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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151904
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】試料片回収装置及び試料片回収方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/126 20060101AFI20231005BHJP
   B22D 11/12 20060101ALI20231005BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B22D11/126 Z
B22D11/12 Z
B22D11/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061770
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】田窪 将也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】蒲池 直樹
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004MC30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、連続鋳造設備において連続鋳造される複数の鋳片から試料片を回収するにあたり、試料片がどの鋳片から採取されたかを特定することが可能で、且つ、省スペース化を図ることが可能な試料片回収装置及び試料片回収方法を提供する。
【解決手段】試料片回収装置は、鋳造方向に交差する搬送方向に沿って延びると共に、第1の鋳片から切り落とされた第1の試料片と、第2の鋳片から切り落とされた第2の試料片とを搬送方向の下流に送り出すように構成された搬送部10と、搬送部の最下流端の近傍に位置し、且つ、第1の試料片及び第2の試料片がそれぞれ載置される第1の領域及び第2の領域を含む回収容器20と、第1の試料片が最下流端から落下する際に第1の領域が最下流端に隣接し、且つ、第2の試料片が最下流端から落下する際に第2の領域が最下流端に隣接するように、回収容器の位置又は姿勢を変更可能に構成された変更部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造設備において所定の鋳造方向に沿って連続鋳造される第1の鋳片及び第2の鋳片のそれぞれから、第1の試料片及び第2の試料片を回収するように構成された試料片回収装置であって、
前記鋳造方向に交差する搬送方向に沿って延びると共に、前記第1の鋳片から切り落とされた前記第1の試料片と、前記第2の鋳片から切り落とされた前記第2の試料片とを前記搬送方向の下流に送り出すように構成された搬送部と、
前記搬送部の最下流端の近傍に位置し、且つ、前記第1の試料片及び前記第2の試料片がそれぞれ載置される第1の領域及び第2の領域を含む回収容器と、
前記第1の試料片が前記最下流端から落下する際に前記第1の領域が前記最下流端に隣接し、且つ、前記第2の試料片が前記最下流端から落下する際に前記第2の領域が前記最下流端に隣接するように、前記回収容器の位置又は姿勢を変更可能に構成された変更部とを備える、試料片回収装置。
【請求項2】
前記回収容器は、前記第1の領域と前記第2の領域とを区画する仕切部材を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記変更部は、鉛直方向に沿って延びる回転軸周りに前記回収容器を回転可能に構成されており、
前記第1の領域及び前記第2の領域は、前記回転軸の周方向に沿って並んでいる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記変更部は、前記搬送方向に交差する移動方向に前記回収容器を移動可能に構成されており、
前記第1の領域及び前記第2の領域は、前記移動方向に沿って並んでいる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記最下流端の近傍と、前記搬送部から離れた場所との間で、前記回収容器を吊り上げて移動するように構成された吊り上げ部をさらに備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
前記最下流端の近傍と、前記搬送部から離れた場所との間で、前記回収容器を吊り上げて移動するように構成された吊り上げ部をさらに備える、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記最下流端の近傍と、前記搬送部から離れた場所との間で、前記回収容器を吊り上げて移動するように構成された吊り上げ部をさらに備える、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
連続鋳造設備において所定の鋳造方向に沿って連続鋳造される第1の鋳片を切断して第1の試料片を形成することと、
前記第1の鋳片から切り落とされた前記第1の試料片を、前記鋳造方向に交差する搬送方向に沿って延びる搬送部によって前記搬送方向の下流側に送り出すことと、
前記搬送部の最下流端から落下する前記第1の試料片を、前記最下流端の近傍に位置する回収容器の第1の領域に載置することと、
前記連続鋳造設備において前記鋳造方向に沿って連続鋳造される第2の鋳片を切断して第2の試料片を形成することと、
前記第2の鋳片から切り落とされた前記第2の試料片を、前記搬送部によって前記搬送方向の下流側に送り出すことと、
前記最下流端から落下する前記第2の試料片を、前記回収容器のうち前記第1の領域とは異なる第2の領域に載置することとを含む、試料片回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料片回収装置及び試料片回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、連続鋳造設備において連続鋳造される鋳片(ストランド)から試料片を採取する方法を開示している。当該方法は、切断トーチが鋳片の鋳造速度に同期して移動しながら当該鋳片を切断することにより、試料片を形成することと、鋳片から切断されて落下する試料片を台車で受け止めることと、試料片を載せた台車を鋳片の鋳造方向と交差する方向に移動させて、鋳片の流れと干渉しない待機位置にて試料片を台車から取り出すこととを含む。取り出された試料片は成分分析され、当該試料片に対応する鋳片の品質の判定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-168951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の鋳片を連続鋳造する連続鋳造設備では、1つのタンディッシュから複数の鋳型に溶湯を供給し、各鋳型から鋳片をそれぞれ引き抜き、複数の鋳片を並列的に連続鋳造している。この場合、特許文献1の方法で各鋳片から試料片を回収しようとすると、一つの台車に複数の試料片が混在してしまう。そのため、試料片の成分分析をしても、それがどの連続鋳造鋳片であるかの判別ができない。
【0005】
そこで、個々の鋳片に対応するように、複数の台車を用意することが考えられる。しかしながら、複数の台車を待機位置まで移動させるために広いスペースが必要となり、さらには複数の台車を設置するためのコストが嵩むこととなる。
【0006】
本開示は、連続鋳造設備において連続鋳造される複数の鋳片から試料片を回収するにあたり、試料片がどの鋳片から採取されたかを特定することが可能で、且つ、省スペース化を図ることが可能な試料片回収装置及び試料片回収方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
試料片回収装置の一例は、連続鋳造設備において所定の鋳造方向に沿って連続鋳造される第1の鋳片及び第2の鋳片のそれぞれから、第1の試料片及び第2の試料片を回収するように構成されている。試料片回収装置の一例は、鋳造方向に交差する搬送方向に沿って延びると共に、第1の鋳片から切り落とされた第1の試料片と、第2の鋳片から切り落とされた第2の試料片とを搬送方向の下流に送り出すように構成された搬送部と、搬送部の最下流端の近傍に位置し、且つ、第1の試料片及び第2の試料片がそれぞれ載置される第1の領域及び第2の領域を含む回収容器と、第1の試料片が最下流端から落下する際に第1の領域が最下流端に隣接し、且つ、第2の試料片が最下流端から落下する際に第2の領域が最下流端に隣接するように、回収容器の位置又は姿勢を変更可能に構成された変更部とを備える。
【0008】
試料片回収方法の一例は、連続鋳造設備において所定の鋳造方向に沿って連続鋳造される第1の鋳片を切断して第1の試料片を形成することと、第1の鋳片から切り落とされた第1の試料片を、鋳造方向に交差する搬送方向に沿って延びる搬送部によって搬送方向の下流側に送り出すことと、搬送部の最下流端から落下する第1の試料片を、最下流端の近傍に位置する回収容器の第1の領域に載置することと、連続鋳造設備において鋳造方向に沿って連続鋳造される第2の鋳片を切断して第2の試料片を形成することと、第2の鋳片から切り落とされた第2の試料片を、搬送部によって搬送方向の下流側に送り出すことと、最下流端から落下する第2の試料片を、回収容器のうち第1の領域とは異なる第2の領域に載置することとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る試料片回収装置及び試料片回収方法によれば、連続鋳造設備において連続鋳造される複数の鋳片から試料片を回収するにあたり、試料片がどの鋳片から採取されたかを特定することが可能で、且つ、省スペース化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、連続鋳造設備の一例を概略的に示す側面図である。
図2図2は、試料片回収装置の一例を概略的に示す上面図である。
図3図3は、図2の側面図である。
図4図4は、試料片回収装置の他の例を概略的に示す上面図である。
図5図5は、図4の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
【0012】
[連続鋳造設備の構成]
まず、連続鋳造設備100の構成について、図1を参照して説明する。連続鋳造設備100は、取鍋101と、タンディッシュ102と、鋳型103と、二次冷却帯104と、ピンチロール105と、複数の軽圧下装置106と、複数の鋳片支持ロール107と、鋳片圧下装置108と、切断機109と、試料片回収装置1とを備える。
【0013】
取鍋101は、溶湯(溶鋼)Mを貯留する容器である。タンディッシュ102は、取鍋101の下方に配置されている。タンディッシュ102は、取鍋101から流出した溶湯Mを貯留し、溶湯M内に存在する介在物(例えば、アルミナ等からなる粒状の固形物など)を除去する機能を有する。
【0014】
鋳型103は、タンディッシュ102の下方に配置されている。鋳型103は、タンディッシュ102の底壁に設けられたノズルから流出した溶湯を冷却しながら所定形状に成形して鋳片St(ストランド:Strand)を形成する。
【0015】
二次冷却帯104は、鋳型103の下流側に位置しており、鋳型103から引き抜かれた鋳片Stをさらに冷却する。この冷却過程において、鋳片Stの表面側から徐々に凝固していく。換言すれば、二次冷却帯104を通過した鋳片Stの内部には、未凝固溶鋼が存在している。ピンチロール105は、二次冷却帯104の下流側に位置しており、鋳片Stを曲げ矯正しながら鋳造方向Ar1に沿って下流側に引き抜きぬく。
【0016】
ここで、鋳型103によって成形された鋳片Stは、表面部が凝固した凝固部(凝固シェル)と、凝固シェルの内部において未凝固状態の溶湯である溶融部(未凝固溶鋼)とで構成されている。鋳片Stが下流側に向かうにつれて二次冷却帯104等で冷却され、溶融部が徐々に凝固していき、凝固シェルが成長する。すなわち、凝固シェルの成長に伴って、溶融部が縮小し、凝固シェルの厚みが増加する。鋳片Stが鋳片圧下装置108に至る前までに、鋳片Stは完全に凝固する。
【0017】
複数の軽圧下装置106は、二次冷却帯104の下流側に位置している。軽圧下装置106は、一対の軽圧下ロールで凝固途中の鋳片Stを上下から加圧するように構成されている。具体的には、軽圧下装置106は、鋳片Stのうち溶融部が凝固末期となる箇所の近傍を一対の軽圧下ロールで圧下している。これにより、鋳片Stにおける内部割れ及び中心偏析の発生を抑制している。
【0018】
複数の鋳片支持ロール107は、軽圧下装置106の下流側において、鋳片Stの延在方向に沿って並ぶように配置されている。鋳片支持ロール107は、鋳片Stを冷却しつつ下流側に向けて搬送する機能を有する。
【0019】
鋳片圧下装置108は、軽圧下装置106の下流側に位置している。鋳片圧下装置108は、一対の圧下ロールで凝固後の鋳片Stを上下から加圧するように構成されている。これにより、鋳片Stの中央部分での、鋳片Stの延在方向に延びる微小な空洞の発生を抑制している。
【0020】
切断機109は、鋳片圧下装置108の下流側に位置している。切断機109は、例えばガス切断トーチであり、切断機109に到達した鋳片Stを幅方向に切断する。これにより、製品としての金属片P又は試料片Spが形成される。試料片Spは、採取元の鋳片Stの品質を判定するため、図示しない成分分析装置等によって成分分析される。
【0021】
図1には図示していないが、連続鋳造設備100は、複数の鋳片Stを並列的に製造するように構成されている。そのため、連続鋳造設備100は、鋳型103と、二次冷却帯104と、ピンチロール105と、複数の軽圧下装置106と、複数の鋳片支持ロール107と、鋳片圧下装置108と、切断機109とからなるユニットを複数備えている。これらのユニットは、例えば、図1の紙面に垂直な方向に沿って並んでいてもよい。
【0022】
タンディッシュ102の底壁には、各ユニットの鋳型103に向けて延びる複数のノズルが設けられている。これにより、各ユニットの鋳型103に供給された溶湯は、上述したのと同様に、各ユニットの二次冷却帯104、ピンチロール105、複数の軽圧下装置106及び鋳片圧下装置108を経由して、凝固した鋳片Stとなる。
【0023】
[試料片回収装置の構成]
続いて、図2及び図3を参照して、試料片回収装置1の詳細について説明する。なお、図2及び図3に示される例では、連続鋳造設備100は、6つのユニットを備えており、6つの鋳片Stが形成されている。以下では、これらの6つの鋳片Stをそれぞれ鋳片St1~St6と称することがある。また、鋳片St1~St6から採取された試料片Spをそれぞれ試料片Sp1~Sp6と称することがある。図2及び図3に示される例では、鋳片St1~St5からそれぞれ試料片Sp1~Sp5が略同時に切断されている様子が示されている。ただし、鋳片St1~St6のうちのいずれか少なくとも一つから試料片Spが切断されてもよいし、鋳片St1~St6のうちのいずれか少なくとも二つから試料片Spが略同時に又は異なるタイミングで切断されてもよい。
【0024】
試料片回収装置1は、搬送部10と、回収容器20と、変更部30と、吊り上げ部40とを含む。
【0025】
搬送部10は、支持部材11と、シュート12(最下流端)と、一対のチェーン13と、複数の押出部材14と、駆動源15とを含む。支持部材11は、鋳造方向Ar1に交差する方向である搬送方向Ar2に沿って水平に延びている。支持部材11は、例えば平板状を呈している。支持部材11は、鋳片St6の近傍からシュート12の近傍まで延びている。支持部材11の一端(上流端)は鋳片St6側に位置しており、支持部材11の他端(下流端)はシュート12側に位置している。支持部材11は、鋳片Stから切り出されて落下した試料片Spを支持するように構成されている。支持部材11は、例えば金属によって構成されていてもよい。
【0026】
シュート12は、支持部材11の下流端に隣接して配置されている。シュート12は、支持部材11の下流端の下流端から回収容器20に向けて、下向きに傾斜しつつ延びている。シュート12は、例えば金属によって構成されていてもよい。
【0027】
一対のチェーン13は、支持部材11の側方にそれぞれ配置されている。一対のチェーン13は、環状を呈している。支持部材11の上流端及び下流端のそれぞれに配置されているスプロケット16に掛け渡されている。これにより、一対のチェーン13の上部は、支持部材11の上面と略等しい高さにおいて搬送方向Ar2に沿って延びている。一対のチェーン13の下部は、下方に向けて撓んでいてもよい。
【0028】
複数の押出部材14は、一対のチェーン13を接続するように一対のチェーン13の間を延びている。複数の押出部材14は、一対のチェーン13の延びる方向において所定間隔で並ぶように配置されている。複数の押出部材14の配置間隔は、例えば、鋳片St1~St6のうち隣り合う鋳片St同士の間隔に対応していてもよい。この場合、鋳片St1~St6のうち少なくとも2つから略同時に切り出されて落下した複数の試料片Spは、複数の押出部材14のうち隣り合う2つの押出部材14と一対のチェーン13とで囲まれる一つの領域内に同時に位置することはない。
【0029】
駆動源15は、スプロケット16を回転駆動させるように構成されている。駆動源15は、例えばモータなどによって構成されていてもよい。駆動源15がスプロケット16を回転駆動させることにより、一対のチェーン13の上部は、支持部材11の上端側から下端側に向けて搬送方向Ar2沿って移動し、一対のチェーン13の下部は、支持部材11の下端側から上端側に向けて搬送方向Ar2沿って移動する。図3の例では、一対のチェーン13は時計回りに回転する。これにより、複数の押出部材14も、支持部材11の上面において、支持部材11の上端側から下端側に向けて搬送方向Ar2に沿って移動する。
【0030】
支持部材11に試料片Spが載置されている場合、試料片Spの上流側から移動してきた押出部材14は、試料片Spに接触し、そのまま試料片Spを支持部材11の下端まで押していく。押出部材14によって支持部材11の下端まで押された試料片Spは、シュート12に向けて落下し、シュート12を滑り落ちていき、その後、回収容器20内に落下する。すなわち、搬送部10は、試料片Spを搬送方向Ar2の下流に送り出して回収容器20に搬送するように構成されている。
【0031】
回収容器20は、シュート12の下端(すなわち、搬送部10の最下流端)と隣り合うようにシュート12の下端の近傍に位置している。
回収容器20は、搬送部10によって搬送された試料片Spを回収するように構成されている。回収容器20は、有底筒状を呈している。図2及び図3の例では、回収容器20は、上方から見て円形状を呈している。
【0032】
回収容器20内には、複数の仕切部材21が設けられている。図2の例では、複数の仕切部材21は、回収容器20内の空間を6分割するように回収容器20内に設けられている。これにより、回収容器20内には、複数の仕切部材21によって複数の領域(図2では、6つの領域R1~R6)が区画される。これらの領域R1~R6は、円形状に沿って(回収容器20の周方向に沿って)並んでいる。
【0033】
変更部30は、回収容器20の姿勢を変更可能に構成されている。図2及び図3の例では、変更部30は、回転軸31と、回転台32と、複数のローラ33とを含む。
【0034】
回転軸31は、図3に例示されるように、鉛直方向に沿って床面から上方に延びるように床面に設けられている。回転軸31は、床面に対して回転可能に構成されている。回転台32は、回転軸31の上端部に設けられている。そのため、回転台32は、鉛直方向に沿って延びる回転軸31周りに回転するように構成されている。作業者が人手によって回転台32が回転されてもよいし、図示しない駆動源によって回転台32が回転されてもよい。回転台32の上面には、回収容器20を載置可能である。
【0035】
複数のローラ33は、回転軸31の周方向に沿って並ぶように配置されている。複数のローラ33は、回転台32の下面を支持している。そのため、回転台32の回転に際して、回転台32は、複数のローラ33によってより円滑に回転する。
【0036】
変更部30は、上記の構成を有することにより、回転台32に載置されている回収容器20を回転軸31周りに回転可能に構成されている(図2の矢印Ar3参照)。そのため、回収容器20の回転に伴い、シュート12に対する領域R1~R6の位置が変化する。例えば、回収容器20の回転により領域R1がシュート12と隣接して位置する場合(図2参照)には、搬送部10によって搬送された試料片Spは、回収容器20の領域R1に収容される。他の領域R2~R5についても同様である。すなわち、試料片Sp1~Sp6がそれぞれ領域R1~R6に収容されるように、回収容器20を回転させながら試料片Spを回収容器20に回収することで、試料片Sp1~Sp6の混在が防止される。
【0037】
吊り上げ部40は、回収容器20を吊り上げて、回転台32と、搬送部10から離れた位置(例えば、連続鋳造設備100によって製造されている鋳片Stと干渉しない位置)との間で回収容器20を移動可能に構成されている(図3の矢印Ar4参照)。吊り上げ部40は、例えば、連続鋳造設備100の建屋の天井に設置されている天井クレーンや、ホイストなどであってもよい。
【0038】
[作用]
以上の例によれば、鋳片St1~St6からそれぞれ切り落とされた試料片Sp1~Sp6が、一つの同じ回収容器20にて回収される。しかも、回収時に、試料片Sp1~Sp6はそれぞれ、回収容器の異なる領域である領域R1~R6に載置される。そのため、連続鋳造設備100において連続鋳造される複数の鋳片Stから試料片Spを回収するにあたり、試料片Spが回収容器20に載置された領域に応じて、どの鋳片Stから採取された試料片Spであるのかを特定することが可能となる。しかも、一つの回収容器20の姿勢を変更するだけで試料片Spの特定を実現できるので、省スペース化も図ることが可能となる。
【0039】
以上の例によれば、回収容器20は、領域R1~R6を区画する仕切部材21を含んでいる。そのため、仕切部材21の存在によって、例えば、試料片Sp1が他の領域R2~R6に侵入することがなくなる。そのため、試料片Spの混在がなくなるので、どの鋳片Stから採取された試料片Spであるのかを確実に特定することが可能となる。
【0040】
以上の例によれば、変更部30は、回転軸31周りに回収容器20を回転可能に構成されており、領域R1~R6は、回収容器20の周方向(回転軸31の周方向)に沿って並んでいる。そのため、一つの回収容器20を回転するだけで試料片Spの特定を実現できるので、さらなる省スペース化を図ることが可能となる。
【0041】
以上の例によれば、回収容器20は、吊り上げ部40によって吊り上げられた状態で、回転台32と、搬送部10から離れた位置との間で搬送される。そのため、試料片Spが収容された回収容器20を、吊り上げ部40によって搬送部10から離れた場所に移動することで、安全な場所で作業者が回収容器20から試料片Spを取り出す作業を行うことが可能となる。さらに、回収容器20からの試料片Spの取り出し作業中に、別の回収容器を回転台32に載置することで、別の回収容器によって試料片Spを回収できる。そのため、試料片Spの回収を連続的に実行することが可能となる。
【0042】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0043】
(1)回収容器20の底面に複数のローラ33が設けられていてもよい。この場合も、回収容器20は、その位置又は姿勢を変更することが可能となる。
【0044】
(2)回収容器20は、円形状以外の形状を呈していてもよい。例えば、図4及び図5に例示されるように、回収容器20は、矩形状を呈していてもよい。この場合、複数の仕切部材21は、回収容器20の長手方向に沿って並ぶように配置されている。そのため、領域R1~R6も、回収容器20の長手方向に沿って並んでいる。また、図4及び図5の例において、変更部30は、回収容器20に対して回転可能に取り付けられた複数の車輪であってもよい。変更部30は、搬送方向Ar2に交差する方向である移動方向Ar5に沿って回収容器20を直線状に移動可能に構成されていてもよい。
【0045】
この場合も、図2及び図3の例と同様に、回収容器20の移動に伴い、シュート12に対する領域R1~R6の位置が変化する。そのため、試料片Sp1~Sp6がそれぞれ領域R1~R6に収容されるように、回収容器20を移動させながら試料片Spを回収容器20に回収することで、試料片Sp1~Sp6の混在が防止される。したがって、図4及び図5の例においても、試料片Spが回収容器20に載置された領域に応じて、どの鋳片Stから採取された試料片Spであるのかを特定することが可能となる。しかも、一つの回収容器20の位置を変更するだけで試料片Spの特定を実現できるので、省スペース化も図ることが可能となる。
【0046】
[他の例]
例1.試料片回収装置の一例は、連続鋳造設備において所定の鋳造方向に沿って連続鋳造される第1の鋳片及び第2の鋳片のそれぞれから、第1の試料片及び第2の試料片を回収するように構成されている。試料片回収装置の一例は、鋳造方向に交差する搬送方向に沿って延びると共に、第1の鋳片から切り落とされた第1の試料片と、第2の鋳片から切り落とされた第2の試料片とを搬送方向の下流に送り出すように構成された搬送部と、搬送部の最下流端の近傍に位置し、且つ、第1の試料片及び第2の試料片がそれぞれ載置される第1の領域及び第2の領域を含む回収容器と、第1の試料片が最下流端から落下する際に第1の領域が最下流端に隣接し、且つ、第2の試料片が最下流端から落下する際に第2の領域が最下流端に隣接するように、回収容器の位置又は姿勢を変更可能に構成された変更部とを備える。この場合、第1の鋳片及び第2の鋳片からそれぞれ切り落とされた第1の試料片及び第2の試料片が、一つの同じ回収容器にて回収される。しかも、回収時に、第1の試料片及び第2の試料片はそれぞれ、回収容器の異なる領域である第1の領域及び第2の領域に載置される。そのため、連続鋳造設備において連続鋳造される複数の鋳片から試料片を回収するにあたり、試料片が回収容器に載置された領域に応じて、どの鋳片から採取された試料片であるのかを特定することが可能となる。しかも、一つの回収容器の位置又は姿勢を変更するだけで試料片の特定を実現できるので、省スペース化も図ることが可能となる。
【0047】
例2.例1の装置において、回収容器は、第1の領域と第2の領域とを区画する仕切部材を含んでいてもよい。この場合、仕切部材の存在によって、第1の試料片が第2の領域に侵入したり、第2の試料片が第1の領域に侵入したりすることがなくなる。そのため、試料片の混在がなくなるので、どの鋳片から採取された試料片であるのかを確実に特定することが可能となる。
【0048】
例3.例1又は例2の装置において、変更部は、鉛直方向に沿って延びる回転軸周りに回収容器を回転可能に構成されており、第1の領域及び第2の領域は、回転軸の周方向に沿って並んでいてもよい。この場合、一つの回収容器を回転するだけで試料片の特定を実現できるので、さらなる省スペース化を図ることが可能となる。
【0049】
例4.例1又は例2の装置において、変更部は、搬送方向に交差する移動方向に回収容器を移動可能に構成されており、第1の領域及び第2の領域は、移動方向に沿って並んでいてもよい。この場合、一つの回収容器を所定の移動方向に移動するだけで試料片の特定を実現できるので、さらなる省スペース化を図ることが可能となる。
【0050】
例5.例1又は例2の装置は、最下流端の近傍と、搬送部から離れた場所との間で、回収容器を吊り上げて移動するように構成された吊り上げ部をさらに備えていてもよい。この場合、試料片が収容された回収容器を、吊り上げ部によって搬送部から離れた場所に移動することで、安全な場所で作業者が回収容器から試料片を取り出す作業を行うことが可能となる。
【0051】
例6.例3の装置は、最下流端の近傍と、搬送部から離れた場所との間で、回収容器を吊り上げて移動するように構成された吊り上げ部をさらに備えていてもよい。この場合、例の装置5と同様の作用効果が得られる。
【0052】
例7.例4の装置は、最下流端の近傍と、搬送部から離れた場所との間で、回収容器を吊り上げて移動するように構成された吊り上げ部をさらに備えていてもよい。この場合、例5の装置と同様の作用効果が得られる。
【0053】
例8.試料片回収方法の一例は、連続鋳造設備において所定の鋳造方向に沿って連続鋳造される第1の鋳片を切断して第1の試料片を形成することと、第1の鋳片から切り落とされた第1の試料片を、鋳造方向に交差する搬送方向に沿って延びる搬送部によって搬送方向の下流側に送り出すことと、搬送部の最下流端から落下する第1の試料片を、最下流端の近傍に位置する回収容器の第1の領域に載置することと、連続鋳造設備において鋳造方向に沿って連続鋳造される第2の鋳片を切断して第2の試料片を形成することと、第2の鋳片から切り落とされた第2の試料片を、搬送部によって搬送方向の下流側に送り出すことと、最下流端から落下する第2の試料片を、回収容器のうち第1の領域とは異なる第2の領域に載置することとを含む。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0054】
1…試料片回収装置、10…搬送部、12…シュート(最下流端)20…回収容器、21…仕切部材、30…変更部、40…吊り上げ部、100…連続鋳造設備、Ar1…鋳造方向、Ar2…搬送方向、Ar5…移動方向、R1~R6…領域、Sp,Sp1~Sp5…試料片、St,St1~St6…鋳片。
図1
図2
図3
図4
図5