(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015199
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】走査装置及び測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/42 20060101AFI20230124BHJP
G01S 7/484 20060101ALI20230124BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
G01S17/42
G01S7/484
G02B26/10 104Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176548
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2018160413の分割
【原出願日】2018-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝典
(72)【発明者】
【氏名】出田 亮
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雄平
(57)【要約】
【課題】
パルス光の出射態様及び偏向態様を正確に把握し、正確に走査領域の走査を行うことが可能な走査装置及び測距装置を提供する。
【解決手段】
パルス光を出射する光源と、パルス光の1の部分を受光する第1の受光素子と、第1の揺動軸と第1の揺動軸とは異なる第2の揺動軸との周りに揺動する揺動部を有し、かつパルス光の他の部分を揺動部により方向可変に偏向しつつ投光する偏向素子と、対象物によって反射されたパルス光の他の部分である反射光を受光する第2の受光素子と、第1の受光素子によってパルス光の1の部分が受光されたタイミングに基づいて、第1の揺動軸及び第2の揺動軸のうち少なくとも一方の揺動軸の駆動信号を調節する偏向素子制御部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を出射する光源と、
前記パルス光の1の部分を受光する第1の受光素子と、
第1の揺動軸と前記第1の揺動軸とは異なる第2の揺動軸との周りに揺動する揺動部を有し、かつ前記パルス光の他の部分を前記揺動部により方向可変に偏向しつつ投光する偏向素子と、
対象物によって反射された前記パルス光の前記他の部分である反射光を受光する第2の受光素子と、
前記第1の受光素子によって前記パルス光の前記1の部分が受光されたタイミングに基づいて、前記第1の揺動軸及び前記第2の揺動軸のうち少なくとも一方の揺動軸の駆動信号を調節する偏向素子制御部と、を有することを特徴とする走査装置。
【請求項2】
前記偏向素子制御部は、前記第1の受光素子によって前記パルス光の前記1の部分が受光されたタイミングの間隔に基づいて、前記第1の揺動軸及び前記第2の揺動軸のうち少なくとも一方の揺動軸の駆動信号を調節することを特徴とする請求項1に記載の走査装置。
【請求項3】
パルス光を出射する光源と、
前記パルス光の1の部分を受光する第1の受光素子と、
第1の揺動軸と前記第1の揺動軸とは異なる第2の揺動軸との周りに揺動する揺動部を有し、かつ前記パルス光の他の部分を前記揺動部により方向可変に偏向しつつ投光する偏向素子と、
対象物によって反射された前記パルス光の前記他の部分である反射光を受光する第2の受光素子と、
前記第1の受光素子によって前記パルス光の前記1の部分が受光されたタイミングに基づいて、前記第1の揺動軸及び前記第2の揺動軸のうちの一方の揺動軸の駆動信号を調節する偏向素子制御部と、を有することを特徴とする走査装置。
【請求項4】
前記偏向素子制御部は、前記第1の受光素子によって前記パルス光の前記1の部分が受光されたタイミングの間隔に基づいて、前記第1の揺動軸及び前記第2の揺動軸のうちの一方の揺動軸の駆動信号を調節することを特徴とする請求項3に記載の走査装置。
【請求項5】
前記光源は、電圧の印加によって独自にレーザ発振を行うレーザ素子を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の走査装置。
【請求項6】
前記偏向素子制御部は、前記第1の揺動軸及び前記第2の揺動軸のうちの共振駆動ではない揺動軸の駆動信号を調節することにより前記揺動部の揺動速度又は位相を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の走査装置。
【請求項7】
前記パルス光を前記1の部分及び前記他の部分に分離する光分離素子を有し、
前記光分離素子は、前記パルス光の前記1の部分を反射させ、かつ前記パルス光の前記他の成分を透過させるビームスプリッタ又はビームサンプラであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の走査装置。
【請求項8】
前記パルス光を前記1の部分及び前記他の部分に分離する光分離素子を有し、
前記光分離素子は、前記パルス光の前記1の部分の光路を遮るように配置されて前記パルス光の前記1の部分を反射させるミラーを含み、
前記ミラーに遮られない光路上の前記パルス光は前記他の部分となることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の走査装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載の走査装置と、
前記第1の受光素子によって前記パルス光の前記1の部分が受光されたタイミングと前記第2の受光素子によって前記反射光が受光されたタイミングに基づいて、前記対象物までの距離を測定する測距部と、を有することを特徴とする測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な走査を行う走査装置及び光学的な測距を行う測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パルス光を対象物に照射し、当該対象物によって反射された光を検出することで、当該対象物までの距離を測定する測距装置が知られている。また、対象物の光走査を行い、当該対象物までの距離に加えて当該対象物の形状や向きなどに関する情報を得ることができる走査型の測距装置が知られている。
【0003】
当該走査型の測距装置は、例えば、可動式のミラーなど、光を方向可変に偏向することで走査用のパルス光を生成する偏向素子を有する。例えば、特許文献1には、光源、走査
ミラー及び受光素子を含む測距装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該走査型の測距装置は、例えば、走査用のパルス光である走査光の走査領域への投光タイミング及び投光方向と、対象物によって反射された走査光の受光タイミングと、に基づいて、走査領域内の種々の対象物までの距離を測定する。
【0006】
ここで、走査光の走査領域への投光タイミングは、例えば、装置内に設けられた光源からのパルス光の出射タイミング、または、当該光源を構成する発光素子の発光タイミングに対応する。また、上記したように、偏向素子によって光を方向可変に偏向することで走査光を生成する場合、走査光の投光方向は、当該光源からの光の出射タイミング及び偏向素子の駆動状態によって定まる。
【0007】
従って、走査光を走査領域に向けて過不足なく投光することを考慮すると、走査光の投光方向及びその変化状況を正確に把握できることが好ましい。また、走査機能を有しない測距装置であっても、測距精度を向上させることを考慮すると、測距用のパルス光を出射するタイミングを正確にかつ厳密に把握できることが好ましい。
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、パルス光の出射態様を正確に把握することで正確な測距を行うことが可能な測距装置を提供することを目的の1つとしている。また、本発明は、パルス光の出射態様及び偏向態様を正確に把握し、正確に走査領域の走査を行うことが可能な走査装置及び測距装置を提供することを目的の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、パルス光を出射する光源と、前記パルス光の1の部分を受光する第1の受光素子と、第1の揺動軸と前記第1の揺動軸とは異なる第2の揺動軸との周りに揺動する揺動部を有し、かつ前記パルス光の他の部分を前記揺動部により方向可変に偏向しつつ投光する偏向素子と、対象物によって反射された前記パルス光の前記他の部分である反射光を受光する第2の受光素子と、前記第1の受光素子によって前記パルス光の前記1の部分が受光されたタイミングに基づいて、前記第1の揺動軸及び前記第2の揺動軸のうち少なくとも一方の揺動軸の駆動信号を調節する偏向素子制御部と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、パルス光を出射する光源と、前記パルス光の1の部分を受光する第1の受光素子と、第1の揺動軸と前記第1の揺動軸とは異なる第2の揺動軸との周りに揺動する揺動部を有し、かつ前記パルス光の他の部分を前記揺動部により方向可変に偏向しつつ投光する偏向素子と、対象物によって反射された前記パルス光の前記他の部分である反射光を受光する第2の受光素子と、前記第1の受光素子によって前記パルス光の前記1の部分が受光されたタイミングに基づいて、前記第1の揺動軸及び前記第2の揺動軸のうちの一方の揺動軸の駆動信号を調節する偏向素子制御部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1又は3に記載の走査装置と、第1の受光素子によってパルス光の1の部分が受光されたタイミングと第2の受光素子によって反射光が受光されたタイミングとに基づいて対象物までの距離を測定する測距部と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1に係る測距装置の全体構成を示す図である。
【
図2】実施例1に係る測距装置における偏向素子の構成を示す図である。
【
図3】実施例1に係る測距装置におけるパルス光の偏向態様を示す図である。
【
図4】実施例1に係る測距装置における制御部の動作フローを示す図である。
【
図5】実施例1に係る測距装置における制御部の動作フローを示す図である。
【
図6】実施例1に係る測距装置における制御部の動作フローを示す図である。
【
図7】実施例1に係る測距装置におけるパルス光の偏向態様の制御例を示す図である。
【
図8】実施例1に係る測距装置におけるパルス光の偏向態様の制御例を示す図である。
【
図9】実施例1に係る測距装置におけるパルス光の偏向態様の制御例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例0014】
図1は、実施例1に係る測距装置10の全体構成を模式的に示す図である。測距装置10は、所定の領域(以下、走査領域と称する)R0の光走査を行い、走査領域R0内に存在する対象物OBまでの距離を測定する走査型の測距装置である。
図1を用いて、測距装置10について説明する。なお、
図1には、走査領域R0及び対象物OBを模式的に示している。
【0015】
測距装置10は、パルス光L1を出射する光源11を有する。本実施例においては、光源11は、赤外領域にピーク波長を有するレーザ光を断続的に出射することでパルス光L1を出射する。
【0016】
測距装置10は、パルス光L1を第1の分離光(パルス光L1の1の部分)L11及び第2の分離光(パルス光L1の他の部分)L12に分離する光分離素子12を有する。本実施例においては、光分離素子12は、パルス光L1の光路上に設けられ、パルス光L1の一部を透過させることで第1の分離光L11を生成し、その他のパルス光L1を透過させることで第2の分離光L12を生成するビームスプリッタである。
【0017】
測距装置10は、第1の分離光L11を受光する受光素子(以下、第1の受光素子と称する)13を有する。本実施例においては、第1の受光素子13は、第1の分離光L11に対して光電変換を行い、第1の分離光L11に応じた電気信号(以下、第1の受光信号と称する)RS1を生成する少なくとも1つの光電変換素子を含む。第1の受光素子13は、第1の受光信号RS1を、パルス光L1の出射結果を示す信号として生成する。
【0018】
測距装置10は、第2の分離光L12を方向可変に偏向しつつ走査光L2として走査領域R0に向けて投光する偏向素子(以下、第1の偏向素子と称する場合がある)14を有する。本実施例においては、偏向素子14は、周期的な動作を行って第2の分離光L12の偏向方向を周期的に変化させる。偏向素子14は、第2の分離光L12を屈曲させて出射し、またその屈曲方向を周期的に変化させる。偏向素子14は、偏向された第2の分離光L12を走査光L2として走査領域R0に向けて投光する。
【0019】
本実施例においては、偏向素子14は、2つの揺動軸(以下、第1及び第2の揺動軸と称する)AX及びAYの周りに揺動し、第2の分離光L12を反射させる揺動ミラー14Aを有する。本実施例においては、偏向素子14は、揺動ミラー14Aが揺動することで、第2の分離光L12の反射方向を周期的に変化させる。
【0020】
なお、走査領域R0は、偏向素子14から走査光L2が投光される仮想の3次元空間である。
図1においては、走査領域R0の外縁を破線で模式的に示した。
【0021】
例えば、走査領域R0は、揺動ミラー14Aの第1の揺動軸AX周りの揺動方向に応じた第2の分離光L12の偏向方向の可変範囲に対応する方向(以下、第1の方向と称する)D1に沿った高さ方向の方向範囲と、揺動ミラー14Aの第2の揺動軸AY周りの揺動方向に応じた第2の分離光L12の偏向方向の可変範囲に対応する方向(以下、第2の方向と称する)D2に沿った幅方向の方向範囲と、走査光L2が所定の強度を維持できる奥行方向の範囲と、を有する錐状の空間として定義されることができる。
【0022】
また、走査領域R0内における偏向素子14から所定の距離だけ離れた仮想の平面を走査面R1としたとき、走査面R1は、第1及び第2の方向D1及びD2に沿って広がる2次元的な領域として定義されることができる。走査光L2は、この走査面R1を走査するように、走査領域R0に向けて投光される。
【0023】
また、
図1に示すように、走査領域R0に対象物OB(すなわち第2の分離光L1に対して反射性又は散乱性を有する物体又は物質)が存在する場合、走査光L2は、対象物OBによって反射又は散乱される。対象物OBによって反射された走査光L2の一部は、反射光L3として偏向素子14に戻って来る。
【0024】
反射光L3は、偏向素子14によって偏向(屈曲)される。反射光L3は、偏向素子14によって偏向された後、第2の分離光L12とほぼ同一の光路を第2の分離光L12とは反対の方向に向かって進む。
【0025】
測距装置10は、偏向素子14を経た反射光L3を受光する受光素子(以下、第2の受光素子と称する)15を有する。本実施例においては、第2の受光素子15は、反射光L3に対して光電変換を行い、反射光L3に応じた電気信号(以下、第2の受光信号と称する)RS2を生成する少なくとも1つの光電変換素子を含む。
【0026】
第2の受光素子15は、第2の受光信号RS2を、反射光L3の受光結果すなわち走査光L2の投受光結果を示す信号として生成する。換言すれば、測距装置10は、第2の受光素子15によって生成された第2の受光信号RS2を走査領域R0の走査結果として取得する。
【0027】
本実施例においては、測距装置10は、光分離素子12と偏向素子14との間の第2の分離光L12及び反射光L3に共通の光路上に設けられ、反射光L3を偏向して第2の受光素子15に導く偏向素子(以下、第2の偏向素子と称する場合がある)16を有する。本実施例においては、偏向素子16は、第2の分離光L12を透過させかつ反射光L3を第2の受光素子15に向けて反射させるビームスプリッタである。本実施例においては、偏向素子16は、第2の分離光L12と反射光L3とを分離する投受光分離素子として機能する。
【0028】
なお、
図1に示す走査領域R0は、実質的に走査情報を得る領域(有効走査領域)である場合について説明する。例えば、走査光L2は、走査領域R0のわずかに外側に対しても投光される場合がある。しかし、走査領域R0の外に向けて投光される走査光L2については、例えば走査処理(第2の受光素子15による受光処理)が行われない。
【0029】
測距装置10は、光源11、第1の受光素子13、偏向素子14及び第2の受光素子15の各々の駆動及びその制御を行う制御部17を有する。まず、本実施例においては、制御部17は、光源11に駆動信号DLを供給し、光源11にパルス光L1の出射動作を行わせる。また、制御部17は、偏向素子14に駆動信号DX及びDYを供給し、揺動ミラー14Aを揺動させる。
【0030】
次に、制御部17は、第1の受光素子13を駆動し、第1の受光信号RS1を取得する。制御部17は、第1の受光信号RS1に基づいて、光源11によるパルス光L1の出射態様を監視する出射態様監視部21を有する。
【0031】
本実施例においては、出射態様監視部21は、第1の受光信号RS1(すなわち第1の受光素子13による第1の分離光L11の受光結果)に基づいて、光源11からパルス光L1が出射されたタイミングを特定する出射タイミング特定部21Aを有する。また、出射態様監視部21は、所定の期間に亘って第1の受光信号RS1の監視を行うことで、パルス光L1の出射間隔を特定するパルス間隔特定部21Bを有する。
【0032】
本実施例においては、出射態様監視部21は、第1の受光信号RS1内における第1の分離光L11を示すパルスを検出する。そして、出射態様監視部21は、当該パルスの位置及び他のパルスとの間隔に基づいて、光源11によるパルス光L1の出射タイミング及び出射間隔を特定及び監視する。
【0033】
制御部17は、第1及び第2の受光信号RS1及びRS2(すなわち第1の分離光L11及び反射光L3の受光結果)に基づいて対象物OBまでの距離を測定する測距部22を有する。
【0034】
本実施例においては、測距部22は、第2の受光信号RS2から反射光L3を示すパルスを検出し、第2の受光素子15によって反射光L3が受光されたタイミングを特定する。そして、測距部22は、出射態様監視部21によって特定されたパルス光L1の出射タイミングと反射光L3の受光タイミングとの間の時間差に基づいて、タイムオブフライト法によって、対象物OB(又はその一部の表面領域)までの距離を測定する。また、測距部22は、測定した距離情報を示すデータ(測距データ)を生成する。
【0035】
また、本実施例においては、測距部22は、走査領域R0(走査面R1)を複数の走査点(測距点)に区別し、当該複数の走査点の各々の測距結果(距離値)を画素として示す走査領域R0の画像(測距画像)を生成する。本実施例においては、測距部22は、測距点と揺動ミラー14Aの変位(揺動位置)とを示す情報とを対応付け、走査領域R0の2次元マップ又は3次元マップを示す画像データを生成する。
【0036】
また、測距部22は、例えば、走査光L2の投光方向の変化周期、すなわち走査領域R0を走査する周期である走査周期を測距画像の生成周期とし、当該走査周期毎に1つの測距画像を生成する。
【0037】
なお、走査周期とは、例えば、測距装置10が走査領域R0に対する光走査を周期的に行う場合において、偏向素子14の揺動ミラー14Aの任意の変位の状態が、その後に再度当該変位の状態に戻るまでの期間をいう。また、測距部22は、生成した複数の測距画像を時系列に沿って動画として表示する表示部(図示せず)を有していてもよい。
【0038】
また、制御部17は、出射態様監視部21によって特定されたパルス光L1の出射タイミング及び出射間隔に基づいて、走査領域R0内の複数の走査点の群である走査点群を監視する走査点群監視部23を有する。例えば、走査点群監視部23は、走査面R1を見たときの走査周期内の走査点(すなわち走査光L2が照射される領域)の配置状況を判定する。また、走査点群監視部23は、走査周期毎に走査点の配置状況を判定することで、走査点群を監視する。
【0039】
制御部17は、走査点の配置状況に応じて、偏向素子14によるパルス光L1(第2の分離光L12)の偏向態様を制御する偏向素子制御部24を有する。本実施例においては、偏向素子制御部24は、走査点群監視部23によって判定された走査点の配置状況と、設計上の走査点の配置構成とを比較する。そして、偏向素子制御部24は、当該走査点群の比較結果に基づいて、偏向素子14に供給する駆動信号DX及びDYの態様を調節し、揺動ミラー14Aの揺動態様を制御する。
【0040】
換言すれば、本実施例においては、偏向素子制御部24は、第1の受光素子13によってパルス光P1の一部である第1の分離光L11が受光されたタイミングに基づいて、偏向素子14の動作態様を変化させる。例えば、偏向素子制御部24は、偏向素子14による第2の分離光L12の偏向方向の変化速度及びその位相を制御する。
【0041】
このように、本実施例においては、測距装置10は、光源11から出射されたパルス光L1を監視しつつ測距動作を行う。また、測距装置10は、パルス光L1の監視結果及び偏向素子14の状態に基づいて偏向素子14の偏向態様を調節しつつ走査領域R0の走査を行う。
【0042】
図2は、偏向素子14の上面図である。本実施例においては、偏向素子14は、揺動ミラー14Aを有するMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーである。まず、本実施例においては、偏向素子14は、フレーム部31と、フレーム部31によって支持され、第1及び第2の揺動軸AX及びAYの周りに揺動する揺動部32とを有する。
【0043】
揺動部32は、一端がフレーム部31の内周部に固定され、第1の揺動軸AXに沿って延び、かつ第1の揺動軸AXの周方向の弾性を有する一対のトーションバーTXを有する。また、揺動部32は、一対のトーションバーTXの内側において第1の揺動軸AXの周りに揺動可能なように一対のトーションバーTXの他端に接続された揺動枠SXを有する。揺動枠SXは、一対のトーションバーTXが第1の揺動軸AXの周方向に沿ってねじれることで、第1の揺動軸AXの周りに揺動する。
【0044】
また、揺動部32は、一端が揺動枠SXの内周部に固定され、第2の揺動軸AYに沿って延び、かつ第2の揺動軸AYの周方向の弾性を有する一対のトーションバーTYを有する。また、揺動部32は、一対のトーションバーTYの内側において第2の揺動軸AYの周りに揺動可能なように一対のトーションバーTYの他端に接続された揺動板SPを有する。
【0045】
揺動板SPは、一対のトーションバーTYが第2の揺動軸AYの周方向に沿ってねじれることで、第2の揺動軸AYの周りに揺動する。また、揺動板SPは、揺動枠SXが第1の揺動軸AXの周りに揺動することで、第1及び第2の揺動軸AX及びAYの周りに揺動する。
【0046】
偏向素子14は、例えば、電磁気的、静電気的、圧電的又は熱的に揺動板SPを揺動させる揺動力(すなわち揺動部32の駆動力)を生成する駆動力生成部(図示せず)に接続された端子33を有する。制御部17は、端子33に接続されている。偏向素子14の揺動部32は、制御部17からの駆動信号DX及びDYを受けて揺動する。
【0047】
また、偏向素子14は、揺動板SP上に形成された光反射膜34を有する。光反射膜34は、揺動板SPの揺動に従って、第1及び第2の揺動軸AX及びAYの周りに揺動する。本実施例においては、光反射膜34は、偏向素子14における揺動ミラー14Aとして機能する。
【0048】
図3は、測距装置10における走査領域R0の走査態様を模式的に示す図である。
図3は、走査面R1上における走査光L2の軌跡を模式的に示す図である。
図3を用いて、光源11及び偏向素子14)の動作について説明する。
【0049】
本実施例においては、光源11は、パルス光L1として、点状のビーム形状のレーザ光を出射するように構成されている。また、偏向素子14は、揺動ミラー14Aを、第1の揺動軸AXの周りには非共振の態様で揺動させ、第2の揺動軸AYの周りには共振させつつ揺動させる。
【0050】
例えば、制御部17は、光源11に対し、所定の間隔で点状のレーザ光を生成させる駆動信号DLを供給する。また、制御部17は、偏向素子14における揺動ミラー14Aを第1の揺動軸AXの周りに揺動させる駆動力生成部に対し、揺動部32及び揺動ミラー14Aの共振周波数とは異なる周波数の駆動信号DX、例えばのこぎり波の信号DX1を供給する。
【0051】
一方、例えば、制御部17は、偏向素子14における揺動ミラー14Aを第2の揺動軸AYの周りに揺動させる駆動力生成部に対し、揺動部32及び揺動ミラー14Aの共振周波数に対応する周波数の駆動信号DY、例えば正弦波の信号DY1を供給する。これによって、揺動ミラー14Aは、第1の揺動軸AXの周りには低速で(長い揺動周期で)揺動し、第2の揺動軸AYの周りには高速で(短い揺動周期で)揺動する。
【0052】
従って、本実施例においては、偏向素子14は、走査領域R0に対し、揺動ミラー14Aの第2の揺動軸AY周りの変位方向に対応する方向である第2の方向D2を主走査方向とし、揺動ミラー14Aの第1の揺動軸AX周りの変位方向に対応する方向である第1の方向D1を副走査方向とするラスタースキャンを行う。
【0053】
従って、偏向素子14から走査面R1を見たとき、走査光L2は、
図3に示すような軌跡(軌道)TRを辿るように順次投光される。すなわち、偏向素子14は、光源11によって生成されたパルス光L1を第2の方向D2に沿って順次偏向しつつ投光し、この投光動作を第1の方向D1に沿って繰り返し行うような態様で、パルス光L1を偏向する。測距装置10は、走査領域R0に対し、第2の方向D2に沿った走査線を第1の方向D1に沿って順次取得するような態様で走査を行う。
【0054】
例えば、揺動ミラー14Aの第2の揺動軸AYが鉛直方向に沿った方向となるように測距装置10を配置した場合、第1の方向D1は鉛直方向に対応し、第2の方向D2は水平方向に対応する方向となる。この場合、測距装置10は、水平方向を主走査方向とし、鉛直方向を副走査方向として、走査領域R0に対して走査光L2によるラスタースキャンを行う。
【0055】
図4及び
図5は、測距装置10による制御部17の動作フローを示す図である。また、
図6は、測距装置10によるパルス光L1の出射動作及び走査光L2の投受光動作のフローを模式的に示す図である。
図4乃至
図6を用いて、測距装置10の動作ルーチンについて説明する。
【0056】
まず、
図4は、制御部10による測距動作のフローを示す図である。制御部17は、光源11を駆動する(ステップS11)。なお、制御部17は、ステップS11においては、光源11の他、第1及び第2の受光素子13及び15並びに偏向素子14の駆動を開始する。
【0057】
次に、出射態様監視部21の出射タイミング特定部21Aは、第1の受光素子13から第1の受光信号RS1を取得し、パルス光L1の一部である第1の分離光L11が受光されたか否かを判定する(ステップS12)。第1の分離光L11が受光されたと判定された場合、出射タイミング特定部21Aは、パルス光L1が光源11から出射されたタイミングを特定する(ステップS13)。
【0058】
また、測距部22は、第1の受光素子13によって第1の分離光L11が受光されたタイミングに基づいて、測距の基準タイミング測距の基準タイミング、本実施例においてはタイムオブフライトの開始時刻を設定する(ステップS14)。例えば、測距部22は、第1の受光素子13によって第1の分離光L11が受光されたタイミングを測距の基準タイミングとして設定してもよいし、パルス光L1が光源11から出射されたタイミングを基準タイミングとして設定してもよい。
【0059】
また、測距部22は、ステップS14において、測距の時間窓、本実施例においてはタイムオブフライトの終了時刻として許容する時間範囲を設定する。より具体的には、測距の時間窓とは、例えば、出射されたパルス光L1に起因する反射光L3の受光処理(第2の受光信号RS2内でパルスを検出する処理)を行う範囲として限定する時間領域に対応する。
【0060】
例えば、測距の時間窓の始点は、第1の分離光L11が第1の受光素子13によって受光されたタイミングよりも後の任意のタイミングであってもよい。また、例えば、測距の時間窓の終点は、次にパルス光L1が出射されるタイミングよりも前の任意のタイミングであってもよい。また、例えば、測距の時間窓の終点は、次に第1の分離光L11が第1の受光素子13によって受光されるタイミングよりも前の任意のタイミングであってもよい。
【0061】
続いて、測距部22は、第2の受光素子15から第2の受光信号RS2を取得し、第2の受光素子15によって反射光L3が当該時間窓内に受光されたか否かを判定する(ステップS15)。そして、反射光L3が当該時間窓内に受光されたと判定された場合、測距部22は、設定した基準タイミング及び第2の受光素子15によって反射光L3が受光されたタイミングに基づいて、対象物OBまでの距離を測定する(ステップS16)。
【0062】
なお、制御部17は、ステップS16の後は、ステップS12~S16を繰り返すか、又は測距フローを終了する。このように、測距部22は、第1の受光素子13によって第1の分離光L11が受光されたタイミングと、第2の受光素子15によって反射光L3が受光されたタイミングとに基づいて、測距動作を行う。
【0063】
なお、例えば、ステップS12において第1の分離光L11が受光されたと判定されなかった場合、及びステップS15において反射光L3が時間窓内で受光されたと判定されなかった場合、制御部17は動作を終了する。
【0064】
次に、
図5は、制御部17による偏向素子14の動作制御のフローの例を示す図である。出射態様監視部21の出射タイミング特定部21Aは、ステップS13の後、再度第1の分離光L11が第1の受光素子13によって受光されたか否かを判定する(ステップS21)。続いて、ステップS21において第1の分離光L11が受光されたと判定された場合、出射タイミング特定部21Aは、パルス光L1が光源11から出射されたタイミングを特定する(ステップS22)。すなわち、出射態様監視部21は、第1の受光素子13が複数回に亘ってパルス光L1(第1の分離光L11)を受光するまで待機する。
【0065】
続いて、出射態様監視部21のパルス間隔特定部21Bは、この複数回に亘るパルス光L1の出射タイミングの特定結果に基づいて、パルス光L1の出射間隔(パルス光L1が出射された時間間隔)を特定する(ステップS23)。なお、パルス間隔特定部21Bは、出射タイミング特定部21Aによるパルス光L1の出射タイミングの特定結果を取得せず、ステップS13及びS22を経ずに、パルス光L1の出射間隔を特定してもよい。
【0066】
続いて、制御部17の走査点群監視部23は、パルス光L1の出射タイミング及び出射間隔に基づいて、走査領域R0内における走査点の配置状況を判定する(ステップS24)。例えば、走査点群監視部23は、走査面R1を定義し、走査面R1に照射される走査光L2の領域をマップ化する。また、走査点群23は、例えば、走査領域R0の走査周期毎に、走査点の配置状況を判定する。
【0067】
続いて、制御部17の偏向素子制御部24は、走査点群監視部23によって判定された走査点の配置状況に基づいて、偏向素子14によるパルス光L1の偏向動作を制御する(ステップS25)。例えば、偏向素子制御部24は、偏向素子14の揺動ミラー14Aの揺動速度及び位相を調節する。制御部17は、例えばこのようにして偏向素子14の制御を行う。
【0068】
図6は、制御部17の制御フローと、光源11、第1の受光素子13、偏向素子14及び第2の受光素子15の動作フローとの関係を模式的に示す図である。例えば、光源11は、測距装置10の駆動開始後(ステップS11の後)のタイミングt1において、パルス光L1を出射する。また、本実施例においては、パルス光L1は、光分離素子12によって分離される。第1の受光素子13は、タイミングt2において、分離されたパルス光L1の一部である第1の分離光L11を受光し、第1の受光信号RS1を生成する。
【0069】
この際、制御部17は、例えば
図4のステップS12~S14に示す動作を行い、パルス光L1の出射タイミングであるタイミグt1を特定し、測距の基準タイミング及び時間窓TWを設定する。
【0070】
続いて、偏向素子14は、第1の受光素子13に受光されない他のパルス光L1である第2の分離光L12を偏向しつつ、走査光L2として走査領域R0に向けて投光する。走査光L2は、タイミングt3において、対象物OBに照射され、反射又は散乱される。
【0071】
本実施例においては、反射された走査光L2の一部である反射光L3は、偏向素子14及び16によって偏向(屈曲)される。そして、第2の受光素子15は、タイミングt4において、偏向素子14及び16を経た反射光L3を受光し、第2の受光信号RS2を生成する。
【0072】
この際、制御部17は、例えば
図4のステップS15及びS16に示す動作を行い、反射光L3の受光タイミングであるタイミングt4の特定、タイミングt4が時間窓TW内のタイミングであるか否かの判定を行いつつ、対象物OBに対して測距を行う。
【0073】
また、光源11、第1の受光素子13、偏向素子14及び第2の受光素子15は、タイミングt4よりも後のタイミングにおいては、タイミングt1~t4と同様の動作を繰り返し行う。例えば、タイミングt4の任意のタイミングt5において、光源11からパルス光L1が出射される。また、パルス光L1は、光分離素子12によって分離された後、その一部がタイミングt6において第1の受光素子13によって受光される。
【0074】
また、制御部17は、タイミングt5以降についても、タイミングt1~t4と同様の測距動作(ステップS12~S16)を行う。なお、
図6においては、時間窓TWの始点がタイミングt2よりも後のタイミングとして設定され、時間窓TWの終点がタイミングt5よりも前のタイミングとして設定される場合について示している。
【0075】
また、タイミングt6以降においては、制御部17は、例えば
図5のステップS22~S25に示す偏向素子の制御動作を合わせて行う。なお、ステップS22~S25については、所定期間毎、例えば、所定の走査周期毎又は所定の動作時間経過毎(例えば半日毎など)に行われてもよい。
【0076】
このように、測距装置10は、パルス光L1の出射状況を考慮し、走査領域R0の走査態様を調節しつつ対象物OBまでの距離を測定する。換言すれば、測距装置10は、光源11から出射されたパルス光L1を実測し、この実測結果を走査動作及び測距動作にフィードバックする。
【0077】
従って、走査光L2となるパルス光L1の出射タイミングを正確にかつ厳密に把握することができ、正確なタイムオブフライトを算出することができる。すなわち、パルス光P1の出射態様を正確に把握することで正確な測距を行うことが可能な測距装置10を提供することができる。
【0078】
例えば、光源11は、レーザ光を出射するレーザ素子など、種々の発光素子を含む。この発光素子は、電圧の印加によって発光動作を行い、これを出射する。また、例えば、レーザ素子は、電圧の印加によってレーザ発振を行い、当該発振状態の光の一部をパルス光L1として出射する。
【0079】
しかし、発光素子の動作特性、例えばレーザ素子の発振特性は、使用される環境(例えば温度や湿度)及び使用期間に応じて、わずかに設計上の特定とは異なる特性を示す場合がある。従って、光源11からパルス光L1が出射されるタイミングは、これらの使用条件に応じてわずかに変化する場合がある。
【0080】
測距装置10は、このようにパルス光L1の出射タイミングが変化する場合でも、パルス光L1を受光して監視することで、パルス光L1の出射タイミングの変化に追従して測距動作を行うことができる。従って、正確なタイムオブフライトを算出することができ、正確な測距を行うことができる。
【0081】
また、測距装置10を構成する場合に使用する光源11の条件が大幅に緩和されることとなる。例えば、駆動信号DL、例えば駆動信号DLの波形を調節することによってはパルス光L1の出射タイミングを特定及び調節することができない発光素子を光源11に用いることができる。
【0082】
例えば、固体物質をレーザ媒質とする固体レーザをQスイッチ法やモード同期法を用いて発振させる構成の光源など、独自にレーザ発振を行うレーザ素子を含む光源については、パルス光L1の出射タイミングを外部から制御できない場合がある。例えば、光源11がこのような固体レーザを含む場合、制御部17は、光源11に対しては、駆動信号DLとして電圧(例えば直流電圧)を印加することしかできない。
【0083】
これに対し、測距装置10は、パルス光L1の出射態様を監視する(パルス光L1の出射タイミングを特定する)ように構成されている。従って、上記した固体レーザを有する光源であっても、光源11として用いることができる。すなわち、測距装置10は、例えば、光源11が電圧の印加によって独自にレーザ発振を行うレーザ素子を含む場合にも有用な構成を有する。
【0084】
なお、駆動信号DLの構成(例えば駆動信号DL内に挿入するパルスの位置)を調節することでパルス光L1の出射タイミングを制御することが可能な発光素子を光源11として用いる場合でも、上記したように、測距装置10の測距精度及び走査精度は十分に向上する。
【0085】
次に、
図7~
図9を用いて、制御部17による偏向素子14の制御について説明する。
図7、
図8及び
図9は、それぞれ、制御部17による偏向素子14の制御例、及びその制御前後における走査面R1上の走査点PSの配置例を示す図である。
【0086】
図7は、設計上のパルス光L1の出射間隔よりも長い間隔でパルス光L1が出射されていた場合の制御部17の制御例を模式的に示す図である。具体的には、本実施例においては、走査点群監視部23は、出射態様監視部21によって特定されたパルス光L1の出射
タイミング及び出射間隔をもとに、ステップS24において、走査点PSの配置状況を判定する。そして、
図7に示す例では、走査点群監視部23は、走査点PSが設計上の配置間隔(例えば
図3に示すような配置構成)よりも所定の間隔以上離れて配置されていることを判定する。
【0087】
この場合、走査領域R0に設けられる走査点PSは、設計上の走査点PSよりも、他の隣接する走査点PSとの間隔が大きくなり、また走査点PSの個数が少なくなる。従って、走査領域R0内に走査漏れとなる領域(走査光L2が照射されない領域)ができる場合がある。また、設計上の走査点PSとは大きく異なる位置の点が走査される場合、走査領域R0の空間的な走査精度が低下する場合がある。
【0088】
これに対し、本実施例においては、ステップS25において、偏向素子制御部24は、第1の方向D1の偏向速度を遅くするように、偏向素子14を制御する。具体的には、本実施例においては、偏向素子制御部24は、偏向素子14の揺動ミラー14Aの第1の揺動軸AX周りの揺動速度を遅くするように、駆動信号DXを調節する。
【0089】
これによって、
図7に示すように、第1の方向D1において、隣接する走査点PS間の距離が小さくなる。従って、パルス光L1の出射間隔が長くなった場合の走査漏れの発生又は走査精度の低下を抑制することができる。
【0090】
次に、
図8は、設計上のパルス光L1の出射間隔よりも短い間隔でパルス光L1が出射されていた場合の制御部17の制御例を模式的に示す図である。本実施例においては、走査点群監視部23は、
図8に示す例では、走査点PSが所定の間隔以下に近接して配置されていることを判定する。
【0091】
この場合、走査領域R0に設けられる走査点PSは、設計上の走査点PSよりも、他の隣接する走査点PSとの間隔が小さくなり、また走査点PSの個数が多くなる。従って、走査領域R0内において重複する領域を走査する(走査光L2が照射される領域が重複する)場合がある。従って、パルス光L1の利用効率が低下する場合がある。また、
図7に示す場合と同様に、設計上の走査点PSとは大きく異なる位置の点が走査される場合には、走査領域R0の空間的な走査精度が低下する場合がある。
【0092】
これに対し、本実施例においては、偏向素子制御部24は、第1の方向D1の偏向速度を速くするように、偏向素子14を制御する。本実施例においては、偏向素子制御部24は、偏向素子14の揺動ミラー14Aの第1の揺動軸AX周りの揺動速度を速くするように、駆動信号DXを調節する。
【0093】
これによって、
図8に示すように、第1の方向D1において、隣接する走査点PS間の距離が大きくなる。従って、パルス光L1の出射間隔が短くなった場合の重複する走査点PSの発生又は走査精度の低下を抑制することができる。
【0094】
このように、偏向素子制御部24は、パルス光L1の出射タイミング及び出射間隔に基づいて、偏向素子14によるパルス光L1(第2の分離光L2)の偏向動作の速度を変化させる。
【0095】
なお、本実施例においては、第2の揺動軸AY周りについては揺動ミラー14Aを共振させている場合について説明しているため、第2の方向D2の揺動速度を調節することが困難となる。従って、本実施例においては、第1の方向D1における揺動速度(偏向速度)を制御する場合について説明している。
【0096】
しかし、偏向素子14の構成、及び偏向素子制御部24による偏向素子14の動作速度の制御態様はこれに限定されない。例えば、偏向素子14は、揺動ミラー14Aを有する場合に限定されない。例えば、偏向素子14は、ポリゴンミラーなど、回動式のミラーを有していてもよいし、可動式のレンズを有していてもよい。また、偏向素子14は、複数のミラー又はレンズを有していてもよい。
【0097】
また、本実施例においては、偏向素子14は、第2の方向D2を主走査方向としかつ第1の方向D1を副走査方向としてラスタースキャンを行うように、第2の分離光L12を方向可変に偏向する場合について説明した。しかし、偏向素子14による第2の分離光L12の偏向態様はこれに限定されない。
【0098】
例えば、偏向素子14は、第1の方向D1を主走査方向としかつ第2の方向D2を副走査方向としてラスタースキャンを行うように、第2の分離光L12を方向可変に偏向していてもよい。この場合、例えば、制御部17は、揺動ミラー14Aを第1の揺動軸AX周りには共振させつつ揺動させ、第2の揺動軸AY周りには非共振で揺動させるような駆動信号DX及びDYを供給すればよい。この場合、偏向素子制御部24は、偏向素子14の第2の方向D2の偏向速度(第2の揺動軸AY周りの揺動速度)を制御すればよい。
【0099】
続いて、
図9は、パルス光L1の出射間隔は設計上の間隔と同程度であるが、出射開始タイミングが早くなっていた場合における制御部17の制御例を模式的に示す図である。本実施例においては、走査点群監視部23は、
図9に示す例では、走査点PSの群全体が設計上の走査面R1の中心に対してずれた位置(図では左側にオフセットされた位置)に配置されていることを判定する。
【0100】
この場合、設計上の走査領域R0(有効走査領域)内の一部(図では走査領域R0の右側の領域)が走査されない場合がある。この場合も、走査領域R0の走査精度は低下することとなる。
【0101】
これに対し、本実施例においては、偏向素子制御部24は、偏向素子14の偏向動作の位相を進ませるように、偏向素子14を制御する。本実施例においては、偏向素子制御部24は、偏向素子14の揺動ミラー14Aの第2の方向D2の位相が進むように、駆動信号DYを調節する。
【0102】
これによって、
図9に示すように、走査点PSの全体が第2の方向D2において移動する。従って、走査点PSを走査領域R0の全体に設けることができる。従って、パルス光L1の出射開始タイミングが変化した場合の走査領域R0の走査精度の低下を抑制することができる。
【0103】
このように、偏向素子制御部24は、パルス光L1の出射タイミング及び出射間隔に基づいて、偏向素子14の偏向動作の位相を変化させる。なお、
図9に示す例においても、偏向素子制御部24は、偏向素子14の偏向動作の速度を変化させてもよい。
【0104】
なお、本実施例においては、測距装置10は、制御部17が出射態様監視部21を有する場合について説明した。そして、出射態様監視部21がパルス光L1の出射タイミング及び出射間隔を特定し、これに基づいて測距部22が測距を行う場合について説明した。しかし、測距装置10の構成はこれに限定されない。また、上記した動作フローは1例に過ぎない。
【0105】
例えば、本実施例においては、測距部22は、第1の受光素子13によって第1の分離光L11が受光されたタイミングt2に基づいて測距の基準タイミング及び時間窓TWを設定し、これを用いて測距を行う場合について説明した。しかし、測距部22は、測距の基準タイミングや時間窓TWを設定する場合に限定されない。測距部22は、第1の受光素子13によって第1の分離光L11が受光されたタイミングt2及び第2の受光素子15によって反射光L3が受光されたタイミングt4に基づいて対象物OBまでの距離を測定するように構成されていればよい。
【0106】
また、本実施例においては、走査点群監視部23が走査点PSの配置状況を監視し、これに基づいて偏向素子制御部24が偏向素子14の動作制御を行う場合について説明した。しかし、偏向素子制御部24は、例えば、第1の受光素子13によって第1の分離光L11が受光されたタイミングに基づいて、偏向素子14の動作態様を変化させるように構成されていればよい。
【0107】
また、第1の受光素子13は、単にパルス光L1を受光又は検出することができればよく、例えば第1の分離光L11の強度や波長を検出するように構成されている必要はない。従って、第1の受光素子13としては、多くの種類の素子を用いることができる。第1の受光素子13は、例えば、少なくとも第1の分離光L11の強度又は波長に対して感度を有する検出素子を含んでいればよい。従って、第1の受光素子13は、第2の受光素子15とは異なる検出感度域又は検出波長域を有していてもよい。
【0108】
また、本実施例においては、光分離素子12がパルス光L1の1の部分を第1の分離光L11として反射させ、パルス光L1の他の部分を第2の分離光L12として透過させるビームスプリッタである場合について説明した。しかし、光分離素子12の構成は、これに限定されない。
【0109】
例えば、光分離素子12は、パルス光L1の光路の一部を遮るように配置されてパルス光L1の1の部分を第1の分離光L11として反射させるミラーであってもよい。この場合、当該ミラーに遮られないパルス光L1の他の部分が第2の分離光L12となる。
【0110】
また、例えば、光分離素子12は、パルス光L1の1の偏光成分を第1の分離光L11として反射させ、パルス光L1の他の偏光成分を第2の分離光L12として透過させるビームサンプラであってもよい。また、光分離素子12は、パルス光L1の1の波長成分を第1の分離光L11として第1の方向に向けて回折させ、パルス光L1の他の波長成分を第2の分離光L12として第2の方向に向けて回折させる回折格子であってもよい。
【0111】
また、本実施例においては、測距装置10がパルス光L1を第1及び第2の分離光L11及びL12に分離して第1の分離光L11を第1の受光素子13に導く光分離素子12を有する場合について説明した。しかし、測距装置10は、光分離素子12を有していなくてもよい。
【0112】
例えば、光源11は、パルス光L1を複数の方向に向けて投光するように構成されていてもよい。この場合、当該複数の方向に投光されたパルス光L1の一方の部分を受光するように第1の受光素子13が構成及び配置されていればよい。すなわち、測距装置10は、少なくともパルス光L1の一部を受光する第1の受光素子13を有していればよい。
【0113】
また、本実施例においては、測距装置10が偏向素子16を有する場合について説明した。しかし、測距装置10は偏向素子16を有していなくてもよい。例えば、第2の受光素子15は、偏向素子14を経た反射光L3を受光するように構成されておらず、対象物OBによって反射された走査光L2を直接受光するように構成されていてもよい。
【0114】
従って、例えば、測距装置10は、対象物OBに向けて投光されかつ対象物OBによって反射されたパルス光L1の一部(第2の分離光L12)を受光する第2の受光素子15を有していればよい。
【0115】
なお、偏向素子14及び16が設けられることで、例えば第2の受光素子15を走査光L2の投光方向に応じて動作させる必要が無いなど、測距装置10が単純化又は小型化される。従って、例えば、測距装置10は、光分離素子12と偏向素子(第1の偏向素子)14との間の第2の分離光L12及び反射光L3に共通の光路上に設けられ、反射光L3を偏向して第2の受光素子15に導く偏向素子(第2の偏向素子)16と、を有することで、単純かつコンパクトな構成で走査機能を実現することができる。
【0116】
また、本実施例においては、測距装置10が走査光L2を生成する偏向素子14を有することで走査機能を有する場合について説明した。しかし、測距装置10は、走査機能を有する場合に限定されない。測距装置10が偏向素子14を有さない場合でも、パルス光L1の出射態様を監視することで、正確な測距を行うことができる。また、上記したような独自にレーザ発振を行うレーザ素子をも光源11として用いることができ、走査光L2の特性の幅、すなわち測距可能な(検出可能な)対象物OBの幅が大幅に広がる。
【0117】
従って、測距装置10は、例えば、光源11、第1及び第2の受光素子13及び15、並びに測距部23を有していればよい。すなわち、例えば、測距装置10は、パルス光L1を出射する光源11と、パルス光L1の1の部分(第1の分離光L11)を受光する第1の受光素子13と、対象物OBに向けて投光されかつ対象物OBによって反射されたパルス光L1の他の部分(第2の分離光L12)光である反射光L3を受光する第2の受光素子15と、第1の受光素子13によってパルス光L1の1の部分が受光されたタイミングと第2の受光素子15によって反射光L3が受光されたタイミングとに基づいて対象物OBまでの距離を測定する測距部23と、を有する。従って、パルス光L1の出射態様を正確に把握することで正確な測距を行うことが可能な測距装置10を提供することができる。
【0118】
また、測距装置10は、測距部23、すなわち測距機能を有していなくてもよい。具体的には、第2の受光素子15による反射光L3の受光結果(第2の受光信号RS2)は、測距以外の種々の用途に用いられることができる。従って、測距装置10が測距部23を有していない場合、測距装置10は、偏向素子14を有することで、走査装置として機能する。
【0119】
従って、例えば、当該走査装置は、パルス光L1を出射する光源11と、パルス光L1の1の部分(第1の分離光L11)を受光する第1の受光素子13と、パルス光L1の他の部分(第2の分離光L12)を方向可変に偏向しつつ投光する偏向素子14と、対象物によって反射されたパルス光L1の他の部分である反射光L3を受光する第2の受光素子15と、第1の受光素子13によってパルス光L1の1の部分が受光されたタイミングに基づいて偏向素子14の動作態様を変化させる偏向素子制御部24と、を有する。これによって、パルス光L1の出射態様及び偏向態様を正確に把握し、正確に走査領域R0の走査を行うことが可能な走査装置を提供することができる。