(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151881
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
B60K 17/12 20060101AFI20231005BHJP
B60K 17/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60K17/12
B60K17/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061732
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【テーマコード(参考)】
3D042
【Fターム(参考)】
3D042AA06
3D042AB01
3D042BA01
3D042BB00
3D042BE00
(57)【要約】
【課題】容易に製造することのできる駆動ユニットを提供する。
【解決手段】駆動ユニット100は、電気モータ2、トルクコンバータ3、減速機4、第1シャフト5、第2シャフト6、及びクラッチ7を備える。トルクコンバータ3は、電気モータ2の第1回転方向のトルクを増幅する。減速機4は、トルクを減速するように構成される。第1シャフト5は、電気モータ2からトルクコンバータ3にトルクを伝達する。第2シャフト6は、トルクコンバータ3から減速機4にトルクを伝達する。クラッチ7は、減速機4内に配置される。クラッチ7は、第1シャフト5と第2シャフト6との間でトルクを遮断可能に伝達する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータと、
前記電気モータの第1回転方向のトルクを増幅するように構成されるトルクコンバータと、
トルクを減速するように構成される減速機と、
前記電気モータから前記トルクコンバータにトルクを伝達するように構成される第1シャフトと、
前記トルクコンバータから前記減速機にトルクを伝達するように構成される第2シャフトと、
前記減速機内に配置され、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの間でトルクを遮断可能に伝達するように構成されるクラッチと、
を備える駆動ユニット。
【請求項2】
前記クラッチは、前記第1シャフトから前記第2シャフトへ前記電気モータの第2回転方向のトルクを伝達し、前記第1シャフトから前記第2シャフトへの前記電気モータの第1回転方向のトルクの伝達を遮断するように構成される、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記第2シャフトは、円筒状であり、
前記第1シャフトは、前記第2シャフト内を軸方向に延びており、
前記クラッチは、径方向において、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの間に配置される、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記第1シャフトは、前記クラッチが取り付けられる取付部と、前記取付部から先端に向かって延びる延在部と、を有し、
前記延在部は、前記取付部よりも径が小さい、
請求項3に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記第2シャフトは、前記トルクコンバータ内を延びる小径部と、前記小径部よりも内径及び外径が大きい大径部と、を有し、
前記大径部は、前記取付部に対して径方向外側に配置され、
前記クラッチは、前記大径部と前記取付部との間に配置される、
請求項4に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記減速機は、軸方向において、前記電気モータと前記トルクコンバータとの間に配置される、
請求項1から5のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記減速機は、第2シャフトと一体的に回転するように構成される第1ドライブギヤを有し、
前記第1ドライブギヤは、径方向視において、前記クラッチと重複するように配置される、
請求項1から6のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項8】
前記減速機は、前記第1ドライブギヤと噛み合う第1ドリブンギヤと、前記第1ドリブンギヤと一体的に回転するように構成される第2ドライブギヤと、を有し、
前記第1ドリブンギヤは、軸方向において、前記第2ドライブギヤと前記トルクコンバータとの間に配置される、
請求項7に記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気モータのトルクを増幅させるためにトルクコンバータを備えた駆動ユニットが提案されている。特許文献1に記載の駆動ユニットは、車両を後進走行させるために電気モータを逆回転させた場合に、効率的にトルクを伝達するために、ワンウェイクラッチをトルクコンバータ内に設けている。このワンウェイクラッチは、正回転方向においてカバーをタービンに対して相対回転可能とし、逆回転方向においてカバーをタービンと一体回転させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した駆動ユニットでは、トルクコンバータのカバーとタービンとの間にワンウェイクラッチを設置しているため、トルクコンバータの構造がより複雑となり、駆動ユニットの製造コストが掛かるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、容易に製造することのできる駆動ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係る駆動ユニットは、電気モータと、トルクコンバータと、減速機と、第1シャフトと、第2シャフトと、クラッチとを備えている。トルクコンバータは、電気モータの第1回転方向のトルクを増幅するように構成される。減速機は、トルクを減速するように構成される。第1シャフトは、電気モータからトルクコンバータにトルクを伝達するように構成される。第2シャフトは、トルクコンバータから減速機にトルクを伝達するように構成される。クラッチは、減速機内に配置される。クラッチは、第1シャフトと第2シャフトとの間でトルクを遮断可能に伝達するように構成される。
【0007】
この構成によれば、電気モータが第1回転方向に回転した場合、トルクコンバータによって増幅されたトルクが出力ユニットへ出力される。また、電気モータが第2回転方向のトルクを出力した場合、クラッチを介して、第1シャフトから第2シャフトにトルクが伝達される。すなわち、トルクコンバータによって増幅されない第2回転方向のトルクは、トルクコンバータを介さずに出力ユニットへ出力される。そして、このクラッチは、減速機内に配置されており、第1シャフトと第2シャフトとの間でトルクを遮断可能に伝達するように構成されているため、駆動ユニットを容易に製造することができる。
【0008】
好ましくは、クラッチは、第1シャフトから第2シャフトへ電気モータの第2回転方向のトルクを伝達し、第1シャフトから第2シャフトへの電気モータの第1回転方向のトルクの伝達を遮断するように構成される。
【0009】
好ましくは、第2シャフトは、円筒状である。第1シャフトは、第2シャフト内を軸方向に延びている。クラッチは、径方向において、第1シャフトと第2シャフトとの間に配置されている。
【0010】
好ましくは、第1シャフトは、取付部と、延在部とを有する。取付部は、クラッチが取り付けられる。延在部は、取付部から先端に向かって延びる。延在部は、取付部よりも径が小さい。
【0011】
好ましくは、第2シャフトは、小径部と大径部とを有する。小径部は、トルクコンバータ内を延びる。大径部は、小径部よりも内径及び外径が大きい。大径部は、取付部に対して径方向外側に配置される。クラッチは、大径部と取付部との間に配置される。
【0012】
好ましくは、減速機は、軸方向において、電気モータとトルクコンバータとの間に配置される。
【0013】
好ましくは、減速機は、第1ドライブギヤを有する。第1ドライブギヤは、第2シャフトと一体的に回転するように構成される。第1ドライブギヤは、径方向視において、クラッチと重複するように配置される。
【0014】
好ましくは、減速機は、第1ドリブンギヤと、第2ドライブギヤとを有する。第1ドリブンギヤは、第1ドライブギヤと噛み合う。第2ドライブギヤは、第1ドリブンギヤと一体的に回転するように構成される。第1ドリブンギヤは、軸方向において、第2ドライブギヤとトルクコンバータとの間に配置される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動ユニットを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、駆動ユニットの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る駆動ユニットの断面図である。なお、以下の説明において、軸方向とは電気モータの回転軸Oが延びる方向である。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。また、第1回転方向とは、車両が前進するときの各部材の回転方向であり、第2回転方向とは、車両が後進するときの各部材の回転方向である。
【0018】
[駆動ユニット]
図1に示すように、駆動ユニット100は、電気モータ2、トルクコンバータ3、減速機4、第1シャフト5、第2シャフト6、及びクラッチ7を備えている。この駆動ユニット100は、例えば、電気自動車に搭載される。駆動ユニット100は、出力ユニット101を駆動するように構成されている。なお、出力ユニット101は、デファレンシャルギヤ102、一対のドライブシャフト103、及び駆動輪(図示省略)を含んでいる。なお、出力ユニット101は、駆動輪のみを有していてもよい。
【0019】
<電気モータ>
電気モータ2は、駆動ユニット100の駆動源である。電気モータ2が第1回転方向に回転することによって、車両を前進させることができる。また電気モータ2が第2回転方向に回転することによって、車両を後進させることができる。電気モータ2は、モータケース21、ステータ22、及びロータ23を有している。モータケース21は、車体フレームなどに固定されており、回転不能である。
【0020】
ステータ22は、モータケース21の内周面に固定されている。ステータ22は回転不能である。ロータ23は、回転軸O周りに回転する。ロータ23は、径方向において、ステータ22の内側に配置される。すなわち、電気モータ2は、いわゆるインナーロータ型である。
【0021】
<トルクコンバータ>
トルクコンバータ3は、電気モータ2の第1回転方向のトルクを増幅するように構成されている。なお、トルクコンバータ3は、電気モータ2の第2回転方向のトルクを増幅しない。トルクコンバータ3の回転軸Oは、電気モータ2の回転軸Oと実質的に一致している。トルクコンバータ3は、軸方向において、電気モータ2と間隔をあけて配置されている。このトルクコンバータ3と電気モータ2との間に、減速機4が配置されている。なお、トルクコンバータ3は、トルクコンバータケース38内に収容されている。
【0022】
図2に示すように、トルクコンバータ3は、カバー31、インペラ32、タービン33、ステータ34、及びワンウェイクラッチ35を有している。また、トルクコンバータ3は、遠心クラッチ36をさらに有している。
【0023】
トルクコンバータ3は、インペラ32が電気モータ2側(
図2の左側)を向き、カバー31が電気モータ2と反対側(
図2の右側)を向くように配置されている。トルクコンバータ3内には作動流体が供給されている。作動流体は、例えば作動油である。
【0024】
カバー31は、第1シャフト5を介して、電気モータ2からトルクが伝達される。カバー31は、電気モータ2からのトルクによって回転する。カバー31は、電気モータ2から延びる第1シャフト5に固定されている。例えば、カバー31は、スプライン孔を有しており、第1シャフト5がカバー31のスプライン孔にスプライン嵌合する。このため、カバー31は、第1シャフト5と一体的に回転する。
【0025】
カバー31は、タービン33を覆うように配置されている。カバー31は、円板部311、円筒部312、及びカバーハブ313を有している。円板部311は、中央に開口を有する。円筒部312は、円板部311の外周端部から電気モータ2側に延びている。円板部311と円筒部312とは1つの部材によって構成されている。
【0026】
カバーハブ313は、円板部311の内周端部に固定されている。本実施形態では、カバーハブ313は、円板部311と別部材によって構成されているが、円板部311と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0027】
カバーハブ313は、円筒状であって、スプライン孔を有している。このカバーハブ313に、第1シャフト5がスプライン嵌合する。カバーハブ313は、トルクコンバータケース38に軸受部材105aを介して回転可能に支持されている(
図1参照)。
【0028】
インペラ32は、カバー31と一体的に回転する。インペラ32は、カバー31に固定されている。インペラ32は、インペラシェル321、複数のインペラブレード322、及びインペラハブ323を有している。
【0029】
インペラシェル321は、カバー31に固定されている。複数のインペラブレード322はインペラシェル321の内側面に取り付けられている。
【0030】
インペラハブ323は、インペラシェル321の内周端部に取り付けられている。なお、本実施形態では、インペラハブ323は、インペラシェル321と一つの部材によって構成されているが、インペラシェル321と別部材によって構成されていてもよい。
【0031】
インペラハブ323は、軸受部材105bを介してトルクコンバータケース38に回転可能に支持されている。インペラハブ323内を、固定軸104が軸方向に延びている。なお、この固定軸104は円筒状であり、この固定軸104内を第2シャフト6が軸方向に延びている。また、固定軸104は、例えば、減速機ケース43又はトルクコンバータケース38から延びている。固定軸104は、回転不能である。
【0032】
タービン33は、インペラ32と対向して配置されている。詳細には、タービン33は、軸方向においてインペラ32と対向している。タービン33は、作動流体を介してインペラ32からトルクが伝達される。
【0033】
タービン33は、タービンシェル331、複数のタービンブレード332、及びタービンハブ333を有している。タービンブレード332は、タービンシェル331の内側面に固定されている。
【0034】
タービンハブ333は、タービンシェル331の内周端部に固定されている。例えば、タービンハブ333は、リベット107によって、タービンシェル331に固定されている。本実施形態では、タービンハブ333は、タービンシェル331と別部材によって構成されているが、タービンシェル331と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0035】
タービンハブ333には、第2シャフト6が取り付けられている。詳細には、第2シャフト6が、タービンハブ333にスプライン嵌合している。タービンハブ333は、第2シャフト6と一体的に回転する。
【0036】
ステータ34は、タービン33からインペラ32へと戻る作動流体を整流するように構成されている。ステータ34は、回転軸O周りに回転可能である。例えば、ステータ34は、固定軸104に、ワンウェイクラッチ35を介して支持されている。このステータ34は、軸方向において、インペラ32とタービン33との間に配置される。
【0037】
ステータ34は、円板状のステータキャリア341と、その外周面に取り付けられる複数のステータブレード342と、を有している。
【0038】
遠心クラッチ36は、タービン33に取り付けられている。遠心クラッチ36は、タービン33と一体的に回転する。遠心クラッチ36は、タービン33の回転によって生じる遠心力によって、カバー31とタービン33とを連結するように構成されている。詳細には、遠心クラッチ36は、タービン33が所定の回転数以上になると、カバー31からタービン33にトルクを伝達するように構成されている。
【0039】
遠心クラッチ36は、径方向に移動可能に配置されている。なお、遠心クラッチ36は、周方向に移動不能に配置されている。このため、遠心クラッチ36は、タービン33とともに回転し、遠心力によって径方向外側に移動する。
【0040】
この遠心クラッチ36は、タービン33の回転数が所定の回転数以上になると、遠心クラッチ36が径方向外側に移動し、カバー31の円筒部312の内周面と摩擦係合する。この結果、遠心クラッチ36はオン状態となり、カバー31からのトルクが遠心クラッチ36を介してタービン33へと伝達される。なお、遠心クラッチ36がオン状態になっても、作動流体は遠心クラッチ36を介して流通可能である。
【0041】
タービン33の回転数が所定の回転数未満になると、遠心クラッチ36が径方向内側に移動し、カバー31の円筒部312の内周面との摩擦係合が解除される。この結果、遠心クラッチ36はオフ状態となり、カバー31からのトルクは遠心クラッチ36を介してタービン33へと伝達されない。すなわち、カバー31からのトルクは、インペラ32に伝達された後、作動流体を介してタービン33へと伝達される。
【0042】
<減速機4>
図1に示すように、減速機4は、軸方向において電気モータ2とトルクコンバータ3との間に配置されている。減速機4は、トルクを減速するように構成されている。詳細には、減速機4は、第1ドライブギヤ41a、第1ドリブンギヤ41b、第2ドライブギヤ42a、及び第2ドリブンギヤ42bを有している。また、減速機4は、各ギヤを収容する減速機ケース43と、を有している。
【0043】
第1ドライブギヤ41aは、第2シャフト6と一体的に回転するように構成されている。なお、第1ドライブギヤ41aは、第2シャフト6と一つの部材によって構成されており、第2シャフト6の一部となっている。なお、第1ドライブギヤ41aは、第2シャフト6と別部材によって構成されており、第2シャフト6に固定されていてもよい。第1ドライブギヤ41aは、第2シャフト6の先端部に配置されている。
【0044】
第1ドリブンギヤ41bは、第1ドライブギヤ41aと噛み合うように配置されている。第1ドリブンギヤ41bは、支持シャフト44に支持されている。第1ドリブンギヤ41bは、支持シャフト44と一体的に回転するように構成されている。なお、第1ドリブンギヤ41bは、支持シャフト44と一つの部材によって構成されている。第1ドリブンギヤ41bは、第1ドライブギヤ41aよりも歯数が多い。
【0045】
第2ドライブギヤ42aは、第1ドリブンギヤ41bと一体的に回転するように構成されている。詳細には、第2ドライブギヤ42aは、支持シャフト44と一体的に回転するように構成されている。第1ドリブンギヤ41bは、軸方向において、第2ドライブギヤ42aとトルクコンバータ3との間に配置されている。
【0046】
第2ドリブンギヤ42bは、第2ドライブギヤ42aと噛み合うように構成されている。第2ドリブンギヤ42bは、第2ドライブギヤ42aよりも歯数が多い。なお、第2ドリブンギヤ42bは、デファレンシャルギヤ102のリングギヤである。
【0047】
第1ドライブギヤ41aは、径方向視において、クラッチ7と重複するように配置されている。なお、第1ドリブンギヤ41bも径方向視において、クラッチ7と重複するように配置されている。
【0048】
<第1シャフト5>
第1シャフト5は、回転可能に配置されている。なお、第1シャフト5の回転軸は、電気モータ2の回転軸、及びトルクコンバータ3の回転軸と実質的に同一線上にある。
【0049】
第1シャフト5は、電気モータ2からトルクコンバータ3にトルクを伝達するように構成されている。詳細には、第1シャフト5は、電気モータ2からトルクコンバータ3に向かって軸方向に延びている。第1シャフト5は、電気モータ2のロータ23と一体的に回転する。そして、第1シャフト5の先端部は、トルクコンバータ3のカバー31に取り付けられている。このため、電気モータ2のロータ23が回転すると、第1シャフト5を介してカバー31も回転する。
【0050】
図3は、駆動ユニットの拡大断面図である。なお、
図3において、図解を容易にするため、一部の部材の記載を省略している。
図3に示すように、第1シャフト5は、第2シャフト6内を軸方向に延びている。第1シャフト5は、中実状である。第1シャフト5は、基端部51と、取付部52と、延在部53とを有している。
【0051】
基端部51は、電気モータ2に取り付けられる部分である。基端部51は、電気モータ2内を延びている。また、基端部51の一部は、減速機4内を延びている。
【0052】
取付部52は、クラッチ7が取り付けられる部分である。取付部52は、基端部51と延在部53との間に配置される部分である。取付部52は、減速機4内に配置される。取付部52の外径は、基端部51の外径よりも小さい。このため、基端部51と取付部52との境界には段差部が形成されている。この段差部によって、クラッチ7の軸方向の移動が規制される。
【0053】
延在部53は、取付部52から先端(
図3の右端)に向かって延びる部分である。すなわち、延在部53は、取付部52に対してトルクコンバータ3側の部分である。延在部53は、トルクコンバータ3内を延びている。延在部53の先端部には、カバー31が取り付けられている。延在部53は、取付部52よりも径が小さい。
【0054】
<第2シャフト6>
第2シャフト6は、回転可能に配置されている。第2シャフト6の回転軸は、電気モータ2の回転軸、及びトルクコンバータ3の回転軸と実質的に同一線上にある。また、第2シャフト6は、第1シャフト5と同軸上に配置されている。第2シャフト6は、第1シャフト5と相対回転可能である。第2シャフト6は、円筒状である。第1シャフト5は、この第2シャフト6内を延びている。
【0055】
第2シャフト6は、トルクコンバータ3から減速機4にトルクを伝達するように構成されている。詳細には、第2シャフト6は、トルクコンバータ3から電気モータ2に向かって軸方向に延びている。第2シャフト6は、トルクコンバータ3のタービン33に取り付けられており、タービン33と一体的に回転する。また、第2シャフト6の先端部(
図3の左端部)には、減速機4の第1ドライブギヤ41aが形成されている。
【0056】
第2シャフト6は、小径部61と、大径部62とを有している。小径部61は、トルクコンバータ3内を延びている。小径部61の基端部(
図3の右端部)には、タービン33が取り付けられている。
【0057】
大径部62は、軸方向において、小径部61に対して電気モータ2側に配置されている。大径部62は、小径部61よりも外径が大きい。また、大径部62は、小径部61よりも内径が大きい。このため、大径部62の内周面と小径部61の内周面との境界に段差部が形成されている。この段差部によって、クラッチ7の軸方向の移動が規制される。
【0058】
大径部62は、減速機4内を延びている。大径部62の外周面上には、第1ドライブギヤ41aが形成されている。
【0059】
大径部62は、取付部52に対して径方向外側に配置されている。大径部62と取付部52とは、径方向において互いに間隔をあけて配置されている。この大径部62と取付部52との径方向間において、クラッチ7が配置されている。すなわち、径方向視において、大径部62と、クラッチ7と、取付部52とが重複している。
【0060】
大径部62の先端部(
図3の左側端部)は、基端部51に対して径方向外側に配置されている。すなわち、径方向視において、大径部62の先端部と基端部51とは重複している。大径部62は、この先端部において、軸受105cを介して、減速機ケース43に回転可能に支持されている。なお、本実施形態において、大径部62の先端部は、基端部51と接触しているが、基端部51と間隔をあけて配置されていてもよい。
【0061】
<クラッチ>
クラッチ7は、減速機4内に配置されている。詳細には、クラッチ7は、径方向において、第1シャフト5の取付部52と、第2シャフト6の大径部62との間に配置されている。また、クラッチ7は、軸方向において、一対の軸受部材105c、105dの間に配置されている。
【0062】
クラッチ7は、第1シャフト5と第2シャフト6との間でトルクを遮断可能に伝達するように構成されている。詳細には、クラッチ7は、第1シャフト5から第2シャフト6への電気モータ2の第1回転方向のトルクの伝達を遮断するように構成される。すなわち、車両を前進させるために電気モータ2が第1回転方向に回転したとき、クラッチ7は、その第1回転方向のトルクを第1シャフト5から第2シャフト6へと伝達しない。このため、電気モータ2が第1回転方向に回転したとき、第1シャフト5と第2シャフト6とは相対回転可能である。そして、電気モータ2が出力した第1回転方向のトルクは、第1シャフト5、トルクコンバータ3、第2シャフト6、減速機4の順で伝達される。このため、第1回転方向のトルクは、トルクコンバータ3によって増幅されて伝達される。
【0063】
一方、クラッチ7は、第1シャフト5から第2シャフト6へ電気モータ2の第2回転方向のトルクを伝達するように構成されている。すなわち、車両を後進させるために電気モータ2が第2回転方向に回転したとき、クラッチ7は、その第2回転方向のトルクを第1シャフト5から第2シャフト6へと伝達する。このため、電気モータ2が第2回転方向に回転したとき、第1シャフト5と第2シャフト6とは一体的に回転する。すなわち、電気モータ2が出力した第2回転方向のトルクは、第1シャフト5、クラッチ7、第2シャフト6、減速機4の順で伝達される。このように、第2回転方向のトルクは、トルクコンバータ3を介さずに伝達される。
【0064】
以上のように機能するクラッチ7は、例えば、ワンウェイクラッチによって構成することができる。
【0065】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0066】
(a)上記実施形態では、減速機4は変速することができないが、減速機4の構成はこれに限定されない。例えば、減速機4は、変速できるように構成されていてもよい。すなわち、減速機4は、トランスミッションであってもよい。
【0067】
(b)上記実施形態では、クラッチ7は、ワンウェイクラッチによって構成されているが、クラッチ7の構成はこれに限定されない。例えば、クラッチ7は、電子的に制御されるように構成されていてもよい。
【0068】
(c)上記実施形態では、減速機4は、軸方向において電気モータ2とトルクコンバータ3との間に配置されているが、電気モータ2、トルクコンバータ3、減速機4の位置関係はこれに限定されない。例えば、軸方向において、電気モータ2と減速機4との間にトルクコンバータ3が配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
2 :電気モータ
3 :トルクコンバータ
4 :減速機
41a :第1ドライブギヤ
41b :第1ドリブンギヤ
42a :第2ドライブギヤ
5 :第1シャフト
52 :取付部
53 :延在部
6 :第2シャフト
61 :小径部
62 :大径部
7 :クラッチ
100 :駆動ユニット
【手続補正書】
【提出日】2022-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータと、
前記電気モータの第1回転方向のトルクを増幅するように構成されるトルクコンバータと、
トルクを減速するように構成される減速機と、
前記電気モータから前記トルクコンバータにトルクを伝達するように構成される第1シャフトと、
前記トルクコンバータから前記減速機にトルクを伝達するように構成される第2シャフトと、
前記減速機内に配置され、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの間でトルクを遮断可能に伝達するように構成されるクラッチと、
を備える駆動ユニット。
【請求項2】
前記クラッチは、前記第1シャフトから前記第2シャフトへ前記電気モータの第2回転方向のトルクを伝達し、前記第1シャフトから前記第2シャフトへの前記電気モータの第1回転方向のトルクの伝達を遮断するように構成される、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記第2シャフトは、円筒状であり、
前記第1シャフトは、前記第2シャフト内を軸方向に延びており、
前記クラッチは、径方向において、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの間に配置される、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記第1シャフトは、前記クラッチが取り付けられる取付部と、前記取付部から先端に向かって延びる延在部と、を有し、
前記延在部は、前記取付部よりも径が小さい、
請求項3に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記第2シャフトは、前記トルクコンバータ内を延びる小径部と、前記小径部よりも内径及び外径が大きい大径部と、を有し、
前記大径部は、前記取付部に対して径方向外側に配置され、
前記クラッチは、前記大径部と前記取付部との間に配置される、
請求項4に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記減速機は、軸方向において、前記電気モータと前記トルクコンバータとの間に配置される、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記減速機は、第2シャフトと一体的に回転するように構成される第1ドライブギヤを有し、
前記第1ドライブギヤは、径方向視において、前記クラッチと重複するように配置される、
請求項1又は2のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項8】
前記減速機は、前記第1ドライブギヤと噛み合う第1ドリブンギヤと、前記第1ドリブンギヤと一体的に回転するように構成される第2ドライブギヤと、を有し、
前記第1ドリブンギヤは、軸方向において、前記第2ドライブギヤと前記トルクコンバータとの間に配置される、
請求項7に記載の駆動ユニット。