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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151902
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】領域特定システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20231005BHJP
【FI】
H04N5/232 290
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061768
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】山崎 元明
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA11
5C122FH11
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】実空間に形成された領域を特定し、仮想空間と紐づけることを可能とする領域特定システムを提供する。
【解決手段】実空間に設置されるオブジェクトと、前記オブジェクトが設置された位置を特定可能な設置情報を取得する取得部と、前記設置情報及び地図情報に基づいて、前記オブジェクトの位置座標と、前記地図情報に含まれる構造物によって形成される領域を、前記実空間に形成される実領域として特定する領域特定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実空間に設置されるオブジェクトと、
前記オブジェクトが設置された位置を特定可能な設置情報を取得する取得部と、
前記設置情報及び地図情報に基づいて、前記オブジェクトの位置座標と、前記地図情報に含まれる構造物によって形成される領域を、前記実空間に形成される実領域として特定する領域特定部と、
を備える領域特定システム。
【請求項2】
前記領域特定部は、前記設置情報に基づいて特定した前記オブジェクトの位置座標のうち、前記構造物まで距離が閾値未満である位置座標を、前記構造物と同一座標とみなして前記実領域を特定する
請求項1に記載の領域特定システム。
【請求項3】
前記設置情報は、方向を示す方向情報を含み、
前記領域特定部は、前記方向情報に基づいて、前記オブジェクトの位置座標と前記構造物によって形成される領域のうち、前記方向情報が示す方向にある領域を前記実領域として特定する
請求項1に記載の領域特定システム。
【請求項4】
前記オブジェクトは、方向を設定可能なダイヤル部を有し、
前記取得部は、前記ダイヤル部に設定された方向を示す方向情報を取得し、
前記領域特定部は、前記方向情報に基づいて、前記オブジェクトの位置座標を通り前記方向情報が示す方向に前記実領域の境界線を設定する
請求項1に記載の領域特定システム。
【請求項5】
前記領域特定部は、前記設置情報に基づいて特定した前記オブジェクトの位置座標を、前記構造物の形状に基づいて補正し、前記補正した位置座標を用いて前記実領域を特定する
請求項1に記載の領域特定システム。
【請求項6】
前記設置情報は、方向を示す方向情報を含み、
前記領域特定部は、前記方向情報が示す方向と、前記構造物の形状とに基づいて前記方向を補正し、前記補正した方向を前記実領域の境界線とする
請求項1に記載の領域特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、領域特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パーティションなどを用いて領域を形成することによりイベント等を開催する会場を一時的に設営することが行われている。例えば、時間貸しスペース、催事等のイベントのために設けられた特設会場などが一時的に設営される場合がある。
【0003】
一方、AR(Augmented Reality)技術を用いて、実際にある画像や映像とコンピュータグラフィックスとを合成して表示することが知られている(例えば、特許文献1)。このようなAR技術を用いて、会場の位置や様子を仮想空間に反映させた情報を参加者のスマートフォン等に提示することにより参加者の利便性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-004493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、使用者の視点位置・姿勢に応じて実空間を表示させているに過ぎない。したがって実空間にいる第三者には、実空間における複合現実を体験するサービス等を提供する空間(サービス提供空間)を認識させることができなかった。このため、実空間の使途が広がり、実空間にいる第三者に認識可能な使途だけでなく、実空間の一部が仮想空間に対応したサービス提供空間であるケースなど、実空間の使途を実空間にいる第三者が認識できない状況となっていた。また、仮想空間に実空間の領域を反映させるなど、仮想空間と実空間を紐づけ、より境界を無くすことが可能となる技術が望まれている。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明は、実空間に形成された領域を特定し、仮想空間と紐づけることを可能とする領域特定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる領域特定システムは、実空間に設置されるオブジェクトと、前記オブジェクトが設置された位置を特定可能な設置情報を取得する取得部と、前記設置情報及び地図情報に基づいて、前記オブジェクトの位置座標と、前記地図情報に含まれる構造物によって形成される領域を、前記実空間に形成される実領域として特定する領域特定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実空間に形成された領域を特定し、仮想空間と紐づけることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態にかかる領域特定システムの概要を説明する図である。
図2A】実施形態にかかる領域特定システムで用いられるガイドポール型のオブジェクトを側面からみた図である。
図2B】実施形態にかかる領域特定システムで用いられる他のガイドポール型のオブジェクトを側面からみた図である。
図2C】実施形態にかかる領域特定システムで用いられる移動型のオブジェクトを側面からみた図である。
図3】オブジェクトに設けられる識別信号発信部の構成を示すブロック図である。
図4A】パーティション型のオブジェクトを説明する図である。
図4B】パーティション型のオブジェクトを説明する図である。
図5】実施形態にかかるエリア設定サーバの構成を示すブロック図である。
図6A】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第1の方法を説明する図である。
図6B】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第1の方法を説明する図である。
図7A】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第2の方法を説明する図である。
図7B】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第2の方法を説明する図である。
図7C】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第2の方法を説明する図である。
図7D】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第2の方法を説明する図である。
図8】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第3の方法を説明する図である。
図9】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第4の方法を説明する図である。
図10A】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第5の方法を説明する図である。
図10B】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第5の方法を説明する図である。
図11A】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第6の方法を説明する図である。
図11B】エリア設定サーバが仮想領域を設定する第6の方法を説明する図である。
図12】エリア設定サーバが仮想領域を設定する際に行われる補正方法を説明する図である。
図13】エリア設定サーバが仮想領域を設定する他の方法1を説明する図である。
図14A】オブジェクトに設けられるダイヤル部を説明する図である。
図14B】オブジェクトに設けられるダイヤル部を説明する図である。
図15A】エリア設定サーバが仮想領域を設定する他の方法2を説明する図である。
図15B】エリア設定サーバが仮想領域を設定する他の方法2を説明する図である。
図15C】エリア設定サーバが仮想領域を設定する他の方法2を説明する図である。
図16】エリア設定サーバがダイヤル部を用いて仮想領域を設定する際に行われる補正方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
<領域特定システム1の構成>
図1は、実施形態にかかる領域特定システム1の概要を説明する図である。領域特定システム1は、例えば、オブジェクト10と、測位装置40と、エリア設定サーバ50と、デジタルサイネージ60及び70と、を備える。
【0012】
オブジェクト10は、実空間に設置される物体(オブジェクト)である。オブジェクト10が設置された位置は、実空間に形成する領域(実領域)の境界を示す。なお、領域特定システム1は、オブジェクト10を少なくとも1つ備えていればよく、複数備えていてもよい。このように実空間にオブジェクト10を設置することにより、実空間にいる人に特定の領域を認識可能とするとともに、オブジェクト10によって実空間と仮想空間を紐づけ可能としている。
【0013】
オブジェクト10は、図2Aに示すようにガイドポール型であり、図2Aはオブジェクト10を側面からみた図である。オブジェクト10は、基台101に支柱102が垂設されている。支柱102の上部には、円筒部103が設けられる。円筒部103にはベルト12が巻装されて収納されている。また、円筒部103の側面には、ベルト12を引き出すための引出部104が設けられている。オブジェクト10をベルト12で連結することにより空間を間仕切るパーティションを形成することができる。オブジェクト10は、識別信号発信部11を有する。識別信号発信部11は、オブジェクト10を識別する識別信号を発信する。識別信号発信部11は、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(Wireless Fidelity)、UWB(Ultra Wide Band)、RFID(Radio Frequency Identifier)などの無線通信方式を用いて識別信号を発信する。
【0014】
測位装置40は、実領域が形成される空間に設置される。測位装置40は、各オブジェクト10から識別信号を受信し、受信した識別信号を用いて、実空間における各オブジェクト10の設置位置を算出する。測位装置40は、例えば、オブジェクト10から発信された識別信号が到来した方向、及び信号強度などに基づいてオブジェクト10の設置位置を算出する。測位装置40は、例えば、実領域を形成する複数のオブジェクト10から受信したそれぞれの識別信号に基づいて、複数のオブジェクト10の設置位置を算出する。
【0015】
或いは、測位装置40は、カメラなどの撮像装置からオブジェクト10が設置された空間が撮像された画像情報を受信し、受信した画像情報を用いて、実空間における各オブジェクト10の設置位置を算出するようにしてもよい。オブジェクト10が設置された空間を撮像するカメラとしては、オブジェクト10が設置された空間に設置された監視カメラ等を利用することができる。
測位装置40は、実領域を形成する複数のオブジェクト10のそれぞれの設置位置を示す情報を、エリア設定サーバ50に送信する。
【0016】
エリア設定サーバ50は、測位装置40から受信したオブジェクト10の設置位置を基に、実空間に形成された領域(実領域)を特定する。エリア設定サーバ50は、特定した実領域に対応する仮想領域を仮想空間に設定する。エリア設定サーバ50が仮想領域を仮想空間に設定する方法については後で詳しく説明する。
【0017】
また、エリア設定サーバ50は、仮想領域に関する情報、例えば、仮想領域に対応する実領域の範囲にイベントを対応づけた配信情報を生成する。エリア設定サーバ50は、生成した配信情報を、イベントの参加者のスマートフォン及び後述する各デジタルサイネージ等に送信する。
【0018】
エリア設定サーバ50は、実領域に関する情報として、例えば、エリア管理情報と、エリア運用情報と、を生成する。
【0019】
エリア管理情報は、実空間を管理するために用いることができる情報であって、例えば、位置座標、フロア情報、管理者、時刻、面積、利用料などを示す情報である。位置座標にはエリア設定サーバ50によって特定された各オブジェクト10の位置座標が示される。
フロア情報には各オブジェクト10が設置されたフロアを示す情報が示される。管理者には今回形成された実空間を管理する人間の氏名などが示される。例えば、管理者等によって、予め、フロア情報及び管理者の氏名等がエリア設定サーバ50に通知され、エリア設定サーバ50は、管理者等から通知された情報に基づいて、エリア管理情報におけるフロア情報、及び管理者を設定する。
時刻、面積、及び利用料のそれぞれには、今回形成された実空間が利用可能な時刻、今回形成された実空間の面積、今回形成された実空間を利用する利用料のそれぞれが示される。例えば、今回形成された実空間が貸しスペースであった場合、利用時間及び利用面積に応じた料金が発生する。
エリア管理情報に、時刻、面積、及び利用料のそれぞれに関する情報を含めることにより、例えばイベントの開催状況に応じて、利用時間を延長したり、会場の面積を拡大させたりする場合に、利用料がどの様に変化するかを明確に提示することが可能となる。
【0020】
エリア運用情報は、実空間を運用するために用いることができる情報であって、例えば、ナビ目的地、進入禁止エリア、スペース貸出などを示す情報である。
ナビ目的地には、今回形成された実空間をナビゲーションシステムにおける目的地として設定する情報が示される。ナビ目的地として、例えば、今回形成された位置に対応する住所や、マップコード(緯度経度を数値化した番号)を示す情報が示される。エリア運用情報に、ナビ目的地に関する情報を含めることにより、ナビゲーションシステムの地図情報からは検索できないような一時的に形成された実領域をナビゲーションシステムにおける目的地として設定することができる。このため、参加者が、地図には載っていない場合であっても、スマートフォンなどのナビゲーションアプリを用いて、会場に容易に到達することが可能となる。
進入禁止エリアには、今回形成された実空間において参加者が進入することができない領域を示す情報が示される。エリア運用情報に、進入禁止エリアに関する情報を含めることにより、実領域において関係者専用の空間、つまり参加者が立ち入り禁止のエリアを明示することができ、一時的に形成された領域であっても、関係者専用の空間に参加者が立ち入らないようにしてイベント等の開催をスムーズに運用することが可能となる。
スペース貸出は、貸し出されている領域を示す情報である。エリア運用情報に、スペース貸出に関する情報を含めることにより、今回形成された領域の付近に貸し出されている領域があるか否かを利用者に通知することができる。したがって、例えば、イベントの開催状況に応じて会場の面積を拡大させたい利用者に、どの場所を借りることが可能かを提示することができ利便性を向上させることができる。
【0021】
各デジタルサイネージ(デジタルサイネージ60及び70)は、エリア設定サーバ50の制御に応じて様々な情報を表示する固定型の電子掲示板である。このデジタルサイネージは、実空間にいる人に、仮想空間に対応する特定の実空間がどのような用途でいつまで使用されているのか、報知するためのものである。例えば、各デジタルサイネージは、エリア設定サーバ50から、エリア設定サーバ50が設定した仮想領域に対応する実領域に関する情報を取得し、取得した運用情報を表示する。なお、領域特定システム1は、各デジタルサイネージの何れか一方のみを備えていてもよいし、両方を備えていてもよい。
【0022】
デジタルサイネージ60は固定型の電子掲示板である。例えば、デジタルサイネージ60は、実領域の入口付近などに設置され、エリア設定サーバ50の制御に応じてその実領域に関する情報を表示部63に表示する。
【0023】
また、デジタルサイネージ60が、本実施形態のオブジェクトとして機能するものであってもよい。この場合、デジタルサイネージ60と、各オブジェクトの何れか又はこれらの組合せにより、実領域が形成される。デジタルサイネージ60は、識別信号発信部11と同様の機能を有する識別信号発信部61を有する。識別信号発信部61は、デジタルサイネージ60を識別する識別信号を発信する。デジタルサイネージ60は、エリア設定サーバ50により識別信号を用いて特定されたデジタルサイネージ60の設置位置などを、表示部63に表示させることができる。
【0024】
デジタルサイネージ70は、移動型の電子掲示板である。デジタルサイネージ70は、デジタルサイネージ60と同様に、エリア設定サーバ50の制御に応じて様々な情報を表示部73に表示する。また、デジタルサイネージ70は移動機構72を有し、外部からの操作や、デジタルサイネージ70の内部に設けられた移動制御機能にしたがって移動する。
【0025】
また、デジタルサイネージ70が、本実施形態のオブジェクトとして機能するように構成されてもよい。この場合、デジタルサイネージ70と、オブジェクト10及び識別信号発信部61を有するデジタルサイネージ60の何れか又はこれらの組合せを用いて、実領域が形成される。デジタルサイネージ70は、識別信号発信部11と同様の機能を有する識別信号発信部71を有する。デジタルサイネージ70は、エリア設定サーバ50により識別信号を用いて特定されたデジタルサイネージ70の設置位置などを、表示部73に表示させることができる。
【0026】
このように、実施形態にかかる領域特定システム1では、オブジェクト10が実空間に設置されることにより実領域が形成される。エリア設定サーバ50は、オブジェクト10が出力した識別信号を基に、実空間におけるオブジェクト10の設置位置を算出する。エリア設定サーバ50は、算出した設置位置を基に、仮想空間に実領域に対応する仮想領域を設定する。エリア設定サーバ50は、実領域に関する情報と、この実領域に対応する仮想領域に関する情報を配信し、提供する。
【0027】
例えば、貸しスペースを利用したイベントを開催する場合、貸しスペースとして割り当てられた領域の境界にオブジェクト10を設置し、例えば、設置したオブジェクト10をベルト12で連結することにより貸しスペースに対応する実領域が形成される。エリア設定サーバ50は、オブジェクト10が出力した識別信号を基に、オブジェクト10の設置位置を算出する。エリア設定サーバ50は、算出した設置位置を基に、貸しスペースを利用したイベントが行われる領域を特定する。エリア設定サーバ50は、特定した領域に対応する仮想領域を仮想空間に設定し、仮想空間に実空間を反映させ、情報を集約させる。
エリア設定サーバ50は、算出したオブジェクト10の設置位置情報や場所や広さなどの領域情報に加え、例えば、位置座標、フロア、管理者、イベントの開催日時等の情報をレンタルスペースの運用に関する運用情報として仮想領域に対応づけた配信情報を生成する。フロア、管理者、イベントの開催日時等の情報は、予め管理者等によってエリア設定サーバ50に通知されているものとする。エリア設定サーバ50は、生成した配信情報をデジタルサイネージ60等に表示させる。
【0028】
また、イベントの開催状況等により会場の規模を拡大させて対応するような場合、管理者等は、オブジェクト10の設置位置を変更する。エリア設定サーバ50は、設置位置が変更された各オブジェクトが出力した識別信号を基に、再度、各オブジェクトの設置位置を算出する。エリア設定サーバ50は、算出した設置位置を基に、実領域を変更する。エリア設定サーバ50は、変更した領域に対応する仮想領域を仮想空間に設定し、変更後の配信情報を生成する。エリア設定サーバ50は、変更後の配信情報をデジタルサイネージ60等に表示させる。これにより、会場とした領域が変更された場合であっても変更された会場の領域を仮想空間に反映させることができ、実空間における変更をリアルタイムに仮想空間に反映させることができる。
【0029】
このような実施形態にかかる領域特定システム1は、例えば、以下のような活用が可能である。
【0030】
(1)ナビゲーションアプリにおける、イベント開催時など期間限定の一時的な目的地への誘導。
(2)ナビゲーションアプリにおける、工事やメンテナンス等による期間限定の立ち入り禁止区域の表示。
(3)ガイダンスアプリにおける、期間限定のイベントなどの音声案内。
(4)自律移動ロボットにおける、一時的に設定された進入禁止区域の看板提示。
(5)配送ロボットによる一時的な荷下ろし領域への荷物の配送。
(6)ビル管理サービスにおける、照明などの設備を制御する範囲の設定。
(7)セキュリティシステムにおける、セキュリティレベルの範囲の設定。
【0031】
上記のような各種のサービスにおいて、利用者は、実空間に各オブジェクトを設置すれば、サービスを運用する事業者に、利用したい領域を通知することができる。また、利用したい領域を変更する場合には、オブジェクトの設置位置を変更すればよい。このため、事前に、事業者に利用したい領域について通知したり、領域を変更した場合に再度事業者に通知したりする手間を省くことが可能となる。また、事業者は、利用者が利用している領域を各オブジェクトの設置位置に基づいて把握することができるため、利用者と頻繁に連絡をとったり現地へ確認に出向いたりすることなく正確な情報を得ることが可能となる。
【0032】
<オブジェクト10の設置位置を計算する方法>
オブジェクト10の設置位置を計算する方法について図3を用いて説明する。図3は、識別信号発信部11と測位装置40の構成を示すブロック図である。
【0033】
図1及び図2Aに示すように、オブジェクト10には、識別信号発信部11が設けられる。図3に示すように、識別信号発信部11は、制御部112と、方向検出部113と、送信部114と、を含んで構成される。
【0034】
方向検出部113は、オブジェクト10の設置向きを検出する。方向検出部113としては、例えば電子コンパスやジャイロセンサを用いることができる。
【0035】
制御部112は、CPU(Central Processing Unit)等からなり、プログラムに基づいて、各種の処理を行う。本実施形態では、制御部112は、オブジェクト10を識別する識別信号を測位装置40に送信する処理を行う。
制御部112は、方向検出部113で検出されたオブジェクト10の設置向きを示す信号を測位装置40に送信するようにしてもよい。
制御部112は、ベルト12の連結状態を示す信号を測位装置40に送信するようにしてもよい。
【0036】
送信部114は、制御部112の制御に応じた信号をエリア設定サーバ50に送信する。例えば、送信部114は、オブジェクト10の識別信号を測位装置40に送信する。送信部114は、識別信号と共に、オブジェクト10の設置向きを示す信号、境界の方向やエリアの設定値を示す信号、チャンネルの設定値を示す信号、及びベルト12の連結状態を示す信号の何れか又はこれらを組合せた信号を、測位装置40に送信する。
【0037】
測位装置40は、例えば、複数の受信部41と、測位計算部42とを備える。
複数の受信部41は、各オブジェクト10から発信された識別情報をそれぞれ受信し、受信した識別信号を、その属性情報と共に測位計算部42に出力する。ここでの属性情報は、識別信号の到来方向や、識別信号の信号強度を示す情報である。
測位計算部42は、オブジェクト10から発信された識別信号が到来した方向や信号強度などに基づいて、各オブジェクト10の設置位置を算出する。
測位装置40は、測位計算部42によって算出された各オブジェクト10の設置位置を示す情報を、エリア設定サーバ50に送信する。
【0038】
<エリア設定サーバ50の構成>
次に、エリア設定サーバ50について図5を用いて説明する。図5は、実施形態にかかるエリア設定サーバ50の構成を示すブロック図である。
以下の説明では、説明を簡単にするために、エリア設定サーバ50がオブジェクト10と通信を行う場合を例に、エリア設定サーバ50の構成を説明する。
【0039】
図5に示すように、エリア設定サーバ50は、受信部501と、複数の取得部502と、領域特定部503と、デジタル地図504と、仮想領域生成部505と、運用情報記憶部506と、配信情報生成部507と、を含んで構成される。
【0040】
受信部501は、測位装置40からオブジェクト10の設置情報を示す情報を受信する。取得部502は、受信部501から、オブジェクト10の設置情報を示す情報、例えば二次元座標位置を取得する。
【0041】
領域特定部503は、取得部502が取得した二次元座標位置を基に実領域を特定し、実領域に対応する仮想領域を設定する。領域特定部503が仮想領域を設定する方法にとして、以下の方法が考えられる。領域特定部503が仮想領域を設定する方法については後で詳しく説明する。
【0042】
第1の方法:3つ以上のオブジェクトを用いる方法(基本)
第2の方法:構造物の情報を利用する方法
第3の方法:オブジェクトの設置位置を順に接続させる方法
第4の方法:面積を利用する方法
第5の方法:1つのオブジェクトのみを用いる方法
第6の方法:2つのオブジェクトを用いる方法
【0043】
デジタル地図504は、オブジェクト10が配置された付近の実空間の位置情報を記憶している。また、オブジェクト10が屋内に設置される場合、デジタル地図504は、部屋の角や窓等、構造物の位置座標を記憶している。
【0044】
仮想領域生成部505は、領域特定部503により特定された領域に対応する仮想領域を仮想空間に生成する。運用情報記憶部506は、実領域に関する情報を記憶している。配信情報生成部507は、実領域に関する情報と、領域特定部503で算出された領域と、を対応付けた配信情報を生成し、デジタルサイネージ60等に配信する。
【0045】
<仮想領域を設定する第1の方法>
次に、領域特定部503が実領域に対応する仮想領域を設定する第1の方法について説明する。図6A及び図6Bは、仮想領域を設定する第1の方法を説明する図である。図6A及び図6Bにおいて、P1~P4は、4つのオブジェクト10のオブジェクト座標を示す。領域特定部503は、基本的には、空間を仕切るオブジェクト10の位置座標を取得し、複数(3以上)のオブジェクト10に囲まれた領域を仮想領域としている。図6Aの場合には、領域特定部503は、オブジェクト座標P1~P4で囲まれた領域を仮想領域A1として算出する。
【0046】
また、領域特定部503は、隣接するオブジェクト座標の間の距離が閾値未満のときには、同一座標とみなして、仮想領域を設定する。すなわち、図6Bでは、8つのオブジェクト座標P11~P14及びP21~P24のうち、オブジェクト座標P11とP21、オブジェクト座標P12とP22、オブジェクト座標P13とP23、オブジェクト座標P14とP24は、それぞれ、近傍の位置にある。この場合、領域特定部503は、近傍にあるオブジェクト10の位置座標は同一とみなして、仮想領域A2を算出する。より具体的には、近傍に位置する第1のオブジェクト座標と第2のオブジェクト座標は、領域の辺を構成する第1のオブジェクト座標を通る線と、領域の辺を構成する第2のオブジェクト座標を通る線と、の交点に位置するものとみなす。
【0047】
例えば、オブジェクト座標P11とP21の位置座標をともに、オブジェクト座標P11とP12を通る線と、オブジェクト座標P21とP24を通る線と、の交点に位置する同一のオブジェクト座標P31とみなす。オブジェクト座標P12とP22の位置座標をともに、オブジェクト座標P12とP11を通る線と、オブジェクト座標P22とP23を通る線と、の交点に位置する同一のオブジェクト座標P32とみなす。オブジェクト座標P13とP23の位置座標をともに、オブジェクト座標P13とP14を通る線と、オブジェクト座標P23とP22を通る線と、の交点に位置する同一のオブジェクト座標P33とみなす。オブジェクト座標P14とP24の位置座標をともに、オブジェクト座標P14とP13を通る線と、オブジェクト座標P24とP21を通る線と、の交点に位置する同一のオブジェクト座標P34とみなす。これにより、オブジェクト座標で囲まれた領域を単純な矩形の領域とすることができ、仮想領域が不必要に複雑な形状となることを抑制する。
【0048】
<仮想領域を設定する第2の方法>
次に、領域特定部503が実領域に対応する仮想領域を設定する第2の方法について説明する。領域特定部503は、オブジェクト10の位置座標や方向とともに、デジタル地図504に記憶されている部屋の角や窓等、構造物の位置座標を組み合わせて仮想領域を設定するようにしてもよい。なお、ここでは簡単のため「部屋の角や壁」と表現したが、実際の角や壁である必要は無く、仮想領域を設定可能な限界の座標である。
【0049】
図7Aから図7Dは、仮想領域を設定する第2の方法を説明する図である。図7Aの場合、壁W31、W32、W33、W34で囲まれた部屋に、2つのオブジェクト座標P31及びP32が配置される。この場合、領域特定部503は、オブジェクト座標P31及びP32を結ぶ直線により部屋が分離されるとして、オブジェクト座標P31及びP32を結ぶ直線と、壁W31と、壁W32と、壁W34とにより囲まれた領域を仮想領域A3として算出する。
【0050】
図7Bの場合、4つのオブジェクト座標P41~P44の中で、2つのオブジェクト座標P41とP44は壁W42上にある。この場合、領域特定部503は、オブジェクト座標P41とP42とを結ぶ直線と、オブジェクト座標P42とオブジェクト座標P43とを結ぶ直線と、オブジェクト座標P43とオブジェクト座標P44と、を結ぶ直線と、壁W42とに囲まれた領域を仮想領域A4として算出する。
【0051】
図7Cの場合、3つのオブジェクト座標P51、P52、P53の中で、オブジェクト座標P51は壁W54上にあり、オブジェクト座標P53は壁W53上にある。この場合、領域特定部503は、オブジェクト座標P51とP52とを結ぶ直線と、オブジェクト座標P52とP53とを結ぶ直線と、壁W53と、壁W54とにより囲まれた領域を仮想領域A5として算出する。
【0052】
また、領域特定部503は、オブジェクト座標と壁との間の距離が閾値未満のときには、壁に座標があるとみなして、仮想領域を設定する。すなわち、図7Dでは、3つのオブジェクト座標P51、P52、P53の中で、オブジェクト座標P51は壁W54の近傍にあり、オブジェクト座標P53は壁W53の近傍にある。オブジェクト座標P51と壁W54との距離E1及びオブジェクト座標P53と壁W53との距離E2とが閾値未満なら、領域特定部503は、オブジェクト座標P51は壁W54上にあり、オブジェクト座標P53は壁W53上にあるとして、仮想領域A5aを算出する。
【0053】
<仮想領域を設定する第3の方法>
次に、領域特定部503が実領域に対応する仮想領域を設定する第3の方法について説明する。領域特定部503は、予め定められたオブジェクト座標を線で結ぶことで、仮想領域を特定する。
【0054】
図8は、仮想領域を設定する第3の方法を説明する図である。この例では、領域特定部503は、各オブジェクト10のオブジェクト座標を線で結び、仮想領域を特定するか、予め設定されている。領域特定部503は、オブジェクト10の設置情報と、各オブジェクト10を識別する識別情報と、が入力されると、識別情報に基づいて、各オブジェクト10のオブジェクト座標を線で結び、仮想領域を特定する。図8の構成では、領域特定部503は、複数のオブジェクト10の設置情報と、各オブジェクト10を識別する識別情報と、が入力されると、予め決められた順番で各オブジェクト10を線で結び、仮想領域を特定する。すなわち、この例では、オブジェクト座標P71、P72、P73、P74の順に接続するように識別情報を指定すると、図8に示すような仮想領域A7が特定される。
【0055】
<仮想領域を設定する第4の方法>
次に、領域特定部503が実領域に対応する仮想領域を設定する第4の方法について説明する。領域特定部503は、面積を利用して領域を仮想領域として特定できる。図9は、面積を利用して仮想領域を設定する場合の説明図である。図9では、領域特定部503は、オブジェクト10のそれぞれの位置座標のそれぞれを接続させることによって形成される領域が複数ある場合、面積が最大となる領域を仮想領域として特定する。例えば、図9に示すように、オブジェクト座標P81~P87により、複数の領域、例えば、2つの領域A8aとA8bとが特定された場合に、領域特定部503は、面積が最大となる領域(領域A8a)を、仮想領域として特定する。
【0056】
<仮想領域を設定する第5の方法>
次に、領域特定部503が実領域に対応する仮想領域を設定する第5の方法について説明する。オブジェクトで囲むことなく、仮想領域を設定することもできる。図10A及び図10Bは、仮想領域を設定する第5の方法を説明する図である。
図10Aでは、1つのオブジェクト座標P111を中心とした円で形成される領域を仮想領域A11として特定している。なお、仮想領域A11の半径は、あらかじめ設定されている構成であってもよいし、送信部114がエリア設定サーバ50に送信する信号、例えば境界の方向やエリアの設定値を示す信号に含まれて通知されるように構成されてもよい。
【0057】
また、図10Bでは、1つのオブジェクト座標P121を通る直線を直径とする半円で形成される領域を仮想領域A12として特定している。なお、仮想領域A12の半径は、あらかじめ設定されている構成であってもよいし、送信部114がエリア設定サーバ50に送信する信号、例えば境界の方向やエリアの設定値を示す信号に含まれて通知されるように構成されてもよい。また、1つのオブジェクト座標P121を通る直線の方向は、方向検出部113により特定された方向を用いることができる。
【0058】
<仮想領域を設定する第6の方法>
次に、領域特定部503が実領域に対応する仮想領域を設定する第6の方法について説明する。図11A及び図11Bは、仮想領域を設定する第6の方法を説明する図である。図11A及び図11Bに示すように、2つのオブジェクト座標P121及びP122がある場合には、オブジェクト座標P121及びP122を結ぶ直線により、領域特定部503は、仮想領域A12a又はA12bを特定することができる。ここで、仮想領域A12aと仮想領域A12bとのどちらの側の領域を採用するかについては、以下の例が考えられる。
(1)あらかじめ決められた側のみを仮想領域とする、つまり窓側、もしくは入口側など空間に設けられたもので予め特定する方法。
(2)オブジェクトの識別番号でどちら側を仮想領域とするかを判断する、つまりオブジェクト座標P121からオブジェクト座標P122を見たときの左側の領域と特定する方法。
(3)設置向きが特定できるオブジェクトを用いてどちら側を仮想領域とする、つまりオブジェクト10の向きやスイッチなどで特定する方法。
なお、上記のいずれかの方法により仮想領域を設定する際には、デジタル地図から取得した部屋形状の情報を元に、オブジェクトの設置位置や向きのズレを自動補正するようにしてもよい。図12は、オブジェクトの補正の説明図である。
【0059】
図12では、領域特定部503は、設置情報に基づいて特定した位置座標と、構造物の形状とに基づいて位置座標を補正する。すなわち、図12では、オブジェクト座標P231及びP232を結ぶ直線は、壁W231及びW233と平行になっていない。この場合には、領域特定部503は、デジタル地図を参考に、壁W231及びW233と平行になるように、仮想領域A23を補正する。
【0060】
<仮想領域を設定する他の方法1>
この他、上記実施形態のオブジェクト10の構成に、さらに図2Bに示すようにチャンネルスイッチ107が設けられたオブジェクト10を用いて、実空間に複数の仮想領域を設定する方法としてもよい。この方法では、チャンネルスイッチ107からの設定値を制御部112に入力するチャンネルスイッチ入力部117を備える識別信号発信部11が用いられる。
識別信号発信部11の制御部112は、チャンネルスイッチ入力部117を介してチャンネルスイッチ107で設定されたチャンネルの設定値を示す信号を受信し、オブジェクト10を識別する識別信号とともに、各オブジェクト10のチャンネルの設定値に関する情報を測位装置40に送信する処理を行うように構成されている。
そして識別信号発信部11の送信部114を介して測位装置40の受信部41に送信したオブジェクト10を識別する識別信号に基づいて、測位装置40の測位計算部42は、各オブジェクト10の設置位置を算出し、仮想領域を特定するように構成されている。
このようにチャンネルを設定すると、チャンネル毎に仮想領域を設定することができる。すなわち、本実施形態では、同一チャンネル同士のオブジェクト10を1つのグループとして、仮想領域を設定することで、複数の領域を設定できる。
【0061】
図13は、仮想領域を設定する本方法を説明する図である。図13の例では、5つのオブジェクト座標P61~P65のうち、オブジェクト座標P61及びP62はチャンネルCh1に設定され、オブジェクト座標P63~P65はチャンネルCh2に設定されている。この場合、チャンネルCh1に設定されているオブジェクト座標P61及びP62と、チャンネルCh2に設定されているオブジェクト座標P63~P65とでは、別々の仮想領域A6a及びA6bが形成される。
【0062】
<仮想領域を設定する他の方法2>
その他、上記実施形態のオブジェクト10の構成に、さらにダイヤル部106(ダイヤル部106a、106b)が設けられたオブジェクト10を用いて、実空間に複数の仮想領域を設定する方法としてもよい。この方法では、ダイヤル部106からの設定値を制御部112に入力するダイヤル入力部116を備える識別信号発信部11が用いられる。
より具体的には、オブジェクト10には、図2Bに示したように、ダイヤル部106として2つのダイヤル部106a、106bが設けられ、独立して動く回転ダイヤルとされている。
一方、識別信号発信部11の制御部112は、ダイヤル入力部116を介してダイヤル部106a及び106bで設定された境界の方向やエリアの設定値を受信し、オブジェクト10を識別する信号とともに、チャンネルスイッチ107からの設定値に関する情報を測位装置40に送信する処理を行うように構成されている。
測位装置40の測位計算部42は、識別信号発信部11から受信したオブジェクト10を識別する識別信号に基づいて、各オブジェクト10の設置位置を算出し、仮想領域を特定するように構成されている。このようにダイヤル部106a及び106bを動かすことで、境界の方向や領域が設定でき、使用するオブジェクトの設置数を削減できる。
【0063】
図14A及び図14Bは、ダイヤル部106a及び106bの説明図である。ダイヤル部106a及び106bは、独立して動く回転ダイヤルになっている。2つのダイヤル部106a及び106bを回転させることで、領域の境界を設定できる。図14Aに示すように、ダイヤル部106a及び106bを同時に動かすと、境界Kの方向を設定することができる。また、図14Bに示すように、ダイヤル部106a及び106bを独立して動かすと、ダイヤル部106a、106bのそれぞれに対応する2つの境界K1、K2が設定される。これにより、ダイヤル部106a及び106bの動きに伴って境界線が動いた領域Rが、2つの境界を囲む領域として設定できる。
【0064】
図15Aから図15Cは、仮想領域を設定する本方法を説明する図である。
図15Aでは、オブジェクト座標P201にあるオブジェクト10のダイヤル部106a及び106bの向きは、90度の領域R1が設定されるようになっている。これにより、仮想領域A20が設定される。
図15Bでは、オブジェクト座標P211にあるオブジェクト10のダイヤル部106a及び106bの向きは、180度の領域R2が設定されるようになっている。これにより、仮想領域A21が設定される。
図15Cでは、オブジェクト座標P221にあるオブジェクト10のダイヤル部106a及び106bの向きは、壁W201及びW203に平行となるように、180度の領域R3が設定されるようになっている。オブジェクト座標P222にあるオブジェクト10のダイヤル部106a及び106bの向きは、壁W202及びW204と平行になるように、180度の領域R4が設定されるようになっている。これにより、仮想領域A22が設定される。
【0065】
このように、ダイヤル部106a及び106bを利用すると、少ないオブジェクトの数で、仮想領域を設定することができる。
【0066】
なお、ダイヤル部106を利用して仮想領域を設定する際には、デジタル地図から取得した部屋形状の情報を元に、ダイヤル部106が示す向きのズレを自動補正するようにしてもよい。図16は、ダイヤル部106を利用した場合におけるオブジェクトの補正の説明図である。
【0067】
図16では、領域特定部503は、設置情報に基づいて特定した位置座標と、構造物の形状とに基づいて位置座標を補正する。図16では、設置情報は、ダイヤル部106に基づく領域の形成方向を示す方向情報を含み、領域特定部503は、方向情報が示す方向と、構造物の形状とに基づいて方向を補正し、補正した方向を用いて領域を特定する。すなわち、ダイヤル部106a及び106bにより方向Dが示される。この方向Dが壁W241及びW243に対して、なす角が所定の大きさ以下となり、平行となっていない。この場合には、領域特定部503は、デジタル地図を参考に、ダイヤル部106a及び106bの向きが壁W241及びW243に対して平行になるように、仮想領域A24を補正する。
【0068】
以上説明したように、実施形態の領域特定システム1は、オブジェクト10と、取得部502と、領域特定部503とを備える。オブジェクト10は実空間に設置される。取得部502は、オブジェクト10の設置位置を示す情報を取得する。この設置位置を示す情報は、「設置情報」の一例である。領域特定部503は、設置情報、及び地図情報に基づいて、オブジェクト10の位置座標と、地図情報に含まれる構造物、例えば壁などによって形成される領域を、実空間に形成される実領域として特定する。これにより、実施形態の領域特定システム1では、実空間に設置されたオブジェクト10の設置位置と、壁などの構造物の設置位置とを利用して実空間で形成された領域(実領域)を特定することができ、実空間と仮想空間と紐づけることを可能とすることができる。
【0069】
また、実施形態の領域特定システム1では、領域特定部503は、設置情報に基づいて特定した位置座標のうち、構造物まで距離が閾値未満である位置座標を、構造物と同一座標とみなして実領域を特定する。これにより、実施形態の領域特定システム1では、実領域を単純な形状とすることができ不必要に複雑な形状となることを抑制することができる。
【0070】
また、実施形態の領域特定システム1では、「設置情報」は、方向を示す方向情報を含む。領域特定部503は、方向情報に基づいて、オブジェクト10の位置座標と構造物によって形成される領域のうち、方向情報が示す方向にある領域を、実領域として特定する。これにより、実施形態の領域特定システム1では、オブジェクト10の設置位置と構造物とを用いて複数通りの実領域が形成可能な場合には、方向情報を用いて、1つの実領域を特定することができる。
【0071】
また、実施形態の領域特定システム1では、領域特定部503は、オブジェクト10の設置情報に基づいて特定した位置座標のうち、距離が閾値未満である複数の位置座標を同一座標とみなして実領域を特定する。これにより、実施形態の領域特定システム1では、実空間を単純な矩形の領域とすることができ、仮想領域が不必要に複雑な形状となることを抑制することができる。
【0072】
また、実施形態の領域特定システム1では、オブジェクト10は、方向を設定可能なダイヤル部106を有する。取得部502は、ダイヤル部106に設定された方向を示す方向情報を取得する。領域特定部503は、方向情報に基づいて、オブジェクト10の位置座標を通り方向情報が示す方向に実領域の境界線を設定する。これにより、実施形態の領域特定システム1では、1つのオブジェクト10を用いて、実領域の境界線を設定することができる。
【0073】
また、実施形態の領域特定システム1では、領域特定部503は、「設置情報」に基づいて特定したオブジェクト10の位置座標を、構造物の形状に基づいて補正する。領域特定部503は、補正した位置座標を用いて実領域を特定する。これにより、実施形態の領域特定システム1では、各オブジェクト10の設置位置を接続させた方向が、壁等の構造物の長尺方向などに対して微妙にずれている場合であっても、壁等の構造物の長尺方向などに沿った実空間を特定することができる。したがって、実空間を単純な矩形の領域とすることができ、仮想領域が不必要に複雑な形状となることを抑制することができる。
【0074】
また、実施形態の領域特定システム1では、「設置情報」は、方向を示す方向情報を含む。領域特定部503は、方向情報が示す方向と、構造物の形状とに基づいて方向を補正する。領域特定部503は、補正した方向を実領域の境界線とする。これにより、実施形態の領域特定システム1では、設置情報に含まれる方向が、壁等の構造物の長尺方向などに対して微妙にずれている場合であっても、壁等の構造物の長尺方向などに沿った実空間を特定することができる。したがって、実空間を単純な矩形の領域とすることができ、仮想領域が不必要に複雑な形状となることを抑制することができる。
【0075】
この他、実施形態の領域特定システム1では、ガイドポール型のオブジェクト10を用いたが、これに限らない。例えば、パーティション型のオブジェクト20や移動型のオブジェクト30としてもよく、各オブジェクト10、20、30の組合せ、実領域に設置・配置してもよい。
【0076】
オブジェクト20は、識別信号発信部21(識別信号発信部21a及び21b)を有している。識別信号発信部21は、例えば、パーティションの両端に設けられる。識別信号発信部21は、オブジェクト20を識別する識別信号を発信する。識別信号発信部21は、識別信号発信部11と同様に、Bluetoothなどの無線通信方式を用いて識別信号を発信する。識別信号発信部21のそれぞれが発信する識別信号には、パーティションの何れの端部に設けられているかを示す情報が含まれていてもよい。
【0077】
図4A及び図4Bはパーティション型のオブジェクト20の説明図である。図4Aに示すように、パーティション型のオブジェクト20は、パーティションの両端のそれぞれに識別信号発信部21a及び21bが設けられ、両端の位置が取得可能になっている。また、両端に識別信号発信部21a及び21bを設けることで、パーティション型のオブジェクト20が設置されることにより形成される境界(パーティション)の向きを検出することができる。このように上記実施形態の2つのガイドポール型のオブジェクト10の代わりにオブジェクト20を用いることができ、オブジェクト10同様、オブジェクト20を用いることで実領域に対応する仮想領域を設定することができる。
【0078】
またオブジェクト30は、識別信号発信部31を有する。識別信号発信部31は、オブジェクト30を識別する識別信号を発信する。識別信号発信部31は、識別信号発信部11と同様に、Bluetoothなどの無線通信方式を用いて識別信号を発信する。また、オブジェクト30は移動機構32を有する。移動機構32は、外部からの操作や、オブジェクト30の内部に設けられた移動制御機能にしたがって移動する。
【0079】
なお、移動型のオブジェクト30の識別信号発信部31についても、図2Cに示すようにガイドポール型のオブジェクト10同様に構成でき、オブジェクト10の識別信号発信部11の代わりに、識別信号発信部11と同様の機能を有する識別信号発信部3を有する。上記実施形態のガイドポール型のオブジェクト10の代わりにオブジェクト30を用いることができ、オブジェクト10同様、オブジェクト30を用いることで実領域に対応する仮想領域を設定することができる。
【0080】
上述した実施形態における領域特定システム1の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0081】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1…領域特定システム、10…オブジェクト、50…エリア設定サーバ、502…取得部、503…領域特定部、505…仮想領域生成部、507…配信情報生成部
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16