特開 2023-152028 包装体

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023152028

(43)【公開日】2023-10-16

(54)【発明の名称】包装体

(51)【国際特許分類】

   B65D 77/20 20060101AFI20231005BHJP

   B65D 5/24 20060101ALI20231005BHJP

【ＦＩ】

B65D77/20 F

B65D5/24 E

【審査請求】未請求

【請求項の数】9

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022061951

(22)【出願日】2022-04-01

(71)【出願人】

【識別番号】000003193

【氏名又は名称】凸版印刷株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100088155

【弁理士】

【氏名又は名称】長谷川 芳樹

(74)【代理人】

【識別番号】100113435

【弁理士】

【氏名又は名称】黒木 義樹

(74)【代理人】

【識別番号】100169063

【弁理士】

【氏名又は名称】鈴木 洋平

(74)【代理人】

【識別番号】100167597

【弁理士】

【氏名又は名称】福山 尚志

(72)【発明者】

【氏名】谷口 正幸

(72)【発明者】

【氏名】古▲瀬▼ 清人

【テーマコード（参考）】

3E060

3E067

【Ｆターム（参考）】

3E060AB15

3E060BA22

3E060BC01

3E060DA14

3E067AA11

3E067AB01

3E067BA06

3E067BB01

3E067BB14

3E067BC02

3E067CA24

3E067EA01

3E067EA06

3E067EB27

3E067EE02

3E067FA01

3E067FC01

3E067GD10

(57)【要約】

【課題】紙製のトレーと、これにシールされた蓋とを備える包装体であって、密封性と開封性とが両立した包装体を提供する。
【解決手段】包装体１は、フランジ部４を有して開口する紙製のトレー２と、フランジ部４とシールされ内容物を密封する蓋３とを備える。フランジ部４は、トレー２の周方向で直線状に延びる直線部と、直線部から連続し方向転換する方向転換部とを有する。方向転換部は、蓋３とシールされる側の面が、連続する熱可塑性樹脂層によって覆われている。フランジ部４と蓋３とのシールの形状は、直線部においては線からなる線状であり、方向転換部においては直線部における前記線の線幅よりも太い線幅を有する線からなる線状である。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

フランジ部を有して開口する紙製のトレーと、
前記フランジ部とシールされ内容物を密封する蓋と、を備える包装体であって、
前記トレーは、台紙と、前記台紙に積層され前記トレーの内側面を向いている熱可塑性樹脂層とを有するシートから構成されており、
前記フランジ部は、前記トレーの周方向で直線状に延びる直線部と、前記直線部から連続し方向転換する方向転換部とを有し、
前記方向転換部では、前記蓋とシールされる側の面が、連続する前記熱可塑性樹脂層によって覆われており、
前記フランジ部と前記蓋とのシールの形状は、前記直線部においては線からなる線状であり、前記方向転換部においては、前記直線部における前記線の線幅よりも太い線幅を有する線からなる線状である、包装体。

【請求項2】

前記直線部におけるシール形状が、並走する２本又は３本の線からなる線状であり、
前記方向転換部におけるシール形状が、前記直線部におけるシール形状をなす全ての線の線幅の合計よりも太い線幅を有する線からなる線状である、請求項１記載の包装体。

【請求項3】

前記直線部における前記線の幅は、１本あたり１ｍｍ以上５ｍｍ以下である、請求項２記載の包装体。

【請求項4】

前記方向転換部は、前記蓋とシールされる側の面においてシール前に前記台紙の端面の露出が防止されている、請求項１～３のいずれか一項記載の包装体。

【請求項5】

前記トレーは、一枚のブランクシートからその容器形状が構成されている、請求項１～３のいずれか一項記載の包装体。

【請求項6】

前記ブランクシートは、前記方向転換部に相当する各箇所において、前記台紙が存在しないが前記熱可塑性樹脂層が存在する樹脂層領域を２つずつ有している、請求項５記載の包装体。

【請求項7】

前記方向転換部の前記蓋とシールされる側の面において、前記台紙の端面が、前記樹脂層領域の前記熱可塑性樹脂層により覆われることで露出が防止されている、請求項６記載の包装体。

【請求項8】

前記ブランクシートにおいて、前記２つの樹脂層領域は、いずれも前記フランジ部に相当する部分から前記ブランクシートの内部側へ向かって延びる凹形状をなしており、
前記ブランクシートから前記トレーを構成することにより、前記２つの樹脂層領域に挟まれた領域の上に、前記台紙が重なる部分と重ならない部分とが形成されている、請求項６記載の包装体。

【請求項9】

前記方向転換部のうち、前記蓋とシールされる面側かつ前記台紙が重ならない部分において前記樹脂層領域が折り重なることにより、前記台紙が重なる部分と重ならない部分との間で生じるべき段差が緩和されている、請求項８記載の包装体。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、包装体に関する。

【背景技術】

【0002】

紙製のトレーは、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の小売の場面で、例えば食品の包装材料として使用されている。紙を基材としていることから、環境適合型の包装材料として広く使われている。トレーには内容物が収容され、蓋をされて包装体とされている。

【0003】

特許文献１には、蓋材とシールされることで密封性を確保する紙製のトレーが開示されている。このトレーには蓋材をシールするためのフランジが設けられている。一般に、紙をトレー形状に成形するために折り立てると、隅部において紙が重なる部分が生じざるを得ず、そこで紙の厚さによる段差が生じて密封性が低下する原因となる。この点、特許文献１のトレーは、内容物を収容する側に積層されている熱可塑性樹脂層がトレーの隅部において蓋材との密着性に寄与するので、密封性が高い。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０２２－１５９０６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

密封した包装体は、包装体全体の密封性と、開封を開始する部分からの開封性とを両立する必要がある。トレーと蓋材とをヒートシールしてなる包装体では、トレーのヒートシール対象部分に段差が生じている隅部と、段差がないそれ以外の部分とで密封性に差異が生じやすい。密封性を追求するには単に全体のヒートシール強度を高めればよいが、それでは隅部から開封するときの開封性が悪くなる。そこで本発明は、紙製のトレーと、これにシールされた蓋とを備える包装体であって、密封性と開封性とが両立した包装体を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明は、フランジ部を有して開口する紙製のトレーと、フランジ部とシールされ内容物を密封する蓋と、を備える包装体であって、トレーは、台紙と、台紙に積層されトレーの内側面を向いている熱可塑性樹脂層とを有するシートから構成されており、フランジ部は、トレーの周方向で直線状に延びる直線部と、直線部から連続し方向転換する方向転換部とを有し、方向転換部では、蓋とシールされる側の面が、連続する熱可塑性樹脂層によって覆われており、フランジ部と蓋とのシールの形状は、直線部においては線からなる線状であり、方向転換部においては、直線部における線の線幅よりも太い線幅を有する線からなる線状である、包装体を提供する。

【0007】

この包装体は、トレーが有するフランジ部において、段差が生じにくい直線部と段差が生じやすい方向転換部とでシール形状が異なっており、かつ、方向転換部において、蓋とシールされる側の面が、連続する熱可塑性樹脂層によって覆われている。これにより、密封性と開封性が両立している。

【0008】

この包装体では、直線部におけるシール形状が、並走する２本又は３本の線からなる線状であってもよく、方向転換部におけるシール形状が、直線部におけるシール形状をなす全ての線の線幅の合計よりも太い線幅を有する線からなる線状であってもよい。また、直線部における線の幅は、１本あたり１ｍｍ以上５ｍｍ以下であってもよい。このように線の本数や幅（太さ）を調整することにより、シール時の線圧を調整することができる。

【0009】

方向転換部は、蓋とシールされる側の面においてシール前に、台紙の端面の露出が防止されていてもよい。この場合、台紙の端面が露出している場合と比べて、当該箇所を発端とする密着不良や内容物の液漏れ等が一層防止される。

【0010】

トレーは、一枚のブランクシートからその容器形状が構成されていてもよい。そして、この場合において当該ブランクシートは、方向転換部に相当する各箇所において、台紙が存在しないが熱可塑性樹脂層が存在する樹脂層領域を２つずつ有していてもよい。これによれば、樹脂層領域の可動性が高いのでブランクシートをトレー形状に成形しやすくなるとともに、熱可塑性樹脂層の面の連続性が保たれているので、トレーと蓋との密封性が高いものとなりやすい。

【0011】

そして、方向転換部の蓋とシールされる側の面において、台紙の端面が、樹脂層領域の熱可塑性樹脂層により覆われることで露出が防止されていてもよい。これによれば、樹脂層領域を構成する熱可塑性樹脂層の溶融によって台紙の端面周辺の閉塞性が高まり、包装体の密封性が向上する。

【0012】

さらに、ブランクシートにおいて、２つの樹脂層領域は、いずれもフランジ部に相当する部分からブランクシートの内部側へ向かって延びる凹形状をなしており、ブランクシートからトレーを構成することにより、２つの樹脂層領域に挟まれた領域の上に、台紙が重なる部分と重ならない部分とが形成されていてもよい。

【0013】

さらに、方向転換部のうち、蓋とシールされる面側かつ台紙が重ならない部分において樹脂層領域が折り重なることにより、台紙が重なる部分と重ならない部分との間で生じるべき段差が緩和されていてもよい。これによれば、台紙が重ならない部分に樹脂層領域が位置しているので、これがトレーと蓋とのシールに寄与して密封性が高くなりやすい。

【発明の効果】

【0014】

本発明によれば、紙製のトレーと、これにシールされた蓋とを備える包装体であって、密封性と開封性とが両立した包装体を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0015】

【図1】包装体の分解斜視図である。

【図2】トレーの平面図である。

【図3】ブランクシートの平面図である。

【図4】図２のＩＶ－ＩＶ線での断面図である。

【図5】ヒートシール部分の形状を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0016】

以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。トレーと蓋とのシール方法がヒートシールである例を示す。

【0017】

＜包装体＞
図１及び図２に示されているとおり、本実施形態の包装体１は、フランジ部４を有して開口する紙製のトレー２と、蓋３とを備えている。蓋３は、トレー２のフランジ部４とヒートシールされおり、それによって包装体１が内容物を密封している。なお、図１ではトレー２に収容されている内容物の図示を省略している。

【0018】

（トレー）
トレー２は、平面視で略長方形をなしており、底面部５と、底面部５の周囲を囲う側面部６とを有している。側面部６は、底面部５の周縁から連設されるとともに所定の角度で立ち上がって延びており、容器としての収容部分である凹部を構成している。側面部６は、トレー２の形状の略長方形の辺に沿って延びる部分である第一側面部６ａと、略長方形の頂点部分を構成する第二側面部６ｂとを交互に有している。側面部６の周縁からは、トレー２の内部側からみて外側へ折れ曲がったフランジ部４が連設されている。

【0019】

フランジ部４は、側面部６と同様にトレー２の周方向（底面部５を囲う方向）全周に亘って連続している。そしてフランジ部４は、平面視での長方形の辺を構成する部分では直線状に延びる直線部４ａを構成し、当該長方形の頂点にあたる部分（隅部）においては周方向に屈曲して方向転換する方向転換部４ｂを構成している。換言すれば、直線状に延びるフランジ同士が方向転換部４ｂで連結されることで、全周で連続した一つのフランジ部４が構成されている。

【0020】

トレー２は、図３に示されている一枚のブランクシート１０を折り立てることによって形成される。図３はトレー２の展開図にあたり、図３の破線部分で山折り又は谷折りされることでトレー２の容器形状が構成される。ブランクシート１０は、台紙１１と、台紙１１に積層された熱可塑性樹脂層１２との二層からなっている（図４も参照）。熱可塑性樹脂層１２が積層されている面が、トレー２の内側面を向く側である。

【0021】

台紙１１としては、紙容器として通常使用され得る板紙を用いることができる。例えば、カード紙、マニラボール紙、コート紙、アイボリー紙が挙げられる。また、食品用一次容器として使用するためには、カード紙、アイボリー紙等の、古紙の混入の虞が小さい板紙を用いることが好ましい。また、印刷適性を良好なものにするために、板紙上のコート層が設けられてもよい。

【0022】

熱可塑性樹脂層１２の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂（ＬＤＰＥ）、中密度ポリエチレン樹脂（ＭＤＰＥ）、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂（ＬＬＤＰＥ）、エチレン－酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）、エチレン－αオレフィン共重合体、エチレン－メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂（ＰＰ）、プロピレン－エチレンランダム共重合体、プロピレン－エチレンブロック共重合体、プロピレン－αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。

【0023】

熱可塑性樹脂層１２は、上記のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、のほか、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂も使用することができ、これらのうちのいずれか、または複数から、トレー２の用途や要求される品質などを考慮して選択することができる。特にポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、例えば電子レンジによる加熱などに対しての耐熱性において優れる。

【0024】

ブランクシート１０は、平面視で長辺と短辺を交互に有する略八角形をなしている。その長辺に沿う部分が、トレー２のフランジ部４のうち直線状の部分を構成すべき部分にあたり、短辺に沿う部分が、方向転換部４ｂを構成すべき部分にあたる。ブランクシート１０は、短辺に沿う部分それぞれ（合計四か所）において、台紙１１が存在しないが熱可塑性樹脂層１２が存在する二つの樹脂層領域１３，１３を有している。なお、図３では、トレー２を構成した場合と共通する符号を付している。

【0025】

樹脂層領域１３，１３は、いずれもブランクシート１０の外周側（フランジ部４に相当する部分）からブランクシート１０の内部側へ向かって延びる凹形状をなしている。凹形状のうち、フランジ部４に相当する開口部分（短辺に近い部分）は、トレー２を構成したときに互いに衝突しないように、又は、重ならないように十分な幅を有する幅広部を構成している。凹形状は、この幅広部から底面部５となるべき部分へ向かうに従って先細り形状となっており、凹形状の底（短辺から遠い部分）は底面部５となるべき部分に達しない程度の位置にある。樹脂層領域１３，１３がこのような凹形状をなしていることによって、トレー２を構成したときに第二側面部６ｂとなる部分が、その両側にそれぞれ樹脂層領域１３を挟んで第一側面部６ａとなる部分が位置するように画成されている。ブランクシート１０の作製においては、樹脂層領域１３，１３がこのような凹形状をなすように台紙１１を型抜きし、これに略八角形形状の熱可塑性樹脂層１２を積層する。

【0026】

（トレー形状の構成方法）
ブランクシート１０の各部を折り立てることによってトレー２の容器形状が構成される。ここで、折り立てによって形成される方向転換部４ｂ及び第二側面部６ｂの構造について説明する。図４に示されているとおり、方向転換部４ｂは、第二側面部６ｂとなる部分の上に、台紙が二重に重なっている部分と台紙が重なっていない部分とが形成されている。トレー２の形成に際しては、第二側面部６ｂとなる部分に対して、樹脂層領域１３，１３とともに第一側面部６ａ，６ａとなる部分が両側から迫り、第二側面部６ｂとなる部分の上、かつ、トレー２の内側となる側に、樹脂層領域１３，１３及び第一側面部６ａ，６ａが重ねられる。これにより、不可避的に折り返された樹脂層領域１３，１３同士がその折り返し部分を第二側面部６ｂ上で対向させた恰好になる。当該折り返し部分が対向する箇所では、互いの樹脂層領域１３，１３が接触しているか、又は、僅かに隙間が生じている。ここで、第一側面部６ａ，６ａを構成する台紙１１の端面１１ａ，１１ａが、樹脂層領域１３，１３を構成する熱可塑性樹脂層１２によって覆われており、方向転換部４ｂを平面視したときに端面１１ａ，１１ａが露出していない状況となっている。ここで「露出していない」とは、仮にトレー２の上面側から液体を垂らしたとしても当該液体に直接接触しないように物理的に保護されて状態をいう。

【0027】

方向転換部４ｂでは、台紙１１が二重に重なっている領域（すなわち第二側面部６ｂと第一側面部６ａとが重なっている領域）と、台紙１１が重なっておらず折り返された樹脂層領域１３，１３同士が対向している領域とが存在する。樹脂層領域１３，１３同士が対向している領域では樹脂層領域１３，１３の折り返しによって、熱可塑性樹脂層１２が合計三層重なり合っている。熱可塑性樹脂層１２がこのように重なり合うことによって、第二側面部６ｂと第一側面部６ａの台紙１１間に生じている段差が緩和されている。段差が緩和された状況は、蓋３とのヒートシール時に樹脂層領域１３、１３及び熱可塑性樹脂層１２が溶融した後にも存続する。

【0028】

ブランクシート１０をトレー２の形状に折り立てた後、台紙１１が二重に重なっている領域のうちの任意の箇所に超音波をあてて、重なり部分を熱融着させる。超音波装置のアンビルとヘッドとを所望の箇所にあてがうことで熱融着が達成される。これにより、トレー２の形状が保持される。

【0029】

（蓋）
蓋３は、樹脂製のフィルムである。図１では、蓋３の形状をトレー２の平面視形状と同一としているが、トレー２の平面視形状よりも大きな相似形としてもよく、トレー２の平面視形状の凹凸に関わらず、長方形であってもよい。蓋３の形成方法としては、トレー２とのヒートシール時は長尺の樹脂フィルムであってもよく、この場合、ヒートシール後に裁断することで蓋３となる。蓋３の材質としては、熱可塑性樹脂層１２を構成する材質と同様であってもよく、熱可塑性樹脂層１２を構成する材質と非相溶または部分相溶な海島構造を有してもよい。海島構造は、蓋３の表面の外形を形成する海状部と海状部内に分散した複数の島状部とから構成される。島状部を構成する樹脂の材質としては、熱可塑性樹脂層１２と非相溶または部分相溶である限り、熱可塑性樹脂層１２と同様の材料を用いることができる。蓋３が海島構造を有する場合、海島構造を有しない樹脂基材と海島構造を有する層が積層されていてもよい。

【0030】

＜包装体の作製方法＞
包装体の作製方法、すなわち、トレー２と、蓋３になる樹脂フィルムとをヒートシールして包装体とする方法について説明する。上記の方法で構成したトレー２に内容物を入れ、その上から蓋３となるフィルムを被せる。ここで、フィルムは長尺のフィルムであるとする。そして、フィルムの上からトレー２のフランジ部４に対してシールヘッドで加熱及び加圧をして、フィルムとトレー２とをヒートシールする。ヒートシールの際、トレー２のフランジ部４に掛かる圧力の受台として、フランジ部４を支えられるように成形された受台を用いてもよい。最後に、フィルムを蓋３の形状に裁断して包装体１が完成する。包装体１では、ブランクシート１０の時点で台紙１１に積層されていた熱可塑性樹脂層１２と、蓋３とが直接ヒートシールされている。

【0031】

包装体１のヒートシールされた部分の形状（以下、「ヒートシール形状」と呼ぶ。）がシールヘッドの形状に等しいものとして、ヒートシール形状について説明する。図５に示されているとおり、ヒートシール形状２０（＝シールヘッドの形状）は、フランジ部４の領域に収まるように、かつ、フランジ部４上の全周で連続している角丸長方形である。ヒートシール形状２０は、フランジ部４の直線部４ａでは、所定の間隔を保ちながら並走する二本の線（線シール部２１，２１）からなる線状であり、方向転換部４ｂでは直線状の部分における線の線幅よりも太い線幅を有する一本の線（ベタシール部２２）からなる線状である。換言すれば、フランジ部４の直線状の部分において並走する二本の線シール部２１，２１が、方向転換部４ｂで合流して一本の太いベタシール部２２となっている。ベタシール部２２の幅（太さ）は、線シール部２１，２１のそれぞれの幅と線シール部２１，２１間の間隔の幅とを合計したものに等しい。ベタシール部２２は、方向転換部４ｂの樹脂層領域１３，１３が折り重なった部分の上に重なっている。

【0032】

線シール部２１，２１の線の幅は、１本あたり１ｍｍ以上５ｍｍ以下であってもよく、１．２ｍｍ以上４ｍｍ以下であってもよく、１．４ｍｍ以上３ｍｍ以下であってもよい。線シール部２１，２１同士の隙間の幅は、１ｍｍ以上４ｍｍ以下であってもよく、１．２ｍｍ以上３ｍｍ以下であってもよい。ベタシール部２２の幅は、３ｍｍ以上１５ｍｍ以下であってもよく、４ｍｍ以上１２ｍｍ以下であってもよく、５ｍｍ以上１０ｍｍ以下であってもよい。

【0033】

ヒートシールの条件としては、例えば温度を１５０℃～１８０℃、圧力を０．１ＭＰａ～０．５ＭＰａ、加圧時間を０．３秒～１秒等とすることができる。

【0034】

＜効果＞
一枚のブランクシートからトレーを構成する場合、側面部を構成すべくブランクシートを折り立てた際に、隅部においてシートが重なり合い、他の部分との段差が生じるのが通常である。従来、トレーと蓋とをヒートシールしたときに、ヒートシール面において段差が生じている隅部と、段差がないそれ以外の部分とで圧力に差異が生じ、それ故、密封性に差異が生じやすかった。また、密封性向上のためにヒートシール強度を追求すると、代わりに開封性が低下するので、これらをバランスさせることが課題となっていた。

【0035】

この点、本実施形態の包装体１では、トレー２が有するフランジ部４において、段差が生じにくい直線部４ａと段差が生じやすい方向転換部４ｂとでヒートシール形状が異なっており、かつ、方向転換部４ｂにおいて台紙１１の端面１１ａが熱可塑性樹脂層１２によって覆われることで外部に露出することが防止されている。これにより、ヒートシール時に掛かる圧力が直線部４ａと方向転換部４ｂとの構造上の相違に応じて分散され、かつ、溶融した熱可塑性樹脂により端面１１ａが保護される。

【0036】

すなわち、包装体１ではフランジ部４の直線部４ａにおけるヒートシールの形状が、並走する２本の線シール部２１，２１からなる線状であるので、ヒートシール時に線圧が十分に高くすることができる。他方、フランジ部４の方向転換部４ｂにおけるヒートシール形状が、線シール部２１，２１よりも太いベタシール部２２となっているので、線シール部２１，２１と同時に加圧した場合でも、圧力が分散されてヒートシールされる結果、そのヒートシールの強さを適切な開封性を確保できる程度にとどめることができる。このようにして、包装体１は密封性が十分に確保されるとともに開封性が良好となっている。

【0037】

また、方向転換部４ｂのヒートシール面においては、台紙１１の端面１１ａが熱可塑性樹脂層１２によって覆われているので、ヒートシール時に熱可塑性樹脂層１２の溶融によって端面１１ａ周辺の閉塞性が高まり、包装体１の密封性が向上する。樹脂層領域１３，１３が折り返されて対向している部分（図４参照）では、熱可塑性樹脂層１２の溶融によって互いに融着し、トレー２の内外方向（図４の奥行方向）の通気も封じられる。

【0038】

トレー２を構成するブランクシート１０は、隅部一箇所あたり二つの樹脂層領域１３，１３を有しており、樹脂層領域１３，１３には台紙１１が存在しないため可動性が高い。これによりブランクシート１０はトレー形状に成形しやすく、同時に熱可塑性樹脂層１２の面の連続性が保たれているので、トレー２と蓋３との密封性が高いものとなりやすい。また、ブランクシート１０が樹脂層領域１３，１３を有することで、第二側面部６ｂ上で台紙１１の折り返しが生じることがなくトレー２を組み立てることができるので、トレー２の隅部（方向転換部４ｂ及び第二側面部６ｂを含んだ部分）において台紙１１の厚さによって生じる段差を小さくすることができる。

【0039】

これに加えて、方向転換部４ｂのうち、蓋３とヒートシールされる面側かつ台紙１１が重ならない部分において樹脂層領域１３，１３が折り重なることによって、台紙１１が重なる部分と重ならない部分との間で生じるべき段差が更に小さくされている。これにより、台紙１１が重ならない部分に樹脂層領域１３，１３が位置しているので、これがトレー２と蓋３とのヒートシールに寄与して密封性が高くなりやすい。

【0040】

以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、台紙１１の片面に熱可塑性樹脂層１２が積層された態様を示したが、包装体の用途に応じて、台紙１１の両面に熱可塑性樹脂層１２が積層された態様としてもよい。

【0041】

また、上記実施形態では、ヒートシール形状２０の線シール部として並走する２本の線からなる線状である態様と示したが、線シール部２１が３本の線からなる線状である態様としてもよい。

【0042】

また、上記実施形態では、ブランクシート１０の時点で台紙１１に積層されていた熱可塑性樹脂層１２と、蓋３とが直接ヒートシールされている態様を示したが、方向転換部に生じている段差を一層緩和するために、別途、熱可塑性樹脂シートを方向転換部４ｂの上に載せたうえで、蓋となるフィルムとのヒートシールをしてもよい。あるいは、台紙１１の端面１１ａを覆うために、同様の熱可塑性樹脂シートを方向転換部４ｂの上に載せたうえで、蓋となるフィルムとのヒートシールをしてもよい。

【実施例0043】

以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。

【0044】

（実施例１～４、比較例１～２）
図３に示した形状のブランクシート（大きさ２１０×２６２ｍｍ、厚さ３５０μｍ）を用意して、図２に示したトレーを構成した。これに蓋（ＰＥＴ１２μｍ／易開封樹脂（ジェイフィルム製、ＳＭＸ ３０μｍ）、厚さ４２μｍ、大きさ１０ｃｍ×１５ｃｍ）をヒートシールして包装体を作製した。ヒートシール時にはトレーの底面部及び側面部が嵌る穴が開けられた厚さ３ｍｍ及び６ｍｍの二枚のシリコーンゴムを受台として用いた。シール条件は、１７０℃、０．２ＭＰａ、０．５秒とした。ヒートシール形状（＝シールヘッドの形状）は、図５に示したものとした。詳細は表１に示しており、ここでベタシールの線の太さは、線シールの線の太さと線シールの間隔とを合計した太さに等しい。

【0045】

（比較例３）
図３に示したブランクシートから樹脂層領域１３を構成している部分の熱可塑性樹脂層を切除し、台紙の端面を露出させた。これを用いて、樹脂層領域１３が存在しないトレーを構成し、実施例１と同様にして蓋をヒートシールして包装体を作製した。

【0046】

各包装体について、密封性と開封性の評価を行った。密封性の評価として、蓋の中心部分から内部に空気を徐々に注入し、シール部分から空気が漏れた瞬間の圧力を封緘強度・破裂強度試験器（（株）サン科学 ＦＫＴ－１００－Ｊ）を用いて測定した（破裂強度）。また、食品衛生法に基づく乳容器基準での密封性も測定した。乳容器規格の１３．３ｋＰａで１０秒間保持できた場合を「○」とし、保持できなかった場合を「×」とした。

【0047】

開封性の評価として、官能評価を行った。隅部から開封したときに、凝集破壊層が蓋とトレーで分離した場合をその見た目の美しさの段階に応じて「◎」又は「〇」とし（「◎」のほうが良好）、トレーの紙が剥けたり蓋の積層体がデラミネーションしたりした場合を「×」とした。

【0048】

表１に示した結果によれば、方向転換部において台紙の端面が露出していないトレーを用い、かつ、蓋のヒートシールではトレーの隅部をベタシール、直線部を線シールとした形状でヒートシールしたことにより、包装体の密封性と開封性を両立できたことが分かる。

【0049】

【表1】

【産業上の利用可能性】

【0050】

本発明は、食品の包装に利用することができる。

【符号の説明】

【0051】

１…包装体、２…トレー、３…蓋、４…フランジ部、４ａ…直線部、４ｂ…方向転換部、５…底面部、６…側面部、６ａ…第一側面部、６ｂ…第二側面部、１０…ブランクシート、１１…台紙、１１ａ…端面、１２…熱可塑性樹脂層、１３…樹脂層領域、２０…ヒートシール形状、２１…線シール部、２２…ベタシール部。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】