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特開2023-152004半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152004
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20231005BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K5/053
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061917
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 直浩
(72)【発明者】
【氏名】浅井 美穂
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL03W
4J002DA019
4J002DD076
4J002DD086
4J002DE149
4J002DH038
4J002DH048
4J002DJ009
4J002DK009
4J002DL009
4J002EC047
4J002EC057
4J002ED027
4J002EG046
4J002EG056
4J002EG076
4J002EH057
4J002EW068
4J002EW128
4J002EW138
4J002FA049
4J002FD019
4J002FD036
4J002FD037
4J002FD078
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】耐熱性、機械的特性、耐熱老化性、耐薬品性いずれにも優れた半芳香族ポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分とを含有し、融点が280~350℃である半芳香族ポリアミド(A)100質量部、銅化合物(B)0.01~2質量部、多価アルコール(C)0.05~10質量部、およびリン系酸化防止剤(D)1~5質量部を含有する半芳香族ポリアミド樹脂組成物、および、さらに繊維状強化材(E)5~200質量部を含有する前記半芳香族ポリアミド樹脂組成物、および、前記半芳香族ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分とを含有し、融点が280~350℃である半芳香族ポリアミド(A)100質量部、銅化合物(B)0.01~2質量部、多価アルコール(C)0.05~10質量部、およびリン系酸化防止剤(D)1~5質量部を含有する半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
さらに繊維状強化材(E)5~200質量部を含有する請求項1に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半芳香族ポリアミドは、耐熱性や機械的特性が優れていることから、成形材料として広く用いられている。中でも、融点が300℃以上の半芳香族ポリアミドは、自動車のエンジン周りやLED照明等の、耐熱性への要求が特に高い用途に用いられている。半芳香族ポリアミドは、一般に、高融点のものほど高温環境下での物性低下(熱老化)を起こしやすいことが知られており、耐熱老化性の向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、半芳香族ポリアミドに、銅化合物、ハロゲン化アルカリ金属化合物および多価アルコールを配合することにより、耐熱老化性に優れた樹脂組成物が得られることが開示されている。しかしながら、特許文献1の樹脂組成物は耐薬品性が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-033548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するものであって、耐熱性、機械的特性、耐熱老化性、耐薬品性いずれにも優れた半芳香族ポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、半芳香族ポリアミドに、銅化合物、多価アルコールおよびリン系酸化防止剤を特定量配合することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
【0007】
(1)芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分とを含有し、融点が280~350℃である半芳香族ポリアミド(A)100質量部、銅化合物(B)0.01~2質量部、多価アルコール(C)0.05~10質量部、およびリン系酸化防止剤(D)1~5質量部を含有する半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
(2)さらに繊維状強化材(E)5~200質量部を含有する請求項1に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
(3)(1)または(2)に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐熱性、機械的特性、耐熱老化性、耐薬品性いずれにも優れた半芳香族ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
さらに本発明の樹脂組成物は、オイル中での熱老化性(耐オイル性)にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド(A)、銅化合物(B)、多価アルコール(C)およびリン系酸化防止剤(D)を含有する。
【0010】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を構成する半芳香族ポリアミド(A)は、構成成分として芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分を含有する。半芳香族ポリアミド(A)は、共重合成分を含んでいてもよいが、耐熱性、機械的特性、耐薬品性に優れ、結晶化が速く低温金型で成形体が得られる等の点から、共重合していない、すなわち単一の芳香族ジカルボン酸成分と単一の脂肪族ジアミン成分からなることが好ましい。
【0011】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。中でも、耐熱性を向上することができることから、テレフタル酸が好ましい。
【0012】
芳香族ジカルボン酸成分以外に共重合する酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等のジカルボン酸が挙げられる。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸や脂環式ジカルボン酸の共重合量は、半芳香族ポリアミド(A)の融点や耐熱性を低下させないために、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まれないことがより好ましい。
【0013】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)を構成する脂肪族ジアミン成分としては、例えば、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミンが挙げられる。脂肪族ジアミン成分は、上記の複数種を併用するよりも、1種を単独で用いることが好ましく、耐熱性、機械的特性のバランスが良好であり、また耐薬品性に優れた成形体が得られることから、1,10-デカンジアミンを単独で用いることが好ましい。
【0014】
脂肪族ジアミン成分以外に共重合するジアミン成分としては、シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミンや、キシリレンジアミン、ベンゼンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。脂肪族ジアミン成分以外の脂環式ジアミンや芳香族ジアミンの共重合量は、脂肪族ジアミン成分によってもたらされる上記特性を損なわないため、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まれないことがより好ましい。
【0015】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)を構成する上記以外の共重合成分として、カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸等のω-アミノカルボン酸が挙げられる。これらの共重合量は、半芳香族ポリアミド(A)の耐熱性、機械的特性、耐薬品性を低下させないために、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まれないことがより好ましい。
【0016】
本発明における半芳香族ポリアミド(A)は、上記のように、単一の芳香族ジカルボン酸成分と単一の脂肪族ジアミン成分からなることが好ましいが、本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、構成モノマー成分が異なる半芳香族ポリアミド(A)を2種以上含有してもよい。
【0017】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)は、耐熱老化性や流動性、離型性を高めるために、構成成分としてモノカルボン酸成分を含有することが好ましい。モノカルボン酸成分の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)を構成する全モノマー成分に対して0.3~4.0モル%であることが好ましく、0.3~3.0モル%であることがより好ましく、0.3~2.5モル%であることがさらに好ましく、0.8~2.5モル%であることが特に好ましい。
【0018】
モノカルボン酸の分子量は、140以上であることが好ましく、170以上であることがさらに好ましい。モノカルボン酸の分子量が140以上であると、半芳香族ポリアミド(A)は、耐熱老化性や流動性、離型性がより向上する。さらに、溶融加工時の流動性が向上することにより、加工温度を下げることも可能となり、溶融加工時の熱劣化を抑制できるため、結果として、耐熱老化性も向上する。また、樹脂組成物は、多価アルコール(C)とともに、分子量140以上のモノカルボン酸成分を含有する半芳香族ポリアミド(A)を含有すると、成形時の結晶化速度が不変にもかかわらず、得られる成形体は結晶化度が向上する。その結果、成形体は、耐薬品性が相乗的に向上する。自動車分野の中でも、不凍液に触れる部品等の成形体においては、耐薬品性が求められており、この用途に特に有用である。
【0019】
モノカルボン酸成分としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸が挙げられ、流動性と離型性の点から、脂肪族モノカルボン酸が好ましい。
【0020】
分子量が140以上の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられる。中でも、汎用性が高いことから、ステアリン酸が好ましい。分子量が140以上の脂環族モノカルボン酸としては、例えば、4-エチルシクロヘキサンカルボン酸、4-へキシルシクロヘキサンカルボン酸、4-ラウリルシクロヘキサンカルボン酸が挙げられる。分子量が140以上の芳香族モノカルボン酸としては、例えば、4-エチル安息香酸、4-へキシル安息香酸、4-ラウリル安息香酸、アルキル安息香酸類、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0021】
モノカルボン酸成分は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。また、分子量が140以上のモノカルボン酸と分子量が140未満のモノカルボン酸を併用してもよい。なお、本発明において、モノカルボン酸の分子量は、原料のモノカルボン酸の分子量を指す。
【0022】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)は、融点が280~350℃であることが必要であり、300~350℃であることが好ましく、305~340℃であることがより好ましく、310~335℃であることがさらに好ましい。半芳香族ポリアミド(A)の融点が280℃未満であると、得られる半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、結晶性が不十分であることから、耐熱老化性が劣る場合がある。一方、半芳香族ポリアミド(A)は、融点が350℃を超えると、ポリアミド結合の分解温度が約350℃であるため、溶融加工時に、炭化や分解が進行する。なお、本発明において、融点は、示差走査熱量計(DSC)にて、昇温速度20℃/分で昇温した際の吸熱ピークのトップとする。
【0023】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)の、96%硫酸中、25℃、濃度1g/dLで測定した場合の相対粘度は、機械的特性の点から、1.8以上であることが好ましく、1.8~3.5であることがより好ましく、2.2~3.1であることがさらに好ましい。半芳香族ポリアミド(A)は、相対粘度が3.5を超えると、溶融加工が困難となる場合がある。
【0024】
半芳香族ポリアミド(A)の製造方法は特に限定されないが、従来から知られている加熱重合法や溶液重合法の方法を用いることができる。中でも、工業的に有利であることから、加熱重合法が好ましく用いられる。加熱重合法としては、芳香族ジカルボン酸成分と、脂肪族ジアミン成分とから反応生成物を得る工程(i)と、得られた反応生成物を重合する工程(ii)とからなる方法が挙げられる。
【0025】
工程(i)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸粉末を、予め脂肪族ジアミンの融点以上、かつ芳香族ジカルボン酸の融点以下の温度に加熱し、この温度の芳香族ジカルボン酸粉末に、芳香族ジカルボン酸の粉末の状態を保つように、実質的に水を含有させずに、脂肪族ジアミンを添加する方法が挙げられる。あるいは、別の方法としては、溶融状態の脂肪族ジアミンと固体の芳香族ジカルボン酸とからなる懸濁液を攪拌混合し、混合液を得た後、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンの反応による塩の生成反応と、生成した塩の重合による低重合物の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る方法が挙げられる。この場合、反応をさせながら破砕をおこなってもよいし、反応後に一旦取り出してから破砕をおこなってもよい。工程(i)は、反応生成物の形状の制御が容易な前者の方が好ましい。
【0026】
工程(ii)としては、例えば、工程(i)で得られた反応生成物を、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、半芳香族ポリアミドを得る方法が挙げられる。固相重合は、重合温度180~270℃、反応時間0.5~10時間で、窒素等の不活性ガス気流中でおこなうことが好ましい。
【0027】
工程(i)および工程(ii)の反応装置としては、特に限定されず、公知の装置を用いればよい。工程(i)と工程(ii)を同じ装置で実施してもよいし、異なる装置で実施してもよい。
【0028】
また、加熱重合法における加熱の方法として、特に限定されないが、水、蒸気、熱媒油等の媒体にて反応容器を加熱する方法、電気ヒーターで反応容器を加熱する方法、攪拌により発生する攪拌熱等内容物の運動に伴う摩擦熱を利用する方法が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0029】
半芳香族ポリアミド(A)の製造において、重合の効率を高めるため重合触媒を用いてもよい。重合触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。重合触媒の添加量は、通常、半芳香族ポリアミド(A)を構成する全モノマー成分に対して、2モル%以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、銅化合物(B)を含有することが必要である。本発明に用いる銅化合物(B)としては、例えば、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、硫酸銅、リン酸銅、ホウ酸銅、硝酸銅、ステアリン酸銅、キレート剤に配位した銅錯塩が挙げられる。中でもハロゲン化銅が好ましく、ヨウ化第一銅、臭化第一銅がより好ましい。銅化合物(B)は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0031】
銅化合物(B)の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対して、0.01~2質量部であることが必要であり、0.02~0.5質量部であることが好ましい。銅化合物(B)の含有量が0.01質量部未満の場合、樹脂組成物は、耐熱老化性の向上効果が見られない。一方、銅化合物(B)の含有量が2質量部を超える場合、効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、得られる成形体は、着色して外観を損なうことがある。
【0032】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、ハロゲン化アルカリ金属塩を含有することが好ましい。本発明に用いるハロゲン化アルカリ金属化合物としては、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウムが挙げられ、中でも、ヨウ化カリウム、臭化カリウムが好ましい。ハロゲン化アルカリ金属化合物は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0033】
ハロゲン化アルカリ金属化合物の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましい。ハロゲン化アルカリ金属化合物の含有量が0.1質量部未満の場合、樹脂組成物は、耐熱老化性の向上効果が見られない。一方、ハロゲン化アルカリ金属化合物の含有量が3質量部を超える場合、効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、樹脂組成物が脆くなることがある。
【0034】
本発明において、銅化合物(B)とハロゲン化アルカリ金属化合物との質量比は、機械的強度や耐熱老化性の向上の観点から、1/2~1/20であることが好ましい。
【0035】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、多価アルコール(C)を含有することが必要である。本発明に用いる多価アルコール(C)とは、2個以上の水酸基を含有する化合物である。多価アルコール(C)としては、飽和脂肪族化合物、不飽和脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、糖類が挙げられる。多価アルコールは、1つまたは複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素および/または硫黄を含有してもよい。多価アルコール(C)は、水酸基以外の置換基、例えば、エーテル、カルボン酸、アミドまたはエステル基を含有してもよい。また、多価アルコールは低分子量化合物であっても、一定のモノマー単位が繰り返すポリマー型の高分子量化合物であってもよい。多価アルコール(C)は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、多価アルコール(C)を含有することにより、耐熱老化性が向上されたものとなる。また、本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、多価アルコール(C)を含有することにより、流動性が向上されたものとなるので、溶融加工時の加工温度を下げることも可能となり、溶融加工時の熱劣化を抑制することができる。
【0036】
飽和脂肪族化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3プロパンジオール、グリセリンモノメタクリレート等の2価の低分子量アルコール;グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、1,1,1-トリス-(ヒドロキシメチル)エタン、3-(2’-ヒドロキシエトキシ)-プロパン-1,2-ジオール、3-(2’-ヒドロキシプロポキシ)-プロパン-1,2-ジオール、2-(2’-ヒドロキシエトキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、6-(2’-ヒドロキシプロポキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、1,1,1-トリス-[(2’-ヒドロキシエトキシ)-メチル]-エタン、1,1,1-トリス-[(2’-ヒドロキシプロポキシ)-メチル]-プロパン、ジ-トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、トリメチロールプロパンプロポキシレート等の3価の低分子量アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等の4価以上の低分子量アルコール;ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ポリビニルブチラール(例えば、クラレ社製Mowital)、両末端水酸基水素化ポリブタジエン(例えば、日本曹達社製のGIシリーズ)、両末端水酸基ポリブタジエン(例えば、日本曹達社製のGシリーズ)、樹枝状ポリアルコール(例えば、パーストープ社製Boltorn)、ポリカプロラクトンポリオール(例えば、ダイセル社製プラクセル200シリーズ、300シリーズ、400シリーズ)等の高分子量多価アルコールが挙げられる。
【0037】
不飽和脂肪族化合物としては、例えば、リシノレイルアルコールが挙げられる。脂環式化合物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、2,3-ジ-(2’-ヒドロキシエチル)-シクロヘキサン-1-オールが挙げられる。芳香族化合物としては、例えば、1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、ヒドロベンゾイン、1,1,2,2-テトラフェニルエタン-1,2-ジオール、1,1,1-トリス-(4’-ヒドロキシフェニル)-エタン、1,1,1-トリス-(ヒドロキシフェニル)-プロパン、1,1,3-トリス-(ジヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、1,1,4-トリス-(ジヒドロキシフェニル)-ブタン、1,1,5-トリス-(ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、ビスフェノキシエタノールフルオレンが挙げられる。糖類としては、例えば、シクロデキストリン、D-マンノース、グルコース、ガラクトース、ショ糖、フルクトース、キシロース、アラビノース、D-マンニトール、D-ソルビトール、D-またはL-アラビトール、キシリトール、イジトール、ガラクチトール、タリトール、アリトール、アルトリトール、ギルトール、エリスリトール、トレイトール、リビトール、D-グロン酸-γ-ラクトンが挙げられる。
【0038】
2個以上の水酸基を有するとともに、それ以外の置換基としてエステル基を有する多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールと脂肪酸からなるエステル(例えば、日油社製ユニスターHシリーズ)、ジペンタエリスリトールと二塩基酸からなるエステル(例えば、味の素ファインテクノ社製プレンライザーシリーズ)等の2個以上の水酸基を残して脂肪酸とエステル結合している多価アルコールが挙げられる。
【0039】
多価アルコール(C)の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対して、0.05~10質量部であることが必要であり、0.1~8質量部であることが好ましく、0.2~6質量部であることがより好ましい。多価アルコール(C)の含有量が0.05質量部未満の場合、樹脂組成物は、熱老化の抑制効果が見られない。一方、多価アルコール(C)の質量量が10質量部を超えると、熱老化の抑制効果が飽和し、それ以上の効果発現が見込めないだけでなく、樹脂組成物は、溶融加工時に多価アルコールが気化してガスが大量に発生したり、滞留安定性が不良になったり、また、成形体は、表面に多価アルコールがブリードアウトして外観が損なわれたり、機械的特性が不十分となることがある。
【0040】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(D)を含有することが必要である。本発明に用いるリン系酸化防止剤(D)とは、リン酸塩、亜リン酸塩等の無機塩や亜リン酸エステル等の有機リン化合物である。亜リン酸エステルのエステル残基には、脂肪族化合物、芳香族化合物、多価アルコール化合物等が挙げられる。
【0041】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(D)を含有することにより、耐熱老化性および耐薬品性が向上されたものとなる。また、本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(D)を含有することにより、流動性が向上されたものとなるので、溶融加工時の加工温度を下げることも可能となり、溶融加工時の熱劣化を抑制することができる。
【0042】
リン系酸化防止剤は、無機化合物でも有機化合物いずれでもよい。リン系酸化防止剤としては、例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マンガン等の無機リン酸塩;トリフェニルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)]、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレン-ジ-ホスホナイト、テトラ(トリデシル-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機リン化合物が挙げられる。リン系酸化防止剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。市販のリン系酸化防止剤としては、例えば、アデカ社製アデカスタブPEP-8、PEP-36、PEP-4C、PEP-24G、クラリアントジャパン社製ホスタノックスP-EPQが挙げられる。
【0043】
リン系酸化防止剤(D)の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対して、
1~5質量部であることが必要であり、1~2質量部であることが好ましい。リン系酸化防止剤(D)の含有量が1質量部未満の場合、樹脂組成物は、熱老化の抑制効果が見られない。一方、リン系酸化防止剤(D)の含有量が5質量部を超えると、熱老化の抑制効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、樹脂組成物は、溶融加工時にリン系酸化防止剤が分解してガスが大量に発生したり、滞留安定性が不良になったり、また、成形体は機械的特性が不十分となることがある。
【0044】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、さらに、繊維状強化材(E)を含有することが好ましい。繊維状強化材(E)としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維、高強度ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、玄武岩繊維が挙げられる。中でも、機械的特性の向上効果が高く、半芳香族ポリアミド樹脂との溶融混練時の加熱温度に耐え得る耐熱性を有し、入手しやすいことから、ガラス繊維、炭素繊維が好ましい。繊維状強化材(E)は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0045】
ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状強化材(E)は、集束剤等の表面処理剤で処理されていることが好ましい。集束剤の主成分は、カップリング剤や被膜形成剤であることが好ましい。カップリング剤としては、例えば、ビニルシラン系、アクリルシラン系、エポキシシラン系、アミノシラン系、アミノチタン系等のカップリング剤が挙げられる。中でも、半芳香族ポリアミド(A)とガラス繊維または炭素繊維との密着効果が高く、耐熱性に優れることから、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。被膜形成剤としては、例えば、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系の樹脂が挙げられ、中でも、ガラス繊維または炭素繊維との密着効果が高く、耐熱性に優れることから、ウレタン系樹脂が好ましい。被膜形成剤は、樹脂組成物の耐加水分解性が向上することから、酸成分を含有することが好ましい。酸成分は、被膜形成剤の主成分である樹脂に共重合していることが好ましい。酸成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸や、無水マレイン酸が挙げられる。
【0046】
繊維状強化材(E)の繊維長、繊維径は、特に限定されないが、繊維長は0.1~7mmであることが好ましく、0.5~6mmであることがより好ましい。繊維状強化材(E)の繊維長が0.1~7mmであることにより、成形性に悪影響を及ぼすことなく、樹脂組成物を補強することができる。また、繊維状強化材(E)の繊維径は3~20μmであることが好ましく、5~14μmであることがより好ましい。繊維状強化材(E)の繊維径が3~20μmであることにより、溶融混練時に折損することなく、樹脂組成物を補強することができる。繊維状強化材(E)の断面形状としては、例えば、円形、長方形、楕円、それ以外の異形断面が挙げられ、中でも、円形が好ましい。
【0047】
繊維状強化材(E)を用いる場合、その含有量は、半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対し、5~200質量部であることが好ましく、10~180質量部であることがより好ましく、20~150質量部であることがさらに好ましく、30~130質量部であることが特に好ましい。繊維状強化材(E)の含有量が5質量部未満であると、機械的特性の向上効果が小さい場合がある。一方、含有量が200質量部を超えると、機械的特性の向上効果が飽和し、それ以上の向上効果が見込めないばかりでなく、溶融混練時の作業性が低下し、半芳香族ポリアミド樹脂組成物のペレットを得ることが困難になる場合がある。また、溶融加工時の流動性が大幅に損なわれるために、せん断発熱により樹脂温度が高くなったり、流動性を向上させるために樹脂温度を高くせざるを得ない状況になったりするため、結果的に分子量低下や機械的特性、耐熱老化性の低下を招く場合がある。
【0048】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(D)以外の酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の各種安定剤を含有することにより、溶融安定性のさらなる向上と熱老化の効果的な抑制が図れる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が挙げられ、光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0049】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3’-メチル-5’-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-テトラデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、1,4-ブタンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、N,N’-ビス-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’-テトラメチレン-ビス-3-(3’-メチル-5’-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N-サリチロイル-N’-サリチリデンヒドラジン、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N,N’-ビス[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイドが挙げられる。中でも、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイドが好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は単独で用いてもよいし、併用してもよい。市販のヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、アデカ社製アデカスタブAO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-60、AO-70、AO-80、AO-330、チバスペシャリティケミカル社製イルガノックス245、259、565、1010、1035、1076、1098、1222、1330、1425、1520、3114、5057、住友化学工業社製スミライザーBHT-R、MDP-S、BBM-S、WX-R、NW、BP-76、BP-101、GA-80、GM、GS、サイアナミド社製サイアノックスCY-1790が挙げられる。
【0050】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンズイミダゾール、ジドデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,4’-チオジプロピオネート、2,2-ビス[[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル挙げられる。中でも、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。硫黄系酸化防止剤は単独で用いてもよいし、併用してもよい。市販の硫黄系酸化防止剤としては、例えば、住友化学工業社製スミライザーTP-D、MBが挙げられる。
【0051】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-1-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、コハク酸ジメチル・1-(2ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン重縮合物、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、ポリ[(6-モルフォリノ-S-トリアジン-2,4-ジイル)〔2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル〕イミノ]-ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。市販の安定剤としては、例えば、クラリアントジャパン社製ナイロスタブS-EED、共同薬品社製バイオソーブ04、サイテック社製サイアソーブUV-3346、アデカ社製アデカスタブLA-57、LA-63P、LA-68、BASF社製チマソーブ119、944、チヌビン622、765が挙げられる。
【0052】
安定剤の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対し、0.005~3質量部であることが好ましく、0.1~2質量部であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド(A)以外のポリアミドを含有してもよい。半芳香族ポリアミド(A)以外のポリアミド(以下、「他のポリアミド」と略称することがある。)としては特に限定されないが、非晶性であるか、または融点が300℃未満の半芳香族ポリアミドや、脂肪族ポリアミドが挙げられる。
【0054】
半芳香族ポリアミド(A)以外の半芳香族ポリアミドとしては、例えば、テレフタル酸とイソフタル酸と脂肪族ジアミンとの共重合体が挙げられる。
【0055】
半芳香族ポリアミド(A)以外のポリアミドの脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド410、ポリアミド412、ポリアミド510、ポリアミド512、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド6/66、ポリアミド66/1010、ポリアミド66/612、ポリアミド2Me5C、ポリアミド6C、ポリアミド8C、ポリアミド9C、ポリアミド10C、ポリアミド12Cが挙げられる。なお、Cは1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を、2Me5は2-メチルペンタメチレンジアミンを意味する。
【0056】
半芳香族ポリアミド樹脂組成物が、他のポリアミドを含有する場合、その含有量は、半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対し、1~100質量部であることが好ましく、3~80質量部であることがより好ましく、3~50質量部であることがさらに好ましい。他のポリアミドを、1~100質量部含有することで、本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、溶融加工時の流動性が向上するため成形性が向上し、得られる成形体の表面外観も向上する。さらには、高流動性のため溶融加工の温度を低下させることが可能となるので、溶融加工温度を低下させて、溶融加工時の熱劣化を抑制することによって、耐熱老化性を向上させることができる。含有量が1質量部未満であると、前記効果が得られない場合がある。一方、含有量が100質量部を超えると、半芳香族ポリアミド(A)が有する耐熱性、機械的特性を損なう場合がある。
【0057】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、その他の充填材、着色剤、帯電防止剤等の添加剤をさらに加えてもよい。充填材としては、例えば、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、グラファイトが挙げられる。着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、ニグロシン等の染料が挙げられる。特にニグロシンを含有することにより、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の溶融加工時の流動性が向上し、溶融加工温度が下がるとともに耐熱老化性を向上させることができ、また得られる成形体は、表面外観が向上する。
【0058】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)、銅化合物(B)、多価アルコール(C)、リン系酸化防止剤(D)、および必要に応じて添加される繊維状強化材(E)やその他添加剤等を配合して、本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されないが、溶融混練法が好ましい。溶融混練法としては、ブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸押出機、二軸押出機等を用いる方法が挙げられる。溶融混練温度は、半芳香族ポリアミド(A)が溶融し、分解しない温度であれば特に限定されないが、高すぎると、半芳香族ポリアミド(A)が分解することから、(半芳香族ポリアミドの融点-20℃)以上、(半芳香族ポリアミドの融点+40℃)以下であることが好ましい。
【0059】
溶融された樹脂組成物は、ストランド状に押出してペレット形状にする方法や、ホットカット、アンダーウォーターカットしてペレット形状にする方法や、シート状に押出してカッティングする方法や、ブロック状に押出し粉砕してパウダー形状にする方法等により、様々な形状に加工することができる。
【0060】
本発明の成形体は、上記半芳香族ポリアミド樹脂組成物を成形してなるものである。その成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、焼結成形法が挙げられ、機械的特性、成形性の向上効果が大きいことから、射出成形法が好ましい。
【0061】
射出成形機としては、特に限定されず、例えば、スクリューインライン式射出成形機またはプランジャ式射出成形機が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融された半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、(半芳香族ポリアミドの融点-20℃)以上、(半芳香族ポリアミドの融点+40℃)未満とすることがより好ましい。本発明の樹脂組成物は、溶融加工時の流動性に優れているために、成形時の樹脂温度を高くする必要がない。したがって、成形時の樹脂温度を低下させて、溶融加工時の熱劣化を低減することができる。
【0062】
半芳香族ポリアミド樹脂組成物を溶融加工する時には、十分に乾燥された半芳香族ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いることが好ましい。含有する水分量が多い半芳香族ポリアミド樹脂組成物を用いると、射出成形機のシリンダー内で樹脂が発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。射出成形に用いる半芳香族ポリアミド樹脂組成物ペレットの水分量は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物100質量部に対して、0.3質量部未満であることが好ましく、0.1質量部未満であることがより好ましい。
【0063】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、自動車部品、電気電子部品、雑貨、産業機器部品、土木建築用品等の広範な用途の成形体成形用樹脂として使用することができる。
【0064】
自動車部品としては、例えば、サーモスタット部材、インバータのIGBTモジュール部材、アクチュエーター部材、インシュレーター、モーターインシュレーター、ラジエーター部材、ラジエーターホース、各種バルブ、エキゾーストフィニッシャー、パワーデバイス筐体、ECU筐体、モーター部材、コイル部材、レゾルバ部材、ケーブルの被覆材、車載用カメラ筐体、車載用カメラレンズホルダー、車載用コネクタ、エンジンマウント、インタークーラー、ベアリングリテーナー、オイルシールリング、チェーンカバー、ボールジョイント、チェーンテンショナー、クラッチ部材、トーションシート、スターターギア、減速機ギア、インターナルギア、車載用リチウムイオン電池トレー、車載用高電圧ヒューズの筐体、車載用電気回路遮断装置の筐体、自動車用ターボチャージャーインペラが挙げられる。
【0065】
電気・電子部品としては、例えば、コネクタ、ECUコネクタ、メインテンロックコネクタ、モジュラージャック、リフレクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、ピンソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、ブレーカー、回路部品、電磁開閉器、ホルダー、カバー、プラグ、携帯用パソコンやワープロ等の電気・電子機器の筐体部品、インペラ、掃除機インペラ、抵抗器、可変抵抗器、IC、LEDの筐体、カメラ筐体、カメラ鏡筒、カメラレンズホルダー、タクトスイッチ、照明用タクトスイッチ、ヘアアイロン筐体、ヘアアイロン櫛、全モールド直流専用小型スイッチ、有機ELディスプレイスイッチ、3Dプリンタ用の材料、モーター用ボンド磁石用の材料が挙げられる。
【0066】
雑貨としては、例えば、トレー、シート、結束バンドが挙げられる。
産業機器部品としては、例えばインシュレーター類、コネクタ類、ギア類、スイッチ類、ワッシャー類、ベアリングリテーナー、センサー、インペラ、プラレールチェーンが挙げられる。
土木建築用品としては、例えば、フェンス、収納箱、工事用配電盤、アンカーボルトガイド、アンカー用リベット、太陽電池パネル嵩上げ材、風力発電のブレーキパッドが挙げられる。
【0067】
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、耐薬品性および高温雰囲気下における熱老化が高度に抑制されたものであるから、薬品に触れる環境、かつ高温環境下で長期間使用されることになる自動車部品等の成形体に特に好適に用いることができる。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0069】
1.測定方法
半芳香族ポリアミドおよび半芳香族ポリアミド樹脂組成物の物性測定は以下の方法によりおこなった。
(1)融点
示差走査熱量計DSC-7型(パーキンエルマー社製)用い、窒素雰囲気下にて昇温速度20℃/分で360℃まで昇温した後、360℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温し、さらに25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温測定した際の吸熱ピークのトップを融点とした。
本発明においては、280℃以上の場合を合格と判断した。
【0070】
(2)相対粘度
96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
【0071】
(3)引張強度、耐熱老化性(引張強度保持率)
下記の方法で作製した試験片1、2を用いて、ISO178に準拠して引張強度を測定した。試験片1に対する試験片2の引張強度保持率(%)をそれぞれ求め、150℃における耐熱老化性を評価した。
<試験片1>(標準条件で作製した試験片)
半芳香族ポリアミド樹脂組成物を、射出成形機S2000i-100B型(ファナック社製)を用いて、シリンダー温度(半芳香族ポリアミドの融点+15℃)、金型温度(半芳香族ポリアミドの融点-175℃)、シリンダー内滞留時間10秒の条件で射出成形し、試験片1(ISO多目的試験片)を作製した。
<試験片2>(熱老化評価用試験片、150℃×3000時間熱処理)
試験片1を、大気雰囲気下の熱風炉の中で、150℃で3000時間熱処理して、試験片2を作製した。
本発明においては、引張強度は、繊維状強化材を含有しない場合は70MPa以上の場合を合格とし、繊維状強化材を含有する場合は140MPa以上の場合を合格とした。また、耐熱老化性(引張強度保持率)は70%以上の場合を合格と判断した。
【0072】
(4)耐薬品性(引張強度保持率)
<試験片3>(耐薬品評価用試験片、硫酸処理)
試験片1を、50%硫酸浸漬下、室温で24時間処理して、試験片3を作製した。
試験片1に対する試験片3の引張強度保持率(%)を求め、耐薬品性を評価した。
本発明においては、耐薬品性(引張強度保持率)は80%以上の場合を合格と判断した。
【0073】
(5)耐オイル性(引張強度保持率)
<試験片4>(耐オイル評価用試験片、150℃×1000時間熱処理)
試験片1を、容器のふたを閉じた状態のATFオイルに浸漬し、熱風炉の中で150℃で1000時間熱処理して、試験片4を作製した。
試験片1に対する試験片4の引張強度保持率(%)を求め、耐オイル性を評価した。
本発明においては、耐オイル性(引張強度保持率)は80%以上の場合を合格と判断した。
【0074】
2.原料
実施例および比較例で用いた原料を以下に示す。
(1)芳香族ジカルボン酸成分
・TPA:テレフタル酸
(2)脂肪族ジアミン成分
・DDA:1,10-デカンジアミン
・NDA:1,9-ノナンジアミン
(3)モノカルボン酸
・STA:ステアリン酸(分子量:284)
【0075】
(4)半芳香族ポリアミド(A)
・半芳香族ポリアミド(A-1)
芳香族ジカルボン酸成分として粉末状のテレフタル酸(TPA)4.76kgと、モノカルボン酸成分としてステアリン酸(STA)0.16kgと、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物9.3gとを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、脂肪族ジアミン成分として100℃に加温した1,10-デカンジアミン(DDA)5.02kgを、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応生成物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:DDA:STA=49.1:50.0:0.9(原料モノマーの官能基の当量比率は、TPA:DDA:STA=49.3:50.2:0.5)であった。
続いて、得られた反応生成物を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間加熱して重合し、半芳香族ポリアミドの粉末を作製した。
その後、得られた半芳香族ポリアミドの粉末を、二軸混練機を用いてストランド状とし、ストランドを水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングして半芳香族ポリアミド(A-1)ペレットを得た。
【0076】
・半芳香族ポリアミド(A-2)
樹脂組成を表1に示すように変更した以外は、半芳香族ポリアミド(A-1)と同様にして、半芳香族ポリアミド(A-2)を得た。
【0077】
得られた半芳香族ポリアミドの樹脂組成と特性値を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
(5)銅化合物(B)
・B-1:ヨウ化銅(試薬特級)
(6)多価アルコール(C)
・C-1:ジペンタエリスリトール(パーストープ社製、DiPenta90)
・C-2:ジペンタエリスリトールとアジピン酸からなるエステル(味の素ファインテクノ社製、プレンライザーST-210)
【0080】
(7)リン系酸化防止剤(D)
・D-1:アデカ社製、アデカスタブPEP-36(ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)
・D-2:クラリアント社製、ホスタノックスP-EPQ(テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-ホスホナイト)
【0081】
(8)繊維状強化材(E)
・E-1:ガラス繊維(日本電気硝子社製、ECS03T-262H、平均繊維径10.5μm、平均繊維長3mm)
・E-2:炭素繊維(東邦テナックス社製、HTA-C6-NR、平均繊維径7μm、平均繊維長6mm)
【0082】
(9)ハロゲン化アルカリ金属化合物
・KI:ヨウ化カリウム(試薬特級)
【0083】
(10)半芳香族ポリアミド(A)以外のポリアミド
・P-1:ポリアミド6T/6I(エムスケミージャパン社製、Grivory G21、非晶性)
・P-2:ポリアミド6(ユニチカ社製、A1030BRT、結晶性)
【0084】
(11)安定剤
・AO-1:3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アデカ社製、アデカスタブAO-80)
【0085】
実施例1
半芳香族ポリアミド(A-1)100質量部、銅化合物(B-1)0.05質量部、多価アルコール(C-1)1質量部、リン系酸化防止剤(D-1)2質量部、ヨウ化カリウム(KI)0.2質量部をドライブレンドし、ロスインウェイト式連続定量供給装置CE-W-1型(クボタ社製)を用いて計量し、スクリュー径26mm、L/D50の同方向二軸押出機TEM26SS型(芝浦機械社製)の主供給口に供給して、溶融混練をおこなった。途中、サイドフィーダーより繊維状強化材(E-1)45質量部を供給し、さらに混練をおこなった。ダイスからストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングして半芳香族ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。押出機のバレル温度設定は、(半芳香族ポリアミドの融点+5℃)~(半芳香族ポリアミドの融点+15℃)、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hとした。
【0086】
実施例2~17、比較例1~5
半芳香族ポリアミド樹脂組成物の組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって半芳香族ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
【0087】
得られた半芳香族ポリアミド樹脂組成物ペレットを用い、各種評価試験をおこなった。その結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
実施例1~17の樹脂組成物は、本発明で規定する要件をすべて満たしているため、150℃の温度雰囲気下における熱老化が高度に抑制されており、3000時間経過後の引張強度保持率がいずれも70%以上であった。また、50%硫酸浸漬24時間経過後の引張強度保持率はいずれも80%以上であり、オイル浸漬1000時間経過後の引張強度保持率はいずれも80%以上であった。
実施例1と共重合成分を含む実施例2を対比することにより、共重合成分を含まず結晶性が高いほど、150℃での3000時間経過後の引張強度保持率、50%硫酸浸漬24時間経過後の引張強度保持率およびオイル浸漬1000時間経過後の引張強度保持率が高くなることがわかる。
実施例1、実施例3~5、8~10を対比することにより、銅化合物、リン系酸化防止剤の含有量が多いほど、150℃での3000時間経過後の引張強度保持率、50%硫酸浸漬24時間経過後の引張強度保持率およびオイル浸漬1000時間経過後の引張強度保持率が高くなり、高濃度領域ではその効果が飽和することがわかる。
実施例1と実施例11を対比することにより、炭素繊維を含有させることにより、引張強度が高くなることがわかる。
実施例1と実施例16を対比することにより、安定剤を含有させることにより、150℃での3000時間経過後の引張強度保持率が高くなることがわかる。
【0090】
比較例1~5の樹脂組成物は、銅化合物、多価アルコール、リン系酸化防止剤のいずれかを含有しなかったため、150℃での3000時間経過後の引張強度保持率、50%硫酸浸漬24時間経過後の引張強度保持率、オイル浸漬1000時間経過後の引張強度保持率のいずれかが低かった。