(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151980
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】作業爪及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01B 33/10 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A01B33/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061875
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598087818
【氏名又は名称】日本ホーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】黒田 将仁
(72)【発明者】
【氏名】岩松 淳司
(72)【発明者】
【氏名】森 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 亮人
【テーマコード(参考)】
2B033
【Fターム(参考)】
2B033BB02
2B033BB12
(57)【要約】
【課題】耐久性の向上を図ることができる耕耘爪を提供する。
【解決手段】作業爪である耕耘爪35は、爪本体部41と、この爪本体部41よりも硬質な硬質部42とを備える。爪本体部41は、複数の段差部、すなわち第1段差部51及び第2段差部52を刃縁側に有する。硬質部42は、刃付け面として機能する傾斜面77を有するように、第1段差部51及び第2段差部52にわたって設ける。つまり、硬質部42で両段差部51,52を埋める。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業機に用いられる作業爪であって、
爪本体部と、
前記爪本体部よりも硬質な硬質部とを備え、
前記爪本体部は、複数の段差部を刃縁側に有し、
前記硬質部は、刃付け面として機能する面を有するように前記複数の段差部にわたって設けられている
ことを特徴とする作業爪。
【請求項2】
農作業機に用いられる作業爪であって、
爪本体部と、
前記爪本体部よりも硬質な硬質部とを備え、
前記爪本体部は、複数の段差部を刃縁側に有し、
前記硬質部は、刃付け面として機能する曲面状の傾斜面を有するように前記複数の段差部にわたって設けられている
ことを特徴とする作業爪。
【請求項3】
前記複数の段差部の各々は、当該段差部側とは反対側の面に対して平行状に位置する面を有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の作業爪。
【請求項4】
前記複数の段差部の各々は、当該段差部側とは反対側の面に対して平行状に位置する第1面と、この第1面に連設された段差形成用の第2面とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の作業爪。
【請求項5】
前記爪本体部は、複数の段差部として、第1段差部及び第2段差部のみを有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の作業爪。
【請求項6】
前記硬質部は、少なくとも前記複数の段差部の全体を覆うように設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の作業爪。
【請求項7】
農作業機に用いられる作業爪の製造方法であって、
爪本体部のうち刃縁側の部分に複数の段差部を形成する段差部形成工程と、
前記爪本体部よりも硬質な溶着粉末材料を用いて、硬質部を刃付け面として機能する面を有するように前記複数の段差部に溶着して設ける溶着工程と
を備えることを特徴とする作業爪の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性の向上を図ることができる作業爪及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された作業爪(耕耘爪)が知られている。
【0003】
この従来の作業爪は、爪本体部と、この爪本体部よりも硬質な硬質部(硬質合金部)とを備えている。
【0004】
そして、硬質部は、爪本体部の裏面(縦刃部に対して横刃部が湾曲する方向とは逆側の面)に設けられている。つまり、この硬質部は、爪本体部のうち、傾斜状に刃付けされた刃付け面とは反対側の面(裏面)に硬質合金の溶着によって設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の作業爪では、硬質部が爪本体部のうち刃付け面とは反対側の面に設けられているため、爪本体部の刃付け面側が硬質部よりも先に摩耗しやすく、十分な耐久性が得られないおそれがある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、耐久性の向上を図ることができる作業爪及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業爪は、農作業機に用いられる作業爪であって、爪本体部と、前記爪本体部よりも硬質な硬質部とを備え、前記爪本体部は、複数の段差部を刃縁側に有し、前記硬質部は、刃付け面として機能する面を有するように前記複数の段差部にわたって設けられているものである。
【0009】
また、本発明に係る作業爪は、農作業機に用いられる作業爪であって、爪本体部と、前記爪本体部よりも硬質な硬質部とを備え、前記爪本体部は、複数の段差部を刃縁側に有し、前記硬質部は、刃付け面として機能する曲面状の傾斜面を有するように前記複数の段差部にわたって設けられているものである。
【0010】
さらに、本発明に係る作業爪の製造方法は、農作業機に用いられる作業爪の製造方法であって、爪本体部のうち刃縁側の部分に複数の段差部を形成する段差部形成工程と、前記爪本体部よりも硬質な溶着粉末材料を用いて、硬質部を刃付け面として機能する面を有するように前記複数の段差部に溶着して設ける溶着工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る耕耘爪(作業爪)を備えた農作業機の側面図である。
【
図2】(a)は同上耕耘爪の平面図、(b)は同上耕耘爪の側面図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る耕耘爪の側面図である。
【
図7】本発明の第3の実施の形態に係る耕耘爪の断面図である。
【
図8】本発明の第4の実施の形態に係る耕耘爪の断面図である。
【
図9】本発明の第5の実施の形態に係る耕耘爪の断面図である。
【
図10】本発明の第6の実施の形態に係る耕耘爪の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施の形態について
図1ないし
図5を参照して説明する。
【0014】
図1において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、当該トラクタの走行により圃場を進行方向である前方に移動しながら耕耘整地作業(農作業)をするロータリー耕耘機である。
【0015】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンクに着脱可能に連結される機体2と、この機体2に回転可能に設けられ、水平な左右方向の回転中心軸線である回転中心Pを中心として所定方向(例えばダウンカット方向の回転方向)に回転しながら耕耘作業をする耕耘体(ロータリー)3と、機体2に上下方向に回動可能に設けられ、耕耘体3の後方で整地作業する整地体(均平板)4とを備えている。
【0016】
機体2は、トラクタの後部の3点リンクに着脱可能に連結される3点連結部(走行車連結部)11を有している。そして、3点連結部11は、1本のトップマスト12及び左右1対で2本のロワーアーム13を有している。
【0017】
また、機体2は、トラクタの後部のPTO軸にジョイントを介して接続される入力軸16を回転可能に保持する軸保持部であるミッションケース部17を有している。そして、ミッションケース部17の左右両側には、左右方向に延びる丸パイプ状のフレーム部であるフレームパイプ部18の内端部がそれぞれ取り付けられている。
【0018】
さらに、左側のフレームパイプ部18の外端部には、一方側の耕耘体支持部であるチェーンケース部19が取り付けられ、また、右側のフレームパイプ部18の外端部には、他方側の耕耘体支持部であるブラケット部(図示せず)が取り付けられている。そして、互いに離間対向する左右のチェーンケース部19及びブラケット部間には、耕耘体3が回転可能に架設されている。なお、チェーンケース部19及びブラケット部には、サイドカバー板20が取り付けられている。
【0019】
また、機体2は、耕耘体3の上方部を覆う耕耘カバー部21を有している。そして、耕耘カバー部21の後端部には、整地体4が左右方向に延びる支軸22を中心として上下方向に回動可能に設けられている。なお、整地体4と機体2との間には、圃場面に対する整地体4の接地圧を調整するための接地圧調整手段23が架設され、また、機体2の前部にはゲージ輪24が設けられている。
【0020】
耕耘体3は、入力軸16側からの動力(回転動力)に基づいて回転中心Pを中心として所定方向に回転する水平な左右方向の回転軸(駆動軸)である耕耘軸31を有している。この耕耘軸31は、左右方向に細長い丸軸状の軸本体部32と、この軸本体部の外周面に突設された板状の複数の爪取付部であるフランジ部33を有している。
【0021】
そして、耕耘軸31の各フランジ部33には、当該耕耘軸31とともに回転中心Pを中心として所定方向(所定の回転方向)に回転しながら耕耘作業をする複数の作業爪である耕耘爪35が取付手段(例えばボルト及びナット等)によって着脱可能に取り付けられている。なお、耕耘軸31の爪取付部は、フランジ式には限定されず、例えばホルダー式でもよい。
【0022】
ここで、農作業機1の耕耘軸(回転軸)31に取り付けられる耕耘爪(複数段付き爪)35について詳細に説明する。
【0023】
耕耘爪35は、
図2ないし
図5にも示すように、耕耘軸31に取り付けられた状態で、所定の回転中心(耕耘軸芯)Pを中心として所定の回転方向に回転する湾曲板状の爪本体部41と、この爪本体部41に溶着等により設けられ、当該爪本体部41よりも硬質で耐摩耗性に優れた肉盛状の摩耗抑制部である硬質部42とを備えている。
【0024】
爪本体部(母材)41は、例えばSUP6等の金属材料からなるものである。硬質部(溶着材)42は、その爪本体部41を構成する金属材料よりも硬質で軽い金属材料(例えば鋼材にカーバイト、タングステン、クロム、ニッケル等を混合した金属材料等)からなる硬質合金部である。
【0025】
そして、例えば溶着によって硬質部42を爪本体部41に設ける場合、当該硬質部42を構成することになる硬質な金属材料の粉末(溶着粉末材料)を曲げ加工前の平板状の爪本体部41の所定部分(刃付けされてない刃縁側の部分)の上に所定量載置した後、当該粉末を熱で溶かして溶着する方法を用いる。
【0026】
より具体的には、耕耘爪35の製造方法は、曲げ加工前の平板状の爪本体部41のうち、例えば刃付けされてない刃縁側の部分に複数の段差部51,52を形成する段差部形成工程と、この工程後、爪本体部41を構成する金属材料よりも硬質で軽い溶着粉末材料を用いて、当該溶着粉末材料を上方を向いた段差部51,52上に所定量載置して加熱することにより硬質部42を刃付け面として機能する面(後述の傾斜面77)を有するように段差部51,52に溶着して設ける溶着工程とを備えるものである。なお、このような方法で硬質部42を設けることが好ましいが、例えば溶射、プラズマ粉末溶接、或いはレーザ粉末溶接等の他の方法を用いてもよい。
【0027】
爪本体部41は、回転方向に対して交差する方向に長手方向を有する湾曲板状のもので、例えば長手方向一端側である基端側(耕耘体3の回転中心P側)から長手方向他端側である先端側(耕耘体3の外周側である刃先側)に向かって順に連続して一体的に位置する3つの部分、すなわち、取付基部46、縦刃部47及び横刃部48によって構成されている。
【0028】
換言すると、爪本体部41は、耕耘軸31のフランジ部33に取付手段により着脱可能に取り付けられる取付基部46と、この取付基部46の先端側の端部に連設された縦刃部47と、この縦刃部47の先端側の端部に連設された横刃部48とを有している。なお、取付基部46には、複数の取付用孔50が形成されている。
【0029】
そして、爪本体部41は、縦刃部47から横刃部48にわたって反回転方向側(回転方向とは逆方向)に向かって湾曲し、かつ、縦刃部47に対して横刃部48が湾曲開始線Lを基端として一方面側である表面側(耕耘軸31の軸方向一方側)に徐々に立ち上がるように湾曲している。なお、横刃部48が表面側への湾曲を開始する湾曲開始線(立ち上げ線)Lは、縦刃部47と横刃部48との境界線となっている。
【0030】
また、爪本体部41は、複数、すなわち例えば2つの段差部51,52を刃縁側(回転方向前端側)に有している。つまり、爪本体部41は、複数(2段以上)の段差部として、例えば互いに繋がった第1段差部51及び第2段差部52のみを当該爪本体部41の所定部分(刃付けされてない刃縁側の部分)に有している。
【0031】
2つの段差部51,52は、爪本体部41の刃縁側における表面(一方面)及び裏面(他方面)のうち、少なくともいずれか一方、すなわち例えば表面のみに設けられている。なお、この爪本体部41に対しては刃付け加工が施されておらず、当該爪本体部41は刃付け面(刃付け部)を有していない。
【0032】
ここで、爪本体部41は、板厚寸法が全体にわたって一定(略一定を含む。以下でも同様)である第1部分(段差無しの部分)53と、爪本体部41の刃縁側に位置し、板厚寸法が変化する部分を含む第2部分(段差有りの部分)54とを有している。
【0033】
第1部分53は、互いに平行状に位置する表面56及び裏面57と、これら表裏面56,57に対して直交状に位置する峰縁側の端面58とを有している。また、第2部分54は、第1部分53の表面56と同一面状に位置しない表面61と、第1部分53の裏面57と同一面状に位置する裏面62と、これら表裏面61,62に対して直交状に位置する刃縁側の端面63とを有している。
【0034】
そして、段差部51,52は、爪本体部41の刃縁側の第2部分54の表面61のみに複数段状に形成されている。その結果、爪本体部41の第2部分54は、その厚さ寸法が刃縁側に向かって複数段階的に減少している。なお、段差部51,52は、例えばローラを用いた圧延加工により形成することが好ましいが、例えば鍛造加工、鋳造加工、或いは削り加工(切削加工)等によって形成してもよく、その段差部の形成方法は任意である。
【0035】
また、
図2(b)に示すように、両段差部51,52は、爪本体部41の刃縁側の表面において、縦刃部47の中間位置(中間位置ではなく基端位置でもよい)から横刃部48の先端位置にわたって長手状に形成されている。この
図2(b)に示す側面視において、段差部51,52の取付基部46側の端部は、縦刃部47に形成された曲面部(リブ部)65の回転方向前方側に位置している。
【0036】
曲面部65は、縦刃部47において、その表面側に向かって凸の湾曲状に形成されている(
図5参照)。つまり、この曲面部65は、表面側に向かって凸の湾曲状の表面66と、裏面側に向かって凹の湾曲状の裏面67とを有している。また、曲面部65は、縦刃部47の長手方向に沿った長手状のもので、この曲面部65の横刃部48側の端部は、第2段差部52の近傍に位置している。
【0037】
また、
図3に示すように、第1段差部51及び第2段差部52の各々は、当該段差部側とは反対側の面、すなわち第2部分54の裏面62に対して平行状に位置する第1面71と、この第1面71の峰縁側の端部(
図3では上端部)に交差状に連設された段差形成用の第2面72とを有している。
【0038】
つまり、2つの各段差部51,52は、いずれも、爪本体部41の第2部分54の裏面62に対して平行状に位置する第1面71と、爪本体部41の第2部分54の裏面62に対して非平行状である傾斜状に位置する第2面72とで構成されている。なお、第2部分54の表面61は、段差部51,52を構成する4つの面(2つの第1面及び2つの第2面)で構成されている。
【0039】
そして、第1段差部51の第2面72によって第1段差部51の第1面71と第2段差部52の第1面71との間に一の段差(
図4に示す寸法aの段差)が形成され、かつ、第2段差部52の第2面72によって第2段差部52の第1面71と第1部分53の表面56との間に他の段差(
図4に示す寸法bの段差)が形成されている。すなわち、爪本体部41の刃縁側に位置する第2部分(段差有りの部分)54は、2つの段差を有する。
【0040】
また、
図4に示すように、この図示した例では、第1段差部51の段差寸法(厚さ寸法)aは、第2段差部52の段差寸法(厚さ寸法)bと同じであるが、異なっていてもよい。逆に、第1段差部51の幅寸法cは、第2段差部52の幅寸法dとは異なっているが、同じでもよい。
【0041】
なお、幅寸法c,dは、側面視で段差部51,52のうち曲面部65の回転方向前方側に位置する部分では取付基部46側に向かって徐々に減少している。また、この
図4に図示した例では、爪本体部41の刃縁側の端部分の厚さ寸法は段差寸法a,bと同じであるが、異なっていてもよい。
【0042】
また、第1段差部51における第1面71と第2面72とがなす角度αは、第2段差部52における第1面71と第2面72とがなす角度βと同じであるが、異なっていてもよい。なお、角度α,βは、例えば90度以上170度以下であり、好ましくは165度である。
【0043】
硬質部(硬質金属部)42は、傾斜状の刃付け面として機能する機能面である傾斜面77を有するように、爪本体部41における複数の段差部51,52にわたって少なくとも当該複数の段差部51,52の全体を覆うように傾斜状に設けられている。
【0044】
すなわち例えば、この硬質部42は、2つの段差部51,52の全体を埋めるようにして縦刃部47及び横刃部48の刃縁側の表面に傾斜状に設けられている。そして、爪本体部41における複数の段差部51,52は、硬質部42の存在(溶着金属の存在)によって外部から認識不能となっている。なお、硬質部42の傾斜面77は、硬質な金属材料の溶着のみにより形成されるため、硬質部42に対して刃付けを施す必要はない。
【0045】
そして、
図2(b)に示すように、硬質部42の取付基部46側の端部は、両段差部51,52の取付基部46側の端部と同じ位置(略同じ位置を含む。以下でも同様)に位置している。硬質部42の刃先側の端部は、両段差部51,52の刃先側の端部と同じ位置に位置している。硬質部42の刃縁側の端部は、第1段差部51の刃縁側の端部と同じ位置に位置している。硬質部42の峰縁側の端部は、第2段差部52の峰縁側の端部と同じ位置に位置している。
【0046】
なお、このように両者の各端部同士が同じ位置に位置している(言い換えると硬質部と段差部とが互いに一致している)が、例えば所定距離だけずらして互いに異なる位置に位置するようにしてもよい。
【0047】
また、
図2(b)からみて明らかなとおり、側面視において、硬質部42のうち曲面部65の回転方向前方側に位置する部分の幅寸法は、段差部51,52の幅寸法に対応して取付基部46側に向かって徐々に減少している。なお、当該
図2(b)において、斜線を施したハッチング部が硬質部42である。
【0048】
さらに、
図3に示すように、硬質部42の傾斜面77は、曲面状であり、例えば表面側に向かって凸の湾曲状に形成されている。傾斜面77の峰縁側の端部(
図3では上端部)には、当該傾斜面77と滑らかに連続する湾曲面78が連設されている。傾斜面77は、第1段差部51の第1面71に対して傾斜状に位置し、かつ、第1段差部51の第2面72に対して平行状に位置している。
【0049】
そして、硬質部42のうち第1段差部51の第1面71を覆う部分の厚さ寸法は、刃縁側に向かって徐々に減少している。硬質部42のうち第1段差部51の第2面72を覆う部分の厚さ寸法は略一定である。
【0050】
なお、
図2において、当該
図2(a)に示す立ち上がり寸法(湾曲寸法)Wは、当該
図2(b)に示す垂直距離(湾曲開始線Lと刃縁との交点から刃先位置までの高さ寸法)Hの約1.0~1.2倍(1.2倍を除く)である。また、この
図2に示す例では、立ち上がり寸法Wは約95mm、垂直距離Hは約80mmである。
【0051】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0052】
農作業機1をトラクタの後部に連結し、このトラクタの走行により農作業機1を前方(進行方向)に移動させると、耕耘体3の耕耘爪35が耕耘軸31とともに回転しながら耕耘作業をし、その後方で整地体4が整地作業をする。
【0053】
この作業時において、圃場の土は、硬質部42側に刃付け面と同等の役割を果たす傾斜面77が存在するため、
図4に示す矢印の如く硬質部42の傾斜面77側を当該傾斜面77に沿って流れるが、その刃付け面として機能する傾斜状の傾斜面77は、硬質部42の一部であって硬質な金属材料で形成されていることから、摩耗し難い。
【0054】
そして、このような農作業機1における耕耘爪(作業爪)35によれば、爪本体部41が複数の段差部51,52を刃縁側に有し、かつ、爪本体部41よりも硬質な硬質部(合金部)42が刃付け面として機能する面である傾斜面77を有するように複数の段差部51,52にわたって傾斜状に設けられているため、従来の耕耘爪に比べて耐摩耗性が良好となり、よって耐久性の向上を図ることができ、しかも、従来の耕耘爪に比べて軽量化を図ることができ、よって、多数の耕耘爪35を装着した農作業機1の重量も軽くなるため、農作業機1とトラクタとのマッチング性の向上、トラクタの燃費向上、作業時の振動抑制等を図ることができる。
【0055】
また、爪本体部41の刃縁側には単数ではなく複数の段差部51,52を形成するため、単数の段差部を形成してその単数の段差部に硬質部を設けた構成とは異なり、耕耘抵抗の増大を防止しつつ、所望の強度を確保することができる。
【0056】
さらに、硬質部42の傾斜面77は、表面側に向かって凸の湾曲状(曲面状)に形成されているため、耐久性の向上をより適切に図ることができる。
【0057】
また、複数の段差部51,52の各々は、当該段差部51,52側とは反対側の面に対して平行状に位置する面を有するため、段差部形成工程において段差部51,52の形成が容易であり、しかも耐久性の向上をより効果的に図ることができる。
【0058】
なお、上記実施の形態では、硬質部と段差部とが互いに一致する場合について説明したが、例えば
図6に示すように、両者が一致せず、硬質部42の峰縁側の端部(硬質部の峰側ラインL1)と第2段差部52の峰縁側の端部(段差部の峰側ラインL2)との間の距離が刃先側に向かうに従って徐々に増大する構成でもよい。
【0059】
そして、この構成では、硬質部42は、爪本体部41の第1部分53の表面56の一部を覆う第1硬質部分42aと、爪本体部41の第2部分54の表面61の全部を覆う第2硬質部分42bとを有している。なお、例えば図示しないが、側面視で硬質部の峰側ラインや段差部の峰側ラインが、取付基部側の端部から刃先側の端部に至るまで爪本体部の峰縁のラインに対して平行状に位置するようにしてもよい。
【0060】
また、例えば
図7に示すように、第1面71と第2面72とがなす角度が90度で段差部51,52が階段状になっている構成でもよい。この
図7に図示した例では、2つの段差部51,52のいずれもが90度になっているが、例えばいずれか一方の段差部のみを90度としてもよい。
【0061】
また、例えば
図8に示すように、爪本体部41の第2部分54の裏面62に刃付け面81が形成された構成でもよい。なお、例えば刃付け面を第2部分54の表面61に形成した構成や、刃付け面を第2部分54の表裏面61,62の両方に形成した構成等でもよい。
【0062】
また、例えば
図9に示すように、爪本体部41の第2部分54の端面63を硬質部42で覆う構成でもよく、この場合には、硬質部42は当該端面63を覆う端面覆い部82を有している。なお、例えば第2部分54の裏面62まで硬質部42が延在するようにしてもよい。
【0063】
また、例えば
図10に示すように、爪本体部41の両面(一方側面及び他方側面の両方)、すなわち爪本体部41の第2部分54の表裏面61,62の両面に段差部51,52が形成され、かつ、それら両面の段差部51,52に硬質部42が溶着された構成等でもよい。つまり、爪本体部の刃縁側における表面及び裏面のうち少なくともいずれか一方に複数の段差部が形成され、かつ、その形成された段差部に当該段差部の一部又は全部を埋めるように硬質部が設けられた構成等でもよい。
【0064】
さらに、例えば段差部の段数は、3段以上の複数段でもよく、その段数は任意である。また、例えば段差部にR面や面取り部等があってもよい。
【0065】
また、例えば耕耘爪の外面全体に塗装層を設けてもよく、この場合に、例えば爪本体部と硬質部とで色が互いに異なるように2色の塗装層を設けるようにしてもよい。
【0066】
さらに、作業爪としてロータリー耕耘機に用いられる耕耘爪について説明したが、例えば代掻機、畦塗り機や草刈り機等の農作業機に用いる爪にも適用可能である。
【0067】
なお、本発明のいくつかの実施形態及びその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 農作業機
35 作業爪である耕耘爪
41 爪本体部
42 硬質部
51 第1段差部
52 第2段差部
71 第1面
72 第2面
77 傾斜面