(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151921
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法および製造システム
(51)【国際特許分類】
B29D 30/08 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B29D30/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061796
(22)【出願日】2022-04-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】高梨 雄太
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AM20
4F215AM22
4F215AP11
4F215AP14
4F215VA02
4F215VA18
4F215VC02
4F215VD01
4F215VK51
4F215VP01
4F215VQ02
4F215VQ04
4F215VQ07
4F215VQ08
4F215VR02
(57)【要約】
【課題】成形ドラム体を複数の作業ステーションに順次移動させて成形されるグリーンタイヤの所定品質を把握しつつ効率的に成形できるタイヤの製造方法および製造システムを提供する。
【解決手段】作業ステーションS1での成形作業が終了してタイヤ構成部材Mが貼付けられた成形ドラム体2を載置装置8に成形ドラム体2を仮置きし、成形ドラム体2が載置装置8に仮置きされている間に、成形ドラム体2に貼り付けられたタイヤ構成部材Mにより形成されている成形途中または成形が完了したグリーンタイヤGの所定品質として、その質量を質量計12により検査し、そのプロファイル形状をプロファイルセンサ13により検査する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形ドラム体を複数の作業ステーションに順次移動させ、それぞれの前記作業ステーションで前記成形ドラム体にタイヤ構成部材を貼り付けることによりグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫するタイヤの製造方法において、
いずれか1つの前記作業ステーションでの成形作業が終了して前記タイヤ構成部材が貼付けられた前記成形ドラム体を載置装置に仮置きし、前記成形ドラム体が前記載置装置に仮置きされている間に、前記成形ドラム体に貼り付けられた前記タイヤ構成部材により形成されている成形途中または成形が完了したグリーンタイヤの所定品質の検査を行うタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記載置装置に仮置きされている前記成形ドラム体を次の前記作業ステーションに移動させる前に、成形途中の前記グリーンタイヤの前記所定品質の検査を行う請求項1にタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記所定品質が、前記グリーンタイヤの質量またはプロファイル形状の少なくとも一方である請求項1または2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記グリーンタイヤのプロファイル形状を検査する際に、プロフィルセンサを前記成形ドラム体のドラム軸を中心にして前記グリーンタイヤの外周側を回転移動させる請求項3に記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記グリーンタイヤのプロファイル形状を検査する際に、プロフィルセンサを前記グリーンタイヤの外周側に配置して、前記成形ドラム体をドラム軸を中心にして回転させる請求項3に記載のタイヤの製造方法。
【請求項6】
複数の作業ステーションを順次移動する成形ドラムと、それぞれの前記作業ステーションに配置されて前記成形ドラム体にタイヤ構成部材を供給する部材供給機と、それぞれの作業ステーションでの成形作業を経て成形されたグリーンタイヤが加硫される加硫装置とを有するタイヤの製造システムにおいて、
いずれか1つの前記作業ステーションでの成形作業が終了して前記タイヤ構成部材が貼付けられた前記成形ドラム体が仮置きされる載置装置と、検査装置とを有し、前記載置装置に仮置きされている前記成形ドラム体に貼り付けられた前記タイヤ構成部材により形成されている成形途中または成形が完了したグリーンタイヤの所定品質が、前記検査装置により検査される構成にしたタイヤの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法および製造システムに関し、さらに詳しくは、成形ドラム体を複数の作業ステーションに順次移動させてグリーンタイヤを成形する際に、所定品質を把握しつつ効率的にグリーンタイヤを成形できるタイヤの製造方法および製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
グリーンタイヤを成形する際に、環状支持体(成形ドラム体)を複数のワークステーションに順次移動させ、それぞれのワークステーションで環状支持体にタイヤ構成部材を貼り付ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。環状支持体を次のワークステーションに移動させるにはロボットアームが使用され、隣接するワークステーションの間には保持ステーションが設置される。最初のワークステーションに配置されているロボットアームは、二番目のワークステーションとの間に設置されている保持ステーションに環状支持体を仮置きする。二番目のワークステーションに配置されているロボットアームは、その仮置きされている環状支持体を取り上げて二番目のワークステーションに移動させる。このように保持ステーションを介在させて環状支持体を隣接するワークステーションに順次移動させてグリーンタイヤが成形される。
【0003】
成形工程にて成形されたグリーンタイヤは、加硫工程にて加硫されてタイヤが完成する。この一連のタイヤの製造工程では、グリーンタイヤの所定品質を把握する必要もある。この製造方法では、保持ステーションに成形ドラム体を仮置きしている時間が長くなる程、タイヤの生産性は低下する。しかしながら、この仮置き時間をゼロにすることは不可能であり、ある程度の仮置き時間が必要になる。生産計画によってはこの仮置き時間が長くなることもある。それ故、成形ドラム体を複数の作業ステーションに順次移動させてグリーンタイヤを成形する際に、所定品質を把握しつつ効率的にグリーンタイヤを成形するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、成形ドラム体を複数の作業ステーションに順次移動させてグリーンタイヤを成形する際に、所定品質を把握しつつ効率的にグリーンタイヤを成形できるタイヤの製造方法および製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のタイヤの製造方法は、成形ドラム体を複数の作業ステーションに順次移動させ、それぞれの前記作業ステーションで前記成形ドラム体にタイヤ構成部材を貼り付けることによりグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫するタイヤの製造方法において、いずれか1つの前記作業ステーションでの成形作業が終了して前記タイヤ構成部材が貼付けられた前記成形ドラム体を載置装置に仮置きし、前記成形ドラム体が前記載置装置に仮置きされている間に、前記成形ドラム体に貼り付けられた前記タイヤ構成部材により形成されている成形途中または成形が完了したグリーンタイヤの所定品質の検査を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤの製造システムは、複数の作業ステーションを順次移動する成形ドラムと、それぞれの前記作業ステーションに配置されて前記成形ドラム体にタイヤ構成部材を供給する部材供給機と、それぞれの作業ステーションでの成形作業を経て成形されたグリーンタイヤが加硫される加硫装置とを有するタイヤの製造システムにおいて、いずれか1つの前記作業ステーションでの成形作業が終了して前記タイヤ構成部材が貼付けられた前記成形ドラム体が仮置きされる載置装置と、検査装置とを有し、前記載置装置に仮置きされている前記成形ドラム体に貼り付けられた前記タイヤ構成部材により形成されている成形途中または成形が完了したグリーンタイヤの所定品質が、前記検査装置により検査される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記成形ドラム体が前記載置装置に仮置きされている間に、成形途中または成形が完了したグリーンタイヤの所定品質の検査を行うことで、仮置き時間を有効に利用できる。そのため、成形ドラム体を複数の作業ステーションに順次移動させてグリーンタイヤを成形する際に、所定品質を把握しつつ効率的にグリーンタイヤを成形できる。これに伴い、タイヤの生産性を向上させるには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】タイヤの製造システムの実施形態を平面視で例示する説明図である。
【
図2】ロボットアームの把持爪を成形ドラム体の連結部の上方に位置決めした状態を側面視で例示する説明図である。
【
図3】
図2の成形ドラム体を平面視で例示する説明図である。
【
図4】
図2の把持爪と連結部とを係合させてロボットアームにより成形ドラム体を保持した状態を例示する説明図である。
【
図5】成形ドラム体の載置装置を側面視で例示する説明図である。
【
図6】
図5の載置装置を平面視で例示する説明図である。
【
図7】
図5の載置装置に成形ドラム体が仮置きされた状態を例示する説明図である。
【
図8】
図7のプロファイルセンサの変形例を示す説明図である。
【
図9】グリーンタイヤの加硫工程を一部拡大して縦断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のタイヤの製造方法およびシステムを、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1に例示するタイヤの製造システム1の実施形態は、複数の作業ステーションS(S1、S2、S3)を順次移動する成形ドラム体2と、それぞれの作業ステーションSに配置される部材供給機7と、載置装置8と、質量計12、プロファイルセンサ13と、制御部14と、加硫装置15とを有している。
【0012】
タイヤの成形工程は複数の作業ステーションS1、S2、S3を有している。
図1ではそれぞれの作業ステーションSを二点鎖線で区画して示している。作業ステーションSの数は特に限定されず、タイヤ仕様などに応じて必要な作業ステーションSが設けられる。それぞれの作業ステーションSにはロボットアーム6が設置されていて、隣接する作業ステーションSの境界近傍(例えば、作業ステーションSどうしの間の領域)に載置装置8が設置されている。グリーンタイヤGの成形を行うロボットアーム6には成形ドラム体2が装着される。
【0013】
成形ドラム体2は、各種のタイヤ構成部材Mが貼付け積層されて、グリーンタイヤGを成形する際に芯材として機能する。成形ドラム体2としては、例えば公知の種々の剛性コアを用いることができる。この実施形態では、製造するタイヤTの内面と同じプロファイルの外周面を有する剛性コアが、成形ドラム体2として使用されている。
【0014】
図2~
図4に例示する成形ドラム体2は、円筒部3と、円筒部3の中心部で筒軸方向に延在するドラム軸4aとを有している。尚、
図2、
図4では円筒部3の右側半分を縦断面視で示している。円筒部3は、周方向に複数に分割されたセグメントを組み付けて構成されていて分解可能になっている。
【0015】
ドラム軸4aの両端部には円盤部4bが固定されていて、一方の円盤部4bは表面に連結部4cを有し、他方の円盤部4bは表面に嵌合部5を有している。連結部4cは、後述するロボットアーム6の把持爪6bによって把持される。嵌合部5は、載置台9に形成されているガイド9aに係合する。
【0016】
ロボットアーム6は、プログラムやティーチングなどに基づいて制御されて所望の動きをする公知の種々のタイプ(いわゆる、産業用ロボットのアーム)を用いることができる。この実施形態のロボットアーム6は、三次元の所望位置に移動可能なアーム部6aの先端に駆動モータ6Mが取り付けられていて、この駆動モータ6Mを介して把持爪6bが設置されている。この把持爪6bは、成形ドラム体2の連結部4cに対して着脱する。
【0017】
駆動モータ6Mが把持爪6bを回転駆動すると、ロボットアーム6に装着された成形ドラム体2はドラム軸4aを中心にして回転駆動される。駆動モータ6Mは任意で設けることができ、ロボットアーム6が駆動モータ6Mを有していない仕様の場合は、把持爪6bはアーム部6aの先端部に直接的に設けられる。
【0018】
部材供給機7は、成形ドラム体2に対して、それぞれの作業ステーションSでタイヤ構成部材M(M1~M5)のいずれか1種類以上を供給する。公知の種々の部材供給機7を用いることができる。タイヤ構成部材Mの種類としては、インナーライナ、カーカス層、サイドゴム、補強層、トレッドゴムなどが例示できる。
【0019】
載置装置8は、タイヤの成形工程で成形ドラム体2を仮置きするために使用される。成形ドラム体2は、ロボットアーム6による保持が解除されて、載置装置8に横倒し状態で載置される。載置装置8に載置されて仮置きされた成形ドラム体2は、ロボットアーム6により保持されて別の場所(次の作業ステーションSなど)に移動される。
【0020】
図5、
図6に例示するように、載置装置8は、載置台9と、載置台9の下方に配置されるベース部10とを備えている。載置台9はベース部10に立設された中心軸11によって支持されている。中心軸11は、平面視で載置台9およびベース部10の中心に配置されている。
【0021】
成形ドラム体2が載置される載置台9はガイド9aを有している。載置台9は、横倒し状態で成形ドラム体2を載置できる種々の形状を用いることができる。この実施形態では、円形状プレートが載置台9として使用されている。ガイド9aは、成形ドラム体2に係合する係合体であり、この実施形態では、円錐台形状のガイド9aが載置台9の上面で上方に突出していて、平面視で中心軸11を挟んで180°対向した2箇所に配置されている。ガイド9aの数は特に限定されず、例えば平面視で中心軸11を中心にして周方向に等間隔で3箇所~4箇所に配置することができる。
【0022】
ベース部10は、対象領域(成形工程のフロアなど)の所定の設置位置に固定される。ベース部10は例えば、フロアにボルト止めされる。この実施形態では、金属製の箱状フレーム体がベース部10として用いられているが、これに限定されず種々の形態を採用できる。例えば、単純な金属台をベース部10として採用することもできる。ベース部10に走行機構を設けて載置装置8を移動可能な構成にすることもできる。
【0023】
この実施形態では、検査装置として質量計12およびプロファイルセンサ13を有している。成形途中または成形が完了したグリーンタイヤGの所定品質が、これらの検査装置12、13によりを検査される。その他、必要に応じた所定品質を検査することができ、その所定品質に適した検査装置が製造システム1に設けられる。この実施形態では、質量計12は載置台9の下面に設置されているが公知の種々のタイプを用いることができる。
【0024】
プロファイルセンサ13は、成形ドラム体2に貼り付けられているタイヤ構成部材Mの最外周表面の形状を、レーザ光などを用いて非接触で取得する。プロファイルセンサ13としては、公知の種々のタイプを用いることができる。
【0025】
プロファイルセンサ13は成形ドラム体2の周方向全周に渡って、このタイヤ構成部材Mの最外周表面の形状を取得するので、この実施形態では、中心軸11をその軸心まわりに回転駆動する駆動モータ11aが設けられている。載置台9は中心軸11の上端に固定されているので、中心軸11が回転駆動されると、中心軸11とともに回転駆動される。プロファイルセンサ13は、載置装置8から離れた所定位置に固定されて設置されている。
【0026】
制御部14は、質量計12やプロファイルセンサ13による検知データが入力される。制御部14にはその他、種々のデータが入力、記憶されて種々の演算処理を行う。また、制御部14は、載置台9(駆動モータ11a)やプロファイルセンサ13などの動きを制御する。制御部14としては種々のコンピュータを用いることができる。
【0027】
加硫装置15は、加硫用モールド16の中でグリーンタイヤGを加硫する。公知の種々の加硫装置15を用いることができる。
【0028】
次に、この製造システム1を用いてタイヤを製造する手順の一例を説明する。
【0029】
図1に例示するタイヤの成形工程では、ロボットアーム6および載置装置8を使用して、成形ドラム体2を必要な作業ステーションS(S1、S2、S3)に順次移動させて必要なタイヤ構成部材Mが成形ドラム体2に貼り付けられる。この成形工程によってグリーンタイヤGが成形される。
【0030】
最初の作業ステーションS1での成形作業が終了すると、この成形ドラム体2を次の作業ステーションS2に移動させる。そこでロボットアーム6は、
図4に例示するように成形ドラム体2を保持して、この成形ドラム体2を載置装置8の上方に移動させる。把持爪6bによって連結部4cを把持することで、成形ドラム体2はロボットアーム6により保持される。ロボットアーム6は、嵌合部5が下方に位置するようにドラム軸4aの延在方向を鉛直方向に向けて、成形ドラム体2を横倒し状態にする。
【0031】
次いで、ロボットアーム6は、成形ドラム体2を載置装置8の上方の所定位置Paに移動させる。この所定位置Paは、プログラムやティーチングなどによって予め設定されていて、ロボットアーム6は成形ドラム体2(ドラム軸4aの軸心位置)をこの所定位置Paに移動させるように制御される。
【0032】
その後、ロボットアーム6は成形ドラム体2に対する保持を解除する。これにより、
図7に例示するように成形ドラム体2の嵌合部5と、載置部2のガイド9aとが係合して、成形ドラム体2は載置台9に横倒し状態で載置されて仮置きされる。ドラム軸4aは中心軸11の真上に位置決めされた状態になる。
【0033】
載置台9に仮置きされた成形ドラム体2は、次の作業ステーションS2に配置されているロボットアーム6によって載置装置8から引き上げられて、次の作業ステーションS2に移動される。この時も、ロボットアーム6の把持爪6bと成形ドラム体2の連結部4cとを係合させて成形ドラム体2がロボットアーム6に装着される。
【0034】
次の作業ステーションS2でも同様に成形ドラム体2には、タイヤ構成部材Mが貼り付けられる。作業ステーションS2での成形作業が終了して成形ドラム体2を次の作業ステーションS3に移動させる際にも、作業ステーションS1、S2の間での移動と同様に、成形ドラム体2を載置装置8に仮置きする。
【0035】
ロボットアーム6は、成形ドラム体2を移動させるためだけに機能する仕様でもよく、この機能に加えて成形作業にも利用できる仕様でもよい。例えば、この実施形態にように、保持した成形ドラム体2を駆動モータ6Mによってドラム軸4aを中心にして回転駆動する仕様にすることで、成形作業に利用することができる。
【0036】
この成形工程によって、成形ドラム体2の外周面にはグリーンタイヤGが成形される。成形が完了したグリーンタイヤGは、成形ドラム体2とともに加硫工程に移動される。
【0037】
この成形工程では、いずれか1つの作業ステーションSでの成形作業が終了して、成形ドラム体2が載置装置8に仮置きされている間に、この成形ドラム体2の外周面に積層されている成形途中のグリーンタイヤG、または、成形が完了したグリーンタイヤGの所定品質(質量、プロファイル形状)の検査を行う。したがって、作業ステーションS1からS2に移動する間、作業ステーションS2からS3に移動する間、作業ステーションS3から加硫工程に移動する間の少なくとも1つ期間での仮置き時間で所定品質の検査が行われる。すべての期間での仮置き時間で所定品質の検査を行うことも、選択された1つまたは2つの期間での仮置き時間で所定品質の検査を行うこともできる。
【0038】
成形工程の最後の作業ステーションSでの成形作業が終了した後、成形ドラム体2を加硫工程に移動する間に載置装置8に仮置きする場合は、成形ドラム体2の外周面で成形が完了したグリーンタイヤGに対して所定品質の検査が行われることになる。一方、作業ステーションS1とS2との間、または、作業ステーションS2とS3との間で成形ドラム体2を移動する間に載置装置8に仮置きする場合は、成形ドラム体2を次の作業ステーションSに移動させる前に、成形ドラム体2に貼り付けられたタイヤ構成部材Mにより形成されている成形途中のグリーンタイヤGに対して所定品質の検査が行われることになる。
【0039】
そこで、成形ドラム体2が載置装置8に仮置きされると、制御部14は質量計12およびプロファイルセンサ13を稼働させて検査を開始する。成形途中または成形が完了したグリーンタイヤGの質量の検査は即座に完了させることができる。
【0040】
この実施形態では、成形途中または成形が完了したグリーンタイヤGのプロファイル形状を検査する際に、
図7に例示するように、駆動モータ11aにより中心軸11とともに載置台9を回転駆動する。成形ドラム体2の嵌合部5と載置台9のガイド9aとが係合しているので、載置台9が回転することで、成形ドラム体2はドラム軸4aを中心にして回転する。
【0041】
このようにして、成形途中または成形が完了したグリーンタイヤGの外周側の所定位置にプロファイルセンサ13が固定された状態で、ドラム軸4aを中心にして成形ドラム体2を回転させる。これにより、プロファイルセンサ13を用いて、このグリーンタイヤGの周方向全周に渡ってプロファイル形状が取得される。プロファイル形状の検査に要する時間は例えば、1分以内、或いは、30秒以内である。この実施形態では、プロファイル形状の検査を行う際に、プロファイルセンサ13を移動させることなく、載置装置8に仮置きされている成形ドラム体2を回転させればよいので、検査に必要なスペースが小さくて済むメリットがある。
【0042】
図8に例示するプロファイルセンサ13を用いることもできる。このプロファイルセンサ13を備えた製造システム1の実施形態では、載置装置8の中心軸11に円筒状の回転軸13bが外挿されている。この回転軸13bには連結アーム13cの一端が接合されていて、連結アーム13cの他端にはプロファイルセンサ13が接合されている。そして、中心軸11を中心にして回転軸13bを回転駆動する駆動モータ13aが備わっている。
【0043】
この実施形態では、成形途中または成形が完了したグリーンタイヤGのプロファイル形状を検査する際に、制御部14により、
図8に例示するように駆動モータ13aを回転駆動させる。プロファイルセンサ13は、連結アーム13cを介して回転軸13bに連結されているので、回転軸13bが回転することで、プロファイルセンサ13はドラム軸4aを中心にして回転する。
【0044】
このようにして、成形途中または成形が完了したグリーンタイヤGを固定した状態で、プロフィルセンサ13を成形ドラム体2のドラム軸4aを中心にして、成形ドラム体2の外周側を回転移動させる。これによって、プロファイルセンサ13を用いて、このグリーンタイヤGの周方向全周に渡ってプロファイル形状が取得される。この実施形態では、プロファイル形状の検査を行う際に、載置装置8に仮置きされている成形ドラム体2を移動、回転させることがないので、成形ドラム体2に貼り付けられている未加硫ゴムのタイヤ構成部材Mが不用意に変形する不具合が生じ難くなるメリットがある。
【0045】
所定品質の検査結果データは制御部14に入力されて、所定品質に対して予め設定されている許容範囲と比較される。検査結果データが許容範囲内であれば、その所定品質は合格と判断されて、その成形途中または成形が完了したグリーンタイヤGは成形ドラム体2とともに、次の作業ステーションS(または加硫工程)に移動される。一方、検査結果データが許容範囲外であれば、その所定品質は不合格と判断されて、その成形途中または成形が完了したグリーンタイヤGは、次の作業ステーションS(または加硫工程)に移動されずに、修正などの対策が行われる。
【0046】
図9に例示する加硫工程では、成形が完了したグリーンタイヤGが公知の方法で加硫される。加硫装置15に装着された加硫用モールド16の中に、グリーンタイヤGが成形ドラム体2とともに配置される。その後、閉型した加硫用モールド16の中でグリーンタイヤGが加硫されてタイヤTが完成する。この実施形態では空気入りタイヤTが製造されているが、本発明は空気入りタイヤに限らず、その他の種々のタイプのタイヤTを製造する際に適用することができる。
【0047】
上述したように、成形ドラム体2が載置装置8に仮置きされている間に、成形途中または成形が完了したグリーンタイヤGの所定品質の検査を行うことで、仮置き時間を有効に利用できる。そのため、成形ドラム体2を複数の作業ステーションSに順次移動させてグリーンタイヤGを成形する際に、所定品質を把握しつつ効率的にグリーンタイヤGを成形できるので、タイヤTの生産性を向上させるには有利になる。また、より早い段階で成形しているグリーンタイヤGの不具合を把握するにも有利になる。これに伴い、不適切な仕掛かり品が削減されるので、使用材料および作業時間の浪費を抑制することができ、また、タイヤTの品質を向上させるにも有利になる。
【符号の説明】
【0048】
1 製造システム
2 成形ドラム体
3 円筒部
4a ドラム軸
4b 円盤部
4c 連結部
5 嵌合部
6 ロボットアーム
6a アーム部
6b 把持爪
6M 駆動モータ
7 部材供給機
8 載置装置
9 載置台
9a ガイド
10 ベース部
11 中心軸
11a 駆動モータ
12 質量計(検査装置)
13 プロファイルセンサ(検査装置)
13a 駆動モータ
13b 回転軸
13c 連結アーム
14 制御部
15 加硫装置
16 加硫用モールド
M(M1~M5) タイヤ構成部材
G グリーンタイヤ
T 加硫済みタイヤ
S(S1~S3) 作業ステーション
【手続補正書】
【提出日】2023-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形ドラム体を複数の作業ステーションに順次移動させ、それぞれの前記作業ステーションで前記成形ドラム体にタイヤ構成部材を貼り付けることによりグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫するタイヤの製造方法において、
いずれか1つの前記作業ステーションでの成形作業が終了して前記タイヤ構成部材が貼付けられた前記成形ドラム体を載置装置に仮置きし、前記成形ドラム体が前記載置装置に仮置きされている間に、前記成形ドラム体に貼り付けられた前記タイヤ構成部材により形成されている成形途中または成形が完了したグリーンタイヤの所定品質の検査を行うタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記載置装置に仮置きされている前記成形ドラム体を次の前記作業ステーションに移動させる前に、成形途中の前記グリーンタイヤの前記所定品質の検査を行う請求項1にタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記所定品質が、前記グリーンタイヤの質量またはプロファイル形状の少なくとも一方である請求項1または2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記グリーンタイヤのプロファイル形状を検査する際に、プロフィルセンサを前記成形ドラム体のドラム軸を中心にして前記グリーンタイヤの外周側を回転移動させる請求項3に記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記グリーンタイヤのプロファイル形状を検査する際に、プロフィルセンサを前記グリーンタイヤの外周側に配置して、前記成形ドラム体をドラム軸を中心にして回転させる請求項3に記載のタイヤの製造方法。
【請求項6】
複数の作業ステーションを順次移動する成形ドラム体と、それぞれの前記作業ステーションに配置されて前記成形ドラム体にタイヤ構成部材を供給する部材供給機と、それぞれの作業ステーションでの成形作業を経て成形されたグリーンタイヤが加硫される加硫装置とを有するタイヤの製造システムにおいて、
いずれか1つの前記作業ステーションでの成形作業が終了して前記タイヤ構成部材が貼付けられた前記成形ドラム体が仮置きされる載置装置と、検査装置とを有し、前記載置装置に仮置きされている前記成形ドラム体に貼り付けられた前記タイヤ構成部材により形成されている成形途中または成形が完了したグリーンタイヤの所定品質が、前記検査装置により検査される構成にしたタイヤの製造システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明のタイヤの製造システムは、複数の作業ステーションを順次移動する成形ドラム体と、それぞれの前記作業ステーションに配置されて前記成形ドラム体にタイヤ構成部材を供給する部材供給機と、それぞれの作業ステーションでの成形作業を経て成形されたグリーンタイヤが加硫される加硫装置とを有するタイヤの製造システムにおいて、いずれか1つの前記作業ステーションでの成形作業が終了して前記タイヤ構成部材が貼付けられた前記成形ドラム体が仮置きされる載置装置と、検査装置とを有し、前記載置装置に仮置きされている前記成形ドラム体に貼り付けられた前記タイヤ構成部材により形成されている成形途中または成形が完了したグリーンタイヤの所定品質が、前記検査装置により検査される構成にしたことを特徴とする。