(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152010
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】赤外線カメラ
(51)【国際特許分類】
H04N 5/33 20230101AFI20231005BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20231005BHJP
G01J 1/44 20060101ALI20231005BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20231005BHJP
G01J 5/70 20220101ALI20231005BHJP
【FI】
H04N5/33
G01J1/02 C
G01J1/44 D
G01J1/42 K
G01J1/02 Q
G01J5/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061925
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】510203566
【氏名又は名称】株式会社ビジョンセンシング
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智哉
(72)【発明者】
【氏名】水戸 康生
【テーマコード(参考)】
2G065
2G066
5C024
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA34
2G065BC28
2G065BC33
2G065BC35
2G065CA21
2G066BA08
2G066BA14
2G066BC15
2G066CA15
5C024AX06
5C024CX31
5C024EX15
5C024EX26
5C024EX42
5C024HX55
(57)【要約】
【課題】撮像対象物の温度を正確に算出することができる赤外線カメラを提供する。
【解決手段】赤外線検出素子6aを備えた撮像部6と、素子温度Ftを検出する素子温度検出センサ7と、温度補正係数a
n、b
n、c
n、及び素子出力DL
nに基づき、数式1に従って撮像対象物の放射輝度Ld
nを算出する放射輝度算出部20と、近似係数Aa
n、Ab
n、Ac
n、Ba
n、Bb
n、Bc
n、Ca
n、Cb
n及びCc
nに基づき、数式2に従って温度補正係数a
n、b
n、c
nを算出する温度補正係数算出部18とを備える。
(数式1)
Ld
n=a
n・DL
n
2+b
n・DL
n+c
n
(数式2)
a
n=Aa
n・Ft
2+Ab
n・Ft+Ac
n
b
n=Ba
n・Ft
2+Bb
n・Ft+Bc
n
c
n=Ca
n・Ft
2+Cb
n・Ft+Cc
n
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元平面上に配列された複数のn個の赤外線検出素子を有する撮像部と、
撮像対象物から放射される赤外線を前記撮像部上に集光するレンズと、
前記赤外線検出素子の温度を検出する素子温度検出センサと、
前記各赤外線検出素子に関し、その出力DLnと、前記撮像対象物から放射される赤外線の放射輝度Ldnとの相関を、下記数式1の相関式で定義したときの、該相関式中の各温度補正係数an、bn、cnを算出するための近似式であって、下記数式2で表される近似式における各近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnを記憶する近似係数記憶部と、
前記素子温度検出センサによって検出される前記赤外線検出素子の温度Ft、及び前記近似係数記憶部に格納された近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnに基づき、下記数式2に従って前記温度補正係数an、bn、cnを算出する温度補正係数算出部と、
前記温度補正係数算出部によって算出された前記温度補正係数an、bn、cnを記憶する温度補正係数記憶部と、
前記温度補正係数記憶部に格納された前記温度補正係数an、bn、cn、及び前記各赤外線検出素子からの出力DLnに基づき、下記数式1に従って前記撮像対象物に関する放射輝度Ldnを算出する放射輝度算出部と、を備えていることを特徴とする赤外線カメラ。
(数式1)
Ldn=an・DLn
2+bn・DLn+cn
(数式2)
an=Aan・Ft2+Abn・Ft+Acn
bn=Ban・Ft2+Bbn・Ft+Bcn
cn=Can・Ft2+Cbn・Ft+Ccn
但し、nは1以上の自然数であり、前記各赤外線検出素子に対応する固有値である。
【請求項2】
前記素子温度検出センサから前記赤外線検出素子の温度Ftを取得するとともに、前記各赤外線検出素子からの出力DLnを取得する基礎データ取得部と、
前記基礎データ取得部によって取得された温度Ft及び出力DLnに基づいて、赤外線検出素子の温度Ftが所定の温度であるときの、前記撮像対象物から放射される放射輝度Ldnと各赤外線検出素子からの出力DLnとの相関を取得する輝度対出力相関取得部と、
前記輝度対出力相関取得部により取得された放射輝度Ldnと出力DLnとの相関に基づいて、前記近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnを算出して、前記近似係数記憶部に格納する近似係数算出部と、を更に備えていることを特徴とする請求項1記載の赤外線カメラ。
【請求項3】
前記基礎データ取得部によって取得された赤外線検出素子の温度Ft、及び出力DLnに基づいて、出力対温度の相関式を取得する出力対温度相関取得部と、
前記出力対温度相関取得部によって取得された出力対温度相関式に基づき、補間処理によって、赤外線検出素子の温度Ftと出力DLnとの相関データを算出する補間処理部と、を更に備え、
前記輝度対出力相関取得部は、前記基礎データ取得部によって取得された温度Ft及び出力DLn、並びに前記補間処理部によって算出された温度Ft及び出力DLnに基づいて、前記放射輝度Ldnと前記出力DLnとの相関を取得するように構成されていることを徴とする請求項2記載の赤外線カメラ。
【請求項4】
前記放射輝度算出部によって算出された放射輝度Ldnに基づいて、前記撮像対象物に関する温度データを算出する温度データ算出部を、更に備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の赤外線カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元平面上に複数の赤外線検出素子を配列して構成される撮像部を備えた赤外線カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボロメータと称される熱型の非冷却赤外線検出素子によって前記撮像部を構成した赤外線カメラが提案されている(特許文献1)。この赤外線検出素子は、赤外線を吸収することによって抵抗値が変化するもので、電流を流すことにより、入射光量に応じた電圧値を出力する。撮像対象物を撮像、即ち、撮像対象物から放射される赤外線が赤外線検出素子に吸収されると、その入射エネルギーに応じた電圧値が出力され、予め取得した感度を基に、出力電圧値を較正することによって、撮像対象物の温度を算出することができる。
【0003】
この赤外線検出素子の感度は、個体差を有することが知られており、従来、一般的には、2つの異なる既知の温度T1,T2の撮像対象物、例えば黒体炉(黒体を近似した装置)を撮像して、そのときに得られる各赤外線検出素子nの出力Vnと、撮像対象物の温度Tとを基に、各赤外線検出素子nの感度を算出している。
【0004】
より具体的に説明すると、前記出力Vnと温度Tとの関係は、温度T1,T2のときの出力V1n,V2nとの2点データから、感度係数an及びオフセット係数bnを用いた1次関数である下式によって近似される。
Vn=an×T+bn
したがって、撮像対象物の温度Tは、下式によって算出することができる。
T=(Vn-bn)/an=Vn/an-bn/an=Vn×An+Bn
【0005】
そして、従来の赤外線カメラでは、演算速度を高めるために、較正用の感度係数An(=1/an)、及びオフセット係数Bn(=-bn/an)を予め算出して、データテーブルとしてメモリに保持しておき、上式に従って、各赤外線検出素子nの出力Vnに基づいて撮像対象物の温度Tを算出するようにしている。
【0006】
また、前記赤外線検出素子は、環境温度の変化によって自身温度上昇することにより、その感度が変化するという特性を有する。このため、従来では、更に、赤外線検出素子の温度に応じた前記較正感度係数An及び較正オフセット係数Bnを予め取得して、データテーブルとして保持し、撮像時の赤外線検出素子温度に応じた前記較正感度係数An及び較正オフセット係数Bnを用いて、撮像対象物の温度Tを算出するといったことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来の赤外線カメラでは、赤外線検出素子nの出力Vnと、撮像対象物から放射される赤外線の放射輝度Ldnとを、これらが線形の相関関係にあるものとして取り扱っており、このような線形関係の下、赤外線検出素子nの出力Vnに基づいて、撮像対象物から放射される赤外線の放射輝度Ldnを推定(算出)し、得られた放射輝度から撮像対象物の温度を推定(算出)するようにしている。
【0009】
ところが、赤外線カメラには、撮像対象物から放射される赤外線を赤外線検出素子nに集光させるためのレンズ等の光学機構が存在し、また、赤外線検出素子nには個体差があるため、各赤外線検出素子nの出力DL
n(=V
n)と、撮像対象物から放射される赤外線の放射輝度Ld
nとの関係は、厳密な意味において、
図3において破線で示すような線形の関係にはなく、実線で示した2次以上の方程式で近似される非線形の関係となっている。
【0010】
したがって、従来の赤外線カメラのように、赤外線検出素子nの出力DLnから、線形関係に基づいて前記放射輝度Ldnを推定すると、撮像対象物の正確な放射輝度Ldnを推定することができず、ひいては、撮像対象物の正確な温度を推定することができない。
【0011】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、従来に比べて、撮像対象物の放射輝度、並びに温度を正確に推定することができる赤外線カメラの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、
2次元平面上に配列された複数のn個の赤外線検出素子を有する撮像部と、
撮像対象物から放射される赤外線を前記撮像部上に集光するレンズと、
前記赤外線検出素子の温度を検出する素子温度検出センサと、
前記各赤外線検出素子に関し、その出力DLnと、前記撮像対象物から放射される赤外線の放射輝度Ldnとの相関を、下記数式1の相関式で定義したときの、該相関式中の各温度補正係数an、bn、cnを算出するための近似式であって、下記数式2で表される近似式における各近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnを記憶する近似係数記憶部と、
前記素子温度検出センサによって検出される前記赤外線検出素子の温度Ft、及び前記近似係数記憶部に格納された近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnに基づき、下記数式1に従って前記温度補正係数an、bn、cnを算出する温度補正係数算出部と、
前記温度補正係数算出部によって算出された前記温度補正係数an、bn、cnを記憶する温度補正係数記憶部と、
前記温度補正係数記憶部に格納された前記温度補正係数an、bn、cn、及び前記各赤外線検出素子からの出力DLnに基づき、下記数式1に従って前記撮像対象物に関する放射輝度Ldnを算出する放射輝度算出部と、を備えた赤外線カメラに係る。
(数式1)
Ldn=an・DLn
2+bn・DLn+cn
(数式2)
an=Aan・Ft2+Abn・Ft+Acn
bn=Ban・Ft2+Bbn・Ft+Bcn
cn=Can・Ft2+Cbn・Ft+Ccn
但し、nは1以上の自然数であり、前記各赤外線検出素子に対応する固有値である。
【0013】
この態様(第1の態様)の赤外線カメラによれば、予め、前記近似係数記憶部に近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnが格納される。この近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnは、前記数式2に従って、温度補正係数an、bn、cnを算出するための係数である。尚、上述したように、数式2は、温度補正係数an、bn、cnと赤外線検出素子の温度(素子温度)Ftとの相関を定義する相関式である。
【0014】
そして、前記温度補正係数算出部により、前記素子温度検出センサによって検出される前記素子温度Ft、及び前記近似係数記憶部に格納された近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnに基づき、上記数式1に従って前記温度補正係数an、bn、cnが算出され、算出された温度補正係数an、bn、cnが前記温度補正係数記憶部に格納される。
【0015】
そして、前記放射輝度算出部により、前記各赤外線検出素子からの出力(素子出力)DLn、及び前記温度補正係数記憶部に格納された前記温度補正係数an、bn、cnに基づき、前記数式1に従って前記撮像対象物に関する放射輝度Ldnが算出される。
【0016】
斯くして、本発明に係る赤外線カメラによれば、各赤外線検出素子の出力DLnと、撮像対象物から放射される赤外線の放射輝度Ldnとの相関を、2次方程式である上記数式1により定義し、各赤外線検出素子からの出力DLnに基づき、前記数式1に従って放射輝度Ldnを算出(推定)するようにしているので、線形関係に基づいて放射輝度Ldnを算出するようにしていた従来に比べて、より現実に即した正確な放射輝度Ldnを算出することができる。
【0017】
また、上記第1の態様の赤外線カメラにおいて、
前記素子温度検出センサから前記赤外線検出素子の温度Ftを取得するとともに、前記各赤外線検出素子からの出力DLnを取得する基礎データ取得部と、
前記基礎データ取得部によって取得された温度Ft及び出力DLnに基づいて、赤外線検出素子の温度Ftが所定の温度であるときの、前記撮像対象物から放射される放射輝度Ldnと各赤外線検出素子からの出力DLnとの相関を取得する輝度対出力相関取得部と、
前記輝度対出力相関取得部により取得された放射輝度Ldnと出力DLnとの相関に基づいて、前記近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnを算出して、前記近似係数記憶部に格納する近似係数算出部と、を更に備えた態様を採ることができる。
【0018】
この態様(第2の態様)の赤外線カメラによれば、前記基礎データ取得部により、赤外線検出素子の温度Ftと、各赤外線検出素子からの出力DLnとの相関データが取得される。次に、この基礎データ取得部により取得された素子温度Ft及び素子出力DLnの相関データに基づき、前記輝度対出力相関取得部により、赤外線検出素子の温度Ftが所定の温度であるときに、撮像対象物から放射される放射輝度Ldnと各赤外線検出素子からの素子出力DLnとの相関が取得される。
【0019】
そして、前記輝度対出力相関取得部により取得された放射輝度Ldnと出力DLnとの相関に基づいて、前記近似係数算出部により前記近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnが算出され、算出された近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnが前記近似係数記憶部に格納される。
【0020】
斯くして、この赤外線カメラによれば、前記数式2に従った温度補正係数an、bn、cnを算出するための前記近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnを内部機能によって算出することができるので、撮像対象物(測定対象物)の効率的な測定を実行することができる。
【0021】
また、上記第2の態様の赤外線カメラにおいて、
前記基礎データ取得部によって取得された赤外線検出素子の温度Ft、及び出力DLnに基づいて、出力対温度の相関式を取得する出力対温度相関取得部と、
前記出力対温度相関取得部によって取得された出力対温度相関式に基づき、補間処理によって、各赤外線検出素子の温度Ftと出力DLnとの相関データを算出する補間処理部と、を更に備え、
前記輝度対出力相関取得部は、前記基礎データ取得部によって取得された温度Ft及び出力DLn、並びに前記補間処理部によって算出された温度Ft及び出力DLnに基づいて、前記放射輝度Ldnと前記出力DLnとの相関を取得するように構成された態様を採ることができる。
【0022】
この態様(第3の態様)の赤外線カメラによれば、
前記基礎データ取得部により取得された赤外線検出素子の温度Ft、及び出力DLnに基づいて、前記出力対温度相関取得部により、出力対温度の相関式が取得される。
【0023】
そして、前記出力対温度相関取得部によって取得された出力対温度相関式に基づいて、前記補間処理部による補間処理が実行され、赤外線検出素子の温度Ftと出力DLnとの相関データの補間が行われ、このようにして精度が高められた相関データに基づいて、前記輝度対出力相関取得部により、前記放射輝度Ldnと前記出力DLnとの相関が取得される。
【0024】
斯くして、この赤外線カメラによれば、赤外線検出素子の温度Ftと出力DLnとの精度の高い精緻な相関データを得ることができるので、前記数式2に従った温度補正係数an、bn、cnを算出するための前記近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnの精度を高めることができる。
【0025】
また、上記の第1の態様から第3の態様のいずれかの赤外線カメラにおいて、
前記放射輝度算出部によって算出された放射輝度Ldnに基づいて、前記撮像対象物に関する温度データを算出する温度データ算出部を、更に備えた態様を採ることができる。
【0026】
この態様(第4の態様)の赤外線カメラによれば、従来に比べて、撮像対象物のより正確な温度を算出することができる。また、画素間でバラツキの少ない低ノイズの画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明に係る赤外線カメラによれば、各赤外線検出素子の出力DLnと、撮像対象物から放射される赤外線の放射輝度Ldnとの相関を、2次方程式である上記数式1により定義し、各赤外線検出素子からの出力DLnに基づき、前記数式1に従って放射輝度Ldnを算出(推定)するようにしているので、線形関係に基づいて放射輝度Ldnを算出するようにしていた従来に比べて、より現実に即した正確な放射輝度Ldnを算出することができ、ひいては、従来に比べて、撮像対象物のより正確な温度を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の具体的な実施の形態に係る赤外線カメラの構成を示したブロック図である。
【
図2】放射輝度と黒体温度との関係を示した説明図である。
【
図3】放射輝度と素子出力との関係を示した説明図である。
【
図4】本実施形態に係る赤外線カメラの構造を示した説明図である。
【
図5】本実施形態に係る赤外線カメラをキャリブレーションする態様を示した説明図である。
【
図6】本実施形態に係る赤外線カメラをキャリブレーションする際に取得する基礎データを示した説明図である。
【
図7】本実施形態に係る出力対温度相関取得における処理を説明するための説明図である。
【
図8】本実施形態に係る補間処理部における処理を説明するための説明図である。
【
図9】本実施形態に係る輝度対出力相関取得部における処理を説明するための説明図である。
【
図10】本実施形態に係る近似係数算出部における処理を説明するための説明図である。
【
図11】本実施形態に係る近似係数算出部における処理を説明するための説明図である。
【
図12】本実施形態に係る近似係数算出部における処理を説明するための説明図である。
【
図13】本発明の他の実施形態に係る赤外線カメラの構成を示したブロック図である。
【
図14】本発明の更に他の実施形態に係る赤外線カメラの構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る赤外線カメラの概略構成を示したブロック図である。同
図1に示すように、本例の赤外線カメラ1は、筐体2と、この筐体2内に配設されるレンズ3、撮像部6、素子温度検出センサ7及びデータ処理部8からなる。
【0031】
前記レンズ3は、前記筐体2の開口部に、当該開口部を閉塞するように配設され、撮像対象物から放射される赤外線を、適宜間隔をあけて後方に並設される前記撮像部6に集光する。
【0032】
前記撮像部6は、2次元平面上に復行復列に配列された複数の赤外線検出素子6anを備えている。赤外線検出素子6anは、ボロメータと称される熱型の非冷却素子で、各赤外線検出素子6anは、入射光量に応じた電圧値を出力して、前記データ処理部8に入力する。また、撮像部6には、素子温度検出センサ7が付設されており、この素子温度検出センサ7から赤外線検出素子6anの温度に係るデータがデータ処理部8に入力される。尚、この素子温度検出センサ7は、赤外線検出素子6anの全体としての温度を検出する。また、nは1以上の自然数であって、赤外線検出素子の個数に対応しており、具体的な数値は前記各赤外線検出素子に対応する固有値である。特に断りがない限り、以下において、nは同様の意図で用いられている。
【0033】
前記データ処理部8は、A/D変換器9,10、基礎データ取得部12、出力対温度相関取得部13、補間処理部14、輝度対出力相関取得部15、近似係数算出部16、近似係数記憶部17、温度補正係数算出部18、温度補正係数記憶部19、放射輝度算出部20、温度データ算出部21、D/A変換器22及び入出力インターフェース23などから構成される。
【0034】
尚、このデータ処理部8は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成することができ、具体的には、前記A/D変換器9,10、基礎データ取得部12、出力対温度相関取得部13、補間処理部14、輝度対出力相関取得部15、近似係数算出部16、温度補正係数算出部18、放射輝度算出部20、温度データ算出部21、D/A変換器22及び入出力インターフェース23はコンピュータプログラムによってその機能が実現される態様を採ることができる。或いは、前記A/D変換器9,10、基礎データ取得部12、出力対温度相関取得部13、補間処理部14、輝度対出力相関取得部15、近似係数算出部16、温度補正係数算出部18、放射輝度算出部20、温度データ算出部21、D/A変換器22及び入出力インターフェース23は、それぞれ、適宜電子回路を備えた電子ディバイスによって実現することができる。また、前記近似係数記憶部17及び温度補正係数記憶部19はRAMなどの適宜記憶媒体から構成することができる。
【0035】
前記A/D変換器9は、前記素子温度検出センサ7から出力される、前記赤外線検出素子6anの温度に係るデータを入力してA/D変換し、変換後の素子温度Ftを前記温度補正係数算出部18及び基礎データ取得部12に入力する処理を行う。また、前記A/D変換器10は、各赤外線検出素子6anからの出力をA/D変換して、変換後の素子出力DLnを、切換スイッチ11を介して択一的に接続される、基礎データ取得部12、放射輝度算出部20又は入出力インターフェース23に送信する。尚、前記素子温度Ftも切換スイッチ11を介して前記基礎データ取得部12に入力される。
【0036】
前記基礎データ取得部12、出力対温度相関取得部13、補間処理部14、輝度対出力相関取得部15及び近似係数算出部16は、キャリブレーション操作によって、近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnを算出する機能部である。
【0037】
この近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnは、各赤外線検出素子6anの出力(素子出力)DLnと、撮像対象物から放射される赤外線の放射輝度Ldnとの相関を、下記数式1の2次方程式(相関式)で定義したときの、当該相関式中の各温度補正係数an、bn、cnを算出するため係数である。
(数式1)
Ldn=an・DLn
2+bn・DLn+cn
尚、放射輝度Ldnは、赤外線検出素子6anに対応付けられる部分の撮像対象物の放射輝度である。
【0038】
具体的には、近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnは、素子温度Ftに基づき、下記数式2の2次方程式(相関式)によって、温度補正係数an、bn、cnを算出する際に用いられる係数である。
(数式2)
an=Aan・Ft2+Abn・Ft+Acn
bn=Ban・Ft2+Bbn・Ft+Bcn
cn=Can・Ft2+Cbn・Ft+Ccn
【0039】
本発明者らの知見によれば、各赤外線検出素子6a
nの出力DL
nと、撮像対象物から放射される赤外線の放射輝度Ld
nとは、
図3において破線で示した線形の関係にはなく、実線で示した非線形の関係にある。これは、撮像対象物から放射される赤外線を赤外線検出素子6a
nに集光させるためのレンズ3等の光学機構が存在し(
図4参照)、また、赤外線検出素子6a
nには個体差があるからである。そこで、本実施形態では、2次方程式である上記数式1に従い、素子出力DL
nから、撮像対象物の放射輝度Ld
nを算出(推定)することとした。尚、
図4における符号4は、レンズ3を保持する保持部であり、符号5は、前記保持部4に固設されて、前記撮像部6を保持する保持部である。
【0040】
前記基礎データ取得部12は、前記入出力インターフェース23から入力される指令に従って、前記近似係数Aa
n、Ab
n、Ac
n、Ba
n、Bb
n、Bc
n、Ca
n、Cb
n及びCc
nを算出するための
図6に示した基礎データを、赤外線検出素子6a
n及び素子温度検出センサ7から、それぞれA/D変換器9,10及び切換スイッチ11を介して取得する。
【0041】
尚、このキャリブレーション操作の際には、赤外線カメラ1は、
図5に示すように、恒温ケース100内に収納された状態で、黒体103を撮像するものとする。恒温ケース100はペルチェ素子101によって調温されるようになっており、レンズ3と黒体103との間にはシャッタ102が配置されている。また、黒体103は、図示しない適宜温度調節器により、所定の温度に調整される。
【0042】
前記基礎データは、
図6に示すように、前記恒温ケースの温度を、例えば10℃から10℃間隔で4段階(Rt
1~Rt
4)に設定するとともに、黒体103の温度も10℃間隔で例えば3段階(T
1~T
3)に設定した状態で、それぞれ素子温度Ft
1~Ft
4について、それぞれ黒体103の温度がT
1~T
3のときに、前記シャッタ102を開くことで各赤外線検出素子6a
nから出力される素子出力DL
nT
1~DL
nT
3である。尚、温度間隔及び設定温度はあくまでも一例であって、これに限定されるものではない。
【0043】
前記出力対温度相関取得部13は、前記基礎データ取得部12によって取得された各赤外線検出素子6a
nの素子温度Ft、及び素子出力DL
nに基づいて、出力対温度の相関式を取得する。前記基礎データ取得部12によって取得された基礎データを、素子出力DL
nと素子温度Ftの関係で表すと、
図7に示すようになる。
【0044】
図7において、各赤外線検出素子6a
nにおける素子出力DL
nと素子温度Ftとの相関は、それぞれ、黒体103の温度がT
1、T
2及びT
3のときに、以下の近似式によって近似される。
DL
nT
1=A
n1・Ft
3+B
n1・Ft
2+ C
n1・Ft+D
n1
DL
nT
2=A
n2・Ft
3+B
n2・Ft
2+ C
n2・Ft+D
n2
DL
nT
3=A
n3・Ft
3+B
n3・Ft
2+ C
n3・Ft+D
n3
尚、各近似式における係数A
n1~A
n3、B
n1~B
n3、C
n1~C
n3、D
n1~D
n3は、それぞれ最小二乗法等の手法によって算出することができる。
但し、近似式としてはこの3次方程式に限られるものではなく、2次方程式、或いは4次以上の高次方程式によって近似するようにしても良い。
【0045】
前記補間処理部14は、前記出力対温度相関取得部13によって取得された上記各式を用いて、データを補間する処理を行う機能部である。
図8に、Ft
1~Ft
2の間のデータを補間する例を示している。
図8において、黒丸でプロットした値が実測値であり、白丸でプロットした値が補間値である。この例では、Ft
1~Ft
2の間を2.5℃毎に補間しているが、これは一例であって、これに限られるものではない。また、Ft
2~Ft
4の間についても補間するようにしても良い。
【0046】
前記輝度対出力相関取得部15は、前記基礎データ取得部12によって取得された素子温度Ft及び素子出力DLn、並びに前記補間処理部14によって算出された素子温度Ft及び素子出力DLnに基づいて、前記放射輝度Ldnと前記出力DLnとの相関を取得する機能部である。
【0047】
まず、輝度対出力相関取得部15は、黒体103の温度T1~T3毎に、以下の数式3に従って、当該黒体103の放射輝度を算出する。
(数式3)
但し、Ltは、放射輝度(W・sr-1・m-2)であり、Ldは、Ltをデジタルレベル(2のn乗)にスケール変換した値に相当する。
また、λは物体から発散する放射の波長(m)であり、λ1~λ2は、赤外線検出素子6aの感度波長帯である。
また、Tは物体の絶対温度(K)であり、黒体103及び撮像対象物の温度に相当する。
また、C1,C2は放射の定数であり、
C1=c2h=5.9548×10-17(W・m2)
C1=ch/k=0.014388(m・K)
である。また、cは真空中の光の速度(c=2.99792458×108m・s-1)、hはプランク定数(h=6.6256×10-34J・s)、kはボルツマン定数(k=1.38054×10-23J・K-1)である。
【0048】
尚、上記数式3から分かるように、黒体103の放射輝度Ldnは黒体103の温度T1~T3毎に一意の値として得られる。そして、輝度対出力相関取得部15は、得られた黒体103の温度T1~T3毎の放射輝度LdT1~LdT3について、前記放射輝度Ldnと前記出力DLnとの関係を、素子温度Ftごとに取得する。
【0049】
前記放射輝度Ld
nと前記出力DL
nとの相関を、
図9に示している。
図9では、素子温度Ftが、それぞれFt
1、Ft
1+1、Ft
1+2、Ft
1+3、Ft
2であるときの前記放射輝度Ld
nと前記出力DL
nとの相関を示しており、各相関とも以下の2次方程式で近似することができる。尚、素子温度Ft
1+1、Ft
1+2、Ft
1+3は補間値である。
Ld
nFt1=a
nFt1・DL
nFt1
2+b
nFt1・DL
nFt1+c
nFt1
Ld
nFt1+1=a
nFt1+1・DL
nFt1+1
2+b
nFt1+1・DL
nFt1+1+c
nFt1+1
Ld
nFt1+2=a
nFt1+2・DL
nFt1+2
2+b
nFt1+2・DL
nFt1+2+c
nFt1+2
Ld
nFt1+3=a
nFt1+3・DL
nFt1+3
2+b
nFt1+3・DL
nFt1+3+c
nFt1+3
Ld
nFt2=a
nFt2・DL
nFt2
2+b
nFt2・DL
nFt2+c
nFt2
但し、近似式としてはこの2次方程式に限られるものではなく、2次以上の高次方程式によって近似するようにしても良い。
【0050】
上式において、LdnFt1は素子温度がFt1のときの放射輝度であり、同様に、LdnFt1+1は素子温度がFt1+1のときの放射輝度、LdnFt1+2は素子温度がFt1+2のときの放射輝度、LdnFt1+3は素子温度がFt1+3のときの放射輝度、LdnFt2は素子温度がFt2のときの放射輝度である。また、DLnFt1は素子温度がFt1のときの素子出力であり、同様に、DLnFt1+1は素子温度がFt1+1のときの素子出力、DLnFt1+2は素子温度がFt1+2のときの素子出力、DLnFt1+3は素子温度がFt1+3のときの素子出力、DLnFt2は素子温度がFt2のときの素子出力である。
【0051】
また、前記anFt1、anFt1+1、anFt1+2、anFt1+3、anFt2、bnFt1、bnFt1+1、bnFt1+2、bnFt1+3、bnFt2、cnFt1、cnFt1+1、cnFt1+2、cnFt1+3、+cnFt2は、素子温度FtがそれぞれFt1、Ft1+1、Ft1+2、Ft1+3、Ft2であるときの前記放射輝度Ldnと前記出力DLnとの相関を定義するための温度補正係数である。
【0052】
前記近似係数算出部16は、前記輝度対出力相関取得部15によって取得された放射輝度Ldnと前記出力DLnとの相関データに基づいて、前記各温度補正係数an、bn、cnと素子温度Ftとの相関関係を取得し、得られた相関関係から、各温度補正係数an、bn、cnを算出すための近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnを算出する処理を行う。
【0053】
図10に、係数a
nと素子温度Ftとの関係を示し、
図11に、係数b
nと素子温度Ftとの関係を示し、
図12に、係数c
nと素子温度Ftとの関係を示している。これらから分かるように、係数a
n、b
n、c
nはそれぞれ、以下の数式によって近似される。
a
n=Aa
n・Ft
2+Ab
n・Ft+Ac
n
b
n=Ba
n・Ft
2+Bb
n・Ft+Bc
n
c
n=Ca
n・Ft
2+Cb
n・Ft+Cc
n
【0054】
そして、各近似式における近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn、Ccnは、それぞれ最小二乗法等の手法によって算出することができ、前記近似係数算出部16は、このようにして算出した近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn、Ccnを前記近似係数記憶部17に格納する。
【0055】
前記温度補正係数算出部18、放射輝度算出部20、温度データ算出部21、D/A変換器22は、本実施形態に係る赤外線カメラ1により、撮像対象物を撮像して、その温度データである画像を生成する機能部である。
【0056】
具体的には、前記温度補正係数算出部18は、前記素子温度検出センサ7から出力され、前記A/D変換器9を介して入力される素子温度Ft、並びに前記近似係数記憶部18に格納された前記近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnに基づいて、上記数式2に従って、前記温度補正係数an、bn、cnを算出し、算出した温度補正係数an、bn、cnを前記温度補正係数記憶部19に格納する処理を行う。
【0057】
前記放射輝度算出部20は、前記各赤外線検出素子6aから出力され、前記A/D変換器10を介して入力される素子出力DLn、並びに前記温度補正係数記憶部19に格納された温度補正係数an、bn、cnに基づいて、前記数式1に従って、放射輝度Ldnを算出する処理を行う。
【0058】
また、前記温度データ算出部21は、前記放射輝度算出部20によって算出された放射輝度Ldnに基づいて、撮像対象物の各赤外線検出素子6aに対応する部位の温度を算出する処理を行う。放射輝度Ldnから温度データへの変換は、例えば、上述した数式3の逆関数を用いて算出することができる。尚、この温度データは摂氏で表されているのが好ましい。
【0059】
前記D/A変換器22は、温度データをアナログデータ(画像データ)に変換する処理部であり、このようにして変換された画像データが前記入出力インターフェース23を介して外部に出力される。
【0060】
以上の構成を備えた本例の赤外線カメラ1によれば、撮像対象物の温度画像を撮像する前に、まず、キャリブレーション処理を実行することで、温度画像の生成に必要なパラメータである前記近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnを取得することができる。
【0061】
そして、取得された近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnは、前記近似係数記憶部17に格納される。
【0062】
このようにして、前記近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnを取得した後、当該赤外線カメラ1により撮像対象物を撮像することで、当該撮像対象物の温度データである画像が生成される。
【0063】
以上のように、本例の赤外線カメラ1によれば、各赤外線検出素子6aの素子出力DLnと、撮像対象物から放射される赤外線の放射輝度Ldnとの相関を、2次方程式である上記数式1により定義し、各赤外線検出素子6aからの素子出力DLnに基づいて、前記数式1に従って放射輝度Ldnを算出(推定)するようにしているので、線形関係に基づいて放射輝度Ldnを算出するようにしていた従来に比べて、より現実に即した正確な放射輝度Ldnを算出することができ、ひいては、従来に比べて、撮像対象物のより正確な温度を算出することができる。
【0064】
また、本例の赤外線カメラ1によれば、前記数式2に従った温度補正係数an、bn、cnを算出するための前記近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnを、内部機能である前記基礎データ取得部12、出力対温度相関取得部13、補間処理部14、輝度対出力相関取得部15及び近似係数算出部16によって算出することができるので、撮像対象物の効率的な温度測定を実行することができる。
【0065】
また、本例の赤外線カメラ1によれば、前記出力対温度相関取得部13によって取得された出力対温度相関式に基づいて、前記補間処理部14による補間処理が実行され、各赤外線検出素子6aの素子温度Ftと素子出力DLnとの相関データの補間が行われ、このようにして精度が高められた相関データに基づいて、前記輝度対出力相関取得部15により、前記放射輝度Ldnと前記出力DLnとの相関が取得される。
【0066】
このように、本例の赤外線カメラ1によれば、赤外線検出素子6aの温度Ftと出力DLnとの精度の高い精緻な相関データを得ることができるので、前記数式2に従った温度補正係数an、bn、cnを算出するための前記近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnの精度を高めることができ、ひいては、撮像対象物のより精度の高い正確な温度を算出することができる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何ら上例の態様に限られるものでは無い。
【0068】
例えば、上例では、出力対温度相関取得部13及び補間処理部14を設けて、素子温度Ftと素子出力DL
nとの相関データを補間するようにしたが、このような態様に限られるものでは無く、ある程度正確な近似係数Aa
n、Ab
n、Ac
n、Ba
n、Bb
n、Bc
n、Ca
n、Cb
n及びCc
nを算出することができる場合には、
図13に示すように、出力対温度相関取得部13及び補間処理部14を省略した態様の赤外線カメラ1’とすることができる。
【0069】
また、上例では、キャリブレーションを行うための機能部である基礎データ取得部12、出力対温度相関取得部13、補間処理部14、輝度対出力相関取得部15及び近似係数算出部16を内部に設けたが、このような態様に限られるものでは無く、これらを外部のキャリブレーション装置として構成しても良い。この態様の赤外線カメラ1”を
図14に示す。
【0070】
この場合、キャリブレーション時の素子温度Ft及び素子出力DLnは、スイッチ11を介して入出力インターフェース23から前記キャリブレーション装置に出力される。そして、このキャリブレーション装置によって算出された近似係数Aan、Abn、Acn、Ban、Bbn、Bcn、Can、Cbn及びCcnは前記入出力インターフェース23を介して前記近似係数記憶部17に格納される。
【0071】
また、上例では、温度データ算出部21を設けたが、これに限られるものでは無く、温度データの算出が不要である場合、即ち、放射輝度算出部20によって算出された放射輝度Ld
nから画像データを生成する場合には、
図1に示した赤外線カメラ1、
図13に示した赤外線カメラ1’、及び
図14に示した赤外線カメラ1”において、この温度データ算出部21を省略することができる。
【0072】
また、上例において、放射輝度算出部20によって算出された放射輝度Ld
nをそのまま入出力インターフェース23を介して外部に出力する態様を採用する場合には、
図1に示した赤外線カメラ1、
図13に示した赤外線カメラ1’、及び
図14に示した赤外線カメラ1”において、温度データ算出部21及びD/A変換器22を省略することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 赤外線カメラ
2 筐体
3 レンズ
6 撮像部
6a 赤外線検出素子
7 素子温度検出センサ
8 データ処理部
9,10 A/D変換器
11 切換スイッチ
12 基礎データ取得部
13 出力対温度相関取得部
14 補間処理部
15 輝度対出力相関取得部
16 近似係数算出部
17 近似係数記憶部
18 温度補正係数算出部
19 温度補正係数記憶部
20 放射輝度算出部
21 温度データ算出部
22 D/A変換器
23 入出力インターフェース