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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152012
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】赤外線カメラ
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/33 20230101AFI20231005BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20231005BHJP
   G01J 1/44 20060101ALI20231005BHJP
   G01J 5/02 20220101ALI20231005BHJP
   G01J 5/70 20220101ALI20231005BHJP
【FI】
H04N5/33
G01J1/02 C
G01J1/44 D
G01J5/02 J
G01J5/70 A
G01J1/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061929
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】510203566
【氏名又は名称】株式会社ビジョンセンシング
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智哉
(72)【発明者】
【氏名】水戸 康生
【テーマコード(参考)】
2G065
2G066
5C024
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA12
2G065BA34
2G065CA21
2G066BA14
2G066BA34
2G066BC15
2G066CA15
2G066CB03
5C024AX06
5C024CX31
5C024EX15
5C024EX26
(57)【要約】
【課題】機械的なシャッタ機構や冷却手段といった手段を設けなくても、撮像対象物の正確な温度を容易に測定可能な赤外線カメラを提供する。
【解決手段】2次元平面上に配列された複数の赤外線検出素子6aを有する撮像部6と撮像対象物から放射される赤外線を撮像部6上に集光するレンズ5と、赤外線検出素子6aに連結されて、該赤外線検出素子6aの温度を検出する素子温度検出センサ7と、レンズ5を保持するとともに、撮像部6を直接又は間接的に保持する保持部2,3とを備える。保持部2,3は非断熱性を有する材料から構成され、レンズ5と、撮像部6とは、保持部2,3を介して熱的に結合された状態で連結される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元平面上に配列された複数の赤外線検出素子を有する撮像部と、
撮像対象物から放射される赤外線を前記撮像部上に集光するレンズと、
前記赤外線検出素子に連結されて、該赤外線検出素子の温度を検出する素子温度検出センサと、
前記レンズを保持するとともに、前記撮像部を直接又は間接的に保持する保持部とを少なくとも備えた赤外線カメラであって、
前記保持部は非断熱性を有する材料から構成され、
前記レンズと、前記撮像部とは、該保持部を介して熱的に結合された状態で連結されていることを特徴とする赤外線カメラ。
【請求項2】
前記保持部は、軸方向の両端部が開口した筒状の部材から構成され、
前記レンズは、前記保持部の一方の開口を封止するように、該保持部の一方側に密着して固設され、
前記撮像部は、前記保持部の他方の開口を封止するように、該保持部の他方側に密着して接続されていることを特徴とする請求項1記載の赤外線カメラ。
【請求項3】
前記撮像部は、熱伝導性材料を介して前記保持部に接続されていることを特徴とする請求項1記載の赤外線カメラ。
【請求項4】
前記保持部は、金属材料から形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の赤外線カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元平面上に複数の赤外線検出素子を配列して構成される撮像部を備えた赤外線カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボロメータと称される熱型の非冷却赤外線検出素子によって前記撮像部を構成した赤外線カメラが提案されている(特許文献1)。この赤外線検出素子は、赤外線を吸収することによって抵抗値が変化するもので、電流を流すことにより、入射光量に応じた電圧値を出力する。撮像対象物を撮像、即ち、撮像対象物から放射される赤外線が赤外線検出素子に吸収されると、その入射エネルギーに応じた電圧値が出力され、予め取得した感度を基に、出力電圧値を較正することによって、撮像対象物の温度を算出することができる。
【0003】
この赤外線検出素子の感度は、個体差を有することが知られており、従来、一般的には、2つの異なる既知の温度T1,T2の撮像対象物、例えば黒体炉(黒体を近似した装置)を撮像して、そのときに得られる各赤外線検出素子nの出力Vと、撮像対象物の温度Tとを基に、各赤外線検出素子nの感度を算出している。
【0004】
より具体的に説明すると、前記出力Vと温度Tとの関係は、温度T1,T2のときの出力V1,V2との2点データから、感度係数a及びオフセット係数bを用いた1次関数である下式によって近似される。
=a×T+b
したがって、撮像対象物の温度Tは、下式によって算出することができる。
T=(V-b)/a=V/a-b/a=V×A+B
【0005】
また、前記赤外線検出素子nは、同じ温度の撮像対象物から放射される赤外線を吸収する場合であっても、自身の温度に応じてその出力Vが変動するという特性を有している。図4は、赤外線検出素子の温度Ftを変化させた状態で、所定温度Tの撮像対象物を撮像したときの、当該素子温度Ftと素子出力Vとの関係を示したグラフである。同図4に示すように、素子出力Vは素子温度Ftに応じて変動する。
【0006】
したがって、前記撮像部を構成する赤外線検出素子の温度が環境温度等によって変動すると、同じ温度を有する撮像対象物を撮像した場合でも、前記赤外線検出素子の温度に応じて、各赤外線検出素子から出力される値が変動することになり、当該撮像対象物の正確な温度を測定することができない。
【0007】
また、赤外線を赤外線検出素子に集光させるためのレンズや、これを保持する保持部材はそれぞれ温度を有しているが、これらレンズや保持部材からは、その温度に応じた赤外線が赤外線検出素子に向けて放射されている(背景放射)。したがって、環境温度などの変動によって、当該レンズや保持部材の温度が変動すると、これらから赤外線検出素子に向けて放射される赤外線の放射量(背景放射量)が変動することになり、これを受けて赤外線検出素子から出力される値が変動することになる。斯くして、このようにして背景放射量が変動すると、撮像対象物の正確な温度を測定することができなくなる。上式におけるオフセット係数bは、所定の環境下で特定されるものであり、環境が変動すると、その値も変動する。
【0008】
そこで、従来、前記赤外線カメラは、例えば、図5に示すような構成が採用されていた。具体的には、この赤外線カメラ100は、2次元平面上に配列された複数の赤外線検出素子103aを有する撮像部103、撮像対象物から放射される赤外線110を前記撮像部103上に集光する102レンズ、レンズ102を保持する保持部材101、前記撮像部103を冷却するペルチェ素子104、このペルチェ素子104を挟んで前記撮像部103に接続される処理基板105、及び前記レンズ102と撮像部103との間に設けられるシャッタ106などから構成される。
【0009】
前記保持部材101は、軸方向の両端部が開口した筒状の部材から構成され、前記レンズ102は、前記保持部材101の一方の開口を封止するように、当該保持部材101の一方側に密着して固設される。また、前記撮像部103は、前記保持部材101内において、その感知面が前記レンズ102と対向するように設けられるとともに、その背面に前記ペルチェ素子104が接着されている。そして、このペルチェ素子104を挟んで前記撮像部103に接続された処理基板105が前記保持部材101に固設されている。
【0010】
この赤外線カメラ100によれば、ペルチェ素子104により、赤外線検出素子103aの温度が一定に調整される。上述したように、赤外線検出素子103aの温度が環境温度等によって変動すると、同じ温度を有する撮像対象物を撮像した場合でも、当該赤外線検出素子103aの温度に応じて、その出力値が変動するため、当該撮像対象物の正確な温度を測定することができないが、この赤外線カメラ100によれば、赤外線検出素子103aは一定の温度に調整されるので、このような問題は生じない。
【0011】
また、この赤外線カメラ100では、前記シャッタ106が開いたときにのみ、撮像対象物から放射される赤外線110がレンズ102を通して撮像部103に集光され、当該撮像部103によって検出されるとともに、当該シャッタ106の温度が適宜温度検出センサによって検出され、その温度に応じて、上式におけるオフセット係数bが校正される。上述したように、レンズ102から後方の背景放射量(内部空間107内においてシャッタ106及び保持部材101から放射される赤外線量)が変動すると、赤外線検出素子103aから出力される値が変動して、撮像対象物の正確な温度を測定することができなくなるが、この赤外線カメラ100では、シャッタ106の温度変動を検出し、これを基に前記背景放射量の変動を推定して、上式におけるオフセット係数bを校正するように構成されている。これにより、背景放射の変動に起因した上記の問題が解決される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010-193194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、上述した従来の赤外線カメラ100には、以下に説明するような問題があった。
【0014】
即ち、上述したシャッタ106は、電磁力によって開閉する機械的なシャッタ機構を有するプレートから構成されるもので、機械的な機構であるが故に故障し易く、また、当然のことながら、シャッタ106を開いているときにしか赤外線カメラ100による撮像を行うことができず、撮像対象物を連続的に撮像することができないという問題があった。
【0015】
また、従来の赤外線カメラ100は、撮像部103の温度をペルチェ素子104によって調節するようにしているが、当該ペルチェ素子104を用いた温度制御には、相当な電力を要することから消費電力上の問題があり、また、ペルチェ素子104は冷却側とは反対側の電極部で発熱を生じるため、発生した熱を放熱するための機構が必要であるという問題があった。そして、このような問題から、従来の赤外線カメラ100では、その小型化を図ることができなかった。
【0016】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、機械的なシャッタ機構や冷却手段といった手段を設けなくても、撮像対象物の正確な温度を容易に測定可能な赤外線カメラの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための本発明は、
2次元平面上に配列された複数の赤外線検出素子を有する撮像部と、
撮像対象物から放射される赤外線を前記撮像部上に集光するレンズと、
前記赤外線検出素子に連結されて、該赤外線検出素子の温度を検出する素子温度検出センサと、
前記レンズを保持するとともに、前記撮像部を直接又は間接的に保持する保持部とを少なくとも備えた赤外線カメラであって、
前記保持部は非断熱性を有する材料から構成され、
前記レンズと、前記撮像部とは、該保持部を介して熱的に結合された状態で連結された赤外線カメラに係る。
【0018】
この赤外線カメラでは、非断熱性を有する材料、言い換えれば、熱伝導性が良好な材料から構成される保持部によって、前記レンズが保持されるとともに、当該保持部によって前記撮像部が直接又は間接的に保持され、この結果、前記レンズと、前記撮像部とは、前記保持部を介して熱的に結合された状態で連結される。
【0019】
そして、以上の構成を備えた赤外線カメラは、前記レンズ、保持部及び撮像部間における熱伝導性が良好なものとなり、その結果、これらの温度が容易に平衡状態となって、安定した一定の温度に維持される。
【0020】
そして、このように、撮像部の温度を一定の平衡温度に維持することで、各赤外線検出素子から出力される値を撮像対象物の温度に応じた変動のない値に維持することができ、また、前記レンズ及び保持部の温度を一定の平衡温度に維持することで、当該レンズ及び保持部から、その温度に応じて前記撮像部に放射される赤外線の放射量(背景放射量)を一定に維持することができる。
【0021】
斯くして、前記レンズ、保持部及び撮像部の温度を一定の平衡温度に維持することで、撮像部の温度、及び背景放射量に応じて、各赤外線検出素子からの出力を校正するための校正値を算出する校正作業を一度行うだけで足り、これらに起因した校正を容易に行うことができるとともに、撮像対象物の正確な温度を測定することが可能となる。
【0022】
また、本発明に係る赤外線カメラによれば、機械的なシャッタ機構を設けていないので、撮像対象物を連続的に撮像することができ、更に、シャッタ機構や冷却手段といった手段を設けていないので、その小型化を図ることができる。
【0023】
上記の赤外線カメラにおいて、
前記保持部は、軸方向の両端部が開口した筒状の部材から構成され、
前記レンズは、前記保持部の一方の開口を封止するように、該保持部の一方側に密着して固設され、
前記撮像部は、前記保持部の他方の開口を封止するように、該保持部の他方側に密着して接続された態様を採ることができる。
【0024】
この態様の赤外線カメラによれば、前記レンズ及び撮像部が保持部に密着して接続されるので、前記レンズ、撮像部及び保持部の相互間を、より良好な状態で熱的に結合することができ、この結果、これらの温度をより安定した状態で、一定に維持することができる。
【0025】
更に、上記態様の赤外線カメラにおいて、
前記撮像部は、熱伝導性材料を介して前記保持部に接続された態様を採ることができる。このようにすれば、撮像部と保持部との間を、更に良好な状態で熱的に結合することができるので、前記レンズ、撮像部及び保持部の温度を更に安定した状態で、一定に維持することができる。
【0026】
尚、前記熱伝導性材料は、その一例としては、シリコーン、アクリル、ポリオフィレンなどの樹脂を例示することができるが、これに限られるものではない。また、形状としてはシート状のものを用いることができるが、これに限られるものではない。また、熱伝導性材料は、0.5W/mK以上の熱伝導率を有するものが好ましく、1.5W/mK以上の熱伝導率を有するものがより好ましい。
【0027】
また、前記保持部は、金属材料から形成されているのが好ましく、一例を挙げるとすれば、アルミニウム合金を例示することができるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明に係る赤外線カメラによれば、レンズ、保持部及び撮像部間における熱伝導性が良好なものとなり、その結果、これらの温度が平衡状態となり、安定した一定の温度に維持される。そして、このように、レンズ、保持部及び撮像部を平衡状態にすることで、撮像部の温度、及び背景放射量に応じて、各赤外線検出素子からの出力を校正するための校正値を算出する校正作業を一度行うだけで足り、これらに起因した校正を容易に行うことができるとともに、撮像対象物の正確な温度を測定することが可能となる。
【0029】
また、本発明に係る赤外線カメラによれば、機械的なシャッタ機構を設けていないので、撮像対象物を連続的に撮像することができ、更に、シャッタ機構や冷却手段といった手段を設けていないので、その小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る赤外線カメラを示したブロック図である。
図2】本実施形態に係る赤外線カメラの構造を示した説明図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る赤外線カメラの構造を示した説明図である。
図4】従来の問題点を説明するための説明図である。
図5】従来の赤外線カメラの構造を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る赤外線カメラを示したブロック図であり、図2は、本実施形態に係る赤外線カメラの構造を示した説明図である。
【0032】
本例の赤外線カメラ1は、図1及び図2に示すように、軸方向の両端部が開口した筒状の筐体2と、この筐体2の一方の開口を封止するように、当該筐体2の一方側に密着して固設されたレンズ5と、前記筐体2の他方側の開口の近傍において、その内周面に固着された断面が鉤状をした環状の接合部材3と、この接合部材3に熱伝導性材料4を介して結合された撮像部6と、この撮像部6に連結されて、その温度を検出する素子温度検出センサ7と、この素子温度検出センサ7を挟んで前記撮像部6に取り付けられた処理基板(データ処理部)8とを備えて構成される。
【0033】
前記撮像部6は、2次元平面上に復行復列に配列された複数の赤外線検出素子6aを備えており、その感知面が所定の間隔を空けて前記レンズ5と対向するように配設されている。そして、当該撮像部6は、前記接合部材3の環内に収容された状態で、前記処理基板8が前記接合部材3の下面に固設されることにより、その上面が前記熱伝導性材料4を介して当該接合部材3に結合されている。尚、この赤外線検出素子6aは、ボロメータと称される熱型の非冷却素子で、各赤外線検出素子6aは、入射光量に応じた電圧値を出力して、前記データ処理部8に入力する。
【0034】
また、前記素子温度検出センサ7は、前記撮像部6の感知面とは反対側の背面に連結されており、検出した各赤外線検出素子6aの温度に係るデータを前記データ処理部8に入力する。尚、この素子温度検出センサ7は、赤外線検出素子6aを全体としてその温度を検出する。
【0035】
また、前記レンズ5は、上述したように前記筐体2の一方の開口側に設けられており、撮像対象物から放射された赤外線10を受光して、前記撮像部6上に集光する。
【0036】
上記筐体2及び接合部材3は保持部を構成するもので、非断熱性の材料である、例えば、アルミニウム合金などの金属材料から構成することができる。但し、このアルミニウム合金に限られるものでなく、良好な熱伝導性を有する材料であれば、金属材料や他の材料から構成することができる。
【0037】
そして、本例の赤外線カメラ1では、前記レンズ5が前記筐体(保持部)2に密着した固設されるとともに、前記撮像部6が熱伝導性材料4を介して前記接合部材(保持部)3に結合されており、この結果、レンズ5及び撮像部6は、保持部である筐体2及び接合部材3を介して熱的に結合された状態で連結されている。
【0038】
尚、前記熱伝導性材料は、その一例としては、シリコーン、アクリル、ポリオフィレンなどの樹脂を例示することができるが、これに限られるものではない。また、形状としてはシート状のものを用いることができるが、これに限られるものではない。また、熱伝導性材料は、0.5W/mK以上の熱伝導率を有するものが好ましく、1.5W/mK以上の熱伝導率を有するものがより好ましい。
【0039】
以上の構成を備えた本例の赤外線カメラ1は、前記レンズ5、筐体2、接合部材3、及び撮像部6間における熱伝導性が良好なものとなっており、この結果、これらの温度は容易に平衡状態となり、安定した一定の温度に維持される。
【0040】
そして、このように、撮像部6の温度を一定の平衡温度に維持することで、各赤外線検出素子6aから出力される値を撮像対象物の温度に応じた変動のない値に維持することができる。また、前記レンズ5、筐体2及び接合部材3の温度を一定の平衡温度に維持することで、内部空間9内において、当該レンズ5、筐体2及び接合部材3から、その温度に応じて前記撮像部6に放射される赤外線の放射量(背景放射量)を一定に維持することができる。
【0041】
斯くして、前記レンズ5、筐体2、接合部材3、及び撮像部6の温度を一定の平衡温度に維持することで、撮像部6の温度、及び前記背景放射量に応じて、各赤外線検出素子6aからの出力を校正するための校正値を算出する校正作業を一度行うだけで足り、これらに起因した校正を容易に行うことができるとともに、撮像対象物の正確な温度を測定することが可能となる。
【0042】
また、本例の赤外線カメラ1によれば、従来のような機械的なシャッタ機構を設けていないので、撮像対象物を連続的に撮像することができ、更に、シャッタ機構や冷却手段といった手段を設けていないことから、その小型化を図ることができる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何ら上例の態様に限られるものでは無い。
【0044】
例えば、上例では、撮像部6の上面と接合部材3との間の隙間に熱伝導性材料4を設けるとことによって、撮像部6と接合部材3との間の熱伝導性(熱結合性)を高めるようにしたが、このような態様に限られるものではなく、図3に示すように、撮像部6の上面及び外周面と接合部材3との間の隙間に熱伝導性材料4’を設けた態様の赤外線カメラ1’としても良い。このようにすれば、撮像部6と接合部材3との間の熱伝導性(熱結合性)をより高めることができる。尚、図3において、図2における構成部材と同じ構成部材については、同じ符号を付している。
【0045】
或いは、撮像部6と接合部材3との間の熱伝導性(熱結合性)が十分である場合には、図2において、熱伝導性材料4を設けないで、撮像部6と接合部材3とを隙間なく密着させた態様を採ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 赤外線カメラ
2 筐体(保持部)
3 接合部材(保持部)
4 熱伝導性材料
5 レンズ
6 撮像部
6a 赤外線検出素子
7 素子温度検出センサ
8 処理基板(データ処理部)
9 内部空間
10 赤外線
図1
図2
図3
図4
図5