(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151968
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】電動車両用冷却システム
(51)【国際特許分類】
B60L 53/14 20190101AFI20231005BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20231005BHJP
B60L 53/22 20190101ALI20231005BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20231005BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20231005BHJP
【FI】
B60L53/14
B60L9/18 J
B60L53/22
B60K11/02 ZHV
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061858
(22)【出願日】2022-04-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三国 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】種平 貴文
(72)【発明者】
【氏名】森島 千菜美
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC02
3D038AC23
3D235AA01
3D235BB41
3D235BB45
3D235CC13
3D235DD27
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH04
3D235HH08
3D235HH31
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BB00
5H125BC21
5H125CD06
5H125DD02
5H125EE15
5H125EE23
5H125FF03
5H125FF23
(57)【要約】
【課題】ポンプ負荷軽減と駆動ユニットの冷却改善との両立を図ることができる電動車両用冷却システムをもたらす。
【解決手段】冷却システム40は、車両1の前方に配置された駆動ユニット60と、該駆動ユニット60よりも後方に配置された充電器8と、を備えた電動車両用の冷却システムであって、駆動ユニット60及び充電器8に接続されるとともに、該充電器8を迂回する第6経路42fを有する冷却液回路42と、冷却液の冷却液回路42への循環を制御する制御装置10と、を備え、制御装置10は、充電器8の作動時以外であり且つ駆動ユニット60の温度が所定温度未満のときに、冷却液を第6経路42fへ送液し、充電器8の作動時以外であり且つ駆動ユニット60の温度が所定温度以上のときに、冷却液を充電器8に送液後に駆動ユニット60に送液する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方に配置された駆動ユニットと、該駆動ユニットよりも後方に配置された充電器と、を備えた電動車両用の冷却システムであって、
前記駆動ユニット及び前記充電器に接続されるとともに、該充電器を迂回するバイパス経路を有する冷却液回路と、
前記冷却液回路上に設けられ、該冷却液回路に冷却液を送液するためのポンプと、
前記冷却液回路上に設けられ、前記冷却液を冷却するための熱交換器と、
前記駆動ユニットに設けられ、該駆動ユニットの温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出された前記駆動ユニットの温度に基づいて、前記冷却液の前記冷却液回路への循環を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記充電器の作動時以外であり且つ前記駆動ユニットの温度が所定温度未満のときに、前記冷却液を前記バイパス経路へ送液し、
前記充電器の作動時以外であり且つ前記駆動ユニットの温度が所定温度以上のときに、前記冷却液を前記充電器に送液後に前記駆動ユニットに送液する
ことを特徴とする電動車両用冷却システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記駆動ユニットは、複数の電気装置を備えており、
前記温度検出手段は、前記複数の電気装置の各々に設けられており、
前記制御装置は、前記各電気装置の温度に応じて、該各電気装置への前記冷却液の送液順序を変更可能に構成されている
ことを特徴とする電動車両用冷却システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記駆動ユニットは、前記電気装置として、DC/DCコンバータと、インバータと、を備えており、
前記制御装置は、前記DC/DCコンバータ及び前記インバータの少なくとも一方の温度が所定温度以上のときに、両者のうち温度が高い方の前記電気装置へ先に前記冷却液を送液する
ことを特徴とする電動車両用冷却システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
前記充電器は、本体と、該本体に設けられた冷却フィンと、を備える
ことを特徴とする電動車両用冷却システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記本体は、前記車両の車内に配置されており、
前記冷却フィンは、前記車両の車外に突出している
ことを特徴とする電動車両用冷却システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記本体は、前記車両のトランクフロア内に配置されており、
前記冷却フィンは、前記本体から下方に延び、前記トランクフロア外に突出している
ことを特徴とする電動車両用冷却システム。
【請求項7】
請求項1又は請求項2において、
前記制御装置は、前記充電器の作動時には、前記充電器に前記冷却液を送液する
ことを特徴とする電動車両用冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両用冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)等の電動車両用の冷却システムにおいて、ラジエータから出た冷却液をDC/DCコンバータ、インバータ、充電器、コンバータ、発電機、駆動モータの順で循環させるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の技術では、上述の電気装置のうち、充電器以外の電気装置、すなわち駆動ユニットは、車両前方のモータルーム内に配置される一方、充電器は車両後方に配置されている。
【0005】
充電器は、作動時には冷却の必要性があるが、作動時以外は冷却する必要性が低いため、ポンプ負荷軽減の観点からは、作動時以外は充電器への冷却液循環をバイパスすることが考えられる。一方、高トルク時等の冷却液温度が上昇傾向となる状態では、通常走行時と比較して、駆動ユニットの冷却をより強化する必要性が生じる。従って、ポンプ負荷軽減と駆動ユニットの冷却改善の両立の観点から、従来の冷却システムには改善の余地がある。
【0006】
そこで本開示では、ポンプ負荷軽減と駆動ユニットの冷却改善との両立を図ることができる電動車両用冷却システムをもたらすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、ここに開示する電動車両用冷却システムの一態様は、車両の前方に配置された駆動ユニットと、該駆動ユニットよりも後方に配置された充電器と、を備えた電動車両用の冷却システムであって、前記駆動ユニット及び前記充電器に接続されるとともに、該充電器を迂回するバイパス経路を有する冷却液回路と、前記冷却液回路上に設けられ、該冷却液回路に冷却液を送液するためのポンプと、前記冷却液回路上に設けられ、前記冷却液を冷却するための熱交換器と、前記駆動ユニットに設けられ、該駆動ユニットの温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段により検出された前記駆動ユニットの温度に基づいて、前記冷却液の前記冷却液回路への循環を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記充電器の作動時以外であり且つ前記駆動ユニットの温度が所定温度未満のときに、前記冷却液を前記バイパス経路へ送液し、前記充電器の作動時以外であり且つ前記駆動ユニットの温度が所定温度以上のときに、前記冷却液を前記充電器に送液後に前記駆動ユニットに送液することを特徴とする。
【0008】
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)等の電動車両には、家庭用の交流電源(AC)を直流電圧(DC)に変換し、走行用電力を蓄電する高電圧バッテリを充電するための充電器が設けられている。充電器による高電圧バッテリの充電時、すなわち充電器の作動時には、過度の温度上昇を抑制するため、冷却液により充電器を冷却する必要がある。しかしながら、例えば車両走行中等の充電器による高電圧バッテリの充電時以外、すなわち充電器の作動時以外には、充電器を冷却する必要性が低いため、ポンプ負荷軽減の観点から、充電器への冷却液の循環をバイパスさせることが効果的である。
【0009】
ところで、本願発明者らは、充電器は駆動ユニットよりも後方に配置されているから、作動時以外にも充電器へ冷却液を循環させることにより、充電器は、いわば第2の熱交換器としての役割を担うことも可能であることを見出した。
【0010】
すなわち、本構成では、充電器の作動時以外であり且つ駆動ユニットの温度が所定温度未満のときは、充電器への冷却液の循環を迂回させることにより、ポンプ負荷の軽減を図ることができる。一方、充電器の作動時以外であり且つ駆動ユニットの温度が所定温度以上のときは、冷却液をあえて充電器へ送液することにより、充電器をいわば第2の熱交換器として機能させ、駆動ユニットの冷却を強化できる。こうして、本構成によれば、ポンプ負荷軽減と駆動ユニットの冷却改善とを両立させることができる。
【0011】
好ましくは、前記駆動ユニットは、複数の電気装置を備えており、前記温度検出手段は、前記複数の電気装置の各々に設けられており、前記制御装置は、前記各電気装置の温度に応じて、該各電気装置への前記冷却液の送液順序を変更可能に構成されている。
【0012】
本構成によれば、電気装置の冷却優先順位に応じた高効率の冷却が可能になる。
【0013】
好ましくは、前記駆動ユニットは、前記電気装置として、DC/DCコンバータと、インバータと、を備えており、前記制御装置は、前記DC/DCコンバータ及び前記インバータの少なくとも一方の温度が所定温度以上のときに、両者のうち温度が高い方の前記電気装置へ先に前記冷却液を送液する。
【0014】
本構成によれば、DC/DCコンバータ及びインバータのうち、温度が高い方の電気装置へ先に冷却液を送液させて、冷却の強化が必要な電気装置の冷却を効果的に行うことができる。
【0015】
前記充電器は、本体と、該本体に設けられた冷却フィンと、を備えることが好ましい。
【0016】
本構成によれば、充電器は冷却フィンを備えているから、充電器の熱抵抗が低下して放熱量が増加する。そうして、充電器の第2の熱交換器としての性能を向上できる。
【0017】
好ましくは、前記本体は、前記車両の車内に配置されており、前記冷却フィンは、前記車両の車外に突出している。
【0018】
本構成によれば、冷却フィンが車外に突出しているから、外気との熱交換により充電器の第2の熱交換器としての性能をさらに向上できる。
【0019】
好ましくは、前記本体は、前記車両のトランクフロア内に配置されており、前記冷却フィンは、前記本体から下方に延び、前記トランクフロア外に突出している。
【0020】
本構成によれば、走行風を利用して、充電器の放熱量をさらに増加させることができる。そうして、充電器の第2の熱交換器としての性能を効果的に向上できる。
【0021】
前記制御装置は、前記充電器の作動時には、前記充電器に前記冷却液を送液する。
【0022】
本構成によれば、充電器の作動時における過度な温度上昇を抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、本開示によると、電動車両用冷却システムにおいて、ポンプ負荷軽減と駆動ユニットの冷却改善とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態での車両の主な構成を示す概略図。
【
図6】制御装置とその主な関連装置との関係を示すブロック図。
【
図7】冷却システムの制御方法の一例を示すフロー図。
【
図12】通常走行時における各電気装置を通過前後の冷却液(水)の温度差を示すグラフ。
【
図13】充電器の放熱量と冷却液の温度差との関係(計算結果)を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0026】
<電動車両>
図1に、車両1(電動車両)を示す。
図1では、開示する技術に関連した主な構成を簡略化して表示している。
【0027】
なお、本明細書において、方向は、車両1を基準とする。すなわち、車両1の車長方向を前後方向と呼び、車両1の前を「前」、車両1の後を「後」と呼ぶ。
【0028】
この車両1は、いわゆる電気自動車である(Battery Electric Vehicle、BEV)。車両1の前後には、それぞれ一対の前輪2F,2F及び後輪2R,2Rが備えられている。電力を用いて一対の前輪2F,2Fを回転駆動することにより、車両1は走行する。車両1の車内には、前方に配置されたモータルーム1bと、中央部分に配置された乗員を収容する車室1aと、後方に配置されたトランクフロア1cと、が設けられている。
【0029】
図1に示すように、この車両1には、ラジエータ2(熱交換器)、駆動ユニット60、高電圧バッテリ6、低電圧バッテリ7、充電器8、充電プラグ9、及び制御装置10等が搭載されている。駆動ユニット60は、モータルーム1b内に配置されており、複数の電気装置としての駆動モータ3、インバータ4、及びコンバータ5等を含む。なお、ラジエータ2及び制御装置10については、冷却システム40の項目において後述する。
【0030】
[駆動モータ]
駆動モータ3は、車両1が走行するための駆動力を発生させる電気装置である。駆動モータ3の駆動軸は、不図示の減速機、クラッチ、駆動シャフト等を介して一対の前輪2F,2Fに接続されている。駆動モータ3は、三相の交流によって駆動軸が回転する永久磁石型の同期モータである。
【0031】
[高電圧バッテリ]
高電圧バッテリ6は、走行用電力を蓄電する大型の二次電池である。高電圧バッテリ6は、車両1の下部の、車室1aからトランクフロア1cに至る部分に配置されている。高電圧バッテリ6は、高電圧の直流電源であり、例えば300V以上の電圧での蓄電が可能に構成されている。駆動モータ3を駆動する電力は、高電圧バッテリ6が供給する。
【0032】
[インバータ]
インバータ4は、電力制御を行う電気装置である。インバータ4は、駆動モータ3と高電圧バッテリ6との間に介在し、高電圧バッテリ6から駆動モータ3に供給される電力を制御する。そうして、インバータ4は、駆動モータ3の回転を制御する。
【0033】
インバータ4の内部には、IGBT等、複数のスイッチング素子及びコンデンサを含むインバータ回路(不図示)が備えられている。インバータ4は、これらスイッチング素子をオンオフ制御することにより、高電圧バッテリ6から供給される直流電圧を用いて、制御された3相の交流を発生させる。その交流が駆動モータ3に出力されることで、駆動モータ3は、要求される出力で回転する。
【0034】
なお、インバータ4には、インバータ4の温度を検出するとともにその信号を出力するインバータ温度センサ46(温度検出手段)が設けられている。
【0035】
[低電圧バッテリ]
低電圧バッテリ7は、低電圧系の電力供給システムに接続された、定格電圧が12V(24Vの場合もある)の二次電池である。すなわち、低電圧系の電力供給システムでは、12Vの直流電力が供給可能に構成されている。
【0036】
車両1に搭載されているヘッドライトやオーディオ等の一般的な電装品を含め、インバータ4、コンバータ5、制御装置10、後述する電動ポンプ41(ポンプ)等の装置は、低電圧系の電力供給システムに接続されている。そして、これらの装置は、当該システムからの電力供給によって作動する。
【0037】
[コンバータ]
コンバータ5は、直流電力を異なる電圧の直流電力に変換する電気装置である(いわゆるDC/DCコンバータ)。コンバータ5は、高電圧バッテリ6と接続されるとともに、低電圧バッテリ7を含む低電圧系の電力供給システムとも接続されている。
【0038】
コンバータ5の内部には、IGBT等、複数のスイッチング素子、コンデンサ、コイルを含む降圧回路(不図示)が備えられている。コンバータ5は、これらスイッチング素子をオンオフ制御することにより、高電圧バッテリ6の高電圧の電力を降圧して、低電圧系の電力供給システム15に出力する。
【0039】
すなわち、コンバータ5は、高電圧バッテリ6の電力を用いて、低電圧バッテリ7を充電したり、車両1に搭載された各種電気装置に直接電力を供給したりする。
【0040】
なお、コンバータ5には、コンバータ5の温度を検出するとともにその信号を出力するコンバータ温度センサ45(温度検出手段)が設けられている。
【0041】
[高電圧バッテリの充電経路及び充電器]
高電圧バッテリ6を充電するために、車両1には、充電プラグ9、充電器8等が設けられている。
図1に示すように、充電プラグ9は、車両1の後部に配置されている。充電器8は、充電プラグ9の近傍に位置するように、車両1の後方、詳細にはトランクフロア1cの下方に配置されている。
【0042】
図示はしないが、この車両1には、急速充電経路及び普通充電経路の2つの充電経路が設けられている。普通充電経路を用いる充電(普通充電)よりも急速充電経路を用いる充電(急速充電)の方が短時間で充電できる。充電プラグ9は、急速充電経路及び普通充電経路の各々に対応した2種類のプラグ、すなわち高電圧用プラグ及び低電圧用プラグを含む。
【0043】
急速充電経路は、高電圧バッテリ6と同等かそれ以上の高い電圧の外部電源、すなわち、充電スタンド等の特定電源から供給される高電圧の直流を用いて、直接的に充電する経路である。急速充電経路は、充電プラグ9の高電圧用プラグ、及び高電圧プラグと高電圧バッテリ6とを接続するケーブル等で構成されている。高電圧用プラグに特定電源のコネクタを接続すれば、高電圧バッテリ6を直接的に充電できる。
【0044】
一方、普通充電経路は、高電圧バッテリ6よりも低い電圧の外部電源、すなわち、100Vや200V等の通常の商用電源から供給される低電圧の交流を用いて、間接的に充電する経路である。普通充電経路は、充電プラグ9の低電圧用プラグ、充電器8、これらと高電圧バッテリ6とを接続するケーブル等で構成されている。
【0045】
低電圧用プラグに商用電源のコネクタを接続すれば、高電圧バッテリ6を間接的に充電できる。なお、普通充電経路では、充電器8により、商用電源の交流が直流に変換されるとともに、商用電源の低い電圧が昇圧される。すなわち、充電器8の内部には、IGBT等、複数のスイッチング素子、コンデンサ、コイルを含む昇圧・変換回路が備えられている。充電器8は、これらスイッチング素子をオンオフ制御することにより、入力された交流を直流に変換するとともに、その電圧を昇圧させて出力する。
【0046】
図2に、本実施形態の充電器8の一例を示す。
図2に示すように、充電器8は、本体81と、本体81の底面82に設けられた冷却フィン83と、を備えている。
【0047】
詳細は後述するが、充電器8が冷却フィン83を備えることにより、充電器8の熱抵抗が低下して放熱量が増加する。そうして、後述する冷却システム40における充電器8の第2のラジエータとしての性能を向上できる。
【0048】
なお、冷却フィン83は、本体81の外表面に設けられていればよく、底面82に加え、又は、底面82に代えて、底面82以外の外表面に設けられていてもよい。
【0049】
図3は、
図2の充電器8の設置状態の一例を示している。
図3に示すように、車両1のトランクフロア1cは、トランクボード1dにより仕切られており、トランクボード1dの上側のトランクルーム1eと、トランクボード1dの下側のパン1fとを備える。例えば、充電器8の本体81がトランクフロア1cのパン1f内に載置されるとともに、冷却フィン83が本体81から下方に延びトランクフロア1c外に突出するように、充電器8を配置することができる。
【0050】
冷却フィン83が車外に突出しているから、外気との熱交換により充電器8の第2のラジエータとしての性能をさらに向上できる。特に、
図3のように、冷却フィン83がパン1fから車両1の下側に突出していると、走行風を利用できるから、充電器8の第2のラジエータとしての性能を効果的に向上できる。
【0051】
なお、
図1に示すように、充電器8には、充電器8の温度を検出するとともにその信号を出力する充電器温度センサ47が設けられている。
【0052】
<冷却システム>
駆動モータ3の作動時には、その内部に配置されているコイルに電流が流れる。そうすると、コイルの電気抵抗等によって発熱し、駆動モータ3の内部温度は上昇する。内部温度が過度に上昇すると、モータ性能の低下及び故障を招くおそれがある。そのため、駆動モータ3は冷却が必要である。
【0053】
また、インバータ4、コンバータ5及び充電器8は、その作動時にいわゆるスイッチング制御が行われるから、それらの電気回路は電気抵抗によって発熱する。電気回路の温度が過度に高くなると電気回路が破損するおそれがある。そのため、インバータ4、コンバータ5及び充電器8の各々は、特にその作動時において冷却が必要である。
【0054】
図4及び
図5に示すように、この車両1では、これら冷却が必要とされる電気装置の各々を冷却するために、いわゆる冷却システム40(電動車両用冷却システム)が設置されている。
【0055】
冷却システム40は、ラジエータ2(熱交換器)、電動ポンプ41、冷却液回路42、冷却液に含まれる空気を除去するための脱気タンク43(
図4参照)等で構成されている。なお、
図5及び後述する
図8~
図11では、簡単のため脱気タンク43の図示を省略している。
【0056】
冷却システム40は、ラジエータ2で冷却した冷却液を、各電気装置に循環供給することにより、それら電気装置を冷却する。
【0057】
なお、本明細書において、冷却システム40における冷却液の送液方向上流側を「上流側」、冷却液の送液方向下流側を「下流側」と称することがある。
【0058】
[ラジエータ]
図4及び
図5に示すように、ラジエータ2は、冷却液回路42上に設けられ、冷却液を冷却するための装置である。
【0059】
ラジエータ2は、
図1に示すように、車幅方向に延びるように、車両1の前端部分に配置されている。ラジエータ2は、車両1の前端面を覆うフロントグリル11と対向している。車両1の走行時には、フロントグリル11を通じてモータルーム1bに外気が流入する。車両1の停止時には、不図示のファンの駆動によってフロントグリル11を通じてモータルーム1bに外気が流入する。ラジエータ2は、その外気と熱交換することにより、冷却液を冷却する。
【0060】
[電動ポンプ]
電動ポンプ41は、冷却液回路42内に冷却液を送液するための装置であり、限定する意図ではないが、具体的には例えば非容積式ポンプである。電動ポンプ41は、冷却液回路42上の、ラジエータ2の上流側に配管を介して接続されている。電動ポンプ41が作動すると、
図5に一点鎖線の矢印fで示す方向に、冷却液が冷却液回路42を循環する。
【0061】
電動ポンプ41は、制御装置10の制御に従って作動する。制御装置10には、基準となる電動ポンプ41への出力の指令値(例えばデューティー比)が、冷却システム40に合わせて予め設定されている。電動ポンプ41は、冷却システム40の使用時に、その基準となる出力で作動するように制御される(いわゆるオンオフ制御)。
【0062】
[冷却液]
冷却システム40に使用される冷却液としては、特に限定されるものではなく、自動車の冷却システムに一般的に使用される公知の冷却液を採用できる。具体的には例えば冷却液としては、水、エチレングリコール等を含み、-30℃等、氷点下でも凍結しない、いわゆる不凍液を採用できる。当該不凍液は水よりも粘性が高く、温度が低くなるほどその粘性は高くなる。
【0063】
[冷却液回路]
冷却液回路42は、
図4に示すように、駆動ユニット60及び充電器8に接続された、冷却液を流す配管等からなる。
【0064】
図5に示すように、冷却液回路42は、第1経路42aと、第2経路42bと、第3経路42cと、第4経路42dと、第5経路42eと、第6経路42f(バイパス経路)と、これらの経路を切り替えるための切替弁A,B,Cと、を備える。
【0065】
なお、
図5は、車両1の運転停止時且つ高電圧バッテリ6の充電を行っていない状態、すなわち冷却システム40の非使用状態を示している。すなわち、電動ポンプ41は作動しておらず、切替弁A,B,CはいずれもOFFの状態である。
【0066】
第1経路42a上には、駆動モータ3、電動ポンプ41、ラジエータ2等が配置されている。駆動モータ3を通過した冷却液は、電動ポンプ41を介して、ラジエータ2に送液されるように構成されている。
【0067】
第1経路42aの下流側は、第2経路42bと第6経路42fとに分岐しており、その分岐点には切替弁Aが設けられている。切替弁Aにより、第1経路42aの下流端に接続される経路として第2経路42b及び第6経路42fのいずれかが選択される。詳細には、切替弁AがON状態では、冷却液は第2経路42bへと送液され、第6経路42fへは送液されない(
図8、
図10、
図11参照)。一方、切替弁AがOFF状態では、冷却液は第6経路42fへと送液され、第2経路42bへは送液されない(
図9参照)。
【0068】
第2経路42b上には、充電器8が配置されている。上述したように、ラジエータ2及び駆動ユニット60は車両1の前方に配置されている。対して、充電器8は駆動ユニット60よりも後方、すなわち車両1の後方に配置されている。そのため、第2経路42bは、
図4に示すように、車両1の車室1aの下側に沿って前後方向に長く延びる一対の配管により形成されている。
【0069】
第2経路42bの下流側は、第3経路42cと第4経路42dとに分岐しており、その分岐点には切替弁Bが設けられている。切替弁Bにより、第2経路42bの下流端に接続される経路として第3経路42c及び第4経路42dのいずれかが選択される。詳細には、切替弁BがON状態では、冷却液は第3経路42cへと送液される(
図8、
図10参照)。一方、切替弁BがOFF状態では、冷却液は第4経路42dへと送液される(
図11参照)。
【0070】
第3経路42c及び第4経路42d上には、それぞれコンバータ5及びインバータ4が配置されている。すなわち、切替弁BがON状態では、充電器8を通過した冷却液はコンバータ5へ送液されることになる。切替弁BがOFF状態では、充電器8を通過した冷却液はインバータ4へ送液されることになる。
【0071】
なお、切替弁Bが設けられた分岐点には、第5経路42eも接続されているが、第2経路42bから直接第5経路42eへ冷却液が送液されることはない。切替弁BがON状態では、第4経路42dと第5経路42eとが接続される。切替弁BがOFF状態では、第3経路42cと第5経路42eとが接続される。
【0072】
第3経路42c及び第4経路42dの下流側は、第1経路42aの上流端に接続されており、合流点に切替弁Cが設けられている。切替弁Cにより、第3経路42c及び第4経路42dのいずれかが第1経路42aの上流端に接続された経路となる。詳細には、切替弁CがON状態では、第3経路42cから第1経路42aへ冷却液が流れる経路が形成される(
図8、
図11参照)。一方、切替弁CがOFF状態では、第4経路42dから第1経路42aへ冷却液が流れる経路が形成される(
図9、
図10参照)。
【0073】
切替弁Cが設けられた合流点には、第5経路42eも接続されているが、第5経路42eから直接第1経路42aへ冷却液が送液されることはない。切替弁CがON状態では、第4経路42dと第5経路42eとが接続される。切替弁CがOFF状態では、第3経路42cと第5経路42eとが接続される。
【0074】
詳細は後述するが、切替弁A,B,CをそれぞれON、ON、OFFとすると、第2経路42b、第3経路42c、第5経路42e、第4経路42d及び第1経路42aがこの順に接続される(後述する第3状態D3、
図10参照)。この経路は、充電器8、コンバータ5、インバータ4、駆動モータ3をこの順に直列に接続する。この経路では、冷却液は、充電器8、コンバータ5、インバータ4をこの順に通過して駆動モータ3に送液される。
【0075】
また、切替弁A,B,CをそれぞれON、OFF、ONとすると、第2経路42b、第4経路42d、第5経路42e、第3経路42c及び第1経路42aがこの順に接続される(後述する第4状態D4、
図11参照)。この経路は、充電器8、インバータ4、コンバータ5、駆動モータ3をこの順に直列に接続する。この経路では、冷却液は、充電器8、インバータ4、コンバータ5をこの順に通過して駆動モータ3に送液される。
【0076】
このように、本実施形態に係る冷却システム40では、切替弁A,B,Cを切り替えることにより、インバータ4及びコンバータ5の送液順序を変更可能としている。
【0077】
第6経路42fは、充電器8を迂回する経路であり、その下流側は第3経路42cの途中に接続されている。図示はしないが、第6経路42fは、モータルーム1b内に配置された配管とすることができる。
【0078】
なお、上述の切替弁A,B,CのON/OFF状態と経路との対応(例えば、切替弁AのON状態が第1経路42a及び第2経路42bの接続状態に対応すること等)は便宜的なものであり、当該対応に限定されるものではない。
【0079】
なお、冷却液回路42には、冷却液の温度を検出する冷却液温度センサ44が設けられている。冷却液温度センサ44は、例えば、循環する冷却液の温度が最も高くなる駆動モータ3の下流側に配置されている。
【0080】
[制御装置]
図1に示すように、制御装置10は車両1に搭載されている。制御装置10は、CPU、RAM、ROM等のハードウエアと、ハードウエアに実装された制御プログラム等のソフトウエアとで構成されている。制御装置10は、車両1の走行を総合的に制御する。
【0081】
図6に示すように、制御装置10には、機能的な構成として、電動ポンプ41を制御するポンプ制御部10aと、切替弁A,B,Cを制御する切替弁制御部10bと、インバータ4によって駆動モータ3の作動を制御するモータ制御部10cとが設けられている。制御装置10には、上述したコンバータ温度センサ45、インバータ温度センサ46、充電器温度センサ47、冷却液温度センサ44等の各種センサから信号が入力される。なお、これらの温度センサは、電流等から間接的に温度を検知するものであってもよい。
【0082】
制御装置10のモータ制御部10cは、コンバータ温度センサ45等から入力される信号に基づいてインバータ4を制御する。例えば、制御装置10は、コンバータ温度センサ45等から入力される信号に基づいて、コンバータ5等の温度異常を判断する。その結果、制御装置10が温度異常と判断した時には、制御装置10が駆動モータ3の出力を制限する制御を行う。
【0083】
制御装置10のポンプ制御部10a及び切替弁制御部10bは、コンバータ温度センサ45、インバータ温度センサ46、充電器温度センサ47、及び冷却液温度センサ44等から入力される信号に基づいて電動ポンプ41及び切替弁A,B,C等を制御し、冷却液の冷却液回路42への循環を制御する。すなわち、制御装置10は、冷却対象となっているインバータ4、コンバータ5、駆動モータ3、充電器8等の各電気装置が温度異常にならないよう、冷却システム40を適切に機能させる。
【0084】
<冷却システムの制御方法>
車両1の運転停止時には、少なくとも駆動モータ3及びインバータ4は作動しない。高電圧バッテリ6への充電は、車両1の運転停止時に行われる。商用電源を使用して高電圧バッテリ6を充電する場合には、充電器8が作動する。コンバータ5は、運転停止時においても、低電圧系の電力供給システム15の電力状態に応じて作動し得る。
【0085】
一方、車両1の運転時には、駆動モータ3及びインバータ4が作動する。コンバータ5は、低電圧バッテリ7の容量低下時等、低電圧系の電力供給システム15の電力状態に応じて作動する。そして、充電器8は、車両1の運転時は作動しない。
【0086】
すなわち、この車両1では、運転停止時及び運転時の双方において、電気装置が作動するので、冷却システム40も、それに伴って使用される。具体的には、車両1の運転時には、駆動モータ3、インバータ4、及びコンバータ5が作動して発熱するので、これらを冷却するために電動ポンプ41が作動される。そして、車両1の運転停止時には、場合に応じて充電器8及びコンバータ5が作動して発熱するので、これらを冷却するために電動ポンプ41が作動される。
【0087】
図7は、冷却システム40の制御フローの一例を示している。
【0088】
まず、充電器8が使用状態か否かを判定する(ステップS1)。
【0089】
充電器8が使用状態、すなわち車両1の運転停止時であり且つ普通充電経路による高電圧バッテリ6の充電時の場合には、
図7及び
図8に示すように、切替弁A,B,CをいずれもON状態(第1状態D1)として、冷却液が第2経路42bに流れるようにする。そうして、充電器8に冷却液を送液して充電器8を冷却し、充電器8の過度な温度上昇を抑制する。なお、切替弁B,CもON状態とすることにより、充電器8を通過した冷却液は、コンバータ5に送液される。そうして、コンバータ5も冷却することができる。
【0090】
この場合、駆動モータ3は作動状態ではないが、駆動ユニット60に含まれる電気装置のうちで最も発熱量が大きいため、冷却システム40の作動時には常に冷却液が送液されるように構成されている。駆動モータ3の非作動時には冷却液が駆動モータ3を迂回するように冷却液回路42を構成してもよいが、冷却液回路42の分岐を低減させる観点から、本実施形態の構成が好ましい。
【0091】
図7に示すように、充電器8が非使用状態である場合には、ステップS2でインバータ4の温度T
I/V及びコンバータ5の温度T
DCDCを取得する。
【0092】
そして、ステップS3において、インバータ4の温度TI/V及びコンバータ5の温度TDCDCの少なくとも一方が所定温度以上か否か判定する。
【0093】
例えば通常走行時や、運転停止時であり且つ急速充電経路による高電圧バッテリ6の充電時等には、インバータ4の温度T
I/V及びコンバータ5の温度T
DCDCのいずれも所定温度未満となる。この場合、
図7及び
図9に示すように、切替弁A,CをOFF、切替弁BをONの状態(第2状態D2)とする。そうして、冷却液を第6経路42fへ送液し、冷却液が第2経路42bに流れないようにする。これにより、冷却液回路42の経路長を短縮化して電動ポンプ41の負荷を軽減できる。
【0094】
なお、第6経路42fは、冷却液回路42上におけるコンバータ5の上流側に接続され、第6経路42fに送液された冷却液はコンバータ5に送液される。その後、冷却液は、切替弁C、切替弁Bを経てインバータ4に送液され、さらに切替弁Cを経て駆動モータ3に送液される。例えば通常走行時では、これらの電気装置において発生し得る発熱量は、コンバータ5が最も少なく、次いでインバータ4、駆動モータ3の順で多い。原則として、発熱量の少ない電気装置ほど、冷却液回路42の上流側に配置することで、効率的に各電気装置を冷却できるから、この順に冷却液が送液されることが望ましい。なお、通常走行時におけるコンバータ5及びインバータ4の発熱量の差は大きくはないため、両者の送液順は逆であってもよい。
【0095】
図7に示すように、ステップS3で、インバータ4の温度T
I/V及びコンバータ5の温度T
DCDCの少なくとも一方が所定温度以上と判定された場合には、ステップS4へ進む。そして、インバータ4の温度T
I/Vがコンバータ5の温度T
DCDCよりも高いか否か判定される。
【0096】
例えば、低電圧系の電力供給システムの使用量が増加し、高電圧バッテリ6の電力を電圧変換して使用する場合等には、コンバータ5の発熱量が増加する。そうすると、コンバータ5の温度TDCDCがインバータ4の温度TI/V以上、言い換えるとインバータ4の温度TI/Vがコンバータ5の温度TDCDC以下になる。そうすると、コンバータ5の冷却を強化する必要が生じる。
【0097】
この場合、本実施形態では、
図7及び
図10に示すように、切替弁A,BをON、切替弁CをOFFの状態(第3状態D3)とする。これにより、冷却液は切替弁Aを経て第2経路42b、すなわち充電器8へと送液される。その後、切替弁Bを経てコンバータ5へと送液され、切替弁C,Bを経てインバータ4に送液された後、再度切替弁Cを経て駆動モータ3へと送液される。
【0098】
ここに、本願発明者らは、充電器8は駆動ユニットよりも後方に配置されているから、充電時以外にも充電器8へ冷却液を循環させることにより、充電器8は、いわば第2のラジエータとしての役割を担うことも可能であることを見出した。
【0099】
すなわち、本構成では、冷却液をあえて充電器8へ送液後にコンバータ5へ送液させることにより、コンバータ5の冷却を強化できる。
【0100】
なお、本構成では、充電器8には車両1の下方外側へ突出する冷却フィン83が設けられている。これにより、車両1の走行風を利用して冷却液の温度をさらに低減させることができ、コンバータ5の冷却に資することができる。
【0101】
次に、例えば、高トルク時や、回生が長い時等には、インバータ4の発熱量が増加する。そうすると、インバータ4の温度TI/Vがコンバータ5の温度TDCDCを超えて、TDCDCよりも高くなる。そうすると、インバータ4の冷却を強化する必要が生じる。
【0102】
この場合、本実施形態では、
図7及び
図11に示すように、切替弁A,CをON、切替弁BをOFFの状態(第4状態D4)とする。これにより、冷却液は、切替弁Aを経て第2経路42b、すなわち充電器8へと送液される。そして、切替弁Bを経てインバータ4へと送液され、切替弁C,Bを経てコンバータ5に送液された後、再度切替弁Cを経て駆動モータ3へと送液される。
【0103】
これにより、充電器8を経てさらに温度が低下した冷却液がインバータ4に送液されるから、インバータ4の冷却を効果的に強化できる。
【0104】
このように、本実施形態に係る冷却システム40によれば、充電器8の作動時以外において、インバータ4及びコンバータ5の温度が所定温度未満のときは、充電器8への冷却液の循環を迂回させることにより、電動ポンプ41の負荷軽減を図ることができる。一方、充電器8の作動時以外において、インバータ4及びコンバータ5の少なくとも一方の温度が所定温度以上のときは、冷却液をあえて充電器8へ送液することにより、充電器8をいわば第2のラジエータとして機能させ、インバータ4又はコンバータ5の冷却を強化できる。こうして、本構成によれば、ポンプ負荷軽減と駆動ユニットの冷却改善とを両立させることができる。
【0105】
また、第3状態D3及び第4状態D4では、冷却液を充電器8へ送液後、温度が高い方の電気装置へ先に冷却液を送液するようにしている。具体的には、第3状態D3では、インバータ4及びコンバータ5のうち、温度が高いコンバータ5へ冷却液を送液後にインバータ4へ送液する。第4状態D4では、逆に、温度が高いインバータ4へ冷却液を送液後にコンバータ5へ送液する。このように、本実施形態に係る冷却システム40では、インバータ4及びコンバータ5の温度に応じて、該各電気装置への冷却液の送液順序が変更可能に構成されている。これにより、電気装置の冷却優先順位に応じた高効率の冷却が可能になる。
【0106】
なお、通常、冷却液は発熱量の小さい電気装置から大きい装置へ順に送液される。しかしながら、インバータ4及びコンバータ5の発熱量が増加するのは通常走行時以外である。また、両者の内部構造は似通っており両者の温度が所定温度以上の場合であってもその温度差が極端に大きくなることは少ない。従って、本構成では、温度が高い方の電気装置へ先に冷却液を送液させて、冷却の強化が必要な電気装置の冷却を効果的に行うようにしている。
【0107】
<実験例>
具体的に、従来の冷却システムについて、冷却液の温度を検証した結果について説明する。
【0108】
図14に示す従来の冷却システム400では、電動ポンプ141により冷却液回路142に送液される冷却液は、ラジエータ102を通過した後、コンバータ105、インバータ104、充電器108、及び駆動モータ103を順に通過する。なお、車両内における各電気装置のレイアウトは、
図1と同様の配置である。
【0109】
当該冷却システム400について、100km/h通常走行時における各電気装置を通過前後の冷却液(水)の温度差を
図12に示す。
図12中、実線で示すデータは実測値であり、破線で示すデータは計算値である。なお、通常走行時では、コンバータ105、インバータ104、及び駆動モータ103は作動状態である一方、充電器108は非作動状態である。
【0110】
図12に示すように、コンバータ105、インバータ104、及び駆動モータ103を通過した冷却液の温度はいずれも増加している。また、ラジエータ102を通過した冷却液の温度は低下している。そして、充電器108(冷却フィン無し)を通過した冷却液の温度も低下していることが判った。すなわち、この結果は、非使用状態の充電器108は、いわば自然対流として放熱されている状態であり、第2のラジエータとして使用可能であることが判る。
【0111】
図12の結果に基づき、外気温度を考慮して、充電器108の放熱量及び熱抵抗を算出すると、それぞれ約100W及び約4.8K/Wであった。
【0112】
充電器108に
図2と同様の冷却フィンを設けた場合、充電器108の熱抵抗は約2.4K/Wにまで低下すると予測される。そうすると、充電器108の放熱量は、約550Wにまで増加すると予測できる。
【0113】
図13は、充電器108の放熱量と、冷却液の温度差との関係(計算結果)を示している。
図13に示すように、充電器108の放熱量が約100Wから約550Wにまで増加すると、充電器108を通過した冷却液の温度は、1℃近く低下すると予測される。この計算結果を
図12に破線で示している。
【0114】
また、例えば
図3に示すように、冷却フィンを車外へ突出するように配置すれば、充電器108の放熱量はさらに増加し、充電器108の第2のラジエータとしての機能はさらに向上すると予測できる。
【0115】
<その他の実施形態>
以下、本開示に係る他の実施形態について説明する。なお、これらの実施形態の説明において、上記実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0116】
充電器8の設置位置は、駆動ユニット60よりも後方であれば、トランクフロア1cに限られない。
【0117】
充電器8は、冷却フィン83を備えていなくてもよい。また、充電器8が冷却フィン83を備えている場合、冷却フィン83は車外に突出していなくてもよい。
【0118】
なお、充電器8の第2のラジエータとしての機能を向上させる観点から、充電器8が冷却フィン83を備える場合には、充電器8の設置場所に拘わらず、充電器8は、その本体81が車両1の車内に配置されるとともに冷却フィン83が車外に突出するように、配置される構成がより望ましい。
【0119】
充電器8の放熱量を増加させるため、充電器8に対して送風可能なファンを設けてもよい。
【0120】
駆動モータ3と電動ポンプ41の送液順は逆であってもよい。すなわち、冷却液回路42は、冷却液が電動ポンプ41を通過後に駆動モータ3を通過するように構成されていてもよい。
【0121】
上記実施形態では、駆動モータ3には温度センサを設けていないが、駆動モータ3の例えばケーシングに温度センサを設けて、駆動モータ3のケーシング表面の温度を駆動モータ3の温度として検出するようにしてもよい。
【0122】
運転停止時であり且つ急速充電経路による高電圧バッテリ6の充電時には、冷却システム40を非使用状態(
図5)としてもよい。
【0123】
車両1は、例えばレンジエクステンダーEV(Range Extender EV)であってもよい。その場合、車両1は、エンジン、ジェネレータ及びコンバータが一体化されてなるレンジエクステンダーユニットを含む。エンジンは、発電用のエンジンである。ジェネレータは、エンジンの動力を受けて発電する。コンバータは、ジェネレータ及び高電圧バッテリ6に接続され、ジェネレータが発電した交流電流を直流電流に変換し、高電圧バッテリ6を充電する。車両1がレンジエクステンダーEVの場合、レンジエクステンダーユニットに含まれるジェネレータ及びコンバータも駆動ユニット60に含まれる電気装置として冷却液回路42上に配置され得る。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本開示は、ポンプ負荷軽減と駆動ユニットの冷却改善との両立を図ることができる電動車両用冷却システムをもたらすことができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0125】
1 車両(電動車両)
1c トランクフロア
2 ラジエータ(熱交換器)
3 駆動モータ(電気装置)
4 インバータ(電気装置)
5 コンバータ(電気装置、DC/DCコンバータ)
6 高電圧バッテリ
8 充電器
81 本体
83 冷却フィン
10 制御装置
40 冷却システム
41 電動ポンプ(ポンプ)
42 冷却液回路
42f 第6経路(バイパス経路)
45 コンバータ温度センサ(温度検出手段)
46 インバータ温度センサ(温度検出手段)
60 駆動ユニット