは全ての官能基が合計で1~6個の炭素原子を有することを示す。例えば、1~6個の炭素原子を有するアルキル基は、メチル基(-CH)、エチル基(-CHCH)、n-プロピル基(-CHCHCH)、イソプロピル基(-CH(CH)、n-ブチル基(-CHCHCHCH)、イソブチル基(-CHCH(CH)、sec-ブチル基(-CH(CH)CHCH)、又はtert-ブチル基(-C(CH)であってもよいが、これらに限定されない。具体的に言えば、前述の1~6個の炭素原子を有するアルキル基は、1個、2個、3個、4個、5個、又は6個の炭素原子を有するアルキル基であってもよい。
【0013】
本明細書において、用語「1~6個の炭素原子を有するアルキレン基」は、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CHCH-、又は-CH(CH)-)、プロピレン基(-CHCHCH-、-CHCH(CH)-、又は-C(CH-)、又はブチレン基(例えば、-CHCHCHCH-、-CHC(CH-、又は-CH(CH)CHCH-)であってもよいが、これらに限定されない。具体的に言えば、前述の1~6個の炭素原子を有するアルキレン基は、1個、2個、3個、4個、5個、又は6個の炭素原子を有するアルキレン基であってもよい。
【0014】
本明細書において、用語「2~6個の炭素原子を有するアルケニレン基」は、全ての官能基が合計で2~6個の炭素原子を有することを示す。例えば、2~6個の炭素原子を有するアルケニレン基は、ビニレン基(例えば、-CH=CH-)、プロペニレン基(例えば、-CHCH=CH-、又は-CH=C(CH)-)、又はブテニレン基(例えば、例えば、-CHCH=CHCH-、又は-CH=CHCHCH-)であってもよいが、これらに限定されない。具体的に言えば、前述の2~6個の炭素原子を有するアルケニレン基は2個、3個、4個、5個、又は6個の炭素原子を有するアルケニレン基であってもよい。
【0015】
本明細書において、用語「6~18個の炭素原子を有するアリーレン基」は、全ての官能基の環状構造が合計で6~18個の炭素原子を有することを示す。例えば、6~18個の炭素原子を有するアリーレン基は、フェニレン基(-C-)、ビフェニレン基(-C-C-)、又はナフチレン基(-C10-)であってもよいが、これらに限定されない。具体的に言えば、前述の6~18個の炭素原子を有するアリーレン基は、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個又は18個の炭素原子を有するアリーレン基であってもよい。
【0016】
具体的に言えば、式(I)では、フェニレン基はオルト-フェニレン基、メタ-フェニレン基、又はパラ-フェニレン基であってもよい。好ましくは、フェニレン基はパラ-フェニレン基である。
【0017】
具体的に言えば、式(I)では、ジヒドロキシベンジル基はピロカテキン、レゾルシノール、又はヒドロキノンであってもよい。好ましくは、ジヒドロキシベンジル基はピロカテキンである。
【0018】
好ましくは、Yは非置換エチレン基、非置換プロピレン基、非置換ブチレン基、非置換プロペニレン基、アシルオキシ基、又はアミド基である。
【0019】
好ましくは、Zはヒドロキシ基、カルボキシル基、メチル基、ピロカテキン、-COOCHCH、非置換フェニル基、2-メトキシベンゼンスルホンアミド、2,3-ジメチル-1-フェニル-5-ピラゾロン、又は2-メチル-4-シアノチオフェンである。
【0020】
好ましくは、Lは非置換メチレン基、非置換エチレン基、非置換プロピレン基、又は非置換フェニレン基である。
【0021】
具体的に言えば、式(I)において、Yはa-Y-bにより表されてもよく、a及びbはYの2つの異なる結合部位を示す。すなわち、Yはaを介してLに結合してもよく、bを介してLに結合してもよい。又はYはaを介してLに結合してもよく、bを介してLに結合してもよい。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、Yはアシルオキシ基であり、aを介してその酸素原子によりLに結合し、bを介してその炭素原子によりLに結合し、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であってn1が0又は1であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基、又は6~18個の炭素原子を有する非置換アリーレン基であってn2が0又は1であり、Zはヒドロキシ基又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。これらの実施形態では、化合物は以下の式(i):
【化2】

(i)
により表される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、Yはアシルオキシ基であり、aを介してその酸素原子によりLに結合し、bを介してその炭素原子によりLに結合し、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n1が1であり、n2が0であり、Zは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、Rは水素原子である。これらの実施形態では、化合物は以下の式(ii):
【化3】

(ii)
により表される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、Yはアシルオキシ基であり、Yはaを介してその酸素原子によりLに結合し、bを介してその炭素原子によりLに結合し、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n1が0又は1であり、n2は0であり、Zは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基、ジヒドロキシベンジル基、6~18個の炭素原子を有する非置換アリール基、2-メトキシベンゼンスルホンアミド、2,3-ジメチル-1-フェニル-5-ピラゾロン、又は2-メチル-4-シアノチオフェンであり、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。これらの実施形態では、化合物は以下の式(iii):
【化4】

(iii)
により表される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、Yはアシルオキシ基であり、aを介してその酸素原子によりLに結合し、bを介してその炭素原子によりLに結合し、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n1が0又は1であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基出あって、n2が1であり、Zはヒドロキシ基、カルボキシル基、1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基、ジヒドロキシベンジル基、1~6個の炭素原子を有する非置換エステル基、6~18個の炭素原子を有する非置換アリール基、2-メトキシベンゼンスルホンアミド、2,3-ジメチル-1-フェニル-5-ピラゾロン、又は2-メチル-4-シアノチオフェンであり、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。これらの実施形態では、化合物は以下の式(iv):
【化5】

(iv)
により表される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、化合物は上の式(iv)により表され、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n1は0又は1であり、Lは6~18個の炭素原子を有する非置換アリーレン基であって、n2は1であり、Zはヒドロキシ基、カルボキシル基、1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基、又は1~6個の炭素原子を有する非置換エステル基であり、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、Yはアシルオキシ基であり、Yはaを介してその酸素原子によりLに結合し、bを介してその炭素原子によりLに結合し、n1が0であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n2が1であり、Zは6~18個の炭素原子を有するアリール基であり、Rは水素原子である。これらの実施形態では、化合物は以下の式(v):
【化6】

(v)
により表される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、Yはアミド基であり、Yはaを介してその窒素原子によりLに結合し、bを介してその炭素原子によりLに結合し、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n1が0又は1であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基、又は6~18個の炭素原子を有する非置換アリーレン基であって、n2が0又は1であり、Zはヒドロキシ基又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。これらの実施形態では、化合物は以下の式(vi):
【化7】

(vi)
により表される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、Yはアミド基であり、aを介してその窒素原子によりLに結合し、bを介してその炭素原子によりLに結合し、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n1が1であり、n2が0であり、Zは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、Rは水素原子である。これらの実施形態では、化合物は以下の式(vii):
【化8】

(vii)
により表される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、Yはアミド基であり、Yはaを介してその窒素原子によりLに結合し、bを介してその炭素原子によりLに結合し、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n1が0又は1であり、n2は0であり、Zは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基、ジヒドロキシベンジル基、6~18個の炭素原子を有する非置換アリール基、2-メトキシベンゼンスルホンアミド、2,3-ジメチル-1-フェニル-5-ピラゾロン、又は2-メチル-4-シアノチオフェンであり、、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。これらの実施形態では、化合物は以下の式(viii):
【化9】

(viii)
により表される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、Yはアミド基であり、Yはaを介してその窒素原子によりLに結合し、bを介してその炭素原子によりLに結合し、n1が0であり、n2が0であり、Zは2,3-ジメチル-1-フェニル-5-ピラゾロン又は2-メチル-4-シアノチオフェンであり、Rは水素原子である。これらの実施形態では、化合物は以下の式(ix):
【化10】

(ix)
により表される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、Yはアミド基であり、aを介してその窒素原子によりLに結合し、bを介してその炭素原子によりLに結合し、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n1が0又は1であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n2が1であり、Zはヒドロキシ基、カルボキシル基、1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基、ジヒドロキシベンジル基、1~6個の炭素原子を有する非置換エステル基、6~18個の炭素原子を有する非置換アリール基、2-メトキシベンゼンスルホンアミド、2,3-ジメチル-1-フェニル-5-ピラゾロン、又は2-メチル-4-シアノチオフェンであり、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。これらの実施形態では、化合物は以下の式(x):
【化11】

(x)
により表される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、化合物は上の式(x)により表され、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n1は0又は1であり、Lは6~18個の炭素原子を有する非置換アリーレン基であって、n2は1であり、Zはヒドロキシ基、カルボキシル基、1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基、又は1~6個の炭素原子を有する非置換エステル基であり、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、Yはアミド基であり、aを介してその窒素原子によりLに結合し、bを介してその炭素原子によりLに結合し、n1が0であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であって、n2が1であり、Zはカルボキシル基、ジヒドロキシベンジル基、6~18個の炭素原子を有する非置換アリール基、又は2-メトキシベンゼンスルホンアミドであり、Rは水素原子である。これらの実施形態では、化合物は以下の式(xi):
【化12】

(xi)
により表される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、化合物は上の式(xi)により表され、n1は0であり、Lは6~18個の炭素原子を有する非置換アリーレン基であり、n2は1であり、Zはヒドロキシ基又は1~6個の炭素原子を有する非置換エステル基である。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、Yは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基、又は2~6個の炭素原子を有する非置換アルケニレン基であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であり、n1は1であり、n2は0であり、Zは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。
好ましくは、新規化合物は、以下の化合物1~15のうちいずれか1個であり得るが、それらに限定されない。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】
【0037】
その上、本発明はまた、前述の新規化合物の調製方法を提供する。この方法は、以下:ステップ(a)4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル誘導体である第1の反応物を提供するステップ、ステップ(b)ハロゲン化炭化水素、無水物、フェノール化合物、芳香族アルコール、エステル、ベンゼンスルホンアミド誘導体、エステル塩酸塩誘導体、フェノール塩酸塩誘導体、アンチピリン誘導体、又はチオフェン誘導体を含む第2の反応物を提供するステップ、ステップ(c)第1の反応物と第2の反応物を反応させ、化合物を得るステップを含む。
【0038】
好ましくは、第1の反応物は、4,7-ジメトキシ-5-メチル-6-ヨード-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-ヨード-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-ヒドロキシメチル-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-アミノメチル-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、又は4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルを含む。
【0039】
好ましくは、第2の反応物は、3,3-ジメチルアリルブロミド、1-ブロモブタン、無水酢酸、4-アミノフェノール、フェニルメタノール、エチルp-アミノベンゾエート(ベンゾカインとも命名)、5-[(R)-(2-アミノ-プロピル)]-2-メトキシ-ベンゼンスルホンアミド、4-アミノ酪酸メチルエステル塩酸塩、β-アラニンメチルエステル塩酸塩、アラニンメチルエステル塩酸塩、4-(2-アミノエチル)-1,2-ベンゼンジオール塩酸塩(ドーパミン塩酸塩とも命名)、4-アミノアンチピリン、又は2-アミノ-3-シアノ-5-メチルチオフェンを含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の反応物は、4,7-ジメトキシ-5-メチル-6-ヨード-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-ヨード-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-ヒドロキシメチル-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-アミノメチル-1,3-ベンゾジオキソ-ルを含み、第2の反応物はハロゲン化炭化水素又は無水物を含み、第1の反応物及び第2の反応物の反応は、-80℃~25℃で2時間~150時間にわたって行われる。好ましくは、第2の反応物は、3,3-ジメチルアリルブロミド、1-ブロモブタン、又は無水酢酸を含む。
【0041】
本発明の他の実施形態では、第1の反応物は、4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸又は4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルを含み、第2の反応物は、フェノール化合物、芳香族アルコール、エステル、ベンゼンスルホンアミド誘導体、エステル塩酸塩誘導体、フェノール塩酸塩誘導体、アンチピリン誘導体、又はチオフェン誘導体を含み、第1の反応物及び第2の反応物の反応は、0℃~60℃で0.5時間~100時間にわたって行われる。好ましくは、第2の反応物は、4-アミノフェノール、フェニルメタノール、エチルp-アミノベンゾエート、5-[(R)-(2-アミノ-プロピル)]-2-メトキシ-ベンゼンスルホンアミド、4-アミノ酪酸メチルエステル塩酸塩、β-アラニンメチルエステル塩酸塩、アラニンメチルエステル塩酸塩、4-(2-アミノエチル)-1,2-ベンゼンジオール塩酸塩、4-アミノアンチピリン、又は2-アミノ-3-シアノ-5-メチルチオフェンを含む。
【0042】
本発明の他の実施形態では、第1の反応物は4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸であり、第2の反応物は芳香族アルコール又はアンチピリン誘導体を含み、第1の反応物及び第2の反応物の反応は、25℃~60℃で20時間~90時間にわたって行われる。好ましくは、第2の反応物は、フェニルメタノール又は4-アミノアンチピリンを含む。
【0043】
本発明の他の実施形態では、第1の反応物は4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルであり、ステップ(a)は、4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸を塩素化に供し、4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルを予め形成し、それにより第1の反応物を得るステップを更に含み、第2の反応物は、フェノール化合物、エステル、ベンゼンスルホンアミド誘導体、フェノール塩酸塩誘導体、又はチオフェン誘導体を含み、第1の反応物及び第2の反応物の反応が、0~60℃で0.5時間~100時間にわたって行われる。好ましくは、第2の反応物は、4-アミノフェノール、エチルp-アミノベンゾエート、5-[(R)-(2-アミノ-プロピル)]-2-メトキシ-ベンゼンスルホンアミド、4-(2-アミノエチル)-1,2-ベンゼンジオール塩酸塩、又は2-アミノ-3-シアノ-5-メチルチオフェンを含む。
【0044】
本発明の他の実施形態では、第1の反応物は4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルであり、第2の反応物はエステル塩酸塩誘導体であり、ステップ(c)は第1の反応物と第2の反応物とを反応させ、メチルエステル中間体を得て、次いでこのメチルエステル中間体を加水分解に供して化合物を得るステップを更に含み、第1の反応物及び第2の反応物の反応は、0℃~60℃で0.5時間~80時間にわたって行われる。好ましくは、第2の反応物は、4-アミノ酪酸メチルエステル塩酸塩、β-アラニンメチルエステル塩酸塩、又はアラニンメチルエステル塩酸塩を含む。
【0045】
その上、本発明はまた、神経損傷を予防し、神経を保護するための医薬組成物を提供する。医薬組成物は、本発明の前述の新規化合物、及び医薬的に許容される担体を含む。
【0046】
その上、本発明はまた、神経損傷を表し、神経を保護するための本発明の前述の新規化合物の使用を提供する。具体的に言えば、この使用は神経損傷を予防し、神経を保護するための方法を示し、これは治療有効量の本発明の前述の新規化合物の投与を含む。
【0047】
好ましくは、この神経は脳神経組織を示す。
【0048】
好ましくは、当該神経損傷の予防及び当該神経の保護は、脳卒中及びアルツハイマー病の予防及び処置を含む。
【0049】
本明細書において、「神経損傷の予防」の当該効果は、本発明の前述の新規化合物を予め投与する場合、ニューロン損傷又は神経死の程度は、神経損傷中、効果的に低減され得ることを示す。「神経損傷の保護」の当該効果は、神経損傷中に本発明の前述の新規化合物を投与する場合、ニューロン損傷又は神経死の程度は、効果的に低減され得ることを示す。
【0050】
本発明によれば、「医薬的に許容される担体」又は「許容される担体」は、デンプン、トウモロコシデンプン、ゼラチン、アラビアガム、食用色素、スパイス、香味料、及び保存料といった、薬学的に許容される賦形剤若しくは添加剤、又は食品的に許容される賦形剤若しくは添加剤を含む。投与経路としては、経口、経皮、腹腔内、静脈内、経鼻又は眼投与が挙げられる。
【0051】
本発明によれば、患者の年齢、体重、健康状態、疾患の種類、疾患の進行、及び患部に従い、前述の医薬組成物の投与量は、当該技術分野における共通の知識に応じて、関連する医療関係者により決定される。医薬組成物は、単独で、又は他の薬物と同時に投与され得る。投与手順は、薬学における規定通りの方法に従い、関連する医療関係者によって実施されなければならない。
【0052】
本明細書において、「低エンドポイント値~高エンドポイント値」により表される範囲は、特段具体的に明記されない限り、この範囲が低エンドポイント値以上であり、高エンドポイント値以下であることを示す。例えば、-80℃~25℃といった温度範囲は、「-80℃以上かつ25℃以下」であることを示す。
【0053】
本発明の他の目的、利点、及び新規特徴は、添付の図面と併用される場合、以下の詳細な説明からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】ラットが実施例1~15の化合物を投与された後の、神経損傷を予防する効果である。
図2】ラットが実施例1~15の化合物を投与された後の、異なる脳領域を染色した結果である。
図3】ラットが実施例1、実施例3~実施例11及び実施例15の化合物を投与された後の、神経行動学的評価の結果である。
図4】実施例1~15の化合物による、神経を保護する効果を評価する実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
好適な実施形態のための詳細な説明
本発明の実施を例解するため、いくつかの実施例が以下に提供される。当業者は、本明細書の内容に従い、本発明の利点及び効果を容易に理解することが可能である。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を実施又は適用する目的で、様々な変更及び変形を行うことができる。
【0056】
実施例1
100mLの三つ口丸底フラスコに、0.65グラム(g)の4,7-ジメトキシ-5-メチル-6-ヨード-1,3-ベンゾジオキソ-ル及び3ミリリットル(mL)のテトラヒドロフランを加え、窒素下で温度をおよそ-80℃まで冷却した。次いで、1.5mLのn-ブチルリチウム溶液(1.6モル濃度(M))をゆっくりと加え、その後、テトラヒドロフラン(2mL)中の3,3-ジメチルアリルブロミド(0.35mL)の混合物を加えた。反応混合物を70時間撹拌した。反応完了後、5mLの水及び5mLの酢酸エチル(EA)を抽出のために加えた。EA層(すなわち、EA相)を分離し、水で2回洗浄した。EA層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いでろ過した。ろ過した固体をEAで3回すすいだ。3種類のろ液を前述のEA溶液と化合し、溶媒をロータリーエバポレータにより除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:80g、カラムの充填長:15cm、及び溶出液は100%ヘプタンである)により精製し、実施例1の化合物として、97.1%のHPLC純度(面積%)を有する0.22gの黄色の液体を得た。
【0057】
実施例1の化合物の構造を、核磁気共鳴(NMR)及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDCl):δ=5.892(s,2H),5.015(t,1H),3.868(s,6H),3.279(d,2H),2.108(s,3H),1.760(s,3H),1.677(s,3H)。質量分析:[M-C;C1113;209.18。
【0058】
実施例2
100mLの三つ口丸底フラスコに、3.24gの4,7-ジメトキシ-5-メチル-6-ヨード-1,3-ベンゾジオキソ-ル及び25mLのテトラヒドロフランを加え、窒素下で温度をおよそ-80℃まで冷却した。次いで、7mLのn-ブチルリチウム溶液(1.6M)をゆっくりと加え、次いで2.2mLの1-ブロモブタンをゆっくりと加えた。反応混合物を3時間撹拌した。反応完了後、温度を室温まで加温し、25mLの水及び25mLのEAを抽出のために加えた。有機層を分離し、30mLの水でそれぞれ2回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いでろ過した。ろ過した固体をEAで3回すすいだ。3種類のろ液を前述の有機溶液と化合し、溶媒をロータリーエバポレータにより除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:60g、カラムの充填長:12cm、及び溶出液は100%ヘプタンである)により精製し、実施例2の化合物として、96.8%のHPLC純度(面積%)を有する0.9gの生成物を得た。
【0059】
実施例2の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDCl):δ=5.887(s,2H),3.886(s,3H),3.870(s,3H),2.548(t,2H),2.119(s,3H),1.409~1.379(m,4H),0.935(t,3H)。質量分析:[M+H];C1421;253.21。
【0060】
実施例3
0.24gの4,7-ジメトキシ-5-ヒドロキシメチル-1,3-ベンゾジオキソ-ル、3mLのテトラヒドロフラン、及び3mLのトリエチルアミンを、100mLの三つ口丸底フラスコに加え、氷浴で冷却した。0.45mLの無水酢酸を加えた後、温度を室温まで加温した。反応混合物を144時間撹拌した。反応完了後、溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、10mLのジクロロメタンを加えて残渣を溶解させた。ジクロロメタン溶液を、10mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液で最初に洗浄し、次いで10mLの水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して蒸発させ、実施例3の化合物として、92.6%(面積パーセント)のHPLC純度を有する0.29gのオフホワイト色の粉末を得た。
【0061】
実施例3の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDCl):δ=6.520(s,1H),5.980(s,2H),5.049(s,2H),3.923(s,3H),3.861(s,3H),2.078(s,3H)。質量分析:[M-C;C1011;195.14。
【0062】
実施例4
100mLの三つ口丸底フラスコに、0.57gの4,7-ジメトキシ-5-ヨード-1,3-ベンゾジオキソ-ル及び4mLのテトラヒドロフランを加え、窒素下で温度をおよそ-80℃まで冷却した。1.5mLの1.6Mのn-ブチルリチウム溶液を加えた後、テトラヒドロフラン(3mL)中の3,3-ジメチルアリルブロミド(0.35mL)の混合物を加えた。反応混合物を2.5時間撹拌した。反応完了後、温度を0℃まで加温し、10mLの水及び10mLのEAを加えた。EA層を分離し、10mLの水で再度洗浄した。EA溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過して蒸発させ、0.44gの黒茶色の液体を得た。この液体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:29.1g、カラムの充填長:6cm、及び溶出液はEA:ヘプタン=1:50である)により精製し、実施例4の化合物として、96.5%(面積パーセント)のHPLC純度を有する66.3ミリグラム(mg)の生成物を得た。
【0063】
実施例4の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDCl):δ=6.297(s,1H),5.935(s,2H),5.229(t,1H),3.871(s,3H),3.850(s,3H),3.244(d,2H),1.729(s,3H),1.716(s,3H)。質量分析:[M-C;C1011;195.15。
【0064】
実施例5
1.0gの4,7-ジメトキシ-5-アミノメチル-1,3-ベンゾジオキソ-ルを、窒素下で100mLの三つ口丸底フラスコへと投入した後、10mLのテトラヒドロフラン、及び1.5mLのトリエチルアミンを加え、次いで氷浴でこれを冷却した。次に、0.5mLの無水酢酸を加え、17時間にわたり撹拌した。反応完了後、10mLのメタノールを加え、溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、次いで30mLのジクロロメタンを加えて残渣を溶解させた。ジクロロメタン層を、30mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、その後30mLの水及び30mLの生理食塩水で洗浄して、次いで分離させた。ジクロロメタン溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して蒸発させ、1.16gの淡色黄色粉末を得た。この後、この粉末をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:50.1g、カラムの充填長さ:11cm、及び溶出液はEA:ヘプタン=1:10~2:1である)により精製し、この生成物を収集し、生成物中の溶媒をロータリーエバポレータにより除去して、89.6%(面積パーセント)のHPLC純度を有する0.94gの実施例5の化合物を得た。
【0065】
実施例5の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDCl):δ=6.479(s,1H),5.959(s,2H),5.890(br,1H,NH),4.324(d,2H),3.942(s,3H),3.843(s,3H),1.969(s,3H)。質量分析:[M+H];C1216;254.23、[M+Na];276.16。
【0066】
実施例6
0.51gの4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、1.3mLのジクロロメタン、及び2滴のジメチルホルムアミドを、100mLの三つ口丸底フラスコに加え、次いで0.34mLのオキサリルクロリドを加え、室温で2時間塩素化を実施した。この後、余分なオキサリルクロリド及び溶媒を除去し、塩化アシルを得た。塩化アシルを100mLの一つ口丸底フラスコに移し、5mLのジクロロメタン及び0.51gの5-[(R)-(2-アミノ-プロピル)]-2-メトキシ-ベンゼンスルホンアミドを含んだ2.5mLのジクロロメタン溶液で希釈し、次いで1.3mLのトリエチルアミンを加え、室温で19.5時間撹拌させた。反応完了後、10mLの水及び10mLのEAを抽出のために加え、有機層を分離した。有機層の溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、0.9gのオフホワイト色の針形状の固体を得た。固体を17.5mLのヘプタンと共に撹拌させ、ろ過して実施例6の化合物として、96.5%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、0.59gの白色粉末を得た。
【0067】
実施例6の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDCl):δ=7.789(d,1H,NH),7.742(s,1H),7.438(d,1H),7.387(s,1H),6.985(d,1H),6.045(s,2H),5.095(s,2H,NH),4.396(m,1H),3.983(s,3H),3.933(s,3H),3.885(s,3H),2.921-2.789(m,2H),1.215(d,3H)。質量分析:[M+H];C2025S;453.30、[M+Na];475.26。
【0068】
実施例7
1.14gの4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、2mLのトルエン、及び2滴のジメチルホルムアミドを、500mLの一つ口丸底フラスコに加え、次いで0.75mLのチロニルクロリドを加え、60℃に加熱して1.5時間反応させた。反応完了後、溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、この残渣を20mLのテトラヒドロフラン中に溶解させ、再度蒸発させて塩化アシルを得た。次に、塩化アシルを20mLのテトラヒドロフランと混合し、温度を0℃に冷却し、次いで0.81gの4-アミノ酪酸メチルエステル塩酸塩及び3mLのトリエチルアミンを加え、室温で19時間撹拌させた。反応完了後、20mLの水及び20mLのEAを抽出のために加え、有機層を分離してこれを集めた。更なる20mLのEAを用いて、水層を再度抽出し、EA層を事前に集めたEA溶液と化合した。EA溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し蒸発させて86.3%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、1.4gのメチルエステル中間体(黄色液体)を得た。
【0069】
次に、0.80gのメチルエステル中間体、8mLのテトラヒドロフラン、及び8mLのメタノールを、100mLの二つ口丸底フラスコに加え、温度を0℃に冷却した。次いで、0.37gの水酸化リチウムを含んだ8mLの水酸化リチウム溶液を加え、反応混合物を室温で67時間撹拌させた。反応完了後、温度を0℃に冷却し、25mLのEAを加えた。1Mの塩酸溶液により、pHを3.28に調整した。次いで、温度を室温に温め、上部有機層を分離して集めた。下部水層溶液を、25mLのEAを用いて抽出した。EA層を分離し、予め集めたEA溶液と化合した。化合したEA溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して蒸発させ、実施例7の化合物として、95.5%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、0.75gの黄色針形状の固体を得た。
【0070】
実施例7の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDCl):δ=8.074(br,1H,NH),7.431(s,1H),6.060(s,2H),4.024(s,3H),3.899(s,3H),3.530(m,2H),2.450(t,2H),1.953(m,2H)。質量分析:[M+H];C1418NO;312.16、[M+Na];334.18。
【0071】
実施例8
0.68gの4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、20mLのトルエン、及び5滴のジメチルホルムアミドを、500mLの一つ口丸底フラスコに加え、次いで0.55mLのチロニルクロリドを加え、60℃に加熱して1時間反応させた。反応完了後、余分なチロニルクロリド及び溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、この残渣を20mLのテトラヒドロフラン中に溶解させ、再度蒸発させて塩化アシルを得た。次に、塩化アシルを20mLのテトラヒドロフランと混合し、温度を0℃に冷却し、次いで10mLのテトラヒドロフラン中に、0.57gのドーパミン塩酸塩及び0.9mLのトリエチルアミンを含んだ10.9gのドーパミン塩酸塩溶液及び3mLのトリエチルアミンを加え、室温で46時間撹拌させた。反応完了後、20mLの水及び20mLのEAを抽出のために加え、上部層(EA溶液)を分離してこれを集めた。更なる20mLのEAを用いて、下部水層を更に抽出した。EA層を分離し、予め集めたEA溶液と化合した。化合したEA溶液を10mLの0.1Mの塩酸溶液を用いて洗浄し、その後10mLの水及び10mLの生理食塩水で洗浄し、次いで分離させた。EA溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過して蒸発させ、1.05gの粗生成物を得た。この後、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:30g、カラムの充填長さ:6cm、及び溶出液はEA:ヘプタン=1:10~5:1)により精製し、0.65gの主生成物を得た。この後、主生成物を逆相カラムクロマトグラフィー(C-18シリカゲル:28.3g、カラムの充填長さ:4.5cm、及び溶出液はアセトニトリル:水=1:1である)により精製し、98.8%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、0.22gの実施例8の化合物を得た。
【0072】
実施例8の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,DMSO-d):δ=8.735(s,1H,OH),8.641(s,1H,OH),7.999(t,1H,NH),7.051(s,1H),6.645(d,1H),6.614(s,1H),6.469(d,1H),6.071(s,2H),3.780(s,3H),3.768(s,3H),3.424(m,2H),2.627(t,2H)。質量分析:[M+H];C1820NO;362.28、[M+Na];384.27。
【0073】
実施例9
1.13gの4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、20mLのトルエン、及び2滴のジメチルホルムアミドを、500mLの一つ口丸底フラスコに加え、次いで0.8mLのチロニルクロリドを加え、60℃に加熱して1時間反応させた。次いで、余分なチロニルクロリド及び溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、この残渣を20mLのテトラヒドロフラン中に溶解させ、再度蒸発させて塩化アシルを得た。次に、塩化アシルを20mLのテトラヒドロフラン中に溶解させ、氷浴でこれを冷却した。次いで0.55gの4-アミノフェノール及び1.4mLのトリエチルアミンを加え、30分後、反応混合物を室温に加温し、22時間反応させた。反応完了後、20mLの水を加え、有機層を分離してこれを集めた。下部水層溶液を、更なる20mLのEAを用いて再度抽出した。EA層を分離し、予め集めた有機溶液と化合した。化合した溶液を20mLの水で洗浄し、その後20mLの生理食塩水で洗浄し、次いで分離させた。化合した溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過して蒸発させ、1.62gの粗生成物を得た。この後、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:39.9g、カラムの充填長さ:8cm、及び溶出液はEA:ヘプタン=1:10~5:1である)により精製し、96.0%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、1.08gの実施例9の化合物を得た。
【0074】
実施例9の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,DMSO-d):δ=9.790(s,1H,OH),9.220(s,1H,NH),7.468(d,2H),6.961(s,1H),6.710(d,2H),6.095(s,2H),3.915(s,3H),3.809(s,3H)。質量分析:[M+H];C1616NO;318.15、[M+Na];340.15。
【0075】
実施例10
0.57gの4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、15mLのトルエン、及び3滴のジメチルホルムアミドを、250mLの一つ口丸底フラスコに加え、次いで0.4mLのチロニルクロリドを加え、60℃に加熱して1時間反応させた。反応完了後、余分なチロニルクロリド及び溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、この残渣を15mLの2-メチルテトラヒドロフラン中に溶解させ、再度蒸発させて塩化アシルを得た。次に、塩化アシルを15mLのテトラヒドロフランを用いて溶解させ、氷浴でこれを冷却した。次いで0.51gのβ-アラニンメチルエステル塩酸塩及び1.4mLのトリエチルアミンを加え、30分後、反応混合物を室温に加温し、71時間反応させた。反応完了後、20mLの水及び20mLのEAを抽出するために加えた。上部有機層を分離し、20mLの水を用いて更に洗浄し、次いで20mLの生理食塩水を用いて洗浄した。分離した有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して蒸発させて0.56gの黄色固体を得た。この後、この黄色固体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:31g、カラムの充填長さ:6cm、及び溶出液はEA:ヘプタン=1:10~1:2である)により精製し、99.3%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、0.41gのメチルエステル中間体を得た。
【0076】
次に、0.38gのメチルエステル中間体、4mLのテトラヒドロフラン、及び4mLのメタノールを、250mLの一つ口丸底フラスコに加え、氷浴で冷却した。次いで、0.19gの水酸化リチウムを含んだ4mLの水酸化リチウム溶液をゆっくりと加え、室温で79時間撹拌させた。反応完了後、有機溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、20mLのジクロロメタンを加えて残渣溶液中に溶解させた。氷浴でこれを冷却した後、1Mの塩酸溶液でpH値を1.75に調整した。温度を室温に加温し、有機層(ジクロロメタン溶液)を分離して集めた。水層をそれぞれ40mLのEAで2回抽出した。EA層を予め集めたジクロロメタン溶液と化合した。化合した有機溶液をそれぞれ40mLの水で2回洗浄し、有機溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して蒸発させて、実施例10の化合物として、96.1%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、0.35gの白色固体を得た。
【0077】
実施例10の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDOD):δ=7.255(s,1H),6.057(s,2H),3.997(s,3H),3.858(s,3H),3.633(m,2H),2.608(t,2H)。質量分析:[M+H];C1316NO;298.15、[M+Na];320.13。
【0078】
実施例11
1.14gの4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、20mLのトルエン、及び2滴のジメチルホルムアミドを、250mLの一つ口丸底フラスコに加え、次いで0.8mLのチロニルクロリドを加え、60℃に加熱して1時間反応させた。反応完了後、余分なチロニルクロリド及び溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、この残渣を20mLの2-メチルテトラヒドロフラン中に溶解させ、再度蒸発させて塩化アシルを得た。次に、塩化アシルを20mLのテトラヒドロフラン中に溶解させ、氷浴でこれを冷却した。次いで0.94gのアラニンメチルエステル塩酸塩及び3mLのトリエチルアミンを加え、30分後、反応混合物を室温に加温し、72時間反応させた。反応完了後、20mLの水及び20mLのEAを抽出のために加え、上部有機層を分離した。上部有機層を20mLの水を用いて更に洗浄し、次いで20mLの生理食塩水を用いて洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して蒸発させて1.27gの湿重量を有する黄色液体を得た。この後、この黄色液体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:31g、カラムの充填長さ:6cm、及び溶出液はEA:ヘプタン=1:10~1:2である)により精製し、97.1%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、1.02gのメチルエステル中間体を得た。
【0079】
次に、1.02gのメチルエステル中間体、10mLのテトラヒドロフラン、及び10mLのメタノールを、250mLの一つ口丸底フラスコに加え、氷浴で冷却した。次いで、0.44gの水酸化リチウムを含んだ10mLの水酸化リチウム溶液をゆっくりと加え、室温で24時間撹拌させた。反応完了後、有機溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、20mLのジクロロメタンを加えて残渣溶液中に溶解させ、氷浴でこれを冷却した。次いで、1Mの塩酸溶液によりpHを4.6に調整した。加えた後、温度を室温に加温した。下部ジクロロメタン層を分離し、集めた。上部水層を、20mLのEAを用いて抽出し、次いでEA層を分離した。EA層を、予め集めたジクロロメタン溶液と化合した。次いで、溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、0.97gのオフホワイト色の粉末を得た。次に、オフホワイト色の粉末を20mLのEAに溶解させ、20mLの水で洗浄し、次いで20mLの生理食塩水で洗浄した。有機溶液を蒸発させ、実施例11の化合物として、98.2%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、0.75gのオフホワイト色の粉末を得た。
【0080】
実施例11の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,DMSO-d):δ=12.8(br,1H,COOH),8.446(d,1H,NH),7.102(s,1H),6.110(s,2H),4.416(m,1H),3.911(s,3H),3.795(s,3H),1.374(d,3H)。質量分析:[M+H];C1316NO;298.15、[M+Na];320.13。
【0081】
実施例12
1.13gの4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、5.5mLのベンジルアルコール、3滴の濃硫酸を、250mLの二つ口丸底フラスコに加え、次いで60℃に加熱して28時間反応させた。反応完了後、50mLの水を加え、下部層を分離して蒸発させ、黒茶色の液体を得た。次いで、黒茶色の液体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:45g、カラムの充填長さ:9cm、及び溶出液はEA:ヘプタン=1:20~1:10)により精製し、1.87gの湿重量を有する透明な液体を得た。次いで、この透明な液体を真空下で乾燥させ、実施例12の化合物として、98.4%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、1.35gの白色固体を得た。
【0082】
実施例12の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDCl):δ=7.461-7.329(m,5H),7.110(s,1H),6.054(s,2H),5.343(s,2H),3.897(s,3H),3.873(s,3H)。質量分析:[M+H];C1717;317.14、[M+Na];339.13。
【0083】
実施例13
0.57gの4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、0.51gの4-アミノアンチピリン、10mLのテトラヒドロフラン及び5mLの水を、100mLの二つ口フラスコに加え、次いで0.8gの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを加え、室温で74時間反応させた。反応完了後、テトラヒドロフランをロータリーエバポレータにより除去し、残渣溶液を20mLのEAを用いて抽出した。次いで、EA溶液をそれぞれ20mLの水を用いて3回洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して蒸発させて実施例13の化合物として、97.6%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、0.8gの深橙色の液体を得た。
【0084】
実施例13の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDCl):δ=9.445(s,1H,NH),7.475-7.419(m,5H),7.302-7.274(m,1H),6.078(s,2H),4.125(s,3H),3.914(s,3H),3.039(s,3H),2.387(s,3H)。質量分析:[M+H];C2122;412.34、[M+Na];434.32。
【0085】
実施例14
0.57gの4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、10mLのトルエン、及び1滴のジメチルホルムアミドを、100mLの一つ口フラスコに加え、次いで0.4mLのチロニルクロリドを加え、60℃に加熱して1.5時間反応させた。反応完了後、余分なチロニルクロリド及び溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、この残渣を10mLの2-メチルテトラヒドロフラン中に溶解させ、再度蒸発させて塩化アシルを得た。この後、10mLの2-メチルテトラヒドロフランを塩化アシルに加え、氷浴でこれを冷却した。次いで、0.35gの2-アミノ-3-シアノ-5-メチルチオフェン及び1.8mLのトリエチルアミンを加え、室温で96時間反応させた。反応完了後、10mLの水及び10mLのEAを加えた。水性層を分離し、それぞれ20mLのEAで3回更に洗浄した。次いで、それぞれ20mLのジクロロメタンを水性層に加え、3回抽出した。化合したジクロロメタン溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して蒸発させ、実施例14の化合物として、90.82%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、0.47gの黄色針形状の固体を得た。
【0086】
実施例14の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDCl):δ=11.420(s,1H,NH),7.517(s,1H),6.640(s,1H),6.110(s,2H),4.267(s,3H),3.904(s,3H),2.416(s,3H)。質量分析:[M+H];C1615S;347.14、[M+Na];369.15。
【0087】
実施例15
0.57gの4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、10mLのトルエン、及び1滴のジメチルホルムアミドを、250mLの一つ口丸底フラスコに加え、次いで0.42mLのチロニルクロリドを加え、60℃に加熱して1.5時間反応させた。反応完了後、余分なチロニルクロリド及び溶媒をロータリーエバポレータにより除去し、この残渣を10mLの2-メチルテトラヒドロフラン中に溶解させ、再度蒸発させて塩化アシルを得た。この後、10mLの2-メチルテトラヒドロフランを加え、次いで温度を0℃に冷却した。次に、0.42gのベンゾカイン及び0.8mLのトリエチルアミンを加え、室温で22時間反応させた。反応完了後、10mLの水を加え、次いで最初に、それぞれ10mLのEAを用いて3回抽出し、次いでそれぞれ10mLのジクロロメタンを用いて3回抽出した。化合したEAとジクロロメタンの層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して次いで蒸発させ、0.98gの湿重量のオフホワイト色の粉末を得た。次いで、オフホワイト色の粉末を50mLのジクロロメタン中に溶解させ、それぞれ25mLの水を用いて3回洗浄した。次いで硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して蒸発させて実施例15の化合物として、93.0%(面積パーセント)のHPLC純度を有する、0.92gのオフホワイト色の粉末を得た。
【0088】
実施例15の化合物の構造を、NMR及び質量分析により同定し、表1に示した。NMR及び質量分析の結果は以下の通りである:H-NMR(500MHz,CDCl):δ=10.074(s,1H,NH),8.044(d,2H),7.727(d,2H),7.515(s,1H),6.109(s,2H),4.371(q,2H),4.131(s,3H),3.931(s,3H),1.398(t,3H)。質量分析:[M+H];C1920NO;347.30、[M+Na];396.35。
【0089】
【表1】
【0090】
試験例1:神経損傷予防効果の評価
実施例1~15の化合物を採用し、特定の溶媒を溶解させて試験サンプルを得た(濃度:10mg/mL)。特定の溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)、クレモフォールEL(CrEL)及び水から、それぞれ10:20:70の相対的な体積比で作製された。前述の実験群に加え、使用されている不純物を含まない溶媒のみを溶媒群として処理し、閉塞及び虚血を引き起こす任意の化合物若しくは溶媒、又はナイロンモノフィラメントを投与されなかった偽群もまた含まれていた。
【0091】
この試験例では、一過性の局所的中大脳動脈閉塞/再灌流モデル(MCAO/Rモデル)を採用し、その後の神経損傷を評価するため、虚血性脳卒中をシミュレートした。具体的に言えば、オスのスプラーグドーリーラット(SDラット)を採用し、2%のイソフルランで麻酔した。次いで中でも右外頸動脈、外頸動脈及び内頸動脈を首と区別した。
【0092】
次に、22ミリメートル(mm)の長さ、4/0のサイズ番号を有し、ポリシロキサンで被覆したナイロンモノフィラメントを、外頸動脈、及び外頸動脈と共にウィリス動脈輪へと挿入し、中大脳動脈に閉塞及び虚血を誘発させた。1時間にわたって閉塞及び虚血を引き起こした後、ナイロンモノフィラメントを抜去して血液を脳へと再循環させた。これは言い換えると、血液再灌流に供したことになる。
【0093】
24時間にわたる血液再灌流後、ラットを屠殺し、その脳を、冷却した0.95%の生理食塩水へと投入した。次いで、1mm部分の先端部を切除し、残りの脳を冠状断で切断して、それぞれの厚さが2mmである7つの切片の脳組織を得た。次に、これらのスライスした脳組織を、1%の2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC、triphenyltetrazolium chloride)に室温(約25℃~27℃)で30分間浸潤させた。この後、スライスした脳組織を4%のホルマリン溶液で染色し、次いでMacroPATHデジタルイメージングシステムを使用して画像を記録し、取得画像をImageJ1.52aにより解析して梗塞体積パーセントを計測した。この梗塞体積パーセントは、神経損傷度を表すことができる。前述の梗塞体積パーセントは、それぞれのスライスした脳組織の梗塞面積の割合とその厚さを乗ずることにより得られた値を加算することで得られ、梗塞面積の割合は等式:(B-A)/B×100%(式中、「A」は右側の損傷した大脳半球における未損傷面積を表し、「B」は左側の未損傷面積の全面積を表す)により算出された。
【0094】
ここで、前述のMCAO/Rモデルを処理した10分後に、ラットに実施例1~15の試験サンプルを1回腹腔内注射することで投与した。投与量は、キログラム当たり50ミリグラム(mg/kg)又は5mL/kgであった。実際の適用量は、ラットの体重に応じて変化させた。溶媒群の処置は、溶媒のみを使用する場合を除き、実験群の処置と同様であった。
【0095】
実施例1~15の群の全梗塞体積パーセント(7つのスライスした脳組織の梗塞体積パーセントの合計)、溶媒群及び偽群を、以下の表1及び図1に列挙した。実施例1~15の群、溶媒群及び偽群の7つのスライスした脳組織のTTC染色の結果を図2に示す。実施例1~15それぞれの実験群、及び溶媒群には、5匹のSDラットを使用したが、偽群には3匹のSDラットのみを使用した。
【0096】
【表2】
【0097】
表2の結果によれば、24時間にわたる虚血性脳卒中及び血液再灌流のシミュレーション後の全梗塞体積パーセントは、溶媒群については40.48%であった。このことは、MCAO/Rモデルによって引き起こされる虚血性脳卒中の前述のシミュレーションが、実際に広範囲の神経損傷を引き起こしたことを示した。偽群については、全梗塞体積パーセントは1.79%のみであった。これは、神経が損傷されておらず、実験中の外科手術は全梗塞体積の結果に影響せず、溶媒群と比較すると、統計学的に有意である(0.001未満のp値)と示した。
【0098】
表2に示されているデータから、実施例の全て(1~15)は、溶媒群の全梗塞体積パーセントと比較すると、低い全梗塞体積パーセントを有した(約14.52%~35.76%)と示した。更に、スチューデントのt検定によりこれらのデータを解析した後、実施例3、実施例4及び実施例6のp値は0.05未満であり、実施例7、実施例10、実施例11及び実施例15のp値は0.01であり、実施例9のp値は0.001であると示した。これは、溶媒群と比較すると、統計学的に有意であった。加えて、図1において、実施例1~15の全梗塞体積パーセントは、溶媒群のもの未満であったことも明らかに観察できた。従って、予め本発明の新規化合物を投与することは、全梗塞体積パーセントを実際に減少させることができ、このことは神経損傷度を低下させ、それゆえに神経損傷を予防する効果を有することを示した。
【0099】
図2によれば、上から下までの7列はそれぞれ、脳の境界から3mm、5mm、7mm、9mm、11mm、13mm及び15mmの脳組織スライスの染色結果であり、この脳先端部の1mm部分はすでに切除した。TTC染色の原理によれば、脳組織のいずれかの領域が白色に変わると、その領域における神経が損傷されていることを示す。溶媒群の染色結果を参照すると、7列の脳組織スライスは、右側で明らかに白色を示した。これは、異なるスポットの神経が実際に損傷されていたことを示した。ただし実施例1~15の染色結果を参照すると、脳組織スライスの異なるスポットの右側の白色は、溶媒群のものほど明らかな白色ではなかった。これは、本発明の新規化合物が神経損傷を予防する効果を実際に有するとも実証することができた。
【0100】
試験例2:神経行動学的評価
この試験例及び前述の試験例1は同時に実施され、それゆえ試験サンプル、溶媒群及び偽群の調製は、試験例1と同じであった。具体的に言えば、この試験例は実施例1、実施例3~11及び実施例15の化合物を採用し、MCAO/Rモデルの血液再灌流後、0.5時間、1.5時間及び24時間の時間間隔でラットの神経行動を評価するため、ラットの神経損傷の重症度は、Bedersonにより規定された分類基準に従って評価された。行動評価及び神経損傷に対応する分類は以下:神経損傷がないことを示すグレード0、ラットの前肢が損傷した脳領域の反対側に限定されることを示すグレード1、推力に対するラットの抵抗力が、損傷した脳領域の同側で減少していることを示すグレード2、ラットが損傷した脳領域の反対側に自然発症的に旋回し、直進不可能であると示すグレード3、及びラットの前肢が弱々しく、麻痺又はてんかんを発症しているという重度の神経損傷を示すグレード4、といった通りである。実施例1、実施例3~実施例11及び実施例15の化合物、溶媒群及び偽群の試験結果は、表3及び図3に列挙した。
【0101】
【表3】
【0102】
表3の結果によれば、血液再灌流後0.5時間、1.5時間及び24時間の時間間隔で、溶媒群の神経行動学的評価のグレードは全て2.8であり、前述したグレード3の分類に近く、神経行動が影響されていることを示した。しかし、実施例1、実施例3~11及び実施例15の化合物によれば、全てが神経行動的評価の良好な結果を示した(全てのグレードが2.8未満であった)。更に、血液再灌流後24時間の時間間隔にて、実施例1、実施例3~11及び実施例15の化合物は、ここでも神経行動学的評価の良好な結果を示した。特に実施例3、実施例4、実施例7、実施例9及び実施例11の化合物の神経行動学的評価の結果は、前述したグレード2の分類よりも良好であると示した。その上、図3の結果はまた、血液再灌流後24時間の時間間隔にて、実施例1、実施例3~実施例11及び実施例15の神経行動学的評価が溶媒群の評価よりも実際に良好であることを示した。したがって、本発明の新規化合物の投与後、神経損傷状態は、一定時間後に実際に改善されることが可能であった。
【0103】
試験例3:神経保護効果の評価
この試験では、実施例1~15の化合物をDMSO中に溶解させ、試験溶液を得た。そしてニューロン損傷状態をシミュレートするための神経損傷誘発剤としてオカダ酸を使用した。この後、細胞数計測キットとしてCCK-8(日本の同仁化学研究所から購入)を使用し、神経を保護するための試験サンプルの影響を評価した。
【0104】
具体的に言えば、マウスの神経芽細胞種細胞株:Neuro-2a細胞(ATCC(登録商標)CCL-131(商標))を採用し、10体積パーセントのウシ胎児血清(FBS)を含有するMEM培地で、5%の二酸化炭素で満たしたインキュベータ内、37℃で培養した。次いで、510個の細胞/ウェルの細胞密度で、Neuro-2a細胞を96ウェルプレートに播種した。培地の容積は100マイクロリットル(μL)であり、培地は120nMのオカダ酸を含有していた。次いで、実施例1~15の試験溶液を培地へと1つずつ加え、培地中の試験溶液の濃度を以下の表4に列挙した。24時間にわたる共処理後、各群の細胞生存率をCCK-8により解析し、オカダ酸のみを含有した培地を対照群として設定した。各群の細胞生存率の結果を以下の表4に列挙した。各群の実験を3~4回繰り返した。
【0105】
【0106】
表4の結果によれば、オカダ酸でのみ処理された対照群は、わずか28.88%の細胞生存率を有した。しかし、実施例1~15の化合物で処置された群全てにおいて、細胞生存率(34.18%~67.27%)は対照群の細胞生存率よりも明らかに高く、特に実施例5の化合物では高かった。更に、スチューデントのt検定の結果によりこれらを解析した後、この結果は実施例1~3、実施例5~7、実施例9~12及び実施例14は対照群と比較すると統計学的に有意であり、実施例12~14のp値は0.05未満であり、実施例1~3、実施例5~7及び実施例9のp値は0.01であると示した。加えて、図に示された各群の細胞生存率の結果を図4に列挙した。実施例1~15の細胞生存率の結果は、対照群の細胞生存率よりもいずれも高いことも明らかに観察することができた。したがって、神経損傷が発生した場合には、本発明の新規化合物の処置は細胞生存率を実際に向上させる。このことは、本発明の化合物が神経損傷度及び死の程度を効果的に低下させることができ、これにより神経を保護するという効果を有すると示した。
【0107】
結論として、本発明は新規化合物及びその調製方法を提供する。新規化合物は神経損傷を予防し、神経を保護する効果を有し、それゆえ神経損傷によって引き起こされる疾患を予防又は改善するために使用され得る。こうすることで、患者に、非常に可能性を秘め、有効である別の治療方法を提供する。
【0108】
本発明の多数の特徴及び利点は、本発明の構造及び特徴の詳細と共に前述の説明にて記載されているものの、本開示は例示にすぎない。添付の特許請求の範囲が表現されている用語の広義の一般的な意味によって示される最大限まで、本発明の原理内の詳細、特に形状、サイズ、及び部品の配置の事項に変更を加えることができる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I);
【化1】


(I)
により表される化合物であって、
式中、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基又は6~18個の炭素原子を有する非置換アリーレン基であり、
Yは、アシルオキシ基、又はアミド基であり、
Zはカルボキシル基、


1~6個の炭素原子を有する非置換エステル基、



又は、

であって、
n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である、化合物。
【請求項2】
Zがカルボキシル基、


-COOCHCH




又は

である、請求項に記載の化合物。
【請求項3】
が、非置換メチレン基、非置換エチレン基、非置換プロピレン基、又は非置換フェニレン基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
化合物であって、
【化2】

化合物1 化合物2 化合物3
【化3】

化合物4 化合物5 化合物6
【化4】

化合物7 化合物8 化合物9
【化5】

化合物10 化合物11 化合物12
【化6】

化合物13 化合物14、 及び化合物15、
からなる群から選択される化合物。
【請求項5】
請求項に記載の化合物の調製方法であって、以下:
ステップ(a):4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル誘導体である第1の反応物を提供するステップ、
ステップ(b):ハロゲン化炭化水素、無水物、フェノール化合物、芳香族アルコール、エステル、ベンゼンスルホンアミド誘導体、エステル塩酸塩誘導体、フェノール塩酸塩誘導体、アンチピリン誘導体、又はチオフェン誘導体を含む第2の反応物を提供するステップ、及び
ステップ(c):前記第1の反応物と前記第2の反応物を反応させ、前記化合物を得るステップを含む、調製方法。
【請求項6】
前記第1の反応物が、4,7-ジメトキシ-5-メチル-6-ヨード-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-ヨード-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-ヒドロキシメチル-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-5-アミノメチル-1,3-ベンゾジオキソ-ル、4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸、又は4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルを含む、請求項に記載の調製方法。
【請求項7】
前記第2の反応物が、3,3-ジメチルアリルブロミド、1-ブロモブタン、無水酢酸、4-アミノフェノール、フェニルメタノール、エチルp-アミノベンゾエート、5-[(R)-(2-アミノ-プロピル)]-2-メトキシ-ベンゼンスルホンアミド、4-アミノ酪酸メチルエステル塩酸塩、β-アラニンメチルエステル塩酸塩、アラニンメチルエステル塩酸塩、4-(2-アミノエチル)-1,2-ベンゼンジオール塩酸塩、4-アミノアンチピリン、又は2-アミノ-3-シアノ-5-メチルチオフェンを含む、請求項に記載の調製方法。
【請求項8】
前記第1の反応物が、4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルであり、前記ステップ(a)が、4,7-ジメトキシ-1,3-ベンゾジオキソ-ル-5-カルボン酸を塩素化に供し、予め4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルを形成し、それにより前記第1の反応物を得るステップを更に含む、請求項又はに記載の調製方法。
【請求項9】
前記第1の反応物が、4,7-ジメトキシ-5-アシルクロリド-1,3-ベンゾジオキソ-ルであり、前記第2の反応物がエステル塩酸塩誘導体であり、前記ステップ(c)が前記第1の反応物と前記第2の反応物とを反応させ、メチルエステル中間体を得て、次いで前記メチルエステル中間体を加水分解に供して前記化合物を得るステップを更に含む、請求項又はに記載の調製方法。
【請求項10】
神経損傷を予防し、神経を保護するための医薬組成物であって、請求項1又は4に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項11】
神経損傷の予防及び神経の保護が、脳卒中及びアルツハイマー病の予防及び/又は処置を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が、医薬的に許容される担体を更に含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
前述の目的を達成するため、本発明は以下の式(I);
【化1】

(I)
により表される化合物を提供し、
式中、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基又は6~18個の炭素原子を有する非置換アリーレン基であり、
Yは、アシルオキシ基、又はアミド基であり、
Zはカルボキシル基、


1~6個の炭素原子を有する非置換エステル基、



又は、

であって、
n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、Yは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基、又は2~6個の炭素原子を有する非置換アルケニレン基であり、Lは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキレン基であり、n1は1であり、n2は0であり、Zは1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。
好ましくは、新規化合物は、以下の化合物1~15のうちいずれか1個であり得るが、それらに限定されない。
【化13】

化合物1 化合物2 化合物3
【化14】

化合物4 化合物5 化合物6
【化15】

化合物7 化合物8 化合物9
【化16】

化合物10 化合物11 化合物12
【化17】

化合物13 化合物14 化合物15
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0089
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0089】
【表1】