(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151934
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20231005BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20231005BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20231005BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
H02G3/04 081
H05K9/00 L
H01B7/00 301
B60R16/02 620A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061817
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】濱本 直也
【テーマコード(参考)】
5E321
5G309
5G357
【Fターム(参考)】
5E321AA14
5E321AA24
5E321AA41
5E321BB41
5E321BB44
5E321CC06
5E321GG07
5E321GH07
5G309AA01
5G309AA09
5G357DA02
5G357DA05
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD05
5G357DD10
5G357DE08
5G357DG01
(57)【要約】
【課題】電磁波の放射を更に抑制可能としたワイヤハーネスを提供すること。
【解決手段】ワイヤハーネス(11)は、電線(20)と、電線の延在方向に沿って電線の外周を覆う金属編組部材(21)と、電線、及び金属編組部材の両方が貫通する金属パイプ(22)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線の延在方向に沿って前記電線の外周を覆う金属編組部材と、
前記電線、及び前記金属編組部材の両方が貫通する金属パイプと、を備える、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記金属編組部材における前記電線の延在方向の長さは、前記金属パイプにおける前記電線の延在方向の長さよりも長い、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記金属編組部材における前記電線の延在方向の端部は、前記金属パイプにおける前記電線の延在方向の端部で折り返されて前記金属パイプの外周面に接続される折り返し部を有する、
請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記金属パイプの外周面は、高圧電線用であることを示す塗装が施された塗装部と、金属が露出して前記折り返し部が接続される非塗装部と、を有する、
請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記金属編組部材及び前記金属パイプの少なくとも一方は、鉄系の金属材料にて構成されている、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記金属編組部材及び前記金属パイプは、互いに異なる金属材料にて構成されている、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記金属編組部材は、銅系またはアルミニウム系の金属材料にて構成され、
前記金属パイプは、鉄系の金属材料にて構成されている、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記金属編組部材は、第1金属編組部材であり、
前記電線の延在方向に沿って前記第1金属編組部材とは異なる領域の前記電線の外周を覆う第2金属編組部材と、
前記電線、及び前記第2金属編組部材の両方が貫通する外装部材と、を備える、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
前記第1金属編組部材と前記第2金属編組部材とを接続しつつ固定する固定部材を備える、
請求項8に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
前記第1金属編組部材における前記電線の延在方向の長さは、前記金属パイプにおける前記電線の延在方向の長さよりも長く、
前記第1金属編組部材における前記電線の延在方向の端部は、前記金属パイプにおける前記電線の延在方向の端部で折り返されて前記金属パイプの外周面に接続される折り返し部を有し、
前記第2金属編組部材における前記電線の延在方向の端部は、前記折り返し部を覆う被覆部を有し、
前記固定部材は、前記金属パイプを土台にしつつ当該金属パイプと前記折り返し部と前記被覆部とを囲うように設けられて、かしめ固定されるかしめ部材である、
請求項9に記載のワイヤハーネス。
【請求項11】
前記金属パイプにおいて前記折り返し部が接触される部位、前記折り返し部、前記被覆部、及び前記かしめ部材をまとめて覆う防水部材を備える、
請求項10に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスとしては、電線と、該電線の延在方向に沿った第1範囲で電線の外周を覆う金属編組部材と、該金属編組部材の端部に連結されつつ電線の延在方向に沿った第2範囲で電線の外周を覆う金属パイプとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。このようなワイヤハーネスでは、金属パイプによって電線の経路が規制されるとともに、金属編組部材によって電線の屈曲性が確保される。さらに、このようなワイヤハーネスでは、電線の延在方向に沿って連結される金属編組部材と金属パイプとの協働によって、電線の延在方向に長い範囲で電磁波の放射が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両軽量化の観点から例えばボディを鉄製からカーボン製へ変更する試みがある。この場合、ボディで電磁波を吸収することが困難になるため、ワイヤハーネス単体で電磁波の放射を更に抑制することが求められる。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電磁波の放射を更に抑制可能としたワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスは、電線と、前記電線の延在方向に沿って前記電線の外周を覆う金属編組部材と、前記電線、及び前記金属編組部材の両方が貫通する金属パイプと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のワイヤハーネスによれば、電磁波の放射を更に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態における車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態におけるワイヤハーネスの一部平面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態におけるワイヤハーネスの製造過程の一部平面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態におけるワイヤハーネスの製造過程の一部平面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態におけるワイヤハーネスの製造過程の一部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のワイヤハーネスは、
[1]電線と、前記電線の延在方向に沿って前記電線の外周を覆う金属編組部材と、前記電線、及び前記金属編組部材の両方が貫通する金属パイプと、を備える。
【0010】
同構成によれば、電線は、金属編組部材と金属パイプとによって二重で覆われることになる。よって、電線が金属編組部材のみで覆われた場合や金属パイプのみで覆われた場合に比べて、電磁波の放射を更に抑制できる。
【0011】
[2]前記金属編組部材における前記電線の延在方向の長さは、前記金属パイプにおける前記電線の延在方向の長さよりも長いことが好ましい。
同構成によれば、金属パイプ内における電線はその延在方向の全ての領域で金属編組部材によっても覆われるため、その全ての領域で電磁波の放射を更に抑制できる。また、金属編組部材は、金属パイプの外部まで延びることになるため、他の部材との接続が容易となる。
【0012】
[3]前記金属編組部材における前記電線の延在方向の端部は、前記金属パイプにおける前記電線の延在方向の端部で折り返されて前記金属パイプの外周面に接続される折り返し部を有することが好ましい。
【0013】
同構成によれば、金属編組部材の折り返し部によって、金属編組部材を金属パイプに容易に接続することができる。
[4]前記金属パイプの外周面は、高圧電線用であることを示す塗装が施された塗装部と、金属が露出して前記折り返し部が接続される非塗装部と、を有することが好ましい。
【0014】
同構成によれば、塗装部によって高圧電線用であることが示されるとともに、非塗装部によって金属編組部材を金属パイプに容易に接続することができる。
[5]前記金属編組部材及び前記金属パイプの少なくとも一方は、鉄系の金属材料にて構成されていることが好ましい。
【0015】
同構成によれば、ワイヤハーネスが設けられる車両のボディの材料が一般的な鉄系の金属材料から他の材料に置き換わった場合に懸念される周波数帯の電磁波の放射を抑制できる。すなわち、車両のボディの材料が一般的な鉄系の金属材料から他の材料に置き換わった場合では、ボディで吸収されていた周波数帯の電磁波が吸収され難くなる虞があり、その周波数帯の電磁波の悪影響が懸念される。これに対して、その周波数帯の電磁波の放射をワイヤハーネスで抑えることができる。
【0016】
[6]前記金属編組部材及び前記金属パイプは、互いに異なる金属材料にて構成されていることが好ましい。
同構成によれば、幅広い周波数帯の電磁波の放射を抑制できる。
【0017】
[7]前記金属編組部材は、銅系またはアルミニウム系の金属材料にて構成され、前記金属パイプは、鉄系の金属材料にて構成されていることが好ましい。
同構成によれば、幅広い周波数帯の電磁波の放射を抑制できる。また、ワイヤハーネスが設けられる車両のボディの材料が一般的な鉄系の金属材料から他の材料に置き換わった場合に懸念される周波数帯の電磁波の放射を抑制できる。すなわち、車両のボディの材料が一般的な鉄系の金属材料から他の材料に置き換わった場合では、ボディで吸収されていた周波数帯の電磁波が吸収され難くなる虞があり、その周波数帯の電磁波の悪影響が懸念される。これに対して、その周波数帯の電磁波の放射をワイヤハーネスで抑えることができる。
【0018】
[8]前記金属編組部材は、第1金属編組部材であり、前記電線の延在方向に沿って前記第1金属編組部材とは異なる領域の前記電線の外周を覆う第2金属編組部材と、前記電線、及び前記第2金属編組部材の両方が貫通する外装部材と、を備えることが好ましい。
【0019】
同構成によれば、電線は、第2金属編組部材によって覆われた領域で、電磁波の放射を抑制できる。
[9]前記第1金属編組部材と前記第2金属編組部材とを接続しつつ固定する固定部材を備えることが好ましい。
【0020】
同構成によれば、溶接等の煩雑な作業を行うことなく、第1金属編組部材と第2金属編組部材とを容易に接続することができる。
[10]前記第1金属編組部材における前記電線の延在方向の長さは、前記金属パイプにおける前記電線の延在方向の長さよりも長く、前記第1金属編組部材における前記電線の延在方向の端部は、前記金属パイプにおける前記電線の延在方向の端部で折り返されて前記金属パイプの外周面に接続される折り返し部を有し、前記第2金属編組部材における前記電線の延在方向の端部は、前記折り返し部を覆う被覆部を有し、前記固定部材は、前記金属パイプを土台にしつつ当該金属パイプと前記折り返し部と前記被覆部とを囲うように設けられて、かしめ固定されるかしめ部材であることが好ましい。
【0021】
同構成によれば、金属パイプ内における電線はその延在方向の全ての領域で第1金属編組部材によっても覆われるため、その全ての領域で電磁波の放射を更に抑制できる。そして、第1金属編組部材の折り返し部と、第2金属編組部材の被覆部とは、金属パイプを土台として部材がかしめ固定されることによって、一括して金属パイプと接続される。これにより、第1金属編組部材と第2金属編組部材と金属パイプとを2箇所以上で接続する構成に比べて、製造工数を低減できるとともに、簡素な構成とすることができる。
【0022】
[11]前記金属パイプにおいて前記折り返し部が接触される部位、前記折り返し部、前記被覆部、及び前記かしめ部材をまとめて覆う防水部材を備えることが好ましい。
同構成によれば、防水部材によって、金属パイプにおいて折り返し部が接触される部位、折り返し部、被覆部、及びかしめ部材が被水することをまとめて防止できる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」や「直交」や「真円」は、厳密に平行や直交や真円の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交や真円の場合も含まれる。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
(ワイヤハーネス10の概略構成)
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vに搭載されるものである。ワイヤハーネス10は、2個以上の車載機器同士を電気的に接続する。車載機器は、車両Vに搭載された電気機器である。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの前部に設置されたインバータM1と、車両Vの後方に設置された高圧バッテリM2とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの前後方向に延びるように長尺状に形成されている。ワイヤハーネス10は、例えば、ワイヤハーネス10の延在方向の中間部分が車両Vの床下などの車室外を通るように車両Vに配索されている。
【0025】
インバータM1は、例えば、車両走行の動力源となる図示しない車輪駆動用のモータと接続される。インバータM1は、高圧バッテリM2の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリM2は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0026】
(ワイヤハーネス10の構成)
ワイヤハーネス10は、電線20を備える。ワイヤハーネス10は、電線20の両端部に取り付けられたコネクタC1,C2を備える。電線20の延在方向の一端部はコネクタC1を介してインバータM1に接続されている。電線20の延在方向の他端部はコネクタC2を介して高圧バッテリM2に接続されている。
【0027】
また、
図2に示すように、ワイヤハーネス10は、金属編組部材としての第1金属編組部材21と、金属パイプ22と、第2金属編組部材23と、外装部材24と、固定部材としてのかしめ部材25と、防水部材26とを備える。
【0028】
(電線20の構成)
図3に示すように、電線20は、芯線20aと、該芯線20aの外周を覆う絶縁被覆20bとを有している。本実施形態のワイヤハーネス10は、2本の電線20を有している。電線20は、高電圧及び大電流に対応可能な高圧電線である。
【0029】
(第1金属編組部材21の構成)
第1金属編組部材21は、電線20の延在方向に沿って電線20の外周を覆っている。本実施形態の第1金属編組部材21は、2本の電線20をまとめて覆っている。第1金属編組部材21は、2本の電線20からの電磁波の放射を一括して抑える。本実施形態の第1金属編組部材21は、銅を主成分とする銅系の金属材料にて構成されている。第1金属編組部材21は、銅系の金属材料にて構成された素線が筒状に編み込まれた編組線である。なお、第1金属編組部材21は、折り返したり、まとめたり、径を広げたり、変形させることが可能であって、各図では模式的に図示している。
【0030】
(金属パイプ22の構成)
金属パイプ22は、電線20、及び第1金属編組部材21の両方が貫通するものである。言い換えると、金属パイプ22は、電線20を覆っている第1金属編組部材21の外周を更に覆っている。本実施形態の金属パイプ22は、真円の円筒状に形成されている。金属パイプ22は、2本の電線20からの電磁波の放射を一括して抑える。金属パイプ22は、第1金属編組部材21とは異なる金属材料にて構成されている。本実施形態の金属パイプ22は、鉄を主成分とする鉄系の金属材料にて構成されている。
【0031】
また、
図2に示すように、金属パイプ22の外周面は、高圧電線用であることを示す塗装が施された塗装部22aと、塗装が施されずに金属が露出している非塗装部22bとを有する。非塗装部22bは、金属パイプ22の延在方向の端部に設けられている。なお、金属パイプ22の延在方向と電線20の延在方向と第1金属編組部材21の延在方向は同じ方向である。また、本実施形態の塗装部22aにおける塗装の色はオレンジ色である。また、本実施形態の金属パイプ22は、例えば、車両Vの床下などを通るように配置されるものであり、電線20の垂れ下がりを抑える等、電線20の経路を規制するものである。
【0032】
図4に示すように、第1金属編組部材21の長さは、金属パイプ22の長さよりも長い。なお、
図4は、ワイヤハーネス10の製造過程における第1金属編組部材21等を図示している。また、
図4では図示していないが、本実施形態の第1金属編組部材21は、金属パイプ22の両端部で金属パイプ22の延在方向の外側に突出している。
【0033】
そして、
図5に示すように、第1金属編組部材21における延在方向の端部は、金属パイプ22における延在方向の端部で折り返されて金属パイプ22の外周面に接続される折り返し部21aを有する。なお、
図5は、
図4の後のワイヤハーネス10の製造過程における第1金属編組部材21等を図示している。折り返し部21aは、金属パイプ22の非塗装部22bに接続される。
【0034】
(第2金属編組部材23の構成)
図2に示すように、第2金属編組部材23は、電線20の延在方向に沿って第1金属編組部材21とは異なる領域の電線20の外周を覆っている。なお、第1金属編組部材21が電線20を覆っている第1領域R1と、第2金属編組部材23が電線20を覆っている第2領域R2とは、一部で重なっている。本実施形態の第2金属編組部材23は、2本の電線20をまとめて覆っている。第2金属編組部材23は、2本の電線20からの電磁波の放射を一括して抑える。本実施形態の第2金属編組部材23は、銅を主成分とする銅系の金属材料にて構成されている。第2金属編組部材23は、銅系の金属材料にて構成された素線が筒状に編み込まれた編組線である。なお、第2金属編組部材23は、折り返したり、まとめたり、径を広げたり、変形させることが可能であって、各図では模式的に図示している。
【0035】
(外装部材24の構成)
外装部材24は、電線20、及び第2金属編組部材23の両方が貫通するものである。言い換えると、外装部材24は、電線20を覆っている第2金属編組部材23の外周を更に覆っている。本実施形態の外装部材24は、可撓性を有し容易に屈曲可能なコルゲートチューブである。すなわち、外装部材24は、樹脂製であり、延在方向において径が大小繰り返す蛇腹形状をなしている。本実施形態の外装部材24は、例えば、車両Vの床下から車両Vの上方に向かって屈曲される部位等に配置されるものである。
【0036】
図4に示すように、第2金属編組部材23の長さは、外装部材24の長さよりも長い。なお、
図4では図示していないが、本実施形態の第2金属編組部材23は、外装部材24の両端部で外装部材24の延在方向の外側に突出している。
【0037】
そして、
図6に示すように、第2金属編組部材23における延在方向の端部は、折り返し部21aを覆う被覆部23aを有する。被覆部23aは、外装部材24の外側で径が広げられて折り返し部21aを覆うように配置されている。なお、
図6は、
図5の後のワイヤハーネス10の製造過程における第1金属編組部材21及び第2金属編組部材23等を図示している。
【0038】
(かしめ部材25の構成)
図2に示すように、かしめ部材25は、第1金属編組部材21と第2金属編組部材23とを接続しつつ固定する。詳しくは、かしめ部材25は、金属リングからなる。かしめ部材25は、金属パイプ22を土台にしつつ金属パイプ22と折り返し部21aと被覆部23aとを囲うように設けられて、かしめ固定されるものである。すなわち、折り返し部21aと被覆部23aとは、金属パイプ22とかしめ部材25との間で挟持されるとともに、金属パイプ22と電気的に接続される。なお、第1領域R1と第2領域R2とが重なっている領域は、被覆部23aが折り返し部21aを覆っている領域である。
【0039】
(防水部材26の構成)
防水部材26は、金属パイプ22において折り返し部21aが接触される部位、すなわち非塗装部22b、折り返し部21a、被覆部23a、及びかしめ部材25をまとめて覆うものである。本実施形態の防水部材26は、ゴム材等の弾性部材にて構成され、筒状に形成されている。防水部材26は、延在方向の一方の端部26aが金属パイプ22の塗装部22aの外周を覆うように配置され、延在方向の他方の端部26bが外装部材24の外周を覆うように配置される。そして、防水部材26は、一方の端部26aの外周が樹脂製の結束バンド27にて締め付けられることで金属パイプ22の塗装部22aの外周に密着して固定されている。また、防水部材26は、他方の端部26bの外周が樹脂製の結束バンド28にて締め付けられることで外装部材24の外周に密着して固定されている。
【0040】
次に、上記のように構成されたワイヤハーネス10の作用について説明する。
金属パイプ22と対応した部位の電線20は、金属パイプ22及び第1金属編組部材21に覆われていることで電磁波の放射が抑えられる。また、外装部材24と対応した部位の電線20は第2金属編組部材23に覆われていることで電磁波の放射が抑えられる。
【0041】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)電線20は、第1金属編組部材21と金属パイプ22とによって二重で覆われている。よって、例えば、電線20が第1金属編組部材21のみで覆われた場合や金属パイプ22のみで覆われた場合に比べて、電磁波の放射を更に抑制できる。
【0042】
(2)第1金属編組部材21における電線20の延在方向の長さは、金属パイプ22における電線20の延在方向の長さよりも長い。これにより、金属パイプ22内における電線20はその延在方向の全ての領域で第1金属編組部材21によっても覆われるため、その全ての領域で電磁波の放射を更に抑制できる。また、第1金属編組部材21は、金属パイプ22の外部まで延びることになるため、例えば、他の部材との接続が容易となる。
【0043】
(3)第1金属編組部材21における電線20の延在方向の端部は、金属パイプ22における電線20の延在方向の端部で折り返されて金属パイプ22の外周面に接続される折り返し部21aを有する。これにより、折り返し部21aによって、第1金属編組部材21を金属パイプ22に容易に接続することができる。
【0044】
(4)金属パイプ22の外周面は、高圧電線用であることを示す塗装が施された塗装部22aと、金属が露出して折り返し部21aが接続される非塗装部22bとを有する。これにより、塗装部22aによって高圧電線用であることが示されるとともに、非塗装部22bによって第1金属編組部材21の折り返し部21aを金属パイプ22に容易に接続することができる。
【0045】
(5)第1金属編組部材21は銅系の金属材料にて構成され、金属パイプ22は鉄系の金属材料にて構成されている。このように、第1金属編組部材21及び金属パイプ22は、互いに異なる金属材料にて構成されていることから、幅広い周波数帯の電磁波の放射を抑制できる。また、例えば、ワイヤハーネス10が設けられる車両Vのボディの材料が一般的な鉄系の金属材料からカーボンやアルミニウム系等の材料に置き換わった場合に懸念される周波数帯の電磁波の放射を抑制できる。すなわち、車両Vのボディの材料が一般的な鉄系の金属材料からカーボンやアルミニウム系等の材料に置き換わった場合では、ボディで吸収されていた周波数帯の電磁波が吸収され難くなる虞があり、その周波数帯の電磁波の悪影響が懸念される。これに対して、その周波数帯の電磁波の放射を鉄系の金属材料にて構成された金属パイプ22で抑えることができる。
【0046】
(6)電線20は、第2金属編組部材23によって覆われた領域で、電磁波の放射を抑制できる。
(7)第1金属編組部材21と第2金属編組部材23とを接続しつつ固定するかしめ部材25を備えるため、例えば、溶接等の煩雑な作業を行うことなく、第1金属編組部材21と第2金属編組部材23とを容易に接続することができる。
【0047】
(8)第1金属編組部材21の折り返し部21aと、第2金属編組部材23の被覆部23aとは、金属パイプ22を土台としてかしめ部材25がかしめ固定されることによって、一括して金属パイプ22と接続される。これにより、例えば、第1金属編組部材21と第2金属編組部材23と金属パイプ22とを2箇所以上で接続する構成に比べて、製造工数を低減できるとともに、簡素な構成とすることができる。
【0048】
(9)防水部材26によって、金属パイプ22において折り返し部21aが接触される部位、折り返し部21a、被覆部23a、及びかしめ部材25が被水することをまとめて防止できる。そして、本実施形態では、第1金属編組部材21と金属パイプ22とは、互いに異なる金属材料にて構成されているが、それらの被水することが防止されることで、ガルバニック腐食が防止される。
【0049】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、第1金属編組部材21の延在方向の長さは、金属パイプ22の延在方向の長さよりも長く、第1金属編組部材21の端部は折り返されて金属パイプ22の外周面に接続される折り返し部21aを有するとしたが、これに限定されない。
【0050】
例えば、第1金属編組部材21の延在方向の長さは、金属パイプ22の延在方向の長さよりも短くてもよい。また、例えば、第1金属編組部材21の端部は折り返し部21aを有していなくてもよい。例えば、第1金属編組部材21は、金属パイプ22の内周面に接続される構成であってもよい。
【0051】
・上記実施形態では、金属パイプ22の外周面は、塗装部22aと非塗装部22bとを有するとしたが、これに限定されない。例えば、金属パイプ22は、塗装部22aを有していない構成としてもよい。また、例えば、第1金属編組部材21は、金属パイプ22の内周面に接続されるとともに、金属パイプ22の外周面は、非塗装部22bを有さずに全てが塗装部22aであってもよい。
【0052】
・上記実施形態では、第1金属編組部材21は銅系の金属材料にて構成され、金属パイプ22は鉄系の金属材料にて構成されているとしたが、これらは他の金属材料にて構成してもよい。例えば、第1金属編組部材21は、アルミニウムを主成分とするアルミニウム系の金属材料にて構成されていてもよい。また、例えば、第1金属編組部材21は、鉄系の金属材料にて構成されていてもよい。また、例えば、金属パイプ22は、アルミニウム系の金属材料にて構成されていてもよい。また、例えば、金属パイプ22は、銅系の金属材料にて構成されていてもよい。また、第1金属編組部材21及び金属パイプ22を構成する金属材料の組み合わせは、どのように変更してもよい。
【0053】
・上記実施形態では、ワイヤハーネス10は、第2金属編組部材23を備える構成としたが、これに限定されず、第2金属編組部材23を有していない構成としてもよい。また、上記実施形態では、第2金属編組部材23は銅系の金属材料にて構成されるとしたが、これに限定されず、他の金属材料にて構成してもよい。例えば、第2金属編組部材23は、アルミニウム系の金属材料にて構成されていてもよい。また、例えば、第2金属編組部材23は、鉄系の金属材料にて構成されていてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、ワイヤハーネス10は、外装部材24を備える構成としたが、これに限定されず、外装部材24を有していない構成としてもよい。また、上記実施形態では、外装部材24は、コルゲートチューブであるとしたが、これに限定されず、他の外装部材としてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、第1金属編組部材21と第2金属編組部材23とを接続しつつ固定する固定部材としてのかしめ部材25を備えるとしたが、これに限定されない。例えば、第1金属編組部材21と第2金属編組部材23とを接続しつつ固定する固定部材として、C字形状のCリングや金属製の結束バンドを用いてもよい。また、例えば、かしめ部材25等の固定部材を備えず、第1金属編組部材21と第2金属編組部材23とを溶接にて接続しつつ固定してもよい。
【0056】
・上記実施形態では、かしめ部材25は、金属パイプ22を土台としてかしめ固定されるとしたが、これに限定されず、例えば、金属パイプ22とは別体の下敷きリングを土台としてかしめ固定される構成としてもよい。
【0057】
・上記実施形態では、ワイヤハーネス10は、防水部材26を備えるとしたが、これに限定されず、防水部材26を備えていない構成としてもよい。また、防水部材26は、金属パイプ22において折り返し部21aが接触される部位、折り返し部21a、被覆部23a、及びかしめ部材25が被水することをまとめて防止できれば、例えば、収縮チューブとする等、他の構成に変更してもよい。
【0058】
・上記実施形態では、ワイヤハーネス10は、2本の電線20を有しているとしたが、これに限定されず、ワイヤハーネス10が有する電線20の数は1本や3本以上であってもよい。
【0059】
・上記実施形態では、第1金属編組部材21は、2本の電線20をまとめて覆っているとしたが、これに限定されず、複数の電線20の各々を単独で覆うようにしてもよい。すなわち、ワイヤハーネス10は、電線20の数に応じて、複数の第1金属編組部材21を有していてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、第2金属編組部材23は、2本の電線20をまとめて覆っているとしたが、これに限定されず、複数の電線20の各々を単独で覆うようにしてもよい。すなわち、ワイヤハーネス10は、電線20の数に応じて、複数の第2金属編組部材23を有していてもよい。
【0061】
・上記実施形態では、電線20を高圧電線としたが、これに限定されず、例えば、電線20を低圧電線としてもよい。
・上記実施形態では、金属パイプ22は、車両Vの床下などを通るように配置されるものであるとしたが、これに限定されず、車両Vの他の部位に配置されるものとしてもよい。
【0062】
本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0063】
10 ワイヤハーネス
20 電線
20a 芯線
20b 絶縁被覆
21 第1金属編組部材(金属編組部材)
21a 折り返し部
22 金属パイプ
22a 塗装部
22b 非塗装部
23 第2金属編組部材
23a 被覆部
24 外装部材
25 かしめ部材(固定部材)
26 防水部材
26a 端部
26b 端部
27 結束バンド
28 結束バンド
C1 コネクタ
C2 コネクタ
M1 インバータ
M2 高圧バッテリ
R1 第1領域
R2 第2領域
V 車両