(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152036
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20231005BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061963
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岸谷 征典
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041BA05
4F041BA10
4F041BA12
4F041BA35
4F041BA59
4F041CA03
4F041CA13
4F041CA17
4F041CA23
4F041CA28
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA27
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB20
4F042CC07
4F042CC30
4F042DF23
4F042ED03
(57)【要約】
【課題】塗布開始部における塗膜の盛り上がりを防ぐことができる塗布装置を提供する。
【解決手段】長尺方向に搬送される基材に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布装置であって、基材の幅方向に長い吐出口を有し、前記吐出口から搬送される基材に対して塗布液を塗布する塗布部と、塗布液を貯留するタンクと、前記タンクから前記塗布部に塗布液を供給する供給手段と、を備えており、前記供給手段は、塗布液を供給するための流路であり、前記塗布部と前記タンクとを接続する供給路と、前記供給路の途中に設けられ、前記供給路を開閉することによって前記塗布部への塗布液の供給と供給の停止を制御する供給バルブと、を有しており、前記供給バルブは、前記供給路を開閉するための弁体と、前記弁体と密接することで前記供給路を塞ぐ弁座と、前記弁体の位置を変化させることによって前記供給路の開閉を制御する弁体駆動部と、を有し、前記弁体が、塗布液の流路において前記弁座よりも上流に位置する部分に配置される構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺方向に搬送される基材に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布装置であって、
基材の幅方向に長い吐出口を有し、前記吐出口から搬送される基材に対して塗布液を塗布する塗布部と、
塗布液を貯留するタンクと、
前記タンクから前記塗布部に塗布液を供給する供給手段と、を備えており、
前記供給手段は、塗布液を供給するための流路であり、前記塗布部と前記タンクとを接続する供給路と、前記供給路の途中に設けられ、前記供給路を開閉することによって前記塗布部への塗布液の供給と供給の停止を制御する供給バルブと、を有しており、
前記供給バルブは、前記供給路を開閉するための弁体と、前記弁体と密接することで前記供給路を塞ぐ弁座と、前記弁体の位置を変化させることによって前記供給路の開閉を制御する弁体駆動部と、を有し、
前記弁体が、塗布液の流路において前記弁座よりも上流に位置する部分に配置されることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
塗布液を回収するための流路であり、前記供給路において前記供給バルブよりも上流に位置する部分と前記タンクを接続する回収路と、
前記回収路を開閉することによって塗布液の回収と回収の停止を制御する回収バルブと、を有しており、
前記回収バルブは、前記供給バルブにより前記供給路が開状態となるときに前記回収路を閉状態とし、前記供給路が閉状態となるときに前記回収路を開状態とすることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に搬送される基材の表面に、塗液を塗布して塗膜を形成する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウムイオン電池の電池用極板は、ロールトゥロールで搬送される基材に活物質、バインダー、導電助剤および溶媒を含むスラリー(以下、塗布液)が塗布されて製造されている。
【0003】
近年、リチウムイオン電池の電池用極板の製造において、生産性向上のための高速化、塗布液のロス軽減のために間欠塗布方式による塗布装置が提案されている(たとえば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に示す塗布装置は、塗布液を塗布する塗布部と、塗布部に塗布液を供給する供給手段と、を有し、供給手段から塗布部に供給された塗布液が塗布部の吐出口から吐出される。
【0005】
また、供給手段は、塗布液が貯留された塗布液タンクと、塗布液タンクと塗布部とを接続する供給路と、供給路の途中に設けられ、塗布部に塗布液を供給する供給バルブと、塗布液を再び塗布液タンクに回収する回収バルブと、を有している。特許文献1に示す塗布装置では、これら2つの切替バルブを切り替えることによって、間欠塗布を行っている。これにより、基材上に塗膜が形成された塗布領域が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の塗布装置では、塗布開始部における塗膜を精度よく形成することができない場合があった。なお、ここでいう塗布開始部は、塗布領域が始まる塗膜の始端のことである。
【0008】
図4(a)および
図4(b)を用いて具体的に説明する。従来の塗布装置900の供給バルブ910は、塗布部930に塗布液を供給する場合には、
図4(a)に示すように弁座913と離れて弁座913の開口を開放する位置に弁体912の位置を変化させて供給路920を開状態にしている。また、塗布部930への塗布液の供給を停止する場合には、
図4(b)に示すように弁座913と密接して弁座913の開口を閉塞する位置に弁体912の位置を変化させて供給路921を閉状態にしている。これにより、供給バルブ910は、供給路920の開閉を行って塗布部930への塗布液の供給と供給の停止を切り替えている。
【0009】
そして、塗布部930による塗布液の塗布を開始するとき、すなわち、塗布部930への塗布液の供給を開始するときに、弁体912の位置が、
図4(b)に示す弁座913と密接して弁座913の開口を閉塞していた位置から
図4(a)に示す弁座913と離れて弁座913の開口を開放する位置へと変化する。ここで、弁体912が塗布液の流路において弁座913よりも下流に位置する部分に配置されているため、弁体912が本体部911内の塗布液を供給路920を通じて塗布部930に押し出してしまう。そのため、塗布液が塗布部930に多く供給されてしまい、塗布部930から多くの塗布液が基材に塗布されてしまう。その結果、
図5に示すように塗布開始部Sにおける塗膜Mに盛り上りが生じる問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題を鑑みてされたものであり、塗布開始部における塗膜の盛り上がりを防ぐことができる塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の塗布装置は、長尺方向に搬送される基材に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布装置であって、基材の幅方向に長い吐出口を有し、前記吐出口から搬送される基材に対して塗布液を塗布する塗布部と、塗布液を貯留するタンクと、前記タンクから前記塗布部に塗布液を供給する供給手段と、を備えており、前記供給手段は、塗布液を供給するための流路であり、前記塗布部と前記タンクとを接続する供給路と、前記供給路の途中に設けられ、前記供給路を開閉することによって前記塗布部への塗布液の供給と供給の停止を制御する供給バルブと、を有しており、前記供給バルブは、前記供給路を開閉するための弁体と、前記弁体と密接することで前記供給路を塞ぐ弁座と、前記弁体の位置を変化させることによって前記供給路の開閉を制御する弁体駆動部と、を有し、前記弁体が、塗布液の流路において前記弁座よりも上流に位置する部分に配置されることを特徴としている。
【0012】
上記塗布装置によれば、弁体が塗布液の流路において弁座よりも上流に位置する部分に配置されているため、塗布部による塗布液の開始時、すなわち塗布部への塗布液の供給開始時に、塗布液の流路において弁座よりも上流に向かう方向に弁体が弁体駆動部によって移動させられる。そのため、塗布部への塗布液の供給開始時に、弁体が塗布液を塗布部に向かって押し出して塗布液が塗布部に多く供給されることを防ぐことができ、塗布開始部における塗膜の盛り上がりを防ぐことができる。
【0013】
また、塗布液を回収するための流路であり、前記供給路において前記供給バルブよりも上流に位置する部分と前記タンクを接続する回収路と、前記回収路を開閉することによって塗布液の回収と回収の停止を制御する回収バルブと、を有しており、前記回収バルブは、前記供給バルブにより前記供給路が開状態となるときに前記回収路を閉状態とし、前記供給路が閉状態となるときに前記回収路を開状態とする構成としてもよい。
【0014】
この構成によれば、供給バルブにより供給路を開状態から閉状態に切り替えるときに、塗布液の流路において供給バルブよりも上流に位置する部分から塗布液を回収するため、塗布液の流路において供給バルブよりも上流に位置する供給路内の塗布液の内圧が高くなることを防ぐことができる。そのため、供給バルブにより供給路を閉状態から開状態に切り替えたときに塗布液が塗布部に多く供給されることを防ぐことができる。したがって、塗布開始部における塗膜の盛り上がりをより防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗布装置によれば、塗布開始部における塗膜の盛り上がりを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態における塗布装置を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態における塗布装置を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態における塗布装置の塗布動作を説明するための図である。
【
図5】従来の塗布装置により形成された塗膜を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態における塗布装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0018】
図1は、本実施形態における塗布装置100を概略的に示す図であり、塗布開始部Sの形成時を示している。
図2は、本実施形態における塗布装置100を概略的に示す図であり、塗布終了部Eの形成時を示している。
図3は、本実施形態における塗布装置100の動作を説明するための図であり、
図3(a)は、供給バルブ32および回収バルブ52のそれぞれの動作、
図3(b)および
図3(c)は、基材Wに形成される塗膜Mの状態を示している。
【0019】
本実施形態における塗布装置100は、
図1に示すように基材Wを搬送する搬送手段1と、基材Wに塗布液Lを塗布する塗布部2と、塗布部2に塗布液Lを供給する供給手段3と、塗布液Lが貯留されるタンク4と、を備えている。
【0020】
本実施形態における塗布装置100は、搬送手段1により搬送される基材Wの所定面に塗布部2により塗布液Lを塗布し、塗膜Mを形成する。
【0021】
本実施形態における基材Wは、リチウムイオン電池などの電池の電池用極板となる金属箔であり、正極を構成する場合はアルミニウム箔などが用いられ、負極を構成する場合は銅箔などが用いられる。この基材Wは、一方向に長い帯状のシートであり、搬送手段1により搬送される。
【0022】
本実施形態における塗布液Lは、たとえば、活物質、バインダー、導電助剤、および溶媒を含むスラリーのことであり、リチウムイオン電池などの電池の電池用極板の材料(所謂、電極材料)として用いられる。この塗布液Lを基材Wに塗布することで、基材W上に塗膜が形成される。
【0023】
本実施形態における搬送手段1は、基材Wを搬送するためのものであり、複数のロールが回転することにより基材Wを搬送するロールツーロール方式を採用している。なお、本実施形態では、塗布液Lを塗布する場所に基材Wを案内する塗布ロール11のみを
図1および
図2に示している。また、塗布ロール11は、塗布部2と対向し、後述する吐出口23と所定の間隔を空けて配置される。そのため、塗布部2と一定の間隔を保ちながら基材Wを搬送することができる。
【0024】
本実施形態における塗布部2は、搬送される基材Wに塗布液Lを塗布して塗膜Mを形成するためのものである。塗布部2は、基材Wの幅方向(
図1におけるY軸方向)に沿って長く形成されている。ここで、前述した塗布ロール11が、塗布部2に対して、塗布ロール11の回転軸方向と、塗布部2の幅方向とが平行になるよう所定の間隔を空けて配置される。なお、以下の説明では、基材Wの幅方向を幅方向と呼ぶ。
【0025】
また、塗布部2は、
図1に示すように後述する供給路31に接続され、幅方向に長く塗布液Lを溜める空間であるマニホールド21と、このマニホールド21と繋がった幅方向に広いスリット22と、幅方向においてスリット22と同一の長さで開口し、塗布液Lを吐出する吐出口23により構成される。これにより、マニホールド22に溜められた塗布液Lがスリット22を経由して、吐出口23から基材Wに吐出される。
【0026】
また、吐出口23は、塗布ロール11と基材Wを挟んで対向している。すなわち、吐出口23は基材Wの表面側で基材Wと対向している。これにより、吐出口23と基材Wとの間隔を一定に保った状態で、基材Wの表面側に塗布液Lを塗布することができる。
【0027】
本実施形態における供給手段3は、塗布部2に塗布液Lを供給するためのものである。この供給手段3は、
図1に示すように塗布液Lを貯留するタンク4とマニホールド21とを接続する供給路31と、塗布液Lを送液する図示しない送液ポンプと、供給路31の開閉を制御する供給バルブ32と、を有している。
【0028】
送液ポンプは、タンク4に貯留されている塗布液Lを塗布部2に圧送するためのものであり、たとえば、ギアポンプなどである。
【0029】
供給路31は、
図1に示すようにマニホールド21とタンク4とを接続し、タンク4からマニホールド21へ塗布液Lが送液ポンプにより送液される流路である。また、供給路31の途中に供給バルブ32が配置される。
【0030】
供給バルブ32は、供給路31の開閉を制御して塗布液Lの供給と供給の停止を切り替えるためのものであり、
図1に示すように本体部33と、弁座34と、弁体35と、シャフト36と、弁体駆動部37と、を有している。
【0031】
本体部33は、塗布液Lの流路であり、
図1に示すように供給路31の途中に配置される。そして、
図1に示すように本体部33において流路を形成する開口を有する平坦な弁座34が本体部33の内壁から突出するように形成される。この弁座34は、後述する弁体35を受ける部材であり、弁体35を受けるとき、すなわち、弁体35と密接するときに弁座34の開口が閉塞されて流路が塞がるようになっている。
【0032】
弁体35は、供給路31を開閉するためのものであり、
図1に示すように本体部33の内部に設けられる。また、弁体35は、弁座34と対向し、塗布液Lの流路において弁座34よりも上流に位置する部分に配置される。なお、本実施形態では、弁体35が円錐状に形成されており、弁座34と対向する部分が平面となっている。この平面は、少なくとも弁座34の開口よりも大きくなっており、平面が弁座34と密接したときに弁座34の開口が閉塞する。すなわち、供給路31が閉状態となる。
【0033】
弁体駆動部37は、弁体35の位置を変化させるための駆動源であり、たとえば、エアシリンダーや電動モーターなどである。この弁体駆動部37は、
図1および
図2に示すように弁体35の位置を弁座34と密接して弁座34の開口を閉塞する位置と弁座34から離れて弁座34の開口を開放する位置に変化させるように、弁体35につながるシャフト36を直線移動させる。なお、弁体駆動部37の制御は、図示しない制御部により行われる。この制御部はたとえば、汎用のコンピューターのことである。
【0034】
このように弁体駆動部37によって弁体35の位置を変化させることで、供給路31の開閉を制御して塗布部2への塗布液Lの供給と供給の停止を切り替えている。
【0035】
具体的には、弁体駆動部37によって、弁体35の位置が、
図2に示す弁座34と密接して弁座34の開口を閉塞した位置から、
図1に示す弁座34と離れて弁座34の開口を開放する位置へと変化する。これにより、供給路31が閉状態から開状態に切り替わり、塗布部2に塗布液Lが供給され、塗布部2により基材Wに塗布液Lが塗布される。
【0036】
また、弁体駆動部37によって弁体35の位置が、
図1に示す弁座34と離れて弁座34の開口を開放した位置から、
図2に示す弁座34と密接して弁座34の開口を閉塞する位置へと変化する。これにより、供給路31が開状態から閉状態に切り替わり、塗布部2への塗布液Lの供給が停止され、塗布部2による基材Wへの塗布液Lの塗布が停止される。
【0037】
これら構成により、供給バルブ32は、塗布部2への塗布液Lの供給と供給の停止を切り替えることができる。この塗布部2への塗布液Lの供給と供給の停止を断続的に行うことで、搬送手段1により搬送される基材Wに塗布液Lを間欠的に塗布することができる。ここでいう、間欠的に塗布するとは、
図3(b)および
図3(c)に示すように基材W上に塗膜Mが形成された塗布領域Tを断続的に形成することである。なお、以下の説明では、基材Wの搬送方向(
図1におけるX軸方向)における塗布領域T間の塗膜Mが形成されていない部分を不塗布領域Nと呼ぶ。
【0038】
本実施形態における塗布装置100は、
図1に示すように回収手段5をさらに備えている。以下、本実施形態における回収手段5について説明するが、供給手段3と同様な構成については詳細な説明を省略する。
【0039】
本実施形態における回収手段5は、塗布液Lの流路において供給バルブ32よりも上流に位置する供給路31からタンク4に塗布液Lを回収するためのものである。この回収手段5は、
図1に示すように塗布液Lの流路において供給バルブ32よりも上流に位置する供給路31とタンク4とを接続する回収路51と、回収路51内の塗布液Lをタンク4に圧送する図示しない送液ポンプと、回収路51の開閉を制御する回収バルブ52と、を有している。
【0040】
回収路51は、
図1に示すように塗布液Lの流路において供給バルブ32よりも上流に位置する供給路31とタンク4とを接続し、この接続した供給路31からタンク4へ塗布液Lが送液ポンプにより送液される流路である。また、回収路51の途中に回収バルブ52が配置される。
【0041】
回収バルブ52は、回収路51の開閉を制御して塗布液Lの回収と回収の停止を切り替えるためのものであり、
図1に示すように本体部53と、弁座54と、弁体55と、シャフト56と、弁体駆動部57と、を有している。これら回収バルブ52の構成は前述した供給バルブ32の構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
この回収バルブ52が有する弁体駆動部57によって弁体55の位置を変化させることで、回収路51の開閉を制御して塗布液Lの回収と回収の停止を切り替えている。
【0043】
具体的には、弁体駆動部57によって弁体55の位置が、
図1に示す弁座54と密接して弁座54の開口を閉塞した位置から、
図2に示す弁座54と離れて弁座54の開口を開放する位置へと変化する。これにより、回収路51が閉状態から開状態に切り替わり、塗布液Lの流路において供給バルブ32よりも上流に位置する供給路31からタンク4に塗布液Lが回収される。
【0044】
また、弁体駆動部57によって弁体55の位置が、
図2に示す弁座54と離れて弁座54の開口を開放した位置から、
図1に示す弁座54と密接して弁座54の開口を閉塞する位置へと変化する。これにより、回収路51が開状態から閉状態に切り替わり、塗布液Lの回収が停止される。
【0045】
これら構成により、回収バルブ52は、タンク4への塗布液Lの回収と回収の停止を切り替えることができる。
【0046】
以下に本実施形態における塗布装置100の動作について具体的に説明する。
【0047】
まず、塗布装置100は、塗布部2によって搬送手段1により搬送される基材Wに対して塗布液Lを塗布し、塗布開始部Sを形成する。具体的には、供給バルブ32が、
図2および
図3(a)に示すように閉状態の供給路31を
図1および
図3(a)に示すように開状態に切り替え、送液ポンプによりタンク4から供給路31を通じて塗布液Lをマニホールド21に供給する。そして、マニホールド21に供給された塗布液Lがスリット22を経由して吐出口23から吐出される。
【0048】
ここで、供給路31を開閉する供給バルブ32の動作(以下、供給バルブ32の動作と呼ぶ)と同時に回収バルブ52は、
図2および
図3(a)に示すように開状態の回収路51を
図1および
図3(a)に示すように閉状態にする。
【0049】
以上により、塗布部2に塗布液Lが供給されて塗布部2による基材Wへの塗布液Lの塗布が開始されることによって、
図3(b)および
図3(c)に示すように塗布開始部Sが形成される。
【0050】
その後、塗布装置100は、
図3(a)に示すように供給バルブ32および回収バルブ52の状態を維持しながら塗布部2による基材Wへの塗布液Lの塗布を続けて塗膜Mを形成していく。
【0051】
次に、塗布装置100は、塗布部2による基材Wへの塗布液Lの塗布を停止し、塗布終了部Eを形成する。なお、ここでいう塗布終了部Eは、
図3(b)に示すような塗布領域Tから不塗布領域Nになる塗膜Mの終端のことである。具体的には、供給バルブ32が
図1および
図3(a)に示すように開状態の供給路31を
図2および
図3(a)に示すように閉状態にし、塗布部2への塗布液Lの供給を停止する。これにより、塗布部2による基材Wへの塗布液Lの塗布を停止する。
【0052】
ここで、供給バルブ32の動作と同時に回収バルブ52は、
図1および
図3(a)に示すように閉状態の回収路51を
図2および
図3(a)に示すように開状態にし、塗布液Lの流路において供給バルブ32よりも上流に位置する供給路31からタンク4に塗布液Lを回収する。
【0053】
以上により、供給バルブ32により供給路31が閉状態になり、塗布部2による塗布液Lの塗布が完全に停止するまでの間に塗布液Lが吐出口23から吐出される。これにより、
図3(b)および
図3(c)に示すように塗布終了部Eが形成される。そして、塗布部2による基材Wへの塗布液Lの塗布が停止する。
【0054】
そして、これら塗布装置100の動作を
図3(a)に示すように断続的に行うことで、塗布部2は基材Wに塗布液Lを間欠的に塗布する。これにより、
図3(b)および
図3(c)に示すように基材Wに塗膜Mが断続的に形成される。
【0055】
このように上記実施形態における塗布装置100によれば、従来よりも塗布開始部Sにおける塗膜Mの盛り上がりを防ぐことができる。
【0056】
具体的に説明する。
図4(a)および
図4(b)に示す従来の塗布装置900の供給バルブ910が有する弁体912は、塗布液Lの流路において弁座913よりも下流に配置されている。そのため、塗布部930により塗布液Lの塗布を開始するときに、弁体912の位置が、
図4(b)に示す弁座913と密接して弁座913の開口を閉塞した位置から
図4(a)に示す弁座913と離れて弁座913の開口を開放する位置に変化する。
【0057】
ここで、弁体912が塗布液Lの流路において弁座913よりも下流に向かうように移動させられている。すなわち、弁体912が塗布部930に向かう方向に移動させられている。そのため、弁体912が本体部911内の塗布液Lを供給路920を通じて塗布部930に押し出してしまう。その結果、多くの塗布液Lが塗布部930に供給され、基材Wに塗布される。これにより、
図5に示すように塗布開始部Sにおける塗膜Mに盛り上がりが生じる。
【0058】
これに対して、本実施形態における塗布装置100では、供給バルブ32が有する弁体35が、塗布液Lの流路において弁座34よりも上流に位置する部分に配置されている。そして、塗布部2により塗布液Lの塗布を開始するときに、弁体駆動部37によって弁体35の位置が、弁座34と密接して弁座34の開口を閉塞した位置から弁座34と離れて弁座34の開口を開放する位置に変化させられる。すなわち、弁体35が塗布液Lの流路において弁座34よりも上流に向かう方向に移動している。
【0059】
そのため、弁体35が本体部33内の塗布液Lを供給路31を通じて塗布部2に押し出し、塗布液Lが塗布部2に多く供給されることを防ぐことができる。これにより、塗布部2により塗布液Lの塗布を開始するときに塗布部2から塗布される塗布液Lの塗布量が多くなることを防ぎ、塗布開始部Sにおける塗膜Mの盛り上がりを防ぐことができる。
【0060】
また、弁体35が円錐状に形成されているため、塗布部2への塗布液Lの供給時に弁体35が塗布液Lの流路において供給バルブ32よりも下流に位置する供給路31に向かって塗布液Lを引き込みすぎないようにすることができる。すなわち、塗布部2への塗布液Lの供給量を減りにくくすることができる。
【0061】
具体的には、塗布部2へ塗布液Lの供給を開始するときに、弁体駆動部37によって円錐状の弁体35のとがった部分、すなわち、シャフト36との接続部分に向かって先細り形状になる部分から塗布液Lの流路における下流側に弁体35が移動させられる。そのため、円錐状の弁体35の平面の部分から塗布液Lの流路における下流側に弁体35を移動させる場合よりも、塗布液Lに対する抵抗が低減される。これにより、弁体35が、塗布液Lの流路において供給バルブ32よりも下流に位置する供給路31に向かって塗布液Lを引き込みすぎないようにすることができる。
【0062】
また、本実施形態における塗布装置100が回収手段5を有していることによって、塗布開始部Sおよび塗布終了部Eにおける塗膜Mを精度よく形成することができる。
【0063】
具体的には、回収手段5は、供給バルブ32により供給路31を開状態から閉状態に切り替えるときに、回収バルブ52により回収路51を閉状態から開状態に切り替えることによって、塗布液Lの流路において供給バルブ32よりも上流に位置する供給路31からタンク4に塗布液Lを回収している。
【0064】
これにより、供給バルブ32により供給路31を開状態から閉状態切り替えるときに供給バルブ32よりも上流に位置する供給路31内の塗布液Lの内圧が高くなることを防ぐことができる。そのため、供給バルブ32により供給路31を閉状態から開状態に切り替えたときに塗布液Lが塗布部2に多く供給されることを防ぐことができ、塗布開始部Sにおける塗膜Mの盛り上がりをより防ぐことができる。すなわち、塗布開始部Sにおける塗膜Mをより精度よく形成することができる。
【0065】
また、供給バルブ32により供給路31を開状態から閉状態に切り替えたときに、供給路31から塗布部2に塗布液Lが漏れ出ることを防ぐことができる。そのため、塗布終了部Eにおいて塗布液Lの液切れがよくなり、不塗布領域Nに塗布液Lが付着することを防ぐことができる。すなわち、塗布終了部Eにおける塗膜Mを精度よく形成することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の追加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、弁体35の弁座34と対向する部分が平面である例について説明したが、弁座34と密接したときに弁座34の開口を閉塞することができる形状であればよい。たとえば、球状ないし半球状であってもよい。これは、弁体55も同様である。
【0067】
また、塗布液Lの流路において供給バルブ32よりも下流に位置する供給路31と本体部33の接続部分を弁座34としてもよい。
【0068】
また、
図1および
図2において回収バルブ52が有する弁体55を塗布液Lの流路において弁座54よりも上流に位置するよう配置した例を示しているが、塗布液Lの流路において弁座54よりも下流に位置するように弁体55を配置してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、供給バルブ32と回収バルブ52が同時に動作している例について説明したが、形成する塗膜Mの形状に応じて適宜変更しても構わない。
【符号の説明】
【0070】
100 塗布装置
1 搬送手段
11 塗布ロール
2 塗布部
21 マニホールド
22 スリット
23 吐出口
3 供給手段
31 供給路
32 供給バルブ
33 本体部
34 弁座
35 弁体
36 シャフト
37 弁体駆動手段
4 タンク
5 回収手段
51 回収路
52 回収バルブ
53 本体部
54 弁座
55 弁体
56 シャフト
57 弁体駆動手段
L 塗布液
M 塗膜
S 塗布開始部
E 塗布終了部
T 塗布領域
N 不塗布領域
W 基材