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特開2023-151955バッターミックス、バッター液および衣付き食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151955
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】バッターミックス、バッター液および衣付き食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20231005BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20231005BHJP
   A23L 13/50 20160101ALI20231005BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20231005BHJP
   A23L 19/12 20160101ALN20231005BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L13/50
A23L13/00 A
A23L19/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061841
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 采香
【テーマコード(参考)】
4B016
4B025
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B016LE02
4B016LG06
4B016LK05
4B016LK09
4B016LK12
4B016LP05
4B016LP08
4B016LP13
4B016LT09
4B025LB04
4B025LD03
4B025LG04
4B025LG24
4B025LG28
4B025LG43
4B025LK01
4B025LP01
4B025LP06
4B025LP07
4B025LP15
4B025LT09
4B035LC03
4B035LE01
4B035LG09
4B035LG21
4B035LG32
4B035LG35
4B035LG42
4B035LK01
4B035LP01
4B035LP07
4B035LP24
4B035LP27
4B035LP43
4B035LP59
4B042AC05
4B042AD18
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK05
4B042AK08
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK12
4B042AK17
4B042AP05
4B042AP18
4B042AP19
4B042AP30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】加熱調理後に時間が経過しても衣のサクミを維持することができる衣付き食品およびその衣材を提供する。
【解決手段】(a)生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の馬鈴薯澱粉と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを、0MPa以上20MPa以下の圧力条件下にて加熱処理してなる食品用澱粉組成物であって、澱粉-脂質複合体を含む前記食品用澱粉組成物を含む、バッターミックス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の馬鈴薯澱粉と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを、0MPa以上20MPa以下の圧力条件下にて加熱処理してなる食品用澱粉組成物であって、澱粉-脂質複合体を含む前記食品用澱粉組成物
を含む、バッターミックス。
【請求項2】
前記成分(a)において、前記馬鈴薯澱粉100質量部に対する前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの質量比率が、0.01質量部以上4.8質量部以下である、請求項1に記載のバッターミックス。
【請求項3】
前記成分(a)において、前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉が、前記生馬鈴薯澱粉に、ヒドロキシプロピル化およびエステル化からなる群から選ばれる1種または2種の化工処理が施されてなる化工澱粉である、請求項1または2に記載のバッターミックス。
【請求項4】
前記成分(a)において、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が1以上13以下であり、かつ平均重合度が2以上9以下である、請求項1または2に記載のバッターミックス。
【請求項5】
(a)生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の馬鈴薯澱粉と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを、0MPa以上20MPa以下の圧力条件下にて加熱処理してなる食品用澱粉組成物であって、澱粉-脂質複合体を含む前記食品用澱粉組成物
を含むバッターミックスと、水とを含む、バッター液。
【請求項6】
請求項5に記載のバッター液を具材に付着させる工程(1)と、その後、加熱調理する工程(2)とを含む、衣付き食品の製造方法。
【請求項7】
前記加熱調理が、フライまたはノンフライによる加熱調理である、請求項6に記載の衣付き食品の製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載のバッター液が加熱調理されてなる衣を有する、衣付き食品。
【請求項9】
前記加熱調理が、フライまたはノンフライによる加熱調理である、請求項8に記載の衣付き食品。
【請求項10】
生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の馬鈴薯澱粉と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを、0MPa以上20MPa以下の圧力条件下にて加熱処理してなる食品用澱粉組成物であって、澱粉-脂質複合体を含む前記食品用澱粉組成物を有効成分として含む、衣付き食品用食感改良剤。
【請求項11】
請求項10に記載の衣付き食品用食感改良剤を含むバッター液を具材に付着させる工程(1)と、その後、加熱調理する工程(2)とを含む、衣付き食品の衣のサクミを維持する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッターミックス、バッター液および衣付き食品に関する。また、本発明は、衣付き食品用食感改良剤および衣付き食品の衣のサクミを維持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらやから揚げなどの衣付き食品は、衣のサクサクとした食感(以下、サクミという)が魅力の一つである。他方、衣付き食品は調理や後片付けに手間がかかることから、近年、家庭での調理は敬遠される傾向にあり、常温または加温した状態で販売されている調理済み品を購入する人が増えてきた。このような状況において、衣付き食品の美味しさを長持ちさせるために、衣のサクミを長時間維持することは重要な課題となってきている。
従来、衣付き食品の衣材としては、グルテンの少ない小麦粉や片栗粉が主体として用いられてきたが、衣のサクミを長時間維持することは難しかった。衣材に化工澱粉を用いることも提案されているが、化工澱粉を衣材として用いた場合でも、衣のサクミを長時間維持するという点では、改良の余地があった。
特許文献1では、具材に、(i)油脂、(ii)第1のブレダー、(iii)バッター液、及び(iv)第2のブレダーを順に付着させ、衣材を幾層にも重ねて油調することにより、油調から時間が経過しても衣にサクミがあり、ガミーな感じのない良好な食感を有する衣揚げ食品が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6960563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様な状況下、加熱調理後に時間が経過しても衣のサクミを維持することができる衣付き食品およびその衣材を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示すバッターミックス、バッター液、衣付き食品、衣付き食品の製造方法、衣付き食品用食感改良剤および衣付き食品の衣のサクミを維持する方法に関するものである。
[1](a)生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の馬鈴薯澱粉と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを、0MPa以上20MPa以下の圧力条件下にて加熱処理してなる食品用澱粉組成物であって、澱粉-脂質複合体を含む前記食品用澱粉組成物
を含む、バッターミックス。
[2]前記成分(a)において、前記馬鈴薯澱粉100質量部に対する前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの質量比率が、0.01質量部以上4.8質量部以下である、前記[1]に記載のバッターミックス。
[3]前記成分(a)において、前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉が、前記生馬鈴薯澱粉に、ヒドロキシプロピル化およびエステル化からなる群から選ばれる1種または2種の化工処理が施されてなる化工澱粉である、前記[1]または[2]に記載のバッターミックス。
[4]前記成分(a)において、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が1以上13以下であり、かつ平均重合度が2以上9以下である、前記[1]または[2]に記載のバッターミックス。
[5](a)生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の馬鈴薯澱粉と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを、0MPa以上20MPa以下の圧力条件下にて加熱処理してなる食品用澱粉組成物であって、澱粉-脂質複合体を含む前記食品用澱粉組成物
を含むバッターミックスと、水とを含む、バッター液。
[6]前記[5]に記載のバッター液を具材に付着させる工程(1)と、その後、加熱調理する工程(2)とを含む、衣付き食品の製造方法。
[7]前記加熱調理が、フライまたはノンフライによる加熱調理である、前記[6]に記載の衣付き食品の製造方法。
[8]前記[5]に記載のバッター液が加熱調理されてなる衣を有する、衣付き食品。
[9]前記加熱調理が、フライまたはノンフライによる加熱調理である、前記[8]に記載の衣付き食品。
[10]生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の馬鈴薯澱粉と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを、0MPa以上20MPa以下の圧力条件下にて加熱処理してなる食品用澱粉組成物であって、澱粉-脂質複合体を含む前記食品用澱粉組成物を有効成分として含む、衣付き食品用食感改良剤。
[11]前記[10]に記載の衣付き食品用食感改良剤を含むバッター液を具材に付着させる工程(1)と、その後、加熱調理する工程(2)とを含む、衣付き食品の衣のサクミを維持する方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のバッターミックスを衣材として用いることにより、加熱調理後に時間が経過しても衣のサクミを維持した衣付き食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の各実施態様についてより具体的に説明する。
【0008】
1.バッターミックス
本発明のバッターミックスは、(a)生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の馬鈴薯澱粉と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを、0MPa以上20MPa以下の圧力条件下にて加熱処理してなる食品用澱粉組成物であって、澱粉-脂質複合体を含む前記食品用澱粉組成物(以下、成分(a)ともいう)を含むことを特徴とする。前記食品用澱粉組成物を含むバッターミックスを衣材として用いることで、加熱調理後に常温または加温した状態で保管するなどして時間が経過しても衣のサクミを維持した衣付き食品を提供することができる。以下、各成分および配合量等について詳しく説明する。
【0009】
(1)食品用澱粉組成物
本発明のバッターミックスに用いられる食品用澱粉組成物は、生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種以上と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを、0MPa以上20MPa以下の圧力条件下にて加熱処理してなる食品用澱粉組成物であって、澱粉-脂質複合体を含むことを特徴とする。なお、圧力とはゲージ圧力を意味する。
【0010】
ここで「澱粉-脂質複合体」とは、生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種以上と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとが相互作用して形成されている複合体を意味する。その構造を具体的に特定することは容易でなく、未だ解明されていない部分が多いが、例えば、生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種以上の澱粉中のアミロース分子のらせん構造に、ポリグリセリン脂肪酸エステルが包摂されていると考えられる。あるいは、前記アミロース分子のらせん構造の表面にポリグリセリン脂肪酸エステルが付着している可能性もある。あるいはまた、前記アミロース分子以外の部分にポリグリセリン脂肪酸エステルが相互作用している可能性もある。なお、前記複合体において、前記澱粉は、澱粉鎖が切断されて低分子化していてもよく、または澱粉鎖が重合して高分子化していてもよく、あるいはその両方を含んでいてもよい。
【0011】
前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉としては、前記生馬鈴薯澱粉に、架橋、エーテル化およびモノエステル化からなる群から選ばれる1種以上の化工処理が施されてなる化工澱粉であることが好ましい。前記化工処理としては、例えば、リン酸架橋、アジピン酸架橋等の架橋;ヒドロキシプロピル化等のエーテル化;アセチル化、リン酸モノエステル化等のモノエステル化;等の1種または2種以上が挙げられる。具体的に、前記化工澱粉としては、ヒドロキシプロピル化馬鈴薯澱粉、リン酸架橋馬鈴薯澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉が好ましく、ヒドロキシプロピル化馬鈴薯澱粉またはリン酸架橋馬鈴薯澱粉が特に好ましい。
【0012】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸は特に限定されないが、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびベヘニン酸から選ばれる1種または2種以上であることが好ましく、パルミチン酸およびステアリン酸からなる群から選ばれる1種または2種であることがより好ましい。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、HLB値が1以上13以下であり、かつ平均重合度が2以上9以下であるものが好ましい。ここで、HLB値は1以上11以下であることがより好ましく、3以上10以下であることがさらに好ましく、平均重合度は2以上7以下であるものがより好ましく、2以上5以下であるものがさらに好ましく、2以上4以下であるものがさらにより好ましく、2以上3以下であるものが特に好ましい。なお、本明細書において、ポリグリセリンの平均重合度は、水酸基価から算出する方法、あるいはガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析法または液体クロマトグラフ質量分析法等からポリグリセリンの組成を決定し平均重合度を算出する方法で測定される。
【0013】
なお、本明細書において、数値範囲を示したときは、上限値および下限値を適宜組み合わせることができ、それによって得られる数値範囲も開示されているものとする。
【0014】
前記生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種以上の原料澱粉100質量部に対する前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの質量比率は特に限定されないが、0.01質量部以上4.8質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上4.5質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.0質量部以下であることがさらに好ましい。
【0015】
前記食品用澱粉組成物は、例えば、エクストルーダーを用いて、生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種以上と、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、必要に応じて少量(例えば、原料混合物中に0.1質量%以上2質量%以下)の炭酸カルシウムなどの不溶性塩とを含む原料混合物に対して加水し、加熱処理することで得られる。
【0016】
[エクストルーダーを用いた加熱処理]
例えば、エクストルーダーを用いて加熱処理する場合、生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種以上と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含む原料混合物に対して加水して、水分含量を、原料混合物と水を含む組成物の質量基準で、10質量%以上60質量%以下程度に調整した後、例えば、バレル温度30℃以上200℃以下、出口温度80℃以上180℃以下、スクリュー回転数100rpm以上1000rpm以下、加熱処理時間5秒以上60秒以下の条件で、原料混合物を加熱膨化させることで、目的とする食品用澱粉組成物を得ることができる。
ここで温度条件としては、バレル温度30℃以上170℃以下、出口温度100℃以上160℃以下であることがより好ましく、バレル温度30℃以上140℃以下、出口温度110℃以上145℃以下であることがさらに好ましい。
加水条件としては、水分含量を、原料混合物と水を含む組成物の質量基準で、15質量%以上40質量%以下に調整することがより好ましく、20質量%以上30質量%以下に調整することがさらに好ましい。
スクリュー回転数としては、150rpm以上900rpm以下であることがより好ましく、200rpm以上850rpm以下であることがさらに好ましい。
圧力条件としては、0.5MPa以上20MPa以下が好ましく、0.5MPa以上18MPa以下がより好ましく、0.5MPa以上15MPa以下がさらに好ましい。
また、加熱処理時間は、7秒以上50秒以下がより好ましく、10秒以上45秒以下がさらに好ましい。
【0017】
あるいは、生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種以上と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含む原料混合物に対して加水して、水分含量を、原料混合物と水を含む組成物の質量基準で、10質量%以上60質量%以下程度に調整し、大気圧下で加熱糊化させた後、乾燥させることによって、目的とする食品用澱粉組成物を得てもよい。加熱糊化させる温度は、90℃以上100℃以下が好ましく、95℃以上100℃以下がより好ましく、100℃(沸騰状態)がさらに好ましい。加熱糊化させる時間は、特に制限されないが、例えば、1分以上2時間以下が好ましい。
乾燥させる手段としては、例えば、ドラムドライヤー、ホットプレートなどを用いることができる。
【0018】
上記の条件で、原料混合物に対して、好ましくは水の存在下、加熱処理することにより目的の食品用澱粉組成物を得ることができる。上記のとおり、いずれの加熱処理方法を用いた場合も高圧処理する必要はなく、20MPa以下、好ましくは18MPa以下、より好ましくは15MPa以下の圧力条件で目的の食品用澱粉組成物を得ることができる。
【0019】
なお、前記食品用澱粉組成物において、澱粉-脂質複合体は、少なくとも一部に形成されていればよい。前記食品用澱粉組成物中のその他の成分は、生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種以上、およびポリグリセリン脂肪酸エステルを含む原料に由来する成分である。
【0020】
前記食品用澱粉組成物は、水分、さらには油分および水分と混合して用いることで特徴的な性質を呈することができるため、後述するバッター液に配合して用いることで、前記食品用澱粉組成物の特徴的な性質をより効果的に発揮することができる。
【0021】
本発明のバッターミックスに占める成分(a)の含有量は、バッターミックスの質量基準で、5質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上45質量%以下、特に好ましくは20質量%以上45質量%以下である。成分(a)の含有量が上記範囲であるバッターミックスを衣材として用いることにより、加熱調理後に常温または加温した状態で保管するなどして時間が経過しても衣のサクミを維持した衣付き食品を製造することができる。
【0022】
(2)その他の成分
本発明のバッターミックスは、上記成分(a)のほか、必要に応じて、その他の成分を含むことができる。その他の成分の種類および配合量は、衣付き食品の種類および目的等に応じて適宜選択することができる。なお、バッターミックスを均一な組成物とすることができることから、その他の成分は粉末状であることが好ましい。
【0023】
(i)穀粉
例えば、小麦粉、米粉、コーンフラワー、大豆粉、およびオーツ粉からなる群より選ばれる1種または2種以上の穀粉(以下、成分(b)ともいう)を含むことができる。
【0024】
(ii)澱粉
また、未化工澱粉および化工澱粉からなる群より選ばれる1種または2種以上の澱粉(以下、成分(c)ともいう)を含んでいてもよい。
前記未化工澱粉としては、例えば植物由来の澱粉が挙げられる。前記未化工澱粉の由来となる植物の具体例として、レギュラートウモロコシ(デントコーン)、もちトウモロコシ(ワキシーコーン)、高アミローストウモロコシ、うるち米、もち米、小麦、甘藷、馬鈴薯、キャッサバおよびサゴヤシ等が挙げられ、好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、うるち米、もち米、小麦、馬鈴薯およびキャッサバが挙げられ、より好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、もち米、馬鈴薯およびキャッサバが挙げられ、さらに好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシおよび馬鈴薯が挙げられる。
前記化工澱粉は、前記未化工澱粉に化工処理が施されたものであればよい。前記化工処理としては、例えば、リン酸モノエステル化等のモノエステル化;リン酸架橋、アジピン酸架橋等の架橋;ヒドロキシプロピル化等のエーテル化;酸化処理;酸処理;アルカリ処理;酵素処理等の1種または2種以上が挙げられる。
これらの中でも、モノエステル化、架橋、酸化処理および酸処理の1種または2種以上が好ましく、架橋および酸化処理および酸処理の1種または2種以上がより好ましく、架橋であることがさらに好ましい。
具体的に、化工澱粉としては、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉が好ましく、アセチル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉がより好ましく、リン酸架橋澱粉が特に好ましい。
【0025】
(iii)食感付与材
本発明のバッターミックスは、必要に応じて、食感付与剤を含んでいてもよい。食感付与剤を配合することにより衣のサクミなどの食感をより高めることができる。例えば、ノンフライ食品である衣付き食品を製造する場合に食感付与材を配合することが好ましい。
食感付与材としては、アルファー化穀粉;パン粉;あられ、柿の種、煎餅等の米菓およびこれらの粉砕物;スナック粉砕物;シリアル粉;クラッカー粉などの粒状物が好ましく挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
食感付与材は、目的とする衣付き食品の種類等に応じて望ましい食感を付与できるものを適宜選択すればよい。例えば、から揚げの場合は、アルファー化穀粉が好ましく用いられる。また、豚カツ、牛カツおよびチキンカツなどのカツの場合は、パン粉、あられなどが好ましく用いられる。
【0026】
本発明において、アルファー化穀粉は、主原料である穀物単独を、あるいは任意に油脂、澱粉、穀粉、糖類、多糖類、蛋白質、乳化剤等の1種または2種以上の副原料を加えてアルファー化処理して得られる粒状物である。
【0027】
アルファー化穀粉の原料として使用できる穀粉としては、餅種米、米、小麦、とうもろこしなどの穀粉砕物が使用でき、これらを単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。
【0028】
(iv)その他
その他、本発明のバッターミックスは、本発明の目的および効果を阻害しない範囲で、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、保存剤、粉末油脂、糖類、甘味料、調味料、着色料、香料、食物繊維、増粘剤、膨張剤などの成分を含むことができる。
【0029】
本発明のバッターミックスに占めるその他の成分の含有量は特に限定されない。
例えば、成分(b)の含有量は、バッターミックスの質量基準で、15質量%以上95質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上90質量%以下、特に好ましくは20質量%以上80質量%以下である。
また、成分(c)の含有量は、バッターミックスの質量基準で、15質量%以上95質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上90質量%以下、特に好ましくは20質量%以上80質量%以下である。
本発明のバッターミックスに占める前記成分(a)、ならびに任意に含まれる(b)および(c)の含有量の合計は、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましく98質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0030】
本発明のバッターミックスは、前記成分(a)に、必要に応じて、成分(b)、(c)およびその他の成分を適宜混合して調製することができる。混合順序、混合条件(温度、圧力、撹拌条件)等は特に限定されない。
【0031】
本発明のバッターミックスを衣材として用いることにより、加熱調理後に常温または加温した状態で保管するなどして時間が経過しても衣付き食品の衣のサクミを維持することができ、衣付き食品の美味しさを長持ちさせることができる。
【0032】
2.バッター液
本発明のバッター液は、バッターミックスと水とを含む。本発明のバッター液を用いて具材に衣付けして加熱調理することにより、衣付き食品の衣のサクミを長時間維持することができ、衣付き食品の美味しさを長持ちさせることができる。
【0033】
バッターミックスは、前記「1.バッターミックス」で述べたものと同じものを用いることができる。バッターミックスは、予め調製してから、水と混合してもよいし、バッターミックスの各成分を水と一緒に合わせてから混合して用いてもよい。
【0034】
本発明のバッター液に占めるバッターミックスの含有量は、バッター液の質量基準で、10質量%以上40質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上35質量%以下、特に好ましくは18質量%以上32質量%以下である。
【0035】
本発明のバッター液に用いられる水は、食品の製造に用いられるものであれば特に制限されなく、天然水や水道水が挙げられる。また、水として、乳および乳製品に含まれる動物性ミルク;豆乳およびアーモンドミルクなどの植物性ミルク;果汁、野菜ジュースなどの植物搾汁などの水含有液体を使用してもよい。
【0036】
本発明のバッター液に占める水の含有量は、目的とする衣付き食品の種類および目的等に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。
例えば、衣付き食品がフライ食品である場合、作業性に適した粘度とする観点から、また、フライ時の衣の散り具合等を考慮して、バッター液に占める水の含有量は、45質量%以上90質量%以下が好ましく、より好ましくは65質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは65質量%以上85質量%以下、特に好ましくは68質量%以上82質量%以下である。
また、衣付き食品がノンフライ食品である場合、喫食時の油感を損なわないよう、バッター液に占める水の含有量は、1質量%以上8質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上4質量%以下とする。
【0037】
本発明のバッター液は、上記の他、必要に応じて食用油脂を含んでいてもよい。
例えば、目的とする衣付き食品がフライ食品である場合、バッター液が食用油脂を含むことにより、食用油脂の温度が上昇し、衣のサクミをより向上させることができる。
また、例えば、目的とする衣付き食品がノンフライ食品である場合、バッター液が食用油脂を含むことにより、加熱調理後に衣が食用油脂を抱えることで、喫食時の油感を向上させることができる。また、衣のサクミをより向上させることができる。
【0038】
食用油脂は、食品に供されるものであれば特に限定されない。食用油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂;魚油、豚脂、牛脂、乳脂等の動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリド、およびこれらに、エステル交換、水素添加、分別からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0039】
本発明のバッター液に占める食用油脂の含有量は、目的とする衣付き食品の種類および目的等に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。
例えば、衣付き食品がフライ食品である場合、本発明のバッター液に占める食用油脂の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上19質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上18質量%以下、特に好ましくは3質量%以上18質量%以下である。
また、衣付き食品がノンフライ食品である場合は、10質量%以上85質量%以下が好ましく、より好ましくは18質量%以上82質量%以下、さらに好ましくは25質量%以上75質量%以下、特に好ましくは30質量%以上65質量%以下である。
【0040】
食用油脂は、液体油脂を含むことが作業性の観点から好ましく、本発明のバッター液に占める液体油脂の含有量は10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは25質量%以上65質量%以下である。液体油脂は、使用時(例えば25±5℃)にて液体であればよい。
食用油脂の融点は、10℃以下であることが好ましく、0℃未満であることがより好ましい。食用油脂の融点が上記の範囲であると、具材をバッター液にくぐらせて、具材に衣材を付着させるときの作業性を向上させることができる。なお、融点(上昇融点)の測定は、基準油脂分析試験法2.2.4.2-1996に従って測定することができる。
【0041】
本発明のバッター液は、その他の成分、例えば、卵液等の液状の食材;砂糖、食塩、酢、醤油、味噌、胡椒、みりん、酒、だし汁、ソース、ケチャップ、オイスターソース、マヨネーズ、マスタード、グルタミン酸およびその塩、イノシン酸およびその塩、塩こうじ、コンソメ等の調味料;胡椒、唐辛子、花椒、生姜等の香辛料;海苔、わかめ等の海藻;かつおぶし、サクラエビなどの魚介類素材;天かすなどを含んでいてもよい。これらは1種で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明のバッター液は、バッターミックス、水、および必要に応じてその他の成分を混合することで調製することができる。混合順序、混合条件(温度、圧力、撹拌条件)等は特に限定されず、適宜決定することができる。
【0043】
3.衣付き食品の製造方法
本発明の衣付き食品の製造方法は、バッター液を具材に付着させる工程(1)と、その後、加熱調理する工程(2)とを含む。バッター液は、前記「2.バッター液」で述べたものと同じものを用いることができる。なお、前記製造方法は、工程(1)前に具材を調味液に漬け込む、漬け込み工程(塩漬工程)、工程(2)で得られる衣付き食品を冷凍する工程(3)、工程(3)で得られる冷凍食品を再加熱調理する工程(4)等をさらに含んでいてもよい。以下、各工程について説明する。
【0044】
[漬け込み工程(塩漬工程)]
漬け込み工程(塩漬工程)は工程(1)前に、具材を調味液(ピックル液)に漬け込む工程である。調味液(ピックル液)に漬け込むことで、得られる衣付き食品の味、風味、ジューシー感等を調整することができる。ここで「漬け込み」には、「浸漬」、「塗布」、「タンブリング」、ピックルインジェクター等により具材に針を穿刺し、当該針の先からピックル液の注入を行う、いわゆる「インジェクション」が含まれる。漬け込み工程(塩漬工程)により、調味液(ピックル液)の少なくとも一部は、具材の内部に浸透もしくは混ぜ込まれる。
【0045】
具材は、衣付き食品に適したものであれば特に限定されない。例えば、畜肉、魚介類および野菜類などが挙げられる。
畜肉としては、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉等が挙げられる。
魚介類としては、マグロ、タラ、カツオ、サーモン、エビ、カニ、イカ、タコ、ホタテ等が挙げられる。
野菜類としては、イモ類、キノコ類、ピーマン、なす、カボチャ、トマト、人参、玉ねぎ、山菜等が挙げられる。
これらの具材は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、具材の形状は、特に限定されなく、切り身、ミンチ、ペースト等のいずれであってもよいが、切り身であることが好ましい。
【0046】
調味液(ピックル液)は、目的とする衣付き食品の味、風味、ジューシー感等によって適宜調製すればよい。一実施形態において、ピックル液は、食用油脂、調味料、および溶媒などを含む。
【0047】
食用油脂としては、菜種油、コーン油、大豆油、パームオレイン、ゴマ油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ゴマ油、ぶどう種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、胡桃油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、オリーブ油、米ぬか油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、あまに油、えごま油、しそ油等の植物性油脂;牛脂、豚脂、鶏油、乳脂等の食肉油脂;魚油等が挙げられる。これらの食用油脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
調味料としては、砂糖、食塩、酢、醤油、味噌、胡椒、みりん、ソース、ケチャップ、オイスターソース、マヨネーズ、マスタード、グルタミン酸およびその塩、イノシン酸およびその塩等が挙げられる。これらの調味料は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
溶媒としては、水、エタノール等が挙げられるが、水が好ましい。
【0050】
ピックル液の使用量は、特に限定されないが、通常、具材に対して、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上25質量%以下である。
【0051】
漬け込みの方法は、特に限定されず、ピックル液中に具材を浸漬してもよいし、ピックル液を具材に塗布してもよいし、ピックル液を具材に練り込んでもよいし、ピックルインジェクター等によりピックル液を針から具材に注入してもよい。
【0052】
漬け込みの際には、静置してもよいし、タンブラー等の装置を用いて物理的衝撃を付与してもよい。漬け込みの条件についても特に制限されず、加圧してもよいし、減圧してもよいし、加圧および減圧を組み合わせてもよい。また、温度を適宜変更してもよい。
【0053】
[工程(1)]
工程(1)は、バッター液を具材に付着させる工程である。
バッター液を具材に付着させる方法は特に限定されない。ボウルまたは袋などの容器に入れたバッター液中に具材をくぐらせることにより、具材の表面にバッター液を付着させてもよいし、具材の表面にバッター液を直接塗布して付着させてもよい。なお、バッター液は、具材の一部に付着していてもよいし、具材の全体に付着していてもよい。また、具材の表面に打ち粉をしてから具材にバッター液を付着させてもよい。
【0054】
バッター液の使用量は、目的とする衣付き食品によって適宜決定すればよく、特に限定されない。例えば、具材に対して、バッター液の付着量が、5質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上50質量%以下である。
【0055】
[工程(2)]
工程(2)は、工程(1)でバッター液に具材を付着させた後、加熱調理する工程である。工程(2)により衣付き食品が得られる。
加熱調理方法は、特に限定されないが、フライまたはノンフライによる加熱調理が好ましく、油調、乾式加熱またはこれらの組み合わせによる加熱調理であることが好ましい。
【0056】
加熱調理の温度は、適宜選択すればよく、特に制限されないが、65℃以上300℃以下が好ましく、80℃以上280℃以下がより好ましく、80℃以上220℃以下がさらに好ましく、100℃以上200℃以下であることが特に好ましい。
【0057】
加熱時間は、加熱温度、加熱調理方法および具材の大きさなどによって適宜決定すればよい。
【0058】
フライによる加熱調理に使用する油は食用油脂であれば特に限定されなく、公知のものを使用することができる。
例えば、漬け込み工程において調味液に用いることができる食用油脂として例示したものと同じものが挙げられる。中でも、菜種油、大豆油、コーン油、ひまわり油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、および米ぬか油からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、菜種油を含むことがより好ましい。
【0059】
前記油は、乳化剤、酸化防止剤、シリコーン、着色剤等を含んでいてもよい。
【0060】
工程(2)において加熱調理した後、衣は、具材の一部を被覆していてもよいし、具材の全体を被覆していてもよい。
【0061】
[工程(3)]
工程(3)は、工程(2)で得られる衣付き食品を冷凍する工程である。
【0062】
冷凍の方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、エアブラスト法、ブライン法、コンタクト法、液化ガス凍結法、これらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
[工程(4)]
工程(4)は、工程(3)で得られる冷凍食品を再加熱調理する工程である。工程(4)により、冷凍食品を食用に適した状態とすることができる。
【0064】
再加熱調理の方法は、特に限定されず、工程(2)に記載の加熱調理方法を用いることができる。再加熱調理方法は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
4.衣付き食品
本発明の衣付き食品は、前記バッター液が加熱調理されてなる衣を有する食品である。バッター液は、前記「2.バッター液」で述べたものと同じものを用いることができる。本発明の衣付き食品は、前記バッター液が加熱調理されてなる衣を有するため、加熱調理後に常温または加温した状態で保管するなどして時間が経過しても衣付き食品の衣のサクミを維持することができ、衣付き食品の美味しさを長持ちさせることができる。
【0066】
衣付き食品としては、具材の表面の少なくとも一部が衣により被覆されているものであれば特に限定されない。具材および加熱調理方法を含む衣付き食品の製造方法は、前記「3.衣付き食品の製造方法」で述べたとおりである。また、前記「3.衣付き食品の製造方法」で述べたと同様、加熱調理後に、得られる衣付き食品を冷凍してもよく、その後、再加熱調理してもよい。
衣付き食品としては、例えば、から揚げ、カツ、およびフリッターなどが好ましく挙げられる。
【0067】
具材に対して適量のバッター液を付着させることで、衣付き食品のサクミなどの食感を良好にすることができる。例えば、具材に対してバッター液を5質量%以上100質量%以下、好ましくは5質量%以上80質量%以下、より好ましくは10質量%以上50質量%以下の量比で付着させることで、衣付き食品を喫食したときのサクミがより向上する。
【0068】
5.衣付き食品用食感改良剤
本発明の衣付き食品用食感改良剤は、生馬鈴薯澱粉および前記生馬鈴薯澱粉の化工澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の馬鈴薯澱粉と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを、0MPa以上20MPa以下の圧力条件下にて加熱処理してなる食品用澱粉組成物であって、澱粉-脂質複合体を含む前記食品用澱粉組成物を有効成分として含む。本発明の衣付き食品用食感改良剤に用いられる食品用澱粉組成物は、前記「1.バッターミックス」で述べた成分(a)と同じものである。
【0069】
本発明の衣付き食品用食感改良剤を衣材に配合することで、加熱調理後に常温または加温した状態で保管するなどして時間が経過しても衣付き食品の衣のサクミを維持することができ、衣付き食品の美味しさを長持ちさせることができる。
例えば、本発明の衣付き食品用食感改良剤を、バッター液に配合し、具材の表面にバッター液を付着させて加熱調理することで、常温または加温した状態で保管するなどして時間が経過しても、衣が好ましいサクミを維持することができ、衣付き食品の食感を改良することができる。
【0070】
本発明の衣付き食品用食感改良剤の使用量は特に限定されないが、通常、バッター液の質量基準で、2質量%以上20質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下、特に好ましくは6質量%以上10質量%以下である。
【0071】
6.衣付き食品の衣のサクミを維持する方法
本発明の衣付き食品の衣のサクミを維持する方法は、衣付き食品用食感改良剤を含むバッター液を具材に付着させる工程(1)と、その後、加熱調理する工程(2)とを含む。
【0072】
[工程(1)]
工程(1)は、衣付き食品用食感改良剤を含むバッター液を具材に付着させる工程である。
バッター液を具材に付着させる方法およびバッター液の使用量は、前記「3.衣付き食品の製造方法」の工程(1)で述べたとおりであり、これを参照しながら目的とする衣付き食品の種類等に応じて適宜選択すればよい。
バッター液に占める衣付き食品用食感改良剤の含有量は、特に限定されないが、通常、バッター液の質量基準で、2質量%以上20質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下、特に好ましくは6質量%以上10質量%以下である。
【0073】
[工程(2)]
工程(2)は、工程(1)でバッター液に具材を付着させた後、加熱調理する工程である。工程(2)により衣のサクミを維持した衣付き食品が得られる。
加熱調理方法および温度等については、前記「3.衣付き食品の製造方法」の工程(2)で述べたとおりであり、これを参照しながら、目的とする衣付き食品の種類等に応じて適宜選択すればよい。
【0074】
また、前記「3.衣付き食品の製造方法」で述べたと同様、加熱調理後に、得られる衣付き食品を冷凍してもよく、その後、再加熱調理してもよい。
【0075】
本発明の上記方法によれば、加熱調理後に常温または加温した状態で保管するなどして時間が経過しても衣付き食品の衣のサクミを維持することができ、衣付き食品の美味しさを長持ちさせることができる。
【実施例0076】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されない。
【0077】
[1]バッターミックスおよびバッター液の調製
ボウルに表1の配合量で薄力粉、コーンスターチおよび食品用澱粉組成物を入れ、均一混合してバッターミックスを調製し、さらに冷水を混合して、バッター液を調製した。なお、表1中の各成分の配合量の単位は質量部である。
【表1】
【0078】
表1中の成分は、以下のものを用いた。
・薄力粉:日清製粉株式会社製「フラワー」
・コーンスターチ:株式会社J-オイルミルズ社製「コーンスターチY」
・食品用澱粉組成物1:製造例1に従って調製した。
・食品用澱粉組成物1:製造例2に従って調製した。
・食品用澱粉組成物3:製造例3に従って調製した。
【0079】
<食品用澱粉組成物の製造方法>
(製造例1)
生馬鈴薯澱粉を2kgおよびポリグリセリン脂肪酸エステル(デュポン・スペシャルティ・プロダクツ社製「GRINDSTED PGE55-M」(HLB:約7、ポリグリセリンの平均重合度:3以下、構成脂肪酸:ステアリン酸、数%パルミチン酸))を15g混合した原料混合物に対して、対紛11.5質量%(50g/分)にて加水を行いながら2軸エクストルーダー(幸和工業社製「KEI-45-15」)にて加熱処理を行った。得られた加熱処理物を110℃に設定した恒温槽に30分入れて乾燥させた。乾燥させた加熱処理物を卓上粉砕機で粉砕し、JIS-Z8801-1規格の目開き0.25mmの篩に通した篩下画分を回収し、食品用澱粉組成物1を得た。
なお、2軸エクストルーダーの条件は、バレル温度は30℃~170℃、出口温度100℃~170℃、バレル内の最高圧力は5MPa、スクリュー回転数230rpmとした。
【0080】
(製造例2)
2軸エクストルーダーの条件として、バレル内の最高圧力を15MPaとしたこと以外は、食品用澱粉組成物1と同様にして、食品用澱粉組成物2を得た。
【0081】
(製造例3)
ポリグリセリン脂肪酸エステルに代えて、モノグリセリンエステル(理研ビタミン株式会社製「ポエムP(V)S」(HLB:4~5、構成脂肪酸:Pパルミチン酸:Sステアリン酸=6:4)を用いたこと以外は、食品用澱粉組成物1と同様にして、食品用澱粉組成物3を得た。
【0082】
<バッター液の粘度測定>
バッター液の粘度をB型粘度計No.4ローター(東機産業株式会社製、BM型)を用いて、回転数60rpmにて60秒(1分)の条件下で測定した。測定においては、直径7cm、高さ9.5cmの円柱ポリプロピレン(Kartell社製、250ml用容器)を使用した。
【0083】
<バッター液の性状>
実施例1および2で得られたバッター液は、パン生地のように弾力がある一方で、ゼリーのようにぷるっとしており、表面張力が強く、ボウル表面から外れやすかった。
一方、対象例で得られたバッター液は、粘度がひくくシャバシャバとした状態であった。また、比較例1で得られたバッター液は、やや粘度があり、とろっとしていた。
【0084】
[2]衣付き食品(から揚げ)の調製
以下の手順でから揚げを調製した。
1.鶏モモ肉をカットし、約25g/個とした。
2.1.の鶏肉をラミジップ(株式会社生産日本社製「スタンドタイプLZ-22」)に入れ、表2の組成を有するピックル液を加えて真空包装機(株式会社ハギオス社製「MZC-300-C」)にて、20秒間真空にした後、4℃にて90分タンブリングした。
3.タンブリング後の鶏肉に、打ち粉(株式会社J-オイルミルズ製「HB-5000」)を鶏肉に対して4質量%添加し、まぶした。
4.打ち粉をまぶした鶏肉を、表1に記載の各例のバッター液を鶏肉に対し20質量%添加し、バッタリングした。
5.バッタリング後の鶏肉を、キャノーラ油中で175℃にて3.5分油調した。
6.油調後の鶏肉をバットにならべ、バットごと-50℃にて冷凍し、その後、鶏肉をチャック袋に移して-20℃にて3日間冷凍保存した。
7.冷凍3日後のから揚げをキャノーラ油中で175℃にて3分油調した。
8.油調後の鶏肉をバットにならべ、常温で4時間放置、または65℃のホッター(日本ヒーター機器株式会社製「ホットショーケースSC45-3D2S」)中でアルミ箔をかけ、6時間または8時間保管した。
9.以上の手順により得られたから揚げの食感(サクミ)を評価した。評価基準は以下のとおりとした。
【0085】
【表2】
【0086】
(食感評価)
専門パネラー2名がから揚げの衣の食感(サクミ)を官能評価した。結果を表1に示す。