(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152020
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20231005BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20231005BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20231005BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/22
B60N2/16
B60N2/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061941
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大城 究人
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BB21
3B087BD03
3B087CD01
3B087DB03
(57)【要約】
【課題】軽量化を図りつつ、後面衝突時に生じる荷重に対してシートクッションサイドフレームの剛性を向上することができる車両用シートを提供すること。
【解決手段】車両用シート10は、リクライナ18と、シートクッションフレーム14の後部においてシート幅方向に延在するリヤパイプ26と、シートクッションフレーム14のシート幅方向端部において前後方向に延在すると共に、リクライナ18が取り付けられたリクライナ取付部38と、リヤパイプ26のシート幅方向端部が接続されたリヤパイプ接続部28と、側面視でリクライナ取付部38とリヤパイプ接続部28との間においてリクライナ取付部38の中心とリヤパイプ接続部28の中心とを結ぶ軸線を跨いで前後方向に延在しかつ軸線から前方側へ向かうにつれてリクライナ18から離れる方向へ延在すると共にシート幅方向に突出された突出部56とを備えたシートクッションサイドフレーム20と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の背部を支持するシートバックを着座乗員の臀部及び大脛部を支持するシートクッションに対して角度調整可能に連結するリクライナと、
前記シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームの後部においてシート幅方向に延在するリヤパイプと、
前記シートクッションフレームのシート幅方向端部において前後方向及び上下方向に延在すると共に、前記リクライナが取り付けられたリクライナ取付部と、前記リクライナ取付部の下方において前記リヤパイプのシート幅方向端部が接続されたリヤパイプ接続部と、側面視で前記リクライナ取付部と前記リヤパイプ接続部との間において前記リクライナ取付部の中心と前記リヤパイプ接続部の中心とを結ぶ軸線を跨いで前後方向に延在しかつ前記軸線から前方側へ向かうにつれて前記リクライナから離れる方向へ延在すると共にシート幅方向に突出して形成された突出部とを備えたシートクッションサイドフレームと、
を有する車両用シート。
【請求項2】
前記シートクッションサイドフレームの後端又は下端において前記突出部の後端部近傍に形成されかつシート幅方向に凸となる方向に屈曲形成された屈曲部をさらに有する、
請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記屈曲部は、前記突出部の後端部よりも下側に形成されている、
請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記突出部の前端部における下端は、前記リクライナの下端よりも下側かつ前記リクライナの前端よりも前側に形成されている、
請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記突出部は、側面視で前記軸線と前記リクライナの外周面との交点における接線よりも下方側に形成されている、
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記突出部は、側面視でリクライナ取付部側に凸となる円弧状とされている、
請求項2に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記突出部は、シート幅方向に膨出して形成されている、
請求項1に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記シートクッションを上昇及び下降可能に支持するリフタ機構をさらに有する、
請求項1に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートは軽量化が求められている。車両用シートの骨格を構成するフレームの板厚を低減することで軽量化を実現できるが、板厚を低減するとその分剛性が低くなる。一般に、後面衝突時にシートバックに入力された荷重は、シートバックサイドフレームからリクライナを介してシートバックサイドフレームへ伝わる。
【0003】
下記特許文献1には、アームプレート(シートバックサイドフレーム)とシートクッションサイド(シートクッションサイドフレーム)とを連結するベースブラケットが開示されている。このベースブラケットを有する車両用シートにおいて、後面衝突時にシートバックに入力された荷重は、シートバックサイドフレームからリクライナを介してベースブラケットへ伝わる。
【0004】
このベースブラケットには、後方に延在する延出部のリクライナに重複しない位置に、ビードが形成されている。このビードにより、重量を増加させずにベースブラケットの剛性を高める構成とされている。また、リクライナとビードとの間に強度的に劣る部分を設けることで、後面衝突時にこの強度的に劣る部分を変形させて、リクライナに加わる荷重をベースブラケットに逃がす構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1のようなベースブラケットや、ベースブラケットを介さずにリクライナが取り付けられたシートクッションサイドフレームにおいて、板厚が一定の場合、その剛性は前後方向の荷重伝達経路の距離に比例する。
【0007】
しかしながら、シートクッションサイドフレームにおいて、リクライナが取り付けられている部分は他の部分よりも剛性が高く、この周囲において変形が生じやすい。このため、シートクッションサイドフレームは、前後方向の耐力を使い切る前にリクライナが取り付けられている部分の周囲において変形してしまうという問題が生じる。よって、車両用シートにおいて軽量化を図りつつ、後面衝突時に生じる荷重に対してシートクッションサイドフレームの剛性を向上するには改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記の事実を考慮し、軽量化を図りつつ、後面衝突時に生じる荷重に対してシートクッションサイドフレームの剛性を向上することができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明に係る車両用シートは、着座乗員の背部を支持するシートバックを着座乗員の臀部及び大脛部を支持するシートクッションに対して角度調整可能に連結するリクライナと、前記シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームの後部においてシート幅方向に延在するリヤパイプと、前記シートクッションフレームのシート幅方向端部において前後方向及び上下方向に延在すると共に、前記リクライナが取り付けられたリクライナ取付部と、前記リクライナ取付部の下方において前記リヤパイプのシート幅方向端部が接続されたリヤパイプ接続部と、側面視で前記リクライナ取付部と前記リヤパイプ接続部との間において前記リクライナ取付部の中心と前記リヤパイプ接続部の中心とを結ぶ軸線を跨いで前後方向に延在しかつ前記軸線から前方側へ向かうにつれて前記リクライナから離れる方向へ延在すると共にシート幅方向に突出して形成された突出部とを備えたシートクッションサイドフレームと、を有する。
【0010】
請求項1に記載の本発明によれば、車両の後面衝突時において、シートバックには着座乗員から後ろ向きに荷重が入力される。ここで、シートバックとシートクッションとはリクライナによって連結されているため、シートバックに入力された荷重は、リクライナ取付部を介してシートクッションサイドフレームへ伝達される。
【0011】
シートクッションサイドフレームの板厚が一定の場合、その剛性は荷重伝達経路の距離に比例する。一般に、シートクッションサイドフレームに伝達された荷重は、剛性の高いリクライナの外周に沿って前後方向に伝達される。
【0012】
一方、本発明に係る車両用シートにおけるシートクッションサイドフレームには、シート幅方向に突出する突出部が形成されているため、荷重はこの突出部に沿って伝達される。この突出部は、側面視でリクライナ取付部とリヤパイプ接続部との間においてリクライナ取付部の中心とリヤパイプ接続部の中心とを結ぶ軸線を跨いで前後方向に延在しかつ軸線から前方側へ向かうにつれてリクライナから離れる方向へ延在している。これにより、シートクッションサイドフレームの前後方向に伝わる荷重が、リクライナの前方側においてリクライナに沿って伝達するのを抑制することができ、前後方向の荷重伝達経路を長くすることができる。よって、シートクッションサイドフレームは前後方向の耐力を使い切ることができるため、剛性が向上する。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明において、前記シートクッションサイドフレームの後端又は下端において前記突出部の後端部近傍に形成されかつシート幅方向に凸となる方向に屈曲形成された屈曲部をさらに有する。
【0014】
請求項2に記載の本発明によれば、屈曲部は、シートクッションサイドフレームの後端又は下端においてシート幅方向に凸となる方向に屈曲形成されているため、後面衝突時に、シートクッションサイドフレームの後端部においてリクライナから下方向に伝達された荷重は、この屈曲部を起点としてシート前方側へ伝達される。ここで、屈曲部は突出部の後端部近傍に形成されているため、荷重は屈曲部から突出部へスムーズに伝えられる。よって、所望の経路に沿わせて確実に荷重を伝達させることができる。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る車両用シートは、請求項2に記載の発明において、前記屈曲部は、前記突出部の後端部よりも下側に形成されている。
【0016】
請求項3に記載の本発明によれば、屈曲部から突出部に伝達された荷重は、突出部の下側に沿って前方側へ伝達される。一方、リクライナは、突出部よりも上方に設けられている。よって、シートクッションサイドフレームにおいて、リクライナに沿って荷重が伝達されることをより一層抑制することができる。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る車両用シートは、請求項3に記載の発明において、前記突出部の前端部における下端は、前記リクライナの下端よりも下側かつ前記リクライナの前端よりも前側に形成されている。
【0018】
請求項4に記載の本発明によれば、シートクッションサイドフレームにおいて、突出部の下側に沿って前方へ伝達された荷重をより一層リクライナから離れた位置へ伝達させることができる。
【0019】
請求項5に記載の本発明に係る車両用シートは、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の発明において、前記突出部は、側面視で前記軸線と前記リクライナの外周面との交点における接線よりも下方側に形成されている。
【0020】
請求項5に記載の本発明によれば、シートクッションサイドフレームにおいて、リクライナに沿って荷重が伝達されることをより一層抑制することができる。
【0021】
請求項6に記載の本発明に係る車両用シートは、請求項2に記載の発明において、前記突出部は、側面視でリクライナ取付部側に凸となる円弧状とされている。
【0022】
請求項6に記載の本発明によれば、シートクッションサイドフレームにおいて、屈曲部から突出部の後端部に入力された荷重は、円弧状の突出部に沿ってスムーズに伝達される。よって、所望の経路に沿わせて確実に荷重を伝達させることができる。
【0023】
請求項7に記載の本発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明において、前記突出部は、シート幅方向に膨出して形成されている。
【0024】
請求項7に記載の本発明によれば、パネル状のフレームをプレス加工するだけで突出部を形成することができる。また、追加部材を接合して突出部を形成する場合と比較して、シートクッションサイドフレームを軽量化することができかつ部品点数及び工数を抑えることができる。
【0025】
請求項8に記載の本発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明において、前記シートクッションを上昇及び下降可能に支持するリフタ機構をさらに有する。
【0026】
請求項8に記載の本発明によれば、後面衝突時にシートバックから伝達された荷重はシートクッションサイドフレームにおいて吸収されるため、リフタ機構への荷重伝達を抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る車両用シートは、軽量化を図りつつ、後面衝突時に生じる荷重に対してシートクッションサイドフレームの剛性を向上することができるという優れた効果を有する。
【0028】
請求項2に記載の本発明に係る車両用シートは、後面衝突時に生じる荷重を効率よく吸収することができるという優れた効果を有する。
【0029】
請求項3に記載の本発明に係る車両用シートは、より一層シートクッションサイドフレームの剛性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0030】
請求項4に記載の本発明に係る車両用シートは、より一層シートクッションサイドフレームの剛性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0031】
請求項5に記載の本発明に係る車両用シートは、より一層シートクッションサイドフレームの剛性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0032】
請求項6に記載の本発明に係る車両用シートは、後面衝突時に生じる荷重をより一層効率よく吸収することができるという優れた効果を有する。
【0033】
請求項7に記載の本発明に係る車両用シートは、製造コストを抑えつつ、より一層軽量化することができるという優れた効果を有する。
【0034】
請求項8に記載の本発明に係る車両用シートは、リフタ機構の損傷を防ぐことができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートをシート左後方から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示される車両用シートにおけるシートクッションサイドフレームの要部をシート幅方向内側から見た拡大図である。
【
図3】
図2に示されるシートクッションサイドフレームの要部をシート幅方向外側から見た図であり、シートクッションサイドフレームの前後方向の耐力について説明する側面図である。
【
図4】
図2に示されるシートクッションサイドフレームの荷重伝達経路を示す側面図である。
【
図5】
図4に示される荷重伝達経路についてより詳細に説明する側面図である。
【
図6】
図2に示されるシートクッションサイドフレームの円弧ビードを設けない場合の荷重伝達経路を示す側面図であり、
図4に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、
図1~
図6を用いて、本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印LH及び矢印RHは、車両用シート10のシート前方側、シート上方側、シート幅方向左側及びシート幅方向右側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向(幅方向)の左右をそれぞれ示すものとする。まず、
図1を用いて車両用シート10の全体構成について説明した後に、
図2~
図6を用いて本実施形態の要部であるシートクッションサイドフレーム20について詳述する。
【0037】
〔車両用シート10の全体構成〕
図1に示される車両用シート10は、一例として左ハンドル車の運転席又は右ハンドル車の助手席とされており、車室内の左側に配置されている。また、車両用シート10は、図示しないシートベルト装置が内蔵された所謂ベルトインシートとされている。この車両用シート10の前後、左右及び上下の各方向は、それぞれ車両の前後、左右及び上下の各方向と一致している。なお、車両用シートは、車室内の右側に配置されてもよく、後部座席として車室内の後部に配置されてもよい。
【0038】
(シートフレーム12)
車両用シート10は、例えば金属又は樹脂によって構成された骨格部材であるシートフレーム12を備えている。このシートフレーム12は、シート前後方向及びシート幅方向に延在するシートクッションフレーム14と、シート上下方向及びシート幅方向に延在するシートバックフレーム16とを含んで構成されている。
【0039】
シートクッションフレーム14は、着座した乗員の臀部及び大腿部を支持可能に構成されたシートクッションの骨格を構成している。一方、シートバックフレーム16は、乗員の背部を支持可能に構成されたシートバックの骨格を構成しており、後述するリクライナ18によってシートクッションフレーム14の後部に回動可能に連結されている。
【0040】
車両用シート10のシートフレーム12には、例えばウレタンフォーム等の発泡体によって成形されたパッド(図示省略)が装着されている。また、このパッドは、布材、ニット素材、合成皮革、皮革等からなる複数の表皮片が互いに縫製されて構成された表皮(図示省略)に覆われている。
【0041】
(シートクッションフレーム14)
シートクッションフレーム14は、シート幅方向両端部においてそれぞれ前後方向及び上下方向に延在する一対のシートクッションサイドフレーム20(以下、「Cu-Sideフレーム20」と称す。)を備えている。Cu-Sideフレーム20は、側面視で前後方向を長手方向とし上下方向を短手方向とする略L字状に形成されている。
【0042】
また、シートクッションフレーム14は、左右のCu-Sideフレーム20の前端部同士をシート幅方向に連結するフロントフレーム22と、左右のCu-Sideフレーム20の後部24同士をシート幅方向に連結する円筒状のリヤパイプ26とを含んで構成されている。このリヤパイプ26の両端部は、Cu-Sideフレーム20の後部24の下部に形成された側面視で円形状のリヤパイプ接続部28に固定されている。リヤパイプ接続部28において、側面視でリヤパイプ26の中心とリヤパイプ接続部28の中心Pは一致している。
【0043】
(シートバックフレーム16)
また、シートバックフレーム16は、シート幅方向両端部において上下方向に延在する一対のバックサイドフレーム30と、一対のバックサイドフレーム30の下端部同士をシート幅方向に連結するリアシートパネル32と、一対のバックサイドフレーム30の上端部同士をシート幅方向に連結するアッパフレーム(図示省略)とを備えている。
【0044】
(リクライナ18)
ここで、左側のCu-Sideフレーム20の後部24には、Cu-Sideフレーム20の前部34よりも上方に延出された延出部36が形成されている。延出部36には、側面視で略円形状のリクライナ取付部38が形成されており、シート幅方向内側から円盤状のリクライナ18が取り付けられている。
【0045】
左側のバックサイドフレーム30の下端部は、このリクライナ18を介して、Cu-Sideフレーム20におけるリクライナ取付部38に取り付けられている。これにより、シートバックフレーム16は、シートクッションフレーム14に対して角度調整可能となっている。なお、車両用シート10は、左側にリクライナ18を有するシートとして説明したが、これに限らず、右側にリクライナ18を有していてもよく、シート幅方向の両側にそれぞれリクライナ18を有していてもよい。
【0046】
(リフタ機構70)
車両用シート10はさらに、シートクッションフレーム14を上昇及び下降可能に支持するリフタ機構70を備えている。リフタ機構70は、左側のCu-Sideフレーム20の前部を支持する前側ライザ40と、左側のCu-Sideフレーム20の後部を支持する後側ライザ42とを含んで構成されている。前側ライザ40及び後側ライザ42は、それぞれ図示しないリンク機構によってCu-Sideフレーム20の下部に連結されている。シートフレーム12は、このリフタ機構70によって、前側ライザ40及び後側ライザ42に対して上方側かつ前方側へ向かって上昇可能に構成されている。なお、シート幅方向右側の前側ライザ及び後側ライザについては、それぞれ前側ライザ40及び後側ライザ42と同様の構成を有するため説明を省略する。
【0047】
(スライドレール44)
また、車両用シート10は、前後方向に延在する左右一対のスライドレール44を備えている。このスライドレール44は、車体フロアに固定されている。前述した前側ライザ40の下端部及び後側ライザ42の下端部は、それぞれ左側のスライドレール44に係合されており、前後方向に摺動可能に構成されている。これにより、シートフレーム12は、車体フロアに対して前後方向に移動可能となっている。なお、車両用シート10は、スライドレール44を備えていなくてもよく、例えばシートクッションフレーム14が台座を介してフロアに固定されていてもよい。
【0048】
〔要部構成〕
次に、
図2及び
図3を用いて本実施形態に係る車両用シート10のCu-Sideフレーム20における要部について説明する。
図2に示されるように、Cu-Sideフレーム20の後部24において、リヤパイプ接続部28は、リクライナ取付部38の下方に形成されている。また、リヤパイプ接続部28は、リヤパイプ接続部28の中心P(
図3参照)がリクライナ取付部38の中心Q(
図3参照)よりも前方側に位置するように形成されている。なお、リクライナ取付部38の中心Qは、リクライナ18の中心と一致している。
【0049】
(前上側フランジ46)
Cu-Sideフレーム20の上側において、リクライナ取付部38よりも前側の端部には、側面視で下方側かつ後方側に凸となる向きに湾曲して形成された前上側フランジ46が形成されている。前上側フランジ46は、Cu-Sideフレーム20の側部48からシート幅方向内側に屈曲形成されている。
【0050】
(下側フランジ50及び後側フランジ52)
また、Cu-Sideフレーム20の下側の端部には、Cu-Sideフレーム20の側部48からシート幅方向内側に屈曲された下側フランジ50が形成されている。同様に、Cu-Sideフレーム20の後側の端部には、Cu-Sideフレーム20の側部48からシート幅方向内側に屈曲された後側フランジ52が形成されている。
【0051】
(エネルギ吸収ビード54)
ここで、Cu-Sideフレーム20の後部24において、下側フランジ50及び後側フランジ52の間には、シート幅方向内側かつ前方側へ突出する向きに屈曲された屈曲部としてのエネルギ吸収ビード54(以下、「EAビード54」と称す。)が形成されている。
【0052】
EAビード54は、側部48と下側フランジ50とに跨って形成された側面視で略三角形状の前部54Aと、側部48と後側フランジ52とに跨って形成された側面視で略三角形状の後部54Bとを含んで構成されている。なお、EAビード54の向き及び形状は上記に限らず、例えばシート幅方向外側に屈曲された下側フランジ及び後側フランジの間において、シート幅方向外側へ突出する向きに屈曲形成されていてもよい。
【0053】
(円弧ビード56)
また、Cu-Sideフレーム20の後部24において、リクライナ取付部38の下側かつリヤパイプ接続部28の上側には、側面視でリクライナ取付部38側に凸となる円弧状の突出部としての円弧ビード56が形成されている。この円弧ビード56は、シート幅方向内側に膨出されており、前後方向から見た断面視でシート幅方向外側に開放された略U字状に形成されている。なお、円弧ビード56は、シート幅方向外側に膨出されていてもよい。
【0054】
図3に示されるように、円弧ビード56は、側面視でリクライナ取付部38とリヤパイプ接続部28との間において、リクライナ取付部38の中心Qとリヤパイプ接続部28の中心Pとを結ぶ軸線L1を跨いで前後方向に延在している。換言すると、円弧ビード56の前端部58は、軸線L1よりも前方側に形成されており、円弧ビード56の後端部60は、軸線L1よりも後方側に形成されている。
【0055】
また、円弧ビード56は、側面視で軸線L1とリクライナ18の外周面18Aとの交点Rにおける接線L2よりも下方側に形成されている。さらに、円弧ビード56は、側面視で軸線L1から前方側へ向かうにつれて、リクライナ18及びリクライナ取付部38から離れる方向へ向かって延在している。
【0056】
円弧ビード56の前端部58の下端58Aは、円弧ビード56の下側端部を形成する内側円弧62の前端に等しく、リクライナ18の下端よりも下側かつリクライナ18の前端よりも前側に形成されている。
【0057】
一方、円弧ビード56の後端部60の下端60Aは、円弧ビード56の下側端部を形成する内側円弧62の後端に等しい。この円弧ビード56の後端部60の下端60Aは、EAビード54の前部54A及び後部54Bの間に形成された谷部54Cの前上側の先端部54Dの近傍に形成されている。つまり、EAビード54は、円弧ビード56の後端部60よりも下側において、円弧ビード56の後端部60の近傍に形成されている。
【0058】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
本実施形態に係る車両用シート10によれば、車両の後面衝突時において、シートバックフレーム16(
図1参照)には、着座乗員から後ろ向きに荷重が入力される。シートバックフレーム16とシートクッションフレーム14とはリクライナ18によって連結されているため、シートバックフレーム16に入力された荷重は、リクライナ取付部38を介してCu-Sideフレーム20へ伝達される。
【0060】
Cu-Sideフレーム20の板厚が一定の場合、その剛性は前上側フランジ46と後側フランジ52とを結ぶ荷重伝達経路W(
図3参照)の距離に比例する。
図6に示されるように、円弧ビードを備えていないクッションサイドフレーム82を備える車両用シート80において、シートバックフレーム84からリクライナ86及びリクライナ取付部88を介してクッションサイドフレーム82に伝達された荷重は、剛性の高いリクライナ86の外周に沿って前後方向に伝達される。この結果、前後方向の荷重伝達経路Yが所望の距離よりも短くなり、クッションサイドフレーム82の前後方向の耐力を使い切る前に、リクライナ取付部88の周囲において変形してしまう。
【0061】
一方、
図4に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10のCu-Sideフレーム20には、シート幅方向内側に突出する円弧ビード56が形成されているため、荷重はこの円弧ビード56に沿って伝達される。円弧ビード56に沿って伝達された荷重は、円弧ビード56の前端部58から前上側フランジ46へ伝達される(矢印X参照)。
【0062】
上述の通り、円弧ビード56は軸線L1(
図5参照)から前方側へ向かうにつれてリクライナ18から離れる方向へ延在している。これにより、Cu-Sideフレーム20の前後方向に伝わる荷重が、リクライナ18の前方側においてリクライナ18に沿って伝達するのを抑制することができる。よって、前後方向の荷重伝達経路Xを長くすることができる。これにより、Cu-Sideフレーム20は前後方向の耐力を使い切ることができるため、剛性が向上する。この結果、Cu-Sideフレーム20の軽量化を図りつつ、後面衝突時に生じる荷重に対してCu-Sideフレーム20の剛性を向上することができる。
【0063】
また、
図5に示されるように、Cu-Sideフレーム20の下側フランジ50及び後側フランジ52の間にEAビード54が形成されているため、後面衝突時に、Cu-Sideフレーム20の後部24においてリクライナ18から下方向に伝達された荷重は、このEAビード54を起点としてシート前方側へ伝達される(矢印A参照)。ここで、EAビード54は円弧ビード56の後端部60の近傍に形成されているため、荷重はEAビード54から円弧ビード56へスムーズに伝えられる。よって、所望の荷重伝達経路X(
図4参照)に沿わせて確実に荷重を伝達させることができる。
【0064】
さらに、EAビード54は、円弧ビード56の後端部60よりも下側に形成されているため、EAビード54から円弧ビード56に伝達された荷重は、円弧ビード56の下側端部を形成する内側円弧62に沿って前方側へ伝達される。よって、Cu-Sideフレーム20において、円弧ビード56よりも上方に設けられたリクライナ18に沿って荷重が伝達されることをより一層抑制することができる。
【0065】
さらにまた、円弧ビード56の前端部58における下端58Aは、リクライナ18の下端よりも下側かつリクライナ18の前端よりも前側に形成されているため、Cu-Sideフレーム20において、円弧ビード56の内側円弧62に沿って前方へ伝達された荷重をより一層リクライナ18から離れた位置へ伝達させることができる。
【0066】
また、円弧ビード56は、側面視で軸線L1とリクライナ18の外周面18Aとの交点Rにおける接線L2よりも下方側に形成されているため、Cu-Sideフレーム20において、リクライナ18に沿って荷重が伝達されることをより一層抑制することができる。
【0067】
さらに、円弧ビード56は、側面視でリクライナ取付部38側に凸となる円弧状とされているため、Cu-Sideフレーム20において、EAビード54から円弧ビード56の後端部60に入力された荷重は、円弧ビード56に沿って前方側へスムーズに伝達される(
図4参照)。よって、所望の経路に沿わせて確実に荷重を伝達させることができる。
【0068】
さらにまた、円弧ビード56は、シート幅方向に膨出して形成されているため、パネル状のフレームをプレス加工するだけで円弧ビード56を形成することができる。また、追加部材を接合して円弧ビード56を形成する場合と比較して、Cu-Sideフレーム20を軽量化することができかつ部品点数及び工数を抑えることができる。
【0069】
また、後面衝突時にシートバックフレーム16のバックサイドフレーム30から伝達された荷重はCu-Sideフレーム20において吸収されるため、リフタ機構への荷重伝達を抑制することができる。特に本実施形態の車両用シート10のようなベルトインシートでは、前面衝突時にシートフレーム12に入力される荷重が大きいため、シートフレーム12を高強度化することが考えられる。この場合、シートフレーム12の変形量が小さくなるため、機構品への荷重入力が増加する。車両用シート10のCu-Sideフレーム20は、このように高強度化されたシートフレーム12であっても、後面衝突時の機構品への荷重伝達を抑制することができる。
【0070】
〔上記実施形態の補足説明〕
上記実施形態では、車両用シート10の前後方向は車両の前後方向と一致するものとして説明したが、これに限らず、例えば車両用シート10は車両の進行方向に対して後ろ向きに配置されてもよい。この場合、車両の前面衝突時に上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
また、上記実施形態では、EAビード54は、円弧ビード56の後端部60よりも下側において、Cu-Sideフレーム20の下側フランジ50及び後側フランジ52の間に形成されているものとして説明したが、これに限らない。例えば、円弧ビード56の後方において後側フランジ52にEAビード54が形成されていてもよい。また、例えば屈曲部を形成する代わりに、円弧ビード56がCu-Sideフレーム20の後端又は下端まで延在していてもよい。
【0072】
さらに、上記実施形態では、円弧ビード56の前端部58における下端58Aは、リクライナ18の下端よりも下側かつリクライナ18の前端よりも前側に形成されているものとして説明したが、これに限らず、例えば屈曲部の前端部における下端がリクライナ18の下端よりも上側に形成されていてもよい。
【0073】
さらにまた、上記実施形態では、円弧ビード56は、側面視で軸線L1とリクライナ18の外周面18Aとの交点Rにおける接線L2よりも下方側に形成されているものとして説明したが、この接線L2よりも上側に突出部の一部が形成されていてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、側面視でリクライナ取付部38側に凸となる円弧状とされている円弧ビード56について説明したが、これに限らず、例えば突出部は側面視で直線状に形成されていてもよい。
【0075】
さらに、上記実施形態では、円弧ビード56は、シート幅方向に膨出して形成されているものとして説明したが、これに限らず、例えば突出部は、追加部材をCu-Sideフレーム20のシート幅方向内側又は外側に接合することにより他の部分よりも厚みを増して成形されても良い。
【0076】
さらにまた、上記実施形態では、車両用シート10はリフタ機構70を備えるものとして説明したが、これに限らず、車両用シートはリフタ機構を備えていなくてもよい。
【0077】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0078】
(付記1)
着座乗員の背部を支持するシートバックを着座乗員の臀部及び大脛部を支持するシートクッションに対して角度調整可能に連結するリクライナと、
前記シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームの後部においてシート幅方向に延在するリヤパイプと、
前記シートクッションフレームのシート幅方向端部において前後方向及び上下方向に延在すると共に、前記リクライナが取り付けられたリクライナ取付部と、前記リクライナ取付部の下方において前記リヤパイプのシート幅方向端部が接続されたリヤパイプ接続部と、側面視で前記リクライナ取付部と前記リヤパイプ接続部との間において前記リクライナ取付部の中心と前記リヤパイプ接続部の中心とを結ぶ軸線を跨いで前後方向に延在しかつ前記軸線から前方側へ向かうにつれて前記リクライナから離れる方向へ延在すると共にシート幅方向に突出して形成された突出部とを備えたシートクッションサイドフレームと、
を有する車両用シート。
(付記2)
前記シートクッションサイドフレームの後端又は下端において前記突出部の後端部近傍に形成されかつシート幅方向に凸となる方向に屈曲形成された屈曲部をさらに有する、
付記1に記載の車両用シート。
(付記3)
前記屈曲部は、前記突出部の後端部よりも下側に形成されている、
付記2に記載の車両用シート。
(付記4)
前記突出部の前端部における下端は、前記リクライナの下端よりも下側かつ前記リクライナの前端よりも前側に形成されている、
付記3に記載の車両用シート。
(付記5)
前記突出部は、側面視で前記軸線と前記リクライナの外周面との交点における接線よりも下方側に形成されている、
付記1~付記4の何れか一に記載の車両用シート。
(付記6)
前記突出部は、側面視でリクライナ取付部側に凸となる円弧状とされている、
付記2~付記5の何れか一に記載の車両用シート。
(付記7)
前記突出部は、シート幅方向に膨出して形成されている、
付記1~付記6の何れか一に記載の車両用シート。
(付記8)
前記シートクッションを上昇及び下降可能に支持するリフタ機構をさらに有する、
付記1~付記7の何れか一に記載の車両用シート。
【符号の説明】
【0079】
10 車両用シート
14 シートクッションフレーム
18 リクライナ
18A 外周面
20 シートクッションサイドフレーム
26 リヤパイプ
28 リヤパイプ接続部
38 リクライナ取付部
54 エネルギ吸収ビード(屈曲部)
56 円弧ビード(突出部)
58 円弧ビードの前端部(突出部の前端部)
58A 円弧ビードの前端部における下端(突出部の前端部における下端)
60 円弧ビードの後端部(突出部の後端部)
70 リフタ機構
L1 軸線
L2 接線
P リヤパイプ接続部の中心
Q リクライナ接続部の中心
R 交点