(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001520
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】閉塞部材の取外方法及びこれに用いられる作動流体装置
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20221226BHJP
F16L 41/02 20060101ALI20221226BHJP
F16L 41/08 20060101ALI20221226BHJP
F16K 43/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
F16L55/00 C
F16L41/02
F16L41/08
F16K43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102298
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸司
【テーマコード(参考)】
3H019
3H066
【Fターム(参考)】
3H019BA04
3H019BB01
3H019DA01
3H019DA03
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】不断流状態で安全に閉塞部材を取外し可能な閉塞部材の取外方法、及びこれに用いられる作動流体装置を提供する。
【解決手段】流体管1から不断流状態で閉塞部材51を取外すための方法であって、前記閉塞部材51に、該閉塞部材51を取外すためのアクチュエータ110を設置する設置工程と、前記アクチュエータ110に作動流体を送出するとともに、戻りの作動流体が送出される送出工程と、前記送出工程において、前記流体管内の管内流体圧が前記アクチュエータ110に対して力を及ぼす際に、戻りの作動流体が流体制御手段150によって規制される規制工程と、戻りの作動流体が前記流体制御手段150によって規制されている状態で、前記流体管1内の上流側を閉塞する閉塞工程と、前記閉塞部材51を取外す取外工程と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管から不断流状態で閉塞部材を取外すための方法であって、
前記閉塞部材に、該閉塞部材を取外すための作動流体回路を備えた作動流体装置のアクチュエータを設置する設置工程と、
前記作動流体装置のポンプから前記アクチュエータに前記閉塞部材の抜出方向に作動流体を送出するとともに、前記アクチュエータから戻りの作動流体が送出される送出工程と、
前記送出工程において、前記流体管内の管内流体圧が前記アクチュエータに対して力を及ぼす際に、前記アクチュエータから送出される戻りの作動流体が流体制御手段によって規制される規制工程と、
前記アクチュエータから送出される戻りの作動流体が前記流体制御手段によって規制されている状態で、前記流体管内の上流側を閉塞する閉塞工程と、
前記閉塞部材を取外す取外工程と、を備えることを特徴とする閉塞部材の取外方法。
【請求項2】
前記規制工程において、前記閉塞部材と前記流体管との密封力が失われることで、前記アクチュエータに対して及ぼされる前記流体管内の管内流体圧に対し、前記アクチュエータから送出される戻りの作動流体が前記流体制御手段によって規制されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の閉塞部材の取外方法。
【請求項3】
前記送出工程において、前記アクチュエータから送出される戻りの作動流体が前記流体制御手段を通過することを特徴とする請求項1または2に記載の閉塞部材の取外方法。
【請求項4】
前記アクチュエータから戻りの作動流体が前記流体制御手段によって規制される状態で、前記ポンプからの作動流体の供給を停止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の閉塞部材の取外方法。
【請求項5】
流体管から不断流状態で閉塞部材を取外すための作動流体装置であって、
作動流体を送出するポンプと、作動流体により動作するアクチュエータと、作動流体を貯留するタンクと、前記アクチュエータから前記タンクへの作動流体の移動を規制可能な流体制御手段と、からなる作動流体回路を備え、
前記流体制御手段は、前記アクチュエータと前記流体制御手段との間の作動流体の流体圧の変化に応じて開閉することを特徴とする閉塞部材の取外しに用いられる作動流体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不断流状態にて流体管に取付けられた閉塞部材の取外方法及びこれに用いられる作動流体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水やガス等が流れる既設の管路を構成する流体管は、経年劣化や新たな分岐路を形成する際に、既設の流体管の一部を新たな流体管に変更する場合がある。このような場合、例えば、既設の流体管の管軸方向に離間して2つの制流弁を取付け、各制流弁の弁体により流体管の所定区間の流体の流れを遮断するとともに、所定区間をバイパス管で迂回して連通させ、バイパス管により流体管内の流体の流れを止めずに、所定区間の一部を新たな流体管に交換する不断流工法が一般的に行われている。
【0003】
また、不断流工法においてバイパス管が取付けられることを想定して、流体が流れる管路部から分岐して延びる首部を有する流体管も知られている。バイパス管を使用しない通常の使用状況では、首部の端部は閉塞部材により閉塞されており、バイパス管を装着する状況では、首部の端部は閉塞部材が取外されて開放され、バイパス管との間に配置される開閉装置の取付けが可能となる。このような閉塞部材を不断流状態にて取外し可能な方法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1における閉塞部材の取外方法は、首部の管軸方向中央に弁装置を取付け、閉塞部材を所定位置まで抜出方向に抜出し、弁装置により首部を閉塞した後、閉塞部材を取外すようになっている。所定位置についてより詳しくは、弁装置の弁体が首部閉塞時に配置される位置に進退可能、かつその位置よりも閉塞部材の抜出方向側にて閉塞部材の密封部材が首部の内周面に圧着されて閉塞部材と首部との間を密封可能な位置である。このように、密封部材及び弁装置によって首部の流路を閉塞可能であるため、不断流状態のまま閉塞部材を首部から取外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-132270号(第6~8頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1の閉塞部材の取外方法では、ボルトナットから構成されるスライダ治具を用いて閉塞部材を首部に対して抜出している。より詳しくは、流体管内の流体圧によって抜出方向に押される閉塞部材を、スライダ治具によってその抜出しを規制しつつ、ナットをボルトに対して離間方向に相対移動させることに閉塞部材を従動させて抜出している。
【0007】
一方で、流体管及び閉塞部材が大口径である場合、これら流体管及び閉塞部材の間を密封する密封部材が、時間の経過等により抜出しに対する抵抗力を増すため、スライダ治具を用いて閉塞部材を抜出すことが困難となる。そこで、油圧等の作動流体装置を用いて閉塞部材を抜出したいという要望があった。このような作動流体装置が備える作動流体回路は、アクチュエータと、作動流体を送出するためのポンプと、作動流体を貯留するためのタンクと、から主に構成されており、作動流体の流体圧を利用して閉塞部材を抜出すことができる。
【0008】
しかしながら、流体管の管内流体がアクチュエータに対して力を及ぼすことにより、ロッドとシリンダが相対移動しようとすると、アクチュエータ内において送出される側の作動流体の圧力が高められるため、ポンプからアクチュエータに作動流体が送出されたこととは別に、アクチュエータから戻りの作動流体が送出されることがある。その結果、アクチュエータが閉塞部材の抜出方向に動作し、閉塞部材が抜出方向に移動することで、流体管内の流体の漏出や、閉塞部材の急激な抜け出し等の不測の事態が生じる虞があった。このことから、作動流体装置を用いた閉塞部材の抜出しは、実用化が困難であった。
【0009】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、不断流状態で安全に閉塞部材を取外し可能な閉塞部材の取外方法、及びこれに用いられる作動流体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の閉塞部材の取外方法は、
流体管から不断流状態で閉塞部材を取外すための方法であって、
前記閉塞部材に、該閉塞部材を取外すための作動流体回路を備えた作動流体装置のアクチュエータを設置する設置工程と、
前記作動流体装置のポンプから前記アクチュエータに前記閉塞部材の抜出方向に作動流体を送出するとともに、前記アクチュエータから戻りの作動流体が送出される送出工程と、
前記送出工程において、前記流体管内の管内流体圧が前記アクチュエータに対して力を及ぼす際に、前記アクチュエータから送出される戻りの作動流体が流体制御手段によって規制される規制工程と、
前記アクチュエータから送出される戻りの作動流体が前記流体制御手段によって規制されている状態で、前記流体管内の上流側を閉塞する閉塞工程と、
前記閉塞部材を取外す取外工程と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、ポンプからアクチュエータに作動流体が送出される始動時には、アクチュエータからの戻りの作動流体の送出が可能となっていて、アクチュエータが作動して閉塞部材を抜出すことができ、流体管内の管内流体がアクチュエータに対して力を及ぼす際に、アクチュエータから送出される戻りの作動流体が流体制御手段によって規制されるため、意図しないアクチュエータの作動を防止することができる。これにより、安全に閉塞部材を取外すことができる。
【0011】
前記規制工程において、前記閉塞部材と前記流体管との密封力が失われることで、前記アクチュエータに対して及ぼされる前記流体管内の管内流体圧に対し、前記アクチュエータから送出される戻りの作動流体が前記流体制御手段によって規制されるようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、流体制御手段によるアクチュエータから送出される戻りの作動流体の規制を安定して行うことができるばかりでなく、その制御が容易となる。
【0012】
前記送出工程において、前記アクチュエータから送出される戻りの作動流体が前記流体制御手段を通過することを特徴としている。
この特徴によれば、作動流体回路の構成を簡素にすることができる。
【0013】
前記アクチュエータから戻りの作動流体が前記流体制御手段によって規制される状態で、前記ポンプからの作動流体の供給を停止することを特徴としている。
この特徴によれば、閉塞部材の位置を確実に保持することができる。
【0014】
本発明の作動流体装置は、
流体管から不断流状態で閉塞部材を取外すための作動流体装置であって、
作動流体を送出するポンプと、作動流体により動作するアクチュエータと、作動流体を貯留するタンクと、前記アクチュエータから前記タンクへの作動流体の移動を規制可能な流体制御手段と、からなる作動流体回路を備え、
前記流体制御手段は、前記アクチュエータと前記流体制御手段との間の作動流体の流体圧の変化に応じて開閉することを特徴としている。
この特徴によれば、ポンプからアクチュエータに作動流体が送出される始動時には、アクチュエータからの戻りの作動流体の送出が可能となり、アクチュエータが作動して閉塞部材を抜出すことができ、流体管内の管内流体がアクチュエータに対して力を及ぼす際に、アクチュエータから送出される戻りの作動流体の流体圧が変化しても、流体制御手段によって規制されるため、意図しないアクチュエータの作動を防止することができる。これにより、安全に閉塞部材を取外すことができる。
【0015】
前記流体制御手段は、カウンタバランス弁であることを特徴としている。
この特徴によれば、作動流体装置を簡素に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は、実施例における敷設状態の管体を示す一部断面の平面図、(b)は、同じく一部断面の側面図である。
【
図2】閉塞部材が取付けられている状態の首部を示す斜視図である。
【
図3】首部に弁装置を取付けた状態を示す斜視図である。
【
図4】閉塞部材にアクチュエータを取付けた状態を示す斜視図である。
【
図8】閉塞部材の抜出を開始可能な状態を示す斜視図である。
【
図9】閉塞部材を所定位置まで抜出した状態を示す一部断面平面図である。
【
図10】弁装置により首部を閉塞した状態を示す断面斜視図である。
【
図11】首部より閉塞部材を抜出した状態を示す一部断面平面図である。
【
図13】開閉装置の挿入を開始可能な状態を示す斜視図である。
【
図14】開閉装置を所定位置まで挿入した状態を示す斜視図である。
【
図15】開閉装置を首部に挿入した状態を示す斜視図である。
【
図16】開閉装置を首部に取付け、弁装置を外した状態を示す斜視図である。
【
図17】(a)は、弁挿入装置を用いて開閉弁本体を他の首部に挿入する前の状態を示す一部断面の正面図、(b)は、弁挿入装置を用いて開閉弁本体を他の首部に挿入した後の状態を示す一部断面の正面図、(c)は、開閉弁本体を他の首部に取付けた状態を示す一部断面の正面図である。
【
図18】流体管に開閉弁及びバイパス管を取付けた状態を示す一部断面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る閉塞部材の取外方法及びこれに用いられる作動流体装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0018】
実施例に係る閉塞部材の取外方法及びこれに用いられる作動流体装置につき、
図1から
図18を参照して説明する。
【0019】
本実施例の流体管1は、地中に埋設される比較的大口径のダクタイル鋳鉄管である。尚、本発明に係る流体管1は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管1内の流体は、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。尚、
図1、
図18において紙面右側を流体管1の上流側として説明する。
【0020】
図1に示されるように、本実施例の流体管1は、上流側及び下流側の端部のいずれもが挿口部2,3となっている。そして、それぞれの挿口部2,3が地中に略水平方向に埋設される流体管路を構成する流体管4,5の受口部6,7に接続される。また、本実施例における流体管1は、流体が流れる管路部8を有し、管路部8の管軸線と異なる方向に突出し、水平方向に分岐された首部41、該首部41よりも若干下流側の部位には、管路部8の管軸線と異なる方向に突出し、垂直方向に分岐された首部11が設けられている。流体管1が敷設された通常の状態では、首部11の開放端部13は栓体21により、首部41の開放端部43は栓体51によりそれぞれ閉塞されている。また、本実施例の首部11,41は、比較的大口径(本実施例では首部11が口径300mm、首部41が口径200mm)である。
【0021】
尚、後述するように、本実施例の流体管1は、首部41に、開閉弁84及びバイパス管85を取付けて流体の迂回経路を確保することで(
図18参照)、迂回経路にて流体を流し続けるとともに、流体管1の下流側の流体管4,5にて工事を行えるようになっており、不断流状態での施工に適した流体管1となっている。さらに、首部11は、管路部8を仕切るための後述する仕切弁本体190(
図17参照)が着脱されるようになっている。
【0022】
次に、首部11,41並びに栓体21,51(閉塞部材)について説明する。
図1の首部11、41並びに栓体21,51は、その断面形状が異なっているが、構成は同一であるため、主に、首部41及び栓体51の構成について説明する。
図1に示されるように、管路部8には、管路部8に形成された孔部42を取り囲むように筒状の首部41が形成され、首部41は、孔部42に連通する開放端部43、該開放端部43に連なるフランジ47及び後述する弁装置としての作業弁76が取付け可能な開口部44を有している。尚、
図1の首部41の断面形状は、略円形であるが、
図1の首部11のように略楕円であってもよいし、略小判形、略矩形等であってもよい。
【0023】
また、フランジ47には、ボルト・ナット49によって栓体51のフランジ54が着脱可能に固定されている。尚、フランジ47と栓体51との間に図示しないパッキンを挿入して密封性を高めてもよい。栓体51は、首部41の内周に沿って挿入される筒部51aを有し、この筒部51aの外周の環状の溝に嵌め込まれて、筒部51aの軸方向に所定間隔を離間して保持される密封部材52,53を有している。栓体51が、フランジ47に固定された状態で、密封部材52は、開口部44より管路部8側の内周面45に接し、首部41と栓体51との隙間が密封され、開放端部43及び開口部44から管路部8の流体が漏洩することが防止される。同じく、栓体51が、フランジ47に固定された状態で、密封部材53は、開口部44より開放端部43側の内周面46に接し、首部41と栓体51との隙間が密封されて、開放端部43から管路部8の流体が漏洩することが防止される。
【0024】
このように、栓体51は、開口部44及び開放端部43を同時に密封する機能を有している。尚、密封部材として、断面が円形の丸ゴムパッキン、略C字状または方形状または、リップ付きのゴムパッキンを使用することができる。尚、嵌め込み式の密封部材ではなくライニング式の密封部材でもよい。
【0025】
また、密封部材52,53は、首部41の管路部8側の内周面45及び開放端部43側の内周面46を首部41の管軸方向に摺動可能となっている。
図1(a)において、ボルト・ナット49を外し、後述する作動流体装置90を用いてフランジ47から離間するように栓体51を抜出して、密封部材52が開口部44の位置に達すると、密封部材52が開口部44に面する側は、首部41の内周面と密着しなくなるため、密封部材52は一時的に密封機能を失う。しかし、密封部材52が開口部44に位置したとき、密封部材53は、首部41の開放端部43側の内周面46に接して、首部41と栓体51との隙間を密封しているので、開放端部43から管路部8の流体の漏洩が依然として防止される。そして、さらに、栓体51を抜出すと、栓体51は更にフランジ47から離間するように移動し、密封部材52は、首部41の開放端部43側の内周面46に接して、首部41と栓体51との隙間を密封するようになる。すなわち、開放端部43からの管路部8の流体の漏洩が常に防止される。
【0026】
このように、栓体51は、筒部51aの外周面に、首部41の内周面を首部41の管軸方向に摺動可能な密封部材52,53を備えているので、密封状態を保ちつつ、栓体51を首部41に対してその管軸方向に移動できる。また、栓体51が、フランジ47に固定された状態で、密封部材53の上端から開放端部43までの寸法は、栓体51に設けられた密封部材52と密封部材53との間の寸法よりも大きく設定されている。したがって、栓体51がフランジ47から離間しながら抜出する際には、密封部材52及び密封部材53のうち少なくとも一方は、必ず同時に開放端部43側の内周面46に接する状態を形成できるので、首部41に開口部44が存在していても、栓体51は、その挿入位置に関わらず確実に密封状態を保つことができる。
【0027】
また、
図10を参照して、首部41の開口部44に連なる首部41の内周面には、開口部44に取付けられる作業弁76(弁装置)の弁体83が当接する座48を備えている。後述するように、開口部44に取付けられる作業弁76の弁体83を移動して首部41を閉止する際に、弁体83は、首部41の内周面に形成された座48に当接して、確実に首部41を閉止することができる。尚、首部11及び栓体21についても、首部41及び栓体51と同じ機能、性能を有している。
【0028】
図2に示されるように、首部41の開口部44には、カバー56が首部41にネジによって固定されており、異物の進入を防止している。なお、カバー56における開口部44に面する側には、密封部材を設けてもよく、このようにすることで、カバー56と開口部44との隙間を密封することができる。
【0029】
次に、不断流状態でバイパス管85及び仕切弁本体190を装着するまでの手順について説明する。
図2を参照して、不断流状態で工事を行う場合に、最初の手順として、首部41の開口部44よりカバー56を取外す。
【0030】
次に、
図3に示されるように、首部41の開口部44(
図2参照)に作業弁本体77を取付け、ボルト・ナットを規定のトルクで締付け、作業弁本体77と保持具78とを首部41に取付ける。これによって作業弁76は開口部44に取付けられる。
【0031】
次に、
図4,5に示されるように、首部41のフランジ47(
図5参照)と栓体51の外周縁に構成されるフランジ54(
図5参照)に、作動流体装置90(
図5参照)を取付ける。作動流体装置90は、2つの油圧式のアクチュエータ110が固定される第1保持具91,92と、第1保持具91,92にボルト・ナットにより固定される第2保持具93(
図10参照),94と、2つの油圧式のアクチュエータ110を含む油圧回路100(作動流体回路)(
図6,7参照)と、から主に構成されている。尚、保持具91~94のうち、首部41のフランジ47に取付けられる支持側の保持具として、支持側の第1保持具91及び支持側の第2保持具93と記載し、栓体51のフランジ54側に取付けられる移動側の保持具として、移動側の第1保持具92及び移動側の第2保持具94と記載する場合もある。
【0032】
支持側の第1保持具91には、各アクチュエータ110のロッド112(
図5参照)の先端部が固定され、移動側の第1保持具92には、各アクチュエータ110のシリンダ111の先端部が固定されている。また、2つのアクチュエータ110は、栓体51の径方向(本実施例では左右方向)に対向するように第1保持具91,92に固定されている。
【0033】
これら第1保持具91,92は、フランジ47,54の本実施例では上側の外径側端部に外嵌されている。
【0034】
また、第2保持具93,94は、フランジ47,54の本実施例では下側の外径側端部に外嵌されている。第1保持具91,92をそれぞれフランジ47,54の外径側端部に外嵌した後、第1保持具91,92に径方向に対向配置した状態で第2保持具93,94をそれぞれフランジ47,54の外径側端部に外嵌し、第1保持具91と第2保持具93とをネジ等で組付けるとともに、第1保持具93と第2保持具94とを同様に組付ける。これにより、首部41及び栓体51に2つのアクチュエータ110を装着することができる。
【0035】
ここで、作動流体装置90の油圧回路100について説明する。
図6,7に示されるように、油圧回路100は、2つのアクチュエータ110L,110Rと、石油系作動油等の作動流体を送出するポンプ120と、作動流体を貯留するタンク130と、切換弁140と、流体制御手段150と、複数のゴム製の各チューブ162,166,167,168,170,171(作動流体管)と、から主に構成されている。このように、各チューブがゴム製であるため、アクチュエータ110L,110Rを装着するにあたって取扱いがし易く配管構成が容易良好である。
【0036】
図7に示されるように、アクチュエータ110L,110Rは、シリンダ111と、シリンダ111内に挿通され軸方向に移動可能に設けられたロッド112と、ロッド112の端に固定され、シリンダ111の内周面に摺接しながら軸方向に移動可能に設けられたピストン113と、から主に構成されている。
【0037】
シリンダ111の内部は、ピストン113によってヘッド室114と、ロッド室115とに密封状に区画されている。尚、シリンダ111内のロッド112が配置されている側がロッド室115であり、その反対側がヘッド室114である。
【0038】
また、
図6に示されるように、シリンダ111には、ヘッド室114に連通可能なニップル116と、ロッド室115に連通可能なニップル117が設けられ、各チューブのコネクタと脱着可能に構成されている。各ニップル116,117は、チューブのコネクタが外されている状態では図示しない弁が閉塞状態となるため、各室114,115から作動流体が漏出することを防止する。一方、コネクタが連結されている状態では弁が開放状態となるため、各室114,115に作動流体が流出入することを可能とする。これは、各チューブのコネクタ、このコネクタが連結されるポンプ120、切換弁140等の各ニップルについても、同様である。
【0039】
次いで、油圧回路100の構成について詳しく説明する。ポンプ120は、本実施例では手動式であり、タンク130から主管路160に作動流体を送出するためのものである。尚、ポンプは、手動式に限られず、モータ式やエンジン式であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0040】
図7に示されるように、ポンプ120から送出された作動流体は、主管路160を通って切換弁140に流入する。
【0041】
切換弁140は、6ポート3位置タイプのオープンセンタ型であり、本実施例では手動式である。切換弁140が中立位置にあるときには、主管路160がタンク側管路161を通じてタンク130に接続されている。尚、切換弁140は、手動式に限られず、スイッチ式やリモコン式であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0042】
切換弁140は、引側位置Aにあっては、主管路160をロッド室115に連通接続するとともに、ヘッド室114をタンク側管路161に連通接続する。また、切換弁140は、押側位置Bにあっては、主管路160をヘッド室114に連通接続するとともに、ロッド室115をタンク側管路161に連通接続する。
【0043】
ここで、切換弁140と各アクチュエータ110L,110Rとの接続について詳しく説明する。切換弁140と各アクチュエータ110L,110Rのヘッド室114は、第3ヘッド室側チューブ162、ブランチ163、シャットオフ弁164,165、チューブ166,167によって接続される。第1ヘッド室側シャットオフ弁164が接続された第1ヘッド室側チューブ166は、第1アクチュエータ110Lのニップル116(
図6参照)に接続され、第2ヘッド室側シャットオフ弁165が接続された第2ヘッド室側チューブ167は、第2アクチュエータ110Rのニップル116(
図6参照)に接続される。
【0044】
また、チューブ166,167は、ブランチ163によって切換弁140から分岐され並列に接続されている。さらに、チューブ166,167は、同じ種類のチューブであり、その軸長は略同一となっている。これらにより、ポンプ120からブランチ163に流入した行きの作動流体は、ブランチ163内にて略等分に各アクチュエータ110L,110Rに分配されるため、各アクチュエータ110L,110Rを同じ伸縮量で動作させることができるようになっている。なお、各アクチュエータ110L,110Rからブランチ163に流入した戻りの作動流体は、ブランチ163内にて合流して、タンク130に流出される。
【0045】
一方、切換弁140と各アクチュエータ110L,110Rのロッド室115は、第3ロッド室側チューブ168、流体制御手段150、高圧チーズ169、チューブ170,171によって接続される。第1ロッド室側チューブ170は、第1アクチュエータ110Lのニップル117(
図6参照)に接続され、第2ロッド室側チューブ171は、第2アクチュエータ110Rのニップル117(
図6参照)に接続される。
【0046】
流体制御手段150は、第3ロッド室側チューブ168と高圧チーズ169に連通可能な主流路151と、主流路151の途中に設けられた逆止弁152と、主流路151における逆止弁152よりも高圧チーズ169側の作動流体の作動流体圧に応じて開閉可能なリリーフ弁153と、を備えている。なお、流体制御手段150として、カウンタバランス弁を適用すると好ましい。
【0047】
逆止弁152は、主流路151を第3ロッド室側チューブ168から高圧チーズ169に向かって移動する行きの作動流体に対しては開放される一方、高圧チーズ169から第3ロッド室側チューブ168に向かって移動する行きの作動流体に対しては閉塞される。
【0048】
リリーフ弁153は、所定圧以上で開放するが、その開放時には、主流路151における逆止弁152よりも高圧チーズ169側から、主流路151における逆止弁152よりも第3ロッド室側チューブ168に作動流体を流出させる。また、リリーフ弁153は、図示しない調整手段によって、開放可能な流体圧を調整可能となっているため、流体管1内の管内流体圧に応じて調整することができる。
【0049】
また、チューブ170,171は、高圧チーズ169によって流体制御手段150に対して並列に接続されている。さらに、チューブ170,171は、同じ種類のチューブであり、その軸長は略同一となっている。これらにより、ポンプ120から高圧チーズ169に流入した行きの作動流体は、高圧チーズ169内にて略等分に各アクチュエータ110に分配されるため、各アクチュエータ110L,110Rを同じ伸縮量で動作させることができるようになっている。なお、各アクチュエータ110から高圧チーズ169に流入した戻りの作動流体は、高圧チーズ169内にて合流して、タンク130に流出される。
【0050】
不断流状態でバイパス管85及び仕切弁本体190を装着するまでの手順についての説明に戻って、油圧回路100の切換弁140を押側位置Bに切り替えた後、
図8に示されるように、首部41のフランジ47および栓体51のフランジ54に取り付けられているボルト・ナット49(
図4,5参照)全数を取外す。ここで、本実施例では、首部41及び栓体51は比較的大口径であり、経年劣化により栓体51の密封部材52,53(
図5参照)は首部41の内周面に固着しているため、流体管1内の管内流体圧だけでは栓体51が抜出さない状態にある。
【0051】
尚、管内流体圧だけで栓体51が抜出せるような状態であっても、作動流体装置90によって栓体51を現状の閉塞位置に維持することができる。より詳しくは、流体制御手段150のリリーフ弁153を調整手段により、リリーフ弁153が開放される圧力値を、流体管1内の管内流体圧よりも高い圧力に事前に調整することによって、栓体51を介してアクチュエータ110のシリンダ111に流体管1内の管内流体圧が作用して、ロッド112に対してシリンダ111が離間方向に移動しようとしてロッド室115内の作動流体圧が高められても、流体制御手段150によってロッド室115から戻りの作動流体の移動が規制されるため、栓体51を現状の閉塞位置に維持することができる。
【0052】
次に、
図8に示すように、ボルト・ナット49を取外したボルト孔のうち2か所に、抜出し防止用ボルト95・ナット96を取付ける。また、支持側の第1保持具91に固定され、移動側の第1保持具92に対して相対移動可能に挿通されているストッパ取付けロッド97の栓体51の抜出方向側にストッパ98を装着する。そして、ストッパ98の首部41側の縁と略同一直線上に抜出し防止用ナット96の位置を調整する。
【0053】
次に、
図7を参照して、作動流体装置90のポンプ120を操作する。この際、切換弁140は、前述したように押側位置Bに切り替えられている。これにより、ポンプ120から送出された行きの作動流体が、切換弁140、第3ヘッド室側チューブ162、ブランチ163、シャットオフ弁164,165、チューブ166,167を通過して、各アクチュエータ110のヘッド室114に流入し、ヘッド室114内の作動流体圧を高める。これにより、ピストン113がロッド室115側に移動しようとしてロッド室115と、流体制御手段150におけるリリーフ弁153との間の作動流体圧が高められる。
【0054】
リリーフ弁153の上流側の作動流体圧がリリーフ弁153を開放可能な圧力以上となると、リリーフ弁153が開放されて、各ロッド室115からチューブ170,171、高圧チーズ169、リリーフ弁153、第3ロッド室側チューブ168、切換弁140を通過して、戻りの作動流体がタンク130に排出されるとともに、ロッド112が伸出されることで、シリンダ111がピストン113及びロッド112に対して離間方向、すなわち栓体51の抜出方向に移動する。これにより、移動側の保持具92,94を介して栓体51を抜出方向に移動させる。
【0055】
また、作動流体は、非圧縮性の油であるため、リリーフ弁153が開放されることによって作動流体が通過するとともに、即座にリリーフ弁153の上流側の作動流体圧もリリーフ弁153を開放させるに足る圧力を下回ると、リリーフ弁153の付勢手段によってその弁体が閉塞方向に移動する。一方で、手動式のポンプ120から順次送出された作動流体によって、リリーフ弁153を開放させるための圧力が再び高まる。
【0056】
このように、作動流体がリリーフ弁153を通過することによる圧力低下、そして手動式のポンプ120による作動流体の圧力増進を連続的に繰り返すことによって、
図9に示されるように、移動側の第1保持具92がストッパ98に当接する直前または当接する所定位置まで栓体51を抜出す。この所定位置では、上述したように密封部材52が首部41の内周面46に密着して、首部41と栓体51との間が密封されている。
【0057】
また、栓体51の抜出しを開始してから、所定位置に移動させるまでの間に、密封部材52,53が首部11の内周面に固着した状態から栓体51の移動によって剥がされ密封力が低下することや、密封部材52が開口部44の位置に達して密封力が低下することがある。
【0058】
このような場合には、流体管1の管内流体圧によるシリンダ111をロッド112及びピストン113に対して離間方向に移動させようとする力が相対的に増し、リリーフ弁153の上流側の作動流体圧が増加することがあるものの、リリーフ弁153を開放させるに足る圧力は、流体管1の管内流体圧よりも高い圧力に設定されているため、リリーフ弁153は閉塞したままである。これにより、ロッド室115から送出される戻りの作動流体がリリーフ弁153によって規制されるため、意図せずロッド112がロッド112及びピストン113に対して離間方向に移動することを防止することができる。
【0059】
また、流体管1の管内流体圧によるシリンダ111をロッド112及びピストン113に対して離間方向に移動させようとする力が相対的に増し、リリーフ弁153の上流側の作動流体圧が増加することによって、栓体51の抜出しを開始したときよりも相対的にリリーフ弁153の上流側の作動流体圧及びヘッド室114内の作動流体圧も増加する。これにより、リリーフ弁153を開放させるために必要な作動流体の作動流体圧に到達するまでのポンプ120の操作回数が低減されることとなる。
【0060】
所定位置まで栓体51を抜出したら、
図10に示されるように、作業弁76の操作軸80を回動させて、弁体83を座48に当接させて、首部41を閉塞する。作業弁76によって首部41が閉塞されるまでの間、上述したように密封部材52によって、流体管1内の管内流体の漏出が防止されている。
【0061】
また、上述したように、流体管1の管内流体圧によるシリンダ111をロッド112及びピストン113に対して離間方向に移動させようとする力が変化しても、栓体51の位置を維持することができるため、作業弁76によって首部41が閉塞されるまでの間に亘って、流体管1内の管内流体の漏出を安定して防止することができる。
【0062】
次に、
図11,12に示されるように、各抜出し防止用ボルト95に対して、栓体51を抜出し可能な位置まで抜出し防止用ナット96の位置を調整し、各ストッパ98をストッパ取付けロッド97から取外し、作動流体装置90を用いて首部41を閉塞した状態で当該首部41から栓体51全体を抜出す。最後に、首部41のフランジ47から支持側の保持具91,93を取外し、栓体51を取外す。
【0063】
以上のように、ポンプ120から行きの作動流体がアクチュエータ110に送出される始動時には、アクチュエータ110からの戻りの作動流体の送出が可能となっていて、アクチュエータ110が作動して栓体51を抜出すことができ、流体管1内の管内流体がアクチュエータ110に対して力を及ぼす際に、アクチュエータ110から送出される戻りの作動流体が流体制御手段150によって規制されるため、意図しないアクチュエータ110の作動を防止することができる。これにより、安全に栓体51を取外すことができる。
【0064】
また、流体制御手段150は、リリーフ弁153の上流側の作動流体圧に応じてこのリリーフ弁153の開閉が制御されるため、例えばロッド室115内の作動流体圧を測定し、任意でアクチュエータ110とタンク130との間に設けた弁を開閉するような構成と比較して、流体制御手段150によるアクチュエータ110から送出される戻りの作動流体の規制を安定して行うことができるばかりでなく、その制御が容易となる。
【0065】
また、リリーフ弁153の上流側の作動流体圧に応じてリリーフ弁153が開放されることによって、アクチュエータ110から送出される戻りの作動流体が流体制御手段150を通過し、タンク130に排出されるため、流体制御手段とは別にアクチュエータ110から送出される戻りの作動流体をタンク130に排出するための回路を省略することができる。すなわち、油圧回路100の構成を簡素にすることができる。
【0066】
また、作業弁76の操作時等、ポンプ120の操作が行われず、行きの作動流体の送出が停止されることによって、リリーフ弁153の閉塞状態が確実に保持されるため、栓体51の位置を確実に保持することができる。
【0067】
また、上述したように、リリーフ弁153が開放される間だけシリンダ111がロッド112及びピストン113に対して移動するため、その移動距離は栓体51の抜出しを開始したときと略同一である。すなわち、流体管1の管内流体圧によるシリンダ111をロッド112及びピストン113に対して離間方向に移動させようとする力が変化しても、リリーフ弁153の一度の開放に応じて移動する栓体51の距離を略一定に保つことができる。
【0068】
また、2つのアクチュエータ110は、保持具91~94を介して、首部41のフランジ47と栓体51のフランジ54に取付けられているため、シリンダ111がロッド112及びピストン113に対して離間方向に移動するにあたって、シリンダ111が栓体51を移動させる力によって生じる応力が、ロッド112介して首部41に反力として作用する。
【0069】
これに対して、例えばシリンダ111が栓体51に固定され、ロッド112が流体管1以外の基材に取付けられる場合では、栓体51に対して抜出方向に力を加えるにあたって、流体管1にも同方向の力が加えられることとなる。
【0070】
これらのことから、本実施例のように2つのアクチュエータ110を栓体51と流体管1に固定することによってエネルギ効率が向上するばかりでなく、流体管1と他の流体管との接続部分に生じる負荷を軽減することができる。また、アクチュエータ110の応力を支持するための基材や、流体管1を栓体51の抜出方向への移動を規制するための規制手段等を別途設ける必要がないため、栓体51の抜出しに要するスペースを狭めることができる。
【0071】
また、2つのアクチュエータ110L,110Rは、栓体51の周方向に等配されるように保持具91~94に固定されているため、栓体51を首部41の管軸方向に沿って抜出すことができる。これにより、栓体51が首部41の管軸方向に対して傾動する等して、抜出しに対する抵抗力が増すことを防止することができる。さらに、アクチュエータ110同士の動作においてストロークに差が生じた場合には、シャットオフ弁164,165を操作することによって調整することができる。
【0072】
また、ポンプ120から送出された行きの作動流体は、上述したように略等分に各アクチュエータ110に分配されるため、各アクチュエータ110の出力、ストローク、動作タイミングを略均一にすることができる。このことから、より好適に栓体51が首部41の管軸方向に対して傾動することを抑止しつつ抜出すことができる。
【0073】
また、各アクチュエータ110と流体制御手段150との間における第1ロッド室側チューブ170と第2ロッド室側チューブ171それぞれの長さは、切換弁140と流体制御手段150との間における第3ロッド室側チューブ168の長さよりも短く、同じ種類のチューブであるため、これらの内径及び外径は略同一である。すなわち、流体制御手段150が切換弁140よりも各アクチュエータ110の近くには位置されており、チューブ170,171それぞれの体積が、第3ロッド室側チューブ168の体積よりも小さくなっている。そのため、リリーフ弁153の上流側の作動流体圧が高圧になったときに、チューブ170,171が膨張する量を相対的に小さくすることができる。このことから、より安定して、シリンダ111とロッド112との意図しない相対移動を防止することができる。
【0074】
また、アクチュエータ110から送出される戻りの作動流体を規制するための流体制御手段150が、一つのカウンタバランス弁によって構成されていることから、切換弁140とアクチュエータ110との間に、逆止弁152と同様に機能する逆止弁を有する作動流体管と、リリーフ弁153と同様に機能するリリーフ弁を有する作動流体管とを個別に設けるような構成と比較して、流体制御手段150の構成をコンパクトにすることができる。
【0075】
また、ピストン113は、ヘッド室114に面する受圧面の面積S1の方が、ロッド室115に面する受圧面の面積S2よりも、ロッド112の断面積S3分広くなっている(S1=S2+S3)。これにより、ヘッド室114において、ポンプ120から送出された行きの作動流体の流体圧PH1に面積S1を乗じた押圧力FH1(FH1=PH1×S1)が生じる。これに伴って、ロッド室115内では、押圧力FH1を面積S2で除して算出される増圧された圧力PH2(PH2=FH1÷S2)が生じる。このことから、リリーフ弁153の上流側の作動流体圧を高める効率が良い。
【0076】
また、ピストン113は、ヘッド室114に面する受圧面の面積S1よりも、ロッド室115に面する受圧面の面積S2の方が狭いため(S1>S2)、流体管1内の管内流体がアクチュエータ110に対して力を及ぼす際に、ロッド室115の方がヘッド室114よりも作動流体圧が高められにくい。これにより、リリーフ弁153の上流側がヘッド室114である場合と比較して、流体管1内の管内流体圧の影響を小さくすることができる。
【0077】
次に、作動流体装置90を用いた首部41への開閉弁84(開閉装置)の取付けについて説明する。開閉弁84は、栓体51の筒部51aと略同一の筒部84aを有し、この筒部84aには、栓体51の密封部材52,53と同様に2つの密封部材が取付けられているため、栓体51と同様に首部41を閉塞することができるようになっている。尚、以下の説明において、栓体51の取外方法と略同一の説明については省略する。
【0078】
最初に、
図13を参照して、移動側の保持具92,94を栓体51から取外し、開閉弁84のフランジに固定し、支持側の保持具91,93を首部41のフランジ47に取付ける。このとき、開閉弁84は閉塞状態となっている。
【0079】
次に、油圧回路100の切換弁140を引側位置Aに切り替えた後、再び抜出し防止用ボルト95・ナット96を取付け、ストッパ取付けロッド97の開閉弁84の挿入方向側にストッパ98を装着する。
【0080】
次に、
図7を参照して、作動流体装置90のポンプ120を操作する。これにより、ポンプ120から送出された行きの作動流体が、切換弁140、第3ロッド室側チューブ168、流体制御手段150の逆止弁152、高圧チーズ169、チューブ170,171を通過して、各アクチュエータ110のロッド室115に流入し、ロッド室115内の作動流体圧を高める。これにより、ピストン113がヘッド室114側に移動して、各ヘッド室114から切換弁140、チューブ166,167、シャットオフ弁164,165、ブランチ163、第3ヘッド室側チューブ162、切換弁140を通過して、戻りの作動流体がタンク130に排出される。すなわち、シリンダ111がピストン113及びロッド112に対して近接方向、すなわち開閉弁84の挿入方向に移動するとともに、移動側の保持具92,94を介して開閉弁84を挿入方向に従動させ、開閉弁84の筒部を首部41内に挿入する。
【0081】
開閉弁84の挿入において、流体管1の管内流体圧によるシリンダ111をロッド112及びピストン113に対して離間方向に移動させようとする力が変化して、ロッド室115内の作動流体圧が高められたとしても、ロッド室115にはポンプ120から送出された行きの作動流体が流入可能となっている一方、ポンプ120側への逆流がポンプ120の逆止弁によって規制されているため、シリンダ111がロッド112及びピストン113に対して離間方向に移動することが防止されている。尚、ポンプ120側への逆流防止用の逆止弁は、流体制御手段150よりも下流側に配置されていればよい。
【0082】
次に、
図14に示されるように、第1保持具91,92がストッパ98に当接する直前または当接する所定位置まで開閉弁84を挿入すると、作業弁76の操作軸80を回動させて、弁体83を作業弁本体77内に収納させて(
図12参照)、首部41を開放する。
【0083】
また、首部41の開放により流体管1内の管内流体圧が開閉弁84に作用しても、上述したようにシリンダ111がロッド112及びピストン113に対して離間方向に移動することが防止されているため、流体管1内の管内流体の漏出を防止することができる。
【0084】
次に、
図15に示されるように、各ストッパ98を取外し、各抜出し防止用ボルト95・ナット96を(
図10参照)、開閉弁84の分岐側フランジに接触するまで締め込み、作動流体装置90を用いて開閉弁84の筒部全体を挿入する。そして、各抜出し防止用ボルト95・ナット96を取外し、ボルト・ナット49全数を用いて首部41のフランジ47と、開閉弁84のフランジとを固定する。最後に、
図16に示されるように、作業弁76を首部41の開口部44から取外し、カバー56にて開口部44を閉塞する。その後、開閉弁84にボルト・ナットを用いてバイパス管85を固定する(
図18参照)。
【0085】
次に、弁挿入装置200を使用して、管路部8を仕切るための仕切弁本体190を首部11に取付ける手順について説明する。尚、首部11に取付けられていた栓体21は、首部11から開口部14を閉塞するバックアップリング26(
図1参照)を取外したのち、開口部14に作業弁を取付け、首部11のフランジ17及び栓体21のフランジに係合可能に形成された保持具で取付けられた作動流体装置を用いて、栓体51の取外方法と同様の手順にて取外す。
【0086】
図17(a)に示すように、移動フレーム202を仕切弁本体190のフランジ191に保持部材203及びボルト204を使用して固定する。次に、仕切弁本体190の筐体192に設けられた密封部材194を首部11の上部内周面16に挿入し、筐体192と首部11との隙間と密封する。さらに、固定フレーム201を首部11のフランジ17に係合部材205によって固定する。移動フレーム202は、ジャッキボルト207を介して、固定フレーム201に支持されるので、仕切弁本体190に管路部8の流体の圧力が作用しても、仕切弁本体190は動かないように保持される。
【0087】
次に、首部11に取付けた作業弁の弁体83を作業弁本体77内に収納し、ジャッキボルト207を回動して、仕切弁本体190を首部11に挿入する(
図17(b)参照)。最後に、首部11のフランジ17と仕切弁本体190のフランジ191とをボルト・ナット19により締付けて固定し、弁挿入装置200を取外す(
図17(c)参照)。
【0088】
これらのようにして、
図18に示すように、首部11への仕切弁本体190の取付け、首部41への開閉弁84の取付け及びバイパス管85の取付けが完了する。流体管4,5を敷設替えする際には、首部41に取付けた開閉弁84を上流側及び下流側ともに開いて、バイパス管85に流体を流すとともに、管路部8に設けられた上流側及び下流側の仕切弁本体190を閉止する。すると、2つの仕切弁本体190の間に挟まれた流体管4,5を不断流状態で工事を行えるようになる。
【0089】
また、不断流状態での工事が終了して流体管1が長期間設置される敷設状態に戻す際には、先ず管路部8の仕切弁本体190を引き上げて筐体192内に収容して管路部8を開放し、下流側の流体管4,5に流体が流れるようにした状態にする。次に、首部41に取付けた開閉弁84を閉塞し、迂回用のバイパス管85を取外し、作動流体装置90を用いて栓体51の取外方法と同様の手順にて開閉弁84を首部41から取外す。そして、作動流体装置90を用いて開閉弁84の取付方法と同様の手順にて栓体51により首部41の開放端部43を閉塞し、ボルト・ナット49を用いて首部41のフランジ47と、栓体51のフランジ54を固定する。
【0090】
仕切弁本体190は、弁挿入装置200を取付けて、仕切弁本体190を固定した後、仕切弁本体190及び首部11のフランジ17を締付けるボルト・ナット19を取外す(
図17(b)参照)。次に、仕切弁本体190の密封部材194が首部11の上部内周面16に接触した状態、かつ、作業弁の弁体を閉止できる位置まで、仕切弁本体190を引上げた後、作業弁の弁体を首部11に挿入して、首部11を閉止する。最後に、仕切弁本体190及び弁挿入装置200を取外し、作動流体装置90を用いて開閉弁84の取付方法と同様の手順にて栓体21により首部11の開放端部13を閉塞し、ボルト・ナット19を用いて首部11のフランジ17と、栓体21のフランジを固定する。また、開口部14をバックアップリング26により閉塞する。
【0091】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0092】
例えば、前記実施例では、作動流体装置の作動流体回路は、油圧式アクチュエータを備える油圧回路である構成として説明したが、これに限られず、空気圧式アクチュエータを備える空気圧回路であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0093】
また、前記実施例では、アクチュエータは流体管と栓体とに取付けられる構成として説明したが、これに限られず特に図示しないが、栓体と流体管以外の剛性を有する基材とに固定される構成であってもよい。
【0094】
また、前記実施例では、アクチュエータはシリンダが栓体に取付けられ、ロッドが流体管に取付けられる構成として説明したが、これに限られず、シリンダが流体管に取付けられ、ロッドが栓体に取付けられてもよい。
【0095】
また、前記実施例では、栓体の取外し、開閉弁の取付け共に同じ作動流体装置を使用する構成として説明したが、これに限られず、栓体の取外し、開閉弁の取付けとでそれぞれ異なる作動流体装置を使用してもよく、開閉弁の取付けにあたってスライダ治具を使用してもよく、適宜変更されてもよい。
【0096】
また、前記実施例では、アクチュエータは、切換弁によってアクチュエータを伸長させるか収縮させるかが切り換えられる複動式であると説明したが、これに限られず、単動式であってもよい。アクチュエータが単動式であっても、戻りの作動流体を流体制御手段により規制することにより、意図しないアクチュエータの作動を防止することができる。
【0097】
また、前記実施例では、作動流体管は、ゴム製であるとして説明したが、これに限られず、金属製や樹脂製であってもよく、ゴム製に限定されるものではない。
【0098】
また、前記実施例では、流体制御手段は、カウンタバランス弁であるとして説明したが、これに限られず、逆止弁を有する作動流体管によってアクチュエータとポンプ側とが接続され、リリーフ弁を有する作動流体管によってアクチュエータとタンク側とが接続されている構成であってもよく、適宜変更することができる。
【0099】
また、前記実施例では、リリーフ弁の上流側の作動流体圧に応じて開閉可能なリリーフ弁を用いて戻りの作動流体の通過の可否が制御されていたが、これに限られず、アクチュエータとポンプとの間の作動流体圧に応じて開閉可能なリリーフ弁であってもよく、作業弁の操作者が任意に開放可能な弁であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0100】
また、前記実施例では、本発明に係る取外方法の対象となる閉塞部材として、流体管1の首部41を閉塞する栓体51が示されているが、これに限られず、例えば、本実施例の栓体51に代えて首部41に取り付けられた開閉弁84のように、首部41内を開閉可能な弁体を備えたものであっても、その使用後に当該弁体の閉塞状態で、作動流体装置90を用いて取り外しても良く、すなわち開閉弁84は、本発明に係る取外方法の対象となる閉塞部材に含まれる。更に例えば、特に図示しないが、流体管の内面を密封することで管内を開閉する弁体を備えた弁装置を、当該弁体の開放状態で、作動流体装置90を用いて流体管の分岐部から取り外しても良く、すなわちこのような弁装置は、本発明に係る取外方法の対象となる閉塞部材に含まれる。